説明

電子機器およびプログラム

【課題】 記憶デバイスの空き領域を有効利用しつつ、高ビットレートのデータの書き込みを支障なく行う。
【解決手段】 電子機器(1)は、各種の処理を逐次に実行可能な処理手段(6)と、前記処理手段の負荷状況を検出する第1検出手段(6)と、前記処理に伴い発生するデータの単位時間あたりのデータ量の大きさを検出する第2検出手段(6)と、記憶デバイス(14)の空き領域を、書き込み速度に応じて複数に領域分けする領域分け手段(6)と、前記第1検出手段(6)によって検出された負荷状況と前記第2検出手段(6)によって検出された単位時間あたりのデータ量の大きさとに基づいて、前記領域分け手段(6)によって区分された複数の領域のうちのいずれかを選択する選択手段(6)と、前記選択手段(6)によって選択された領域に、前記処理に伴い発生するデータを書き込む記憶制御手段(6)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器およびプログラムに関し、詳細には、高画質の動画ファイルのように、高いビットレートで時系列的に生成されるデータを支障なく記録することができる電子機器およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等のデジタル方式の撮像装置(以下、単に「撮像装置」という)が普及している。この種の撮像装置では、CCDなどの撮像デバイスを用いて生成した被写体の画像を静止画ファイルや動画ファイルに変換してハードディスクやフラッシュメモリなどの不揮発性の記憶デバイスに記録保存することができる。
【0003】
ここで、“ファイル”とは、汎用オペレーティングシステム(OS)におけるデータの管理単位のことをいい、そのファイル管理の仕組みのことをFAT(ファイルアロケーションテーブル)方式という。
【0004】
FAT方式では、記憶デバイスの記憶領域全体を小さな区画(クラスタと呼ばれる)に細分化し、このクラスタ単位でデータを小分けにして記憶する。データが書き込まれているクラスタを「使用済みクラスタ」、データが書き込まれていないクラスタを「未使用クラスタ」という。
【0005】
FAT方式では、これらの「使用済みクラスタ」と「未使用クラスタ」を “ファイルアロケーションテーブル”と呼ばれるデータテーブルで管理する。ファイルを記憶する場合は、テーブルから必要数の「未使用クラスタ」を指定してそのクラスタにファイルのデータを記憶するとともに、それらのクラスタを「使用済みクラスタ」に変更する。また、ファイルを削除する場合は、そのファイルに割り当てられていたクラスタを「未使用クラスタ」に変更する。
【0006】
FAT方式の欠点は、ファイルの削除と書き込みを繰り返して行くうちに、クラスタの断片化(フラグメンテーション)が進むことにある。断片化とは「未使用クラスタ」の間に「使用済みクラスタ」が入り込むことをいい、断片化の発生度合いのことを断片化率という。断片化率が高くなるとファイルの書き込みに時間が掛かるようになり、とりわけ、高画質の動画ファイルのように、高いビットレートで時系列的に生成されるデータを書き込む際に、書き込みが追いつかないという不都合を来す恐れが出てくる。
【0007】
断片化に伴う不都合の原因は二つある。第一は、ハードディスクのように磁気ヘッドを有する記憶デバイスに特有の原因であり、一つのファイルで使用しているクラスタが不連続になるとヘッドの移動に時間が掛かることに起因する。また、第二は、フラッシュメモリのように一定の書き換え上限数が定められている記憶デバイスに特有の原因であり、各記憶セルの書き換え回数を平準化するためのデータ移動操作、つまり特定の領域に書き込みが集中しないように他の領域にデータを移動する操作が行われることに起因する。
【0008】
FAT方式の記憶デバイスは断片化を避けることができない。このため、記憶デバイスの書き込み/読み出し速度の一層の向上化が図られてきたところであるが、その一方で、ハイビジョン画質の動画データ生成など、生成側におけるデータの高ビットレート化も進みつつあることから、断片化に伴う不都合(書き込みが追いつかない)の回避策はいまだ完全なものに至ってはいない。
【0009】
動画データのように時系列的に生成されるデータを取りこぼしなく記憶するために、いわゆる「バッファ」と呼ばれる緩衝メモリを記憶デバイスの前段に入れることが常套的に行われている。このバッファは、DRAM等の高速メモリで構成されており、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶デバイスに比べて遙かに高速にデータを書き込む(一時保存する)ことができるので、データの生成速度と記憶デバイスの書き込み速度との差を埋める(バッファリングする)ことができ、とりわけ、断片化に伴う不都合を確実に回避することができる。
【0010】
しかしながら、バッファの容量には上限があることから、データの生成時間が長くなると、いつかはバッファからデータが溢れることとなり、この場合、溢れたデータを記憶デバイスに書き込めない。バッファの容量を増やせばこの欠点を解消できるが、コストの増加を招くので好ましくない。
【0011】
そこで、必要十分な量のバッファを備えつつも、一方で、記憶デバイスの断片化に伴う影響を抑制するための技術が模索されており、そのような技術の一例として、下記の特許文献1、2参照には、記憶デバイスの空き領域を、断片化率が低い領域と高い領域とに分け、前者をデータの高速書き込みが可能な領域(以下、高速領域という)とする一方、後者をデータの低速書き込みが可能な領域(以下、低速領域という)とし、動画データ等の高ビットレートのデータを記録する場合は「高速領域」を使用し、それ以外の低速データ(静止画データ等)を記録する場合は「低速領域」を使用するようにした技術(以下、従来技術という)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−267904号公報
【特許文献2】特開2007−049639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来技術にあっては、記憶デバイスの空き領域を有効利用するという点では未だ不十分であり、改善の余地がある。
【0014】
このことについて詳しく説明する。
まず、従来技術の要点は、
(1)記憶デバイスの空き領域を断片化率が低い領域(高速領域)と高い領域(低速領域)とに分け、
(2)動画データ等の高ビットレートのデータを「高速領域」に記憶し、それ以外の低速データ(静止画データ等)を「低速領域」に記憶する、というものであり、
要するに、上記(2)に示されているように、断片化率が低い「高速領域」を高ビットレートのデータの“専用記録領域”としている点に特徴がある。
【0015】
さて、冒頭で説明したとおり、FAT方式の欠点は、ファイルの削除と書き込みを繰り返して行くうちに、クラスタの断片化が進むことにあるので、高ビットレートのデータの専用記録領域である「高速領域」は、断片化率の高まりに伴い徐々にその領域サイズを減少していくことになる。そして、「高速領域」の残りがなくなった時点で、それ以上、高ビットレートのデータの記憶ができなくなってしまう。
【0016】
しかし、当該時点(高速領域の残りがなくなった時点)においても実際の空き領域はまだ「低速領域」として残っているのであるから、つまり、物理的な空き領域が十分残っているのであるから、この従来技術は、記憶デバイスの空き領域を有効利用していないということができる。
【0017】
そこで、本発明の目的は、記憶デバイスの空き領域を有効利用しつつ、高ビットレートのデータの書き込みを支障なく行うことができる電子機器およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の電子機器は、各種の処理を逐次に実行可能な処理手段と、前記処理手段の負荷状況を検出する第1検出手段と、前記処理に伴い発生するデータの単位時間あたりのデータ量の大きさを検出する第2検出手段と、記憶デバイスの空き領域を、書き込み速度に応じて複数に領域分けする領域分け手段と、前記第1検出手段によって検出された負荷状況と前記第2検出手段によって検出された単位時間あたりのデータ量の大きさとに基づいて、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうちのいずれかを選択する選択手段と、前記選択手段によって選択された領域に、前記処理に伴い発生するデータを書き込む記憶制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、記憶デバイスの空き領域を有効利用しつつ、高ビットレートのデータの書き込みを支障なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】携帯電話機の構成図である。
【図2】メモリ14の記憶領域区分を示す図である。
【図3】中央制御部6の負荷テーブルを示す図である。
【図4】連写や動画撮影時の処理フローを示す図(1/3)である。
【図5】連写や動画撮影時の処理フローを示す図(2/3)である。
【図6】連写や動画撮影時の処理フローを示す図(3/3)である。
【図7】放送受信時やインターネット等からのデータダウンロード時の処理フローを示す図(1/2)である。
【図8】放送受信時やインターネット等からのデータダウンロード時の処理フローを示す図(2/2)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を、携帯電話機を例にして、図面を参照しながら説明する。なお、この携帯電話機は、静止画や連写並びに動画を撮影可能なカメラ機能が搭載されているとともに、さらに、インターネット等のネットワーク端末としても利用できる機能を有しており、加えて、ワンセグ放送等のテレビ放送受信機能を備えている多機能型のものである。
【0022】
まず、構成を説明する。
図1は、携帯電話機の構成図である。携帯電話機1は、被写体像を二次元的な画像信号に変換して出力するCCDやCMOS等の撮像デバイスからなる撮像部2と、この撮像部2から出力される画像信号を信号処理する画像処理部3と、画像処理部3から出力される画像信号を一時的に保持するフレームメモリ4とを含む撮像系5を有し、この撮像系5は、中央制御部6からの制御により、撮影構図確認用のプレビュー画像を生成して中央制御部6に出力したり、または、ユーザによって指定された画質(ここでは便宜的に低画質、中画質、高画質の三種類とする)の静止画や連写画または動画のデータを生成して中央制御部6に出力したりする。なお、撮像部2は、撮影レンズやオートフォーカス機構および絞り機構などを備えるが、図面の輻輳を避けるために省略している。
【0023】
携帯電話機1は、さらに、無線通信部7、音声処理部8、放送受信部9、操作部10、タッチパネル11付の表示部12、メモリI/F(インターフェース)13、メモリ14、外部I/F15および電源部16を備える。
【0024】
無線通信部7は、アンテナ7aを介して最寄りの基地局(図示略)との間で無線によるデジタルデータの送受信を行うものであり、このデジタルデータには、電話の着呼や発呼の情報および音声通話の情報が含まれるほか、インターネット上のコンテンツを利用する際などのコンテンツ情報、さらには電子メールの送受信情報などが含まれる。この無線通信部7は、以上の様々な情報の送信動作や受信動作を中央制御部6からの制御の元で行うが、通常は電話着呼の待ち受け状態にある。
【0025】
音声処理部8は、中央制御部6からの制御により、マイク8aからの音声信号をデジタルデータに変換して中央制御部6に出力したり、中央制御部6から出力されたデジタルの音声信号をアナログ信号に変換してスピーカ8bから出力したりできるものであり、これらのマイク8aやスピーカ8bを電話の送受話器として使用するほか、必要に応じ、前記の撮像系5によって静止画や連写画または動画を撮影する際の音声録音にも用いられ、あるいは、撮影済みの音声付画像を再生する際の音声出力にも用いられる。
【0026】
放送受信部9は、アンテナ9aを介してワンセグ放送等の地上波テレビジョン信号を受信し、その受信信号を中央制御部6に出力することができるものであり、この放送受信部9は、中央制御部6からの制御により、テレビジョン放送の受信オン/オフや受信チャンネルの選択などを行うことができる。
【0027】
操作部10は、中央制御部6に対して所要のユーザ入力を行うための各種操作ボタン(電源スイッチやテンキーおよび機能キーなど)を備えたインターフェースであり、また、表示部12は、表示面にタッチパネル11を併設した液晶ディスプレイ等の平面表示デバイスである。
【0028】
メモリI/F13は、たとえば、メモリ14の規格(SDカードやUSBメモリ等)に対応した汎用インターフェースであり、中央制御部6とメモリ14との間に位置して相互のデータのやりとりを仲介する。
【0029】
メモリ14は、冒頭で説明した記憶デバイス(FAT方式で管理されるもの)に相当し、ここでは、フラッシュメモリとするが、これに限定されない。FAT方式で管理されるものであればいかなるものであってもよい。たとえば、ハードディスクなどであってもよく、この場合、メモリ14をハードディスクと読み替えるとともに、前記のメモリI/F13をディスクI/Fと読み替えればよい。
【0030】
外部I/F15は、たとえば、パーソナルコンピュータ等の外部機器とのインターフェースであり、必要に応じてその外部機器と接続し、メモリ14に記録されている画像ファイルなどを、中央制御部6を経由して外部機器に出力したり、あるいは、外部機器から取り込んだ画像ファイルなどを、中央制御部6を経由してメモリ14に保存したりするものである。
【0031】
中央制御部6は、CPU6a、ROM6bおよびRAM6cならびに不図示の周辺回路を含むプログラム制御方式の制御要素であり、あらかじめROM6bに格納されている制御プログラムをRAM6cにロードしてCPU6aで実行することにより、各種の処理を逐次に実行して、この携帯電話機1の全体動作を統括制御するものである。
【0032】
ROM6bに格納されている制御プログラムは、汎用オペレーティングシステム(OS)とその汎用オペレーティングシステム上で動作する各種応用プログラム(アプリケーションプログラムまたは単にアプリケーションともいう)とからなり、汎用オペレーティングシステム(OS)にはファイルアロケーションテーブルに基づいてメモリ14のファイル管理を行うFAT方式のファイル管理システムが含まれている。
【0033】
ここで、実施形態の課題は、記憶デバイス(この実施形態ではメモリ14)の空き領域を有効利用しつつ、高ビットレートのデータの書き込みを支障なく行うことにある。
【0034】
FAT方式で管理されるメモリ14は、断片化に伴う書き込み速度の低下問題を否めないことから、バッファとして機能する所定容量の緩衝メモリ13aを備えることにより、ある程度の問題対策を講じているが、たとえば、長時間にわたる動画撮影を行った際に緩衝メモリ13aが満杯になってしまうと、それ以上、動画ファイルの保存ができなくなるという不都合がある。なお、この実施形態では緩衝メモリ13aをメモリI/F13に実装しているが、これは一例に過ぎない。たとえば、中央制御部6に実装してもよく、あるいは中央制御部6とメモリI/F13との間に実装したりしてもよい。
【0035】
緩衝メモリ13aの溢れ対策としては、冒頭で説明した従来技術のように、メモリ14の空き領域を断片化率が低い領域(高速領域)と高い領域(低速領域)とに分け、動画データ等の高ビットレートのデータを記録する場合は「高速領域」を使用し、それ以外の低速データ(静止画データ等)を記憶する場合は「低速領域」を使用することが有効であるものの、これらの対策(バッファおよび「高速領域」と「低速領域」の選択利用)だけでは、メモリ14の空き領域を有効利用するという点で不十分である。
【0036】
その理由は、高ビットレートのデータの専用記録領域である「高速領域」は、断片化率の高まりに伴い徐々に減っていき、そして、「高速領域」の残りがなくなった時点で、それ以上、高ビットレートのデータの記憶ができなくなってしまうが、当該時点においても実際の空き領域は「低速領域」として残っているからであり、空き領域(低速領域)を有効利用していないからである。
【0037】
そこで、本実施形態の技術思想は、高ビットレートのデータだからといって無条件に「高速領域」に書き込むのではなく、データの書き込みに支障がない限りにおいては、高ビットレートのデータであっても「高速領域」以外の領域(上記の例では「低速領域」)に書き込むようにした点にあり、これによって空き領域の有効利用を図るようにしたことにある。
【0038】
図2は、実施形態におけるメモリ14の記憶領域区分(書き込み可能速度区分)を示す図である。この図では、三つの記憶領域(低速領域、中速領域、高速領域)に区分しているが、これは一例に過ぎない。各領域をメモリ14の空き領域の断片化率に応じて区分すればよく、従来技術のような2区分(低速領域と高速領域)であってもよいし、または、4区分あるいはそれ以上の多区分であってもよい。
【0039】
ここで、本実施形態における「低速領域」は断片化率が高い領域(書き込み時間が遅い領域)であり、「中速領域」は断片化率が中程度の領域(書き込み時間がやや遅い領域)であり、「高速領域」は断片化率が低い領域(書き込み時間が速い領域)である。
【0040】
これら3区分の記憶領域(低速領域、中速領域、高速領域)は、メモリ14に書き込むべきデータの単位時間あたりのデータ量(ビットレートまたはデータレート)に応じて選択的に使用する。既定の使い方(あらかじめ定められたデフォルトの使い方)は、低ビットレートのデータを低速領域に書き込み、中ビットレートのデータを中速領域に書き込み、高ビットレートのデータを高速速領域に書き込むというものである。低/中/高のビットレート区分は、たとえば、2Mbps(ビット/秒)までを低ビットレートとし、2Mbpsより大きく且つ4Mbps以下を中ビットレートとし、4Mbpsより大きく且つ8Mbps以下を高ビットレートとするが、これは一例に過ぎない。
【0041】
上記の既定の使い方は冒頭で説明した従来技術と同じである。すなわち、高ビットレートのデータは従来技術の“高ビットレートのデータ”に対応し、そして、この高ビットレートのデータを「高速領域」に記憶する一方、高ビットレート以外のデータを他の領域(中速領域や低速領域)に記憶しているので、上記の既定の使い方と冒頭の従来技術とは原理的に変わりない。
【0042】
本実施形態の特徴は、高ビットレートのデータだからといって無条件に「高速領域」に書き込むのではなく、“データの書き込みに支障がない限り”においては、高ビットレートのデータであっても他の領域(低速領域または中速領域)に書き込むようにしたことにあり、これによって空き領域の有効利用を図るようにしたものである。
【0043】
「データの書き込みに支障がないか否か」の判断は、中央制御部6の負荷状況(正確にはCPU6aの負荷状況のこと)に基づいて行うことができる。中央制御部6は、ROM6bに格納されている制御プログラムをCPU6aで実行することによって、携帯電話機1の全体動作を統括制御しているが、このCPU6aは、制御プログラムに記述された処理を逐次に実行するものであって、その処理には、任意のアプリケーション処理(たとえば、電話の発着信処理や通話処理など)が含まれるほか、必要に応じて実行される記憶デバイス(メモリ14)へのアクセス処理(ファイルの読み書き処理等)も含まれるからである。
ちなみに、先に説明した既定の使い方(高ビットレートのデータを高負荷領域に書き込む等)は、CPU6aの負荷が“重い”状況の場合を想定したものである。これは、高負荷状況時は書き込みミスを生じやすいからであり、当該負荷状況時に安全にデータを書き込むことができれば、その他の状況(中負荷状況や低負荷状況)のときにもデータを支障なく書き込むことができるからである。
【0044】
このように、本実施形態では、記憶デバイス(この実施形態ではメモリ14)の空き領域を有効利用しつつ、高ビットレートのデータの書き込みを支障なく行うことを課題とし、その課題を達成するために、
(a)メモリ14の空き領域を断片化率が高い領域と、断片化率が中程度の領域と、断片化率が低い領域とに分け、
(b)それぞれを「低速領域」、「中速領域」、「高速領域」とするとともに、
(c)高ビットレートのデータを書き込む際には、中央制御部6の負荷状況を検出し、
(d)負荷が重い場合には、既定の使い方どおり、その高ビットレートのデータを高速領域に書き込む一方、負荷が中程度の場合には、その高ビットレートのデータを中速領域に書き込み、または、負荷が軽い場合には、その高ビットレートのデータを低速領域に書き込む、といったように負荷状況に応じて書き込む領域区分を変更する。
という仕組みを実装したものである。
【0045】
なお、ここでは、メモリ14の空き領域を3区分(低速領域、中速領域、高速領域)にした例を示しているが、これに限定されない。冒頭の従来技術のように2区分(低速領域と高速領域)にしてもよく、あるいは、3区分乃至はそれ以上の多区分にしてもよい。要は、メモリ14の空き領域を断片化率に応じて複数の領域に区分すればよく、且つ、高ビットレートのデータを書き込む際に中央制御部6の負荷が重い場合には、既定の使い方どおり、その高ビットレートのデータを高速領域に書き込む一方、負荷が重くない場合には、その高ビットレートのデータを高速領域以外の領域に書き込むようにすればよい。
【0046】
このようにすれば、たとえ、高ビットレートのデータであっても中央制御部6の負荷状況に応じて高速領域以外の領域にも書き込むことができるから、高ビットレートのデータの書き込みを支障なく行いつつ、且つ、記憶デバイス(メモリ14)の空き領域の有効利用を図ることができるのである。
【0047】
さて、中央制御部6の負荷状況を検出する方法は様々考えられるが、中央制御部6の負荷状況は、その中央処理部6で動作中の制御プログラムの処理内容に応じて時々刻々と変化するので、実行中の処理内容を逐次に把握することにより、中央制御部6の実際の負荷状況、すなわち負荷の大小を判定することができる。なお、負荷の大小とは数値で表される負荷の値のことをいう。たとえば、CPU6aの使用率の場合には100%で最大負荷、0乃至は0に近い値で最小負荷をいうので、それらの数値範囲(100%〜0%)のうち、データの書き込みに影響を与える範囲を“大”、全く影響を与えないか、ほとんど影響を与えない範囲を“小”と考えてもよく、さらに、それらの間の範囲を“中”と称してもかまわない。負荷状況の“重い、軽い”も同じである。
【0048】
中央制御部6で実行される様々な処理のうち、とりわけ、アンテナ7aを介して最寄りの基地局(図示略)との間で無線によるデジタルデータの送受信を行う際の電波発射を伴う処理(以下、電波オン処理という)や、アンテナ9aを介してワンセグ放送等の地上波テレビジョン信号を受信する際の放送波受信処理、または、インターネット等のネットワークから大容量のデータを取り込んで受信するダウンロード処理などの実行時に、中央制御部6の負荷状況が重くなってメモリ14へのアクセス速度が低下する。本実施形態では、かかる処理(電波オン処理、放送波受信処理、ダウンロード処理)を高負荷処理の代表とするが、これに限定されない。要は、メモリ14のアクセス速度に影響を与える処理内容であればよく、たとえば、動画撮影中の処理などであってもよい。
【0049】
図3は、中央制御部6の負荷テーブルを示す図であり、(a)は電波モードに関係するもの、(b)はダウンロードモードに関係するものである。これらの図に示すように、電波オンの場合は「高負荷状況」、電波オフの場合は「低負荷状況」に区分することができ、同様に、ダウンロードが行われている場合は「高負荷状況」、ダウンロードが行われていない場合は「低負荷状況」に区分することができる。なお、この図では放送波受信を略しているが、放送波受信についてもダウンロードの区分を適用することができる。つまり、放送波受信中は「高負荷状況」、非受信中は「低負荷状況」とすることができる。
【0050】
次に、作用を説明する。
<第1の実施形態>
図4〜図6は、連写や動画撮影時の処理フローを示す図である。この動作フローを開始すると最初に初期化処理(ステップS1)を実行する。この初期化処理では、まず、操作部10の電源スイッチがオンになったか否かを判定し(ステップS11)、オンであれば、次に所定の電源オン処理(一般的な初期化処理)を実行する(ステップS12)。次いで、記録領域管理情報(ファイルアロケーションテーブル)を読み込み(ステップS13)、メモリ14の現在の断片化状況を検出する(ステップS14)とともに、その断片化状況に応じてメモリ14の書き込み可能領域の速度判定と領域区分の処理を実行する(ステップS15)。
【0051】
ここで、ステップS15における「メモリ14の書き込み可能領域の速度判定と領域区分の処理」とは、メモリ14の空き領域を、前出の図2に示す三つの領域(低速領域、中速領域、高速領域)に区分けすることをいい、具体的には、断片化率が高い領域を「低速領域」、断片化率が中程度の領域を「中速領域」、断片化率が低い領域を「高速領域」として区分けすることをいう。
【0052】
上記の初期化処理(ステップS1)を完了すると、次に、電波オフモードであるか否かを判定する(ステップS16)。電波オフモードとは、アンテナ7aを介して最寄りの基地局(図示略)との間で無線によるデジタルデータの送受信を行う際の電波発射を伴う処理を非実行中のモードのことをいい、要するに、アンテナ7aから電波を発射していないときの動作モードのことをいう。
【0053】
ステップS16の判定結果がNOの場合、すなわち、電波オフモードでないと判定された場合は、電話着信処理(ステップS2)を実行する。この電話着信処理(ステップS2)では、まず、着信(電話の呼び出し)ありを判定し(ステップS17)、着信ありの場合は、オフフック操作(操作部10のオフフックボタンの押し下げ操作)の有無を判定する(ステップS18)。そして、オフフック操作を判定すると、通話終了操作(操作部10のオンフックボタンの押し下げ操作)が行われるまで、所要の通話処理を実行して呼び出し相手との間で音声通話を行い(ステップS20、ステップS21)、一方、ステップS18でオフフック操作を判定しなかった場合またはステップS21で通話終了操作を判定した場合は、この電話着信処理(ステップS2)を終了する。
【0054】
ステップS16の判定結果がYESの場合、すなわち、電波オフモードであると判定された場合または電話着信処理(ステップS2)の終了後は、次に、ユーザ操作ありを判定し(ステップS22)、ユーザ操作ありが判定された場合に、その操作内容が連写や動画等の撮像開始操作であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0055】
ここで、連写撮影や動画撮影は、高いビットレートで且つ時系列的なデータ生成を伴う撮像処理であり、このような処理で得られた画像ファイル(連写の場合は数枚から数十枚のファイル、動画の場合は大容量のファイル)は、FAT方式の記憶デバイス(実施形態ではメモリ14)に書き込む際に、断片化に伴う不都合(書き込みが間に合わない)を生じることがある。このため、一般的にはメモリ14の前段に高速の緩衝メモリ(実施形態では緩衝メモリ13a)を入れて、その不都合回避を図っているが、緩衝メモリ13aの容量に上限があることから、冒頭で説明した従来技術では、このような静止画や動画のファイルを書き込む際に、断片化の少ない領域(つまり高速領域)を使用するという対策を講じている。
【0056】
しかしながら、単に特定の領域(高速領域)を使用するだけの対策では、メモリ14の空き領域を有効利用できないという欠点を招く。メモリ14へのファイルの書き込みやメモリ14からのファイルの削除を繰り返して行くにつれて、メモリ14の断片化が進み、高速領域以外の空き領域が増えていくからであり、従来技術の対策ではこの空き領域(高速領域以外の空き領域)を全く利用できない仕組みになっているからである。実施形態のポイントは、記憶デバイスの空き領域(高速領域以外の空き領域)を有効利用しつつ、高ビットレートのデータの書き込みを支障なく行うことができることにあるが、このポイントについては後で詳しく説明する。
【0057】
ステップS23の判定結果がNOの場合、すなわち、ステップS22で検出されたユーザ操作が、連写や動画等の撮像開始操作でないと判定された場合は、次に、そのユーザ操作が電源オフ操作であるか否かを判定する(ステップS24)。そして、電源オフ操作を判定した場合は、所定の電源オフ処理を実行(ステップS25)した後、フローを終了し、一方、電源オフ操作を判定しなかった場合は、電源オフ操作以外のその他のアプリケーション操作に対応した処理を実行(ステップS26)した後、再びステップS22に復帰する。
【0058】
ステップS23の判定結果がYESの場合、すなわち、ステップS22で検出されたユーザ操作が、連写や動画等の撮像開始操作であると判定された場合は、次に、連写や動画等の撮像処理で生成されたファイルを緩衝メモリ13aに一時書き込みし(ステップS27)、次いで、書き込み領域選択処理(ステップS3)を実行する。
【0059】
この書き込み領域選択処理(ステップS3)では、前記のステップS15で設定された三種類のメモリ14の空き領域(低速領域、中速領域、高速領域)のいずれをファイルの書き込み先として使用するのかを事前選択する。選択肢は三つある。第1の選択肢は、図2に示す既定(デフォルト)の選択(低ビットレートのデータの場合は低速領域、中ビットレートのデータの場合は中速領域、高ビットレートのデータの場合は高速領域)に従うというものであり、第2の選択肢は、その既定の選択よりも高速な領域(低速領域→中速領域、中速領域→高速領域)を選択するというものであり、第3の選択肢は、その既定の選択よりも低速な領域(高速領域→中速領域、中速領域→低速領域)を選択するというものである。これら三つの選択肢のいずれを選ぶかは、もっぱら緩衝メモリ13aの空き容量の大小に依存する。
【0060】
すなわち、緩衝メモリ13aの空き容量が十二分であれば、既定の選択よりも低速な領域(高速領域→中速領域、中速領域→低速領域)を選択しても差し支えない(緩衝メモリ13aが溢れない)ので、この場合は第3の選択肢を選ぶことになり、または、緩衝メモリ13aの空き容量が少なければ、早々に緩衝メモリ13aが溢れることが予測されるので、既定の選択よりも高速な領域(低速領域→中速領域、中速領域→高速領域)、したがって、この場合は第2の選択肢を選ぶことになり、または、緩衝メモリ13aの空き容量が適度な場合(十二分ではないが、早々に溢れない程度の空きがある場合)は、中間の第1の選択肢を選ぶことになる。
【0061】
書き込み領域選択処理(ステップS3)では、このような考え方に従って三種類のメモリ14の空き領域(低速領域、中速領域、高速領域)を選択するが、その選択方法として、たとえば、二つの閾値(第1閾値と第2閾値)を用いることができる。
【0062】
第1閾値と第2閾値は、前者が後者より小さい関係(第1閾値<第2閾値)にあり、これら二つの閾値を使用して緩衝メモリ13aの空き領域の大きさを三つの状態に分類する。すなわち、緩衝メモリ13aの空き領域が第1閾値より小さい場合(ステップS28のYES)は、早々に緩衝メモリ13aが溢れることが予測される“空きなし状態”を表すから、この状態の場合は第2の選択肢を採用する(既定よりも高速な領域を選択/ステップS29)。また、緩衝メモリ13aの空き領域が第2閾値より大きい場合(ステップS28のNO且つステップS30のYES)は、緩衝メモリ13aの空き容量が十二分である“空きあり状態”を表すから、この状態の場合は第3の選択肢を採用する(既定よりも低速な領域を選択/ステップS32)。また、緩衝メモリ13aの空き領域が第1の閾値以上且つ第2閾値以下の場合は緩衝メモリ13aの空き容量が適度な状態(十二分ではないが、早々に溢れない程度の空きがある状態)を表すから、この状態の場合は第1の選択肢を採用する(ビットレートに対応した既定の領域を選択/ステップS31)。
【0063】
書き込み領域の事前選択を実行すると、次に、その領域がメモリ14に存在するか否かを判定する(ステップS33)。そして、対応する領域がメモリ14に存在しない場合は、それよりも高速な領域を代替領域として選択し(ステップS34)、メモリ14にその代替領域が存在するか否かを判定する(ステップS35)。
【0064】
ステップS35で代替領域の存在が判定されなかった場合は、メモリ14へのデータの書き込みができないと判断し、所要の記録エラー通知(たとえば、表示部12に“データを書き込めません”等のメッセージを表示するなど)を行い(ステップS36)、撮像終了処理(ステップS37)を実行した後、再びステップS22に復帰する。
【0065】
一方、ステップS33で対応領域ありを判定した場合またはステップS35で代替領域ありを判定した場合は、次に、緩衝メモリ13aに一時保存されていたデータをメモリ14の該当領域に書き込み(ステップS38)、撮像終了(またはポーズ等の一時停止;以下、撮影終了で代表)イベントありを判定し(ステップS39)、イベントありでなければ、再びステップS27に復帰するが、イベントありが判定された場合は、緩衝メモリ13aに、未書き込みのデータがあるか否かを判定する(ステップS40)。
【0066】
そして、緩衝メモリ13aに、未書き込みのデータがなければ、撮像終了処理(ステップS37)を実行した後、再びステップS22に復帰する一方、緩衝メモリ13aに、未書き込みのデータがあれば、書き込み領域変更処理(ステップS4)を実行する。
【0067】
この書き込み領域変更処理(ステップS4)は、要するに、中央制御部6の負荷状況に応じて緩衝メモリ13aの未書き込みデータの書き込み先を適宜に変更するというものであり、これによって、メモリ14の空き領域の有効利用を図るというものである。
【0068】
具体的には、まず、電波オフモードであるか否かを判定する(ステップS41)。電波オフモードの場合は中央制御部6の負荷状況が軽く、その逆に、電波オフモードでない場合(電波オンモードである場合)は中央制御部6の負荷状況が重いから、後者の場合(電波オンモードの場合:高負荷状況)は、先に説明した既定の使い方(図2参照)に従って「電波オフ時よりも高速な領域を選択」する(ステップS44)一方、前者の場合(電波オフモードの場合:低負荷状況)は「電波オン時よりも低速な領域を選択」する(ステップS42)。そして、いずれの場合も緩衝メモリ13aの未書き込みデータを、それらの領域に書き込んだ後(ステップS43)、再びステップS40に復帰する。
【0069】
このように、この実施形態では、中央制御部6の負荷状況に応じて、緩衝メモリ13aの未書き込みデータの書き込み先を適宜に変更する、とりわけ、中央制御部6の負荷状況が軽い場合(電波オフモード時)に「電波オン時よりも低速な領域を選択」するので、たとえ、静止画や動画のように高ビットレートのデータであっても、そのデータを高速領域以外の空き領域(中速領域や低速領域)に書き込むことができるから、高速領域以外の空き領域(中速領域や低速領域)の有効利用を図ることができるという格別の効果を得ることができる。
【0070】
<第2の実施形態>
図7、図8は、放送受信時やインターネット等からのデータダウンロード時の処理フローを示す図である。この動作フローを開始すると最初に初期化処理(ステップS5)を実行する。この初期化処理では、まず、操作部10の電源スイッチがオンになったか否かを判定し(ステップS51)、オンであれば、次に所定の電源オン処理(一般的な初期化処理)を実行する(ステップS52)。次いで、受信機能をオンにする(ステップS53)。受信機能のオンとは、テレビジョン放送を受信する場合は無線通信部7を起動することをいい、あるいは、インターネット等からのデータダウンロードを行う場合は、無線通信部7を起動することをいう。
【0071】
受信機能をオンにすると、次に、記録領域管理情報(ファイルアロケーションテーブル)を読み込み(ステップS54)、メモリ14の現在の断片化状況を検出する(ステップS55)とともに、その断片化状況に応じてメモリ14の書き込み可能領域の速度判定と領域区分の処理を実行する(ステップS56)。
【0072】
ここで、ステップS56における「メモリ14の書き込み可能領域の速度判定と領域区分の処理」とは、メモリ14の空き領域を、前出の図2に示す三つの領域(低速領域、中速領域、高速領域)に区分けすることをいい、具体的には、断片化率が高い領域を「低速領域」、断片化率が中程度の領域を「中速領域」、断片化率が低い領域を「高速領域」として区分けすることをいう。
【0073】
上記の初期化処理(ステップS5)を完了すると、次に、ユーザ操作ありを判定し(ステップS57)、ユーザ操作ありが判定された場合に、その操作内容が放送受信やダウンロードの操作であるか否かを判定する(ステップS58)。そして、放送受信やダウンロードの操作でない場合は、そのユーザ操作が電源オフ操作であるか否かを判定し(ステップS59)、電源オフ操作を判定した場合は、所定の電源オフ処理を実行(ステップS60)した後、フローを終了し、一方、電源オフ操作を判定しなかった場合は、電源オフ操作以外のその他のアプリケーション操作に対応した処理を実行(ステップS61)した後、再びステップS57に復帰する。
【0074】
ステップS58の判定結果がYESの場合、すなわち、ステップS57で検出されたユーザ操作が、放送受信やダウンロードの操作であると判定された場合は、次に、放送受信やダウンロードで得られたデータを緩衝メモリ13aに一時書き込みし(ステップS62)、次いで、書き込み領域選択処理(ステップS6)を実行する。
【0075】
この書き込み領域選択処理(ステップS6)では、前記のステップS56で設定された三種類のメモリ14の空き領域(低速領域、中速領域、高速領域)のいずれをファイルの書き込み先として使用するのかを事前選択する。選択肢は三つある。すなわち、第1の選択肢は、図2に示す既定(デフォルト)の選択(低ビットレートのデータの場合は低速領域、中ビットレートのデータの場合は中速領域、高ビットレートのデータの場合は高速領域)に従うというものであり、第2の選択肢は、その既定の選択よりも高速な領域(低速領域→中速領域、中速領域→高速領域)を選択するというものであり、第3の選択肢は、その既定の選択よりも低速な領域(高速領域→中速領域、中速領域→低速領域)を選択するというものである。これら三つの選択肢のいずれを選ぶかは、もっぱら緩衝メモリ13aの空き容量の大小に依存する。
【0076】
すなわち、緩衝メモリ13aの空き容量が十二分であれば、既定の選択よりも低速な領域(高速領域→中速領域、中速領域→低速領域)を選択しても差し支えない(緩衝メモリ13aが溢れない)ので、この場合は第3の選択肢を選ぶことになり、または、緩衝メモリ13aの空き容量が少なければ、早々に緩衝メモリ13aが溢れることが予測されるので、既定の選択よりも高速な領域(低速領域→中速領域、中速領域→高速領域)、したがって、この場合は第2の選択肢を選ぶことになり、または、緩衝メモリ13aの空き容量が適度な場合(十二分ではないが、早々に溢れない程度の空きがある場合)は、中間の第1の選択肢を選ぶことになる。
【0077】
書き込み領域選択処理(ステップS6)では、このような考え方に従って三種類のメモリ14の空き領域(低速領域、中速領域、高速領域)を選択するが、その選択方法として、たとえば、二つの閾値(第1閾値と第2閾値)を用いることができる。
【0078】
第1閾値と第2閾値は、前者が後者より小さい関係(第1閾値<第2閾値)にあり、これら二つの閾値を使用して緩衝メモリ13aの空き領域の大きさを三つの状態に分類する。すなわち、緩衝メモリ13aの空き領域が第1閾値より小さい場合(ステップS63のYES)は、早々に緩衝メモリ13aが溢れることが予測される“空きなし状態”を表すから、この状態の場合は第2の選択肢を採用する(既定よりも高速な領域を選択/ステップS64)。また、緩衝メモリ13aの空き領域が第2閾値より大きい場合(ステップS63のNO且つステップS65のYES)は、緩衝メモリ13aの空き容量が十二分である“空きあり状態”を表すから、この状態の場合は第3の選択肢を採用する(既定よりも低速な領域を選択/ステップS67)。また、緩衝メモリ13aの空き領域が第1の閾値以上且つ第2閾値以下の場合は緩衝メモリ13aの空き容量が適度な状態(十二分ではないが、早々に溢れない程度の空きがある状態)を表すから、この状態の場合は第1の選択肢を採用する(ビットレートに対応した既定の領域を選択/ステップS66)。
【0079】
書き込み領域の事前選択を実行すると、次に、その領域がメモリ14に存在するか否かを判定する(ステップS68)。そして、対応する領域がメモリ14に存在しない場合は、それよりも高速な領域を代替領域として選択し(ステップS69)、メモリ14にその代替領域が存在するか否かを判定する(ステップS70)。
【0080】
ステップS70で代替領域の存在が判定されなかった場合は、メモリ14へのデータの書き込みができないと判断し、所要の記録エラー通知(たとえば、表示部12に“データを書き込めません”等のメッセージを表示するなど)を行い(ステップS71)、放送受信終了処理やダウンロード終了処理(ステップS72)を実行した後、再びステップS57に復帰する。
【0081】
一方、ステップS68で対応領域ありを判定した場合またはステップS70で代替領域ありを判定した場合は、次に、緩衝メモリ13aに一時保存されていたデータをメモリ14の該当領域に書き込み(ステップS73)、放送受信終了やダウンロード終了(またはポーズ等の一時停止;以下、終了で代表)イベントありを判定し(ステップS74)、イベントありでなければ、再びステップS62に復帰するが、イベントありが判定された場合は、書き込み領域変更処理(ステップS7)を実行する。
【0082】
この書き込み領域変更処理(ステップS7)は、緩衝メモリ13aに、未書き込みのデータがあるか否かを判定し(ステップS75)、未書き込みのデータがなければ、放送受信終了処理やダウンロード終了処理(ステップS72)を実行した後、再びステップS57に復帰するが、未書き込みのデータがある場合には、「既定の領域よりも低速な領域を選択」して、その選択領域に、緩衝メモリ13aに一時保存されている未書き込みのデータを書き込み(ステップS76)、その後、放送受信終了処理やダウンロード終了処理(ステップS72)を実行した後、再びステップS57に復帰するというものである。
【0083】
つまり、緩衝メモリ13aに一時保存されている未書き込みのデータをメモリ14に書き込む際に、放送受信やダウンロードの終了イベントが発生(ステップS74のYES)していれば、当該イベントによって中央制御部6の負荷が重い状況から軽い状況へと遷移していると判断し、この場合には、既定の領域よりも低速の領域を選択(高速領域→中速領域、中速領域→低速領域)するというものである。
【0084】
このように、この実施形態では、中央制御部6の負荷状況に応じて、緩衝メモリ13aの未書き込みデータの書き込み先を適宜に変更する、とりわけ、中央制御部6の負荷状況が軽くなった場合(放送受信やダウンロードの終了イベントが発生した場合)に「既定の領域よりも低速の領域を選択」するので、たとえ、テレビジョン放送や大容量のダウンロードデータのように高ビットレートのデータであっても、そのデータを高速領域以外の空き領域(中速領域や低速領域)に書き込むことができるから、高速領域以外の空き領域(中速領域や低速領域)の有効利用を図ることができるという格別の効果を得ることができる。
【0085】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0086】
(付記1)
各種の処理を逐次に実行可能な処理手段と、
前記処理手段の負荷状況を検出する第1検出手段と、
前記処理に伴い発生するデータの単位時間あたりのデータ量の大きさを検出する第2検出手段と、
記憶デバイスの空き領域を、書き込み速度に応じて複数に領域分けする領域分け手段と、
前記第1検出手段によって検出された負荷状況と前記第2検出手段によって検出された単位時間あたりのデータ量の大きさとに基づいて、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうちのいずれかを選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された領域に、前記処理に伴い発生するデータを書き込む記憶制御手段と
を備えたことを特徴とする電子機器。
付記1によれば、記憶デバイスの空き領域を有効利用しつつ、高ビットレートのデータの書き込みを支障なく行うことができる。
【0087】
(付記2)
前記選択手段は、前記第1検出手段によって検出された負荷状況に応じて、前記第2検出手段によって検出された単位時間あたりのデータ量の大きさに対応する前記領域分け手段によって区分された所定の領域から別の区分の書き込み速度領域に変更するように選択することを特徴とする付記1に記載の電子機器。
付記2によれば、データレートに対応する速度に対応する書き込み可能速度区分からの変更だけでよいので、選択を即座に行うことができ、設定のためのメモリ領域も節約することができる。
【0088】
(付記3)
前記第1検出手段は、電波の発射を伴う通信手段の動作モードが電波オンモードであるか電波オフモードであるかに応じて前記処理手段の負荷状況を検出することを特徴とする付記1に記載の電子機器。
付記3によれば、携帯電話に限らず、通信手段を備える様々な電子機器に好適に用いることができる。
【0089】
(付記4)
前記第1検出手段は、電波の発射を伴う通信手段の動作モードが電波オフモードである場合に、前記処理手段の負荷状況が電波オンモードである場合よりも軽いことを検出するとともに、前記選択手段は、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうち電波オンモードである場合よりも書き込み速度が遅い領域を選択することを特徴とする付記3に記載の電子機器。
付記4によれば、通信手段が電波オフモードの場合に、適切な書き込み可能速度区分の書き込み先を選択することができる。
【0090】
(付記5)
前記第1検出手段は、電波の発射を伴う通信手段の動作モードが電波オンモードである場合に、前記処理手段の負荷状況が電波オフモードである場合よりも重いことを検出するとともに、前記選択手段は、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうち電波オフモードである場合よりも書き込み速度が速い領域を選択することを特徴とする付記3に記載の電子機器。
付記4によれば、通信手段が電波オンモードの場合に、適切な書き込み可能速度区分の書き込み先を選択することができる。
【0091】
(付記6)
さらに、静止画の連写撮影や動画撮影が可能な撮像手段を備え、
前記処理手段で実行可能な処理の一つは当該撮像手段の制御並びに当該撮像手段によって生成された静止画の連写画像や動画のデータを前記記憶デバイスに記憶するためのものであることを特徴とする付記1に記載の電子機器。
付記6によれば、たとえば、ムービーや連写機能付きカメラや携帯電話等に好適に用いることができる。
【0092】
(付記7)
さらに、前記撮像手段によって生成された静止画の連写画像や動画のデータを前記記憶デバイスに記憶する前に一時的に保持する保持手段と、
前記撮像手段によって撮像中であるか否かを判別する撮像判別手段とを備え、
前記第1検出手段は、前記撮像判別手段によって撮像中でないと判別された場合に、前記処理手段の負荷状況が撮像中の時よりも軽いことを検出するとともに、前記選択手段は、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうち撮像中の時よりも書き込み速度が遅い領域を選択して、その選択領域を前記保持手段に一時保持されているデータの書き込み先とすることを特徴とする付記6に記載の電子機器。
付記7によれば、撮像中でない場合(撮影終了時または一時停止中)は、データ記録のリアルタイム性がそれ程要求されないので、撮像中よりも遅い速度の書き込み可能速度区分に書き込むことができ、速い速度の書き込み可能速速度区分を温存し、次にリアルタイム性が求められる状況に備えることができる。
【0093】
(付記8)
さらに、放送波またはネットワーク経由でデータをダウンロードするダウンロード手段を備え、
前記処理手段で実行可能な処理の一つは当該ダウンロード手段の制御並びに当該ダウンロード手段によってダウンロードされたデータを前記記憶デバイスに記憶するためのものであることを特徴とする付記1に記載の電子機器。
付記8によれば、たとえば、放送受信手段を備える録画装置や携帯電話等に好適に用いることができる。
【0094】
(付記9)
さらに、前記ダウンロード手段によってダウンロードされたデータを前記記憶デバイスに記憶する前に一時的に保持する保持手段と、
前記ダウンロード手段によってダウンロード中であるか否かを判別するダウンロード判別手段を備え、
前記第1検出手段は、前記ダウンロード判別手段によってダウンロード中でないと判別された場合に、前記処理手段の負荷状況がダウンロード中の時よりも軽いことを検出するとともに、前記選択手段は、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうちダウンロード中の時よりも書き込み速度が遅い領域を選択して、その選択領域を前記保持手段に一時保持されているデータの書き込み先とすることを特徴とする付記8に記載の電子機器。
付記9によれば、ダウンロード中でない場合(ダウンロード終了時または一時停止中)は、データの書き込みにリアルタイム性がそれ程要求されないので、ダウンロード中よりも遅い速度の書き込み可能速度区分に書き込むことができ、速い速度の書き込み可能速速度区分を温存し、次にリアルタイム性が求められる状況に備えることができる。
【0095】
(付記10)
さらに、前記記憶デバイスの断片化状況を検出する第3検出手段を備え、
前記領域分け手段は、前記第3検出手段によって検出された断片化状況に基づいて、前記記憶デバイスの空き領域を書込み可能速度ごとに分類することを特徴とする付記1に記載の電子機器。
付記10によれば、空き領域の書込み可能速度区分を適切に分類することができる。
【0096】
(付記11)
電子機器のコンピュータを、
各種の処理を逐次に実行可能な処理手段、
前記処理手段の負荷状況を検出する第1検出手段、
前記処理に伴い発生するデータの単位時間あたりのデータ量の大きさを検出する第2検出手段、
記憶デバイスの空き領域を、書き込み速度に応じて複数に領域分けする領域分け手段、
前記第1検出手段によって検出された負荷状況と前記第2検出手段によって検出された単位時間あたりのデータ量の大きさとに基づいて、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうちのいずれかを選択する選択手段、
および、前記選択手段によって選択された領域に、前記処理に伴い発生するデータを書き込む記憶制御手段
として機能させるためのプログラム。
付記11によれば、付記1の機能をソフトウェア(プログラム)の形で提供することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 携帯電話機(電子機器)
5 撮像系(撮像手段)
6 中央制御部(処理手段、第1検出手段、第2検出手段、領域分け手段、選択手段、記憶制御手段、撮像判別手段、ダウンロード判別手段、第3検出手段)
6a CPU(コンピュータ)
7 無線通信部(通信手段、ダウンロード手段)
9 放送受信部(ダウンロード手段)
13a 緩衝メモリ(保持手段)
14 メモリ(記憶デバイス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の処理を逐次に実行可能な処理手段と、
前記処理手段の負荷状況を検出する第1検出手段と、
前記処理に伴い発生するデータの単位時間あたりのデータ量の大きさを検出する第2検出手段と、
記憶デバイスの空き領域を、書き込み速度に応じて複数に領域分けする領域分け手段と、
前記第1検出手段によって検出された負荷状況と前記第2検出手段によって検出された単位時間あたりのデータ量の大きさとに基づいて、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうちのいずれかを選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された領域に、前記処理に伴い発生するデータを書き込む記憶制御手段と
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記選択手段は、前記第1検出手段によって検出された負荷状況に応じて、前記第2検出手段によって検出された単位時間あたりのデータ量の大きさに対応する前記領域分け手段によって区分された所定の領域から別の区分の書き込み速度領域に変更するように選択することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1検出手段は、電波の発射を伴う通信手段の動作モードが電波オンモードであるか電波オフモードであるかに応じて前記処理手段の負荷状況を検出することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1検出手段は、電波の発射を伴う通信手段の動作モードが電波オフモードである場合に、前記処理手段の負荷状況が電波オンモードである場合よりも軽いことを検出するとともに、前記選択手段は、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうち電波オンモードである場合よりも書き込み速度が遅い領域を選択することを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第1検出手段は、電波の発射を伴う通信手段の動作モードが電波オンモードである場合に、前記処理手段の負荷状況が電波オフモードである場合よりも重いことを検出するとともに、前記選択手段は、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうち電波オフモードである場合よりも書き込み速度が速い領域を選択することを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項6】
さらに、静止画の連写撮影や動画撮影が可能な撮像手段を備え、
前記処理手段で実行可能な処理の一つは当該撮像手段の制御並びに当該撮像手段によって生成された静止画の連写画像や動画のデータを前記記憶デバイスに記憶するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
さらに、前記撮像手段によって生成された静止画の連写画像や動画のデータを前記記憶デバイスに記憶する前に一時的に保持する保持手段と、
前記撮像手段によって撮像中であるか否かを判別する撮像判別手段とを備え、
前記第1検出手段は、前記撮像判別手段によって撮像中でないと判別された場合に、前記処理手段の負荷状況が撮像中の時よりも軽いことを検出するとともに、前記選択手段は、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうち撮像中の時よりも書き込み速度が遅い領域を選択して、その選択領域を前記保持手段に一時保持されているデータの書き込み先とすることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
さらに、放送波またはネットワーク経由でデータをダウンロードするダウンロード手段を備え、
前記処理手段で実行可能な処理の一つは当該ダウンロード手段の制御並びに当該ダウンロード手段によってダウンロードされたデータを前記記憶デバイスに記憶するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
さらに、前記ダウンロード手段によってダウンロードされたデータを前記記憶デバイスに記憶する前に一時的に保持する保持手段と、
前記ダウンロード手段によってダウンロード中であるか否かを判別するダウンロード判別手段を備え、
前記第1検出手段は、前記ダウンロード判別手段によってダウンロード中でないと判別された場合に、前記処理手段の負荷状況がダウンロード中の時よりも軽いことを検出するとともに、前記選択手段は、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうちダウンロード中の時よりも書き込み速度が遅い領域を選択して、その選択領域を前記保持手段に一時保持されているデータの書き込み先とすることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
さらに、前記記憶デバイスの断片化状況を検出する第3検出手段を備え、
前記領域分け手段は、前記第3検出手段によって検出された断片化状況に基づいて、前記記憶デバイスの空き領域を書込み可能速度ごとに分類することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項11】
電子機器のコンピュータを、
各種の処理を逐次に実行可能な処理手段、
前記処理手段の負荷状況を検出する第1検出手段、
前記処理に伴い発生するデータの単位時間あたりのデータ量の大きさを検出する第2検出手段、
記憶デバイスの空き領域を、書き込み速度に応じて複数に領域分けする領域分け手段、
前記第1検出手段によって検出された負荷状況と前記第2検出手段によって検出された単位時間あたりのデータ量の大きさとに基づいて、前記領域分け手段によって区分された複数の領域のうちのいずれかを選択する選択手段、
および、前記選択手段によって選択された領域に、前記処理に伴い発生するデータを書き込む記憶制御手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−10123(P2012−10123A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144517(P2010−144517)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】