説明

電子機器の筐体

【課題】極力ねじ止めを使用しない場合においても、簡単に分解しない電子機器の筐体を得る。
【解決手段】筐体の一方の側面と天面と底面を形成するベースカバー7と筐体の他方の側面を形成するサイドカバー8とをそれぞれの上部、下部に設けた爪7a,7bと溝8a,8bの嵌合により相互に取り付けるとともに、ベースカバー7の上部爪7aの長さをベースカバー7及びサイドカバー8の弾性変形量より大きくし、筐体の前面を形成するフロントカバーとベースカバー7とを同様に取り付け、かつスタンド6の上面上にベースカバー7の底面をサイドカバー8の下部嵌合部を挟み込むように取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セキュリティ性を高める必要がある電子機器の筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
意匠的に外観に見える部分にねじを極力使わない電子機器の一般的な各ケース同士の嵌合部断面図を図9(a)に示す。図において、1,2はケースであり、ケース1には爪1aが設けられるとともに、ケース2には溝2aが設けられ、爪1aと溝2aとは嵌合される。そして、これらのケース1,2を嵌合させるとき、ケース1とその爪1aは矢印3に示すように一旦内側方向に弾性変形させるとともに、ケース2とその溝2aは矢印4に示すように一旦外側方向に弾性変形させ、図9(b)に示すように爪1aを溝2aに嵌合させる。これにより、ケース1,2を容易に組み立てることができる。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】実開昭61−9888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したように、従来の電子機器では、意匠的に筐体のパーツ同士を極力ねじ止めしない場合には、筐体のパーツ同士の接合は爪と溝による嵌合により行われていた。この場合、図10に示すように、爪1aと溝2aとの嵌合のみに頼っているため、矢印5に示すように外力が加わると、嵌合部分が容易に外れてしまい、簡単に分解することとなった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、意匠的に極力ねじ止めを使用しない場合においても、容易に分解しない電子機器の筐体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の請求項1に係る電子機器の筐体は、筐体の一方の側面と天面と底面を形成するベースカバーと筐体の他方の側面を形成するサイドカバーとをそれぞれの上部及び下部に設けた爪と溝の嵌合により相互に取り付けるとともに、ベースカバー又はサイドカバーの上部爪の長さはベースカバー及びサイドカバーの弾性変形量より大きくし、筐体の前面を形成するフロントカバーとベースカバーとをそれぞれの上部及び下部に設けた爪と溝の嵌合により相互に取り付けるとともに、フロントカバー又はベースカバーの上部爪の長さはフロントカバー及びベースカバーの弾性変形量より大きくし、かつベースカバーの底面をスタンドの上面上にサイドカバーの爪と溝との下部嵌合部を挟み込むように取り付けたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のようにこの発明の請求項1によれば、各カバーの上部嵌合部においては、上部爪の長さが各カバーの弾性変形量より大きいので、対応した溝から外れることは無く、またスタンドの上面上にベースカバーの底面をサイドカバーの爪と溝との下部嵌合部を挟み込むようにして取り付けており、サイドカバーの下部嵌合部はスタンドに隠れて指で押すことが難しくなるとともに、ベースカバーとスタンドに挟まれて変形し難くなり、またベースカバーの底面もスタンドに取り付けられているため、変形し難くなり、筐体の分解は難しくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面とともに説明する。図2(a),(b)はこの発明の実施最良形態による電子機器の筐体の正面図及び側面図を示し、図3は実施最良形態による電子機器の筐体の斜視図を示す。図において、6はスタンド、7は筐体の一方の側面、天面、及び底面を形成するベースカバーであるが、ベースカバー7は図示しない背面も一体に形成している。8は筐体の他方の側面を形成するサイドカバー、9は筐体の前面を形成するフロントカバーである。これらのカバー7〜9は弾性変形可能な材料により形成されている。図4(a),(b)はベースカバー7とサイドカバー8との上部嵌合構造を示す縦断正面図及び斜視図を示し、ベースカバー7は上部に撓み性のある上部爪7aを有し、上部爪7aはサイドカバー8の上部に設けられた溝8aと嵌合する。上部爪7aの長さL1は、ベースカバー7及びサイドカバー8の弾性変形量よりも長くなっている。
【0009】
図5はベースカバー7とサイドカバー8の下部嵌合構造を示し、ベースカバー7の下部に設けられた下部爪7bも撓み性のある爪となっており、サイドカバー8の下部の溝8bと嵌合する。爪7a,7bと溝8a,8bとの嵌合に際しては、上部爪7aと上部溝8aとを嵌合した状態で図6に示すように上部を基点としてサイドカバー8を回転させるようにして、下部爪7bと下部溝8bとを嵌合させる。このようにして、ベースカバー7とサイドカバー8とを相互に取り付ける。
【0010】
図7(a)〜(c)はフロントカバー9とベースカバー7との接合構造を示す断面図、そのA部拡大図及びB部拡大図を示し、上部嵌合部におけるフロントカバー9の上部に設けられた上部爪9aはベースカバー7の上部に設けられた上部溝7cと嵌合する。上部爪9aの長さL2はフロントカバー9及びベースカバー7の弾性変形量より大きくする。又、下部嵌合部におけるフロントカバー9の下部爪9bはベースカバー7の下部溝7dと嵌合する。図8はフロントカバー9とベースカバー7及びサイドカバー8との係合断面図を示し、ベースカバー7及びサイドカバー8の側部中間部に設けられた係合部7e,8cの外側から挟み込むようにフロントカバー9の側部中間部に設けられた係合部9cを係合させる。
【0011】
このように、ベースカバー7とサイドカバー8の上部及び下部を嵌合により取り付けた後、その前面にフロントカバー9を嵌合と係合により取り付け、最後に図1(a),(b)に示すようにスタンド6の突出した上面6a上にベースカバー7の底面をサイドカバー8の爪と溝との下部嵌合部を挟み込むようにして通常のドライバーでは回すことができない図示しない特殊ねじにより取り付け、筐体が完成する。
【0012】
前記のように形成された筐体を分解しようとする場合、従来の分解時と同様に、図10の矢印5に示すように爪1aと溝2aとの嵌合部に外力を加えることになる。しかしながら、ベースカバー7の上部爪7aの長さ及びフロントカバー9の上部爪9aの長さはそれぞれのカバーの弾性変形量より大きいので、対応した溝から外れることがない。又、スタンド6の突出した上面6a上にベースカバー7の底面をサイドカバー8との下部嵌合部を挟み込むようにして取り付けており、サイドカバー8の下部嵌合部はスタンド6に隠れており、直接指で押すことはできず、またベースカバー7の底面はスタンド6に取り付けられているので変形し難く、さらにサイドカバー8の下部嵌合部もスタンド6とベースカバー7の底面との間に挟まれているので、下部嵌合部も変形し難い。このため、上部嵌合部も下部嵌合部も外力により外れることはなく、分解が難しい嵌合構造を得ることができる。
【0013】
なお、前記実施最良形態においては、例えばベースカバー7とサイドカバー8の上部、下部の嵌合構造においては、ベースカバー7に爪7a,7bを設け、サイドカバー8に溝8a,8bを設けたが、これを逆にしてもよい。他の嵌合構造においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施最良形態による電子機器の筐体におけるスタンドにベースカバーとサイドカバーを取り付けた状態の縦断正面図及びそのC部拡大図である。
【図2】実施最良形態による電子機器の筐体の正面図及び側面図である。
【図3】実施最良形態による電子機器の筐体の斜視図を示す。
【図4】実施最良形態による電子機器の筐体におけるベースカバーとサイドカバーの上部嵌合構造を示す縦断正面図及び斜視図である。
【図5】実施最良形態による電子機器の筐体におけるベースカバーとサイドカバーの下部嵌合構造を示す縦断正面図である。
【図6】実施最良形態による電子機器の筐体におけるベースカバーとサイドカバーの上部嵌合部を嵌合した状態の斜視図である。
【図7】実施最良形態による電子機器の筐体におけるフロントカバーとベースカバーとの嵌合構造を示す縦断正面図及びそのA部拡大図、B部拡大図である。
【図8】実施最良形態による電子機器の筐体におけるフロントカバーとベースカバー及びサイドカバーとの接合構造を示す横断平面図である。
【図9】従来のねじを極力使わない電子機器ケースの嵌合前及び嵌合後における嵌合構造の断面図である。
【図10】従来のねじを極力使わない電子機器ケースの嵌合構造が外力により分解することを説明する断面図である。
【符号の説明】
【0015】
6…スタンド
6a…上面
7…ベースカバー
7a,7b,9a,9b…爪
7c,7d,8a,8b…溝
7e,8c,9c…係合部
8…サイドカバー
9…フロントカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の一方の側面と天面と底面を形成するベースカバーと筐体の他方の側面を形成するサイドカバーとをそれぞれの上部及び下部に設けた爪と溝の嵌合により相互に取り付けるとともに、ベースカバー又はサイドカバーの上部爪の長さはベースカバー及びサイドカバーの弾性変形量より大きくし、筐体の前面を形成するフロントカバーとベースカバーとをそれぞれの上部及び下部に設けた爪と溝の嵌合により相互に取り付けるとともに、フロントカバー又はベースカバーの上部爪の長さはフロントカバー及びベースカバーの弾性変形量より大きくし、かつベースカバーの底面をスタンドの上面上にサイドカバーの爪と溝との下部嵌合部を挟み込むように取り付けたことを特徴とする電子機器の筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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