説明

電子機器用筐体及び電子機器用筐体の製造方法

【課題】押出し成形によって、部品点数を増やすことなく、デザイン性に優れ、かつ必要な強度を確保することができる電子機器用筐体を提供する。
【解決手段】デジタルカメラ筐体1は、金属材料で形成されており、主として、上下押出しにより押出し成形された中空の筒状の本体部10と、厚肉部12に設けられたストラップ用の孔14と、厚肉部12に設けられた三脚ネジ穴15で構成される。本体部10は。一定の肉厚を有する周壁11と、周壁11の肉厚より肉厚の厚い厚肉部12と、押出し方向(上下方向)に貫通した空洞部13とにより構成される。押出し成形により本体部10を形成し、機械加工により、ストラップ用の孔14と三脚ネジ穴14を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器用筐体及び電子機器用筐体の製造方法に係り、特に押出し成形により形成された電子機器用筐体及び電子機器用筐体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、押出し成形などにより成形された部材に鍛造加工を施して偏肉部を形成することで、筐体全体の強度と曲げ剛性が向上された筐体が提案されている。
【0003】
特許文献2には、押出し材を用いた筐体の開口部を塞ぐことにより、筐体内部に音響空間が形成される電子鍵盤楽器が提案されている。
【特許文献1】特開2007―52616号公報
【特許文献2】特開2006―195263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の筐体は、押出し成形により形成されているが、これらの筐体は板状の部材であるため、筐体のつなぎ目が外部から見えてしまい、デザイン性に欠けるという問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載の筐体は、内部に部品等を組み込むための筐体ではないため、強度、外観等を考慮していない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、押出し成形によって、部品点数を増やすことなく、デザイン性に優れ、かつ必要な強度を確保することができる電子機器用筐体及び電子機器用筐体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の電子機器用筐体は、押出し成形により形成された中空の筒状の部材であって、一定の肉厚の周壁と、前記一定の肉厚より厚肉の厚肉部とを有する筒状の部材と、前記厚肉部に設けられたストラップ用の孔と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の電子機器用筐体によれば、押出し成形により、一定の肉厚の周壁と、前記一定の肉厚より厚肉の厚肉部とを有する筒状の部材が形成される。また、厚肉部には、ストラップ用の孔が形成される。これにより、複数の部品を組み立てる必要がないため、筐体の強度を確保しつつ、部品点数を減らすことができる。また、ストラップ用の孔が形成された部材を取り付ける場合と比較して、ストラップ用の孔の部分の強度を確保し、かつ筐体の部品点数及び組立工程を減らすことができるまた、押出し成形により筒状に形成されることにより、筐体の外周に組み立てなどによる接続面が現れないため、外観を良くすることができる。
【0009】
請求項2に記載の電子機器用筐体は、請求項1に記載の電子機器用筐体において、前記肉厚部は、把持部として利用されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の電子機器用筐体によれば、把持部として利用される肉厚部が一体となった筒状の部材が押出し成形により形成される。これにより、部品点数を減らすことができる。
【0011】
請求項3に記載の電子機器用筐体は、請求項1又は2に記載の電子機器用筐体において、前記ストラップ用の孔は、後加工により形成されることを特徴とする。これにより、ストラップ用の孔が形成された部材を筐体に取り付ける必要がなく、筐体の部品点数及び組立工程を減らすことができる。また、ストラップ用の孔が形成された部材を取り付ける場合と比較して、ストラップ用の孔の部分の強度を確保することができる。また、特に押出し方向に直交する切断面に対して所定の角度だけ斜め方向のストラップ用の孔を形成した場合には、ストラップ用の孔を形成するためのスペースを省スペース化することができる。
【0012】
請求項4に記載の電子機器用筐体は、請求項3に記載の電子機器用筐体において、前記筒状の部材は略矩形状に形成され、前記厚肉部は前記筒状の部材の角部に形成された電子機器用筐体であって、前記ストラップ用の孔は、前記厚肉部が形成された角に隣接する2つの面にそれぞれ穴が現れるように形成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の電子機器用筐体によれば、略矩形状の筒状の部材の角部に厚肉部画形成され、厚肉部が形成された角に隣接する2つの面にそれぞれ穴が現れるようにストラップ用の穴が形成される。これにより、小さいスペースでストラップ用の孔を形成することができる。
【0014】
請求項5に記載の電子機器用筐体は、請求項3に記載の電子機器用筐体において、前記ストラップ用の孔は、一方の穴が前記筒状の部材の切断面に形成され、他方の穴が前記筒状の部材の外周面に形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の電子機器用筐体によれば、一方の穴が筒状の部材の切断面に形成され、他方の穴が筒状の部材の外周面に形成されるように、ストラップ用の孔が形成される。これにより、小さいスペースでストラップ用の孔を形成することができる。
【0016】
請求項6に記載の電子機器用筐体は、請求項1又は2に記載の電子機器用筐体において、前記ストラップ用の孔は、押出し成型により前記筒状の部材と同時に形成されることを特徴とする。これにより、後加工の工程を削減することができる。また、複数の孔を設ける場合においても、工程数が増えることがないため、手間をかけずに様々な位置に、様々の大きさのストラップ用の孔を設けることが出来る。
【0017】
請求項7に記載の電子機器用筐体は、請求項6に記載の電子機器用筐体において、前記ストラップ用の孔の長さが前記筒状の部材の押出し方向の長さよりも短くなるように、前記厚肉部の一部が後加工されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の電子機器用筐体によれば、ストラップ用の孔の長さが筒状の部材の押出し方向の長さよりも短くなるように、厚肉部の一部が後加工される。これにより、ユーザーが使用しやすいストラップ用の孔を形成することが出来る。
【0019】
請求項8に記載の電子機器用筐体の製造方法は、一定の肉厚の周壁と、前記一定の肉厚より厚肉の厚肉部とを有する中空の筒状の棒材を押出し成形により形成し、前記押出し成形により形成された筒状の棒材を所定の長さに切断して筒状の部材を形成し、前記形成された筒状の部材の前記厚肉部に、ストラップ用の孔を後加工により形成することを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の電子機器用筐体の製造方法は、一定の肉厚の周壁と、前記一定の肉厚より厚肉の厚肉部と、前記厚肉部を貫通するストラップ用の孔とを有する中空の筒状の棒材を押出し成形により形成し、前記押出し成形により形成された筒状の棒材を所定の長さに切断して筒状の部材を形成することを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の電子機器用筐体の製造方法は、請求項9に記載の電子機器用筐体の製造方法において、前記押出し成形により形成されたストラップ用の孔の長さが前記筒状の部材の押出し方向の長さよりも短くなるように、前記厚肉部の一部を後加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、押出し成形によって、部品点数を増やすことなく、デザイン性に優れ、かつ必要な強度を確保することができる電子機器用筐体及び電子機器用筐体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態は、筐体の上下方向に押出し成形を行い(上下押出し)、後加工によりストラップ用の孔を形成するものである。
【0024】
図1は本発明の第1の実施の形態に係るデジタルカメラ筐体1の斜視図であり、図2は図1の押出し成形により形成され、後加工が行われる前のデジタルカメラ筐体1を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のA―A断面図である。
【0025】
デジタルカメラ筐体1は、アルミニウム合金で形成されており、主として、上下押出しにより押出し成形された中空の筒状の本体部10と、厚肉部12に設けられたストラップ用の孔14と、厚肉部12に設けられた三脚ネジ穴15で構成される。デジタルカメラ筐体1に用いるアルミニウム合金としては、強度、成形性、コストなどを考慮し、押出性に優れ、耐食性、表面処理性も良好なAl−Mg−Si系のA6063、Al−Mn系のA3003、A3004などを使用することができる。
【0026】
本体部10は、一定の肉厚を有する周壁11と、周壁11の肉厚より肉厚の厚い厚肉部12と、上下方向に貫通した空洞部13とにより構成される。
【0027】
周壁11は、後加工により前面及び背面に孔(図示せず)が開けられ、前面の孔にはレンズ等が組み立てられ、背面の孔には液晶パネルなどの表示手段が組み立てられる。
【0028】
厚肉部12は、周壁11と一体形成され、ユーザーがデジタルカメラを把持するためのグリップ部として利用される。また、ユーザーが把持しやすいように、厚肉部12の前面は全体的に凸形状となるように形成されている。
【0029】
空洞部13には、押出し材の内部を押出し方向に貫通するように設けられた孔であり、デジタルカメラを動作させるのに必要な基板などの内蔵物(図示せず)が組み立てられる。空洞部13に内蔵物が組み立てられた後で、上面及び底面の切断面xを板状の部材などで覆うことにより、デジタルカメラが組み立てられる。
【0030】
ストラップ用の孔14は、厚肉部12に設けられ、デジタルカメラ筐体1の前後方向に貫通する孔であり、本体部10の切断面xと平行に設けられている。ユーザーがストラップ用の孔14に紐を通すことでストラップが取り付けられる。
【0031】
三脚ネジ穴15は、厚肉部12の底面側に設けられる。
【0032】
次に、デジタルカメラ筐体1の製造方法を説明する。まず、押出し機(図示せず)を用いて、アルミニウム合金をダイ(図示せず)から押し出すことによって、図2(a)にしめす略矩形の断面形状を有する中空の筒状の棒材を成形する。そのようにして得られた略矩形の中空の筒状の棒材を丸鋸等で図2(b)に示すような所定の長さに切断することにより、本体部10を形成する。
【0033】
次に、機械加工により、厚肉部12にストラップ用の孔14を形成する。押出し成形により形成された本体部10を、前面を上にしてマシニングセンタ等に設置して、前面側から穴あけ加工を行う。その後、バリ取りなどを行って、ストラップ用の孔14を形成する。
【0034】
また、機械加工により、厚肉部12の底面側に三脚ネジ穴15を形成する。ストラップ用の孔14が形成された本体部10を、底面を上にしてマシニングセンタ等に設置して、穴あけ加工、ネジ切り加工を行う。その後、バリ取りなどを行って、三脚ネジ穴15を形成する。
【0035】
本実施の形態によれば、ストラップ用の孔が形成された部材を筐体に取り付ける必要がなく、筐体の部品点数や組立工程の数を減らすことができる。また、ストラップ用の孔が形成された部材を取り付ける場合と比較して、ストラップ用の孔の部分の強度を確保することができ、落下などの衝撃による破壊を防止することができる。
【0036】
また、前枠と後枠とを組み立てる従来の筐体では、前枠と後枠との接続面が外観上現れてしまうが、本実施の形態によれば、本体部が押出し成形により筒状に形成されることにより、筐体の外周に接続面が現れないため、外観を良くすることができる。
【0037】
また、本実施の形態によれば、押出し成形により本体部を形成するため、ダイキャストにより形成された場合と比較して、バリ取りなどの追加工を減らすことができる。また、ダイキャストにより形成された場合には、熱収縮により厚肉部にヒケが発生することがあるが、押出し成形により形成することにより収縮量を減らすことができる。このように押出し成形により筐体を製造することで、外観を良くすることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、ストラップ用の孔を厚肉部に1個形成したが、ストラップ用の孔を複数形成してもよい。複数のストラップ用の孔を設けることにより、ユーザーの好みの位置でストラップを装着することができ、またストラップの他にアクセサリー等を装着することができるため、ユーザーが自分のデジタルカメラをカスタマイズすることができ、他のデジタルカメラとの差別化を図ることができる。
【0039】
また、本実施の形態では、押出し成形により形成された本体部の形状をそのまま用いてデジタルカメラ筐体を作成したが、端面削り加工などにより押出し成形により形成された本体部の形状を変えてもよい。図3に示すように、厚肉部12にストラップ用の孔14’を形成し、厚肉部12の外縁を厚肉部12’を残して削る(図3斜線部を削る)ことで、本体部10’を任意の形状とすることもできる。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態は、筐体の上下方向に押出し成形を行い(上下押出し)、後加工によりストラップ用の孔を形成する点で第1の実施の形態と同様であるが、厚肉部及びストラップ用の穴の設け方が第1の実施の形態と異なるものである。
【0040】
図4は本発明の第2の実施の形態に係るデジタルカメラ筐体2を示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は(a)の平面Bにおける断面図を示す。なお、第1の実施の形態と同一の部分については説明を省略する。
【0041】
デジタルカメラ筐体2は、アルミニウム合金で形成されており、主として、上下押出しにより押出し成形された中空の筒状の本体部20と、厚肉部22に設けられたストラップ用の孔24とで構成される。
【0042】
本体部20は、一定の肉厚を有する周壁21と、周壁21の肉厚より肉厚の厚い厚肉部22と、上下方向に貫通した空洞部23とにより構成される。
【0043】
周壁21は、後加工により前面及び背面に孔(図示せず)が開けられ、前面の孔にはレンズ等が組み立てられ、背面の孔には液晶パネルなどの表示手段が組み立てられる。
【0044】
厚肉部22は、周壁21の背面側の一方の角部に、その内面(空洞部側)が凸となるように設けられている。これにより、本体部20の内部に空洞部23を有効に配置することができる。
【0045】
空洞部23には、押出し材の内部を押出し方向に貫通するように設けられた孔であり、デジタルカメラを動作させるのに必要な基板などの内蔵物(図示せず)が組み立てられる。空洞部23に内蔵物が組み立てられた後で、上面と底面とを板状の部材などで覆うことにより、デジタルカメラが組み立てられる。
【0046】
ストラップ用の孔24は、厚肉部22に設けられ、デジタルカメラ筐体2の角を三角に突っ切るように貫通する孔であり、一方の穴が側面に設けられ、もう一方の穴が背面に設けられる。
【0047】
次に、デジタルカメラ筐体1の製造方法を説明する。まず、押出し機(図示せず)を用いて、アルミニウム合金をダイ(図示せず)から押し出すことによって、図4(a)の断面形状を有する略矩形の中空の筒状の棒材を成形する。そのようにして得られた略矩形の中空の筒状の棒材を丸鋸等で所定の長さに切断することにより、本体部20を形成する。
【0048】
次に、機械加工により、厚肉部22にストラップ用の孔24を形成する。押出し成形により形成された本体部20を、マシニングセンタ等に斜め方向に設置して、穴あけ加工を行う。その後、バリ取りなどを行って、ストラップ用の孔24を形成する。
【0049】
本実施の形態によれば、略矩形状の本体部20の角部に厚肉部22を設け、かつ本体部20の面に対して斜め方向にストラップ用の孔を形成するため、ストラップ用の孔を形成するためのスペースを省スペース化することができる。また、厚肉部22を本体部20の角部に設けることで、本体部20の内部に空洞部23を有効に配置することができ、本体部20を小型化することができる。
【0050】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態は、押出し成形により本体部を作成し、後加工によりストラップ用の孔を形成する点で第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態は筐体の上下方向に押出し成形を行う(上下押出し)のに対して、第3の実施の形態は筐体の左右方向に押出し成形を行う(横押出し)の点で第1の実施の形態と異なるものである。
【0051】
図5は本発明の第3の実施の形態に係るデジタルカメラ筐体3を示す図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は(a)のC矢視図を示す。なお、第1の実施の形態と同一の部分については説明を省略する。
【0052】
デジタルカメラ筐体3は、アルミニウム合金で形成されており、主として、横押出しにより押出し成形された中空の筒状の本体部30と、厚肉部32に設けられたストラップ用の孔34a、34bとで構成される。
【0053】
本体部30は、肉厚t1の前面、上面、底面の壁31と、肉厚より肉厚の厚い肉厚t2の背面の壁32と、左右方向に貫通した空洞部33とにより構成される。
【0054】
本体部30の前面及び背面の壁には、後加工により孔(図示せず)が開けられ、前面の孔にはレンズ等が組み立てられ、背面の孔には液晶パネルなどの表示手段が組み立てられる。
【0055】
空洞部33は略矩形状であり、その内部には押出し材の内部を押出し方向に貫通するように設けられた孔であり、デジタルカメラを動作させるのに必要な基板などの内蔵物(図示せず)が組み立てられる。空洞部33に内蔵物が組み立てられた後で、左面と右面とを板状の部材などで覆うことにより、デジタルカメラが組み立てられる。
【0056】
ストラップ用の孔34は、背面の壁32の内部を貫通する孔であり、デジタルカメラ筐体3の切断面xに対して所定の角度だけ斜め方向に設けられる。ストラップ用の孔34aは、一方の穴が側面に設けられ、もう一方の穴が上面に設けられる。また、ストラップ用の孔34bは、一方の穴が側面に設けられ、もう一方の穴が背面に設けられる。
【0057】
次に、デジタルカメラ筐体3の製造方法を説明する。まず、押出し機(図示せず)を用いて、アルミニウム合金をダイ(図示せず)から押し出すことによって、略矩形の中空の筒状の棒材を成形する。そのようにして得られた略矩形状の中空の筒状の棒材を丸鋸等で所定の長さに切断することにより、本体部30を形成する。
【0058】
次に、機械加工により、背面の壁32に2個のストラップ用の孔34a、34bを形成する。押出し成形により形成された本体部30を、マシニングセンタ等に斜め方向に設置して、穴あけ加工を行う。その後、バリ取りなどを行って、ストラップ用の孔34a、34bを形成する。
【0059】
本実施の形態によれば、略矩形状の本体部30の背面を厚肉とし、一方の穴が切断面xに設けられ、他方の穴が外周面に設けられるようにストラップ用の穴が形成されるため、背面の壁32の内部にストラップ用の孔を形成することができる。これにより、ストラップ用の孔を形成するためのスペースを別に設ける必要がなく省スペース化することができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、略矩形状の本体部30の背面を厚肉とすることで、本空洞部23は略矩形状となり、内蔵物を効率よく組み立てることができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、ストラップ用の孔を2個設けたが、ストラップ用の孔の数は2個に限らず、1個でもよいし、3個以上でもよい。
【0062】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態は、筐体の上下方向に押出し成形を行う(上下押出し)点で第1の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態が後加工によりストラップ用の孔を形成するのに対して、第4の実施の形態は押出し成形によりストラップ用の孔を形成する点で第1の実施の形態と異なる。
【0063】
図6は本発明の第4の実施の形態に係るデジタルカメラ筐体4を示す図であり、(a)は押出し成形後の本体部の斜視図を示し、(b)は後加工後の本体部の斜視図を示し、(c)は押出し成形によりストラップ用の孔を形成する別の例を示す。なお、第1の実施の形態と同一の部分については説明を省略する。
【0064】
デジタルカメラ筐体4は、アルミニウム合金で形成されており、主として、上下押出しにより押出し成形され、一定の肉厚を有する周壁41と、周壁41の肉厚より肉厚の厚い厚肉部42と、上下方向に貫通した空洞部43と、ストラップ用の孔44とで構成された中空の筒状の部材である。
【0065】
周壁41は、後加工により前面及び背面に孔(図示せず)が開けられ、前面の孔にはレンズ等が組み立てられ、背面の孔には液晶パネルなどの表示手段が組み立てられる。
【0066】
厚肉部42は、周壁41と一体形成され、ユーザーがデジタルカメラを把持するためのグリップ部として利用される。また、ユーザーが把持しやすいように、厚肉部42の前面は全体的に凸形状となるように形成されている。
【0067】
空洞部43には、押出し材の内部を押出し方向に貫通するように設けられた孔であり、デジタルカメラを動作させるのに必要な基板などの内蔵物(図示せず)が組み立てられる。空洞部43に内蔵物が組み立てられた後で、上面と底面とを板状の部材などで覆うことにより、デジタルカメラが組み立てられる。
【0068】
ストラップ用の孔44は、空洞部43と同じく、厚肉部42を押出し方向に貫通するように設けられた孔である。
【0069】
次に、デジタルカメラ筐体1の製造方法を説明する。まず、押出し機(図示せず)を用いて、アルミニウム合金をダイ(図示せず)から押し出すことによって、図6(a)の切断面xと等しい断面形状を有する略矩形の中空の筒状の棒材を成形する。そのようにして得られた略矩形の中空の筒状の棒材を丸鋸等で所定の長さに切断することにより、図6(a)に示すような筒状の部材を形成する。
【0070】
次に、機械加工により厚肉部42を削り、デジタルカメラ筐体4を任意の外形に仕上げる。図6(a)に示す部材の底面を上にしてマシニングセンタ等に設置し、端面削り加工などにより厚肉部42を残して削る(図6(b)斜線部を削る)ことで、図6(b)に示すような形状とする。
【0071】
本実施の形態によれば、押出し成形によりストラップ孔が形成されるので、後加工の工程数を削減することができる。
【0072】
なお、本実施の形態では、ストラップ用の孔を1個設けたが、複数の孔を設けることもできる。押出し成形によりストラップ用の孔を作成することで、複数の孔を設ける場合においても加工の工程が増えることがないため、手間をかけずに様々な位置に、様々の大きさのストラップ用の孔を設けることが出来る。
【0073】
また、図6(b)に示す場合に限らず、肉厚部の底面側及び上面側に対して端面削り加工などを行うことで、図6(c)に示すような外形に仕上げることもできる。また、肉厚部の底面側の一部や上面側の一部を残すように、肉厚部を削ることもできる。これにより、ストラップ用の孔の長さが短くなるため、ユーザーがストラップ用の孔にストラップを通しやすくなる。また、肉厚部の底面側の一部及び上面側の一部を残すことで、工程数を増やすことなく、複数のストラップ用の孔を形成することも出来る。
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態は、押出し成形によりストラップ用の孔を形成する点で第4の実施の形態と同様であるが、第1の実施の形態が筐体の上下方向に押出し成形を行う(上下押出し)のに対して、第5の実施の形態は筐体の前後方向に押出し成形を行う(正面押出し)店で第4の実施の形態と異なる。
【0074】
図7は本発明の第5の実施の形態に係るデジタルカメラ筐体5を示す図である。なお、第1の実施の形態及び第4の実施の形態と同一の部分については説明を省略する。
【0075】
デジタルカメラ筐体5は、主として、正面押出しにより押出し成形された中空の筒状の本体部50と、後加工により形成される三脚ネジ穴15とで構成される。
【0076】
本体部50は、一定の肉厚を有する周壁51と、周壁51の肉厚より肉厚の厚肉部52と、前後方向に貫通した空洞部53と、前後方向に貫通したストラップ用の孔54とにより構成される。
【0077】
厚肉部52は、周壁51と一体形成され、ユーザーがデジタルカメラを把持するためのグリップ部として利用される。
【0078】
空洞部53は、押出し材の内部を押出し方向に貫通するように設けられた孔であり、デジタルカメラを動作させるのに必要な基板などの内蔵物(図示せず)が組み立てられる。空洞部53の前面の穴をレンズ等で覆い、内部に内蔵物を組み立て、背面の穴を液晶パネルなどで覆うことにより、デジタルカメラが組み立てられる。
【0079】
ストラップ用の孔54は、空洞部53と同様に押出し方向に貫通するように厚肉部52に設けられた孔である。ユーザーがストラップ用の孔54に紐を通すことでストラップが取り付けられる。
【0080】
三脚ネジ穴55は、厚肉部52の底面側に、底面と略直交する方向、すなわち押出し方向と略直交する方向に設けられる。
【0081】
次に、デジタルカメラ筐体5の製造方法を説明する。まず、押出し機(図示せず)を用いて、アルミニウム合金をダイ(図示せず)から押し出すことによって、図5の切断面xと等しい略矩形状の断面形状を有する中空の筒状の棒材を成形する。そのようにして得られた略矩形状の中空の筒状の棒材を丸鋸等で所定の長さに切断することにより、本体部50を形成する。
【0082】
次に、機械加工により、厚肉部52の底面側に三脚ネジ穴55を形成する。本体部50を、底面を上にしてマシニングセンタ等に設置して、穴あけ加工、ネジ切り加工を行う。その後、バリ取りなどを行って、三脚ネジ穴55を形成する。なお、ユーザーがストラップ用の孔にストラップを通しやすくするため、厚肉部52の一部を押出し方向に削り、ストラップ用の孔54の長さを短くする機械加工を行なうようにしてもよい。
【0083】
本実施の形態によれば、正面押出しにより空洞部53を形成するため、レンズや液晶パネルなどを組み立てる穴を形成する必要がなく、後加工の工程数を削減することができる。
【0084】
なお、本発明は、デジタルカメラ筐体のみでなく、携帯電話、PDA、音楽プレーヤーなどの様々な電子機器に適用することができる。また、本発明は、アルミニウム合金を用いて押出し成形を行ったが、アルミニウムに限らず、押出し成形が可能な様々な材料を用いることができる。例えば、マグネシウム合金やステンレスなどの金属材料を用いてもよいし、プラスチック材料を用いてもよい。
【0085】
また、本発明では、筐体の形状が略矩形状の場合を例に説明したが、略矩形状に限らず、様々な形状を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明が適用された第1の実施の形態のデジタルカメラ筐体の斜視図である。
【図2】上記デジタルカメラ筐体の本体部を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】第1の実施の形態の別の例である。
【図4】本発明が適用された第2の実施の形態のデジタルカメラ筐体を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)の平面Bにおける断面図である。
【図5】発明が適用された第3の実施の形態のデジタルカメラ筐体を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のC矢視図である。
【図6】発明が適用された第4の実施の形態のデジタルカメラ筐体を示す図であり、(a)は後加工前の斜視図であり、(b)は後加工後の斜視図であり、(c)は後加工後の別の例の斜視図である。
【図7】発明が適用された第5の実施の形態のデジタルカメラ筐体の斜視図である。
【符号の説明】
【0087】
1、2、3、4、5:デジタルカメラ筐体、11、21、31、41、51:周壁、12、22、32、42、52:厚肉部、13、23、33、43、53:空洞部、14、24、34a、34b、44、54:ストラップ用の孔、15、55:三脚ネジ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し成形により形成された中空の筒状の部材であって、一定の肉厚の周壁と、前記一定の肉厚より厚肉の厚肉部とを有する筒状の部材と、
前記厚肉部に設けられたストラップ用の孔と、
を備えたことを特徴とする電子機器用筐体。
【請求項2】
前記肉厚部は、把持部として利用されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用筐体。
【請求項3】
前記ストラップ用の孔は、後加工により形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器用筐体。
【請求項4】
前記筒状の部材は略矩形状に形成され、前記厚肉部は前記筒状の部材の角部に形成された電子機器用筐体であって、
前記ストラップ用の孔は、前記厚肉部が形成された角に隣接する2つの面にそれぞれ穴が現れるように形成された
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器用筐体。
【請求項5】
前記ストラップ用の孔は、一方の穴が前記筒状の部材の切断面に形成され、他方の穴が前記筒状の部材の外周面に形成されたことを特徴とする請求項3に記載の電子機器用筐体。
【請求項6】
前記ストラップ用の孔は、押出し成型により前記筒状の部材と同時に形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器用筐体。
【請求項7】
前記ストラップ用の孔の長さが前記筒状の部材の押出し方向の長さよりも短くなるように、前記厚肉部の一部が後加工されていることを特徴とする請求項6に記載の電子機器用筐体。
【請求項8】
一定の肉厚の周壁と、前記一定の肉厚より厚肉の厚肉部とを有する中空の筒状の棒材を押出し成形により形成し、
前記押出し成形により形成された筒状の棒材を所定の長さに切断して筒状の部材を形成し、
前記形成された筒状の部材の前記厚肉部に、ストラップ用の孔を後加工により形成する
ことを特徴とする電子機器用筐体の製造方法。
【請求項9】
一定の肉厚の周壁と、前記一定の肉厚より厚肉の厚肉部と、前記厚肉部を貫通するストラップ用の孔とを有する中空の筒状の棒材を押出し成形により形成し、
前記押出し成形により形成された筒状の棒材を所定の長さに切断して筒状の部材を形成する
ことを特徴とする電子機器用筐体の製造方法。
【請求項10】
前記押出し成形により形成されたストラップ用の孔の長さが前記筒状の部材の押出し方向の長さよりも短くなるように、前記厚肉部の一部を後加工することを特徴とする請求項9に記載の電子機器用筐体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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