説明

電子機器用筐体

【課題】蝶番及び固定手段の変形を阻止する電子機器用筐体を提供する。
【解決手段】筐体本体2及び蓋体3に設置され、蓋体3が閉じられたときに蓋体3の回転を阻止する固定手段5と、筐体本体2あるいは蓋体3のいずれか一方に設けられた、凸部11aを有する嵌入部材11と、筐体本体2あるいは蓋体3の他方に設けられた、蓋体3が閉じられたときに凸部11aが嵌合される凹部12aを有する被嵌入部材12とを備え、この嵌合によって蓋体3の鉛直方向への移動が阻止されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蝶番を備える筺体、特に通信機器等の電子機器を収容して設置される筺体に関する。
【背景技術】
【0002】
物を収容する筺体は、それらの対象物を収容するための開口部が形成されている筐体本体と、当該開口部を覆い、筐体の気密性を確保するための蓋体とを有するものがある。蓋体が開閉自在になる様、回転軸とこの回転軸の周方向に回動自在な羽根とで構成される蝶番が本体と蓋体に跨って設置されている場合がある。
【0003】
蝶番の態様は様々であるが、例えば蝶番が1本の回転軸とこの回転軸を挟んだ状態で回転軸に接続される2枚の羽根とからなる場合、一方の羽根が筐体本体に固定され、他方の羽根が蓋体に固定される。蝶番の羽根はそれぞれ回転軸の周方向に回動自在なので、蓋体(筺体本体)は筐体本体(蓋体)に対して接近する向き又は離反する向きに回動(回転)自在となる。すなわち、筐体本体と蓋体とが相対回動する。
【0004】
このような筐体が、例えば通信機器等の電子機器を収容する目的で使用される場合、蓋体が勝手に開かない様、鍵や留め金(例えばフック形状のもの)等の1組の、複数の部材からなる固定手段が筐体本体と蓋体とに分けられて取り付けられていることもある(例えば、特許文献1参照)。蓋体が閉じられて固定手段が機能しているとき、固定手段によって蓋体と筐体本体とが固定されるので、筐体本体と蓋体との相対回動が阻止されるとともに、筐体本体と蓋体との接触面方向における相対摺動も阻止される。
【0005】
【特許文献1】特開2004−311660号公報(段落0022〜26、図1〜3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器を収容する筐体は縦向きの状態、すなわち蝶番の回転軸(又は、筐体本体と蓋体との接触面)が地表面や床面に直交した状態で、地面や床面から所定距離をおいてポールや支柱に設置されることがある。
【0007】
蓋体と床面との間に空間が形成されているので、蓋体が開いている間は、蓋体は自重によって落下しようとする。しかし、蝶番の羽根が筐体本体と蓋体の双方に固定されているので、蓋体は、ポールや支柱に支持されている筐体本体に取り付けられている蝶番の羽根に支持され、落下を阻止されている。蓋体が閉められている間は、蓋体は蝶番と固定手段によって支持される。固定手段の態様によっては、蓋体は蝶番にのみ支持される。
【0008】
蓋体が閉められている間、蓋体を支持するのは蝶番と固定手段、又は蝶番のみであるので、筐体本体と蓋体との接触面の面内方向への相対摺動を引き起こす外力が発生した場合、蝶番(及び固定手段)がこの外力に抵抗する。したがって、蝶番(及び固定手段)が変形するおそれがある。
【0009】
蝶番が変形することによって、筐体本体と蓋体との相対回動方向が変化するので、蓋体が完全に閉じられなくなり、外観不良や防水機能の低下・失効等の不具合が生じる。また、固定手段が変形することによっても、外観不良や固定手段の機能の低下・失効等の不具合が生じる。尚、このような不具合は、蝶番や固定手段の変形だけでなく、それらのガタツキや遊びによる蓋体のズレによって生じ得る。
【0010】
さらに筐体が鋼製等から成型されている場合、蓋体の自重が大きくなるので、外力が作用しなくても長期間、蝶番(及び固定手段)が蓋体を支持することで、蝶番(及び固定手段)の筐体本体及び蓋体への固定状態・取り付け状態が劣化(例えば、固定の強さが低減)する。この結果、筐体のメンテナンスをする間隔が短くなるという不具合が生じる。この劣化は、特に蝶番や固定手段が例えばねじによって筐体本体や蓋体に固定されている場合に、顕著である。
【0011】
蝶番及び固定手段の変形を阻止し、不具合を生じさせないためには、蝶番及び固定手段の強度を増加させることが想定されるが、蝶番及び固定手段のコストが増大するので好ましくない。
【0012】
本発明の目的は斯かる課題に鑑みてなされたもので、蝶番及び固定手段によって筐体本体に取り付けられた蓋体の筐体本体に対するズレを阻止する電子機器用筐体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、電子機器を収容する筐体本体と前記筐体本体に蝶番を介して接続される蓋体とを備え、前記蝶番の回転軸方向が鉛直方向に一致した状態で設置される電子機器用筐体であって、前記筐体本体及び前記蓋体に設置され、前記蓋体が閉じられたときに前記蓋体の回転を阻止する固定手段と、前記筐体本体あるいは前記蓋体のいずれか一方に設けられた、凸部を有する嵌入部材と、前記筐体本体あるいは前記蓋体の他方に設けられた、前記蓋体が閉じられたときに前記凸部が嵌合される凹部を有する被嵌入部材とを備え、この嵌合によって前記蓋体の鉛直方向への移動が阻止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記の通り、筐体本体と蓋体のいずれか一方に設けられた凸部と、筐体本体と蓋体の他方に設けられ、蓋体を閉じたときに凸部が嵌合される凹部とを備え、蓋体を閉じたときに凸部と凹部の嵌合によって蓋体の鉛直方向への移動を阻止するので、蝶番及び固定手段によって筐体本体に取り付けられた蓋体の筐体本体に対するズレを阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1(a)、(b)に本発明の電子機器用筐体の具体例を示す。電子機器用筐体10(以下、筐体10という)は例えば通信機器等の電子機器を収容する、開口部2aが形成された筐体本体2と、開口部を覆い、筐体10の気密性を確保する蓋体3とを有する。筐体本体2と蓋体3とは蝶番4が介して連結されており、蝶番4によって蓋体3(筐体本体2)が筐体本体2(蓋体2)に対して接近する向き又は離反する向きに回動(回転)自在、すなわち筐体本体2と蓋体3とが相対回動自在である。筐体10の材料の種類は問われないが、例えば筐体10は鋼材、アルミニウム合金等の金属の他、合成樹脂、繊維強化プラスチックス等から成型される。
【0017】
また、蝶番4の態様は問われないが、本実施の形態においては、回転軸41とこの回転軸41の周方向に回動自在な羽根42とで構成される蝶番4が筐体本体2と蓋体3に跨って設置されている。図1(a)、(b)では、2枚の羽根42が回転軸41を挟んだ状態で、それぞれ回転軸41に接続されている。
【0018】
一方の羽根42が筐体本体2に固定され、他方の羽根42が蓋体3に固定されている。蝶番4の羽根42はそれぞれ回転軸41の周方向に回動自在なので、蓋体3は筐体本体2に対して接近する向き又は離反する向きに回動(回転)自在となる。すなわち、筐体本体2と蓋体とが相対回動する。
【0019】
図1(a)、(b)に示すように、筐体は例えばポール等の支柱Aに、縦向きの状態、すなわち蝶番4の回転軸41が鉛直方向と一致した状態で、地面や床面から所定距離をおいて位置に設置されている。
【0020】
筐体10には、蓋体3が閉じられた際に蓋体3が開こうとする動作、つまり筐体本体2と蓋体3との相対回動を阻止する固定手段5が設けられている。固定手段5の態様は問われないが、図面では、固定手段5は筐体本体2あるいは蓋体3のいずれか一方に取り付けられる可動式フック状部材51と、筐体本体2あるいは蓋体3のいずれか他方に取り付けられるフック受け部材52とからなる。図1(c)に示すように、蓋体3が閉じられた際に、フック部材51を動かしてフック受け部材52に引っ掛けて固定することで筐体本体2と蓋体3との相対回動が阻止される。
【0021】
さらに、筐体10には、蓋体3が閉じられた際に筐体本体2と蓋体3との相対摺動を阻止する拘束手段1が設けられている。拘束手段1は筐体本体2あるいは蓋体3のいずれか一方に配設された、凸部11aを有する嵌入部材11と、他方に配設された、凹部12aを有する被嵌入部材12とからなる。蓋体3が閉じられた際に凸部11aが凹部12aに嵌入して凸部11aと凹部12aが嵌合し、筐体本体2と蓋体3が、筐体本体2と蓋体3との接触面を含む面の面内方向(以下、面内方向という)に相互に拘束し合うので、それぞれの面内方向移動(相対摺動)が阻止される。
【0022】
本実施の形態のように筐体本体2がポール等の支柱Aに固定されて蓋体3の下方に空間が形成されている場合、蓋体3の自重による筐体本体2と蓋体3とが蝶番4の回転軸41方向に相対摺動しようとするが、凸部11aと凹部12aが嵌合することで、当該相対移動が阻止される。さらに、拘束手段1によって、蓋体3の自重以外の外力による筐体本体2と蓋体3との相対摺動も阻止される。
【0023】
このとき、拘束手段1が蓋体3の自重や外力を負担するので、蝶番4や固定手段5には荷重が作用しないので、蝶番4や固定手段5の変形、及びそれらの遊びやガタツキによる蓋体3のズレが阻止される。したがって、蝶番4や固定手段5の変形や蓋体3のズレによる外観不良や筐体10の防水機能の低下・失効、さらには蝶番4や固定手段5そのものの機能の低下・失効等の不具合を回避することができる。特に、内蔵電子機器のメンテナンス性を良好にするために筐体本体2の側壁22を低くし、蓋体3の側壁32を高くした場合には、蓋体3の自重が増して蓋体3のズレが生じやすくなるため、上記した効果が顕著である。
【0024】
図1(a)、(b)では、蓋体3に嵌入部材11が設けられ、筐体本体2に被嵌入部材12が設けられている。ここで、蓋体3の、蓋体3が閉じられる際に筐体本体2に接する端面から凸部11aが突出しているが、凸部11aが当該端面から突出せずに、被嵌入部材12が筐体本体2の、蓋体3が閉じられる際に蓋体3に接する端面から突出して、凹部12aが当該端面より蓋体3側に形成されている構造でもよい。
【0025】
つまり、蓋体3が閉じられた際に凸部11aと凹部12aとが嵌合する様、凸部11aあるいは凹部12aのいずれか一方がその端面から突出していればよい。また、図面では凹部12aは被嵌入部材12の一方の端面から、凸部11aが嵌入する向きの途中まで形成されているが、被嵌入部材12を貫通して形成されることもある。
【0026】
筐体本体2は、例えば、底板21と、底板21から立設される側壁22(22A〜22C)とを有し、側壁22(22A〜22C)の、底板21に接続されている端部(図1(a)において、左側に位置する端部)とは反対側の端部(図1(a)において、右側に位置する端部)によって包囲されて開口部2aが形成されている。蓋体3も同様に底板31と、底板31から立設される側壁32(32A〜32C)とで構成されている。
【0027】
筐体本体2の開口部2aを閉じることができればよいので、蓋体3は底板31のみで構成されていてもよい。また、筐体本体2は、側壁22の、底板21に接続されている端部とは反対側の端部に天板を有し、天板に開口部が形成される態様でもよい。
【0028】
図1(b)に示すように、蓋体3が閉められた状態で、筐体本体2の側壁22の外面と蓋体3の側壁32の外面、及び筐体本体2の側壁22の内面と蓋体3の側壁32の内面とはそれぞれつながって面一となる。このとき、筐体本体2の側壁22の端面と蓋体3の側壁32の端面とが当接することで接触面が形成される。蓋体3が底板31のみで構成される場合は、蓋体3の底板31の筐体本体を向く面と本体2の側壁22の端面とが接して接触面が形成される。
【0029】
図面では蝶番4の一方の羽根42が筐体本体2の側壁22の外面に固定され、他方の羽根42が、蓋体3が閉められた際に一方の羽根42が固定される側壁22に隣接する蓋体3の側壁32の外面に固定されている。羽根42が設置される場所は、筐体本体2及び蓋体3の構成・形状、又は蝶番4の態様に応じて適宜に設定される。蝶番4の固定方法は筐体本体2及び蓋体3の材質等によって適宜に選定される。
【0030】
蝶番4の回転軸41は、筐体本体2の側壁22の端面を含む平面(以下、本体平面と略す)S1と、蓋体3の側壁32の端面を含む平面(以下、蓋体平面と略す)S2との交線上に位置し、蓋体が閉じられた際に形成される、筐体本体と蓋体との接触面を含む面上に配設されている。
【0031】
図面では蝶番4(の一方の羽根42)が設置されている筐体本体2の側壁22Aと向き合う、筐体本体2の側壁22Bにフック受け部材52が取り付けられ、蝶番4(の他方の羽根42)が設置されている蓋体3の側壁32Aと向き合う、蓋体3の側壁32Bの外面にフック状部材51が設置されている。
【0032】
一方、拘束手段1の嵌入部材11はフック状部材51が取り付けられている蓋体3の側壁32Aの内面に設けられ、拘束手段1の被嵌入部材12はフック受け部材52が取り付けられている筐体本体2の側壁22Aの内面に設けられている。拘束部材1が設けられるのは筐体10の外面でもよいが、筐体10の内面の方が外観が簡素化されて良くなるので好適である。
【0033】
図1(a)では、嵌入部材11は、凸部11aの軸線Xの方向が蓋体平面S2に直交した状態で設けられ、被嵌入部材12は、凹部12aの軸線Yの方向が本体平面S1に直交した状態で設けられている。つまり、蓋体3が閉められた際、嵌合している凸部11aと凹部12aは筐体本体2と蓋体3との接触面に直交する。したがって、蓋体3が閉じられているときに筐体本体2と蓋体3とを相対摺動させる外力が筐体10に作用しても、当該外力の、凸部11aの軸線X(凹部の軸線Y)の方向成分、すなわち凸部11aと凹部12aの嵌合状態を解く力が生成されないので、確実に相対摺動を阻止することができる。
【0034】
また、拘束部材1が、蝶番4が固定されている側壁22A、32Aと向き合う側壁22B、32Bに設けられているので、筐体10の内面に拘束部材1が設けられているという条件の中では凸部11aの回転半径R1及び凹部12aの回転半径R2が最大となる。ここで、凸部11aの回転半径R1とは、蝶番4の回転軸41と凸部11aの軸線Xとの距離を、凹部12aの回転半径R2とは、蝶番4の回転軸41と凹部12aの軸線Yとの距離を表す。本実施の形態では回転半径R1と回転半径R2とは同一である。
【0035】
図2(a)に示すように、凸部11aの及び凹部12aの、軸線方向長さ及び設置位置が一定と仮定した場合、回転半径R1(回転半径R2)が大きいほど、凸部11aの先端が凹部12a(の蓋体側端面)に差し掛かった時の本体平面S1と蓋体平面S2とでなす角度θ1、言い換えれば凸部11aの軸線Xと凹部12aの軸線Yとでなす角度θ1が小さい。図2(b)に示すように、凸部11aが凹部12a内を回動するとき、凸部11aの先端の回転半径R2方向における位置及び凸部11aの軸線Xと凹部12aの軸線Yとでなす角度θ1が変化する。蓋体3が閉じる状態に近づくにつれ、凸部11aの先端が回転半径R2方向外向きに移動しつつ、凸部11aの軸線X方向と凹部12a軸線Yの方向とが近づく。
【0036】
凸部11aが凹部12a(の蓋体3側端面)に差し掛かった時に凸部11aの軸線Xと凹部12aの軸線Yとでなす角度θ2が大きいほど、蓋体3が閉じるまでの間に凸部11aが凹部12aにおいて嵌入状態を維持するために必要な、凹部12aの回転半径R2方向の長さが長くなる。蓋体3が閉じられた際に凸部11aの軸線X方向と凹部12aの軸線Y方向とが一致することから、凹部12aの回転半径R2方向の長さLが長くなると、蓋体3が閉じられた際に凸部11aと凹部12aの孔壁との間に隙間が形成されるので、筐体本体2と蓋体3とが相互に拘束し合えなくなる。この結果、筐体本体2と蓋体3との相対摺動を確実に阻止することができない。したがって、本実施の形態においては、拘束手段1の設置場所は蝶番4が固定されている側壁22A、32Aと向き合う側壁22B、32Bが最適である。
【0037】
図1(c)に示すように、凸部11aの軸線Xに直交する断面が凸部11aの先端へ向かって縮小する形状であれば、凸部11aは凹部12aの孔壁に接触せずに凹部12a内を回動し易くなるので、凸部11aの凹部12aの孔壁と衝撃等に起因する、嵌入部材11及び被嵌入部材12の損傷等による強度低下が避けられる。
【0038】
また、図1(a)、(b)では、側壁32Bの内面と側壁32Cの内面からなる隅角部に嵌入部材11が、側壁22Bの内面と側壁22Cの内面からなる隅角部に被嵌入部材12が設けられている。被嵌入部材12が筐体本体2の側壁22Bに当接するとともに、蝶番4の回転軸41方向の何れか一方側で側壁22Cに当接する。
【0039】
筐体本体2又は蓋体3が蝶番4の回転軸41方向に外力を受けて嵌入部材11が被嵌入部材12の接続している側壁22C側に相対移動しようとする際に、被嵌入部材12が当該側壁22Cから反力を受ける。また、筐体本体2又は蓋体3が蝶番4の回転軸41方向に外力を受けて嵌入部材11が被嵌入部材12の接続している側壁22Cとは反対側の側壁22C側に相対移動しようとする際に、被嵌入部材12が当該接続している側壁22Cから引張力を受ける。つまり、被嵌入部材12は蝶番4の回転軸41方向の外力に対して筐体本体2の側壁22Bとの接合力の他に抵抗力が得られるので、拘束手段1の強度が増大する。
【0040】
図3(a)に示すように、凹部12aの、凸部11aが嵌入してくる側の端部には、先端へ向かって外側に広がり傾斜する斜面12bが形成されている。上述したように、蓋体3が閉じた状態に近づくにつれ、凸部11aの先端が回転半径R2方向外向きに移動することから、先端に向かって広がる斜面12bが凹部12aに形成されていれば、凸部11aが凹部12aの孔壁に接触せずに凹部12a内を回動することが可能である。
【0041】
また、仮に、製作誤差等によって凸部11aが回動半径R2方向外向きにズレている場合であっても、凸部11aはその移動途中において被嵌入部材12の内壁に接触し、斜面12bに沿って回動半径R2方向内向きに滑るので、凸部11aを強制的に凹部12a内に嵌入することができる。
【0042】
図1(c)及び図3(a)、(b)に示すように、凹部12aの斜面12bが形成されている部分を除く、凸部11aと嵌合する部分(以下、嵌合部分という)及び凸部11aの断面が縮小されている部分を除く、凹部12aと嵌合する部分(以下、嵌合部分という)は円柱形状を呈し、凹部12aの嵌合部分の軸線Yに直交する断面と、凸部11aの嵌合部分の軸線Xに直交する断面は合同である。
【0043】
したがって、蓋体3が閉められて凸部11aが凹部12aに嵌入したとき、軸線X(軸線Y)に直交する面内において放射方向に凸部11aと凹部12aとが拘束し合うので、軸線X(軸線Y)に直交する、筐体本体2と蓋体3との接触面の面を含む面内方向への相対移動が拘束される。
【0044】
当該凸部11aの嵌合部分の断面形状と凹部12aの嵌合部分の断面形状が一致していることで、凹部12aの断面が最小となるので、被嵌入部材12の材料を削減することができる。
【0045】
また、嵌入部材11及び被嵌入部材12を蓋体3及び筐体本体2に着脱自在にすることもでき、この場合、拘束手段1の機能が低下又は失効したときに拘束手段1のみを交換すれば筺体10全体の機能を維持することができ、経済的である。
【0046】
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0047】
例えば、嵌入部材11’の凸部11’a及び被嵌入部材12’の凹部12’aを各々の軸線X、Yに直交する断面が角形状(図において矩形状)になるように成型することができる。一例をあげると、図4(a)〜(c)、図5(a)〜(c)に示すように、凸部11a’が平面視方形状を呈し、凹部12a’及び斜面12b’が平面視方形の環状を呈している。この場合、実施の形態1に比して側壁22B、32Bとの接触部分が大きくなるので、拘束手段1‘の外力等に対抗する強度が増大する。
【0048】
蓋体3が閉じた状態に近づくにつれ、凸部11a’の先端が回転半径R2方向外向きに移動するので、凸部11a’と凹部12a’の孔壁との接触を回避させるために、凸部11a’の先端を回転半径R1方向内向きに傾斜させることが好ましい。
【0049】
また、筺体10を使用する上で怪我をしたり、収納する物品を損傷させたりする危険性があるので、そのような危険性を避けるために凸部11a’の先端を曲面状に形成することも好ましい。
【0050】
さらに、例えば、蓋体3あるいは筐体本体2の側壁33、22の端面全周に溝が形成され、溝に防水パッキンが設置されれば、筐体10の気密性(防水性)を高めることができ、好適である。
【0051】
なお、筐体本体2に嵌入部材11を設け、蓋体3に被嵌入部材12を設けることもでき、この場合、上述した作用・効果と同一の作用・効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は蓋体が開いた状態の筺体の様子を表す斜視図、(b)は図1の蓋体が閉じられた様子を表す平面図を表し、(c)は図1(b)の凸部と凹部の嵌合状態を表す拡大断面図である。
【図2】(a)は凸部の先端が凹部に差し掛かった時の筺体の様子を表す断面図、(b)は凸部が凹部内を回動する様子を表す断面図である。
【図3】(a)は図1の筐体本体の要部平面図、(b)は図1の蓋体の要部底面図である。
【図4】(a)はその他の実施の形態における筐体本体の要部平面図、(b)は図4(a)のA−A断面図、(c)は図4(a)のB−B断面図である。
【図5】(a)はその他の実施の形態における蓋体の要部底面図、(b)は図5(a)のC−C断面図、(c)は図5(a)のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…………拘束手段
2…………筐体本体
3…………蓋体
4…………蝶番
5…………固定手段
10………筺体
11………嵌入部材
11a……凸部
12………被嵌入部材
12a……凹部
51………フック状部材
52………フック受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収容する筐体本体と前記筐体本体に蝶番を介して接続される蓋体とを備え、前記蝶番の回転軸方向が鉛直方向に一致した状態で設置される電子機器用筐体であって、
前記筐体本体及び前記蓋体に設置され、前記蓋体が閉じられたときに前記蓋体の回転を阻止する固定手段と、
前記筐体本体あるいは前記蓋体のいずれか一方に設けられた、凸部を有する嵌入部材と、
前記筐体本体あるいは前記蓋体の他方に設けられた、前記蓋体が閉じられたときに前記凸部が嵌合される凹部を有する被嵌入部材とを備え、
この嵌合によって前記蓋体の鉛直方向への移動が阻止されることを特徴とする電子機器用筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−206320(P2009−206320A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47606(P2008−47606)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】