説明

電子機器収納筐体の扉構造

【課題】筐体への着脱が容易で、閉鎖位置では取り外し不可能となり、また一種類で右開き用、左開き用を兼用し、開き方向を容易に変更できる扉構造を提供する。
【解決手段】扉体2を持って、係合開口39の位置を回転羽根13の支持板27と扉係合部材14の高さ位置に合わせ、前板8の前面側を回転羽根13の前板密着面25に沿わせて滑らせながら側板10を側板密着面26に向けて押し込むと、側板10が側板密着面26に当接し、回転羽根13が縦軸20中心に適宜回転して、前板8が前板密着面25に、また側板10が側板密着面26に、それぞれ密着すると同時に、係合開口39内に支持板27と扉係合部材14が受け入れられる。扉体2を下降させれば、係合開口39の上縁対応部が、扉係合部材14と回転羽根13との間の前板挟持間隙、側板挟持間隙に落ち込んで、扉体2とヒンジ11とが係合し、筐体1への扉体2の装着が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンピュータのサーバーラックのような電子機器を収納する筐体の扉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体の開口部の開閉のため回転自在な扉が設けられた電子機器において、扉の着脱を、工具を用いずに簡単に行うことができる扉の構造が、特許文献1に記載されている。この電子機器は、前面を開口した電子機器本体の開口部の上側面に上ヒンジ、下側面に下ヒンジが取り付けられ、各々のヒンジには上ヒンジ軸、下ヒンジ軸が上側に向けて溶接(またはかしめ、ねじ止め等)により固定されている。扉の上下面の同軸上に上ヒンジ穴と下ヒンジ穴が設けられる。扉を設置位置よりやや上に持ち上げた状態で、上ヒンジ穴に、上ヒンジ軸を、下ヒンジ穴に、下ヒンジ軸を各々位置合わせし、扉を設置高さ位置に下げることにより、ヒンジ軸をヒンジ穴に挿入すれば、回転軸が形成され扉の片開きが可能となる。電子機器本体の開口部の下部には、扉が閉じた状態で、扉の下枠の上側面とオーバラップして扉の上方向の移動を阻止するストッパが設けられる。このため、扉が閉じた状態で、扉を上方向に動かせないので、ヒンジ穴がヒンジ軸から抜けず、扉が電子機器本体から外れる事はない。扉の下枠とストッパとのオーバラップが外れる位置以上に扉を開いた後、扉を持ち上げることで工具を使用せずヒンジ穴をヒンジ軸から抜いて、扉を電子機器本体から取外すことができる。
また、特別なヒンジや追加部品を必要とせず、1種類の扉を右開き用と左開き用に兼用することができる電気電子機器収納用キャビネットが特許文献2に記載されている。このキャビネットは、キャビネット本体に、上下複数のヒンジによって扉を枢着した電気電子機器収納用キャビネットである。キャビネット本体の上下のヒンジ取り付け位置をキャビネット本体の上下端部から等距離とし、扉の上下のヒンジ取り付け位置も扉の上下端部から等距離とする。扉はキャビネット本体よりも若干小さく形成しておき、扉の下面がキャビネット設置面と接触しないようにする。また扉の上端部に隙間塞部材を着脱自在に装着し、扉の上端からキャビネット本体が見えないようにする。キャビネット本体開口部には左右両側の一方にヒンジ金具が配置される。一方、扉の縁部には、ヒンジ金具に対応するヒンジ受け金具が配置される。上端のヒンジ金具は、下方へ突出した軸を有し、下端のヒンジ金具は、上方へ突出した軸を有し、軸はそれぞれヒンジ受け金具に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−312086号公報
【特許文献2】特開2009−105113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のいずれの扉構造においても、扉を筐体に装着する際には、筐体側のヒンジ軸と扉側の受け金具の軸孔とを位置合わせして、ヒンジ軸を軸孔に挿入する必要がある。この際の位置合わせは、ガイドとなるものが存在しない上に、上下の2箇所の軸と軸孔という小さな部材間で同時に行わなければならないから、必ずしも容易ではない。
したがって、この出願に係る発明は、筐体に対する着脱が容易で、閉鎖位置では扉体の取り外しが不可能となり、また一種類の扉を右開き用、左開き用に兼用することができ、筐体の設置現場において任意に開き方向を変更することができる扉構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するためのこの出願に係る発明の第1の扉構造は、内部に電子機器を収納し、前面側に開口部7を有する筐体1と、閉鎖時に筐体1の開口部7を閉塞する扉体2と、扉体2を筐体1に枢支する上下少なくとも2つのヒンジ11とを具備する。筐体1は、開口部7の周囲に上下の横枠3,4と左右の縦枠5、6とを有する。扉体2は、筐体1の開口部7を閉塞することができる矩形の前板8と、閉鎖時にこの前板8の左右側縁から筐体1の奥行き方向後方へ直角に延びる左右側板9,10とを有する。ヒンジ11は、扉体2を筐体1の左右いずれかの縦枠5,6に枢支する。ヒンジ11は、筐体1の一方の縦枠5,6に固着される台座12と、この台座12に枢支される回転羽根13と、回転羽根13に取り付けられる扉係合部材14とを具備する。回転羽根13は扉体2を吊支する。扉係合部材14は、回転羽根13に扉体2を着脱自在に結合する。回転羽根13は、互いにほぼ直角に接合する第1及び第2の翼片22,23と、両翼片の接合部に設けられる枢支部24と、両翼片22,23の対向内側面25,26間を接続する支持板27とを具備する。枢支部24は、台座12との間に縦軸20を貫通させて台座12に枢支される。支持板27は、両翼片22,23の直角に向き合う内側面25,26間を水平に架橋するように両翼片22,23の上下方向中央に設けられる。第1の翼片22の内側面25は、扉体2の前板8の前面と密着する前板密着面となり、第2の翼片23の内側面26は、扉体2の左右いずれかの側板9,10の外面に密着する側板密着面となる。扉係合部材14は、回転羽根13の支持板27上に設けられ、前板密着面25との間に前板8の板厚に対応する前板挟持間隙33を形成すると共に、側板密着面25との間に側板10の板厚に対応する側板挟持間隙34を形成する形状を有する。扉体2は、ヒンジ11に対応する高さ位置の一方の側縁に係合開口39を有する。係合開口39は、回転羽根13の支持板27と扉係合部材14とを受け入れることができるように、側板10と前板8に連続して形成される。係合開口39に、回転羽根13の支持板27と扉係合部材14とを受け入れ、前板挟持間隙33と側板挟持間隙34に、それぞれ前板8又は側板10における係合開口39の上縁部を落とし込むことによって、扉体2を回転羽根13に吊り止めることができるように構成される。
【0006】
本発明の第2の扉構造は、上記の第1の扉構造において、ヒンジ11を構成する台座12と回転羽根13の組立体を上下転倒させることにより、ヒンジ11の取り付け位置を筐体1の左右に変更可能に構成し、扉係合部材14を回転羽根13の支持板27に対して着脱自在とし、筐体1に対するヒンジ11の左右取り付け位置の変更に対応して、扉係合部材14を支持板27の上面となる側に選択的に取り付け可能に構成することができる。
【0007】
本発明の第3の扉構造は、上記の第1の扉構造において、ヒンジ11を構成する台座12は、筐体の一方の縦枠5,6の前面に固着される取り付け板15と、固着状態において縦枠5,6の外縁に沿うように、取り付け板15の一端から直角に前方へ起立する吊り板16とを具備する。吊り板16は、固着状態において縦枠5,6の外方側に面する外側面17と、その反対側の内側面18とを有し、この内側面18から突出する抜け止め突起19と、前端縁に沿って縦軸20を貫通させて回転羽根13の枢支部24を枢支する軸挿部21とをさらに具備する。回転羽根13の第2の翼片23は、側板密着面26の反対側に、閉鎖位置において吊り板16の内側面18に当接可能な当接面28を有すると共に、吊り板16の抜け止め突起19を側板密着面26側へ突出させるように貫通させる貫通孔29を有する。当接面28が吊り板16の内側面18に当接した閉鎖位置において、回転羽根13の第1の翼片22の前板密着面25が筐体1の前面と平行に配置されて、扉体2が筐体1の開口部7を閉塞するように構成される。扉体2の一方の側板10は、ヒンジ11の回転羽根13に吊られたときに第2の翼片23の貫通孔29に連続する貫通孔48を具備し、閉鎖位置において吊り板16の抜け止め突起19が貫通孔29,48を貫通することにより、扉体2がヒンジ11から離脱不可能となるように構成される。
【0008】
本発明の第4の扉構造は、上記の第1の扉構造において、扉体2における前板8の他方の側縁部に装着されるロックハンドル装置41と、筐体1における他方の縦枠6,5の前面に固着される受け金具42とをさらに具備する。ロックハンドル装置41は、前板8の前方から施解錠操作可能なハンドル44を具備する本体43と、ハンドル44の施解錠操作に応じて上下動可能に前板8の裏面側に上下方向に延びるように設けられ上下端に受け金具42に係脱可能な掛け金具46を有するロッド45とを具備する。扉体2は、前板8の他方の側縁における上下方向中央部に、ロックハンドル44の本体43を上下方向変更自在に嵌合させるための取り付け開口49を有する。筐体1における左右の縦枠5,6の同高さ位置には、選択的にヒンジ11の台座12又は受け金具42をねじ止めするためのボルト孔47が形成される。
【発明の効果】
【0009】
この出願に係る発明の第1の扉構造によれば、扉体2を筐体1に装着する際に、扉体2を持って、係合開口39の位置を回転羽根13の支持板27と扉係合部材14の高さ位置に合わせ、例えば前板8の前面側を回転羽根13の前板密着面25に沿わせるよう滑らせながら側板10を側板密着面26に向けて押し込むと、側板10が側板密着面26に当接し、回転羽根13が縦軸20中心に適宜回転して、前板8が前板密着面25に、また側板10が側板密着面26に、それぞれ密着すると同時に、係合開口39内に支持板27と扉係合部材14が受け入れられる。この状態で扉体2をわずかに下降させれば、前板8と側板10における係合開口39の上縁対応部がそれぞれ前板挟持間隙33、側板挟持間隙34に落ち込んで、扉体2とヒンジ11とが係合し、扉体2の装着が容易に完了する。
【0010】
本発明の第2の扉構造によれば、一種類の扉を右開き用、左開き用に兼用することができ、筐体1の設置現場において任意に扉体2の開き方向を変更することができる。
【0011】
本発明の第3の扉構造によれば、扉体2の閉鎖位置において、ヒンジ11における吊り板16の抜け止め突起19が、扉体2の側板10に形成された貫通孔48を貫通するから、扉体2を上下方向に動かすことができず、したがって、扉体2を筐体1から取り外すことができなくなり、セキュリティが向上する。
【0012】
本発明の第4の扉構造によれば、ロックハンドル装置41の掛け金具46を受ける受け金具42とヒンジ11とを同じボルト孔47を用いて付け替え、またロックハンドル装置41の本体43を取り付け開口49に上下反転させて取り付けることで、筐体1を設置する現場において、一種類の扉体2を容易に右開き用、左開き用に変更して筐体1に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】扉体を右吊りにした本発明の扉構造を示す正面図である。
【図2】扉体を開放状態にした図1の扉構造を示す正面図である。
【図3】扉体を外した状態の図1の扉構造を示す正面図である。
【図4】扉体を左吊りにした本発明の扉構造を示す正面図である。
【図5】扉体を開放状態にした図4の扉構造を示す正面図である。
【図6】図1におけるVI−VI断面図である。
【図7】本発明の扉構造における筐体の正面図である。
【図8】本発明の扉構造における扉体の正面図である。
【図9】図8の扉体の右側面図である。
【図10】図1の扉構造におけるヒンジ取り付け側の一部の分解斜視図である。
【図11】図1の扉構造における受け金具取り付け側の一部の分解斜視図である。
【図12】図1の扉構造におけるヒンジ取り付け部分の平面図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII断面図である。
【図14】図12におけるXIV−XIV断面図である。
【図15】ヒンジの分解斜視図である。
【図16】扉体を閉鎖位置に配置する状態のヒンジの正面図である。
【図17】図16のヒンジの平面図である。
【図18】扉体を90度開放位置に配置する状態のヒンジの正面図である。
【図19】図18のヒンジの平面図である。
【図20】扉係合部材の正面図である。
【図21】扉係合部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1,2において、1は電子機器を収納する筐体、2は筐体1の開口部7を開閉する扉体である。図2によく示すように、筐体1は、上下の横枠3,4と左右の縦枠5,6に囲まれた矩形の開口部7を前面側に有する。扉体2は、閉鎖時に筐体1の開口部7を閉塞することができる矩形の前板8と、閉鎖時にこの前板8の左右側縁から筐体1の奥行き方向である後方へ直角に延びる左右側板9,10とを有する。図示の実施例では、扉体2の一方の側縁(図1において右側縁)には、前板8と側板10を含む四角筒状の中空補強枠40が形成される(図10,12)。扉体2は、上下2つのヒンジ11によって、筐体1の右縦枠6(図1〜3)又は左縦枠5(図4,5)に枢支される。上下2つのヒンジ11の取り付け位置は、筐体1の上下端部から等距離であり、また上下2つのヒンジ11の扉体2に対する接続位置も扉体2の上下端部から等距離である。以下、ヒンジ11が、右縦枠6に取り付けられる場合について説明する。
【0015】
図3に示すように、ヒンジ11は、筐体1の一方の縦枠6に固着される台座12と、この台座12に枢支され、扉体2を吊支する回転羽根13と、この回転羽根13に扉体2を結合するために取り付けられる扉係合部材14とを具備する。
図10,15によく示すように、台座12は、互いにほぼ直角に接合する取り付け板15と吊り板16とを具備する。取り付け板15は、筐体1の縦枠6の前面に固着される。吊り板16は、取り付け板15の一端から直角に前方へ起立する。吊り板16は、固着状態において筐体1の外側面と平行な外側面17と、その反対側の内側面18とを有する。内側面18からは、抜け止め突起19が突出する。吊り板16の前端縁には、縦軸20を貫通させて回転羽根13を枢支する軸挿部21が設けられる。
【0016】
回転羽根13は、互いにほぼ直角に接合する第1及び第2の翼片22,23と、両翼片の接合部に沿う枢支部24と、両翼片の内側面25,26間を接続する支持板27とを具備する。
【0017】
枢支部24は、両翼片22,23の接合部において、台座12の軸挿部21との間に縦軸20を貫通させて台座12に枢支される。支持板27は、両翼片22,23の直角に向き合う内側面25,26間を水平に架橋するように、両翼片22,23の上下方向中央に設けられる。
【0018】
第1の翼片22の内側面25は、扉体2を吊ったときに、前板8の前面と密着する前板密着面とされ、第2の翼片23の内側面26は、扉体2を吊ったときに、左右いずれかの側板9,10の外面に密着する側板密着面とされる。
【0019】
第2の翼片23は、側板密着面26の反対側に、当接面28を有すると共に、両面26,28間に貫通する貫通孔29を有する。回転羽根13が扉体2を閉鎖位置に置く状態において、当接面28は、台座12の吊り板16の内側面18に当接可能であり、貫通孔29は、吊り板16の抜け止め突起19を側板密着面26側へ突出させるように貫通させる。
【0020】
図12,13に示すように、翼片23の当接面28が吊り板16の内側面18に当接した閉鎖位置において、回転羽根13の第1の翼片22の前板密着面25が筐体1の前面と平行に配置されて、扉体2が筐体1の開口部7を閉塞するように構成される。
【0021】
ヒンジ11を構成する台座12と回転羽根13の組立体は、これを上下転倒させることにより、ヒンジ11の取り付け位置を図1ないし3に示す筐体1の右、又は図4,5に示す筐体1の左に変更可能に構成される。
【0022】
扉係合部材14は、弾性合成樹脂で概略直方体形状に形成された部材であり、回転羽根13の支持板27上に、ねじ30で取り付けられる。扉係合部材14は、図20,21によく示すように、回転羽根13への取り付け状態において前板密着面25に対向する第1の側面31と、側板密着面26に対向する第2の側面32とを有する。第1の側面31と前板密着面25との間には、扉体2の前板8の板厚に対応する前板挟持間隙33が形成され、第2の側面32側と側板密着面26との間には、側板10の板厚に対応する側板挟持間隙34が形成される。第1の側面31側の上部には、上縁から下方へ向かうにしたがって側板密着面26に接近するように斜めに延出する弾性挟持片35が形成される。この弾性挟持片35は、第1の側面31の対向側面36側にも、対称に形成される。第2の側面32には、段部38a,38b付きの斜面37が形成される。斜面37は、上縁から下方へ向かうにしたがって側板密着面26に接近するように傾斜する。段部38a,38bは、扉体2を構成する鋼板として、2種類の厚さの異なるものが選択的に用いられることに対応するものである。すなわち、後記するように、扉体2の係合開口39の上縁部を側板挟持間隙34へ落とし込む際、鋼板が厚いときは係合開口39の上縁が上段部38a上に載り、薄いときは下段部38b上に載るようになっている。
【0023】
一方、扉体2には、図8において右側縁(左吊りとする場合には、上下が反転して左側縁となる。)の中空補強枠40に、扉体2をヒンジ11に係合させるための係合開口39が形成される。上下2つの係合開口39の位置は、扉体2の上下端部から等距離である。係合開口39は、ヒンジ11に対応する位置の側板10と前板8とに連続して形成される(図10)。この係合開口39は、回転羽根13の支持板27とこれに固着された扉係合部材14とを中空補強枠40内に受け入れ可能に構成され、回転羽根13と扉係合部材14との間に形成される前板挟持間隙33と側板挟持間隙34に係合開口39の上縁部を落とし込む(図12〜14)ことによって、扉体2を回転羽根13に吊り止め可能に構成される。側板10側の係合開口39の上下(図9,10)には、回転羽根13の翼片16の貫通孔29に連続する貫通孔48が形成され、図12に示す閉鎖位置において、吊り板16の抜け止め突起19が貫通孔29,48を貫通することにより、扉体2がヒンジ11から離脱不可能となる。
【0024】
扉体2の図1,8において左側縁(右吊りとする場合には、上下が反転して右側縁(図4)となる。)近くの前板8には、ロックハンドル装置40が取り付けられ、また筐体1の同側となる縦枠5(6)の前面には、上下2つの受け金具42が固着される。上下2つの受け金具42の位置は、筐体1の上下端部から等距離であり、ヒンジ11の取り付け位置と同一である。したがって、筐体1の左右縦枠5,6には、ヒンジ11と受け金具42の取り付けに共通に使われるボルト孔47が形成される。
【0025】
ロックハンドル装置40は、前板8の前方から施解錠操作可能なハンドル44を具備する本体43と、ハンドル44の施解錠操作に応じて上下動可能に前板8の裏面側に上下方向に延びるように設けられるロッド45とを具備する。ロッド45の上下端には、受け金具42に係脱可能な掛け金具46が設けられる。図8に示すように、扉体2には、ロックハンドルの本体43を上下方向変更自在に嵌合させる取り付け開口49が形成される。扉体2の吊り方向を変更する場合には、ロックハンドルの本体43を扉体2に対して上下に転倒させて取り付ける。
【0026】
扉体2を筐体1に装着する際には、扉体2を持って、係合開口39の位置を回転羽根13の支持板27と扉係合部材14の高さ位置に合わせ、例えば前板8の前面側を回転羽根13の前板密着面25に沿わせるよう滑らせながら側板10を側板密着面26に向けて押し込むと、側板10が側板密着面26に当接し、回転羽根13が縦軸20を中心に適宜回転して、前板8が前板密着面25に、また側板10が側板密着面26に、それぞれ密着すると同時に、係合開口39内に支持板27と扉係合部材14が受け入れられる。この状態で扉体2をわずかに下降させれば、前板8と側板10における係合開口39の上縁対応部がそれぞれ前板挟持間隙33、側板挟持間隙34に落ち込んで、扉体2とヒンジ11とが係合し、扉体2の装着が容易に完了する。
【0027】
扉体2の吊り方向を左右に変更する場合には、筐体1に対するヒンジ11と受け金具42の装着位置を、それまでの取り付け位置と左右反対にする。受け金具42とヒンジ11は、筐体1の左右縦枠に設けられたボルト孔47を用いて,同一のボルトで付け替えることができる。この際、ヒンジ11は、上下を反転させ、これにしたがって、扉係合部材14を支持板27の上面となる側に移す。一方、扉体2を上下反転させると共に、ロックハンドルの本体43の取り付け方向を上下反転させる。このように、一種類の扉体2を右開き用、左開き用に兼用することができ、筐体1の設置現場において任意に扉体2の開き方向を変更することができる。
【0028】
扉体2が筐体1の開口部7を閉塞した閉鎖位置において、ヒンジ11における吊り板16の抜け止め突起19が、扉体2の側板10に形成された貫通孔48を貫通するから、扉体2を上下方向に動かすことができず、したがって、扉体2を筐体から取り外すことができなくなり、セキュリティが向上する。
【0029】
ロックハンドル装置41の掛け金具46を受ける受け金具42とヒンジ11とを同じボルト孔47を用いて付け替え、またロックハンドル装置41の本体43を取り付け開口49に上下反転させて取り付けることで、筐体1を設置する現場において、一種類の扉体2を容易に右開き用、左開き用に変更して筐体1に装着することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 筐体
2 扉体
3 上横枠
4 下横枠
5 左縦枠
6 右縦枠
7 開口部
8 前板
9 左側板
10 右側板
11 ヒンジ
12 台座
13 回転羽根
14 扉係合部材
15 取り付け板
16 吊り板
17 外側面
18 内側面
19 抜け止め突起
20 縦軸
21 軸挿部
22 第1の翼片
23 第2の翼片
24 枢支部
25 前板密着面
26 側板密着面
27 支持板
28 当接面
29 貫通孔
30 ねじ
31 第1の側面
32 第2の側面
33 前板挟持間隙
34 側板挟持間隙
35 弾性挟持片
36 対向側面
37 段付き斜面
38 上段部
39 下段部
40 中空補強枠
41 ロックハンドル装置
42 受け金具
43 ロックハンドルの本体
44 ハンドル
45 ロッド
46 掛け金具
47 ボルト孔
48 貫通孔
49 取り付け開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の横枠と左右の縦枠に囲まれた矩形の開口部を前面側に有し、内部に電子機器収納する筐体と、
閉鎖時に前記筐体の開口部を閉塞することができる矩形の前板と、閉鎖時にこの前板の左右側縁から前記筐体の奥行き方向後方へ直角に延びる左右側板とを有する扉体と、
この扉体を前記筐体の左右いずれかの縦枠に枢支する上下少なくとも2つのヒンジとを具備し、
前記ヒンジは、前記筐体の一方の縦枠に固着される台座と、この台座に枢支され前記扉体を吊り止める回転羽根と、この回転羽根に扉体を結合するために取り付けられる扉係合部材とを具備し、
前記回転羽根は、互いにほぼ直角に接合する第1及び第2の翼片と、両翼片の接合部において前記台座との間に縦軸を貫通させて台座に枢支される枢支部と、両翼片の直角に向き合う内側面間を水平に架橋するように両翼片の上下方向中央に設けられる支持板とを具備し、第1の翼片の内側面は、前記扉体の前板の前面と密着する前板密着面とされ、第2の翼片の内側面は、扉体の左右いずれかの側板の外面に密着する側板密着面とされ、
前記扉係合部材は、前記回転羽根の支持板上に設けられ、前板密着面との間に前板の板厚に対応する前板挟持間隙を形成すると共に、側板密着面との間に側板の板厚に対応する側板挟持間隙を形成する形状を有し、
前記扉体は、前記ヒンジに対応する位置の一方の側板と前板に連続して形成される係合開口を有し、この係合開口は前記回転羽根の支持板と前記扉係合部材とを受け入れ可能に構成され、回転羽根と扉係合部材との間に形成される前記前板挟持間隙と側板挟持間隙に係合開口の上縁部を落とし込むことによって、回転羽根に吊り止め可能に構成されることを特徴とする電子機器収納筐体の扉構造。
【請求項2】
前記ヒンジを構成する台座と回転羽根の組立体は、これを上下転倒させることにより、ヒンジの取り付け位置を前記筐体の左右に変更可能に構成され、
前記扉係合部材は、回転羽根の支持板に対して着脱自在で、筐体に対するヒンジの左右取り付け位置の変更に対応して、支持板の上面となる側に選択的に取り付け可能に構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収納筐体の扉構造。
【請求項3】
前記ヒンジを構成する台座は、前記筐体の一方の縦枠の前面に固着される取り付け板と、固着状態において縦枠の外縁に沿い、取り付け板の一端から直角に前方へ起立する吊り板とを具備し、
前記吊り板は、固着状態において縦枠の外方側に面する外側面と、その反対側の内側面とを有し、この内側面から突出する抜け止め突起と、前端縁に沿って前記縦軸を貫通させて前記回転羽根の枢支部を枢支する軸挿部とをさらに具備し、
前記ヒンジを構成する回転羽根の第2の翼片は、前記側板密着面の反対側に、閉鎖位置において前記吊り板の内側面に当接可能な当接面を有すると共に、前記吊り板の抜け止め突起を側板密着面側へ突出させるように貫通させる貫通孔を有し、当接面が吊り板の内側面に当接した閉鎖位置において、回転羽根の第1の翼片の前板密着面が前記筐体の前面と平行に配置されて、扉体が筐体の開口部を閉塞するように構成され、
前記扉体の一方の側板は、前記ヒンジの回転羽根に吊られたときに第2の翼片の貫通孔に連続する貫通孔を具備し、閉鎖位置において前記吊り板の抜け止め突起が貫通孔を貫通することにより、扉体がヒンジから離脱不可能となるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収納筐体の扉構造。
【請求項4】
前記扉体における前板の他方の側縁部に装着されるロックハンドル装置と、前記筐体における他方の縦枠の前面に固着される受け金具とをさらに具備し、
前記ロックハンドル装置は、前記前板の前方から施解錠操作可能なハンドルを具備する本体と、ハンドルの施解錠操作に応じて上下動可能に前板の裏面側に上下方向に延びるように設けられ上下端に前記受け金具に係脱可能な掛け金具を具備するロッドとを具備し、
前記扉体は、前板の他方の側縁における上下方向中央部に、ロックハンドルの本体を上下方向変更自在に嵌合させるための取り付け開口を有し、
前記筐体における左右の縦枠の同高さ位置には、選択的に前記ヒンジの台座又は前記受け金具をねじ止めするためのボルト孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器収納筐体の扉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−283024(P2010−283024A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133239(P2009−133239)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】