説明

電子機器

【課題】シールド材からの応力によるハウジングのクラック発生を抑制する。
【解決手段】シールド材5は底板50と第2側板52,53とが回路ブロック収納部20の底壁と左右両側の側壁とにそれぞれインサート成形によって埋設され、一対の第1側板51,51は回路ブロック収納部20の前後両側の側壁に当接するようにして回路ブロック収納部20内に収納されている。従って、温度変化によってシールド材5並びにケース2がそれぞれ熱膨張並びに熱収縮した場合においても、ケース2(回路ブロック収納部20)の側壁には第2側板52,53からの応力のみが印加され、第1側板51,51からの応力は印加されない。故に、従来例と比較してケース2の側壁に印加される応力が低減され、その結果、ケース2の側壁にクラックが発生することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に電子回路を実装してなる回路ブロックが電磁シールド用のシールド材に覆われるようにして合成樹脂材料製のハウジング内に収納される電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリント配線板に電子回路を実装してなる回路ブロックが合成樹脂材料製のハウジング内に収納される電子機器においては、電磁シールド用のシールド材でハウジング内の回路ブロックを覆うようにしている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されている電子機器は、自動車のバンパに取り付けられ、超音波を送受波することによって自動車の周囲に存在する障害物を検知する超音波センサであって、超音波の送受波処理や受波信号から障害物の存否や障害物までの距離などを検知するための信号処理を行う電子回路がプリント配線板に実装されて合成樹脂成形品からなるハウジング内に収納されている。
【0003】
また、この種の電子機器においては、外来ノイズ(電磁波ノイズ)によって電子回路が誤動作することを防止したり、あるいは電子回路から放射される電磁波ノイズが外部に漏れるのを防ぐためにブリキ板などからなるシールド材によって電子回路とプリント配線板を含む回路ブロックが覆われている。さらに、特許文献1に記載されている従来例のように、シールド材の強度向上などを目的として、箱状に形成されたシールド材がハウジングにインサート成形される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−253912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような電子機器においては、防水、防湿、防振などの耐環境性を考慮して、箱状に形成されたシールド材の内部に充填材(例えば、シリコーン樹脂)を充填することで回路ブロックを封止する構造が一般に採用されている。一方、充填材の充填から固化に要する作業時間や、充填材と半田との熱膨張係数の違いによる半田クラックの発生などの問題を回避するため、ハウジングの密閉性を高めることで充填材による封止構造を省略した電子機器も提案されている。
【0006】
しかしながら、充填材を充填しない場合、ハウジングにインサート成形されているシールド材とハウジングを形成する合成樹脂材料の熱膨張係数の違いにより、過大な応力がシールド材からハウジングに印加されてハウジングにクラックが発生してしまう虞がある。尚、シールド材の内部に充填材が充填されている場合、充填材によってハウジングの強度が向上しているため、シールド材からの応力によってハウジングにクラックが生じる虞は殆ど無かった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、シールド材からの応力によるハウジングのクラック発生が抑制できる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、プリント配線板に電子回路を実装してなる回路ブロックと、金属板により箱状に形成されて内部に前記回路ブロックが配置されるシールド材と、箱状の合成樹脂成形品からなり前記シールド材と回路ブロックを収納するハウジングとを備え、シールド材は、一部がハウジングに埋設されるとともに当該一部を除く他の部位がハウジングの側壁に当接されるようにしてハウジング内に収納されることを特徴とする。
【0009】
請求項1の発明によれば、シールド材の一部のみがハウジングに埋設され、当該一部を除く他の部位がハウジングの側壁に当接されているので、全体がハウジングに埋設される従来例と比較して、シールド材からの応力によるハウジングのクラック発生が抑制できる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、シールド材は、略長方形状の底板と、底板の長辺よりそれぞれ立ち上がる一対の第1側板と、底板の短辺よりそれぞれ立ち上がる一対の第2側板とを有し、第2側板が矩形箱状に形成されている前記ハウジングの側壁に埋設されるとともに第1側板が前記ハウジングの側壁に当接されることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、第2側壁よりも面積の大きい第1側壁をハウジングの側壁に当接させることにより、第2側壁の代わりに第1側壁をハウジングの側壁に埋設する場合と比較して、シールド材からの応力によるハウジングのクラック発生がより一層抑制できる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、ハウジングは、一面が開口する箱状の合成樹脂成形品からなるケースと、当該ケースの開口面を閉塞する板状のカバーとを有し、ケースの前記一面側の端部にカバーが溶着されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、充填材を充填せずにハウジング内を液密に封止することができるとともにシールド材からの応力によるハウジングのクラック発生が抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シールド材からの応力によるハウジングのクラック発生が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態を示し、(a)はケースの平面図、(b)は(a)のA−A線断面矢視図、(c)は(a)のB−B線断面矢視図である。
【図2】同上の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、特許文献1に記載されているような超音波センサに本発明の技術思想を適用した実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。但し、本発明の技術思想が適用可能な電子機器は超音波センサに限定されるものではなく、プリント配線板に電子回路を実装してなる回路ブロックが電磁シールド用のシールド材に覆われるようにして合成樹脂材料製のハウジング内に収納される電子機器全般に適用可能である。
【0017】
本実施形態の超音波センサ(電子機器)は、図1並びに図2に示すように超音波を送受波する超音波マイクロホン(以下、マイクロホンと略す。)6と、送波信号を出力することでマイクロホン6に超音波を送波させるとともに物体に反射して戻る超音波(反射波)をマイクロホン6で受波して得られる受波信号を信号処理する電子回路がプリント配線板40に実装されてなる回路ブロック4と、回路ブロック4を電磁シールドするシールド材5と、マイクロホン6及び回路ブロック4、シールド材5を内部に収納するハウジング1とを備えている。尚、以下の説明では、図2において上下左右並びに前後の向きを規定しており、紙面に対して手前から奥に向かう向きを前向き、奥から手前に向かう向きを後向きと規定している。
【0018】
ハウジング1は合成樹脂成形品からなり、シールド材5にシールドされた回路ブロック4を収納する回路ブロック収納部20、マイクロホン6を収納するマイクロホン収納部21、回路ブロック4への給電や回路ブロック4との信号伝送のためのコネクタ端子7を保護するコネクタ部22が一体に形成されたケース2と、回路ブロック収納部20の開口面を閉塞するカバー3とで構成されている。
【0019】
回路ブロック収納部20は、図1(a)に示すように上面が開口した略矩形箱状に形成され、内側の四隅には回路ブロック4のプリント配線板40が載置される載置台20aが各々突設されている。また、回路ブロック収納部20の底壁には平面視略矩形の凹所20cが設けられるとともに、凹所20cの底面にマイクロホン収納部21と連通する貫通孔20bが貫設されている。プリント配線板40は矩形平板状に形成され、一面(上面)に種々の電子部品41(1つのみ図示)が実装されている。尚、プリント配線板40の左側の両角部にかしめ孔(図示せず)が貫設されており、プリント配線板40が載置台20aに載置されたときに載置台20aの上面に突設されている突起20dがかしめ孔に挿通され、プリント配線板40の上面側に突出する突起20dをかしめることでプリント配線板40(回路ブロック4)が固定されるようになっている。
【0020】
さらに、回路ブロック収納部20の凹所20cには封止部材8が嵌合される。封止部材8は、有底角筒状の本体部80と、本体部80における開口端面から外側に突出する外鍔部81とが合成樹脂材料によって一体に形成されている。本体部80の底壁にはマイクロホン6の端子ピン6a(後述する)が挿通される孔82が貫通している。このように構成される封止部材8は、図2に示すように本体部80が貫通孔20bに挿通され、外鍔部81が凹所20cの底面に載置された状態で凹所20cと嵌合され、外鍔部81が回路ブロック収納部20の底壁にレーザ溶着されることで回路ブロック収納部20とマイクロホン収納部21との間を封止している。
【0021】
マイクロホン収納部21は、下面が開口した有底円筒形状に形成され、その底壁に貫通孔20bが貫通している。マイクロホン6は略円柱形状であって、前面(図2における下面)が超音波の送受波面となり、後面(図2における上面)に入出力用の一対の端子ピン6aが後方(図2における上向き)に突出している。そして、ゴムなどの弾性材料で有底円筒形状に形成された防振カバー6bがマイクロホン6に外挿され、防振カバー6bとともにマイクロホン6がマイクロホン収納部21内に収納される。また、防振カバー6bの底壁には貫通孔20bを通してマイクロホン収納部21内に突出している封止部材8の本体部80と嵌合する嵌合孔6cが貫通されており、嵌合孔6cに嵌合した本体部80の底面とマイクロホン6の底面とがレーザ溶着される。
【0022】
封止部材8の本体部80の底壁にはマイクロホン6の端子ピン6aが挿通される挿通孔82が貫通しており、この挿通孔82に挿通された端子ピン6aが回路ブロック収納部20内でプリント配線板40に設けられたスルーホール(図示せず)に挿通されるとともにプリント配線板40にプリントされている配線パターン(図示せず)に半田付けされる。
【0023】
コネクタ部22は、回路ブロック収納部20の右側の側壁を底壁とする有底角筒状に形成され、底壁(回路ブロック収納部20の右側側壁)から右方に突出するコネクタ端子7を上下方向並びに前後方向から囲んでいる。そして、コネクタ部22には、図示しない相手側のコネクタが挿抜自在に接続され、相手側コネクタのピン受け(図示せず)とコネクタ端子7とが電気的に接続されるようになっている。
【0024】
一方、コネクタ端子7の左端部には略コ字形のコ字形端子70が一体に形成されており、これらのコ字形端子70の先端部が回路ブロック収納部20内でプリント配線板40に設けられたスルーホール(図示せず)に挿通されるとともにプリント配線板40にプリントされている配線パターン(図示せず)に半田付けされる。尚、コネクタ端子7並びにコ字形端子70は、後述するようにシールド材5とともにケース2(回路ブロック収納部20)にインサート成形されて部分的に埋設されている。
【0025】
カバー3は、矩形平板状のカバー本体30と、カバー本体30の周囲から下向きに突出する周壁31とが合成樹脂材料によって一体に形成されている。そして、周壁31の内側に回路ブロック収納部20の開口端(上端)を嵌め込むようにしてケース2に被着される。ここで、カバー3はレーザ光を透過する合成樹脂材料で形成され、ケース2はレーザ光を吸収する合成樹脂材料で形成されており、カバー3をケース2に被着した状態でカバー3を通してケース2(回路ブロック収納部20)の上端面にレーザ光を照射すれば、ケース2の側壁上部が溶融し、溶融した合成樹脂材料が固化することでケース2とカバー3が溶着(レーザ溶着)される。すなわち、本実施形態では回路ブロック収納部20内に充填剤を充填することなく、ケース2とカバー3をレーザ溶着することで回路ブロック収納部20を液密に封止することができる。
【0026】
シールド材5は、ブリキ板などの金属板を打ち抜き並びに曲げ加工することにより、略長方形状の底板50と、底板50の長辺よりそれぞれ立ち上がる一対の第1側板51,51と、底板50の短辺よりそれぞれ立ち上がる一対の第2側板52,53とを有する略矩形箱形に形成されている。
【0027】
底板50の四隅には載置台20aを逃げるための切欠50aが設けられている(図1(a参照)。また、右側の第2側板53には、コネクタ端子7,7とそれぞれ一体に形成されているコ字形端子70,70を逃げるための切欠54が設けられている(図1(c)参照)。尚、底板50には回路ブロック収納部20の凹所20cと連通する連通孔55が貫通している。
【0028】
ここで、本実施形態においては、底板50と第2側板52,53とが回路ブロック収納部20の底壁と左右両側の側壁とにそれぞれインサート成形によって埋設され、一対の第1側板51,51は回路ブロック収納部20の前後両側の側壁に当接するようにしてシールド材5が回路ブロック収納部20内に収納されている。つまり、従来例ではシールド材全体がインサート成形によってハウジングに埋設されていたが、本実施形態では、底板50並びに第2側板52,53のみがハウジング1に埋設されて第1側板51,51はハウジング1に埋設されていない。
【0029】
従って、温度変化によってシールド材5並びにケース2がそれぞれ熱膨張並びに熱収縮した場合においても、ケース2(回路ブロック収納部20)の側壁には第2側板52,53からの応力のみが印加され、第1側板51,51からの応力は印加されないので、従来例と比較してケース2の側壁に印加される応力が低減され、その結果、ケース2の側壁にクラックが発生することを抑制できるものである。しかも、このように熱収縮・熱膨張によるシールド材5からケース2へ印加される応力を低減したことにより、回路ブロック収納部20内に充填剤を充填しない場合においても、クラックの発生が抑制できるものである。
【0030】
尚、本実施形態では、第2側壁52,53をケース2の側壁に埋設し、第1側壁51,51をケース2の側壁に当接させているが、このように第2側壁52,53よりも面積の大きい第1側壁51,51をケース2の側壁に当接させることにより、第2側壁52,53の代わりに第1側壁51,51をケース2の側壁に埋設する場合と比較して、シールド材5からの応力によるケース2のクラック発生がより一層抑制できるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 ハウジング
2 ケース
20 回路ブロック収納部
3 カバー
4 回路ブロック
40 プリント配線板
41 電子部品
5 シールド材
50 底板
51 第1側板
52 第2側板
53 第2側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板に電子回路を実装してなる回路ブロックと、金属板により箱状に形成されて内部に前記回路ブロックが配置されるシールド材と、箱状の合成樹脂成形品からなり前記シールド材と回路ブロックを収納するハウジングとを備え、
シールド材は、一部がハウジングに埋設されるとともに当該一部を除く他の部位がハウジングの側壁に当接されるようにしてハウジング内に収納されることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
シールド材は、略長方形状の底板と、底板の長辺よりそれぞれ立ち上がる一対の第1側板と、底板の短辺よりそれぞれ立ち上がる一対の第2側板とを有し、第2側板が矩形箱状に形成されている前記ハウジングの側壁に埋設されるとともに第1側板が前記ハウジングの側壁に当接されることを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
ハウジングは、一面が開口する箱状の合成樹脂成形品からなるケースと、当該ケースの開口面を閉塞する板状のカバーとを有し、ケースの前記一面側の端部にカバーが溶着されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−54669(P2011−54669A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200531(P2009−200531)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】