説明

電子機器のマスト取付具保持構造

【課題】ナット部材を緩めることなく、保持部から押さえ金具を取り外すことを可能として、施工時間を短縮する。
【解決手段】機器ケース3の保持部2は、押さえ金具13が支持される第1の支持部2Aaを有する本体部2Aと、この本体部2Aにケース背面との間に空間部Sが存在するように設けられる板状の延長部2Bとを備える。延長部2Bの端縁部に、ボルト部材12の連結棒部12Cを支持する窪み部2Bbが形成され、第1の支持部2Aaに押さえ金具13が支持されかつ窪み部2Bbに連結棒部12Cが支持され、蝶ナット14を締め込むことでマスト取付金具11が保持部2に保持される。マストMに取りつける際に、前記保持状態でボルト部材12を機器ケース3の背面側に押すことで、連結棒部2Cをケース背面側に移動させ、蝶ナット14を緩めることなく、ボルト部材12を回転することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器(例えば、ブースター、コンバーター、混合器、分配器などの、高周波回路を収容した電子機器)のマスト取付具保持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ブースター、コンバーター、混合器,分配器などの電子機器のように、マスト取付金具を介して、マストに取り付けられて使用されるものは広く知られている。
【0003】
そのような電子機器は、機器ケースのケース本体の背面側に保持部が突出して形成され、その保持部にマスト取付金具が保持され、そのマスト取付金具を介してマストに取り付けられるようになっており、前記マスト取付金具は、ボルト部材、押さえ金具及びナット部材を備え、前記ボルト部材は、左右のボルト部と、それらの基端を相互に連結する連結部とを有するコ字形状とされると共に、前記連結部が保持部に回動可能に保持され、前記押さえ金具は、両端部に左右のボルト部を挿通する被挿通部が形成され、この被挿通部を貫通するボルト部の雄ねじにナット部材が螺合される構成とされている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
そのようなものでは、前記保持部の、ケース上下方向の一方に、押さえ金具が係脱可能に当接係合する被係合部が形成されると共に、他方にボルト部材が挿通可能である貫通口部が形成され、この貫通口部内の前記被係合部と反対側にボルト部材の連結部を係止する係止部が設けられ、前記貫通口部内の係止部にボルト部材の連結部が係止されかつ押さえ金具が保持部の被係合部に係脱可能に当接係合した状態で前記ボルト部の雄ねじにナット部材を締め付けることにより前記マスト取付金具が保持部に対して固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−119404号公報
【特許文献2】特開2007−012800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2記載の構造では、マストに電子機器を取りつける際に、取付金具を保持部より取り外すためにナット部材を緩めるという作業が必要があり、そのナット部材を緩めるという作業を省略して,施工時間を短縮したいという要求がある。
【0007】
本発明は、ナット部材を緩めることとなく、保持部から押さえ金具を取り外すことを可能として、施工時間を短縮できる電子機器のマスト取付具保持構造を提供することを目的とするものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電子機器の機器ケースの背面側に保持部が突出して形成され、その保持部にマスト取付具が保持され、前記マスト取付具は、ボルト部材、押さえ部材およびナット部材を備え、前記ボルト部材は、互いに平行に延び少なくとも一方が雄ねじを有する2つの取付棒部と、それらの基端を相互に連結する連結棒部とを有するコ字形状とされる一方、前記押さえ部材は、各端部に前記取付棒部が挿通される挿通部がそれぞれ形成され、前記機器ケースの保持部と前記押さえ部材との間にマストを挟み、前記取付棒部の雄ねじに対し前記ナット部材を締め込むことで前記電子機器が前記マストに対し取り付けられる電子機器のマスト取付具保持構造であって、前記保持部は、ケース上下方向の一方に設けられ前記押さえ部材が支持される第1の支持部が形成されている本体部と、他方にケース背面との間に空間部が存在するように設けられ前記マストに取りつける際に前記空間部が前記連結棒部を回転可能に支承する回転支承部となる板状の延長部とを有する構成とされ、前記延長部の端縁部に、前記ボルト部材の連結棒部が支持される第2の支持部が形成され、前記第1の支持部に前記押さえ金具が、前記第2の支持部に前記連結棒部がそれぞれ支持され、前記ナット部材を締め込むことで前記マスト取付具が前記保持部に保持された状態で、前記ボルト部材を前記機器ケースの背面側に押すことで、前記連結棒部が前記空間部に移動する構成とされていることを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、前記第1の支持部に前記押さえ金具が、前記第2の支持部に前記連結棒部がそれぞれ支持され、前記ナット部材を締め込むことで前記マスト取付具が前記保持部に保持された状態で、前記ボルト部材を前記機器ケースの背面側に押すことで、前記連結棒部が前記空間部に移動する。よって、ナット部材を緩めることなく、ボルト部材を前記機器ケースの背面側に押すという動作を行うだけで、マスト取付具を、マストにすぐ取り付けることができる。そして、マストへの取り付けに要する施工時間を短縮することができる。
【0010】
その場合、請求項2に記載のように、前記保持部の本体部は、左右方向の幅が前記取付棒部の間隔より狭く形成され、前記延長部は、前記本体部の左右側部よりさらに左右側方に突出する翼状部を有し、前記第2の支持部に前記連結棒部が支持された状態で、前記取付棒部のうち前記連結棒部付近の部分が、前記翼状部の、ケース背面側に位置し、前記連結棒部および前記取付棒部のうち前記連結棒部側に位置する部分と前記ケース背面との間に隙間が形成されていることが望ましい。
【0011】
このようにすれば、保持部に保持されているボルト部材を前記機器ケースの背面側に押すことで、支持が解除されて、前記連結棒部が前記空間部に移動する構造を簡単に実現することができる。
【0012】
請求項3に記載のように、前記延長部の端縁部は、中央部分に切り欠き部が形成され、両側部分が第2の支持部とされていることが望ましい。
【0013】
このようにすれば、この切り欠き部を通じて、作業者が指などでボルト部材の連結棒部をケース背面側に簡単に押し込むことができ、この押し込みにより前記連結棒部を前記空間部に移動させることができる。
【0014】
請求項4に記載のように、前記第1の支持部には、前記第2の支持部に前記連結棒部が支持された状態で、前記マスト取付具の、ケース前後方向の動きを規制する規制部が形成されていることが望ましい。
【0015】
このようにすれば、保持状態において、押さえ部材が保持部から不用意に外れにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、保持部の第1の支持部に押さえ金具が、第2の支持部にボルト部材の連結棒部がそれぞれ支持され、ナット部材を締め込むことでマスト取付具が前記保持部に保持された状態で、前記ボルト部材を前記機器ケースの背面側に押すことで、前記連結棒部が前記空間部に移動するように構成しているので、ナット部材を緩めることなく、前記ボルト部材を前記機器ケースの背面側に押すという簡単な動作だけで、前記マスト取付具を、マストにすぐ取り付けることが状態にすることができる。よって、マストへの取り付けに要する施工時間の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る構造が適用されマスト取付具が保持状態にある電子機器を、正面上方から見た状態を示す斜視図である。
【図2】前記電子機器を、底面後方から見た状態を示す斜視図である。
【図3】前記電子機器を、背面上方から見た状態を示す斜視図である。
【図4】前記電子機器を、背面下方から見た状態を示す斜視図である。
【図5】前記電子機器がマストに取り付けられた状態を示し,(a)は右側面図、(b)は背面図である。
【図6】前記電子機器を示し、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は右側面図、(d)は背面図である。
【図7】(a)は図6(d)のA−A線断面図、(b)は図6(d)のB−B線断面図である。
【図8】前記電子機器をマスト取付具を取り外した状態で示し、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は右側面図、(d)は背面図である。
【図9】(a)は図8(d)のC−C線断面図、(b)は図8(d)のD−D線断面図である。
【図10】(a)〜(c)はマスト取付具によってマストに取り付ける手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。なお、説明においては、保持部2が設けられている側を後側として、2つの取付部4,4が設けられている側を下側とする。
【0019】
図1は本発明に係る構造が適用されマスト取付具が保持状態にある電子機器を、正面上方から見た状態を示す斜視図、図2は前記電子機器を、底面後方から見た状態を示す斜視図、図3は前記電子機器を、背面上方から見た状態を示す斜視図、図4は前記電子機器を、背面下方から見た状態を示す斜視図である。
【0020】
図1〜図4に示すように、電子機器1(例えば、分配器)は、保持部2がケース背面側に突出して一体的に設けられた機器ケース3を備える。この機器ケース3は、合成樹脂によって形成されている。
【0021】
保持部2は、ケース上方(ケース上下方向の一方)に設けられる本体部2Aと、ケース下方にケース背面との間に空間部S(図5(a)参照)が存在するように本体部2Aから他方に向けて突出して設けられる板状の延長部2Bとを有する。この保持部2にマストMに電子機器1を取り付けるためのマスト取付金具11(マスト取付具)が保持されている。なお、機器ケース3の下部には、屋外のマストだけでなく、壁面等の取付面にも電子機器1を取り付けることができるように、取付部4,4が設けられ、その取付部4,4には電子機器1を取り付けるための取付ネジ5が設けられている。
【0022】
図1〜図4に示す状態では、マスト取付金具11は収納状態にあり、マストMに電子機器1を取り付ける際にはマスト取付金具11の収納が解除され、図5(a)(b)に示すように、マスト取付金具11を介してマストMに機器ケース3を固定することで電子機器1が固定される。なお、この機器ケース3内には、高周波信号を処理する回路ユニット6(図7参照)が収容され、機器ケース3の下面には信号を入出力するF型コネクタ7(接栓)が下方に突出するように複数設けられている。
【0023】
マスト取付金具11は、ボルト部材12、押さえ金具13(押さえ部材)および1つの蝶ナット14(ナット部材)によって構成される。
【0024】
ボルト部材12は、線材がコ字形状に折り曲げて形成されたもので、係止棒部12A(取付棒部)と、この係止棒部12Aと平行に延びるネジ棒部12B(取付棒部)と、係止棒部12Aとネジ棒部12Bとの基端を相互に連結する連結棒部12Cとを有する。
【0025】
係止棒部12Aとネジ棒部12Bとの間隔よりも、本体部2A(保持部2)の、左右方向の幅が狭く形成され、収納状態で、保持部2の左右両側に係止棒部12Aとネジ棒部12Bとがそれぞれ位置するようになっている。
【0026】
係止棒部12Aには、押さえ金具13の一端部を係止可能である複数の係止凹部12Aa,12Aa、・・・が一定間隔でもって規則的に設けられている。この各係止凹部12Aaは、押さえ金具13の切り欠き13aが係合した状態で、押さえ金具13が係止棒部12Aの先端側あるいは基端側に移動するのを規制する機能を有する。なお、1つの係止凹部12Aaは、断面円形状の棒状部分の外周面より外方に突出する2つの鍔部12Abが設けられることで、それらの間に形成されることになる。この鍔部12Abは、係止棒部12Aの一部をつぶして外方に突出させて形成したものであり、機器ケース3(電子機器)が固定される複数種類のマストの直径に対応する位置を含むように一定間隔で設けられている。つまり、保持部2はマストMが嵌り込む凹部2aが形成されているので、図5(a)(b)に示すように、マストMの直径に対応する係止凹部12Aaを選択して切り欠き13aを係合させれば、凹部2aと押さえ金具13との間にマストMを挟持して固定することができる。
【0027】
ネジ棒部12Bには、マストMに取り付ける際に係止棒部12Aが位置する側に蝶ナット14を回転することで締め付けられるように雄ネジ12Baが形成されている。よって、切り欠き13aがいずれかの係止凹部12Aaに係合した状態では、蝶ナット14を回転して締め込む際に、係止凹部12Aa及びそれの両側の鍔部12Abによって押さえ金具13が係止棒部12Aに対し軸線方向に移動したり外れたりするのが防止されるので、作業者が押さえ金具13を手で押さえたりすることなく、固定することができる。
【0028】
押さえ金具13は、必要な剛性を確保するために中央部が突出するように屈曲した矩形板状の金具本体13Aと、その金具本体13Aの両側縁において同一方向に平行に延びる2つの側板部13B,13Cとにより断面コ字形状に形成されている。押さえ金具13(金具本体13A)の一方の端部側には、一方の側板部13Cまで延び係止棒部12Aに係脱可能に係合する切り欠き13a(挿通部)が、他方の端部側にはネジ棒部12Bが挿通される挿通穴13b(挿通部)がそれぞれ形成されている。そして、挿通穴13bを貫通して突出するネジ棒部12Bの雄ネジ12Baに蝶ナット14が螺合されている。
【0029】
そして、機器ケース3の保持部2と押さえ金具13との間にマストMを挟み、ボルト部材12の係止棒部12Aの係止凹部12Aaに押さえ金具13の切り欠き13aを係合させた状態で、ボルト部材12(ネジ棒部12B)に対し蝶ナット14を締め込むことで、図5(a)(b)に示すように、電子機器1がマストMに対し取り付けられる。
【0030】
さらに、機器ケース3の保持部2に押さえ金具13が取り付けられた状態を示す図6(a)〜(d)および図7(a)(b)と、押さえ金具13を取り外した状態を示す図8(a)〜(d)および図9(a)(b)とに基づいて、さらに詳細に説明する。
【0031】
本体部2A(保持部2)の上端部には、押さえ金具13を支持する第1の支持部2Aaが形成され、下端部からは板状の延長部2Bが、ケース背面との間に空間部Sが存在するように突出して設けられている。この空間部Sが、マストMに取り付ける際に連結棒部12Cを回転可能に支承する回転支承部として機能することになる。この延長部2Bの端縁部は、中央部分に連結棒部12Cを簡単に押すことを可能とする切り欠き部2Baが、両側部分に連結棒部12Cが支持される凹状の窪み部2Bb,2Bb(第2の支持部)がそれぞれ形成されている。つまり、左右の窪み部2Bb,2Bbの間に、ボルト部材12の連結棒部12Cを作業者が指でケース背面側に簡単に押し込むことを可能とする切り欠き部2Baが位置している。
【0032】
また、延長部2Bは、本体部2Aの左右側部よりさらに左右側方に突出する翼状部2Bc,2Bcを有し、連結棒部12Cが窪み部2Bb,2Bbに支持された状態では、連結棒部12C、および係止棒部12Aとネジ棒部12Bのうち連結棒部12C側に位置する部分と前記ケース背面との間に隙間が形成されるようになっている。つまり、連結棒部12C、および係止棒部12Aとネジ棒部12Bのうち連結棒部12C側に位置する部分は、前記ケース背面から浮き上がった状態で支持され、保持部2に保持される。
【0033】
この翼状部2Bc,2Bcの上側に、マストMへの取り付け状態で、ボルト部材12の係止棒部12Aとネジ棒部12Bを係止する係止凹部2Bca,2Bcaが形成されている。つまり、ボルト部材12の連結棒部12Cを本体部2Aの下端部に接触させた状態で、連結棒部12Cを回転軸として、ボルト部材12を倒すように回転させると、ボルト部材12の係止棒部12Aとネジ棒部12Bの基端部が係止凹部2Bca,2Bcaに係合し、それ以上の回転が規制されて、係止棒部12Aとネジ棒部12Bとが前記ケース背面に直交する方向に支持されるようになっている。
【0034】
一方、窪み部2Bb,2Bbに連結棒部12Cが支持された状態で、係止棒部12Aとネジ棒部12Bとのうち連結棒部12C付近の部分が、翼状部2Bc,2Bcの、ケース背面側に位置するようになっている。
【0035】
一方、第1の支持部2Aaには、窪み部2Bb,2Bbに連結棒部12Cが支持された状態で、マスト取付金具13の、ケース前後方向の動きを規制する、高さの低い凸部2Aaa(規制部)が形成されている。
【0036】
これにより、第1の支持部2Aaに押さえ金具13が支持されかつ窪み部2Bb,2Bbに連結棒部12Cが支持され、蝶ナット14を締め込むことでマスト取付金具11(ボルト部材12、押さえ金具13および蝶ナット14)が保持部2に保持された状態なる。そしてこの保持状態で、ボルト部材12をケース背面側に押すことで、連結棒部12Cの、窪み部2Bb,2Bbによる支持が解除され、連結棒部12Cが空間部Sに移動することになる。つまり、延長部2Bが本体部2Aより突出しているので、ボルト部材12をケース背面側に押すことで、延長部2Bの下端縁が樹脂弾性によりケース背面側に撓む。これにより、係止棒部12Aが切り欠き13aを挿通する部分とネジ棒部12Bが挿通穴13bを挿通する部分とを結ぶ線を回転軸として連結棒部12Cが回転して、窪み部2Bb,2Bbによる連結棒部12Cの支持が解除され、連結棒部12Cが空間部Sに移動することになる。
【0037】
また、ボルト部材12の連結棒部12Cを窪み部2Bb,2Bbに係合させ、第1の支持部2Aaにおいて凸部2Aaaに押さえ金具13を係合させた状態で、蝶ナット14を締め込むだけで、ボルト部材12を保持部2に保持させることができるので、保持部2に対しボルト部材12を容易に保持させることができる。
【0038】
続いて、上記構造を用いてマストMに電子機器1を固定する手順について説明する。
【0039】
マストMへの取付前は、図6(a)〜(d)に示すように、マスト取付金具は保持部2に保持される収納状態にあり、この状態で取り付け場所まで搬送される。
【0040】
作業現場において取り付ける際には、まず、ボルト部材12の連結棒部12Cを切り欠き部2Baを通じて、作業者が指などでケース背面側に押し込むことで、図10(a)に示すように、ボルト部材12の連結棒部12Cの、窪み部2Bb,2Bbによる支持が解除される。この解除は,前述したように、窪み部2Bb,2Bbが形成されている延長部2Bが下方に突出しているので、ボルト部材12をケース背面側に押すことで、延長部2Bの下端縁が樹脂弾性によりケース背面側に撓むので、連結棒部12Cが窪み部2Bb,2Bbから外れ、係止棒部12Aが切り欠き13aを挿通する部分とネジ棒部12Bが挿通穴13bを挿通する部分とを結ぶ回転軸回りに連結棒部12Cが回転して、空間部Sに移動する。
【0041】
この状態では、ボルト部材12の連結棒部12Cが、延長部2Bとケース背面との間に形成される空間部Sに位置することになるので、連結棒部12Cはケース上下方向に移動可能な状態となっており、押さえ金具13と第1の支持部2Aaの凸部2Aaaとの係合関係も、蝶ナット14を緩めなくても、無理なく解除される。
【0042】
それから、ボルト部材12の連結棒部12Cを、図10(b)に示すように、空間部Sの上方まで移動させて当接させ、その状態で、連結棒部12Cの中心軸線を回転軸としてボルト部材12全体を回転させ、図10(c)に示すように、ボルト部材12の係止棒部12Aとネジ棒部12Bとの基端部付近を係止部に係合させ、両棒部12A,12Bを水平状態に支持させる。
【0043】
そして、押さえ金具13は、ネジ棒部12Bに垂れ下がった状態で支持されるようにして、ボルト部材12の係止棒部12Aとネジ棒部12Bとの間にマストMが位置するようにマストMにボルト部材12を係合させる。保持部2の凹部2aに、マストMの外周面を接触させる。
【0044】
その後、押さえ金具13を、ネジ棒部12Bを回転軸として回転させ、切り欠き13aを係止棒部12Aの、固定しようとするマストMの直径に対応する係止凹部12Aaに係止させる。それから、ネジ棒部12Bの雄ネジ12Baに蝶ナット14を締め込むことで、押さえ金具13と保持部2との間にマストMを挟持して固定することができる。
【0045】
前記実施の形態のほか、本発明を次のように変更して実施することができる。
【0046】
(i)前記実施の形態では、収納状態においてボルト部材12の連結棒部12Cが係脱可能に係合する第2の支持部を凹状の窪み部2Bb,2Bbとしているが、凹状とする必要はなく、ケース背面側への自由な移動を規制でき、延長部2Bが撓むことでケース背面側に連結棒部12Cを移動させることができる程度の突出量がある突起あるいは凸条とすることもできるし、平坦面で構成することも可能である。
【0047】
(ii)前記実施の形態では、ボルト部材12として係止棒部12Aとネジ棒部12Bとを有するものを、押さえ金具13として一方の端部に切り欠き13aを、他方の端部に挿通穴13b(丸穴)をそれぞれ有するものを用いているが、ボルト部材として取付棒部がいずれもネジ棒部であるものを用いることができ、その場合、押さえ金具として、各端部に挿通穴を有するものを用いることも可能である。
【0048】
(iii)前記実施の形態では、窪み部2Bb,2Bbの間に切り欠き部2Baを設け、その切り欠き部2Baの部分でボルト部材12をケース背面側に押すようにしているが、そのほかの部分でボルト部材12をケース背面側に押すことで支持を解除できる場合には、切り欠き部を省略することができる。
【0049】
(iv)前記実施の形態では,押さえ金具が確実に外れないように第1の支持部2Aaに凸部2Aaaを設けているが、第1の支持部を平坦面で構成することも可能である。
【0050】
(v)前記実施の形態では、電子機器としての分配器に適用したものであるが、ブースター、コンバーター、混合器などの他の電子機器にも適用することができる。
【0051】
(vi)前記実施の形態では、マストMにマスト取付金具11を用いて取り付ける際に、取付部4,4に取付ネジ5を残しているが、取付ネジ5を取り外してもよいのはもちろんである。また、取付ネジ5を用いて電子機器1を壁面などの取付面に取り付ける場合も、マスト取付金具11を取り外して取り付けてもよいし、マスト取付金具11が保持部2に収納された状態のまま取り外すことなく、取り付けることができるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0052】
M マスト
S 空間部
1 電子機器
2 保持部
2A 本体部
2Aa 第1の支持部
2Aaa 凸部
2B 延長部
2Ba 切り欠き部
2Bb 窪み部(第2の支持部)
2Bc 翼状部
2Bca 係止凹部
3 機器ケース
11 マスト取付金具
12 ボルト部材
12A 係止棒部(取付棒部)
12B ネジ棒部(取付棒部)
12C 連結棒部
13 押さえ金具
13a 切り欠き(挿通部)
13b 挿通穴(挿通部)
14 蝶ナット(ナット部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の機器ケースの背面側に保持部が突出して形成され、その保持部にマスト取付具が保持され、前記マスト取付具は、ボルト部材、押さえ部材およびナット部材を備え、前記ボルト部材は、互いに平行に延び少なくとも一方が雄ねじを有する2つの取付棒部と、それらの基端を相互に連結する連結棒部とを有するコ字形状とされる一方、前記押さえ部材は、各端部に前記取付棒部が挿通される挿通部がそれぞれ形成され、前記機器ケースの保持部と前記押さえ部材との間にマストを挟み、前記取付棒部の雄ねじに対し前記ナット部材を締め込むことで前記電子機器が前記マストに対し取り付けられる電子機器のマスト取付具保持構造であって、
前記保持部は、ケース上下方向の一方に設けられ前記押さえ部材が支持される第1の支持部が形成されている本体部と、他方にケース背面との間に空間部が存在するように設けられ前記マストに取りつける際に前記空間部が前記連結棒部を回転可能に支承する回転支承部となる板状の延長部とを有する構成とされ、
前記延長部の端縁部に、前記ボルト部材の連結棒部が支持される第2の支持部が形成され、
前記第1の支持部に前記押さえ金具が、前記第2の支持部に前記連結棒部がそれぞれ支持され、前記ナット部材を締め込むことで前記マスト取付具が前記保持部に保持された状態で、前記ボルト部材を前記機器ケースの背面側に押すことで、前記連結棒部が前記空間部に移動する構成とされていることを特徴とする電子機器のマスト取付具保持構造。
【請求項2】
前記保持部の本体部は、左右方向の幅が前記取付棒部の間隔より狭く形成され、
前記延長部は、前記本体部の左右側部よりさらに左右側方に突出する翼状部を有し、
前記第2の支持部に前記連結棒部が支持された状態で、前記取付棒部のうち前記連結棒部付近の部分が、前記翼状部の、ケース背面側に位置し、前記連結棒部および前記取付棒部のうち前記連結棒部側に位置する部分と前記ケース背面との間に隙間が形成されている請求項1記載の電子機器のマスト取付具保持構造。
【請求項3】
前記延長部の端縁部は、中央部分に切り欠き部が形成され、両側部分が第2の支持部とされている請求項1または2記載の電子機器のマスト取付具保持構造。
【請求項4】
前記第1の支持部には、前記第2の支持部に前記連結棒部が支持された状態で、前記マスト取付具の、ケース前後方向の動きを規制する規制部が形成されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の電子機器のマスト取付具保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−222236(P2012−222236A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88365(P2011−88365)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】