説明

電子機器

【課題】ユーザが意図しない操作入力が発生し、それにより電子機器が誤動作する。
【解決手段】ホールドセンサ4は、それぞれが送信電極TXと受信電極RXを含む複数のセンサ電極対S1〜Snを有する。各センサ電極対S1〜Snは、ユーザが操作の意志を持って電子機器1を保持したときにユーザが接触する異なる位置に配置されている。ホールドセンサ4は、各センサ電極対S1〜Snそれぞれの間に発生する電界の変化にもとづき、ユーザによる電子機器1の保持を検出する。入力装置6は、電子機器1に対するユーザの操作入力を検出する。信号処理部8は、ユーザによる電子機器1の保持がホールドセンサ4により検出されたときに、入力装置6が検出した操作入力を有効なものとして、所定の信号処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
高機能化が進む携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistants)、デジタルカメラをはじめとする電子機器として、入力装置としてタッチパネルや加速度センサを備えるものがある。たとえば加速度センサを用いた入力装置は、電子機器を振ること、電子機器を傾けること、電子機器の向きを回転させること、などをジェスチャとして検出することができ、電子機器は、検出したジェスチャに応じて動作する。
【0003】
ところが、入力装置が検出したジェスチャや操作入力が、必ずしもユーザが意図したもので無い場合がある。たとえば電子機器が、ユーザの鞄の中やポケットの中に収納されているとき、ユーザの動きにともなって電子機器が動き、意図しない操作入力が入力装置によって検出されることが起こりうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような問題を解決するために、電子機器に、動作状態、非動作状態(スタンバイ状態)を切りかえるための機械式のスイッチを設けることが考えられる。ところがこのようなスイッチを設けることは、電子機器の筐体のデザインの制約という別の問題を生じさせる。また機械的なスイッチは、押圧を繰り返すうちに摩耗するという問題がある。また機械的なスイッチを設ける場合、スイッチの可動部、つまりボタンと筐体の間に間隙が生ずるため耐水性が問題となる場合があった。また機械的なスイッチであっても、ユーザの意図に反して鞄やポケットの中で偶発的に状態が切りかえられることも起こりうる。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ユーザが意図しない電子機器の動作を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電子機器に関する。電子機器は、ホールドセンサと、入力装置と、信号処理部を備える。ホールドセンサは、複数のセンサ電極対を有する。各センサ電極対は、送信電極と受信電極を含み、各センサ電極対は、ユーザが操作の意志を持って本電子機器を保持したときにユーザが接触する異なる位置に配置されている。ホールドセンサは、各センサ電極対それぞれの間に発生する電界の変化にもとづき、ユーザによる本電子機器の保持を検出する。入力装置は、本電子機器に対するユーザの操作入力を検出する。信号処理部は、ユーザによる本電子機器の保持がホールドセンサにより検出されたときに、入力装置が検出した操作入力を有効なものとして、所定の信号処理を行う。
【0007】
この態様によると、ユーザが電子機器を保持したときにのみ、入力装置に対する操作入力が有効となるため、鞄やポケットの中で、電子機器が意図せずに動作するのを防止できる。
【0008】
信号処理部は、ユーザによる本電子機器の保持がホールドセンサにより検出されないときに、入力装置を停止してもよい。入力装置がユーザの操作入力を監視する際には、ある程度の電力を消費するところ、入力装置を停止することにより、消費電力を低減できる。
【0009】
ある態様において、入力装置が動作状態であるときの消費電力は、ホールドセンサの消費電力よりも高くてもよい。ホールドセンサはある程度の電力が消費されるところ、この態様では、入力装置の停止による電力低減の効果が、ホールドセンサによる消費電力の増大を上回り、システム全体としての消費電力を好適に低減できる。
【0010】
入力装置は、加速度センサを含んでもよい。入力装置は、静電容量センサを含んでもよい。
【0011】
ある態様の電子機器は、ディスプレイをさらに備えてもよい。信号処理部は、ユーザによる本電子機器の保持がホールドセンサにより検出されないときに、ディスプレイをオフしてもよい。
【0012】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、あるいは本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のある態様によれば、ユーザの意図しない電子機器の動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態に係る電子機器を示す図である。
【図2】図2(a)、(b)は、図1の電子機器の利用形態を示す図である。
【図3】図1の電子機器の動作を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
図1は、実施の形態に係る電子機器1を示す図である。電子機器1は、たとえば携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistants)、携帯型の音楽プレイヤ、デジタルカメラなどである。電子機器1は、主としてディスプレイ2、ホールドセンサ4、入力装置6、信号処理部8を備える。図1のブロック図には、本発明と関連するブロックのみが示されており、その他のブロックは省略されているが、電子機器1は、その種類や機能に応じて、スピーカ、撮像デバイス、ヘッドホン端子、通信ユニットなどを備えてもよい。
【0018】
信号処理部8は、電子機器1を統合的に制御するDSP(Digital Signal Processor)やベースバンドIC(Integrated Circuit)である。信号処理部8は、その他のブロックとバス12を介して接続されており、各ブロックとの間でデータを送受信可能となっている。図1では、単一のバス12で各ブロックが接続されるアーキテクチャを示すが、各ブロックとの間は専用バスで接続されていてもよい。
【0019】
ディスプレイ2は、信号処理部8によって制御され、ユーザに対してさまざまな情報を表示する。入力装置6は、電子機器1に対するユーザの操作入力を検出する。たとえば入力装置6としては加速度センサが例示される。ユーザが電子機器1を振動させ、あるいは回転させたりすると、その動きが加速度センサによって検出される。信号処理部8は入力装置6によって検出された動きに応じたデータを受け、当該データに応じた信号処理を実行する。ディスプレイ2は、入力装置6としても機能するタッチパネルであってもよい。
【0020】
ホールドセンサ4は、電界を利用して人体の近接、動きを検出するセンサであり、複数nチャンネル(nは2以上の整数)のセンサ電極対S1〜Snと、検出回路5を備える。センサ電極対のチャンネル数は任意である。各センサ電極対Sは、送信電極TXと受信電極RXを含む。
【0021】
検出回路5はセンスアンプSA、ドライバDR、A/DコンバータADC、制御部20、レジスタ22、インタフェース部24を備える。制御部20は、ドライバDRを介して送信電極TXに電気信号を与えることにより、送信電極TXと受信電極RXの間に電界を発生させる。これにより受信電極RXには、発生した電界に応じた電気信号が発生する。センスアンプSAは、受信電極RXに生ずる電気信号を増幅する。A/DコンバータADCは、センスアンプSAの出力値をデジタル値DIGに変換する。対応するセンサ電極対にユーザの指などが近接すると、2つの電極間に発生する電界が変化し、その変化がデジタル値DIGに現れる。制御部20は、必要に応じてデジタル値DIGに信号処理を施し、レジスタ22に書き込む。レジスタ22に書き込まれたデジタル値DIGは、インタフェース部24を介して、信号処理部8からアクセス可能となっている。なお、センスアンプSA、ドライバDR、A/DコンバータADCは、複数のチャンネルで共有されてもよい。
【0022】
各センサ電極対S1〜Snはそれぞれ、ユーザが操作の意志を持って電子機器1を保持したときに、ユーザが接触する異なる位置に配置されている。このような構成のホールドセンサ4によって、各センサ電極対S1〜Snそれぞれの間に発生する電界の変化にもとづき、ユーザによる電子機器1の保持が検出可能となる。
【0023】
図2(a)、(b)は、図1の電子機器1の利用形態を示す図である。図2(a)、(b)に示すように電子機器1の筐体10は、その機能、種類、利用状況に応じて、ユーザによってさまざまな態様で保持される。言い換えれば、ユーザの手11は、電子機器1の利用形態に応じて、複数の位置P1〜P4のいずれか、あるいはそれらの組み合わせに接触することになる。この例では、位置P1〜P4が、ユーザが操作の意志を持って電子機器1を保持したときに、ユーザが接触する異なる位置に相当する。位置P1〜P4の個数や配置は、電子機器1の種類や機能によってさまざまであることは言うまでもない。
【0024】
ユーザが図2(a)の態様で電子機器1を保持した場合、位置P1と位置P2に配置されるセンサ電極対において、接触が検出される。ユーザが図2(b)の態様で電子機器1を保持した場合、位置P3と位置P4に配置されるセンサ電極対において、接触が検出される。このように、各センサ電極対を適切に配置すれば、ユーザが電子機器1を保持しているか否かを検出できる。
【0025】
図1に戻る。上述のように、信号処理部8には、入力装置6による操作入力の検出結果を示すデータが入力されている。信号処理部8は、ユーザによる電子機器1の保持がホールドセンサ4により検出されたときに、入力装置6が検出した操作入力を有効なものとして、所定の信号処理を行う。反対にホールドセンサ4によって電子機器1の保持が検出されないときには、信号処理部8は入力装置6が検出した操作入力は無効なものとする。
【0026】
以上が電子機器1の構成である。続いてその動作を説明する。図3は、図1の電子機器1の動作を示す状態遷移図である。スタンバイ状態φ1において、電子機器1はホールドセンサ4を除くすべての機能が停止している。そしてスタンバイ状態φ1では、入力装置6に対する操作入力が無効化される。
【0027】
ホールドセンサ4は、ユーザによる電子機器1の筐体10の保持の有無を監視する。ユーザが電子機器1を保持しないとき(S100)、スタンバイ状態φ1を維持する。ホールドセンサ4が、ユーザによる電子機器1の保持を検出すると(S102)、動作状態φ2に遷移する。言い換えればホールドセンサ4は、スタンバイ状態φ1から動作状態φ2への切りかえスイッチとして把握することができる。
【0028】
動作状態φ2では、入力装置6による操作入力の検出結果が有効となり、信号処理部8は、操作入力に応じた信号処理を行う。動作状態φ2において、ユーザによる未操作状態が所定時間持続したり、あるいはホールドセンサ4によってユーザによる保持が検出されなくなると、スタンバイ状態φ1に戻る(S104)。なお、スタンバイ状態φ1への遷移条件は特に限定されない。
【0029】
以上が電子機器1の動作である。この電子機器1によれば、入力装置6によって操作入力が検出されたとしても、電子機器1がユーザによって保持されていない場合には、その操作入力は無効化される。これにより、意図しない誤動作を防止できる。
【0030】
たとえば入力装置6が加速度センサを利用している場合を考える。従来では電子機器が鞄やポケットに収納された状態でユーザが動くと、ユーザが意図を持って操作していないにもかかわらず、加速度センサによって電子機器の傾動、振動あるいは回転が検出され、電子機器が、検出された動きに応じた処理を行い誤動作する場合があった。これに対して本実施の形態に係る電子機器1では、このような誤動作を防止することができる。
【0031】
信号処理部8は、ユーザによる電子機器1の保持がホールドセンサ4により検出されないときに、言い換えればスタンバイ状態φ1において、入力装置6を停止することが好ましい。入力装置6がユーザの操作入力を監視する際には、ある程度の電力を消費するところ、入力装置6を停止することにより、スタンバイ状態φ1における消費電力を低減できる。
【0032】
なお入力装置6が動作状態であるときの消費電力は、ホールドセンサ4の消費電力よりも高いものであるほど、消費電力の効果は顕著である。たとえば加速度センサの消費電力は、ホールドセンサの消費電力より高い。ホールドセンサ4を動作させると、ある程度の電力が消費されることになるが、電界センサを利用するホールドセンサ4の消費電力は、加速度センサのそれに比べて十分に小さい。したがって入力装置6の停止による電力低減の効果が、ホールドセンサ4による消費電力の増大を上回り、システム全体としての消費電力を好適に低減できる。入力装置6のオン、オフは、信号処理部8が制御してもよい。あるいは検出回路5から入力装置6に対して、オン、オフを指示するイネーブル信号を出力してもよい。
【0033】
さらに信号処理部8は、ユーザによる電子機器1の保持がホールドセンサ4により検出されないときに、ディスプレイ2をオフしてもよい。これにより、ユーザの未操作状態の消費電力をさらに低減できる。ディスプレイ2のオン、オフ制御も、信号処理部8が行ってもよいし、検出回路5が行ってもよい。
【0034】
ホールドセンサ4の機能は、電界センサではなく、静電容量センサを利用しても同様に実現することができる。しかしながら、電界センサを利用した電子機器1は、静電センサを利用する比較技術に比べて以下の利点を有する。
第1に、静電容量センサは、ユーザの接触に応じた容量変化を検出するため、ユーザが手袋などを装着していると、接触を検出することが困難である。これに対して電界センサでは、手袋などを装着していても接触を検出できる。また電界センサの方がノイズに強いという利点もある。
第2に、静電容量センサでは、容量電極の充放電が必要となるため、検出時間が長くなるという問題がある。これに対して電界センサ方式に比べてでは、信号の波形変化を検出するため、静電容量センサ方式に比べて1/10程度の高速検出が可能である。
第3に、ホールドセンサを間欠動作させる場合に、静電容量センサよりも電界センサを用いた方が動作時間を短くできる。これにより、ホールドセンサ4のみでなく、その出力を受ける信号処理部8等の動作時間を短くできるため、電子機器1の消費電力を大きく低減できる。
【0035】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0036】
入力装置6の一部と、ホールドセンサ4の検出回路5は、同じチップに集積化されてもよい。また入力装置6は、加速度センサ以外に、静電容量センサ、タッチパネル、機械式スイッチなどであってもよい。
【0037】
以上、実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1…電子機器、2…ディスプレイ、4…ホールドセンサ、5…検出回路、6…入力装置、8…信号処理部、10…筐体、12…バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが送信電極と受信電極を含む複数のセンサ電極対であって、各センサ電極対は、ユーザが操作の意志を持って本電子機器を保持したときに前記ユーザが接触する異なる位置に配置されている、複数のセンサ電極対を有し、各センサ電極対それぞれの間に発生する電界の変化にもとづき、前記ユーザによる本電子機器の保持を検出するホールドセンサと、
本電子機器に対する前記ユーザの操作入力を検出する入力装置と、
前記ユーザによる本電子機器の保持が前記ホールドセンサにより検出されたときに、前記入力装置が検出した前記操作入力を有効なものとして、所定の信号処理を行う信号処理部と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記ユーザによる本電子機器の保持が前記ホールドセンサにより検出されないときに、前記入力装置を停止することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記入力装置が動作状態であるときの消費電力は、前記ホールドセンサの消費電力よりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記入力装置は、加速度センサを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子機器。
【請求項5】
ディスプレイをさらに備え、
前記信号処理部は、前記ユーザによる本電子機器の保持が前記ホールドセンサにより検出されないときに、前記ディスプレイをオフすることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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