説明

電子機器システムおよび電子機器システムの起動方法

【課題】信頼性の高い、LSI104およびLSI105との間のデータ転送のキャリブレーションを行う、キャリブレーション制御回路100を有する電子機器システム1を提供することを目的とする。
【解決手段】起動時の周囲温度を基に、それぞれのLSI104およびLSI105のキャリブレーション許可温度範囲を算出し、それぞれのLSI104およびLSI105の温度が、共に、それぞれのLSI104およびLSI105の前記キャリブレーション許可温度範囲内において、キャリブレーションを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の回路と第2の回路とのデータ転送のキャリブレーションを行う、キャリブレーション制御回路を有する電子機器システムおよび電子機器システムの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電子回路から構成される電子機器システムにおいては、回路間でデータ転送が行われることで、複雑なデータ処理を高速で実現している。例えば、コンピュータにおいては、その起動時に、CPUを構成するLSIに、他のLSIからシステムデータ等を、2つのLSI間のデータ転送回路を介して転送することで、CPUが動作可能な状態となる。データ転送の際にはデータエラーを防止するために、実際のシステムデータを転送する前に、キャリブレーション制御回路によりキャリブレーションが行われる。
【0003】
しかし、正常にデータ転送が可能な転送条件は、回路の温度の影響により変動する。このため、キャリブレーション後に、例えば、回路自体の発熱のために回路の温度が大きく上昇すると、データ転送の信頼性が低下することがあった。
【0004】
特開2004−185439号公報には、低温状態からの起動が困難な電子機器システムの不起動を防止するために、起動可能な起動温度になるまで、起動しない温度センサを備えた低温対策システムおよび電子機器システムの起動方法が開示されている。
【0005】
しかし、特開2004−185439号公報に開示された起動方法では、電子機器システムの起動までに時間を要するばかりでなく、実際の定常動作時の温度、すなわち、運用温度は、室温の影響により変動するため、十分にデータ転送の信頼性を確保することができないことがあった。
【特許文献1】特開2004−185439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、信頼性の高いキャリブレーション制御回路を有する電子機器システムおよび信頼性の高いキャリブレーションを行うことのできる電気機器システムの起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の一態様によれば、第1の回路と、第2の回路と、第1の回路と第2の回路との間のデータ転送のキャリブレーションを行うキャリブレーション制御回路とを有する電子機器システムにおいて、キャリブレーション制御回路が、起動時の周囲温度を基に、それぞれの第1の回路および第2の回路のキャリブレーション許可温度範囲を算出し、それぞれの第1の回路および第2の回路の温度が、共に、それぞれの第1の回路および第2の回路のキャリブレーション許可温度範囲内において、キャリブレーションを行うことを特徴とする電子機器システムが提供される。
【0008】
また、本願発明の別の一態様によれば、第1の回路と、第2の回路と、第1の回路と第2の回路との間のデータ転送のキャリブレーションを行うキャリブレーション制御回路とを有する電子機器システムの起動方法であって、キャリブレーション制御回路が、起動時の周囲温度を基に、周囲温度における、それぞれの第1の回路および第2の回路の予想運用温度の情報に基づき、それぞれの第1の回路および第2の回路の予想運用温度を算出し、それぞれの第1の回路および第2の回路の予想運用温度に基づき、それぞれの第1の回路および第2の回路のキャリブレーション許可温度範囲を算出し、キャリブレーション制御回路が、第1の回路および/または第2の回路の温度を昇温および降温可能な温度調整手段により、第1の回路および/または第2の回路の予想運用温度に調整し、それぞれの第1の回路および第2の回路の温度が、共に、それぞれの第1の回路および第2の回路のキャリブレーション許可温度範囲内において、キャリブレーションを行うことを特徴とする電子機器システムの起動方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、信頼性の高いキャリブレーション制御回路を有する電子機器システムおよび信頼性の高いキャリブレーションを行うことのできる電子機器システムの起動方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
<第1の実施の形態>
<電子機器システムの構成>
最初に、図1を用いて、本発明の第1の実施の形態にかかる電子機器システム1の構成について説明する。図1は、本実施の形態にかかる電子機器システム1の構成を示した構成図である。
【0011】
図1に示すように、電子機器システム1は、第1の回路であるLSI104と、第2の回路であるLSI105と、LSI104とLSI105との間のデータ転送を行うデータ転送回路113と、キャリブレーション制御回路100を有するシステムコントローラ101とから構成されている。より具体的には、例えば、LSI104が、ノースブリッジであり、LSI105が、CPU(Central Processing Unit)である。
【0012】
起動時に、第2の回路であるLSI105は、第1の回路であるLSI104から、システムデータ等が転送されることで、システム起動が可能な状態となる。信頼性の高いデータ転送を行うために、最初に、キャリブレーション制御回路100は、データ転送のキャリブレーションを行う。すなわち、キャリブレーション制御回路100は、データ転送回路113を用いて、LSI104からLSI105にテストデータを転送することで、最適転送条件を決定し、その最適転送条件にデータ転送回路113を設定する。例えば、キャリブレーション制御回路100は、データ転送回路113の転送タイミングについて、広範囲のタイミングでデータ転送を行い、正常にデータ転送が可能であったタイミングの上限と下限を求め、その中心値を最適サンプリングポイントとして算出し、データ転送回路113の転送タイミングを最適サンプリングポイントに設定する。
【0013】
ここで、図2に示すように、起動後の時間経過により、第1の回路であるLSI104および第2の回路であるLSI105の温度は上昇し、所定時間が経過すると、それぞれの運用温度に達する。このため、起動時、すなわち図2において時間ゼロでキャリブレーションを行ってしまうと、時間T1においては、LSI104およびLSI105の温度がキャリブレーション時の温度から、それぞれΔT1またはΔT2ずれてしまうばかりでなく、LSI104とLSI105との温度差がΔT3生じる。すると、正常にデータ転送が可能なタイミングの上限と下限が変化するため、最適サンプリングポイントがキャリブレーション時に設定した値から変化してしまう。
【0014】
また、図3に示すように、起動後の時間経過による、回路の温度変化は、同じ回路であっても、毎回、同じではない。図3は、第1の回路における起動後の時間経過による、回路の温度変化の例を示すグラフである。図3において、曲線Aは曲線Bよりも室温が高い場合であり、曲線Aの場合の運用温度は、曲線Bの場合より高い。また、曲線Cは高温負荷動作後の再起動または異常高温後の再起動の場合であり、起動時の温度よりも運用温度が低い。
【0015】
本実施の形態にかかる電子機器システム1のキャリブレーション制御回路100は、上記のような場合であっても、信頼性の高いキャリブレーションを行うことができる。
【0016】
ここで、本実施の形態にかかるキャリブレーション制御回路100を有する電子機器システム1は、図1に示すように、上記で説明した構成要素に加えて、LSI104のための、電源回路102と、冷却ファン109と、発信器112と、LSI104の温度を測定する温度センサ106とを有し、LSI105のための、電源回路103と、冷却ファン110と、発信器111と、LSI105の温度を測定する温度センサ107とを有している。冷却ファン109および110は、各LSIの温度を下げるための降温手段である。
【0017】
電源回路102および103は、各LSIに電力を共有する回路であり、同時に、供給する電圧を制御することで、各LSIの温度を上昇させる加温手段でもある。発信器111および112は、各LSIの動作クロックであると同時に、周波数を制御することで各LSIの温度を上昇させる加温手段でもある。
【0018】
すなわち、電源回路102および103、および、発信器111および112は、本来の機能に加えて、キャリブレーション制御回路100による制御により、各LSIの温度を昇温可能な温度調整手段としての機能も発揮する。そして、キャリブレーション制御回路100は、昇温および降温可能な温度調整手段を制御することで、LSI104および105の温度を調整するが、昇温可能な温度調整手段として電源回路102および103、および/または、発信器111および112を用いることで、ヒーター等の加温専用部材を用いなくともよい。
【0019】
次に、温度センサ106および107は、LSI104およびLSI105のパッケージの内部またはパッケージに隣接配置された、各LSIの温度を測定する温度センサである。また、電子機器システム1は、周囲温度を測定するための温度センサ108を有している。ここで、周囲温度とは、電子機器システム1において発熱源となる種々の電子部品から距離をおいて測定される温度であり、概ね、電子機器システム1が設置されている場所の室温である。
【0020】
<キャリブレーション制御回路の処理>
次に、図4を用いて、本実施の形態にかかる電子機器システム1のキャリブレーション制御回路100によるキャリブレーション処理の流れを説明する。図4は、本形態にかかるキャリブレーション制御回路100による処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【0021】
<ステップS11>
ここでは、起動前の電子機器システム1の各構成要素は、いずれもOFF状態とする。最初に、キャリブレーション制御回路100は温度センサ108から周囲温度の情報を取得する。
【0022】
<ステップS12>
キャリブレーション制御回路100は、周囲温度に対するLSI104およびLSI105の予想運用温度の情報に基づき、それぞれのLSIの予想運用温度を算出する。
【0023】
周囲温度に対するLSI104およびLSI105の予想運用温度の情報は、予め、実測またはシミュレーションにより情報として取得し、例えば、図5に示すように、関数式の形で、例えば、システムコントローラ内のメモリ等に記憶しておく。図5はキャリブレーション制御回路100が、予想運用温度の算出に用いる周囲温度との関係を示すグラフである。図5において、LSI104の予想運用温度は、f1(x)として、LSI105の予想運用温度は、f2(x)として、いずれも、周囲温度の関数で示されている。例えば、周囲温度がTEの場合の、LSI104の予想運用温度は、f1(TE)として、LSI105の予想運用温度は、f2(TE)により算出される。周囲温度に対する予想運用温度の情報は、関数式でなく、表形式のデータ等であってもよい。
【0024】
なお、運用温度は、運用時の電子機器システム1の冷却手段の稼動状況により変化する。例えば、冷却手段として冷却ファンを用いている電子機器システム1においては、冷却ファンの回転数を上げて冷却能力を増加すると運用温度は低下するが、騒音が増加する。しかし、冷却能力が十分でなく、運用温度が高いとLSI104およびLSI105の寿命が短くなることもある。このため、予想運用温度としては、冷却手段が、適度に稼動した状況での運用温度を基準とするとよい。
【0025】
また、運用温度は、図2または図3に示したように一定の値ではなく、LSIの動作状態により変化する場合も多い。すなわち、LSIは、通常負荷の場合より、高負荷の場合には、より高温となり、低負荷の場合には、より低温となる。運用温度が変化する場合には、キャリブレーション制御回路100が、制御に用いる予想運用温度は、運用ワーストケース温度に基づいて算出されることが好ましい。ここで、運用ワーストケース温度とは、電子機器システム1が稼働し、運用されている間のLSIの温度の中で、最も高い温度である。キャリブレーション制御回路100は運用ワーストケース温度に基づいて予想運用温度を算出することで、実際の運用温度が最も高くなった場合でも、信頼性の高いデータ転送が可能となる。
【0026】
運用ワーストケース温度は、LSIの種類により、大きく異なる。多くの汎用LSIでは、80℃前後であるが、高温仕様のLSIでは250℃以上であり、逆に、60℃以下のLSIもある。
【0027】
<ステップS13>
キャリブレーション制御回路100は、算出した予想運用温度に基づき、それぞれの回路のキャリブレーション許可温度範囲を算出する。キャリブレーションは、予想運用温度で実行することが最も好ましい、すなわち、最も信頼性の高いキャリブレーションを実行することができる。しかし、予想運用温度から多少の温度差があったとしても、実用上、信頼性の低下の程度が大きな問題とはならない許容温度範囲がある。キャリブレーション制御回路100が、キャリブレーションを実行する予想運用温度を中心とした許容温度範囲が、キャリブレーション許可温度範囲である。
【0028】
許容温度範囲は、LSIの種類、要求される信頼性等により、大きく異なる。すなわち、LSI104とLSI105では、異なる許容温度範囲である。信頼性の観点からは、前記許容温度範囲が狭いほど、より高信頼性のキャリブレーションが実行できるが、キャリブレーション終了までに長い時間を要する。反対に、前記許容温度範囲が広いほど、キャリブレーション終了までの時間を短縮できるが、キャリブレーションの信頼性がやや低下する。
【0029】
例えば、前記許容温度範囲が、±30℃である場合には、キャリブレーション許可温度範囲は、予想運用温度±30℃となる。
【0030】
なお、キャリブレーション制御回路100は、周囲温度に対するキャリブレーション許可温度範囲を、予め、実測またはシミュレーションにより情報として取得しておくことで、予想運用温度を算出しないで、直接、キャリブレーション許可温度範囲を算出してもよい。
【0031】
<ステップS14>
キャリブレーション制御回路100は、昇温および降温可能な温度調整手段により、LSI104およびLSI105の温度を、図6または図7に示すように、それぞれの予想運用温度に調整する。すなわち、図6に示すように、LSI104またはLSI105の温度が、それぞれの予想運用温度よりも低い場合には、キャリブレーション制御回路100は、それぞれのLSIを、昇温可能な温度調整手段を制御して、昇温する。つまり、キャリブレーション制御回路100は、電源回路の電圧を通常の運用時よりも高くするか、または、発信器の周波数を通常の運用時よりも高くする、あるいは、電源回路の電圧を通常の運用時よりも高くし、同時に、発信器の周波数を通常の運用時よりも高くする。
【0032】
逆に、図7に示すように、LSI104またはLSI105の温度が、それぞれの予想運用温度よりも高い場合には、キャリブレーション制御回路100は、それぞれのLSIを、降温可能な温度調整手段を制御して、冷却する。つまり、キャリブレーション制御回路100は、冷却ファン109および/または冷却ファン110を駆動する。
【0033】
<ステップS15>
キャリブレーション制御回路100は、LSI104およびLSI105の温度が、共に、それぞれのキャリブレーション許可温度範囲になるまで、LSI104およびLSI105の温度を調整する。
【0034】
<ステップS16>
キャリブレーション制御回路100は、LSI104およびLSI105の温度が、共に、それぞれのキャリブレーション許可温度範囲において、キャリブレーションを行う。すなわち、キャリブレーション制御回路100は、図6に示す場合には、時間T3でキャリブレーションを行い、図7に示す場合には、時間T4でキャリブレーションを行う。その結果、データ転送回路113の転送条件は、最適転送条件に設定される。
【0035】
<ステップS17>
システムコントローラ101は、データ転送回路113により、LSI104からLSI105に、システム起動に必要なデータを転送する。
【0036】
<ステップS18>
LSI105が動作することにより、電子機器システム1が起動する。
【0037】
<ステップS19>
電子機器システム1は、起動後、運用が開始される。なお、運用中は、システムコントローラ101が、LSI104およびLSI105が、過熱状態とならないように、すなわち、運用ワーストケース温度を超えないように、冷却ファンを制御する。そして、運用中は、適宜、データ転送回路113により、LSI104からLSI105に、そして、LSI105からLSI104に、処理に必要なデータが転送される。
【0038】
電子機器システム1においては、キャリブレーション制御回路100が、起動時の周囲温度を基に、LSI104およびLSI105のキャリブレーション許可温度範囲を算出し、LSI104およびLSI105の温度が、共に、それぞれのキャリブレーション許可温度範囲内において、キャリブレーションを行っているために、運用中にLSI104およびLSI105の温度が変化しても、キャリブレーション時の温度から大きくずれることがない。このため、電子機器システム1のデータ転送回路113のデータ転送の信頼性は高い、すなわち、キャリブレーション制御回路100のキャリブレーションは信頼性が高い。このため、電子機器システム1のデータ転送回路113は、キャリブレーション制御回路100によるキャリブレーションを行わない場合と比べて、より高速でのデータ転送が可能である。
【0039】
また、キャリブレーション制御回路100が、起動時の周囲温度における、LSI104およびLSI105の予想運用温度の情報に基づき予想運用温度を算出し、その予想運用温度に基づきキャリブレーション許可温度範囲を算出しており、キャリブレーション許可温度範囲の精度が、より高いため、キャリブレーション制御回路100は、より信頼性が高い。
【0040】
さらに、LSI104およびLSI105の温度を昇温および降温可能な温度調整手段により、予想運用温度に調整しているため、キャリブレーション制御回路100は、より短時間でキャリブレーションが可能である。特に、電子機器システム1は、昇温専用の温度調整部材を有しておらず、構造が簡単である。
【0041】
また、キャリブレーション制御回路100は、予想運用温度が、運用ワーストケース温度に基づき算出された温度であるため、LSI104またはLSI105が運用ワーストケース温度に達した場合でも、信頼性が高い
さらに、LSI105は、CPUであるため、特に信頼性の高いデータ転送が要求され、かつ、CPUは他の回路と比較し、発熱量が大きく、起動時と運用時の温度差が大きいために、本実施の形態の電子機器システム1のキャリブレーション制御回路100の効果が顕著である。
【0042】
なお、上記説明では第1の回路および第2の回路がLSIである場合を例に説明したが、LSI以外の各種電子部品、例えば、複数のコンデンサ、抵抗、コイル、IC等を一体化したパッケージモジュール等であってもよい。
【0043】
<第2の実施の形態>
次に、図8用いて、本発明の第2の実施の形態にかかる電子機器システム1Bの構成について説明する。図8は、本実施の形態にかかる電子機器システム1Bの構成を示した構成図である。本実施の形態の電子機器システム1Bの基本構成は、第1の実施の形態の電子機器システム1と、ほぼ同じであるため、同じ構成要素には同じ符号を付し、同じ説明は省略する。
【0044】
図8に示すように、電子機器システム1Bは、第1の回路であるLSI104Bと、第2の回路であるLSI101Bと、LSI104BとLSI101Bとの間のデータ転送を行うデータ転送回路113Bとを有している。より具体的には、LSI104Bが、ノースブリッジであり、LSI101Bがシステムコントローラである。そして、本実施の形態にかかるキャリブレーション制御回路100Bは、LSI101Bの一部により構成されている。
【0045】
すなわち、キャリブレーション制御回路は、キャリブレーション制御回路がキャリブレーションを行う第1の回路または第2の回路のいずれかの一部であってもよい。
【0046】
第1の回路と第2の回路を降温可能な温度調整手段は、公知の種々の冷却方法が使用可能である。電子機器システム1Bは、電子機器システム1と異なり、LSI101Bを降温可能な温度調整手段として、冷却ファンではなく、水冷ポンプ110Bを有し、LSI101Bは水冷可能である。さらには、LSI104Bは降温可能な温度調整手段である冷却ファン等を有しておらず、図示しない空冷フィンによる自然空冷によっている。すなわち、キャリブレーション制御回路が温度を調整する回路は、第1の回路または第2の回路のいずれか一方のみであってもよい。
【0047】
キャリブレーション制御回路100Bのキャリブレーション方法は、キャリブレーション制御回路100のキャリブレーション方法と同様である。
【0048】
本実施の形態にかかる電子機器システム1Bのキャリブレーション制御回路100Bは、第1の実施の形態にかかる電子機器システム1のキャリブレーション制御回路100が有する効果に加えて、キャリブレーション制御回路100Bがキャリブレーションを行うLSI101Bの一部であるため、電子機器システム1Bの構成が簡単である。
【0049】
なお、上記説明のように、本発明の電子機器システムのキャリブレーション制御回路による起動時のキャリブレーション方法、すなわち起動方法は、以下の通りである。
【0050】
1.第1の回路と第2の回路とのデータ転送のキャリブレーション方法であって、起動時の周囲温度を基に、それぞれの前記回路のキャリブレーション許可温度範囲を算出し、それぞれの前記回路の温度が、共に、それぞれの前記キャリブレーション許可温度範囲内において、キャリブレーションを行うことを特徴とする電子機器システムのキャリブレーション方法。
【0051】
2.前記周囲温度における、それぞれの前記回路の予想運用温度の情報に基づき、それぞれの前記回路の前記予想運用温度を算出し、それぞれの前記回路の前記予想運用温度に基づき、それぞれの前記回路の前記キャリブレーション許可温度範囲を算出することを特徴とする前記1に記載の電子機器システムのキャリブレーション方法。
【0052】
3.前記回路の温度を昇温および降温可能な温度調整手段により、少なくとも前記回路のいずれかの温度を前記予想運用温度に調整することを特徴とする前記1または前記2に記載の電子機器システムのキャリブレーション方法。
【0053】
4.前記予想運用温度が、運用ワーストケース温度に基づき算出された温度であることを特徴とする前記1から前記3のいずれか1項に記載の電子機器システムのキャリブレーション方法。
【0054】
5.前記第1の回路または前記第2の回路のいずれかが、CPUであることを特徴とする前記1から前記4のいずれか1項に記載の電子機器システムのキャリブレーション方法。
【0055】
6.第1のLSIと、第2のLSIと、第1のLSIと第2のLSIとの間のデータ転送のキャリブレーションを行うキャリブレーション制御回路とを有する電子機器システムの起動方法であって、キャリブレーション制御回路が、起動時の周囲温度を基に、周囲温度における、それぞれの第1のLSIおよび第2のLSIの予想運用温度の情報に基づき、それぞれの第1のLSIおよび第2のLSIの予想運用温度を算出し、それぞれの第1のLSIおよび第2のLSIの予想運用温度に基づき、それぞれの第1のLSIおよび第2のLSIのキャリブレーション許可温度範囲を算出し、キャリブレーション制御回路が、第1のLSIおよび/または第2のLSIの温度を昇温および降温可能な温度調整手段により、第1のLSIおよび/または第2のLSIの予想運用温度に調整し、それぞれの第1のLSIおよび第2のLSIの温度が、共に、それぞれの第1のLSIおよび第2のLSIのキャリブレーション許可温度範囲内において、キャリブレーションを行うことを特徴とする電子機器システムの起動方法
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1の実施の形態にかかるキャリブレーション制御回路を有する電子機器システムの構成を示した構成図である。
【図2】キャリブレーション後の回路温度変化を示したグラフである。
【図3】キャリブレーション後の回路温度変化を示したグラフである。
【図4】第1の実施の形態にかかるキャリブレーション制御回路による処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態にかかるキャリブレーション制御回路が、予想運用温度の算出に用いる周囲温度との関係を示すグラフである。
【図6】第1の実施の形態にかかるキャリブレーション制御回路による処理を説明するための起動後の回路温度変化を示したグラフである。
【図7】第1の実施の形態にかかるキャリブレーション制御回路による処理を説明するための起動後の回路温度変化を示したグラフである。
【図8】第2の実施の形態にかかるキャリブレーション制御回路を有する電子機器システムの構成を示した構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1、1B…電子機器システム 100、100B…キャリブレーション制御回路 101…システムコントローラ 102、103…電源回路 106、107…温度センサ 109、110…冷却ファン 110B…水冷ポンプ 111、112、112B…発信器 113、113B…データ転送回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路と、
第2の回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路との間のデータ転送のキャリブレーションを行うキャリブレーション制御回路とを有する電子機器システムにおいて、
前記キャリブレーション制御回路が、起動時の周囲温度を基に、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路のキャリブレーション許可温度範囲を算出し、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の温度が、共に、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の前記キャリブレーション許可温度範囲内において、キャリブレーションを行うことを特徴とする電子機器システム。
【請求項2】
前記キャリブレーション制御回路が、前記周囲温度における、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の予想運用温度の情報に基づき、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の前記予想運用温度を算出し、
それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の前記予想運用温度に基づき、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の前記キャリブレーション許可温度範囲を算出することを特徴とする請求項1に記載の電子機器システム。
【請求項3】
前記キャリブレーション制御回路が、前記第1の回路および/または前記第2の回路の温度を昇温および降温可能な温度調整手段により、前記第1の回路および/または前記第2の回路の予想運用温度に調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器システム。
【請求項4】
前記予想運用温度が、運用ワーストケース温度に基づき算出された温度であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器システム。
【請求項5】
第1の回路と、
第2の回路と、
前記第1の回路と前記第2の回路との間のデータ転送のキャリブレーションを行うキャリブレーション制御回路とを有する電子機器システムの起動方法において、
前記キャリブレーション制御回路が、起動時の周囲温度を基に、
前記周囲温度における、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の予想運用温度の情報に基づき、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の前記予想運用温度を算出し、
それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の前記予想運用温度に基づき、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の前記キャリブレーション許可温度範囲を算出し、
前記キャリブレーション制御回路が、前記第1の回路および/または前記第2の回路の温度を昇温および降温可能な温度調整手段により、前記第1の回路および/または前記第2の回路の予想運用温度に調整し、
それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の温度が、共に、それぞれの前記第1の回路および前記第2の回路の前記キャリブレーション許可温度範囲内において、キャリブレーションを行うことを特徴とする電子機器システムの起動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−187470(P2009−187470A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29273(P2008−29273)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390010308)東芝デジタルメディアエンジニアリング株式会社 (192)
【Fターム(参考)】