説明

電子機器

【課題】アンテナの受信感度を劣化させることなく、回路基板において広い実装面積を確保するとともに、装置全体の小型化を実現することのできる電子機器を提供する。
【解決手段】回路基板8と、この回路基板8の一方の面に配置され、コア92とこのコア92に導線を巻回することにより構成されたコイル部93とを備えてなるアンテナ9と、回路基板8の他方の面であって、アンテナ9に対応する位置に配置された電子部品81又は端子部82と、回路基板8の面上及び回路基板8の内部のうち少なくともいずれか一方であってアンテナ9と電子部品81又は端子部82との間に配置されたシールドパターン83とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、特にアンテナを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、時刻情報を含む標準電波を受信するアンテナを備え、自動的に現在時刻を修正する電波時計等の電子機器が知られている。
時刻情報を含む標準電波を受信するアンテナとしては、例えば、受信感度のよい磁性材料であるアモルファス金属やフェライト等からなるコアに導線を巻回してコイル部を形成したバーアンテナ等が多く用いられている。
【0003】
しかし、このようなアンテナは、各種電子部品や銅箔で形成されたグランドパターン等、金属材料で形成された部材が近傍に配置されると損失が発生し感度劣化を生じる。
また、例えばHIGH/LOWが速い速度で切り替わる信号を扱うような端子部(例えば検査用端子部)や電子部品がアンテナの近傍に配置されると、これらの端子部や電子部品から生ずるノイズの影響を受けてアンテナの感度が劣化してしまう。
【0004】
そこで、回路基板の一端を切り欠いて、回路基板の側部にアンテナを配置する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような構成とすれば、金属材料で形成された部材やノイズを発生させる端子部、電子部品等からアンテナをある程度離すことができるため、アンテナの感度劣化を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−273231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電波腕時計等の電子機器は多機能化が進んでおり、様々な機能を実現するために例えば検波IC、時計マイコン、各種機構部品等、多くの電子部品や端子部を回路基板上に実装する必要がある。この点、特許文献1に記載されている技術では、回路基板の一端を切り欠いてアンテナを配置するスペースを確保しているため、その分回路基板における電子部品等を実装するための面積が狭くなってしまうという問題がある。
他方で、電子部品や端子部等のアンテナへの影響を避けつつ、回路基板における部品等の実装面積を広く確保しようとすると、回路基板の外側にアンテナを配置することとなり、電子機器全体が大型化してしまう。
【0007】
例えば携帯電話機のように小型化があまり求められない電子機器や、比較的サイズが大きな男性向けの腕時計等においては、回路基板を避けてアンテナを配置することも可能である。しかし、女性向けの腕時計等、小型化が強く要請される電子機器においては、アンテナ感度を高く維持しつつ、できるだけ実装効率(実装密度)を高めて、装置全体を小型化することが求められている。
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、アンテナの受信感度を劣化させることなく、回路基板において広い実装面積を確保するとともに、装置全体の小型化を実現することのできる電子機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る電子機器は、
回路基板と、
この回路基板の一方の面に配置され、コアとこのコアに導線を巻回することにより構成されたコイル部とを備えてなるアンテナと、
前記回路基板の他方の面であって、前記アンテナに対応する位置に配置された電子部品又は端子部と、
前記回路基板の面上及び前記回路基板の内部のうち少なくともいずれか一方であって前記アンテナと前記電子部品又は端子部との間に配置されたシールドパターンと、
を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アンテナと電子部品又は端子部との間にシールドパターンを配置することにより、回路基板上に実装された電子部品又は端子部によるアンテナへの影響を防ぐことができるため、アンテナと電子部品又は端子部とを回路基板の表裏に配置してもアンテナの受信感度の劣化を防止することができる。
そして、アンテナと電子部品又は端子部とを回路基板の表裏に配置することができることにより、回路基板において広い実装面積を確保できることから、実装密度の向上や装置全体の小型化を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電子機器を電波腕時計に適用した一実施形態における要部を示した拡大断面図である。
【図2】図1に示された電子腕時計に設けられる回路基板の表面を示した拡大平面図である。
【図3】図3に示された回路基板の裏面を示した拡大平面図である。
【図4】図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】(A)は、図1に示す回路基板の表面に配置される第1のシールドパターンの平面図であり、(B)は、図1に示す回路基板の内層に配置される第2のシールドパターンの平面図であり、(C)は、図1に示す回路基板の内層に配置される第3のシールドパターンの平面図であり、(D)は、図1に示す回路基板の裏面に配置される第4のシールドパターンの平面図である。
【図6】アンテナに対するシールドパターンが設けられる範囲を説明するための説明図である。
【図7】シールドパターンが設けられる範囲とアンテナのQ値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1から図7を参照しつつ、本発明に係る電子機器の一実施形態を説明する。なお、本実施形態では、電子機器がアンテナを搭載した電波腕時計である場合を例として説明するが、本発明に係る電子機器は電波腕時計に限定されない。
【0013】
図1は、本実施形態における電波腕時計の要部断面図である。
本実施形態に係る電波腕時計100は、電気的な駆動により指針(時針、分針等)を回転させて時刻を表示するものである。
【0014】
電波腕時計100は、短柱形状に形成された本体ケース(以下「時計ケース1」という。)を備えている。本実施形態において時計ケース1は、例えばステンレス、チタニウム等の金属材料によって形成されている。なお、時計ケース1は、金属材料で形成されているものに限定されず、例えば樹脂等により形成されているものであってもよい。時計ケース1の上部外周には、軟質樹脂製のベゼル11が取付けられている。
【0015】
この時計ケース1の外側面であって時計の12時方向側及び6時方向側には、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部13が形成されており、各バンド取付部13には図示しない時計バンドが取り付けられるようになっている。また、時計ケース1の側部には時刻合わせの指示などの種々の操作指示が入力される複数の操作ボタン(図示せず)等が設けられている。
【0016】
図1に示すように、時計ケース1は、上下(図1において上下)が開口した中空状になっており、この中空部分が各種部品を収納する収納空間を与える収納部となる。
この時計ケース1の表面側(視認側、図1における上側)の開口部には、透明なガラス等の材料で形成された風防部材2が防水リング21等を介して表面側の開口部を閉塞するように取り付けられている。
また、時計ケース1の裏面側(図1における下側)の開口部には、裏蓋部材3が防水リング31等を介して裏面側の開口部を閉塞するように取り付けられている。
【0017】
時計ケース1の内部であって、風防ガラス2の下方には文字板4が配置されている。文字板4の上には図示しない時字等が設けられている。
この文字板4のほぼ中央部には、図示しない貫通孔が設けられており、この貫通孔には時計ムーブメント5の内部機構側から電波腕時計100の表面側(風防ガラス2の設けられている視認側、図1において上側)に向けて指針(時針6a、分針6b等)を支持する軸部材61が挿通されている。軸部材61には、図示しない輪列機構を介して指針駆動モータ(図示せず)に接続されており、指針駆動モータが駆動することにより対応する軸部材61が回転すると、当該軸部材61に支持されている指針が文字板4の外周に沿って設けられている時字を指示し、時刻を表示するようになっている。
【0018】
また、時計ケース1の内部であって文字板4の下方には、例えば樹脂等によって形成されたハウジング7が収納されている。ハウジング7には、時針6a、分針6b等の指針を運針させる時計ムーブメント5、各種電子部品を実装した回路基板8等が組み込まれている。時計ムーブメント5は、例えば輪列機構や指針駆動モータ(いずれも図示せず)等を備えて構成されている。
また、ハウジング7の下側には、ハウジング7を支持するため押え部材12が設けられている。
【0019】
図2は、本実施形態における回路基板8を表面側(視認側、図1において上側)から見た平面図であり、図3は、回路基板8を裏面側(図1において下側)から見た平面図である。図4は、図2におけるIV−IV線に沿う断面図である。
【0020】
本実施形態において、回路基板8は、図2、図3に示すように、全体がほぼ円盤状に形成されている。
図2に示すように、この回路基板8の一方の面である表面側(視認側、図1において上側)には、例えばLSI(大規模集積回路)などの半導体素子やコンデンサ等の各種電子部品81が配置されている。
また、この回路基板8の表面側には、各種の電子部品81等と接続される複数の端子部82(一般的な端子部82a)がパターン形成されている。
【0021】
また、この回路基板8の一方の面である表面側の一端部には、アンテナ9がケース91に収納された状態で配置されている。アンテナ9は、例えば接着剤90を介して回路基板8の上に接着固定されている。なお、アンテナ9を回路基板8の上に固定する手法は接着固定に限定されない。また、アンテナ9がケース91に収納されていることは必須ではなく、ケースに収納されていない状態のアンテナ9を直接回路基板8の上に配置してもよい。
【0022】
本実施形態において、アンテナ9は、長尺なコア92とこのコア92に導線を巻回することにより形成されているコイル部93とを備えており、コア92に電波が透過すると、コイル部93に誘起電流が発生するように構成されている。
コア92は、フェライトやアモルファス等の磁性材料により形成されている。なお、コア92を形成する材料は、フェライトやアモルファスに限定されず、コア92の形状に加工することが可能な磁性材料であれば他の材料も適用可能である。
【0023】
また、図3に示すように、回路基板8の他方の面である裏面側(図1において下側)には、例えば水晶振動子やアンテナ9によって検出された電気信号を増幅・復調して標準電波に含まれる時刻データを取り出す受信回路、発振器を有して現在時刻を計時する計時回路、コンデンサ等(いずれも図示せず)の各種電子部品81が搭載されている。
また、この回路基板8の表面側には、各種の電子部品81等と接続される複数の端子部82(一般的な端子部82a)がパターン形成されている。
さらに、回路基板8における裏面側にあって、アンテナ9に対応する位置の近傍には、アンテナ9が接続される一対の係止用の端子部82bが設けられており、コイル部93から引き出された導線の両端部は、回路基板8の裏面側に引き回されて、この係止用の端子部82bにそれぞれ係止されている。
また、本実施形態では、回路基板8における裏面側にあって、アンテナ9のコイル部93に対応する位置に、検査用の端子部(チェックパッド)82cが配置されている。検査用の端子部は、HIGH/LOWが速い速度で切り替わる信号を扱う端子部であり、アンテナ9の受信感度に影響を及ぼすノイズを発生させるものである。
【0024】
本実施形態において、回路基板8は、3層の絶縁層80(80a〜80c)が積層されて構成された多層の基板であり、回路基板8の面上及びその内部(すなわち絶縁層80(80a〜80c)の間)であってアンテナ9と電子部品81又は端子部82との間にシールドパターン83(83a〜83d)が配置されている。
シールドパターン83は、銅等の金属材料よりなる膜又は箔で形成されたベタパターンである。シールドパターン83を形成する手法は特に限定されず、例えばスクリーン印刷、PVD(Physical Vapor Deposition、物理気相成長)、フォトレジストを用いたフォトリソグラフィ等の手法により形成される。
なお、シールドパターン83と各種端子部82とを同時的に形成してもよい。
【0025】
ここで、本実施形態におけるシールドパターン83について、図2から図5(A)〜(D)等を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態では、図4に示すように、回路基板8の表裏(すなわち、一方の面の表面と他方の面の表面)に各1層と、回路基板8を構成する各絶縁層80a〜80cの間(内層)にそれぞれ1層のシールドパターン83が設けられている。
なお、本実施形態において、シールドパターン83a〜83dは、いずれもグランド(GND)に直接接続されたベタグランドとなっている。
【0026】
図5(A)は、回路基板8の表面側(すなわち、第1層目の絶縁層80aの表面)に形成されているシールドパターン83(第1層目のシールドパターン83a)の平面図である。本実施形態において、シールドパターン83aは、そのアンテナ9の延在方向における長さが、アンテナ9のコイル部93の長さよりも小さい(狭い)範囲に収まるように設けられている。
図3及び図4に示すように、本実施形態では、回路基板8の裏面側であってコイル部93に対応する位置に検査用の端子部82cが配置されており、シールドパターン83aは、回路基板8の表面側であって、この検査用の端子部82cに対応する部分及びその周辺部に設けられたほぼ半円形の遮蔽部を有している。また、回路基板8上には、各種の電子部品81等と接続される端子部82(一般的な端子部82a)が複数形成されており、シールドパターン83aは、これらの端子部82aを避けて配置されている。
なお、シールドパターン83aの形状は図示例に限定されない。
【0027】
図5(B)は、第1層目の絶縁層80aと第2の絶縁層80bとの間に形成されているシールドパターン83(第2層目のシールドパターン83b)の平面図である。
また、図5(C)は、第2層目の絶縁層80bと第2の絶縁層80cとの間に形成されているシールドパターン83(第3層目のシールドパターン83c)の平面図である。
第2層目のシールドパターン83b及び第3層目のシールドパターン83cは、いずれも第1層目のシールドパターン83aの外形形状とほぼ同じ形状となっており、図4に示すように、第1層目のシールドパターン83a〜第3層目のシールドパターン83cは、回路基板8の厚み方向におけるほぼ同じ位置に積層配置されるようになっている。
なお、第2層目のシールドパターン83b及び第3層目のシールドパターン83cの形状は図示例に限定されず、第1層目のシールドパターン83aの外形形状と異なる形状であってもよい。
【0028】
図5(D)は、回路基板8の裏面側(すなわち、第3層目の絶縁層80cの裏面側)に形成されているシールドパターン83(第4層目のシールドパターン83d)の平面図である。
第4層目のシールドパターン83dは、回路基板8の裏面側であってコイル部93に対応する位置に配置されている検査用の端子部82cを囲むように設けられている。
なお、第4層目のシールドパターン83dの形状は図示例に限定されず、例えば、シールドパターン83a〜83cとほぼ同じ外形形状であってもよい。
【0029】
回路基板8上には、検査用の端子部82c等、アンテナ9の感度劣化を引き起こすノイズを発生させる端子部82や電子機器81が搭載されているが、本実施形態では、こうした端子部82や電子機器81とアンテナ9との間に複数のシールドパターン83を積層配置しているため、回路基板8の裏面側であってアンテナ9のコイル部93に対応する位置に検査用の端子部82c等を配置してもアンテナ9がこうした端子部82や電子機器81から生ずるノイズの影響を受けず、アンテナ9の感度の劣化を防止することができる。
【0030】
なお、一般にアンテナ9の近傍に金属材料で形成された部材を配置すると、損失が発生しアンテナ9の感度劣化を生じる。しかし、金属製の部材がアンテナ9との位置関係において所定の範囲内に配置されている場合には、損失によるアンテナ9の感度劣化をほとんど生じない。
この点について、図6及び図7を参照しつつ説明する。
【0031】
図7は、図6に示すようにアンテナ9及び銅箔で形成されたシールドパターン83を配置して、電波腕時計において受信する主要な標準電波の周波数である40kHz、60kHz、77.5kHzの電波をアンテナ9が受信する際のQ(Quality Factor)の値(アンテナ9の感度指標である損失の少なさを示す値。以下「Q値」という。)を測定したグラフである。
【0032】
図6に示すように、アンテナ9のコア92の延在方向の長さを「アンテナ長La」とし、コイル部93におけるアンテナ長La方向の長さを「巻き線長Lm」とし、シールドパターン83のアンテナ9の延在方向における長さを「シールドパターン長Lx」としたとき、シールドパターン長Lxが、コイル部93の巻き線長Lmよりも小さい(狭い)範囲に収まっている場合には、図7に示すように、アンテナ9の感度指標である損失の少なさを示すQ値はほとんど劣化しない。
そして、図7によれば、シールドパターン長Lxがアンテナ9のコイル部93の巻き線長Lmを超える付近からQ値の劣化が増大し、シールドパターン長Lxがアンテナ長La近傍となる場合にQ値の劣化が最大となり、それを超えてシールドパターン幅Lxを大きくしてもそれ以上Q値の劣化が起こらないことが示されている。
したがって、シールドパターン長Lxが、コイル部93の巻き線長Lmよりも小さい(狭い)範囲に収まっている場合には、損失によるアンテナ9の感度劣化をほとんど生じさせずにシールドパターン83によるノイズの遮蔽を行うことができる。
【0033】
次に、本実施形態に係る電波腕時計100の作用について説明する。
本実施形態における電波腕時計100の回路基板8を形成する際には、第1層目の絶縁層80aの表面側に第1層目のシールドパターン83a及びその他の各種回路パターン、端子部82等を形成し、この第1層目の絶縁層80aと第2の絶縁層80bとの間に第2層目のシールドパターン83bを形成し、第2層目の絶縁層80bと第3の絶縁層80cとの間に第3層目のシールドパターン83cを形成する。さらに、第3の絶縁層80cの裏面側に第4層目のシールドパターン83d及び検査用端子部82cその他の端子部82や各種回路パターン等を形成し、絶縁層80aから80cを順次積層する。これにより回路基板8が形成される。
さらに、回路基板8の裏面側の検査用端子部82cに対応する位置に設けられているシールドパターン83aの上にコイル部93が配置されるように、回路基板8の表面側にアンテナ9が接着固定される。また、その他の各種電子部品が回路基板8の表裏に実装される。そして、アンテナ9等が搭載された回路基板8は、ハウジング7に収納され、ハウジング7とともに時計ケース1内に収納される。
【0034】
電波腕時計100による標準電波受信時においては、電波の磁界成分が、電波を遮蔽しない材料によって形成された非導電性の部材である風防部材2、文字板4等を透過して、アンテナ9のコア92に進入する。そして、コア92の一方側からアンテナ9に進入した磁束は、コア92の他方側の端部へと通過する。この通過の際に、コア92に巻回されたコイル部93に交流電流が誘導され(誘起電流)、これに伴ってコイル部93の両端に交流電圧が発生する。そして、この交流電圧がアナログ受信信号として図示しない受信回路に送られる。このとき、検査用端子部82c等からノイズが発生してもシールドパターン83a〜83dによってノイズが遮断されるため、アンテナ9はノイズを拾うことなく標準電波に基づく信号のみを受信回路に送信する。
そして、受信回路により、このアナログ受信信号について増幅、復調、デコード等の処理が行われ、デジタルの時刻データが取得される。これにより、取得された時刻データに基づいて適宜現在時刻の修正が行われ、正確な時刻が電波腕時計100の指針により表示される。
【0035】
以上のように、本実施形態によれば、アンテナ9と電子部品81又は端子部82との間にシールドパターン83を配置することにより、回路基板8上に実装された電子部品81又は端子部82から生じたノイズのアンテナ9への影響を防ぐことができる。このため、アンテナ9と電子部品81又は端子部82とを回路基板8の表裏に配置してもアンテナ9の受信感度の劣化を防止することができる。
そして、アンテナ9と電子部品81又は端子部82とを回路基板8の表裏に配置することができることにより、回路基板8において広い実装面積が確保され、実装効率(実装密度)の向上や、電波腕時計100全体の小型化を実現することができる。
また、本実施形態では、回路基板8は複数の絶縁層80a〜80cが積層されて構成されており、回路基板8の内部であって第1層目の絶縁層80aと第2層目の絶縁層80bとの間及び第2層目の絶縁層80bと第3層目の絶縁層80cとの間にもシールドパターン83が配置されている。このため、回路基板8の裏面側に配置されている検査用の端子部82c等から生じるノイズをより確実に遮蔽して、アンテナ9の感度劣化を防ぐことができる。
また、各シールドパターン83は、グランドに接続されているため、ノイズの発生を防ぐことができる。
また、金属製の部材をアンテナ9の近傍に配置する場合でも、コイル部93の長さよりも小さい(狭い)範囲内であれば、ほとんど損失を生じないところ、本実施形態におけるシールドパターン83は、そのアンテナ9の延在方向における長さが、アンテナ9のコイル部93の長さよりも小さい(狭い)範囲に収まるように設けられている。このため、シールドパターン83を配置することによる損失を抑えて、アンテナ9の感度を劣化させずにノイズを遮蔽することができる。
また、このように、コイル部93の長さよりも小さい(狭い)範囲内にシールドパターン83を配置すれば、アンテナ9の配置されている位置の裏面側でもノイズを生じるような電子部品81や端子部82等を配置することができるため、回路基板8上における部品等の実装設計の自由度を向上させることができる。
また、本実施形態では、回路基板8上であってアナログ式時計の指針を動作させるための輪列機構等からなる時計ムーブメント5が配置されている側にアンテナ9を配置している。このため、時計ムーブメント5と同じかこれよりも高さの低いアンテナ9を用いる限り、アンテナ9を回路基板8上に配置してもそのことにより電波腕時計100全体の厚み方向の寸法が大きくなることはなく、装置を大型化させずに効率よく部品を実装することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、特に検査用の端子部82cから生じるノイズを遮蔽するためにシールドパターン83を配置したが、シールドパターン83によりノイズを遮蔽する対象は検査用の端子部82cに限定されない。
例えば電子機器(電波腕時計100等)が表示手段として液晶パネル等で構成された液晶表示部を備えている場合には、液晶パネルの駆動信号が出力される端子部や液晶パネルを点灯させるための電源系と接続される端子部等はHIGH/LOWが速い速度で切り替わる信号を扱うため、アンテナの感度に影響を及ぼすようなノイズを生じやすい。このため、このような端子部等を備える場合には、これらに対応する位置にもノイズを遮蔽するためシールドパターン83を配置することが好ましい。
【0037】
また、本実施形態では、回路基板8が3層の絶縁層80が積層されて構成された多層の回路基板である場合を例としたが、回路基板8の構成はこれに限定されない。1層のみの回路基板でもよいし、4層以上が積層されたものであってもよい。
【0038】
また、本実施形態では、回路基板8の表裏(すなわち、一方の面の表面と他方の面の表面)と、回路基板8を構成する各絶縁層80の間(内層)にそれぞれシールドパターン83が形成され、4層のシールドパターン83が設けられている場合を例としたが、シールドパターン83の数はこれに限定されない。
例えば、回路基板8の表面(すなわち、一方の面)や裏面(すなわち、他方の面)のみにシールドパターン83が設けられていてもよいし、回路基板8を構成する絶縁層80の間にのみシールドパターン83が形成されていてもよい。また、回路基板8が本実施形態のように多層構造である場合には、回路基板8を構成する全ての絶縁層の間にそれぞれシールドパターン83を形成することは必須ではなく、例えば1層目と2層目の間にだけシールドパターン83を形成する等の構成としてもよい。
なお、電子部品81や端子部82から生じるノイズを効果的に遮蔽するためには、シールドパターン83を複数層設けることが好ましい。
【0039】
また、本実施形態では、アンテナ9に対応する位置に形成されたシールドパターン83が、回路基板8の裏面(すなわち、他方の面)に設けられている検査用の端子部82cに対応する形状となっている場合を例として説明したが、シールドパターン83の設けられる範囲や形状はここに例示したものに限定されない。
図7に示したように、コイル部93の長さに対応する範囲内であればシールドパターン83のような金属材料からなる箔や膜等を配置してもQ値が大きく下がることはない。このため、シールドパターンは、そのアンテナ9の延在方向における長さが、アンテナ9のコイル部93の長さよりも小さい範囲に収まるように設けられていればよく、シールドパターン83をこのような範囲全体に配置してもよい。
また、アンテナ9の受信感度が多少劣化しても許容される場合には、コイル部93の長さに対応する範囲を超えてシールドパターン83を配置してもよい。
【0040】
また、本実施形態では、アンテナ9に対応する位置及びその近傍位置のみに1箇所だけシールドパターン83を配置した例を示したが、シールドパターン83を配置する場所や数は特に限定されず、アンテナ9の感度に影響を与えない場所であれば、これ以外の場所にもシールドパターン83、銅箔等の金属材料により形成されたベタパターンを回路基板8の面上や回路基板8の内部(内層)に配置してもよい。
【0041】
また、本実施形態では、シールドパターン83a〜83dが、いずれもグランドに接続されたベタグランドとなっている場合を例として説明したが、シールドパターン83a〜83dがグランドに接続されていることは必須の要素ではなく、シールドパターン83a〜83dはグランド接続されていないものでもよい。
また、シールドパターン83a〜83dのうちの一部のみがグランドに接続されていてもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、電波腕時計100が指針を備えるアナログ式の電波腕時計である場合について説明したが、電波腕時計100は、アナログ式に限定されない。例えば、液晶パネル等で構成された液晶表示部を備えるデジタル式の電波腕時計100でもよいし、指針及び液晶表示部の双方を備える電波腕時計100であってもよい。
なお、電波腕時計100が液晶パネル等で構成された液晶表示部を備えている場合には、前述のように、液晶パネルの駆動信号が出力される端子部や液晶パネルを点灯させるための電源系と接続される端子部等に対応する位置にもノイズを遮蔽するためシールドパターン83を配置することが好ましい。
【0043】
また、本実施形態では、電子機器が電波腕時計である場合について説明したが、電子機器は必ずしも電波腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の電波時計にも適用することができる。また、電子機器は必ずしも電波時計に限定されず、例えば携帯電話機等の各種電子機器にも本発明を広く適用することができる。
【0044】
その他、本発明が本実施形態に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0045】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
回路基板と、
この回路基板の一方の面に配置され、コアとこのコアに導線を巻回することにより構成されたコイル部とを備えてなるアンテナと、
前記回路基板の他方の面であって、前記アンテナに対応する位置に配置された電子部品又は端子部と、
前記回路基板の面上及び前記回路基板の内部のうち少なくともいずれか一方であって前記アンテナと前記電子部品又は端子部との間に配置されたシールドパターンと、
を備えていることを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記回路基板は、複数の絶縁層が積層されて構成されており、
前記シールドパターンは、前記回路基板の内部であっていずれかの前記絶縁層の間に少なくとも1層以上配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記シールドパターンは、グランドに接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
<請求項4>
前記シールドパターンは、その前記アンテナの延在方向における長さが、前記アンテナの前記コイル部の長さよりも小さい範囲に収まるように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0046】
1 時計ケース
2 風防部材
4 文字板
6 ハウジング
8 回路基板
9 アンテナ
81 電子部品
82 端子部
83 シールドパターン
92 コア
93 コイル部
100 腕時計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
この回路基板の一方の面に配置され、コアとこのコアに導線を巻回することにより構成されたコイル部とを備えてなるアンテナと、
前記回路基板の他方の面であって、前記アンテナに対応する位置に配置された電子部品又は端子部と、
前記回路基板の面上及び前記回路基板の内部のうち少なくともいずれか一方であって前記アンテナと前記電子部品又は端子部との間に配置されたシールドパターンと、
を備えていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記回路基板は、複数の絶縁層が積層されて構成されており、
前記シールドパターンは、前記回路基板の内部であっていずれかの前記絶縁層の間に少なくとも1層以上配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記シールドパターンは、グランドに接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記シールドパターンは、その前記アンテナの延在方向における長さが、前記アンテナの前記コイル部の長さよりも小さい範囲に収まるように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2889(P2013−2889A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132802(P2011−132802)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】