説明

電子機器

【課題】操作子の数を増やすことなく操作可能な処理を増やしつつ、良好な操作性を得る。
【解決手段】スライド操作可能な少なくとも2つのスライド操作部30と、前記スライド操作部30が操作された場合に、操作されたスライド操作に予め対応付けられた処理を実行する制御部40と、を備え、前記制御部40を、少なくとも2つの前記スライド操作部30が略同時にスライド操作されたことを検出可能に構成し、少なくとも2つの前記スライド操作部30が略同時にスライド操作されたことを検出した場合に所定の処理を実行するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド操作可能な操作子を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーステレオ等の電子機器においては、音量を調節するための操作部が設けられ、この操作部には、つまみ部が直線にスライド移動するスライド式の操作子や、つまみ部が回転する回転式の操作子が広く用いられている。しかしながら、これらの操作子は、つまみ部を2本の指で摘んで操作する必要があり、操作が面倒であった。
そこで、複数の非接触センサを1列に配置し、各非接触センサの検出値に基づいてスライド操作を検出するスライド操作子を構成し、このスライド操作子に対するスライド操作に応じて音量を調整するようにした電子機器が提案されている。この電子機器によれば、つまみ部を摘むことなく1本の指で非接触に音量を調節することができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−243710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来の技術において、ユーザが操作可能な処理が増えた場合、その処理ごとに操作子を別途に設ける必要があり、部品点数の増加やコストアップを招く、という問題がある。
また、操作子と処理の対応付けを切り替えるための切替用操作子を別途に設け、この切替用操作子の操作状態に応じて、各操作子に予め割り当てた処理を切り替え可能に構成することで、操作子の増加を抑えつつ、各操作子に割り当てる処理の数を増やすことが可能になる。しかしながら、ユーザが所望の処理に対応した操作をする場合、切替用操作子を操作して、所望の処理を操作子に対応付けてから、当該操作子を操作せねばならず、操作が複雑である、といった問題があった。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、操作子の数を増やすことなく操作可能な処理を増やしつつ、良好な操作性を得ることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明の電子機器は、スライド操作可能な少なくとも2つの操作子と、前記操作子が操作された場合に、操作されたスライド操作に予め対応付けられた処理を実行する実行手段と、を備え、前記実行手段を、少なくとも2つの前記操作子が略同時にスライド操作されたことを検出可能に構成し、少なくとも2つの前記操作子が略同時にスライド操作されたことを検出した場合に所定の処理を実行することを特徴とする。
【0005】
また本発明は、上記の電子機器において、少なくとも2つの前記操作子を、片手で操作可能な所定の距離内に互いに離間配置したことを特徴とする。
【0006】
また本発明は、上記の電子機器において、少なくとも2つの前記操作子を、スライド操作時のスライド方向が互いに略平行になるように配置したことを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の電子機器は、複数のセンサを一列に配置し、各センサの検出量変化に基づいて、スライド操作を検出する操作子を複数備え、各操作子が個別に前記スライド操作された場合には、操作された操作子に予め対応付けられた処理を実行し、少なくとも2つ以上の前記操作子に亘り前記センサの検出量を略同時に変化させる操作が行われた場合には、当該操作に対応した所定の処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少なくとも2つの操作子が同時にスライド操作されたことを検出可能に構成し、少なくとも2つの操作子が同時にスライド操作されたことを検出した場合に所定の処理を実行する構成としたため、それぞれの操作子が個別に操作されたときとは異なる処理を実行させることが可能となり、操作子の数を増やすことなく操作可能な処理を増やしつつ、良好な操作性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器の一例たるカーステレオを示す斜視図である。カーステレオ1は、自動車のインストルメントパネル(不図示)に取り付けられるステレオ本体2を有する。
このステレオ本体2の前面には、操作パネル3が設けられ、この操作パネル3には、操作子としての左右一対のスライド操作部30と、表示部としての液晶パネル5が配設されている。この液晶パネル5には、例えば、再生中の楽曲のタイトル、演奏時間、アーティスト名等の楽曲情報や、現在の音量が表示される他、メニューの切り替えを行う操作画面が表示される。
【0010】
図2はスライド操作部30の縦断面図である。
スライド操作部30は、操作パネル3の内側に設けられたパネル基板31と、このパネル基板31上に直線上に略等間隔に配列された2つ以上(本実施の形態では、3つ)の非接触センサ32A〜32Cとを有して構成され、操作パネル3には、これら非接触センサ32A〜32Cの対向箇所に上下に延びた検出窓33が設けられている。
上記非接触センサ32A〜32Cの各々は、検出窓33に接近した操作指までの距離を検出する距離センサであり、カーステレオ1は、非接触センサ32A〜32Cのそれぞれが検出した操作指までの距離A、B、及びC(検出値)に基づいて、操作指の上下移動によるスライド操作を検出する。
本実施形態では、かかる2つのスライド操作部30がスライド操作方向が略並行になるように配置され、また、各スライド操作部30は、一方のスライド操作部30を操作する指が他方のスライド操作部30に検出される事が無く(図4参照)、なおかつ、両方のスライド操作部30を片方の手のひらで覆うことが可能(図5参照)な距離だけ離間して配置されている。なお、上記一対のスライド操作部30のスライド操作方向を左右としても良い。
【0011】
図3は、カーステレオ1の機能的構成のうち、上記スライド操作部30に係る主要な部分を示すブロック図である。
この図に示すように、カーステレオ1は、上述した一対のスライド操作部30と、制御部40と、上記液晶パネル5とを備えている。
制御部40は、カーステレオ1の各部を中枢的に制御するものであり、この制御部40には、スライド操作部30が備える非接触センサ32A〜32Cの各々の検出信号が入力されることで、制御部40は、これらの検出信号に基づいて、操作指によるスライド操作を検出可能に構成されている。
さらに詳述すると、制御部40は、非接触センサ32A〜32Cの各々の検出信号に基づいて、各非接触センサ32A〜32Cから操作指までの距離A〜C(図2参照)を求めて操作指の位置を特定し、その後の距離A〜Cの変化に基づいて、操作指のスライド量(移動量)、及びスライド方向を算出する。
【0012】
各スライド操作部30には、予め所定の処理が割り当てられており、本実施形態では、左側のスライド操作部30に対しては、スライド量、及びスライド方向に応じた音量調整処理、右側のスライド操作部30に対しては、スライド量、及びスライド方向に応じた、再生楽曲の早送り/巻き戻し処理が割り当てられている。
これにより、図4に示すように、ユーザがスライド操作部30の上で指をスライド移動させることで、かかる動作がスライド操作として検出され、音量調整や再生楽曲の早送り/巻き戻しが行われる。
【0013】
また、本実施形態では、制御部40は、一対のスライド操作部30の各々に対するスライド操作を同時に検出した場合、各スライド操作部30に個別に割り当てられた処理の夫々を実行するのではなく、一対のスライド操作部30の同時スライド操作に対して予め割り当てられた所定の処理を実行する。この所定の処理として、本実施形態では、電源のオン/オフ処理が割り当てられている。
【0014】
これにより、図5に示すように、カーステレオ1が電源オンの状態において、ユーザが手のひらを広げ、一対のスライド操作部30の両方を同時にかざすようにして、上か下にスライド移動させることで、一対のスライド操作部30の両方に対して略同時にスライド操作された事が検知され、カーステレオ1の電源がオフになる。
これとは逆に、電源がオフの状態において、一対のスライド操作部30の両方を同時にかざすようにして、下か上に手のひらをスライド移動させた場合には、電源がオンになる。
【0015】
このような同時スライド操作の検出は、一対のスライド操作部30が全く同一タイミングで操作された場合のみを検出するのではなく、制御部40は、一方のスライド操作部30が操作されてから一定時間(例えば、数msec以内)の間に他方が操作されたか否かを判断し、他方のスライド操作部30が操作された場合に、同時操作と判断する。また、一定時間の間に他方のスライド操作部30が操作されなかった場合には、制御部40は、操作された側のスライド操作部30に予め対応付けられた処理を実行する。
【0016】
また、本実施形態では、一対のスライド操作部30の両方に対する同時スライド操作の他に、例えば、一対のスライド操作部30の両方を同時に手のひらで一定時間(数秒)覆うといったように、両方のスライド操作部30に亘り、それぞれが備える非接触センサ32A〜32Cの検出量を略同時に変化させる操作を検出した場合にも、その操作に例えばミュート処理等の所定の処理を割り当てることとしている。
【0017】
このような操作の検出も、上記の同時スライド操作の検出と同様に、一対のスライド操作部30の各非接触センサ32A〜32Cが全く同一タイミングで検出値が変化した場合のみを検出するのではなく、制御部40は、一方のスライド操作部30のいずれかの非接触センサ32A〜32Cの検出値が変化してから一定時間(例えば、数msec以内)の間に他方のスライド操作部30のいずれかの非接触センサ32A〜32Cの検出値が変化したか否かを判断し、他方のスライド操作部30の非接触センサ32A〜32Cの検出値が変化した場合には、一定時間(例えば数秒)に亘り、その検出値が変化後の検出値に維持されたとき(すなわち、2つのスライド操作部30が一定時間に亘り、片方の手のひらで覆われ続けたとき)、上記のミュート処理等の所定の処理を実行する。
【0018】
図6は、スライド操作部30がスライド操作されたときの制御部40の操作受付処理を示すフローチャートである。
制御部40は、一対のスライド操作部30のいずれかが操作された場合(ステップS1:Y)、その操作から一定時間(例えば、数ms)以内に、他方のスライド操作部30がスライド操作されたか否かに基づいて、両方のスライド操作部30に対する同時スライド操作か否かを判別する(ステップS2)。
この判別の結果、同時スライド操作の場合(ステップS2:Y)、制御部40は、そのスライド方向が下向きか否か判別する(ステップS3)。スライド方向が下向きの場合(ステップS3:Y)、制御部40は、カーステレオ1の電源がONか否か判別する(ステップS4)。
【0019】
カーステレオ1の電源がONの場合(ステップS4:Y)、制御部40は、カーステレオ1の電源をOFFにし(ステップS5)、処理ステップをステップS1へ移行する。カーステレオ1の電源がOFFの場合(ステップS4:N)、制御部40は、処理ステップをステップS1に移行する。
スライド方向が上向きの場合(ステップS3:N)、制御手段は、カーステレオ1の電源がOFFか否か判別する(ステップS6)。カーステレオ1の電源がOFFの場合(ステップS6:Y)、制御手段は、カーステレオ1の電源をONにし(ステップS7)、処理をステップS1に移行する。
【0020】
一方、ステップS2の判別の結果、スライド操作が一対のスライド操作部30に対する同時操作でない場合(ステップS2:N)、制御部40は、そのスライド操作が右側のスライド操作部30の操作か否か判別する(ステップ8)。スライド操作が右側のスライド操作部30の操作の場合(ステップS8:Y)、制御部40は、右側のスライド操作部30に対応する処理(本実施形態では楽曲の早送り/巻き戻し)を実行し(ステップS9)、処理ステップをステップS1へ移行する。スライド操作が左側のスライド操作部30の操作の場合(ステップS8:N)、制御部40は、左側のスライド操作部30に対応する処理(本実施形態では音量調節処理)を実行し(ステップS10)、処理をステップS1へ移行する。
【0021】
また、上記ステップS2において、制御部40は、一対のスライド操作部30に対する操作により、そのスライド操作部30のいずれかの非接触センサ32A〜32Cの検出値が変化してから一定時間(例えば、数msec以内)の間に他方のスライド操作部30のいずれかの非接触センサ32A〜32Cの検出値が変化し、その後、一定時間(例えば数秒)に亘り、その検出値が変化後の検出値に維持されたときに(すなわち、2つのスライド操作部30が一定時間に亘り、片方の手のひらで覆われ続けたとき)、上記のミュート処理等の所定の処理を実行する。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、スライド操作可能な操作子としての一対のスライド操作部30が略同時にスライド操作されたことを検出した場合に、例えば電源オン/オフなどの所定の処理を実行する構成としたため、それぞれのスライド操作部30が個別に操作されたときとは異なる処理を実行させることが可能となり、操作子の数を増やすことなく操作可能な処理を増やしつつ、良好な操作性を得ることができる。
【0023】
特に、本実施形態によれば、2つのスライド操作部30の両方を、片手の手のひらで一度に操作可能な距離内に離間配置したため、両手を使わずに同時操作をすることができ、操作性の向上が図られる。
【0024】
さらに本実施形態によれば、2つのスライド操作部30を、スライド操作時のスライド方向が互いに略平行になるように配置したため、2つのスライド操作部30に亘ってかざした手のひらを上下に移動させる等して、簡単に同時スライド操作を行うことができ、非常に良好な操作性が実現される。
【0025】
また本実施形態によれば、スライド操作部30を、複数の非接触センサ32A〜32Cを一列に配置し、各非接触センサ32A〜32Cの検出量変化に基づいて、スライド操作を検出する構成としたため、操作つまみ等を摘んで操作する必要が無く、操作が簡単になる。
特に、操作つまみを有するスライド操作部であると、両方のスライド操作部30を操作する際に、各々の操作つまみの位置を確認する必要があるものの、スライド操作部30を、センサによりスライド操作を検出する構成としているため、スライド操作部30の状態を確認する必要が無く、一対のスライド操作部30に亘って片方の手のひらをかざすだけで簡単に操作することができる。
【0026】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、2つのスライド操作部30に対して同時にスライド操作が行われた場合の処理を電源のオン/オフ処理としたが、これに限らず、例えば、液晶パネル5のバックライトの減光/増光処理(特に、周囲の明るさに合わせてバックライトの輝度を調光するディマー時)や、ミュートのオン/オフとった任意の処理に割り当てることが可能である。
さらに、音楽再生動作時、メニュー画面表示時、或いは、電源オフ時といった、そのときのカーステレオ1の動作状態や動作モードに応じて、2つのスライド操作部30に対して同時にスライド操作が行われたときに実行する処理を切り替える構成としても良いことは勿論である。
【0027】
また、上述した実施形態では、スライド操作部30がスライド操作検出のために備えるセンサを非接触センサ32A〜32Cとしたが、これに限らず、タッチパネル等の接触型のセンサを備えてスライド操作を検出するようにしてもよい。
【0028】
また、上述した実施形態では、カーステレオに本発明を適用した場合を例示したが、これに限らず、例えばカーナビゲーション装置や、ハンズフリー通話装置といった任意の車載装置に本発明を適用することができる。また、車載装置に限らず、例えば携帯電話機や、PDA、ノート型パソコン等の携帯型の電子機器、或いは、据え置き型のステレオ、テレビ等の据え置き型の電子機器にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るカーステレオを示す斜視図である。
【図2】スライド操作部の縦断面図である。
【図3】カーステレオのスライド操作に係る機能的構成を示すブロック図である。
【図4】スライド操作部を指で操作する操作態様を示す図である。
【図5】一対のスライド操作部を略同時にスライド操作する操作態様を示す図である。
【図6】スライド操作部に対する操作受付処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1 カーステレオ(電子機器)
30 スライド操作部(操作子)
32A〜32C 非接触センサ
40 制御部(実行手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド操作可能な少なくとも2つの操作子と、
前記操作子が操作された場合に、操作されたスライド操作に予め対応付けられた処理を実行する実行手段と、を備え、
前記実行手段を、少なくとも2つの前記操作子が略同時にスライド操作されたことを検出可能に構成し、少なくとも2つの前記操作子が略同時にスライド操作されたことを検出した場合に所定の処理を実行する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
少なくとも2つの前記操作子を、片手で操作可能な所定の距離内に互いに離間配置したことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
少なくとも2つの前記操作子を、スライド操作時のスライド方向が互いに略平行になるように配置したことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
複数のセンサを一列に配置し、各センサの検出量変化に基づいて、スライド操作を検出する操作子を複数備え、
各操作子が個別に前記スライド操作された場合には、操作された操作子に予め対応付けられた処理を実行し、
少なくとも2つ以上の前記操作子に亘り前記センサの検出量を略同時に変化させる操作が行われた場合には、当該操作に対応した所定の処理を実行する
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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