説明

電子治療器及び、電子治療器の断線スパーク検出回路

【課題】導子のケーブル部分が断線した際に生じるスパークノイズのみを確実に検知することができる電子治療器の断線スパーク検出回路を提供する。
【解決手段】導子が受ける治療対象からの反射電力の大きさを計測する整合状態検出手段と、治療に用いる所定の電気信号を発生する信号発生手段12の出力側に、ブリッジ回路と、ブリッジ回路の一辺を構成するインピーダンス素子として機能する入力インピーダンスを有し、出力インピーダンスが前記導子側のインピーダンスと整合するように出力インピーダンスの値が調整されるインピーダンス整合手段14と、ブリッジ回路の閉回路の他方の対角辺として挿入される電流検出手段13と、電流検出手段13の出力から出力線の断線時に生ずるスパークノイズの周波数成分を抽出するフィルタ手段16と、前記フィルタ手段16の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあるか否かを判定する制御手段18とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子治療器に係り、特に電子治療器及び、電子治療器の断線スパーク検出回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子治療器は、直流または交流(高周波)の電気信号を発生する装置本体と、装置本体で発生した電気信号を生体に加える導子から基本的に構成されている。導子は、電気信号を生体に出力する放射部(電極からなる。)と、放射部を本体側に接続するケーブル(出力線)とからなる。
導子は、使用者により乱暴に扱われることもあり、ケーブル部分の芯線が断線することもある。
そこで、導子の断線部分に発生するスパークをノイズとして検出するようにした電子治療器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−221291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に示す電子治療器の断線スパーク検出回路にあっては、導子のケーブル部分が断線した際に発生するスパークノイズを検出することはできるが、スパークノイズ以外の信号(例えば、携帯電話機で送受信される電波等)も誤検出される虞がある、という問題が有った。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、導子のケーブル部分が断線した際に生じるスパークノイズのみを確実に検知することができる電子治療器の断線スパーク検出回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の電子治療器の断線スパーク検出回路は、治療に用いる所定の電気信号を発生する信号発生手段と、治療対象の患部に当てられて該信号発生手段から出力される電気信号を受けて温熱治療を行う導子とを備える電子治療器における、前記導子を構成する出力線の断線時に生ずるスパークノイズを検出する断線スパーク検出回路において、前記導子が受ける前記治療対象からの反射電力の大きさを計測する整合状態検出手段と、前記信号発生手段の出力側に、一つのインピーダンス素子を1辺とし、4辺で構成される閉回路の一方の対角辺の両端が接続されるブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の一辺を構成するインピーダンス素子として機能する入力インピーダンスを有し、出力インピーダンスが前記導子側のインピーダンスと整合するように前記出力インピーダンスの値が調整されるインピーダンス整合手段と、前記ブリッジ回路の前記閉回路の他方の対角辺として挿入される電流検出手段と、前記電流検出手段の出力から前記出力線の断線時に生ずるスパークノイズの周波数成分を抽出するフィルタ手段と、整合状態検出手段の検出出力に基づいて前記インピーダンス整合手段の出力インピーダンスを調整するための制御信号を前記インピーダンス整合手段に出力するとともに、前記フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあるか否かを判定する制御手段とを有することを特徴とする。
【0006】
上記構成の本発明の電子治療器の断線スパーク検出回路では、信号発生手段により出力された治療に用いる所定の電気信号は、一つのインピーダンス素子を1辺とし、4辺で構成される閉回路の一方の対角辺の両端が接続されるブリッジ回路、インピーダンス整合手段を介して治療対象の患部に当てられた導子に供給される。
【0007】
インピーダンス整合手段は、前記ブリッジ回路の一辺を構成するインピーダンス素子として機能する入力インピーダンスを有し、出力インピーダンスが前記導子側のインピーダンスと整合するように前記出力インピーダンスの値が前記整合状態検出手段の検出出力に基づいて制御手段により調整される。
一方、前記ブリッジ回路の前記閉回路の他方の対角辺として電流検出手段が挿入されており、通常の動作状態では、すなわち、インピーダンス整合手段により導子側とのインピーダンスの整合が取られている状態下では、前記ブリッジ回路は平衡状態にあり、上記電流検出手段には、電流は流れない状態にある。
【0008】
ここで、導子の出力線(ケーブル)が断線し、出力線にスパークノイズが発生すると、インピーダンス整合手段を介して電流検出手段にスパークノイズを含む電流が流れる。フィルタ手段は、この電流のうち、検出対象であるスパイクノイズの電流成分のみを取り出し、制御手段に出力する。
制御手段は、フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあるか否かを判定する。
したがって、導子のケーブル部分が断線した際に生じるスパークノイズのみを確実に検出することができる。
【0009】
また、本発明の電子治療器の断線スパーク検出回路は、さらに、断線が生じたことを報知する報知手段を有し、前記制御手段は、前記フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあると判定した場合には、前記報知手段を駆動することを特徴とする。
【0010】
上記構成の本発明の電子治療器の断線スパーク検出回路では、さらに、断線が生じたことを報知する報知手段を有し、前記制御手段は、前記フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあると判定した場合には、報知手段を駆動する。報知手段としては、断線、未接続等を表示する表示手段、あるいは、断線状態を音、光などにより報知する報知器がある。
したがって、使用者に導子のケーブルが断線したことを確実に認識させることができる。
【0011】
また、本発明の電子治療器は、治療に用いる所定の電気信号を発生する信号発生手段と、治療対象の患部に当てられて該信号発生手段から出力される電気信号を受けて温熱治療を行う導子と、該導子を構成する出力線の断線時に生ずるスパークノイズを検出する断線スパーク検出回路とを備える電子治療器であって、前記断線スパーク検出回路は、前記導子が受ける前記治療対象からの反射電力の大きさを計測する整合状態検出手段と、前記信号発生手段の出力側に、一つのインピーダンス素子を1辺とし、4辺で構成される閉回路の一方の対角辺の両端が接続されるブリッジ回路と、前記ブリッジ回路の一辺を構成するインピーダンス素子として機能する入力インピーダンスを有し、出力インピーダンスが前記導子側のインピーダンスと整合するように前記出力インピーダンスの値が調整されるインピーダンス整合手段と、前記ブリッジ回路の前記閉回路の他方の対角辺として挿入される電流検出手段と、前記電流検出手段の出力から前記出力線の断線時に生ずるスパークノイズの周波数成分を抽出するフィルタ手段と、前記整合状態検出手段の検出出力に基づいて前記インピーダンス整合手段の出力インピーダンスを調整するための制御信号を前記インピーダンス整合手段に出力するとともに、前記フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあるか否かを判定し、断線状態であると判定した場合に、前記電気信号の出力を停止するように前記信号発生手段を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
上記構成の本発明の電子治療器では、信号発生手段により出力された治療に用いる所定の電気信号は、一つのインピーダンス素子を1辺とし、4辺で構成される閉回路の一方の対角辺の両端が接続されるブリッジ回路、インピーダンス整合手段を介して治療対象の患部に当てられた導子に供給される。
【0013】
インピーダンス整合手段は、前記ブリッジ回路の一辺を構成するインピーダンス素子として機能する入力インピーダンスを有し、出力インピーダンスが前記導子側のインピーダンスと整合するように前記出力インピーダンスの値が前記整合状態検出手段の検出出力に基づいて制御手段により調整される。
一方、前記ブリッジ回路の前記閉回路の他方の対角辺として電流検出手段が挿入されており、通常の動作状態では、すなわち、インピーダンス整合手段により導子側とのインピーダンスの整合が取られている状態下では、前記ブリッジ回路は平衡状態にあり、上記電流検出手段には、電流は流れない状態にある。
【0014】
ここで、導子の出力線(ケーブル)が断線し、出力線にスパークノイズが発生すると、インピーダンス整合手段を介して電流検出手段にスパークノイズを含む電流が流れる。フィルタ手段は、この電流のうち、検出対象であるスパイクノイズの電流成分のみを取り出し、制御手段に出力する。
制御手段は、フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあるか否かを判定し、断線状態であると判定した場合に、前記電気信号の出力を停止するように前記信号発生手段を制御する。
したがって、導子のケーブル部分が断線した際に生じるスパークノイズのみを確実に検出することができるとともに、導子のケーブル部分が断線した場合には治療に用いる電気信号の出力が停止されるので、安全の確保が図れる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の電子治療器の断線スパーク検出回路によれば、検出された外来ノイズのうち、フィルタ手段によりスパークノイズのみを取り出すことができるので、導子のケーブルの断線状態を確実に検出することができる。
【0016】
また、本発明の電子治療器の断線スパーク検出回路によれば、制御手段は、前記フィルタ手段の出力に基づいて導子のケーブル(出力線)が断線状態にあると判定した場合には、報知手段を駆動し、断線状態をユーザに知らせるようにしたので、ユーザに導子のケーブルが断線したことを確実に認識させることができる。
【0017】
また、本発明の電子治療器によれば、検出された外来ノイズのうち、フィルタ手段によりスパークノイズのみを取り出すことができるので、導子のケーブル部分が断線した際に生じるスパークノイズのみを確実に検出することができ、さらに導子のケーブル部分が断線した場合には治療に用いる電気信号の出力が停止されるので、安全の確保が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の第1の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路の構成を図1に示す。同図において、電子治療器1は、信号発生器10と、増幅器11と、整合状態検出部12と、電流検出部13と、インピーダンス整合部14と、増幅器15と、バンドパスフィルタ16と、波形整形回路17と、制御回路18と、操作部19と、報知部20と、インピーダンス整合部14のコネクタ端子21,22に接続され治療対象の患部に当てられて信号発生器10から出力される電気信号を受けて温熱治療を行う導子(図示せず)と、インピーダンス素子Z1,Z2,Z3及びインピーダンス整合部14の入力インピーダンスZinにより構成されるブリッジ回路とを有している。
【0019】
信号発生器10は、治療に用いる電気信号(例えば、27.12MHzの高周波信号)を生成し、出力する。増幅器11は、信号発生器10から出力される電気信号を所定のレベルまで増幅する。信号発生器10は、本発明の信号発生手段に相当する。
【0020】
整合状態検出部12は、増幅器12から出力された電気信号をブリッジ回路、インピーダンス整合部14を介して導子側に出力するとともに、導子側からの反射電力を計測し、計測した反射電力の大きさを制御回路18に出力する機能を有している。この反射電力の大きさは、整合状態検出部12に入力される増幅器11の電力出力と、整合状態検出部12から出力される電力との差をインピーダンス整合部14が求めることにより計測される。整合状態検出部12は、本発明の整合状態検出手段に相当する。
【0021】
また、上記ブリッジ回路は、一つのインピーダンス素子を1辺とし、インピーダンス素子Z1,Z2,Z3及びインピーダンス整合部14の入力インピーダンスZinの4辺で構成される閉回路の一方の対角辺の両端、すなわち、インピーダンス素子Z1,Z2の直列回路の両端間が、信号発生器10の出力側である整合状態検出部12の出力側に接続されている。
【0022】
また、上記ブリッジ回路の上記閉回路の他方の対角辺に、すなわち、インピーダンス素子Z1,Z2の接続点Pとインピーダンス素子Z3とインピーダンス整合部14の入力インピーダンスZinとの接続点Qとの間に、電流検出部13が挿入されている。
【0023】
電流検出部13の具体的構成を図2に示す。同図において、電流検出器13は、上記ブリッジ回路における接続点P、Q間に接続された発光ダイオード130と、エミッタが接地され、コレクタが抵抗R1を介して電源電圧V0の電源ラインに接続されるフォトトランジスタ131とからなるフォトカプラ13で構成されている。フォトカプラ13の出力端、すなわちフォトトランジスタ131のコレクタは増幅器15の入力端に接続されている。電流検出部13は、本発明の電流検出手段に相当する。
【0024】
次に、インピーダンス整合部14の具体的構成を図3に示す。同図において、インピーダンス整合部14は、トランスT1を有している。トランスT1の一次側巻線の一端は接地され、他端は、インピーダンスZjを介してブリッジ回路側のコネクタ端子23に接続されている。コネクタ端子23はインピーダンスZiを介して接地されている。
【0025】
トランスT1の二次側巻線は、インダクタL1、可変コンデンサVC及びインダクタL2の直列回路を含んで構成され、一端がコネクタ端子21に接続され、他端はコネクタ端子22に接続されている。インピーダンス整合部14は、本発明のインピーダンス整合手段に相当する。
【0026】
また、インピーダンス整合部14は、制御回路18から出力される制御信号により可変コンデンサVCの回転軸を回転駆動するモータ140を有している。このモータは、本実施形態ではパルス信号により駆動されるステッッピングモータである。
【0027】
インピーダンス整合部14のコネクタ端子21、22には、電極30Aを有する(図では、概念的に一つしか示していないが、実際には一対の電極を有している。)導子30のケーブル(出力線)30B、30Bが、着脱可能に接続できるようになっている。インピーダンスZi、インピーダンスZjは、一つまたは複数のインピーダンス素子で構成されている。
【0028】
インピーダンス整合部14のブリッジ回路側から見たインピーダンス、すなわち、コネクタ端子23側から見た入力インピーダンスZinは、図1におけるブリッジ回路を構成する他のインピーダンス素子Z1,Z2,Z3に対して、インピーダンスの値がZ1×Zin=Z2×Z3の関係を満たすようにインピーダンス整合部14内の回路定数が選択されているものとする。
【0029】
インピーダンス整合部14のコネクタ端子21、22側から見た出力インピーダンスZoutは、可変コンデンサVCの容量値を制御回路18により制御することにより変更でき、導子30の電極30Aが当てられる治療対象である生体の患部を含む導子30側のインピーダンスに整合させるように制御されるようになっている。
【0030】
増幅器15は、電流検出部13の出力を所定のレベルまで増幅する機能を有している。
また、バンドパスフィルタ16は、導子30のケーブル(出力線)30Bが断線したときに、発生するスパークノイズが分布する周波数帯域、例えば、40MHzを中心周波数とした所定の帯域幅の信号を通過させる特性を有している。バンドパスフィルタ16は本発明のフィルタ手段に相当する。
波形整形回路17は、例えば、シュミットトリガー回路で構成されている。
【0031】
操作部19は、電子治療器の電源のON,OFF操作や動作モード等を設定するための各種キーを有している。
報知部20は、制御回路18の制御下に導子のケーブルの断線状態を使用者に対し、LEDの点灯による表示、あるいは音響により報知する機能を有している。報知部20は本発明の報知手段に相当する。
【0032】
制御回路18は、整合状態検出部12の検出出力(反射電力の大きさ)に基づいてインピーダンス整合部14の出力インピーダンスを調整するための制御信号をインピーダンス整合部14に出力するとともに、バンドパスフィルタ16の出力に基づいて導子30の出力線30Bが断線状態にあるか否かを判定し、導子30の出力線30Bが断線状態にあると判定した場合には、治療に用いる電気信号を出力するのを停止するように信号発生器10を制御する機能を有している。
【0033】
また、制御回路18は、バンドパスフィルタ16の出力に基づいて導子30の出力線30Bが断線状態にあると判定した場合には、報知部20を駆動する機能を有している。制御回路18は、本発明の制御手段に相当する。
【0034】
整合状態検出部12、インピーダンス整合部14、ブリッジ回路、電流検出部13、増幅器15、バンドバスフィルタ16、波形整形回路17、制御回路18及び報知部20は、本発明の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路を構成している。
【0035】
上記構成からなる本発明の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路の動作について説明する。まず、導子30の出力線(ケーブル)30Bがコネクタ端子21、22に接続され、導子3の電極30Aが治療対象である患部にあてられた状態で使用者が操作部19を操作して、電源をONにすると、制御回路18は、整合状態検出部12により計測された反射電力の大きさに基づいてその反射電力が最小となるように、すなわち、インピーダンス整合部14内のモータ140を駆動し、可変コンデンサVCの回転軸を回転駆動させ、可変コンデンサVCの容量値を変更し、治療対象となる患部を含む導子30側のインピーダンスとインピーダンス整合部14の出力インピーダンスZoutとが整合するようにモータ140を駆動制御する。このときに、制御回路18により実行されるインピーダンス整合部14の可変コンデンサVCの容量調整処理の内容を図4に示す。
【0036】
図4において、まず、制御回路18は患者の身体からの反射電力を検出するため、整合状態検出部12から反射電力の大きさを入力する(ステップ41)。そして、制御回路18は制御回路18が内蔵する予め決められたレジスタ(記憶領域)から前回得た反射電力の大きさを読み出し、先ほど入力した現在の反射電力の大きさと比較する(ステップ42)。
【0037】
制御回路18は反射電力の大きさが前回よりも大きくなっていると判定した場合(ステップ42で“Yes”と判定した)には、インピーダンス整合部14の出力インピーダンスZoutと、患者の患部を含む導子30側のインピーダンスとの差分が大きくなっていると判断し、現状の可変コンデンサVCの容量値の増加、もしくは減少の方向を逆転させる必要があると判断してインピーダンス整合部14内のモータ140を1ステップ反転させるようにモータ140に制御信号を出力する。
【0038】
この結果、インピーダンス整合部14内のモータ140の可変コンデンサVCを駆動するモータ140が1ステップ反転駆動される(ステップ42)。
また、制御回路18は反射電力の大きさが前回よりも大きくなっていないと判定した場合(ステップ42で“No”と判定した場合)には、現在の反射電力の大きさが前回よりも小さくなっているか否かのチェックを行う(ステップ46)。
【0039】
また、制御回路18は、反射電力の大きさが前回よりも小さくなっていると判定した場合(ステップ46で“Yes”と判定した場合)には、インピーダンス整合部14の出力インピーダンスZoutと、患者の患部を含む導子30側のインピーダンスとの差分が小さくなっているため現状のバリコンの容量変化を更に促進するべきであると判断し、インピーダンス整合部14内のモータ140を1ステップ正転させるようにモータ140に制御信号を出力する。
【0040】
この結果、この結果、インピーダンス整合部14内のモータ140の可変コンデンサVCを駆動するモータ140が1ステップ反転駆動される(ステップ47)。
また、制御回路18は反射電力の大きさが前回よりも小さくなっていないと判定した場合(ステップ46で“No”と判定した)には、反射電力が安定していると判断し、特にバリコンの容量を変化させる必要は無いと判断する。この処理において、制御回路18は可変コンデンサVCの容量値を変化させて反射電力の大きさを調整し、反射電力が最も小さくなる可変コンデンサVCの容量値を探し出すように処理を行う。
【0041】
次に、制御回路18は、先ほど整合状態検出部12から入力した反射電力の大きさを、先ほど前回の反射電力の大きさを読み出したレジスタにセットする(ステップ44)。そして、制御回路18は、この処理を終了し、待機する(ステップ45)。
【0042】
以上の制御回路18により実行されるインピーダンス整合部14の可変コンデンサVCの容量調整処理は、電子治療器に電源投入時にのみ実行するようにしてもよいし、電源投入時に加えて治療中に定期的に行うようにしてもよい。
このようにして、インピーダンス整合部14の出力インピーダンスZoutと、患者の患部を含む導子30側のインピーダンスとの整合を取った状態で治療を開始する。
【0043】
このような状態下で、導子30の出力線(ケーブル)30Bが断線し、スパークノイズが発生すると、電流検出部14にスパークノイズによる電流(図5(A)が流れ、電流検出部14で整流された信号(図5(B))が、増幅器15に出力される。この信号は、増幅器15で所定のレベルまで増幅され、バンドバスフィルタ16に出力される(図5(C))。
【0044】
バンドパスフィルタ16では、入力された信号からスパークノイズ成分のみを取り出し、波形整形回路17に出力する。波形整形回路17では、バンドパスフィルタ16の出力を所定の波高値のパルス信号に整形し、制御回路18に出力する。
【0045】
制御回路18は、バンドパスフィルタ16の出力に基づいて導子の出力線(ケーブル)に断線状態にあるか否かを判定する。この場合には、所定の波高値のパルス信号が入力されたため、導子の出力線(ケーブル)に断線が生じたと判定し、治療に用いる電気信号を出力するのを停止するように信号発生器10を制御すると共に、報知部20を駆動する。
この結果、信号発生器10は、電気信号の出力を停止し、報知部20は、導子の出力線が断線している旨、表示し、あるいは音声(または音響)により報知する。
【0046】
本発明の第1実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路によれば、検出された外来ノイズのうち、フィルタ手段によりスパークノイズのみを取り出すことができるので、導子のケーブルの断線状態を確実に検出することができる。
【0047】
また、本発明の第1実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路によれば、制御手段は、前記フィルタ手段の出力に基づいて導子のケーブル(出力線)が断線状態にあると判定した場合には、報知手段を駆動し、断線状態をユーザに知らせるようにしたので、ユーザに導子のケーブルが断線したことを確実に認識させることができる。
【0048】
また、本発明の第1実施形態に係る電子治療器によれば、検出された外来ノイズのうち、フィルタ手段によりスパークノイズのみを取り出すことができるので、導子のケーブル部分が断線した際に生じるスパークノイズのみを確実に検出することができ、さらに導子のケーブル部分が断線した場合には治療に用いる電気信号の出力が停止されるので、安全の確保が図れる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路の構成を図6に示す。同図において、電子治療器1Aは、信号発生器50と、増幅器51と、方向性結合器52と、フィルタ53と、検波部54と、増幅器55と、波形整形回路56と、制御回路57と、操作部58と、報知部59と、コネクタ60に接続され治療対象の患部に当てられて信号発生器50から出力される電気信号を受けて温熱治療を行う導子(図示せず)とを有している。フィルタ53、検波部54、増幅器55、波形整形回路56および制御回路57で導子の段戦時に発生するスパイクノイズを検出するスパークノイズ検出系を構成している。
【0050】
信号発生器50は、治療に用いる電気信号(例えば、27.12MHzの高周波信号)を生成し、出力する。
増幅器51は、信号発生器50から出力される電気信号を治療に必要な所定のレベルまで増幅する。信号発生器50は、本発明の信号発生手段に相当する。
【0051】
信号発生器50の出力側である増幅器51の出力端は、方向性結合器52の入力ポートXが接続されている。
方向性結合器52は、入力ポートXと、出力ポートYと、結合ポートZとを有している。方向性結合器52の出力ポートYは、図示してない導子が接続されるコネクタ60に接続されており、さらに方向性結合器52の結合ポートZが導子の出力線が断線時に発生するスパークノイズを検出する検出系に接続されている。
【0052】
方向性結合器52は、入力ポートXから入力された信号は出力ポートYに出力され、かつ出力ポートYから入力された信号のみが結合ポートZに出力されるように結合度が設定されている。
フィルタ5は、方向性結合器52の結合ポートZから出力される信号から導子の出力線の断線により発生したスパークノイズ成分を抽出する機能を有している。
【0053】
フィルタ5の周波数特性を図7に示す。同図に示すように、このフィルタ5は、幅広い周波数域に分布するスパークノイズを抽出できるように、周波数帯域により減衰量を異ならしめた周波数特性を有している。すなわち、40MHzを中心周波数としてある程度の周波数帯域をスパークノイズの主たる検出域とし、この周波数帯域の減衰量を0dBとする。
また30MHz以下の周波数帯域では、スパークノイズが検出される可能性は少ないので検出信号の信号レベルを基準として減衰量を70dBとする。
【0054】
また、300MHzから1GHz未満にわたる周波数帯域では、業務用無線の周波数帯域であり、この周波数帯域の無線電波が外来ノイズとなるが、信号源は電子治療から通常は、距離が離れていると考えられるので、減衰量を少なくしても不都合はないので、減衰量を30dBとする。
【0055】
更に、1GHz以上の周波数帯域は、携帯電話機で使用される信号の周波数帯域であるので、大幅に減衰させる必要があるので、減衰量を50dBとする。このようにして各周波数帯域での信号の減衰量を決定することにより図7の周波数特性が得られ、この周波数特性をフィルタ5に持たせるようにフィルタ5は作製されている。
フィルタ5は、本発明のフィルタ手段に相当する。
【0056】
検波部54は、フィルタ53の出力を半端整流する機能を有している。
増幅器55は、検波部54の出力を所定のレベルまで増幅する機能を有している。
波形整形回路17は、例えば、シュミットトリガー回路で構成されており、入力されたアナログ信号を所定の波高値のパルス信号に整形して出力する。
【0057】
操作部58は、電子治療器の電源のON,OFF操作や動作モード等を設定するための各種キーを有している。
報知部59は、制御回路57の制御下に導子のケーブル(出力線)の断線状態を使用者に対し、LEDの点灯による表示、あるいは音響により報知する機能を有している。報知部20は本発明の報知手段に相当する。
【0058】
制御回路57は、フィルタ53の出力に基づいて導子の出力線が断線状態にあるか否かを判定し、コネクタ60に接続されている導子の出力線が断線状態にあると判定した場合には、治療に用いる電気信号を出力するのを停止するように信号発生器50を制御する機能を有している。
また、制御回路57は、フィルタ53の出力、延いては波形整形回路56の出力に基づいて導子の出力線が断線状態にあると判定した場合には、報知部59を駆動する機能を有している。制御回路57は、本発明の制御手段に相当する。
【0059】
方向性結合器52、フィルタ53、検波部54、増幅器55、波形整形回路56、制御回路57及び報知部59は、本発明の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路を構成している。
【0060】
上記構成からなる本発明の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路の動作について説明する。まず、導子の出力線(ケーブル)がコネクタ60に接続され、導子の一対の電極が治療対象である患部にあてられた状態で使用者が操作部58を操作して、電源をONにすると、制御回路57の制御下に信号発生器50より治療に用いる電気信号が生成され、増幅器51に出力される。増幅器51では、信号発生器50から入力される電気信号を治療に必要な所定のレベルまで増幅し、方向性結合器52の入力ポートXに出力する。
【0061】
方向性結合器52の入力ポートXに入力された増幅器51の出力信号は、出力ポートYよりコネクタ60を介して図示してない導子の出力線を介して導子の一対の電極に印加され、電極が固定された患部に温熱治療が施される。
【0062】
このような状態下で、導子の出力線(ケーブル)が断線し、スパークノイズが発生すると、コネクタ60を介して方向性結合器52の出力ポートYにスパークノイズが入力され、このスパークノイズは、結合ポートZよりフィルタ53に出力される(図8(A))。
【0063】
実際には、このスパークノイズ以外に、外来ノイズが混入しているが、フィルタ53によりスパークノイズ以外の外来ノイズが除去され、スパークノイズのみが抽出される。このスパークノイズは、検波部54により半波整流され、増幅器55に出力される(図8(B))。
検波部54の出力信号は、増幅器55で所定のレベルまで増幅され、波形整形回路56に出力される(図8(C))。
【0064】
波形整形回路17では、バンドパスフィルタ16の出力を所定の波高値のパルス信号に整形し、制御回路18に出力する(図8(D))。
【0065】
制御回路57は、フィルタ53の出力、延いては波形整形回路56の出力信号に基づいて導子の出力線(ケーブル)に断線状態にあるか否かを判定する。この場合には、所定の波高値のパルス信号が入力されたため、導子の出力線(ケーブル)に断線が生じたと判定し、治療に用いる電気信号を出力するのを停止するように信号発生器50を制御すると共に、報知部59を駆動する。
この結果、信号発生器50は、電気信号の出力を停止し、報知部59は、導子の出力線が断線している旨、表示し、あるいは音声(または音響)により報知する。
【0066】
本発明の第2実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路によれば、検出された外来ノイズのうち、フィルタ手段によりスパークノイズのみを取り出すことができるので、導子のケーブルの断線状態を確実に検出することができる。
【0067】
また、本発明の第2の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路によれば、制御手段は、前記フィルタ手段の出力に基づいて導子のケーブル(出力線)が断線状態にあると判定した場合には、報知手段を駆動し、断線状態をユーザに知らせるようにしたので、ユーザに導子のケーブルが断線したことを確実に認識させることができる。
【0068】
また、本発明の第2実施形態に係る電子治療器によれば、検出された外来ノイズのうち、フィルタ手段によりスパークノイズのみを取り出すことができるので、導子のケーブル部分が断線した際に生じるスパークノイズのみを確実に検出することができ、さらに導子のケーブル部分が断線した場合には治療に用いる電気信号の出力が停止されるので、安全の確保が図れる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の電子治療器及び電子治療器の断線スパーク検出回路は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々、変更を加えることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路の構成を示すブロック図。
【図2】図1に示した本発明の第1の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路における電流検出部の具体的構成を示す回路図。
【図3】図1に示した本発明の第1の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路におけるインピーダンス整合部の具体的構成を示す回路図。
【図4】図1に示した本発明の第1の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路における制御回路により実行されるインピーダンス整合部の可変コンデンサVCの容量調整処理の内容を示すフローチャート。
【図5】図1に示した本発明の第1の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路の各部の動作波形を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路の構成を示すブロック図。
【図7】図6に示した本発明の第2の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路におけるフィルタの周波数特性を示す図。
【図8】図6に示した本発明の第2の実施形態に係る電子治療器の断線スパーク検出回路の各部の動作波形を示す図。
【符号の説明】
【0071】
1、1A…電子治療器、10、50…信号発生器、11、15、51、55…増幅器、12…整合状態検出部、13…電流検出部(フォトカプラ)、14…インピーダンス整合部、16…バンドパスフィルタ、17、56…波形整形回路、18、57…制御回路、19、58…操作部、20、59…報知部、21、22…コネクタ端子、30…導子、30A…電極、30B…出力線(ケーブル)、」VC…可変コンデンサ、52…方向性結合器、53…フィルタ、54…検波部、60…コネクタ、130…LED(発光ダイオード)、131…フォトトランジスタ、140…モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療に用いる所定の電気信号を発生する信号発生手段と、治療対象の患部に当てられて該信号発生手段から出力される電気信号を受けて温熱治療を行う導子とを備える電子治療器における、前記導子を構成する出力線の断線時に生ずるスパークノイズを検出する断線スパーク検出回路において、
前記導子が受ける前記治療対象からの反射電力の大きさを計測する整合状態検出手段と、
前記信号発生手段の出力側に、一つのインピーダンス素子を1辺とし、4辺で構成される閉回路の一方の対角辺の両端が接続されるブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の一辺を構成するインピーダンス素子として機能する入力インピーダンスを有し、出力インピーダンスが前記導子側のインピーダンスと整合するように前記出力インピーダンスの値が調整されるインピーダンス整合手段と、
前記ブリッジ回路の前記閉回路の他方の対角辺として挿入される電流検出手段と、
前記電流検出手段の出力から前記出力線の断線時に生ずるスパークノイズの周波数成分を抽出するフィルタ手段と、
前記整合状態検出手段の検出出力に基づいて前記インピーダンス整合手段の出力インピーダンスを調整するための制御信号を前記インピーダンス整合手段に出力するとともに、前記フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあるか否かを判定する制御手段と、
を有することを特徴とする電子治療器の断線スパーク検出回路。
【請求項2】
さらに、断線が生じたことを報知する報知手段を有し、
前記制御手段は、前記フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあると判定した場合には、前記報知手段を駆動することを特徴とする請求項1に記載の電子治療器の断線スパーク検出回路。
【請求項3】
治療に用いる所定の電気信号を発生する信号発生手段と、治療対象の患部に当てられて該信号発生手段から出力される電気信号を受けて温熱治療を行う導子と、該導子を構成する出力線の断線時に生ずるスパークノイズを検出する断線スパーク検出回路とを備える電子治療器であって、
前記断線スパーク検出回路は、
前記導子が受ける前記治療対象からの反射電力の大きさを計測する整合状態検出手段と、
前記信号発生手段の出力側に、一つのインピーダンス素子を1辺とし、4辺で構成される閉回路の一方の対角辺の両端が接続されるブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路の一辺を構成するインピーダンス素子として機能する入力インピーダンスを有し、出力インピーダンスが前記導子側のインピーダンスと整合するように前記出力インピーダンスの値が調整されるインピーダンス整合手段と、
前記ブリッジ回路の前記閉回路の他方の対角辺として挿入される電流検出手段と、
前記電流検出手段の出力から前記出力線の断線時に生ずるスパークノイズの周波数成分を抽出するフィルタ手段と、
前記整合状態検出手段の検出出力に基づいて前記インピーダンス整合手段の出力インピーダンスを調整するための制御信号を前記インピーダンス整合手段に出力するとともに、前記フィルタ手段の出力に基づいて前記出力線が断線状態にあるか否かを判定し、断線状態であると判定した場合に、前記電気信号の出力を停止するように前記信号発生手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする電子治療器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−148430(P2009−148430A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−329269(P2007−329269)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(591032518)伊藤超短波株式会社 (69)
【Fターム(参考)】