説明

電子機器及び映像処理方法

【課題】映像を適切に鮮鋭化できる電子機器及び映像処理方法を提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、電子機器は、ヒストグラム算出手段、鮮鋭化手段及び表示制御手段を具備する。ヒストグラム算出手段は、映像フレームに含まれる複数の画素の色差に基づいて、前記複数の画素の内、色相と彩度とによって指定される色範囲に含まれる画素を検出し、前記検出された画素の輝度に基づいて、輝度レベル毎のヒストグラムを算出する。鮮鋭化手段は、前記映像フレームに、前記算出されたヒストグラムに基づいて補正された鮮鋭化処理を施す。表示制御手段は、前記補正された鮮鋭化処理が施された映像フレームを画面に表示するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、映像を鮮鋭化する電子機器及び該機器に適用される映像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像信号は、放送や記憶媒体への格納のためのデータの圧縮によって、信号の一部の情報が失われることがある。そのため例えば、映像を鮮明に見せるための階調補正処理や、映像の鮮鋭さ(シャープネス)を強めるための鮮鋭化処理が提案されている。
【0003】
このような階調補正処理や鮮鋭化処理は、例えば、映像信号に含まれる輝度信号に基づいて実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−204373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、彩度が高い(色が濃い)画像では、データの圧縮によって、映像信号に含まれる画像のテクスチャ成分(高域成分)が失われることがある。そのため、例えば、輝度信号に基づく鮮鋭化処理では、高彩度画像における本来のテクスチャ成分(水平垂直高域情報)が正しく再現されないために、ユーザが精細な画像を観賞することができない可能性がある。
【0006】
本発明は、ユーザが適切に鮮鋭化された映像を観賞できる電子機器及び映像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、電子機器は、ヒストグラム算出手段、鮮鋭化手段及び表示制御手段を具備する。ヒストグラム算出手段は、映像フレームに含まれる複数の画素の色差に基づいて、前記複数の画素の内、色相と彩度とによって指定される色範囲に含まれる画素を検出し、前記検出された画素の輝度に基づいて、輝度レベル毎のヒストグラムを算出する。鮮鋭化手段は、前記映像フレームに、前記算出されたヒストグラムに基づいて補正された鮮鋭化処理を施す。表示制御手段は、前記補正された鮮鋭化処理が施された映像フレームを画面に表示するように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る電子機器の構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態の電子機器に設けられた映像処理部の構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の電子機器によって用いられる色範囲の例を示す図。
【図4】同実施形態の電子機器によって算出されるヒストグラムの例を示す図。
【図5】同実施形態の電子機器によって算出される重み付け係数の例を示す図。
【図6】同実施形態の電子機器によって算出される補正係数の例を示す図。
【図7】同実施形態の電子機器によって表示されるゲイン設定画面の例を示す図。
【図8】同実施形態の電子機器によって実行される鮮鋭化処理の手順の例を示すフローチャート。
【図9】同実施形態の電子機器によって実行されるヒストグラム算出処理の手順の例を示すフローチャート。
【図10】同実施形態の電子機器によって実行される補正係数算出処理の手順の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図1を参照して、一実施形態に係る電子機器の一例としてのデジタルテレビジョン受信機11を説明する。なお、この電子機器は、映像信号を再生する機能を有するパーソナルビデオレコーダ等としても実現されてもよい。
【0010】
デジタルテレビジョン受信機11は、映像表示部14、スピーカ15、操作部16、受光部18、放送信号入力端子48,53、アナログ信号入力端子60、出力端子63,64、チューナ49,54、PSK復調器50、OFDM復調器55、信号処理部51、音声処理部59、グラフィック処理部58、映像処理部62、OSD信号生成部61、制御部65等を備える。
【0011】
また、放送信号入力端子48及び放送信号入力端子53には、それぞれBS/CSデジタル放送受信用アンテナ47及び地上波放送受信用アンテナ52が接続される。受光部18は、リモートコントローラ17によって出力される信号を受信する。
【0012】
制御部65は、デジタルテレビジョン受信機11内の各部の動作を制御する。制御部65は、CPU71、ROM66、RAM67、及び不揮発性メモリ68を備える。ROM66は、CPU71によって実行される制御プログラムを格納する。不揮発性メモリ68は、各種の設定情報及び制御情報を格納する。CPU71は、処理に必要な命令群及びデータをRAM67にロードし、処理を実行する。
【0013】
制御部65には、操作部16による操作情報、もしくは受光部18で受信されるリモートコントローラ17による操作情報が入力される。制御部65は、この操作内容を反映した各部の制御を行う。
【0014】
BS/CSデジタル放送受信用アンテナ47は、衛星デジタルテレビジョン放送信号を受信する。BS/CSデジタル放送受信用アンテナ47は、受信した衛星デジタルテレビジョン放送信号を、入力端子48を介して衛星デジタル放送用のチューナ49に出力する。チューナ49は、この放送信号からユーザが選択しているチャンネルの放送信号を選局する。チューナ49は、選局した放送信号をPSK復調器50に出力する。PSK(Phase Shift Keying)復調器50は、チューナ49により選局された放送信号をデジタルの映像信号及び音声信号に復調する。PSK復調器50は、復調したデジタルの映像信号及び音声信号を信号処理部51に出力する。
【0015】
地上波放送受信用アンテナ52は、地上デジタルテレビジョン放送信号を受信する。地上波放送受信用アンテナ52は、地上デジタルテレビジョン放送信号を、入力端子53を介してチューナ54に出力する。チューナ54は、この放送信号からユーザが選択しているチャンネルの放送信号を選局する。チューナ54は、選局した放送信号をOFDM復調器55に出力する。OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調器55は、チューナ54により選局された放送信号をデジタルの映像信号及び音声信号に復調する。OFDM復調器55は復調したデジタルの映像信号及び音声信号を信号処理部51に出力する。
【0016】
また、信号処理部51には、入力端子60が接続される。この入力端子60は、デジタルテレビジョン受信機11に対して、外部からアナログの映像信号及び音声信号を入力するための端子である。信号処理部51は、入力端子60を介して入力されたアナログの映像信号及び音声信号を、それぞれデジタルの映像信号及び音声信号に変換する。このデジタルの映像信号は、例えば、輝度信号Yと色差信号Cb/Pbと色差信号Cr/Prとを含む。
【0017】
信号処理部51は、変換されたデジタルの映像信号及び音声信号、又はPSK復調器50もしくはOFDM復調器55によって出力されたデジタルの映像信号及び音声信号に対して所定のデジタル信号処理を施す。信号処理部51は、所定のデジタル信号処理を施した映像信号及び音声信号を、グラフィック処理部58及び音声処理部59に出力する。
【0018】
また、信号処理部51は、ヒストグラム算出部69を備える。ヒストグラム算出部69は、映像信号に含まれる輝度信号Y、色差信号Cb/Pb及び色差信号Cr/Prを用いて、映像フレーム毎のヒストグラムを算出する。ヒストグラム算出部69は、算出されたヒストグラムを、グラフィック処理部58を介して映像処理部62に出力する。
【0019】
音声処理部59は、入力されたデジタル音声信号を、スピーカ15で再生可能なアナログ音声信号に変換する。音声処理部59は、このアナログ音声信号をスピーカ15に出力する。スピーカ15は、入力されたアナログ音声信号に基づいて音声を再生する。音声処理部59はさらに、出力端子64を介してアナログ音声信号を外部に導出してもよい。
【0020】
グラフィック処理部58は、信号処理部51から出力されるデジタル映像信号に、OSD(On Screen Display)信号生成部61で生成されるメニュー等のOSD信号を重畳する。グラフィック処理部58は、OSD信号が重畳された映像信号を映像処理部62に出力する。また、グラフィック処理部58は、信号処理部51の出力である映像信号と、OSD信号生成部61の出力であるOSD信号とを選択的に出力してもよい。
【0021】
映像処理部62は、入力されたデジタル映像信号に所定の処理を施す。この所定の処理は、例えば、入力されたデジタル映像信号を鮮鋭化するための鮮鋭化処理である。映像信号は、放送や記憶媒体(BDやDVD等)への格納の際に、圧縮(色圧縮)されることがある。そのため、この鮮鋭化処理では、例えば、圧縮によって失われた映像信号の高域成分(高周波成分)を復元することによって、映像を鮮鋭化する。
【0022】
映像処理部62は、所定の処理が施されたデジタル映像信号を、映像表示部14で表示可能なアナログ映像信号に変換する。映像処理部62は、このアナログ映像信号を映像表示部14に出力する。映像表示部14は、入力されたアナログ映像信号に基づいて映像を表示する。映像処理部62はさらに、出力端子63を介してアナログ映像信号を外部に導出してもよい。
【0023】
図2は、信号処理部51に設けられたヒストグラム算出部69と、映像処理部62とによって、映像信号に鮮鋭化処理を施すための構成の例である。ヒストグラム算出部69と映像処理部62とは、映像信号に対して、映像フレーム毎に鮮鋭化処理を施す。ヒストグラム算出部69と映像処理部62とには、例えば、輝度信号Y、色差信号Cb及び色差信号Crを含む映像信号が入力される。輝度信号Yは、映像フレームに含まれる複数の画素(ピクセルとも称する)に対応する複数の輝度の値Yを含む。色差信号Cb,Crは、映像フレームに含まれる複数の画素に対応する複数の色差の値Cb,Crを含む。また、映像処理部62は、重み付け総和算出部20、補正係数算出部21、フレーム遅延メモリ22、色差変換部23、ゲイン処理部24、最大値検出部25、乗算器26,28、高域検出フィルタ27、加算器29を備える。
【0024】
フレーム遅延メモリ22は、映像処理部62に入力された映像信号を遅延させることによって、映像処理部62内の各部に映像信号が入力されるタイミングを調整する。つまり、フレーム遅延メモリ22は、映像処理部62内の各部で信号や係数等が算出されるタイミングを調整するために用いられる。フレーム遅延メモリ22は、タイミングが調整された色差信号Cb,Cr(Cb’,Cr’)を色差変換部23に出力する。また、フレーム遅延メモリ22は、タイミングが調整された輝度信号Yを高域検出フィルタ27及び加算器29に出力する。
【0025】
色差変換部23は、フレーム遅延メモリ22によって出力された色差信号Cb,Crを用いて、色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)を算出する。色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)は、RGBそれぞれの色の濃さを表す。なお、色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)は、RGBそれぞれの値から輝度信号Yの値が引かれているので負の値を取り得る。色差変換部23は、算出された色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)をゲイン処理部24に出力する。
【0026】
ゲイン処理部24は、色差変換部23によって出力された色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)にゲイン処理を施す。このゲイン処理は、色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)それぞれに対して、効果(増幅)の大きさが異なる。より具体的には、ゲイン処理部24Aは、色差信号(R−Y)に第1ゲイン処理を施す。ゲイン処理部24Bは、色差信号(G−Y)に第2ゲイン処理を施す。ゲイン処理部24Cは、色差信号(B−Y)に第3ゲイン処理を施す。これらゲイン処理の効果の大きさは、例えば、図7を参照して後述するように、ユーザによって設定される。ゲイン処理部24A,24B,24Cは、ゲイン処理が施された色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)を最大値検出部25に出力する。
【0027】
最大値検出部25は、ゲイン処理部24によって出力された色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)と0の内の最大値を、色差信号に基づく鮮鋭化補正信号(鮮鋭化補正値とも称する)に設定する。上述のように、色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)は負の値も取り得る。そのため、鮮鋭化補正信号が負の値に設定されないようにするためのリミッタとして、0が用いられる。したがって、色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)の値がすべて負の値である場合には、色差信号に基づく鮮鋭化補正信号に0が設定される。最大値検出部25は、設定された色差信号に基づく鮮鋭化補正信号を乗算器26に出力する。
【0028】
また、高域検出フィルタ(ハイパスフィルタ)27は、フレーム遅延メモリ22によって出力された輝度信号Yをフィルタリングすることによって、輝度信号Yの内の高域成分を含む輝度高域信号を検出する。高域検出フィルタ27は、輝度信号Yに基づいて、映像フレーム内の輪郭(エッジ)のような高域成分を検出する。高域検出フィルタ27は、検出された輝度高域信号を乗算器28に出力する。
【0029】
この高域検出フィルタ27によって検出された輝度高域信号を輝度信号Yに加算することによって、映像信号の鮮鋭さ(シャープネス)を強めることができる。
さらに、最大値検出部25によって設定された色差信号に基づく鮮鋭化補正信号と輝度高域信号とを乗算した値を、輝度信号Yに加算することによって、RGB各色の濃さに基づいて補正された鮮鋭化処理を映像信号に施すことができる。つまり、鮮鋭化補正信号と輝度高域信号とを乗算した値を用いることにより、RGB各色の濃さ(彩度)を考慮して、映像信号の鮮鋭さを強めることができる。処理対象の映像フレームの彩度に応じて、輝度信号の高域成分(輝度高域信号)を鮮鋭化することにより、映像のテクスチャの精細さを復元することができる。これにより例えば、鮮やかな色彩の花(例えば、ハイビスカス)の葉脈や果物(例えば、イチゴや林檎)の表面の質感、濃い色の毛糸の柔らかさのような質感等を表現することができる。
【0030】
なお、RGB各色の濃さに基づいて補正された鮮鋭化処理では、鮮鋭化によって好ましくない映像が生成されることがある。例えば、赤(R)成分の強調により人物の顔のディテールが強調された場合、肌の赤みが強調されてしまい、ユーザが、映像に対して不自然さを感じたり、不快感を覚える可能性がある。そのため、本実施形態では、処理対象の映像フレームに含まれる複数の画素の色差に基づいて、それら複数の画素の内、色相と彩度とによって指定された色範囲に含まれる画素を検出し、検出された画素の輝度に基づいて輝度ヒストグラムを算出する。そして、算出された輝度ヒストグラムを用いて、映像信号に施される鮮鋭化処理を補正する。
【0031】
具体的には、ヒストグラム算出部69は、不揮発性メモリ68等に予め格納された色範囲情報69Aに基づいて、映像フレーム毎に、指定された色範囲に含まれる画素の輝度ヒストグラムを算出する。この色範囲情報69Aは、色相の範囲と彩度の範囲とによって指定される色範囲を示す。
【0032】
図3は、色範囲情報69Aによって指定される色範囲の例を示す。色範囲は、例えば、色相と彩度とを表す円30に含まれる領域である。図3に示す例では、縦軸が色差信号Crの値を示し、横軸が色差信号Cbの値を示す。また、色相(Hue)が角度で表され、彩度(Saturation)が円30の中心からの距離で表される。したがって、角度の変化によって色相が変化し、円の中心30Aからの距離の変化によって彩度が変化する。
【0033】
色範囲は、色相の範囲と彩度の範囲によって決定される。例えば、色範囲情報69Aによって、
a≦色相≦b
c≦彩度≦d
が指定されている場合、色範囲31が決定される。なお、色範囲31(すなわち、色相の範囲及び彩度の範囲)は、例えば設計者によって予め設定される。また、色範囲31は、例えば、操作部16やリモートコントローラ17を用いて、ユーザによって設定される。なお、色範囲31は、表示される映像の内容や映像を観賞するユーザの嗜好等に応じて変更されてもよい。
【0034】
ヒストグラム算出部69は、色差信号Cb,Crを用いて、処理対象の映像フレームに含まれる画素の内、指定された色範囲31に含まれる画素を検出する。そして、ヒストグラム算出部69は、検出された画素に対応する輝度Yを用いて、輝度レベル1〜nそれぞれの画素数D(1)〜D(n)を示すヒストグラムを算出する。ヒストグラム算出部69は、算出されたヒストグラムを重み付け総和算出部20に出力する。
【0035】
図4は、ヒストグラム算出部69によって算出されるヒストグラムの例を示す。ヒストグラムは、輝度レベル1〜nそれぞれに対応する画素数D(1)〜D(n)を示す。この画素数D(1)〜D(n)は、ヒストグラム値D(1)〜D(n)とも称する。図4に示すヒストグラムでは、処理対象の映像フレームに含まれる全ての画素の内、指定された色範囲31に含まれる画素の、輝度レベルに関する分布が示される。
【0036】
重み付け総和算出部20は、ヒストグラム算出部69によって算出されたヒストグラムと重み付け係数情報20Aと用いて、輝度レベル1〜nに対応するヒストグラムの値(画素数)D(1)〜D(n)の重み付け総和Sを算出する。重み付け係数情報20Aは、例えば、不揮発性メモリ68等に格納されている。
【0037】
図5は、重み付け係数情報20Aによって示される、輝度レベルと重み付け係数Wとの関係の例を示す。重み付け係数Wは、例えば、高い輝度レベルに対して、大きく設定される。図5に示す例では、輝度レベルがしきい値TH未満である場合、重み付け係数W(すなわち、重み付け係数W(1)〜W(TH−1))には、輝度レベルの値に比例して増加する値(例えば、0.0から1.0)が設定される。また、輝度レベルがしきい値TH以上である場合、重み付け係数W(すなわち、重み付け係数W(TH)〜W(n))には、最大値(例えば、1.0)が設定される。
【0038】
重み付け総和算出部20は、輝度レベル1〜nに対応するヒストグラム値D(1)〜D(n)それぞれに、輝度レベル毎の重み付け係数W(1)〜W(n)をかけることによって、重み付けヒストグラム値D’(1)〜D’(n)を算出する。そして、重み付け総和算出部20は、重み付けヒストグラム値D’(1)〜D’(n)の総和(重み付け総和)Sを算出する。この重み付け総和Sは、指定された色範囲に含まれる画素の面積に近似した値と云える。重み付け総和算出部20は、算出された総和Sを補正係数算出部21に出力する。
【0039】
補正係数算出部21は、重み付け総和算出部20によって出力された総和Sと補正係数情報21Aとを用いて、処理対象の映像フレームに対応する補正係数を算出する。つまり、補正係数算出部21は、補正係数情報21Aを用いて、算出された総和Sに対応する補正係数を算出する。そして、補正係数算出部21は、算出された補正係数を乗算器26に出力する。
【0040】
図6は、補正係数情報21Aによって示される、ヒストグラムを用いて算出した値と補正係数との関係の例を示す。このヒストグラムを用いて算出した値は、上述のように、例えば、ヒストグラムD(1)〜D(n)と重み付け係数W(1)〜W(n)とを用いて算出された重み付け総和Sである。また、補正係数は、色差信号に基づく鮮鋭化補正信号を増幅又は抑制するための係数である。
【0041】
補正係数は、例えば、ヒストグラムを用いて算出した値(すなわち、重み付け総和S)が大きいほど、小さく設定される。これは例えば、指定された色範囲に含まれる画素の数が多いほど、色差信号に基づく鮮鋭化補正信号を抑制するためである。つまり、処理対象の映像フレーム内において、指定された色範囲に含まれる画素の面積が大きい場合、補正係数によって色差信号に基づく鮮鋭化補正信号が抑制される。例えば、肌色に対応する色範囲が指定され、処理対象の映像フレーム内に人物の顔が大きく写っている場合(例えば、人物の顔のアップが写っている場合)には、肌の赤み等が強調されないように、補正係数によって色差信号に基づく鮮鋭化補正信号が抑制される。また、例えば、肌色に対応する色範囲が指定され、処理対象の映像フレーム内に人物の顔が小さく写っている場合(例えば、一人の人物の顔が遠方に写っている場合)には、肌の赤み等が強調されても、映像を観賞するユーザが違和感を覚える可能性は低い。そのため、色差信号に基づく鮮鋭化補正信号が抑制されない。
【0042】
図6に示す例では、重み付け総和SがE未満である場合、補正係数Gが算出される。重み付け総和SがE以上、且つF未満である場合、重み付け総和Sの増加に比例してGからHまで減少する補正係数が算出される。また、重み付け総和SがF以上である場合、補正係数Hが算出される。なお、G>H,F>Eである。このように、補正係数は、重み付け総和Sが大きいほど小さく設定される。補正係数は、例えば、0から2までの値である。
【0043】
次いで、乗算器26は、最大値検出部25によって出力された色差信号に基づく鮮鋭化補正信号と、補正係数算出部21によって出力された補正係数とを乗算することによって、最適な鮮鋭化補正信号を算出する。換言すると、乗算器26は、補正係数を用いて、色差信号に基づく鮮鋭化補正信号を、指定された色範囲に含まれる画素が少ない場合に増幅し、指定された色範囲に含まれる画素が多い場合に抑制することによって、最適な鮮鋭化補正信号を算出する。乗算器26は、算出された最適な鮮鋭化補正信号を乗算器28に出力する。
【0044】
乗算器28は、高域検出フィルタ27によって出力された輝度高域信号と、乗算器26によって出力された最適な鮮鋭化補正信号とを乗算することによって、鮮鋭化値を算出する。そして、乗算器28は、算出された鮮鋭化値を加算器29に出力する。
【0045】
加算器29は、乗算器28によって出力された鮮鋭化値を、フレーム遅延メモリ22によって出力された輝度信号Yに加算することによって、輝度信号Y’を算出する。算出された輝度信号Y’と色差信号Cb’,Cr’(フレーム遅延メモリ22によって遅延された色差信号Cb,Cr)とは、映像表示部14に出力される。映像表示部14は、算出された輝度信号Y’と色差信号Cb’,Cr’とを用いることによって、適切に鮮鋭化された映像を画面に表示することができる。
【0046】
以上の構成により、映像信号に含まれるRGB各色の濃さに基づいて、圧縮処理等によって減衰した映像信号の高域成分を鮮鋭化することができる。そして、例えば、R成分の鮮鋭さが強められ、人物の顔の赤み等が強調され過ぎてしまうような場合には、指定された色範囲に含まれる画素の輝度ヒストグラムに基づいて、鮮鋭化の効果の大きさを調整する。これにより、例えば、人物の顔の赤み等が強調され過ぎてしまうことが抑制されるので、適切に鮮鋭化された映像を画面に表示することができる。
【0047】
また、図7は、ゲインを設定するための設定画面の例を示す。ユーザは、設定画面81,82,83,84を用いて、RGBそれぞれのゲインを設定する。ユーザは、例えば、デジタルテレビジョン受信機11に設けられた操作部16やリモートコントローラ17を用いて、ゲインを設定するための操作(入力)を行う。また、これら設定画面81,82,83,84に対応する映像信号は、例えば、OSD信号生成部61によって生成される。以下では、R(赤)のゲインを設定する例について示しているが、G(緑)のゲイン及びB(青)のゲインに関しても同様の方法で設定することができる。
【0048】
まず、ユーザは、各種の設定を開始するための設定画面81を用いて、カラーテクスチャー設定を行うためのボタン81Aを選択する。ボタン81Aが選択されたことに応じて、カラーテクスチャー設定画面82が表示される。なお、設定画面81は、例えば、ユーザによる要求に応じて画面に表示される。
【0049】
カラーテクスチャー設定画面82は、復元モード、Rゲイン、Gゲイン、及びBゲインそれぞれを設定するためのボタン82A,82B,82C,82Dを含む。「復元モード」ボタン82Aは、カラーテクスチャーを復元するモードを選択するためのボタンである。「Rゲイン」ボタン82Bは、Rのゲインを設定するためのボタンである。「Gゲイン」ボタン82Cは、Gのゲインを設定するためのボタンである。「Bゲイン」ボタン82Dは、Bのゲインを設定するためのボタンである。そして、ユーザが「Rゲイン」ボタン82Bを選択した場合、Rゲイン設定画面83が表示される。
【0050】
Rゲイン設定画面83は、「オート」ボタン83Aと「手動」ボタン83Bとを含む。「オート」ボタン83Aは、Rゲインを自動的に設定するためのボタンである。「手動」ボタン83Bは、Rゲインを手動で設定するためのボタンである。ユーザが「手動」ボタン83Bを選択した場合には、Rゲイン手動設定画面84が表示される。
【0051】
Rゲイン手動設定画面84は、Rゲインを設定するためのスライドバー84A,84Bを含む。Rゲイン手動設定画面84では、ユーザがつまみ84Bをスライドさせることによって、Rゲインの値が設定(変更)される。
【0052】
以上により、Rゲインの値を設定することができる。ゲイン処理部24Aは、設定されたRゲインの値に基づいて色差信号(R−Y)にゲイン処理を施す。また、同様にして、Gゲインの値及びBゲインの値が設定されるので、ゲイン処理部24B,24Cは、設定されたGゲインの値に基づいて色差信号(G−Y)にゲイン処理を施し、設定されたBゲインの値に基づいて色差信号(B−Y)にゲイン処理を施す。
【0053】
次いで、図8に示すフローチャートを参照して、ヒストグラム算出部69と映像処理部62とによって実行される鮮鋭化処理の手順について説明する。
【0054】
まず、ヒストグラム算出部69は、色範囲情報69Aを読み出す(ブロックB11)。色範囲情報69Aは、色相の範囲と彩度の範囲とによって指定される色範囲を示す。ヒストグラム算出部69は、色範囲情報69Aを用いて、指定された色範囲に対応する画素の輝度ヒストグラムを算出する(ブロックB12)。このヒストグラム算出処理については、図9のフローチャートを参照して後述する。
【0055】
次いで、重み付け総和算出部20は、算出された輝度ヒストグラムを用いて、輝度レベル毎のヒストグラム値(画素数)の重み付け総和Sを算出する(ブロックB13)。そして、補正係数算出部21は、算出された重み付け総和Sに基づいて、補正係数を算出する(ブロックB14)。この補正係数算出処理については、図10のフローチャートを参照して後述する。
【0056】
また、色差変換部23は、色差信号Cb,Crを用いて、色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)を算出する(ブロックB15)。色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)は、RGBそれぞれの色の濃さを表す。ゲイン処理部24は、算出された色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)のそれぞれにゲイン処理を施す(ブロックB16)。このゲイン処理では、色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)それぞれに対して、効果(増幅)の大きさが異なる処理が施される。そして、最大値検出部25は、ゲイン処理が施された色差信号(R−Y),(G−Y),(B−Y)と0の内の最大値を、色差信号に基づく鮮鋭化補正信号(鮮鋭化補正値)に決定する(ブロックB17)。乗算器26は、決定された色差信号に基づく鮮鋭化補正信号と補正係数とを乗算することによって、最適な鮮鋭化補正信号を算出する(ブロックB18)。
【0057】
高域検出フィルタ27は、輝度信号Yをフィルタリングすることによって、輝度信号Yの内の高域成分を含む輝度高域信号を検出する(ブロックB19)。そして、乗算器28は、輝度高域信号と最適な鮮鋭化補正信号とを乗算した値を算出し、加算器29は、乗算器28によって算出された値を輝度信号Yに加算することによって、輝度信号Y’を算出する(ブロックB20)。そして、映像表示部14は、算出された輝度信号Y’と色差信号Cb’,Cr’(フレーム遅延メモリ22によって遅延された色差信号Cb,Cr)とを用いることにより、適切に鮮鋭化された映像を画面に表示する。なお、ブロックB15からブロックB20までの処理は、例えば、画素毎に実行される。
【0058】
また、図9のフローチャートは、ヒストグラム算出部69によって実行されるヒストグラム算出処理の手順を示す。ヒストグラム算出部69は、映像フレーム毎にヒストグラムを算出する。
まず、ヒストグラム算出部69は、輝度信号Yと色差信号Cb,Crとを用いて、処理対象の映像フレームに含まれる画素の内、先頭の画素を処理対象の画素に設定する(ブロックB31)。そして、ヒストグラム算出部20は、処理対象の画素の色差信号Cb,Crに基づいて、当該画素が色範囲情報69Aによって示される色範囲31内にあるか否かを判定する(ブロックB32)。処理対象の画素が指定された色範囲31内にある場合(ブロックB32のYES)、ヒストグラム算出部69は、処理対象の画素の輝度に対応する輝度レベルのヒストグラム値Dに1を加える(ブロックB33)。
【0059】
ブロックB33の処理の後、又は処理対象の画素が指定された色範囲31外にある場合(ブロックB32のNO)、ヒストグラム算出部69は、処理対象の映像フレーム内に、後続する画素があるか否かを判定する(ブロックB34)。後続する画素がある場合(ブロックB34のYES)、ヒストグラム算出部69は、その後続する画素を、新たな処理対象の画素に設定する(ブロックB35)。そして、ブロックB32に戻り、新たに設定された処理対象の画素に対して処理を実行する。一方、後続する画素がない場合(ブロックB34のNO)、処理を終了する。
以上の処理により、色範囲31内に含まれる画素に関する輝度ヒストグラムが算出される。
【0060】
次いで、図10のフローチャートは、補正係数算出処理の手順を示す。補正係数算出処理では、算出された輝度ヒストグラムを用いて、補正係数が算出される。
まず、重み付け総和算出部20は、輝度レベル1〜nに対応するヒストグラム値D(1)〜D(n)それぞれに、輝度レベル毎の重み付け係数W(1)〜W(n)をかけることによって、重み付けヒストグラム値D’(1)〜D’(n)を算出する(ブロックB41)。重み付け総和算出部20は、重み付けヒストグラム値D’(1)〜D’(n)の総和Sを算出する(ブロックB42)。そして、補正係数算出部21は、補正係数情報21Aを用いて、算出された総和Sに対応する補正係数を算出する(ブロックB43)。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザが適切に鮮鋭化された映像を観賞できる。映像処理部62は、映像信号に含まれるRGB各色の濃さに基づいて、圧縮処理等によって減衰した映像信号の高域成分を鮮鋭化する。そして、例えば、R成分の鮮鋭さが強められ、人物の顔の赤み等が強調され過ぎてしまうような場合には、指定された色範囲に含まれる画素の輝度ヒストグラムに基づいて、鮮鋭化の効果の大きさを調整する。これにより、例えば、人物の顔の赤み等が強調され過ぎてしまうことが抑制されるので、適切に鮮鋭化された映像を画面に表示することができる。
【0062】
なお、本実施形態の鮮鋭化処理の手順は全てソフトウェアによって実行することができる。このため、鮮鋭化処理の手順を実行するプログラムを格納したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じてこのプログラムを通常のコンピュータにインストールして実行するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に実現することができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
20…重み付け総和算出部、20A…重み付け係数情報、21…補正係数算出部、21A…補正係数情報、22…フレーム遅延メモリ、23…色差変換部、24…ゲイン処理部、25…最大値検出部、26,28…乗算器、27…高域検出フィルタ、29…加算器、62…映像処理部、69…ヒストグラム算出部、69A…色範囲情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像フレームに含まれる複数の画素の色差に基づいて、前記複数の画素の内、色相と彩度とによって指定される色範囲に含まれる画素を検出し、前記検出された画素の輝度に基づいて、輝度レベル毎のヒストグラムを算出するヒストグラム算出手段と、
前記映像フレームに、前記算出されたヒストグラムに基づいて補正された鮮鋭化処理を施す鮮鋭化手段と、
前記補正された鮮鋭化処理が施された映像フレームを画面に表示するように制御する表示制御手段とを具備する電子機器。
【請求項2】
前記鮮鋭化手段は、前記算出されたヒストグラムと前記輝度レベル毎の重み付け係数とを乗算した値の総和を算出し、前記算出された総和に対応する補正係数を用いて、前記映像フレームに前記補正された鮮鋭化処理を施す請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記鮮鋭化手段は、前記複数の画素の輝度の高域成分を検出し、前記複数の画素の色差にゲイン処理を施し、前記ゲイン処理が施された色差を用いて、色差に基づく鮮鋭化補正値を算出し、前記算出されたヒストグラムに基づいて補正係数を算出し、前記輝度の高域成分と前記色差に基づく鮮鋭化補正値と前記補正係数とを乗算した値と、前記複数の画素の輝度とを加算することによって、前記補正された鮮鋭化処理が施された映像フレームを生成し、
前記表示制御手段は、前記生成された映像フレームを前記画面に表示するように制御する請求項1記載の電子機器。
【請求項4】
前記鮮鋭化手段は、前記算出されたヒストグラムと前記輝度レベル毎の重み付け係数とを乗算した値の総和を算出し、前記算出された総和に対応する前記補正係数を算出する請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
前記ゲイン処理の効果の大きさを設定する第1入力手段をさらに具備する請求項3記載の電子機器。
【請求項6】
前記色範囲を指定する色相と彩度とを設定する第2入力手段をさらに具備する請求項1乃至請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
映像フレームに含まれる複数の画素の色差に基づいて、前記複数の画素の内、色相と彩度とによって指定される色範囲に含まれる画素を検出し、前記検出された画素の輝度に基づいて、輝度レベル毎のヒストグラムを算出するヒストグラム算出手段と、
前記複数の画素の色差に施されるゲイン処理の効果の大きさを設定する入力手段と、
前記複数の画素の色差に前記設定された効果の大きさでゲイン処理を施し、前記ゲイン処理が施された色差及び前記算出されたヒストグラムに基づいて補正された鮮鋭化処理が施された映像フレームを生成する鮮鋭化手段と、
前記生成された映像フレームを画面に表示するように制御する表示制御手段とを具備する電子機器。
【請求項8】
前記色範囲を指定する色相と彩度とを設定する第2入力手段をさらに具備する請求項7記載の電子機器。
【請求項9】
映像フレームに含まれる複数の画素の色差に基づいて、前記複数の画素の内、色相と彩度とによって指定された色範囲に含まれる画素を検出し、前記検出された画素の輝度に基づいて、輝度レベル毎のヒストグラムを算出し、
前記映像フレームに、前記算出されたヒストグラムに基づいて補正された鮮鋭化処理を施し、
前記補正された鮮鋭化処理が施された映像フレームを画面に表示するように制御する映像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−45410(P2013−45410A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184928(P2011−184928)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】