説明

電子機器の基板支持構造

【課題】1本のネジによるケースの開閉により、複数枚の回路基板をケース内に位置決め固定及び分離ができるようにして、プラスティック製品と回路基板との分別廃棄を容易に行うことができる電子機器の基板支持構造を提供する。
【解決手段】第1の基板支持部は、一方のケース1のサイドパネルの開口端縁より所定距離だけ後退した位置にあって、取付予定位置にある1の段の回路基板2の一方の側の面に当接すべき後退側支持面を有し、第2の基板支持部110は、他方のケース5のサイドパネルの開口端縁より所定距離だけ相手ケース側へと進出した位置にあって、前記1の段の回路基板2の他方の側の面に当接すべき進出側支持面を有し、フロントケート1とリアケース5とは、フロントパネル又はリアパネルのほぼ中央において、一方のケース5及び複数枚の回路基板2、3、4を前後方向へと貫通して他方のケース1へとねじ込まれる1本のネジ6で結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラスチック製のケース内に複数枚の回路基板を収容するための電子機器の基板支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂オール・イン・ワン(All in One)型のプログラマブル・コントローラ(以下、PLCと称する)は、その背面にDINレール取り付け溝を有するプラスチック製ケース内に、CPU基板、I/O基板、電源基板等々の複数の回路基板を収容して構成されている。ケースに収容される回路基板のそれぞれには、各種の有用な貴金属を含む電子部品が半田付けされて搭載されている。
【0003】
そのため、このような複数枚の回路基板をプラスチック製ケース内に収容してなる電子機器の廃棄にあたっては、資源の有効活用のために、ケースと各回路基板とを分離し、両者を別々に廃棄することが望まれる。
【0004】
従来、この種の電子機器の基板支持構造としては、ケース側にネジ孔を形成する一方、回路基板のそれぞれにはネジ挿通孔を形成し、両者間をネジで締め付け固定するネジ止め構造、ケース側に基板取り付け溝を形成する一方、各回路基板側には挿入片を形成し、回路基板の撓みを利用して、溝内に挿入片を差し込み嵌合固定するスナップフィット構造等々が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−224111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の基板支持構造のうち、ネジ止め構造のものにあっては、ケースと回路基板とがネジで強固に結合されているため、ケースを開けたとしても、ケースと各回路基板とを分離するためには、さらに、ドライバを使用して各回路基板毎にネジの1本1本を緩める作業が必要となり、他方、スナップフィット構造のものにあっても、ケースと回路基板とが強固に嵌合されているため、ケースを開けたとしても、ケースと各回路基板とを分離するためには、各回路基板のそれぞれを1枚ずつ撓めて、溝から挿入片を引き抜く力作業が必要となり、いずれも、解体に要する工数が大きいために、回路基板は分離されることなくケースごと廃棄され易いと言う問題点がある。
【0006】
この発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ケースを閉じたのち、1本のネジを締め付けるだけで、複数枚の回路基板をケース内に同時に位置決め固定することができると共に、その1本のネジを緩めてケースを開けば、複数枚の回路基板はケースからひとりでに分離されるようにして、プラスチック製品と回路基板との分別廃棄を容易化した電子機器の基板支持構造を提供することにある。
【0007】
この発明のさらに他の目的並びに作用効果については、明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の技術的課題は、以下に述べる電子機器の基板支持構造により解決することができる。
【0009】
この電子機器の基板支持構造は、プラスチック製のケース内に複数枚の回路基板を前後方向多段に配置して収容するためものである。なお、ここで、ケースの立体形状は必ずしも直方体状には限られない。
【0010】
ケースは、ケースのフロント側所定領域を形成するフロントケースと、ケースのリア側所定領域を形成するリアケースとの2つの部分により分離構成される。ここで、フロント側所定領域、リア側所定領域とは、例えば、ケースが前後に1対1に分割された場合であれば、前後半分ずつの領域がそれぞれ所定領域となり、1対2に分割されたのであれば、前1/3と後2/3とがそれぞれ所定領域となる。
【0011】
フロントケースは、ケースのフロント面を形成するフロントパネルと、フロントパネルの周縁からリアケース側へと延出されるサイドパネルとを有する。このとき、ケースが直方体乃至六面体であれば、サイドパネルはそれぞれ左右のサイドパネルと上下のサイドパネルが存在することは言うまでもない。
【0012】
リアケースは、ケースのリア面を形成するリアパネルと、リアパネルの周縁からフロントケース側へと延出されるサイドパネルとを有する。ケースが直方体乃至六面体であれば、サイドパネルはそれぞれ左右のサイドパネルと上下のサイドパネルが存在することは言うまでもない。
【0013】
フロントケース又はリアケースのサイドパネル内面には、周方向へ適当な間隔を隔てて、第1の基板支持部と第2の基板支持部とが設けられる。
【0014】
第1の基板支持部は、一方のケース(例えば、フロントケース又はリアケース)のサイドパネルの開口端縁より所定距離だけ後退した位置にあって、取付予定位置にある1の段の回路基板の一方の側(例えば、リアケース側又はフロントケース側)の面に当接すべき後退側支持面を有する。
【0015】
第2の基板支持部は、他方のケース(例えば、リアケース又はフロントケース)のサイドパネルの開口端縁より所定距離だけ相手ケース側(フロントケース側又はリアケース側)へと進出した位置にあって、前記1の段の回路基板の他方の側(フロントケース側又はリアケース側)の面に当接すべき進出側支持面を有する。
【0016】
フロントケートとリアケースとは、フロントパネル又はリアパネルのほぼ中央において、一方のケース及び複数枚の回路基板を前後方向へと貫通して他方のケースへとねじ込まれる1本のネジで結合されている。ここで、「ほぼ中央」とは、物理的な中央を含むことは勿論のこと、その点を締め付けることにより、ケース全体に対して均等に締め付け圧力をかけることができる中央所定領域も含む概念である。
【0017】
それにより、前記1の段の回路基板は、その周縁部の適所において、一方のケースの第1の基板支持部の後退側支持面と他方のケースの第2の基板支持部の進出側支持面とで狭持された状態で、前記1本のネジの締め付け圧力のみを介して固定される。
【0018】
このような構成によれば、ケースを閉じたのち、1本のネジを締め付けるだけで、複数枚の回路基板をケース内に同時に位置決め固定することができると共に、その1本のネジを緩めてケースを開けば、複数枚の回路基板はケースからひとりでに分離されることとなるから、この種の電子機器において、プラスチック製品と回路基板との分別廃棄が容易となる。
【0019】
上述の基板支持構造においては、第1の基板支持部と第2の基板支持部とが1個の基板支持部で共用され、この共用される基板支持部には、当該ケース内(例えば、フロントケース内又はリアケース内)に収容されるべき1の段の回路基板の一方の側(例えば、リアケース側又はフロントケース側)の面に当接すべき後退側支持面と相手方ケース内(例えば、リアケース内又はフロントケース内)に収容されるべき1の段の回路基板の一方の側(例えば、リアケース側又はフロントケース側)の面に当接すべき進出側支持面との双方が設けられていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、複数の基板支持部を一箇所に集中して配置することにより、プラスチック成形加工時の離型性を向上すると共に、ケース全体の成形精度を向上させることができる。
【0021】
上述の基板支持構造においては、フロントケースのフロントパネルとリアケースのリアパネルとの相対向する内面には、フロントケース側ボスとリアケース側ボスとが僅かの隙間(締め付け代に相当)を介して突き合わせ状態となるようにに突出形成され、一方のボスの軸心には、プロントパネル又はリアパネルの表面に入口を開口すると共に、その底部においてネジ頭部の通過を阻止するネジ挿通孔が形成され、他方のボスの軸心には、ボス先端に入口を開口するネジ込み孔が形成され、さらに、複数の回路基板のそれぞれにはそれらのボスの貫通を許容する空所が形成されていてもよい。
【0022】
このような構成よれば、フロントケースとリアケースとの締結並びに基板の多層支持に必要なネジの長さを短くして、ネジ止め作業の際の作業性乃至操作性を良好なものとすることができる。
【0023】
上述の基板支持構造においては、フロントケース側ボス、及び/又は、リアケース側ボスの外周には、いずれかの段の回路基板の一方の側(例えば、リアケース側又はフロントケース側)の面又は他方の側(例えば、フロントケース側又はリアケース側)の面に当接すべき支持面を有する支持部が形成されていてもよい。
【0024】
このような構成によれば、多段に配置される回路基板のそれぞれは、その外周縁部のみならず、ケースの中央部においてもケースにしっかりと支持されることとなるため、通常は基板中央部の支持不安定さのために、基板外周縁部に配置せざるを得なかった基板間コネクタを基板中央部に配置することが可能となり、基板間コネクタの配置自由度が増大する。
【0025】
上述の基板支持構造においては、フロントケース又はリアケースの奥部に位置する後退側支持面の前面側には、相手方ケースの装着有無に連動して出没する基板抜け止め部材が設けられていてもよい。
【0026】
このような構成によれば、フロントケース又はリアケースの奥部に位置する後退側支持面に関しては、第2の基板支持部を必要以上に延長して相手方ケース内に進出させなくとも、その奥部に支持される基板の抜け止めを可能ならしめることができ、第2の基板支持部の成形容易性乃至基板装着作業における操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、ケースを閉じたのち、1本のネジを締め付けるだけで、複数枚の回路基板をケース内に同時に位置決め固定することができると共に、その1本のネジを緩めてケースを開けば、複数枚の回路基板はケースからひとりでに分離されるようにして、プラスチック製品と回路基板との分別廃棄を容易化した電子機器の基板支持構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、この発明に係る電子機器の基板支持構造の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
組立完成状態における電子機器の外観を示す斜視図が図1に、また分解斜視図が図2にそれぞれ示されている。それらの図から明らかなように、本発明が適用された電子機器(図示例では、オール・イン・ワン型のPLC)10は、プラスチック製のケース内に複数枚の回路基板(図示例では、CPU基板2、I/O基板3、電源基板4の3枚の回路基板)を前後方向多段に収容して構成される。
【0030】
なお、周知のように、この種のPLCは、外部入力機器に接続されるべき入力用端子台と、外部出力機器へと接続されるべき出力用端子台と、入力用端子台から入力信号を取り込むための入力回路と、出力用端子台へと出力信号を送出するための出力回路と、ユーザプログラムを格納するためのユーザプログラムメモリと、外部入出力信号を格納するための入出力メモリと、マイクロプロセッサやASIC等で構成される演算処理部とを含んで構成される。
【0031】
演算処理部で実行される処理としては、入力回路及び入力用端子台を介して外部から取り込まれた入力信号(入力データ)を入出力メモリの入力エリアに書き込む入力更新処理と、入出力メモリの出力エリアから出力信号(出力データ)を読み出して出力回路及び出力用端子台を介して外部へと送出する出力更新処理と、入出力更新処理に続いて、入出力メモリの内容を参照してユーザプログラムを実行すると共に、その実行結果で入出力メモリの内容を書き替える命令実行処理等々が挙げられる。
【0032】
そして、CPU基板2には、上述のユーザプログラムメモリ、入出力メモリ等として機能するメモリ素子のほか、演算処理部として機能するマイクロプロセッサやASIC等が搭載される。なお、図2において、符号8で示されるのは、外部パソコン等との通信を介してユーザプログラムのダウンロードやアップロード等を行ったり、各種の内部設定等を行うための通信用コネクタ(例えば、RS232Cコネクタ等)である。また、I/O基板3には、上述の出力用端子台7a、入力用端子台7b、入力回路、出力回路等々に相当する回路部品が搭載されている。さらに、電源基板4には、電圧安定化回路を構成するパワートランジスタ等の発熱性の回路部品が搭載されている。
【0033】
図1及び図2に示されるように、電子機器10のケースは、この例では直方体状に形成されており、ケースのフロント側所定領域を形成するフロントケース1と、ケースのリア側所定領域を形成するリアケース5との2つの部分により分離構成されている。フロントケース1とリアケース5とが閉じられた状態では、それらのケース1,5の開口端縁111,511は互いに突き合わせ状態で整合するように構成されている。
【0034】
フロントケース1は、ケースのフロント面を形成するフロントパネル101と、フロントパネル101の周縁からリアケース5側へと延出される4枚のサイドパネルとを有する。この例では、サイドパネルは、左サイドパネル102と、右サイドパネル103と、下サイドパネル104と、上サイドパネル105とから構成されている。
【0035】
内側を上にして置かれたフロントケースの斜視図が図3に示されている。同図に示されるように、フロントケース1のフロントパネル101及び上下のサイドプレート104,105は、後述する端子台7a,7bを露出させるために大きく切り欠かれて、下空所106及び上空所が107が形成されている。なお、符号108で示されるのは、通信用コネクタを露出させるための窓である。
【0036】
フロントケース1の内側には、第1の基板支持部として機能する4個の直方体状の突部109,109・・・と、第2の基板支持部として機能する4個の薄板状の突部110,110・・・が設けられている。
【0037】
第1の基板支持部として機能する突部109は、下サイドパネル104の内面とフロントパネル101の内面とが交差するコーナー部に、下空所106を挟んで対向するようにして1個ずつ、及び上サイドパネル105の内面とフロントパネル101の内面とが交差するコーナー部に、上空所107を挟んで対向するようにして1個ずつ、それぞれ配置されている。
【0038】
4個の突部109,109・・・の各上面である後退側支持面109aは、フロントケース1の開口端縁111よりも距離L1だけ後退した位置にある。この後退側支持面109aの高さは、図8に示されるように、CPU基板2が予定される取付位置P1にあるとき、CPU基板2の上面(フロントケース側の面)に当接する高さとなるように設定されている。
【0039】
第2の基板支持部として機能する突部110は、左サイドパネル102の内面2箇所及び右サイドパネル103の内面2箇所に、それぞれケースの左右方向へ延びる中心線に対して対称的となるように配置されている。
【0040】
4個の突部110,110・・・の各上面である進出側支持面110aは、図2に示されるように、フロントケース1の開口端縁111よりも距離L2だけ突出した位置にある。この進出側支持面110aの高さは、図8に示されるように、I/O基板3が予定される取付位置P2にあるとき、I/O基板3の上面(フロントケース側の面)に当接する高さとなるように設定されている。
【0041】
リアケース5は、ケースのリア面を形成するリアパネル501と、リアパネル501の周縁からフロントケース側1へと延出される4枚のサイドパネルとを有する。この例では、サイドパネルは、左サイドパネル502と、右サイドパネル503と、下サイドパネル504と、上サイドパネル505とから構成されている。
【0042】
内側を上にして置かれたリアケースの斜視図が図4に示されている。同図に示されるように、リアケース5のサイドパネル内面には、第1の基板支持部としての機能と第2の基板支持部としての機能とを併有する4個の複合構造体507,507・・・が設けられている。より具体的には、それらの複合構造体507,507・・・は、リアケース5の隣接するサイドパネル同士が交差する4つのコーナー部のそれぞれの近傍の上下のサイドパネル504,505の内面に配置されている。
【0043】
各複合構造体507のそれぞれは、ケースの前後方向(図4では上下方向)に細長い長方形状の薄板状基台部508と、この薄板状基台部508の下側所定長さ部分の両側縁部に沿って設けられた2本の段付き突条部509,509と、この薄板状基台部508の上側所定長さ部分の左右方向中央部に設けられた片持ち梁状の可動片510とを有する。
【0044】
この片持ち梁状の可動片510は、薄板状基台部508の左右方向の中央部を、上端部を残して、左側スリット510aと右側スリット510bと下端スリット510cとによって、上下のサイドパネル504,505ごと切り離すことにより形成されている。なお、可動片510の構造並びに作用については、後に、図11及び図12を参照しながら詳述する。
【0045】
左右の段付き突条部509,509の下端部近傍の段部の上面である後退側支持面509a,509aは、図4及び図6に示されるように、リアケース5の開口端縁511よりも距離L31だけ後退した位置にある。この後退側支持面509aの高さは、図8に示されるように、電源基板4が予定される取付位置P3にあるとき、電源基板4の縁部下面(リアケース側の面)に当接する高さとなるように設定されている。
【0046】
左右の段付き突条部509,509の上端部の上面である後退側支持面509bは、図2に示されるように、リアケース5の開口端縁511よりも距離L32だけ後退した位置にある。この後退側支持面509bの高さは、図8に示されるように、I/O基板3が予定される取付位置P2にあるとき、I/O基板3の縁部下面(リアケース側の面)に当接する高さとなるように設定されている。
【0047】
薄板状基台部508の上端部の上面である進出側支持面507aは、図2及び図8に示されるように、リアケース5の開口端縁511よりも距離L33だけ進出(延出)した位置にある。この進出側支持面507aの高さは、図8に示されるように、CPU基板2が予定される取付位置P1にあるとき、CPU基板2の縁部下面(リアケース側の面)に当接する高さとなるように設定されている。
【0048】
可動片510は、図11及び図12に示されるように、その上端部を薄板状基台部507により支持された片持ち梁構造を有し、プラスチックの有する可撓性により、その上端部を支点として撓むことにより、その下端部510eは、リアケース5の内側へと所定のストロークで出没自在とされている。この下端部510eは、リアケース5の奥部に位置する後退側支持面509a,509aの前面側にあって、相手方ケース1の装着有無に連動して出没する基板抜け止め部材として機能する。
【0049】
図12に示されるように、可動片510の上部の外面には上から下へ(フロントケース側からリアケース側へ)と向かうにしたがいその厚さが増すようにしたテーパー面510dが形成されている。そのため、フロントケース1の開口端縁111とリアケース5の開口端縁511とを接近させて両者を結合しようとすると、フロントケース1側の上下のサイドパネル104,105の内面とリアケース5側の可動片510のテーパー面510dとがスライドしつつ当接することにより、可動片510は全体的にリアケースの内側方向へと押し出され、その結果、可動片510の下端部510eはリアケース5の内側方向へと所定距離だけ突出する。
【0050】
すると、可動片510の下端部510eの下面は、図11から推定されるように、左右の段付き突条部509,509の後退側支持面509a,509aに載置される電源基板4の縁部上面と僅かの隙間を介して対向する状態となり、これにより電源基板4は抜け止めされて、図8に示されるように、予定される取付位置P3に保持される。
【0051】
一方、ケースの結合状態を解いて、フロントケース1とリアケース5とにケースを分離すれば、プラスチックの弾性により撓んで、可動片510は全体的に再びリアケースの外側へと移動し、その結果、可動片510の下端部510eはリアケースの外側方向へと所定距離だけ移動する。
【0052】
すると、可動片510の下端部510eの下面は、図11に示されるように、左右の段付き突条部509,509に載置される電源基板4の縁部上面と対向する位置から取り除かれた状態となり、これにより電源基板4はリアケース5から離脱可能とされる。
【0053】
次に、フロントケース1とリアケース5とを締結固定するための構造について説明する。図3、図4、及び図8から明らかなように、フロントケース1のフロントパネル101とリアケース5のリアパネル501との相対向する内面には、それぞれ断面円形のフロントケース側ボス112とリアケース側ボス512とが締結代となる僅かの隙間を介して突き合わせ状態(軸心整合状態)となるようにに突出形成されている。
【0054】
リアケース側ボス112の軸心には、リアパネル501の表面に入口512bを開口すると共に、その底部においてネジ6の頭部6aの通過を阻止するネジ挿通孔512aが形成され、フロントケース側ボス112の軸心には、ボス先端に入口を開口するネジ込み孔112aが形成されている。
【0055】
さらに、CPU基板2にはフロントケース側ボス112の貫通を許容するための空所である円孔201が形成されると共に、I/O基板3及び電源基板4のそれぞれには、リアケース側ボス512の貫通を許容するための空所である円孔301,401が形成されている。なお、各回路基板2,3,4の周縁部には、それぞれ自基板の支持作用と関係のない基板支持部の通過を許容するための切欠や空所が適宜に形成されることは言うまでもない。
【0056】
次に、以上の構成よりなる電子機器の基板支持構造の作用について説明する。電子機器10の組み立てにあたっては、先ず、図4に示されるように、リアケース5をその内側が上向きとなるように置き、その状態で先ず電源基板4をリアケース5の内部に導入し、その4つの角の縁部が、4つの複合構造体507の後退側支持面509aのそれぞれに載った状態に位置決めする。次に、I/O基板3を同様にしてリアケース5内に導入し、その4つの角の縁部が、4つの複合構造体507の後退側支持面509bのそれぞれ載った状態に位置決めする。最後に、CPU基板2をリアパネル501と平行な状態として、その4つの角の縁部が4つの複合構造体507の進出側支持面507aに載った状態に位置決めする。その後、リアケース5の上にフロントケース1をその内側が下向きとなるようにして被せ、両者を互いの開口縁部111、511同士が対向するようにして、両ケース1,5を互いに接近させて、図1に示されるように、ケースが閉じられた状態とする。
【0057】
しかるのち、図7に示されるように、リアケース5の背面に設けられた入口開口512bからリアケース側ボス512のネジ挿通孔512a内にネジ6を挿入すると共に、このネジ6をドライバの先端でネジ挿通孔512aの底部まで押し込む。すると、ネジ6の先端がネジ挿通孔512aの底部小孔を貫通して、フロントケース側ボス112の先端開口からねじ込み孔112a内にねじ込まれる。この状態でネジ6を所定の締め付け代だけ締め付けると、ネジの頭部6aがネジ挿通孔512aの底部小孔により通過を阻止されるため、リアケース側ボス512とフロントケース側ボス112とが次第に接近して、最後には、突き合わせ状態となり、両ケース1,5の結合が完了する。
【0058】
このとき、両ボス112,512はケースのほぼ中央部分に配置されているため、ネジ6の締め付けにより生ずる圧力は、ケースの四隅に均等に作用することとなり、それにより2枚の回路基板2,3は、それぞれの四隅において確実に狭持固定される。また、ネジ6はボス512内のネジ挿通孔512aの底部において、相手方ボス112のねじ込み孔112aの先端にねじ込まれるため、ネジ6の所要長さは両ケースの前後方向厚みに比べて著しく短くて済み、ねじ込み作業における作業性乃至操作性が良好となる。さらに、この例にあっては、ネジ挿通孔をリアケース側ボス512に設けたため、ネジ挿通孔512aの入口512bがケースの背面側に隠蔽され、ケースのフロントパネル101の外観を損ねることがない。なお、ねじ込み孔112aとしては、タップが切られたネジ穴でもよいし、タップが切られていない単なる円筒孔でもよい。もっとも、円筒孔の場合には、ネジとして例えば鉄板ビスや木ネジ等のようなねじ込み機能を有するネジとすればよい。
【0059】
この結合完了状態にあっては、電源基板4は、その四隅を、リアケース5側の複合構造体507の後退側支持面509aとリアケース5側の複合構造体507の可動片510の下端部510eの下面とで適当な遊びをもって狭持された状態で支持される。また、I/O基板3は、図9に示されているように、その四隅を、リアケース5側の複合構造体507の後退側支持面509bとフロントケース1側の薄板状突部110の進出側支持面110aとで強固に狭持された状態で支持される。さらに、CPU基板2は、その四隅を、リアケース5側の複合構造体507の進出側支持面507aとフロントケース1側の後退側支持面109aとで強固に狭持された状態で支持される。したがって、3枚の回路基板2,3,4は、1本のネジ6の締め付け操作だけで、フロントケース1とリアケース5とからなるケース内空間に確実に支持される。
【0060】
電子機器10を解体する場合には、電子機器10の背面のネジ挿通用開口512bからネジ挿通孔512a内へとドライバを挿入し、その底部に位置するネジ6を緩めれば、フロントケース1とリアケース5とは徐々に離隔されてゆき、ネジ6がねじ込み孔112aから抜け出すと共に、ケースはフロントケース1とリアケース5とに分離可能とされる。その後、リアケース5からフロントケース1を引き離せば、可動片510に対する付勢力は解放されて、下端部510eはケース外方へと後退し、電源基板4はケースから離脱可能となり、同時に、CPU基板2及びI/O基板3についても、進出側支持面と後退側支持面とによる狭持力から解放されて、ケースから離脱可能となる。
【0061】
このように、この基板支持構造によれば、ケース1,5を閉じたのち、1本のネジ6を締め付けるだけで、2枚の回路基板2,3をケース内に同時に位置決め固定することができると共に、その1本のネジ6を緩めてケース1,5を開けば、2枚の回路基板2,3はケースからひとりでに分離されるので、この種の電子機器10におけるプラスチック製品1,5と回路基板2,3との分別廃棄を容易化することができ、資源の有効活用に資するものである。
【0062】
加えて、リアケース5の奥部に収容れさる回路基板(図示例では電源基板4)は、両ケース1,5で狭持されるのではなく、リアケース5の側の機構のみで狭持されるものであるから、フロントケース1の側からリアケース5の側へと長大な突起を延出させて進出側支持面を形成することが不要となり、プラスチック成形技術に対する負担が軽減される利点がある。
【0063】
なお、以上の実施形態においては、各回路基板2,3は、その四隅において、各ケース1,5に支持されたが、図5及び図6に示されるように、フロントケース側ボス112及びリアケース側ボス512を利用すれば、各回路基板2,3をその中央部においても支持することが可能となる。
【0064】
すなわち、図5に示される例にあっては、フロントケース側ボス112の周囲には、下部所定長さ部分に対応して、周囲90度間隔で4本の突条部113,113・・・がボスの長手方向に沿って形成されている。これらの突条部113の各上端面である後退側支持面113aは、フロントケース1側の突部109の後退側支持面109aと同一高さとされている。同様にして、図6に示される例にあっては、リアケース側ボス512の周囲には、下部所定長さ部分に対応して、周囲90度間隔で4本の突条部513,513・・・がボスの長手方向に沿って形成されている。これらの突条部513の各上端面である後退側支持面513aは、リアケース5側の複合構造体507の後退側支持面509bと同一高さとされている。
【0065】
このような構成によれば、図10に示されるように、CPU基板2及びI/O基板3はその周縁部のみならず、中央部においてもケースに支持されることとなるため、図示のように、I/O基板3の上面に基板コネクタ9aを、CPU基板2の下面に基板コネクタ9bをそれぞれ配置して、両コネクタが対向するようにしても、ネジ6の締め付け圧力により両基板2,3が撓まないため、コネクタの接続を確実になすことができる。なお、従来は、回路基板をケースに対してその中央部で支持することができないため、基板コネクタの配置は基板の周縁部に限られるというレイアウト上の制約が課せられていたが、このように両ケースのボスに支持部を設けると言う構成によれば、そのようなレイアウト上の制約が解消される利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、ケースを閉じたのち、1本のネジを締め付けるだけで、複数枚の回路基板をケース内に同時に位置決め固定することができると共に、その1本のネジを緩めてケースを開けば、複数枚の回路基板はケースからひとりでに分離されるので、この種の電子機器におけるプラスチック製品と回路基板との分別廃棄を容易化を図ることができ、資源の有効活用に資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】組立完成状態における電子機器の外観を示す斜視図である。
【図2】電子機器の分解斜視図である。
【図3】内側を上向きにして置かれたフロントケースの斜視図である。
【図4】内側を上向きにして置かれたリアケースの斜視図である。
【図5】内側を上向きにして置かれたフロントケース(変形例)の斜視図である。
【図6】内側を上向きにして置かれたリアケース(変形例)の斜視図である。
【図7】斜め後方より見た電子機器の斜視図である。
【図8】図1に示す電子機器のVIII−VIII線断面図である。
【図9】回路基板縁部の支持構造を示す説明図である。
【図10】回路基板中心部の支持構造を示す説明図である。
【図11】リアケースの底部基板の支持構造をケース内側から見た説明図である。
【図12】リアケースの底部基板の支持構造をケース側から見た説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1 フロントケース
2 CPU基板
3 I/O基板
4 電源基板
5 リアケース
6 ネジ
6a ネジの頭部
7a 端子台
7b 端子台
8 通信用コネクタ
10 電子機器
101 フロントパネル
102 左サイドパネル
103 右サイドパネル
104 下サイドパネル
105 上サイドパネル
106 下空所
107 上空所
108 窓
109 突部
109a 後退側支持面
110 突部
110a 進出側支持面
111 開口端縁
112 ボス
112a ネジ挿通孔
113 突条部
113a 支持面
201 孔
202 上空所
203 下空所
401 孔
402 切欠き
501 リアパネル
502 左サイドパネル
503 右サイドパネル
504 下サイドパネル
505 上サイドパネル
506 DINレール嵌合溝
507 複合構造体
507a 進出側支持面
508 薄板状基台部
509 段付き突条部
509a 後退側支持面
509b 後退側支持面
510 可動片
510a 左側スリット
510b 右側スリット
510c 下端スリット
510d テーパー面
510e 下端部
511 開口端縁
512 ボス
512a ネジ込み孔
513 突条
513a 支持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製のケース内に複数枚の回路基板を前後方向多段に配置して収容するための電子機器の基板支持構造であって、
ケースは、
ケースのフロント側所定領域を形成するフロントケースと、ケースのリア側所定領域を形成するリアケースとの2つの部分により分離構成され、
フロントケースは、
ケースのフロント面を形成するフロントパネルと、フロントパネルの周縁からリアケース側へと延出されるサイドパネルとを有し、かつ
リアケースは、
ケースのリア面を形成するリアパネルと、リアパネルの周縁からフロントケース側へと延出されるサイドパネルとを有し、
フロントケース又はリアケースのサイドパネル内面には、周方向へ適当な間隔を隔てて、第1の基板支持部と第2の基板支持部とが設けられ、
第1の基板支持部は、一方のケースのサイドパネルの開口端縁より所定距離だけ後退した位置にあって、取付予定位置にある1の段の回路基板の一方の側の面に当接すべき後退側支持面を有し、
第2の基板支持部は、他方のケースのサイドパネルの開口端縁より所定距離だけ相手ケース側へと進出した位置にあって、前記1の段の回路基板の他方の側の面に当接すべき進出側支持面を有し、
フロントケートとリアケースとは、フロントパネル又はリアパネルのほぼ中央において、一方のケース及び複数枚の回路基板を前後方向へと貫通して他方のケースへとねじ込まれる1本のネジで結合されており、
それにより、前記1の段の回路基板は、その周縁部の適所において、一方のケースの第1の基板支持部の後退側支持面と他方のケースの第2の基板支持部の進出側支持面とで狭持された状態で、前記1本のネジの締め付け圧力のみを介して固定されることを特徴とする電子機器の基板支持構造。
【請求項2】
第1の基板支持部と第2の基板支持部とが1個の基板支持部で共用され、この共用される基板支持部には、当該ケース内に収容されるべき1の段の回路基板の一方の側の面に当接すべき後退側支持面と相手方ケース内に収容されるべき1の段の回路基板の一方の側の面に当接すべき進出側支持面との双方が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器の基板支持構造。
【請求項3】
フロントケースのフロントパネルとリアケースのリアパネルとの相対向する内面には、フロントケース側ボスとリアケース側ボスとが僅かの隙間を介して突き合わせ状態となるようにに突出形成され、一方のボスの軸心には、プロントパネル又はリアパネルの表面に入口を開口すると共に、その底部においてネジ頭部の通過を阻止するネジ挿通孔が形成され、他方のボスの軸心には、ボス先端に入口を開口するネジ孔が形成され、さらに、複数の回路基板のそれぞれにはそれらのボスの貫通を許容する空所が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器の基板支持構造。
【請求項4】
フロントケース側ボス、及び/又は、リアケース側ボスの外周には、いずれかの段の回路基板の一方の面又は他方の面に当接すべき支持面を有する支持部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電子機器の基板支持構造。
【請求項5】
フロントケース又はリアケースの奥部に位置する後退側支持面の前面側には、相手方ケースの装着有無に連動して出没する基板抜け止め部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子機器の基板支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−171837(P2008−171837A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−727(P2007−727)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】