説明

電子機器

【課題】組立時の部品の損傷を防止すると共に設計の自由度を高める電子機器を提供する。
【解決手段】円筒形状の回転ダイヤル6を有するベースユニット20Aを収納するフロントカバー10の境界線Bが円筒形状の円の中心Cからずれており、フロントカバー10は一対の案内部15a、15bを有し、円の直径Dはフロントカバーの収納部12の開口部13の幅D1よりも大きく、ベースユニットは、円筒面の少なくとも一部を有する案内部28Aを更に有し、円筒面の外径D3は一対の案内部の幅D2よりも大きい。組立時に案内部同士が接触して幅D2が広がることにより幅D1が直径Dよりも広がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラには、操作メニューを選択するための回転ダイヤルが設けられている。デジタルカメラは、回転ダイヤルを含む内装部品にフロントカバーとリアカバーを組み付けることによって組み立てられるが、従来は、組み付け時の部品の損傷を防止するためにフロントカバーとリアカバーの境界線上に回転ダイヤルの中心を配置していた。
【0003】
例えば、図7(a)に示すように、フロントカバー30とリアカバー35の境界線B上に回転ダイヤル6の中心Cがなく、中心Cがフロントカバー30側にずれている場合を考える。C1は中心Cを通り、境界線Bに平行な直線であり、直線C1と境界線Bは一致していない。この場合、図7(b)に示すように、回転ダイヤル6を収納するフロントカバー30の収納部31の開口部32の幅D1は回転ダイヤル6の直径Dよりも小さい。従って、回転ダイヤル6を収納部31内に収めるときに開口部32と回転ダイヤル6の外縁39が擦れて両者の一方又は両方が傷つく。一方、境界線B上に回転ダイヤル6の中心Cを配置すれば開口部32の幅D1はDと等しいか若干大きくなるために、この問題を解決することができる。
【0004】
従来技術としては、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2006−98773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、常にフロントカバー30とリアカバー35の境界線B上に回転ダイヤル6の中心Cを常に配置することは、電子機器全体の設計の自由度が低下し、小型化も実現できない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、組立時の部品の損傷を防止すると共に設計の自由度を高める電子機器を提供することを例示的な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としての電子機器は、円筒形状の操作部材を有するベースユニットと、前記ベースユニットの少なくとも一部を覆うカバーとを有し、前記カバーには、前記操作部材の周囲を半周以上覆うことで前記操作部材を収納する収納部と、前記収納部の開口部から延出形成される一対の第1案内部が形成され、前記ベースユニットには、前記ベースユニットに前記カバーを組み付ける際に、前記第1案内部と接触する第2案内部が前記操作部材の外側に形成され、前記ベースユニットに前記カバーを組み付ける際に、前記一対の第1案内部が前記第2案内部に接触して前記カバーが弾性変形して、前記開口部の端が前記第2案内部に接触しないように、前記第2案内部の外径および前記一対の第1案内部の幅を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、組立時の部品の損傷を防止すると共に設計の自由度を高める電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施例の電子機器であるデジタルカメラ(撮像装置)について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、実施例1のデジタルカメラの部分分解斜視図である。図2は、実施例1のデジタルカメラの外観斜視図である。
【0011】
1はカメラ本体であり、この内部には撮影を可能とする各種の部材が配置されている。2は撮影者がカメラ本体1を保持するためのグリップ部である。3はレンズ鏡筒であり、光軸方向に繰り出したり繰り込んだりすることにより、撮影光学系の焦点距離を変更する。 4はレンズ鏡筒3の撮像画角(撮影光学系の焦点距離)を変更するために操作されるズームレバーであり、円筒状に形成されており、カメラ本体1に組み込まれる。ズームレバー4は、軸を中心に正逆方向に所定量、回転可能となっている。
【0012】
5は2段階の押圧操作が可能なレリーズボタンであり、半押操作により撮影準備動作(測光動作や焦点調節動作等)が開始され、全押し操作により撮影動作(CCD等の撮像素子への露光)が開始される。 6はシャッタスピード優先モード、絞り優先モード、ポートレート撮影モード、夜景撮影モードなど様々な撮影モードを選択する回転ダイヤル(モードダイヤル)であり、回転軸を中心に回転可能となっている。回転ダイヤル6は、円筒形状の操作部材(又は入力部材)である。7は、デジタルカメラの電源をオン又はオフする電源ボタンである。9はカメラ本体1のリアカバーである。
【0013】
10はカメラ本体1のフロントカバーである。フロントカバー10とリアカバー9はカメラ本体1の筐体を構成する。このように、カメラ本体1の筐体は一対のカバーを含み、本実施例では、一対のカバーの分割線は境界線Bである。図2に示すように、フロントカバー10とリアカバー9の境界線B上に回転ダイヤル6の中心Cはなく、中心Cはフロントカバー10側にずれている。このため、境界線B上に回転ダイヤル6の中心Cを常に一致させるよりも設計の自由度は増加している。しかし、図1に示すように、回転ダイヤル6を収納するフロントカバー10の収納部12の開口部13の幅D1は回転ダイヤル6の直径Dよりも小さい。収納部12は、回転ダイヤル6の周囲を半周以上覆うことで、回転ダイヤル6を収納するための円筒形状の穴であり、円筒形状を上から見た場合は円弧形状の輪郭12aを有し、輪郭12aの中心角は180度よりも大きい。従って、回転ダイヤル6を収納部12にそのまま収めようとすると、開口部13と回転ダイヤル6の外縁6aが擦れて両者の一方又は双方が傷つく。
【0014】
そこで、本実施例は、一対の案内部(第1案内部)15a及び15bをフロントカバー10の境界線Bを形成する縁部10aの開口部13に隣接した位置から延出形成している。案内部15a及び15bは、ベースユニット20Aに形成されている案内部28Aに接触して案内される。案内部15a及び15bは、フロントカバー10の表面(上面)11よりも低い位置(内側)に配置され、図2に示すように、デジタルカメラが組み立てられた後は外部に露出しない。案内部15a及び15bは、同一形状を有し、本実施例では四角柱形状を有するが、その形状は特に限定されない。本実施例では、案内部15a及び15bは樹脂成形によって形成される。フロントカバー10は、後述するときに、案内部15a及び15bの幅が広がり、それによって、収納部12の開口部13の幅D1が回転ダイヤル6の直径Dよりも若干大きな長さまで広がることができ、その範囲内では弾性変形が可能である。この変形はさほど大きくないので従来のフロントカバー10を構成する材料を適用することができる。
【0015】
20Aは、回転ダイヤル6などを組付けるベースユニットであり、カメラ本体1の筐体に収納される。図3は、ベースユニット20Aの拡大斜視図である。ベースユニット20Aは、回転ダイヤル6、板金21、フレキシブル基板22、レリーズスイッチ23、ズームスイッチ24、電源スイッチ25、スピーカー26、回転ダイヤルベース27を有する。
【0016】
レリーズスイッチ23、電源スイッチ25は押圧式のスイッチであり、ズームスイッチ24は2方向検知型スイッチである。レリーズスイッチ23、電源スイッチ25はそれぞれフレキシブル基板22の表面に実装される。フレキシブル基板22の一端22aは、カメラ本体1内に設けられた不図示の制御部に接続されている。回転ダイヤル6が回転操作されて選択した機能はフレキシブル基板22から制御部に送信される。ズームレバー4の回転中心の真下にレリーズスイッチ23が配置され、レリーズボタン5の押圧操作によりボタン足がレリーズスイッチ23に当接する。 レリーズスイッチ23はフレキシブル基板22を折り曲げることによってズームスイッチ24より1段低い位置に配置されている。これにより、レリーズボタン5がレリーズスイッチ23と干渉せず、ベースユニット20Aをフロントカバー10に水平方向に組み付けることができる。
【0017】
回転ダイヤルベース27には、案内部(第2案内部)28Aが樹脂成型によって形成されている。案内部28Aは、回転ダイヤル6のフロントカバー10側に配置され、回転ダイヤル6と同心円に形成されている。案内部28Aは、上から見ると円弧形状を有し、中心角は180度である。但し、案内部28Aは、回転ダイヤル6の円筒形状と同心円の円筒面の少なくとも一部を有すれば足りる。本実施例では、案内部28Aは、断面がL字のリブ形状を有し、図3に示すように、上から見ると円弧形状の水平部29aと上から見ると円弧形状の垂直部29bを有する。垂直部29bが主に案内部15a及び15bと接触してこれを外側に広げるように案内する案内部として機能し、上述した円筒面の一部を有する。
【0018】
以下、図4を参照して、フロントカバー10の収納部12の輪郭12aと回転ダイヤル6の組立後の関係を説明する。ここで、図4は図1の上面図である。輪郭12aは上から見ると円弧形状を有し、輪郭12aと回転ダイヤル6との間には、組立後に回転ダイヤル6がフロントカバー10に対して回転できるような一定の隙間が設けられている。ベースユニット20Aは不図示の本体に組み込まれている。収納部12の輪郭12aの円弧の中心12bはフロントカバー10の境界線Bからフロントカバー10側にずれており、輪郭12aの中心角は180度以上であり、幅D1は回転ダイヤル6の直径Dよりも小さく設定される。図2のようにデジタルカメラが組み立てられた後は、中心12bは中心Cと一致する。従って、回転ダイヤル6を収納部12にそのまま収めようとすると、開口部13と回転ダイヤル6の外縁6aが接触して擦れる。12cは中心12bを通り、境界線Bに平行な直線であり、直線12cと境界線Bは一致していない。また、フロントカバー10の案内部15a及び15bの間隔D2は案内部28Aの外径D3(水平部29aの内径又は垂直部29bの外径)よりも小さく設定される。
【0019】
この状態でフロントカバー10を矢印A方向に沿ってベースユニット20Aに組み付ける。A方向は境界線Bに直交する方向である。この過程で、フロントカバー10の案内部15a、15bは案内部28A(主として垂直部29b)に接触し、案内される。案内部15aと15bの間隔D2は案内部28Aの外径D3よりも小さい。このため、図5に示すように、案内部15a、15bが案内部28Aに接触した後はそれぞれEa方向、Eb方向に広がって両者の間隔D2は大きくなり、それによって、開口部13の寸法D1が広がる。その後、開口部13の幅D1が回転ダイヤル6の直径Dより大きくなり、開口部13と回転ダイヤル6との干渉は発生せず、回転ダイヤル6は収納部12の開口部13に接触せずに収納部12に収納される。この結果、輪郭12aと回転ダイヤル6の両方が損傷せずにフロントカバー10をベースユニット20Aに取り付けることができる。回転ダイヤル6が収納部12に収納された後は一対の案内部15a及び15bの幅D2と収納部12の開口部13の幅D1はそれぞれ元の幅に戻る。また、案内部15a、15b、28Aは組み立て後にカメラ本体1の外部に露出しないので、組立時に傷がついても問題はない。
【実施例2】
【0020】
以下、実施例2について説明する。本実施例は、案内部28Aの代わりに案内部28Bを有する点で実施例1と異なり、その他の点で実施例1と同様であり、相違点のみについて説明する。図6に示すように、回転ダイヤル6は、案内部15a、15bを案内する案内部28Bを有する。実施例1と同様に、案内部15a及び15bの間隔D2及び開口部13の幅D1は、回転ダイヤル6の直径Dよりも小さく設定される。案内部15a及び15bの間隔D2は回転ダイヤル6の案内部28Bの外径D3よりも小さく設定される。このため、図5で説明したように、フロントカバー10をベースユニット20Bに組み付けると案内部15a、15bが案内部28Bに接触した後は案内部15a及び15bの間隔D2が大きくなり、開口部13の寸法D1が広がる。その後、開口部13の幅D1が回転ダイヤル6の直径Dより大きくなり、開口部13と回転ダイヤル6との干渉は発生せず、回転ダイヤル6は収納部12の開口部13に接触せずに収納部12に収納される。この結果、輪郭12aと回転ダイヤル6の両方が損傷せずにフロントカバー10をベースユニット20Bに取り付けることができる。回転ダイヤル6が収納部12に収納された後は一対の案内部15a及び15bの幅D2と収納部12の開口部13の幅D1はそれぞれ元の幅に戻る。また、案内部15a、15b、28Bは組み立て後にカメラ本体1の外部に露出しないので、組立時に傷がついても問題はない。
【0021】
上述した実施例によれば、案内部15aと15bを案内部28A、28Bによって広げることによって収納部12の開口部13を広げ、開口部13と開口ダイヤル12の両方を損傷せずにフロントカバー10を回転ダイヤル6組み付けることができる。これにより、回転ダイヤル6の組立性が向上し、回転ダイヤル6とフロントカバー10の傷つきを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1のデジタルカメラの部分分解斜視図である。
【図2】実施例1のデジタルカメラの外観斜視図である。
【図3】図1に示すベースユニットの拡大斜視図である。
【図4】図1の上面図である。
【図5】図4に示す組み立て動作を説明するための拡大平面図である。
【図6】実施例2のベースユニットの拡大斜視図である。
【図7】従来の問題点を説明するための部分平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 カメラ本体
6 モードダイヤル(回転ダイヤル)
9 リアカバー
10 フロントカバー
12 収納部
13 開口部
15a、15b 案内部
20A、20B ベースユニット
28A、28B 案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状の操作部材を有するベースユニットと、
前記ベースユニットの少なくとも一部を覆うカバーとを有し、
前記カバーには、前記操作部材の周囲を半周以上覆うことで前記操作部材を収納する収納部と、前記収納部の開口部から延出形成される一対の第1案内部が形成され、
前記ベースユニットには、前記ベースユニットに前記カバーを組み付ける際に、前記第1案内部と接触する第2案内部が前記操作部材の外側に形成され、
前記ベースユニットに前記カバーを組み付ける際に、前記一対の第1案内部が前記第2案内部に接触して前記カバーが弾性変形して、前記開口部の端が前記第2案内部に接触しないように、前記第2案内部の外径および前記一対の第1案内部の幅を設定することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記ベースユニットを前記筐体に収納した後は、前記第1案内部が外部に露出しないように前記第1案内部は前記一対のカバーの一方の表面よりも内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第2案内部は、前記操作部材の周囲を半周以上覆うリブ形状を有することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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