説明

電子機器の画像の視認性向上構造及びその構造を有する電子機器、当該構造に使用される透明部材

【課題】画像表示部を有する電子機器の画像の視認性向上構造、その構造を有する電子機器、および、その構造に使用される透明部材を提供する。
【解決手段】電子機器の画像表示部の表面及び/または電子機器の画像表示部カバー(該電子機器本体内に具えられた画像表示部を被覆するための部材、但し、該画像表示部は液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置、ブラウン管表示装置、またはフィールドエミッション表示装置よりなる群から選ばれる1つ)の一部を構成する透明パネルに、透明部材を密着させたことを特徴とする電子機器の画像の視認性向上構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の画像の視認性向上構造およびその構造を有する電子機器、またはその構造に使用される透明部材に関するものであり、より詳細には、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機などの電子機器の画像の視認性を向上する構造およびその構造を有する電子機器、またはその構造に使用される透明部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機やノートパソコン、コピー機やFAXなどに見られるように、画像表示部を具えた電子機器の普及が著しい。また、インターネットや高速通信網の普及により画像表示部に表示させる画像自体もより写実的なものになってきている。このような状況の下、電子機器の画像の視認性を高めることに注目がなされている。これらの電子機器が具えている画像表示部の典型としては、液晶表示装置が挙げられる。液晶表示の視認性は、液状表示技術の進歩により、年々向上してきているのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
画像表示部を有する電子機器は、電子機器本体のデザインや組立て上の理由から、画像表示装置を電子機器本体に一部品として組み込み、画像表示部の画面を視認できるように、画面に対向するようにプラスチックスやガラス製の透明パネルが設けられている。当該透明パネルは、通常、電子機器の本体の外装(カバー)や画像表示部の外装(カバー)の一部を構成している。
【0004】
本発明者らが鋭意検討した結果、画像の視認性は電子機器本体内部の構造、すなわち、画像表示装置が電子機器本体に組み込まれている部分の構造の影響を受けることを見出した。例えば、図1は、反射型液晶表示部9を有する電子機器(携帯ゲーム機)の断面図であり、透明パネル1と反射型液晶表示部9との間には空気層15が存在する。反射型液晶表示部9は、さらに保護パネル16、偏光フィルター17、22、ガラス板18,21、カラフィルター19、液晶層20、および反射板23とからなっている。反射型液晶表示部9は、外光12を液晶表示部9の反射板23で反射し、反射された光をカラーフィルター19に透過させることによって、カラー表示することを原理とし、画像を視認する者は、カラーフィルターを透過した透過光13を見ていることになる。
【0005】
しかし、液晶表示部9と透明パネル1との間に空気層15が存在すると、外光12は、透明パネル1の表面および裏面で反射し、さらに液晶表示部9に設けられている保護パネル16などで反射する。また、反射光14や透過光13が透明パネル1の裏面にて、さらに反射することも考えられる。反射光14の強度が強い場合には、周囲の景観の映りこみが生じたり、画像が白っぽくなったりして、画像の視認性が低下する場合がある。これは、反射光14の強度が強いと、透過光13の強度が弱まってしまうので、画像のコントラストが低下し、また、弱められた透過光13と反射光14とが混合するので、さらに視認性が低下するものと考えられる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、視認性を低下させる反射光低減させることにより、電子機器の画像の視認性を向上する構造、その構造を有する電子機器、および、その構造に使用される透明部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面は、電子機器の画像表示部の表面及び/または電子機器の画像表示部カバーの一部を構成する透明パネルに、透明部材を密着させることを特徴とする電子機器の画像の視認性向上構造である。透明部材を設けて、電子機器の画像表示部の表面、または、電子機器の画像表示部のカバーの一部を構成する透明パネルの少なくとも一方に密着させることにより、その界面での反射光を低減させることができ、画像の視認性を向上できる。
【0008】
また本発明の一局面は、電子機器の画像表示部の表面と電子機器の画像表示部カバーの一部を構成する透明パネルの裏面との間に、透明部材を密着させたものであることを特徴とする電子機器の画像の視認性向上構造である。かかる構造により、画像表示部の表面と透明パネルの裏面との両界面での反射光を抑制することができる。
【0009】
前記透明部材としては、透明パネルの素材や画像表示部の表面基材の屈折率に近い屈折率を有するものを選択することが好ましく、より好ましくは屈折率が1.2〜1.6のものを使用することが好ましい。屈折率の近い材料同士を密着させることによって、界面での反射光を低減させることができるからである。さらに、前記透明部材としては、ヤング率が10〜800N/cmの弾性体を使用すること、波長380〜780nmの領域での可視光の透過率が85%以上のものを使用すること、または、表面粗さ(Ra)が10μm以下のシート状の透明部材を使用することが好ましい。前記透明部材として、かかる弾性体を使用することにより、外部からの衝撃を吸収するようにすることも好ましい。
【0010】
また、前記透明部材として、前記画像表示部の表面から透明パネルの裏面までの距離(d)より大きな厚み(D)を有するシート状透明部材を用いることにより、シート状透明部材を画像表示部の表面と透明パネルの裏面との間に圧着させることも好ましい。また、前記画像表示部の表面と透明パネルとの間には、油膜を形成させておくことが好ましい。透明部材の表面に油膜を形成しておけば、透明部材を画像表示部に載置する際、あるいは、透明パネルを透明部材に取付ける際に、界面に気泡が生じるのを抑制することができるからである。
【0011】
前記透明部材として、透明ゲルまたは透明ゴムを使用すること、または、透明ゲルまたは透明ゴムの表面がオイルブリードしているものを使用することが好ましい。透明ゲルまたは透明ゴムは、柔軟性を有し、画像表示部の表面や透明パネルへの密着性に優れるからである。
【0012】
前記透明部材は、透明ゲルまたは透明ゴムであり、電子機器の画像表示部の表面に硬化性液状ゲルまたはゴム組成物を載せ、電子機器の画像表示部カバーの一部を構成する透明パネルの裏面が前記液状ゲルまたはゴム組成物で濡れるように透明パネルを電子機器本体に取付け、前記液状ゲルまたはゴム組成物の硬化により透明ゲルまたは透明ゴムを生成させて、透明ゲルまたは透明ゴムを画像表示部の表面と透明パネルの裏面との間に密着させたものであることが好ましい。また、前記透明部材は、透明ゲルまたは透明ゴムであり、電子機器の画像表示部カバーの一部を構成する透明パネルの裏面に、硬化性液状ゲルまたはゴム組成物を載せた後、これを硬化させることによって、透明ゲルまたは透明ゴムが被着(或いは密着)した透明パネルを得て、前記透明パネルを電子機器本体に取付けて、前記透明ゲルまたは透明ゴムを電子機器の画像表示部の表面に密着させたものであることが好ましい。硬化性液状ゲルまたはゴム組成物を硬化させて透明ゲルまたは透明ゴムを生成することによっても、すでに出来上がっている透明ゲルまたは透明ゴムを使用するのと同様の効果が得られるからである。
【0013】
前記透明ゲルは、シリコーンゲル、ポリエチレンゲル、アクリルゲル、ウレタンゲル、ブタジエンゲル、イソプレンゲル、ブチルゲル、スチレンブタジエンゲル、エチレン酢酸ビニル共重合体ゲル、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゲル、フッ素ゲルよりなる群から選択される少なくとも1種の透明ゲルであることが好ましい。前記透明ゴムは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゴム、フッ素ゴムよりなる群から選択される少なくとも1種の透明ゴムであることが好ましい。さらに、前記透明部材は、透明シリコーンゲルまたは透明シリコーンゴムであることが好ましい。前記透明ゲルのJIS−A硬度は10未満のものであり、前記透明ゴムのJIS−A硬度は10以上のものであることが好ましい。
【0014】
前記透明部材は、画像表示部の画面全体に密着されていること、また、画像表示部の表面及び/または透明パネルの裏面に透明部材が取外し自在に密着されたものであることが好ましい。前記透明パネルは、電子機器の画像表示部カバーと一体または取外し可能な部材であることが好ましい。
【0015】
電子機器の画像表示部カバーと電子機器本体との取付手段は、ねじ締め機構であり、ねじ締め圧の調整によって、前記透明部材を画像表示部の表面と前記透明パネルの裏面とに密着させることが好ましく、画像表示部と前記透明パネルとの間において、透明部材の周囲部分には、そのつぶれしろが設けられていることが好ましい。また、透明パネルの表面には、さらに反射防止加工が施されていることが好ましい。
【0016】
前記画像表示部は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置、ブラウン管表示装置、またはフィールドエミッション表示装置よりなる群から選ばれる1つの画像表示部であることが好ましく、より好ましくは、反射型液晶表示装置である。
【0017】
本発明は、上述した本発明の視認性向上構造に使用される透明部材であり、また本発明の視認性向上構造を有する電子機器である。前記電子機器は、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯情報端末、携帯電子辞典、携帯テレビ、携帯DVDより成る群から選択される携帯電子機器であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、透明パネルまたは画像表示部の表面の少なくとも一方に透明部材を密着させることによって、反射光を低減させ、電子機器の画像の視認性を高めることができ、画像表示部を有する多様な電子機器へ適用することができる。また、透明パネルの裏面と画像表示部の表面との両面に透明部材を密着させることにより、画像の視認性を一層高めることができる。特に、画像表示部として反射型液晶表示装置を使用する電子機器の画像の視認性を著しく改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の電子機器の画像の視認性向上構造は、電子機器の画像表示部の表面(以下、単に「画面」という場合がある)及び/または電子機器の画像表示部カバーの一部を構成する透明パネル(以下、単に「透明パネル」という場合がある)に、透明部材を密着させることを特徴とする。すなわち、画面と透明パネルの一方にのみ透明部材を密着させてもよいし、画面と透明パネルの両方に透明部材を密着させるようにしてもよい。透明部材を透明パネルまたは画像表示部の表面の少なくとも一方に密着させておけば、その界面で生じる反射光を低減できるからである。また、透明パネルに透明部材を密着させる場合には、透明パネルの裏面(電子機器の内側)のみならず、透明パネルの表面(電子機器の外側)に透明部材を密着させてもよい。
【0020】
また、電子機器の画像表示部の表面と電子機器の画像表示部カバーの一部を構成する透明パネルの裏面との間に、透明部材を密着させておくことは、特に好ましい態様である。かかる態様では、透明部材が画面と透明パネルの裏面の両面に密着した状態であり、両界面で生じる反射光を低減でき、一層視認性を向上できるからである。尚、画面または透明パネルに透明部材を密着させる場合には、できるだけ気泡が入らないようにすることが好ましい。気泡が入ってしまうとその部分の視認性が低下してしまうからである。また、本発明で「画像表示部」とは、電子機器本体に一部品として取り組まれている画像表示装置のことをいう。
【0021】
以下に、まず本発明で使用する透明部材について説明する。
【0022】
本発明では、透明部材として、透明パネルの素材や画像表示部の表面基材の屈折率と近い屈折率を有するものを使用することが好ましい。透明部材の屈折率を、透明パネルの素材や画像表示部の表面基材の屈性率と近い屈折率のものとすれば、各界面での反射光を低減できるからである。屈折率n1の媒体1から屈折率n2の媒体2へ光が透過する際に、媒体1と媒体2との界面における反射率は、次式で表わすことができる。
【0023】
反射率ρ={(n1−n2)/(n1+n2)}
表1には、透明パネルの素材や画像表示部の表面基材として使用されることのある材料の屈折率を示した。これらの材料は、透明性に優れるという点から、光学材料として多用されているものである。
【0024】
【表1】

【0025】
表1から、空気の屈折率を1とした時のポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの屈折率は、1.49〜1.59であり、比較的高い屈折率であることが分かる。従って、本発明では、透明部材の屈折率を1.2以上、より好ましくは1.35以上で、1.6以下、より好ましくは1.5以下とすることが望ましく、屈折率をかかる範囲とすることで、各界面での反射光を低減することができる。
【0026】
本発明では、透明部材として、ヤング率が10N/cm以上、好ましくは50N/cm以上で、800N/cm以下、好ましくは600N/cm以下の弾性体を使用することが望ましい。透明部材を弾性体とすることにより、多様な形状の透明パネルに適応することができ、透明パネルが特殊な形状をしている場合にも、透明部材の圧縮圧を液晶表示部の表面へ均一に分散でき、液晶表示部を保護することができるからである。また、弾性体のヤング率を10〜800N/cmとするのは、画面への圧力負荷を制御するためである。ヤング率が800N/cmを超える場合には、透明部材が透明パネルで圧縮されると、画面への負荷が大きくなりすぎる。また、ヤング率が10N/cm未満であると、透明部材が変形しやすくなりすぎるので、透明パネルなどへの密着性が低下して、十分な視認性が得られないからである。また、前記透明部材として、かかる弾性体を使用すれば、外部からの衝撃を吸収して分散することができ、例えば、透明パネルが衝撃を受けた場合に画像表示部を保護することができる。
【0027】
前記透明部材としては、波長が380〜780nmの領域の可視光の透過率が85%以上のもの、より好ましくは90%以上のものを使用することが好ましい。透過率は、透明部材の透明度を指標するものであり、透過率が85%未満の場合には、画面から発せられた光が透明部材を透過しにくくなるので、視認性が低下するからである。また、透過率が85%以上である波長の領域が380nm〜780nmの領域よりも狭い場合には、赤色側(高波長側)あるいは青色側(低波長側)の光の透過性が低下するので好ましくない。前記透明部材の透過率は、例えば、日本分光製分光光度計(V−550)を用いて測定すればよい。
【0028】
前記透明部材の形状は、電子機器本体内の画像表示部と透明パネルとの空間に充填できるものであれば特に制限されず、透明パネルや、画像表示部の形状などに応じて適宜設定すればよいが、シート状としておくことが好ましい。多くの電子機器の画像表示部の表面や透明パネルの形状が、略平坦状であるからである。また、一部の携帯電話などで見られるように透明パネルが、丸みを帯びた曲面状であれば、シート状透明部材に丸みを付与するようにしても良い。前記シート状透明部材は、さらに表目粗さ(Ra)が10μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以下である。表面粗さ(Ra)が10μmより大きいと、透明部材を画面に載置し、或いは、透明パネルを透明部材に密着させる際に、気泡が生じやすいからである。また、画面上にはできるだけ気泡がないことが好ましいという観点から、シート状透明部材の表面粗さは、全体的に10μm以下、より好ましくは5μm以下とすることが好ましい。しかし、後述するように、シート状透明部材の表面粗さが(Ra)が10μm以上であっても、透明部材として表面がオイルブリードした透明ゲルや透明ゴムを使用したり、透明部材の表面にオイルを塗布して油膜を形成したり、または、低硬度の透明部材を使用することなどによって、気泡が発生した場合にも、気泡を容易に除去することができる。
【0029】
前記シート状透明部材の厚み(D)は特に限定されないが、例えば、電子機器の画像表示部の表面から透明パネルまでの距離(d)より大きくても、小さくてもよい。前記距離(d)より大きな厚み(D)を有するシート状透明部材を使用して、シート状透明部材を画面と透明パネルの裏面とによって圧縮し、両面に圧着させるようにすることも本発明の好ましい態様である。透明部材を両面に圧着させることによって、透明パネルの裏面と画面とで透明部材を固定できるからである。また、透明パネルの裏面または画面と透明部材との界面に気泡が存在している場合にも、気泡が界面から追い出されていくという利点もある。前記シート状透明部材の厚み(D)の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1mm、より好ましくは0.3mmである。厚みが薄すぎると、シート状透明部材を載置する際の作業性が低下するからである。また、経済的な観点から、シートの厚みを厚くし過ぎることも好ましくない。
【0030】
前記画像表示部の表面と透明パネルとの間に油膜を形成させておくことも本発明の好ましい態様である。例えば、前記シート状透明部材の透明パネル側の表面にオイルを塗布して油膜を形成しておけば、透明パネルへの濡れ性が向上するので、透明部材と透明パネルとの界面に気泡が生じることなく、透明パネルを取付けることができる。透明部材と画像表示部との界面についても同様である。
【0031】
前記透明部材として、透明ゲルまたは透明ゴムを使用することも本発明の好ましい態様である。透明ゲルや透明ゴムは、柔軟性を有しており、例えば、特別な負荷(力)を掛けずに単に載置するだけでも、その自重で画像表示部の表面や透明パネルに密着しやすいからである。また、透明ゲルまたは透明ゴムと透明パネルとの界面に気泡が生じた場合にも、指で押圧等することにより、混入した気泡を容易に追い出すことができる。さらに、透明ゲルや透明ゴムに配合されているオイルが、その表面にブリードしている透明ゲルや透明ゴムを使用することも本発明の好ましい態様である。表面にブリードしているオイルが、画像表示部の表面や透明パネルへの濡れ性を向上して、透明部材を被着させる際に、気泡が生じにくくなるからである。
【0032】
本発明で「ゲル」と「ゴム」とは、JIS−A硬度計による硬度により分類するものとし、JIS−A硬度が10未満のものをゲルとし、JIS−A硬度が10以上のものをゴムとする。例えば、ある架橋密度を有するポリマーに可塑剤を多量に配合してJIS−A硬度が10未満になれば「ゲル」であり、可塑剤の配合量を減らして、JIS−A硬度が10以上のものは「ゴム」とする。特に、ゲルの場合には、針入度により硬度を表示することができる。前記透明ゴムのJIS−A硬度の上限は、特に限定されないが、好ましくは70であり、より好ましくは50である。JIS−A硬度が70を超える場合には、透明パネルや画面に密着しにくくなり、透明ゴムを取付ける際に気泡が生じやすくなるからである。
【0033】
前記透明ゲルまたは透明ゴムとしては、特に限定されず、例えば、架橋高分子材料に溶媒や可塑剤などが配合されたもの、架橋高分子材料の架橋密度や構造を制御してゲルまたはゴムとしたもの、線状高分子の分子鎖が絡み合ってゲルまたはゴムとなっているもの、或いは、線状高分子の骨格構造や分子量などを制御してゲルまたはゴムとしたものなどが挙げられるが、架橋構造を有していることが好ましい。溶媒や可塑剤を配合する量や架橋密度の制御により、ゲルおよびゴムの設計が容易になるからである。
【0034】
また、本発明では、透明ゲルまたは透明ゴムの成形体を使用することもできるが、例えば、硬化性液状ゲル組成物または硬化性液状ゴム組成物(以下、単に「硬化性液状組成物」という場合がある)を用いて、画像表示部の表面や透明パネルに載せて硬化させることにより、透明ゲルまたは透明ゴムの成形体を作製することも好ましい態様である。
【0035】
前記透明ゲルまたは透明ゴムを構成する高分子材料としては、例えば、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのエステル系樹脂;アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型などのエポキシ系樹脂;ポリエーテル系、ポリエステル系などのポリウレタン;ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)・スチレン共重合体、MMA・α−メチルスチレン共重合体などのアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのビニル系樹脂;ポリカーボネート;フェノール樹脂;ポリアセタール;3フッ化エチレン、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂;シリコーン樹脂などの他、天然ゴム、スチレンーブタジエンゴム、アクリロニトリルーブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム,エチレン−プロピレンゴム,クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴムなどの各種ゴムが挙げられる。
【0036】
また、前記高分子材料に配合される溶媒または可塑剤、すなわち、透明ゲルまたは透明ゴムに配合されている溶媒や可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル;トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテートのようなトリメリット酸エステル;ジブチルアジペート、ビス(ブチルグリコール)アジペート、ジブチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェートなどの燐酸エステル;シリコーンオイル、パラフィン系油(パラフィン鎖を50%以上含む)、ナフテン系油(ナフテン環炭素を30〜45%含む)、芳香族(アロマティック)系油(芳香族炭素を30%以上含む)等の各種オイル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ジメチルフォルムアミド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルフォキシドなどの各種溶剤の他、水であってもよい。
【0037】
前記硬化性液状組成物としては、例えば、イソシアネート基とヒドロキシル基またはアミノ基などの活性水素との反応により硬化する2液硬化型ウレタン樹脂組成物、シラノール基やビニル基などの架橋反応を利用する液状シリコーンゴム組成物、加硫・架橋反応を利用する天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴムなどの液状ゴム組成物、エポキシ基とアミノ基またはヒドロキシル基などとの硬化反応を利用する液状エポキシ樹脂組成物、フェノールとホルマリンの反応を利用する液状フェノール樹脂組成物、および硬化性液状不飽和ポリエステル・ビニルエステル組成物などが挙げられる。
【0038】
前記硬化性液状組成物は、さらに、その粘度や得られる透明ゲルまたは透明ゴムの硬度を調整するために上述したような溶剤や可塑剤;硬化反応を促進・制御するための過酸化物、有機金属化合物、酸性触媒または塩基性触媒などの触媒;および、モノマー、低分子量多官能性化合物のような反応性希釈剤などを含有してもよい。
【0039】
本発明では、得られるゲルまたはゴムの透明性、ヤング率、および硬度などを考慮して、かかる高分子材料、可塑剤、溶剤などを選択し、或いは組合わせることにより、透明ゲルまたは透明ゴムを得ることができる。これらの中でも、前記透明ゲルとしては、シリコーンゲル、ポリエチレンゲル、アクリルゲル、ウレタンゲル、ブタジエンゲル、イソプレンゲル、ブチルゲル、スチレンブタジエンゲル、エチレン酢酸ビニル共重合体ゲル、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体ゲル、フッ素ゲル、ゼラチンゲル、寒天ゲル、こんにゃくゲルなどが挙げられる。また、前記透明ゴムとしては、天然ゴム、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルーブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR),エチレン−プロピレンゴム,クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ヒドリンゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴムなどが挙げられる。
【0040】
前記透明部材として、透明シリコーンゲルまたは透明シリコーンゴムを使用することは、本発明の極めて好ましい態様である。シリコーンゲルまたはシリコーンゴムは、透明性に極めて優れるとともに、柔軟性を有しているので画像表示部の表面や透明パネルへの密着性に優れるからである。また、透明シリコーンゲルまたは透明シリコーンゴムの屈折率は、1.2〜1.53程度であり、反射光を低減させるのにも適している。尚、透明シリコーンゲルまたは透明シリコーンゴムの屈折率は、ポリシロキサン側鎖の置換基の種類によって調整することができる。例えば、置換基としてフェニル基を採用すれば、屈折率は高くなり、フルオロアルキル基を採用すれば、屈折率は低くなる。
【0041】
前記透明シリコーンゲルまたはシリコーンゴムは、シロキサン結合を基本骨格とするオルガノシロキサンで、適宜3次元架橋されたものであり、平均単位式RaSiO(4-a)/2で示されるものである。式中、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基などの炭素数1〜10、好ましくは1〜8のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;アルキル基、アルケニル基、アリール基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をハロゲン原子に置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換炭化水素基;アルキル基、アルケニル基、アリール基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部をシアノ基に置換した2−シアノエチル基などのシアノ置換炭化水素基などから選択される置換または非置換の炭素数1〜10の炭化水素基である。式中、aは、1.95〜2.05であることが好ましい。
【0042】
前記透明シリコーンゲルまたは透明シリコーンゴムは、例えば、硬化性液状シリコーンゲル組成物または硬化性液状シリコーンゴム組成物(以下、単に「硬化性液状シリコーン組成物」という場合がある)を硬化させることにより得ることができる。また、これらの硬化性液状シリコーン組成物を画像表示部の表面または透明パネル上で硬化させても良いのは、上述した通りである。
【0043】
前記硬化性液状シリコーン組成物とは、硬化反応により透明シリコーンゲルまたは透明シリコーンゴムを生成するものであれば特に制限されず、例えば、官能基を有するオルガノポリシロキサン、架橋剤、及び、触媒を含むものが挙げられる。前記官能基を有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、末端にシラノール基やビニル基を有するジメチルポリシロキサンが挙げられる。前記架橋剤としては、3官能以上のシランモノマー、ハイドロジェンオルガノシロキサンのようなシロキサン、アルキルオルソシリケートのような金属アルコラート等が挙げられる。前記触媒としては、白金化合物、ジブチル錫ジアセテートやジブチル錫ジラウリレートのような有機金属化合物、または、オクテン酸錫のような金属脂肪酸塩などが挙げられる。前記架橋剤や触媒の種類や量は、可使時間や硬化速度などを考慮して適宜決定すればよい。また、前記硬化性液状シリコーン組成物は、例えば、90℃以上、より好ましくは130℃以上、210℃以下、より好ましくは200℃以下で硬化させればよい。また、硬化時間は、例えば、得られる透明シリコーンゴムまたはゲルの厚みを基準として設定することができ、150℃の硬化温度では、厚み1mm当たりの硬化時間を10秒とする。
【0044】
上述したような方法により得られた透明部材を、画面全体の視認性を向上させるために、画像表示部の画面全体に密着させたり、前記透明部材を透明パネルの裏面または画面に取外し自在に密着させるようにするのも好ましい態様である。透明部材を取外し可能なものとしておけば、透明部材と透明パネルや画像表示部の表面との間に気泡が生じても、気泡が抜けるように再度載置し直すことができ、また、電子機器のメインテナンスを容易にすることができるからである。
【0045】
次に、電子機器の画像表示部カバー(以下、単に「画像表示部カバー」という場合がある)の一部を構成する透明パネルについて説明する。前記透明パネルは、画像表示部カバーの一部を構成するものであり、電子機器本体内に具えられた画像表示部の画面を視認できるように、画面に対向するように設けられている。電子機器の画像表示部カバーとは、電子機器の画像表示部を被覆する部材であればよく、例えば、携帯用ゲーム機や携帯電話などの電子機器の場合には、前記画像表示部カバーは、一体的に電子機器本体全体を被覆する電子機器本体カバーであってもよく、また、FAX機やコピー機などの大型の電子機器に見られるように、電子機器の操作内容を示すための画面と操作ボタン等とを部分的に被覆するようなカバーでもよい。
【0046】
前記透明パネルは、画像表示部カバーの一部を構成するものであり、画像表示部カバーと一体または取外し可能な部材であってもよい。透明パネルと画像表示部カバーとが一体とは、例えば、透明パネルが画像表示部カバー内側に組み込まれているような場合や透明パネルと画像表示部カバーとが一体成形されている場合が挙げられ、前記画像表示部カバーを電子機器本体に取付けた状態で、透明パネルのみを脱着出来ない場合をいう。また、透明パネルが取外し可能な部材とは、画像表示部カバーを電子機器本体に取付けた状態で、透明パネルを単独で画像表示部カバーから脱着できる場合をいう。前記透明パネルの材質は、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリレートなどの透明プラスチックス製または、ガラス製である。
【0047】
電子機器の画像表示部カバーの電子機器本体への取付手段は、特に限定されるものではないが、例えば、接着剤による取付、ねじ締め機構、爪又はかえし等を設けたビス等を当該爪等に係合するような形状を有する溝や穴などに嵌合する嵌合機構などが挙げられる。これらの中でも、前記取付手段として、ねじ締め機構を採用し、ねじ締め圧の調整によって、前記透明部材を画像表示部の表面と透明パネルの裏面とに密着させることが好ましい。かかる場合には、前記透明部材を、画像表示部の表面と透明パネルの裏面とに圧着させて固定することができる。また、画面と透明パネルとの間において、透明部材の周囲部に透明部材のつぶれしろを設けておくことも好ましい。つぶれしろがあると、透明部材が過度に圧縮された場合につぶれしろが設けられている方向へ、透明部材が変形するので、画面方向への過度の圧力負荷を抑制できるからである。
【0048】
前記透明パネルの外側(表面)には、さらに反射防止加工が施されていることが好ましい。透明パネル外側での反射を防止することにより、さらに視認性を高めることができるからである。前記反射防止加工としては、透明パネルに直接反射防止加工を施しても良いし,反射防止加工をしたフィルムを貼付してもよい。前記反射防止加工としては、例えば、表面に凹凸をつけ映り込んだ光を拡散させるアンチグレア加工;透明パネルにフッ化マグネシウムを真空蒸着して、可視光線の1/4波長の透明薄膜を設ける加工;酸化チタン層と酸化ケイ素層を交互に積層したような高屈折率物質層と低屈折率層の積層フィルムを透明パネルの表面に貼付する加工;またはシリコーン樹脂やフッ素樹脂のような(ガラス等と比較して)低屈折率物質を用いた透明パネル表面へのコーティング加工等が挙げられる。
【0049】
以下、本発明の視認性向上構造について、さらに図面を参照しながら説明するが、本発明は、かかる説明に限定されるものではない。
【0050】
図2は、本発明の視認性向上構造を有する携帯ゲーム機の分解斜視図であり、透明パネル1が画像表示部カバー5から取外し可能な部材の例である。ここでは、画像表示部カバー5は、一体的に電子機器本体を被覆するカバーである。透明部材2は、電子機器本体内に具えられた画像表示部の表面3に載置される。その際、画像表示部の表面3と透明部材2との界面に気泡が生じないように載置するようにする。気泡が生じた場合には、指などで押圧して気泡を除去すればよい。次いで、透明パネル1を画像表示部カバー5に取付ければよい。透明パネル1の取付に際しては、画像表示部の画面の周囲部4に、例えば接着剤8を塗布しておき、透明パネルの周囲部(非透明部分)1bを合わせるように貼り付けるればよい。また、透明部材2の透明パネル側にオイルを塗布して、油膜を形成しておけば、気泡を生じることなく透明パネルを載置することができる。
【0051】
また、最初に透明部材2を透明パネル1に被着あるいは密着させてから、透明パネル1を画像表示カバー5に取付て、透明部材2を画像表示部の表面3と透明パネル1の裏面とに密着させるようにしてもよい。
【0052】
図3は、透明パネルが取付けられている電子機器の断面図である。透明パネル1は、画像表示部カバー5と接着剤8によって貼り合わされ、透明部材2は、画像表示部の表面3と透明パネル1の裏面とに密着している。画像表示部カバー5は、電子機器本体6に、ねじ締め機構7によって取付けられおり、ねじを締め圧を高めることより、透明部材2を透明パネル1の裏面と画面3とに圧着させることができる。
【0053】
図4は、透明パネル1を画像表示部カバー5の内側に設けた場合である。透明パネル1は、その周囲部1bに接着剤8を塗布して、画像表示部カバー5と接着されている。また、透明パネル1と画像表示部の表面3の間において、透明部材の周囲には、そのつぶれしろ10が設けられている。かかる構成にしておけば、透明部材2をねじ締め機構7で圧着しても、透明パネル1と画像表示部カバー5との接着部分を剥離するような力が働かない。また、強く圧着した場合にも、変形した透明部材2がつぶれしろ10に入り込むので、画像表示部の表面3へ過度の圧力負荷がかかることもない。
【0054】
図5は、硬化性液状組成物11を用いた透明ゲルまたは透明ゴムの作製例を段階的に示す斜視図である。電子機器の画像表示部の表面3に硬化性液状組成物11を載せ、画像表示部カバー5の一部を構成する透明パネル1の裏面が前記液状ゲルまたはゴム組成物で濡れるようにつ透明パネル1を画像表示部カバー5に取付ける。その後、前記硬化性液状組成物11を硬化して、透明ゲルまたは透明ゴムを生成させて、透明ゲルまたは透明ゴムを画像表示部の表面3と透明パネル1の裏面との間に密着させるようにすればよい。また、硬化反応は、電子機器を保護する観点から、常温硬化反応とすることが好ましい。
【0055】
図6は、硬化性液状組成物を使用して、透明パネル1の裏面に透明ゲルまたは透明ゴムを被着した透明パネルの斜視図である。透明ゴム等が被着した透明パネルは、透明パネル1の裏面に、硬化性液状ゲルまたはゴム組成物を載せた後、これを硬化させることによって得ることができる。透明ゲルまたは透明ゴムが被着した透明パネルの製造方法は、特に限定されず、例えば、射出成形機を用いて作ることができ、透明パネル1を金型内にセットし、透明パネル1の所定の場所に硬化性液状ゲルまたはゴム組成物を注入して、硬化させるようにする。射出成形の条件は、適宜設定されれば良いが、例えば、硬化温度130〜200℃で、射出圧力40〜120kg/cmである。また、比較的高温で硬化させる場合には、例えば、透明パネルとして、耐熱性を有するポリカーボネート、またはポリエチレンテレフタレートなどの耐熱プレスチックス製、またはガラス製の透明パネルを使用することが好ましい。
【0056】
また、本発明は、上述したような電子機器の画像の視認性向上構造に使用される透明部材であり、前記透明部材の好ましい態様は、上述した通りである。
【0057】
本発明は、さらに、上述した視認性向上構造を有する電子機器である。前記電子機器は、画像表示部を有するものであれば特に制限されず、例えば、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機、携帯電子辞典、携帯テレビ、携帯DVDプレーヤー、コンパクトディスク(CD)プレーヤー、ミニディスク(MD)プレーヤー、ノートパソコンなどの携帯電子機器の他、テレビ、電話機、FAX、コピー機、電子レンジ、洗濯機、冷蔵庫などの電子機器などにも使用することができる。
【0058】
また、電子機器に具えられた画像表示部も特に限定されず、例えば、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置、ブラウン管表示装置、またはフィールドエミッション表示装置などが挙げられ、白黒またはカラー表示装置の別を問わない。
【0059】
特に、本発明の視認性向上構造を好適に利用できるのは、画像表示部が、カラー液晶表示装置、より好ましくは反射型カラー液晶表示装置の場合である。カラー液晶表示装置は、外光の影響を受けやすく、視認性が低下しやすいからである。また、反射型カラー液晶液晶表示装置は、バックライトを使用しないため、外光を取り入れなければ画像を視認できないので、一層外光の影響を受けることになるからである。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0061】
(1)波長380〜780nmの可視光領域での透過率の測定
透明シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレートの各材料の光線透過率を測定した。その結果を図7に示した。
【0062】
図7より、透明シリコーンゴムは、波長380〜780nmの可視光領域での光線透過率が90%以上であり、極めて透明性に優れていることが分かる。この結果より、透明シリコーンゴムが、本発明の透明部材として好適に使用できることが分かる。
【0063】
(2)透明部材の密着態様が光線透過率に及ぼす影響
旭化成・ワッカーシリコーン株製RTV−ME601をA剤:B剤=9:1の割合で配合して、真空脱法した後、90℃10分間で加熱・硬化させて、厚さ2.5mm、JIS−A硬度50のシート状透明シリコーンゴムを得た。
【0064】
厚さ1.5mmのガラス板、厚さ1.0mmのポリカーボネート板、及び、透明部材として前記シート状透明シリコーンゴムとを用いて、図8(a)〜(d)に示したような構造ユニット1〜4を作製した。各構造ユニットは、画像表示部が電子機器本体内部に取り込まれている部分をモデル化するものであり、各構造ユニットにおいて、ガラス板24は、画像表示部の表面または内部に設けられる保護パネルやガラス板を想定している。構造ユニット1(図8(a))は、透明部材2を使用せず、厚みが2.5mmの空気層15を有する従来の電子機器の構造である。構造ユニット2(図8(b))は、透明部材2がガラス板24にのみ密着し、また、構造ユニット3(図8(c))は、透明部材2が透明パネル1の裏面にのみ密着している場合であり、空気層15の厚みはそれぞれ0.5mmである。構造ユニット4(図8(d))は、透明部材2が透明パネル1の裏面とガラス板24の両面に密着している場合である。また、前記シート状透明シリコーンゴムは、PC板またはガラス板との界面に気泡が入らないように密着されている。構造ユニット1〜4について、日本分光製V−550分光光度計を使用して、分光透過率を測定した。測定結果を図9に示した。
【0065】
図9より、構造ユニット1〜4の透過率は、構造ユニット4>構造ユニット2、3>構造ユニット1の順に高く、透明部材2を透明パネル1の裏面とガラス板24とに密着させた構造ユニット4の透過率が最も高いことが分かる。一方、透明部材2を使用せず、透明パネル1とガラス板24との間に空気層15しか存在しない構造ユニット1の透過率は、最も低くなった。これらの結果より、透明パネルまたは画像表示部の表面の少なくとも一方に透明部材を密着させている構造は、画像表示部への光線透過率を高めることができ、また、透明パネルの裏面と画像表示部の表面の両面に透明部材を密着させている構造は、画像の視認性を著しく高めることができるものと考えられる。
【0066】
(3)透過率および反射率の測定
東レ・ダウコーニング・シリコーン株製CY52−205を使用して、厚さ3mm、JIS−A硬度が40のシート状透明シリコーンゴムを作製した。
【0067】
ガラス板、ポリカーボネート(PC)板、および、透明部材として前記シート状透明シリコーンゴムを使用して、表2に示すような電子機器の構造ユニット5〜7を組立てた。構造ユニット5は、図8(a)に示した構造であり、透明部材を使用しない従来の構造である。構造ユニット6は、図8(d)に示した構造を有し、透明パネルの裏面とガラス板の両面に透明部材が密着している。また、構造ユニット7は、透明パネルの外側にさらに反射防止加工(AR)フィルムが貼付けられている。尚、各構造ユニットにおいては、シート状透明シリコーンゴムは、PC板またはガラス板との界面に気泡が入らないように密着されている。構造ユニット5〜7を、図8に示すように分光反射輝度計(PHOTO RESEARCH社製PR−704)から300mm離れた地点に45°傾けた角度で設置して、反射率および透過率について測定した。各ユニットについて反射率、透過率について測定した結果を表2に示した。
【0068】
【表2】

【0069】
構造ユニット5は、透明パネルとガラス板との間に空気層が存在する場合であり、反射率が高く、透過率が低くなった。構造ユニット6は、シート状透明シリコーンゴムが透明パネルの裏面とガラス板とに密着されている場合であり、構造ユニット5に比べて、透過率が高くなり、反射率が低下した。また、構造ユニット7は、ユニット6の透明パネルの外側にさらに反射防止加工を施した場合である。透過率は、95.75%と極めて高く、反射率も4.01%と極めて低くなった。
【0070】
これらの結果より、電子機器が構造ユニット5のような従来の構造を有する場合に比べて、構造ユニット6または7のような本発明の視認性向上構造を有する場合には、各界面での反射光を低減することができ、視認性を著しく向上できるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】画像表示部を有する従来構造の携帯ゲーム機の断面図である。
【図2】本発明の実施例の構造を有する携帯ゲーム機の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例の構造を有する携帯ゲーム機の断面図である。
【図4】本発明の別の実施例の構造を有する携帯ゲーム機の断面図である。
【図5】本発明の実施例の構造の作製例を段階的に示す説明図である。
【図6】本発明の透明部材が被着した透明パネルの斜視図である。
【図7】各種透明基材の光線透過率を示すグラフである。
【図8】構造ユニット例の断面図である。
【図9】分光光度計による光線透過率を示すグラフである。
【図10】分光反射輝度計による光線透過率および反射率の測定方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0072】
1:透明パネル、1a:透明部分、1b:周囲部(非透明部分)、2:透明部材、3:画像表示部の表面、4:画像表示部の周囲部、5:電子機器の画像表示部カバー、6:電子機器本体、7:ねじ締め機構、8:接着剤、9:画像表示部、10:つぶれしろ、11:硬化性液状ゲルまたはゴム組成物、12:外光、13:透過光、14:反射光、15:空気層、16:保護パネル、17:偏光フィルター、18:ガラス板、19:カラーフィルター、20:液晶層、21:ガラス板、22:偏光フィルター、23:反射板、24:ガラス板、25:スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の画像表示部の表面及び/または、電子機器の画像表示部カバー(該電子機器本体内に具えられた画像表示部を被覆するための部材、但し、該画像表示部は液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネセンス表示装置、ブラウン管表示装置、またはフィールドエミッション表示装置よりなる群から選ばれる1つ)の一部を構成する透明パネルに、透明部材を密着させたことを特徴とする電子機器の画像の視認性向上構造。
【請求項2】
前記電子機器の画像表示部カバーの一部を構成する透明パネルが画像表示部カバーを電子機器本体に取付けた状態で、単独で画像表示部カバーから脱着できる部材であって、その表面(前記電子機器の外側)及び/または裏面(電子機器の内側)に、前記透明部材を密着させた請求項1に記載の視認性向上構造。
【請求項3】
透明部材が予め被着あるいは密着された透明パネルにを画像表示カバーに取付、該透明部材が画像表示部の表面と透明パネルの裏面とに密着するように構成した請求項1または2に記載の視認性向上構造。
【請求項4】
透明パネルの外側に反射防止加工が施されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の視認性向上構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の視認性向上構造に使用される透明部材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の視認性向上構造を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−53722(P2009−53722A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299354(P2008−299354)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【分割の表示】特願2002−97700(P2002−97700)の分割
【原出願日】平成14年3月29日(2002.3.29)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】