説明

電子機器

【課題】太陽電池と有機EL素子とを備えた電子機器において、有機EL素子の視認性に優れるとともに、製造が容易な電子機器を提供する。
【解決手段】本発明の電子機器は、同一面上に、互いに間隔を置いて配置された第一電極22および第二電極23と、第一電極22上に設けられた有機エレクトロルミネッセンス層24と、第二電極23上に設けられた高分子発電層25と、有機エレクトロルミネッセンス層24の一方の面24aおよび高分子発電層25の一方の面25aに接するように設けられた透明電極26と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池と有機エレクトロルミネッセンス素子とを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro−Luminescence、以下、「有機EL」と略すこともある。)素子などの表示素子を備えた電子機器が多数開示されている。
このような電子機器としては、表示素子を動作させるための電力を得るために、太陽電池を備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この電子機器では、太陽電池が、円偏光板を介して有機EL素子上に積層されている。
【特許文献1】特開2008−107726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている電子機器は、太陽電池を最表面に配置することにより、有機EL素子の長時間動作を可能としているものの、太陽電池と有機EL素子が同一面上に配置されていないため、有機EL素子による表示の視認性が十分でないという問題があった。また、太陽電池と有機EL素子を積層するため、必要とする部材が多く、製造工程も多くなるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、太陽電池と有機EL素子とを備えた電子機器において、有機EL素子の視認性に優れるとともに、製造が容易な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子機器は、同一面上に、互いに間隔を置いて配置された第一電極および第二電極と、前記第一電極上に設けられた有機エレクトロルミネッセンス層と、前記第二電極上に設けられた高分子発電層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層の前記第一電極と接している面とは反対側の面および前記高分子発電層の前記第二電極と接している面とは反対側の面に接するように設けられた透明電極と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電子機器によれば、同一面上に、互いに間隔を置いて配置された第一電極および第二電極と、前記第一電極上に設けられた有機エレクトロルミネッセンス層と、前記第二電極上に設けられた高分子発電層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層の前記第一電極と接している面とは反対側の面および前記高分子発電層の前記第二電極と接している面とは反対側の面に接するように設けられた透明電極と、を備えたので、有機エレクトロルミネッセンス層による表示パターンの視認性にすぐれている。また、透明電極に対して同一面上に有機エレクトロルミネッセンス層と高分子発電層を形成することができるので、製造工程を簡略化することができ、ひいては、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の電子機器の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0008】
図1は、本発明の電子機器の一実施形態を示す概略構成図である。図2は、本発明の電子機器を構成する発電/表示素子の一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の電子機器10は、発電/表示素子20と、スイッチ31と、二次電池32と、ダイオード33と、これらを電気的に接続する導電部34,35,36とから概略構成されている。
【0009】
発電/表示素子20は、基材21と、基材21の一方の面21aに、互いに間隔を置いて配設された第一電極22および第二電極23と、第一電極22の基材21と接している面とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)22aに設けられた有機エレクトロルミネッセンス層(以下、「有機EL層」と略すこともある。)24と、第二電極23の基材21と接している面とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)23aに設けられた高分子発電層25と、有機EL層24の第一電極22と接している面とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)24a、および、高分子発電層25の第二電極23と接している面とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)25aに接するように設けられた透明電極26と、透明電極26の有機EL層24および高分子発電層25と接している面とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)26aに設けられた光透過性基材27とから概略構成されている。
【0010】
第一電極22は、基材21の一方の面21aの中央部に設けられ、この第一電極22の外縁に、第一電極22と所定の間隔を置いて、すなわち、互いに接することなく、第二電極23が設けられている。
また、第一電極22と第二電極23は、基材21の一方の面21aに設けられた厚みの等しい導電部からなる。そして、これらの第一電極22および第二電極23上に積層された有機EL層24と高分子発電層25は同一面上に配置されている。
また、透明電極26は、光透過性基材27の有機EL層24および高分子発電層25に対向する面(以下、「一方の面」と言う。)27aの全面に配置されている。
【0011】
この電子機器10では、基材21、第一電極22、有機EL層24、透明電極26および光透過性基材27からなる積層体が、有機EL素子を構成している。
また、基材21、第二電極23、高分子発電層25、透明電極26および光透過性基材27からなる積層体が、高分子型太陽電池素子を構成している。
すなわち、発電/表示素子20は、有機EL素子と高分子型太陽電池素子を同一面上に併せて備えたものである。
【0012】
第一電極22は、導電部34を介してスイッチ31の第二接点31Cと接続されている。また、導電部34の途中には、ダイオード33が接続されている。
第二電極23は、導電部35を介してスイッチ31の第一接点31Bと接続されている。
透明電極26は、導電部36を介してスイッチ31の可動部31Aと接続されている。また、導電部36の途中には、二次電池32が接続されている。
【0013】
また、導電部34と導電部35は、互いに接することなく、所定の間隔を置いて配置されている。
【0014】
スイッチ31の可動部31Aは、スイッチ31の第一接点31Bと第二接点31Cに対して切り換え接続できるようになっているとともに、発電/表示素子20および導電部34,35,36などからなる回路の接続を断つことができる(図1に示した状態)ようになっている。
すなわち、スイッチ31の可動部31Aを、スイッチ31の第一接点31Bに接続すると、上記の高分子型太陽電池素子が機能し、一方、スイッチ31の可動部31Aを、スイッチ31の第二接点31Cに接続すると、上記の有機EL素子が機能する。
【0015】
基材21としては、フィルム状、シート状または板状のものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびこれらの金属架橋物などからなるフィルム、シートまたは板などや、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した被覆部材、ガラス基材、各種金属基材などが挙げられる。
【0016】
第一電極22と第二電極23は、第一基材21の一方の面21aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成してなるもの、もしくは、導電性箔を所定のパターンにエッチングしてなるもの、金属メッキにより所定のパターンを形成してなるものである。
【0017】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが用いられる。
【0018】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度で第一電極22および第二電極23をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。第一電極22および第二電極23をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することによる形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0019】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0020】
また、第一電極22および第二電極23をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、第一電極22および第二電極23をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0021】
有機EL層24をなす材料としては、有機溶剤に可溶なπ共役系ポリマーもしくは色素含有系ポリマーが用いられる。
【0022】
高分子発電層25をなす材料としては、特表2005−530351号公報や特開2006−12802号公報に開示されている機能性膜形成用の材料が用いられる。
【0023】
透明電極26としては、スズドープ酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO:Fluoride−doped TinOxide)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO:Antimony−doped Tin Oxide)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO:Aluminum−doped Zinc Oxide)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO:Gallium−doped Zinc Oxide)などの導電性金属酸化物の薄膜からなるものが挙げられる。
【0024】
光透過性基材27としては、光透過性かつ可撓性のものが用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびこれらの金属架橋物などからなるフィルム、シートまたは板などが挙げられる。
【0025】
なお、光透過性基材27と透明電極26は一体化されたものであってもよい。その場合、光透過性基材27の一方の面27aの全面に、スパッタリング法などにより、透明電極26なす導電性金属酸化物の薄膜が設けられ、光透過性基材27と透明電極26からなる透明導電性基材が用いられる。
【0026】
また、発電/表示素子20には、上記の構成部材を接着して一体化するとともに、有機EL層24と高分子発電層25を封止して、これらの層と空気との接触を遮断するために、封止用接着剤(図示略)が用いられる。
封止用接着剤としては、特に限定されないが、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、電子線硬化型接着剤などが用いられる。
熱硬化型接着剤としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル系反応樹脂などが挙げられる。
紫外線硬化型接着剤としては、紫外線硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリウレタン樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化性イミドアクリレート樹脂などが挙げられる。
電子線硬化型接着剤としては、電子線硬化性アクリル樹脂、電子線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、電子線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、電子線硬化性ポリウレタン樹脂、電子線硬化性エポキシアクリレート樹脂、カチオン硬化型樹脂などが挙げられる。
【0027】
スイッチ31としては、特に限定されず、可動部31Aが、第一接点31Bと第二接点31Cに対して切り換え接続できるものであればいかなるものでも用いられる。
二次電池32としては、特に限定されず、一般的な二次電池が用いられる。
ダイオード33としては、特に限定されず、一般的な電子機器に使用されるものが用いられる。
導電部34,35,36としては、特に限定されず、上記の第一電極22と第二電極23と同様のものや、一般的な配線が用いられる。
【0028】
次に、電子機器10の製造方法について、その一例を挙げて説明する。
まず、発電/表示素子20を作製する。
発電/表示素子20を作製するには、ポリマー型導電インクを用いた印刷法により、基材21の一方の面21aの一部に、第一電極22と第二電極23のそれぞれをなす所定形状の印刷層を形成する。
この工程において、印刷法としては、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法などが用いられる。
【0029】
また、上記の第一電極22と第二電極23を形成する工程とは別に、スパッタリング法などにより、光透過性基材27の一方の面27aの全面に、ITO、FTO、ATOなどの導電性金属酸化物を蒸着し、この導電性金属酸化物の薄膜からなる透明電極26を形成し、光透過性基材27と透明電極26からなる透明導電性基材を得る。
【0030】
次いで、有機溶剤に可溶なπ共役系ポリマーもしくは色素含有系ポリマーを用いた印刷法により、光透過性基材27の一方の面27aに設けられた透明電極26上に、有機EL層24をなす所定形状の印刷層を形成するとともに、上記の機能性膜形成用の材料を用いた印刷法により、光透過性基材27の一方の面27aに設けられた透明電極26上に、高分子発電層25をなす所定形状の印刷層を形成する。
この工程において、印刷法としては、インクジェット法、スクリーン印刷法などが用いられる。
【0031】
次いで、第一電極22に有機EL層24が当接するとともに、第二電極23に高分子発電層25が当接するように、封止用接着剤を用いて、第一電極22と第二電極23が設けられた基材21に、有機EL層24と高分子発電層25が設けられた透明導電性基材を接着し、発電/表示素子20を得る。
【0032】
次いで、導電部34を介して、第一電極22とスイッチ31の第二接点31Cを接続するとともに、導電部34の途中に、ダイオード33を接続する。
また、導電部35を介して、第二電極23とスイッチ31の第一接点31Bを接続する。
さらに、導電部36を介して、透明電極26とスイッチ31の可動部31Aを接続し、電子機器10を得る。
【0033】
次に、電子機器10の動作について説明する。
この電子機器10において、スイッチ31の可動部31Aを、スイッチ31の第一接点31Bに接続すると、上記の高分子型太陽電池素子が機能する。
すなわち、光透過性基材27の他方の面(最表面)27b側から発電/表示素子20に光が当たると、高分子発電層25において電力が発生する。そして、発生した電力は、二次電池32に蓄積される。
【0034】
一方、スイッチ31の可動部31Aを、スイッチ31の第二接点31Cに接続すると、上記の有機EL素子が機能する。
すなわち、二次電池32に蓄積された電力により、有機EL層24が発光し、有機EL層24によって形成される表示パターンが表示される。
【0035】
この電子機器10によれば、透明電極26を共通電極とし、この透明電極26に対して同一面上に有機EL層24と高分子発電層25が配設されたので、有機EL層24による表示パターンの視認性にすぐれている。また、印刷法により、透明電極26に対して同一面上に有機EL層24と高分子発電層25を形成することができるので、製造工程を簡略化することができ、ひいては、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の電子機器の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の電子機器を構成する発電/表示素子の一実施形態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10・・・電子機器、20・・・発電/表示素子、21・・・基材、22・・・第一電極、23・・・第二電極、24・・・有機エレクトロルミネッセンス層、25・・・高分子発電層、26・・・透明電極、27・・・光透過性基材、31・・・スイッチ、32・・・二次電池、33・・・ダイオード、34,35,36・・・導電部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一面上に、互いに間隔を置いて配置された第一電極および第二電極と、前記第一電極上に設けられた有機エレクトロルミネッセンス層と、前記第二電極上に設けられた高分子発電層と、前記有機エレクトロルミネッセンス層の前記第一電極と接している面とは反対側の面および前記高分子発電層の前記第二電極と接している面とは反対側の面に接するように設けられた透明電極と、を備えたことを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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