説明

電子機器

【課題】電子機器の小型化、薄型化を妨げることなく、筺体内に侵入する静電気による影響を確実に抑える。
【解決手段】本体筺体11Aの開口部13の外周の全周にわたって形成された段部15の一部には、本体筺体11Aの内外を貫通する貫通孔17が形成されている。一方、インナーケース22のカバー壁部22bには、貫通孔17内に向けて突出する突起23が形成されている。カバー14の外周部と表示筺体11Aとの隙間Sから静電気が侵入しようとすると、カバー14と段部15の間を静電気は通る。このとき、カバー14と段部15とが対向する位置に、インナーケース22に設けられた突起23が位置しているため、侵入してきた静電気は、突起23からインナーケース22を通り、電子回路基板20のグランドに導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電話端末をはじめとする各種電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話をはじめとする携帯型の各種電子機器においては、その高機能化により、液晶表示部や、LED発光部、カメラセンサ、赤外線センサ等を設けるために、筺体表面に、光を透過させるパネルを設けることが多くなっている。
また、電子機器の薄型化が常に求められていることから、内部部品との干渉を避ける為に筐体に逃がし穴を設けたり、金型構造上、筐体に貫通穴をあける場合もある。そのような場合、図3に示すように、筺体1に形成した逃がし穴や貫通穴の開口部2を、外装用のカバー3で塞ぐ構成が採用されることが多い。
【0003】
しかし、筺体1に開口部2を設けると、開口部2とカバー3との隙間から、静電気等が筺体1内に侵入し易くなってしまう。静電気等が筺体1内に侵入すると、内部の電子部品4が機能的に損傷することもある。なお、図3において、符号5は電子回路基板、6は電磁ノイズを遮蔽するシールドケース、7はカバー3を開口部2に固定するための両面テープである。
【0004】
そこで、筺体内に侵入する静電気の対策として、例えば、特許文献1や図4に示すように、筺体1の開口部2とカバー3との合わせ面から、筺体1内に設けられた電子部品4までの沿面距離Lを、なるべく長く確保する手法がある。
【0005】
また、特許文献2や図5に示すように、静電気の侵入部、すなわち筺体の開口部2とカバー3との合わせ面と、電子部品4との間に、グランドに接地されたグランド部材8を設ける手法もある。
【0006】
さらに、図6に示すように、開口部2と電子部品4との間に、開口部2を塞ぐように導電性材料からなる遮蔽部材9を設ける手法もある。
これ以外にも、筺体1内の電子回路内に、バリスタを配置する手法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−182607号公報
【特許文献2】特開2010−154221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、いずれの手法も、対策を施すためにある程度のスペースを必要とするため、小型化、薄型化が重要視される電子機器においては、さらなる改善が求められていた。
そこでなされた本発明の目的は、小型化、薄型化を妨げることなく、筺体内に侵入する静電気による影響を確実に抑えることのできる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の電子機は、電子回路基板を内蔵し、その一部に開口部が形成された筺体と、電子回路基板上に実装された電子部品と、電子部品の外周側に設けられ、グランドに接地された導電性材料からなるシールドケースと、筺体に形成された開口部を塞ぐカバーと、を備え、筺体には、開口部の周囲に、カバーと筺体との合わせ面に臨む貫通孔が形成され、シールドケースに、貫通孔内に挿入される突起が一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カバーと筺体との合わせ面に、シールドケースに形成された突起が臨むよう設けられているので、カバーと筺体との合わせ面から侵入しようとした静電気を、シールドケースを介してグランドに導くことができる。これにより、筺体内に侵入する静電気による影響を確実に抑えることができる。しかも、シールドケースに突起を設けるだけでよいので、特別な部材等を設ける必要がなく、電子機器の小型化、薄型化を妨げることもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る携帯電話端末の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した電話端末の断面図である。
【図3】従来の携帯電話端末の一例を示す断面図である。
【図4】従来の携帯電話端末の他の一例を示す断面図である。
【図5】従来の携帯電話端末のさらに他の一例を示す断面図である。
【図6】従来の携帯電話端末の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明による電子機器を実施するための最良の形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0013】
図1に示すものは、本発明を適用した電子機器の一例である、携帯電話端末(電子機器)10を示す斜視図である。
図1に示すように、携帯電話端末10は、画像や文字、映像等の各種情報を表示するモニター部を有した表示筐体(筐体)11Aと、ユーザが携帯電話端末10を操作するための操作キー等を備えた本体筐体11Bとを備えている。
これら表示筐体11Aと本体筐体11Bとは、それぞれの一辺側において、ヒンジ部12により回転可能に連結され、折りたたみ・展開が可能となっている。
【0014】
ここで、例えば表示筺体11Aには、表示筺体11Aと本体筺体11Bとを折りたたんだ状態において外方を向く側の表面に、開口部13が形成されており、この開口部13には、例えば透過性を有した樹脂からなるカバー14が設けられている。
【0015】
図2に示すように、表示筺体11A内には、電子回路基板20が内蔵されている。電子回路基板20の一面側には、開口部13に臨む位置に液晶表示デバイス21が実装されている。液晶表示デバイス21においては、文字や画像等による情報を表示することができ、その情報は、カバー14を透過し、ユーザが外部から視認できるようになっている。
【0016】
また、電子回路基板20において、液晶表示デバイス21の外周側には、電磁ノイズの漏出や侵入を防ぐためのシールド用として、金属等の導電性材料からなるインナーケース(シールドケース)22が設けられている。インナーケース22は、電子回路基板20の外周部から、電子回路基板20の表面に直交する方向に延びる立ち上がり壁部22aと、立ち上がり壁部22aの先端部から内周側の液晶表示デバイス21に近接する位置まで電子回路基板20に平行に延びるカバー壁部22bとが一体に形成されており、立ち上がり壁部22aは、電子回路基板20のグランドに接地されている。
【0017】
表示筺体11Aは、開口部13の周囲に、表示筺体11Aの外表面11sよりも電子回路基板20側に凹んだ段部15を有している。カバー14は、この段部15上に、両面テープ16等の固定手段により固定されることで、カバー14の表面14sが表示筺体11Aの外表面11sと連続した面を形成している。なお、両面テープ16は、開口部13の全周を囲うように設けるのが好ましく、これにより、防水・防塵機能を高めることができる。
【0018】
開口部13の外周の全周にわたって形成された段部15の一部には、カバー14と段部15との合わせ面に臨む位置に、本体筺体11Aの内外を貫通する貫通孔17が形成されている。
一方、インナーケース22のカバー壁部22bには、この貫通孔17内に向けて突出する突起23が形成されている。この突起23は、その先端部23aが段部15の表面とほぼ同一面となる位置、あるいは段部15よりもカバー14側に突出するよう形成されるのが好ましい。
【0019】
このような構成の携帯電話端末10においては、カバー14の外周部と表示筺体11Aとの隙間Sから静電気が侵入しようとすると、当該静電気はカバー14と段部15の合わせ面を通過することになる。このとき、カバー14と段部15との合わせ面には、インナーケース22に設けられた突起23が位置しており、このインナーケース22は接地されているため、侵入してきた静電気は、突起23からインナーケース22を通過し、電子回路基板20のグランドに導かれる。
【0020】
したがって、外部からの静電気が液晶表示デバイス21や電子回路基板20上に実装された他の電子部品等に到達することを回避することができ、これら液晶表示デバイスや電子部品に悪影響を及ぼしてしまうことを防止することができる。
しかも、従来より設けられているインナーケース22に突起23を設けるのみでよいため、静電気対策を施すために特にスペースを必要とすることもなく、携帯電話端末10の小型化、薄型化を妨げることもなく、低コストで有効な効果を得ることができる。
また、突起23は、カバー14と本体筺体11Aの合わせ面に位置しているので、外部から侵入した静電気を速やかに排除することができ、上記効果は一層顕著なものとなる。
【0021】
なお、突起23および貫通孔17は、開口部13の外周部のほぼ全周にわたって連続して形成してもよい。これにより、任意の方向から侵入する静電気に対して有効に効果を発揮できる。
【0022】
(その他の実施形態)
なお、本発明の電子機器は、図面を参照して説明した上述の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態で示した構成に加え、図1に示したように、カバー14の裏面側に、カバー14の外周部全周に連続する導電性皮膜30を設けてもよい。この導電性皮膜30は、カバー14を本体筺体11Aに装着した状態において、インナーケース22の突起23に突き当たる、又は近接するように設ける。
このような構成とすることで、カバー14の全周において、外部から侵入した静電気を、導電性皮膜30、突起23、インナーケース22を介して電子回路基板20のグランドに導くことができ、静電気侵入対策を、より効果的なものとすることができる。
【0023】
さらには、上記の導電性皮膜30は、両面テープ16の基材をテープ状の導電性材料で形成することで構成することもできる。すなわち、例えば、金属薄膜等の導電性材料からなるテープ状の基材の両面に、粘着剤(接着剤)を塗布した両面テープ16を用い、この両面テープ16の基材をインナーケース22の突起23に接触するように、又は近接するように設けるのである。これにより、両面テープ16を、カバー14の固定機能と、静電気侵入対策機能の双方を備えたものとすることができる。
これにより、突起23および貫通孔17は、開口部13の周方向の一部に点状に設ければ良く、その設置位置の自由度を高めることができる。
【0024】
また、開口部13に対向して液晶表示デバイス21を設けるようにしたが、これに限るものではなく、例えば操作キー等、他のデバイスを設ける場合にも本発明を同様に適用することができる。その場合、カバー14の材質は、本体筺体11Aと同材料とすることもできるし、適宜他の材質とすることもできる。
さらに、本発明は、携帯電話端末10以外の各種の電子機器にも同様に適用することができるのは言うまでもない。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 携帯電話端末(電子機器)
11A 表示筐体(筐体)
11B 本体筺体
11s 外表面
12 ヒンジ部
13 開口部
14 カバー
14s 表面
15 段部
16 両面テープ
17 貫通孔
20 電子回路基板
21 液晶表示デバイス
22 インナーケース(シールドケース)
22a 立ち上がり壁部
22b カバー壁部
23 突起
23a 先端部
30 導電性皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板を内蔵し、その一部に開口部が形成された筺体と、
前記電子回路基板上に実装された電子部品と、
前記電子部品の外周側に設けられ、グランドに接地された導電性材料からなるシールドケースと、
前記筺体に形成された前記開口部を塞ぐカバーと、を備え、
前記筺体には、前記開口部の周囲に、前記カバーと前記筺体との合わせ面に臨む貫通孔が形成され、
前記シールドケースに、前記貫通孔内に挿入される突起が一体に形成されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記カバーと前記筺体との合わせ面に、前記カバーの全周にわたって連続する導電性材料からなる帯状の導電部が設けられ、
前記導電部は、前記突起に接触し、又は近接していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−114663(P2012−114663A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261697(P2010−261697)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】