説明

電子秤のための校正用錘構造

【課題】 秤が打撃を受け、衝撃を受け又は落された場合に校正用錘を固定した状態に維持するばかりでなく、突然に作用する力を吸収し且つ再び方向を変えることによって保護を提供する搬送機構を備えた校正用錘構造の提供。
【解決手段】 力伝達装置(1)を備えた電子秤のための校正用錘構造は、力伝達装置(1)に結合する機能を備えた校正用錘(14)を含んでいる。校正用錘(14)は、校正用錘(14)と力伝達装置(1)との間の力伝達接触を確立するばかりでなく解放するために、搬送機構及び駆動源によって垂直方向に動かされる。搬送機構は、少なくとも1つのリセット要素(22,37,38,40,43)と、膝継ぎ手リンク(17,117,217)として形成されている持ち上げ装置とを備えており、前記リセット要素(22,37,38,40,43)と前記持ち上げ装置とは、協働して、秤が、衝撃を受け、落とされ又は打撃を受けた場合に校正用錘(14)を制止し且つ緩衝する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力伝達装置を含んでいる電子秤のための校正用錘構造に関し、特に、校正用錘構造のための持ち上げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子秤は、多くの場合、内部の校正用錘によって校正される。校正を行うためには、特別に規定された質量の校正用錘が、秤の力測定セル内に配置されている力伝達装置と力伝達接触状態とされ、ここで、基準値が決定される。この基準値に基づいて、秤の更に別の秤量パラメータを調整することができる。校正が行われた後に、校正用錘と力伝達装置との間の接触が再び解放され、校正用錘は休止位置に固定される。上記のプロセスにおいて、校正用錘は、搬送機構によって、休止位置から校正位置へと動かされたり休止位置へ戻されたりする。校正位置においては、校正用錘は、力伝達装置と力伝達接触状態にあり、休止位置においては力伝達接触状態は存在しない。多くの秤においては、校正用錘構造及び力伝達装置は、EP 0 955 530 A1に開示されているように、前後に配置されている。(特許文献1参照)
休止位置にあるときに、殆どの場合に持ち上げ装置に結合されているホルダー上に載置される校正用錘を動かすための多様な搬送機構がある。
【0003】
EP 0 468 159 B1には、相対的に水平方向に摺動する対として配置された楔部材によって垂直方向に動かされる校正用錘を備えた校正用錘構造が開示されている。それによって、校正用錘は、秤の力伝達装置と力伝達接触状態にされる。この搬送機構は、楔部材に結合されているスピンドルを介してモーターによって駆動される。(特許文献2参照)
校正用錘の同様の垂直方向の持ち上げ及び降下は、EP 0 955 530 A1に記載されている装置によって達成される。錘は、電気的に駆動される搬送機構によって動かされるホルダー上に載置される。
【0004】
衝撃、激しい打撃の存在下においてさえ、又は秤が落とされた場合にも、校正用錘が主として休止位置に確実に固定されて、校正用錘が力伝達装置と突然に接触状態とならず、それによってレバー機構に損傷を生じさせないようにすることが重要である。公知の技術状況における搬送機構は、校正用錘を単に出来るだけ確実に、固定ストッパすなわち例えば秤が、搬送されている間に生じ得る衝撃又は床への落下の結果としてホルダーから落下することのみを阻止する構造に押し付けることによって校正用錘を固定している。突然の力が校正用錘に作用した場合には、この力が搬送機構へ直接伝わって搬送機構が破壊されさえもし得る。
【特許文献1】EP 0 955 530 A1公報
【特許文献2】EP 0 468 159 B1公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結局、本発明によって達成される目的は、秤が打撃を受け、衝撃を受け又は落された場合に校正用錘を固定した状態に維持するばかりでなく、突然に作用する力を吸収し且つ再び方向を変えることによって保護を提供する搬送機構を備えた校正用錘構造を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、本発明による力伝達装置を備えた電子秤のための校正用錘構造によって達成される。本発明の校正用錘構造は、力伝達装置に結合する機能を有する少なくとも1つの校正用錘と、搬送機構と、校正用錘の垂直方向の変位をもたらすための駆動源とを備えている。前記搬送機構は、少なくとも1つのリセット要素と、少なくとも1つの膝継ぎ手リンクを備えた持ち上げ装置とを含んでいる。
【0007】
前記リセット要素と持ち上げ装置とは、前記膝継ぎ手リンクが持ち上げ装置に対する小さな引張り力の作用によって既に曲がり、それによって校正用錘が力伝達装置と力伝達接触状態とされる形態で相互に適合されている。リセット要素の力による作用は、次いで、引張り力が解放されると、膝継ぎ手リンクを伸ばして真っ直ぐな位置へ戻すばかりでなく、膝継ぎ手リンクを伸長位置を超えて動かすように設計されている。このようにして、膝継ぎ手リンクは、言うならば若干過剰に伸ばされる。本明細書において及び以下において、“過剰に伸長せしめられる”という用語は、もっぱら膝継ぎ手リンクの校正位置と反対方向への曲がりを示している。休止位置においては、過剰に伸長された膝継ぎ手リンクは固定ストッパに対して押し付けられる。ストッパを備えたこのような構造は、一方では、若干曲げられた状態の膝継ぎ手リンクが完全に伸長された状態よりも比較的安定しており、他方では、突然の衝撃の結果として力が作用して秤及び校正用錘構造にも作用したときに、力が校正用錘が秤の伝達装置に作用するのを許容することなく除去され且つ膝継ぎ手リンク及びストッパを通過するという利点を有する。搬送機構特に持ち上げ装置の設計に応じて、種々のリセット要素を使用することができる。とりわけ、これには、類似の作用を有する種々のばねその他の校正要素が含まれる。校正用錘構造の休止位置においては、リセット要素は、若干予張力がかけられるのが好ましい。例えば、脚状ばね、圧縮コイルばね、引張りばね又は板ばねのような種々のばねを使用することができる。ばねの復元力が膝継ぎ手リンクに直に作用すること及び定位置に形結される方法により、ばね自体が他の方法で振動することができず位置も変えることができないことは、脚状ばねを使用する特別な利点である。
【0008】
持ち上げ装置は、相互に結合されている2つの膝継ぎ手リンクによって構成されることが好ましい。膝継ぎ手リンクは、次いで、直接に又は適当な結合手段を介して相互に結合されるか又は一部品によって一体式に形成することもできる複数の二次成形部材を含むことができる。適切な設計によって、持ち上げ装置は単一の膝継ぎ手リンクのみを有することもできる。
【0009】
リセット要素のリセット力は、リセット要素が力伝達装置と接触状態とされ、次いで、接触状態から再び解放されたときに、校正プロセスが理想的に動作するのを確実にするために、リセット要素が接地される搬送機構に適合されている。
【発明の効果】
【0010】
種々の異なる駆動機構は、膝継ぎ手リンク、特に、スピンドル駆動装置、ベルト駆動装置、磁気駆動装置又はリニアーモーターのような形態の持ち上げ装置によって校正用錘構造を駆動するためにそれ自体好ましいものとなる。少なくとも部分的に形状記憶合金によって作られた駆動装置は、特に、その小ささ及びコンパクトさによって特徴付けられる。
【0011】
駆動機構は、例えば、少なくとも1つのローラー又はレバーによって力の向きを変えることによって搬送機構を作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び2は、力伝達装置1及び校正用錘構造2が電子秤の力測定セル内に公知の方法で配置されている形態を側面図で示す役目を果たしている。図1は、休止位置にある本発明による校正用錘構造用錘構造1を示しており、図2は、校正位置にある本発明による校正用錘構造1を示している。力伝達装置1は、固定の平行四辺形脚部3と可動の平行四辺形脚部5とを備えた平行ガイド機構を含んでおり、可動の平行四辺形脚部5は、2つの平行四辺形ガイド4によって固定の平行四辺形脚部3に拘束されている。秤量パン(図示せず)は、円錐形部6を介して可動の脚部5に結合されており、可動の平行四辺形脚部は、秤量パン上の荷重に応答して固定の平行四辺形脚部3に対して重力方向に従って動くことができる。力伝達装置1は、第1の結合部材7を含んでおり、この第1の結合要素は、力が可動の平行四辺形脚部5に導入されると、力をレバー機構へと伝達する。図示された力伝達装置1においては、レバー機構は第1の力減衰レバー8を備えており、この第1の力減衰レバー8は、第2の結合要素10を介して第2のレバー9に結合されている。第1及び第2の結合部材7,10は、各々、薄い材料係合部形態の撓み継ぎ手を介して第1及び第2のレバー8,9に作用する。可動の平行四辺形脚部5の重力方向への変位によって、力がレバー機構へと伝達される。レバー機構は力を減衰させ且つ減衰した力を更に力補償装置11へ伝える。力補償装置11は、電磁気学的原理に基づくことが多く、図面においては詳細に示されていない。
【0013】
平行ガイド機構3,4,5、第1及び第2の結合部材7,10並びに第1及び第2のレバー8,9は、ブロックの異なる材料部分が狭い直線状の切り込み12の形態の材料が含まれない空間によって相互に分離される形態でほぼレンガ形状の材料内に形成されている。直線状の切り込み12は、材料ブロックの最も大きな面に対して直角に切り込まれている。狭い直線状の切り込み12は、放電加工によって形成されるのが好ましい。
【0014】
レバー8は穴を有し、この穴において、2つの校正用錘レシーバ13(一方のみが図面に含まれている)が適当な締結部材41によって取り付けられて校正用錘レシーバ13が第1のレバー8の力入力側において短い方のレバーの伸長部として作用するようになされている。
【0015】
図1からわかるように、秤量プロセス中に、校正用錘の軸線(z)を有する校正用錘14は校正用錘ホルダー21上に載置され、載置ブラケット16として形成されている校正用錘構造2の横方向部材に対して押し付けられている。明確化のために、校正用錘構造2の前方を向いた横方向部材は、この図面から除去されていて、校正用錘ホルダー21及び特に校正用錘14と校正用錘ホルダー13との間の接触領域が見えるようにされている。同様のことが図2にも当てはまる。図1においては、校正用錘14は、力伝達装置1のレバー機構から完全に離脱されている。
【0016】
校正を行うためには、校正用錘14が、搬送機構(ここでは、校正用錘ホルダー21によって隠れている)によって2つの校正用錘レシーバ13上に降ろされ、それによって、図2に示されているように、校正用錘は、レバー機構と力伝達接触状態とされる。校正用錘14は、校正用錘レシーバ13上に完全に載置される。この図においては、搬送機構は、校正用錘ホルダー21によって隠されている。搬送機構は、持ち上げ装置と駆動源とを含んでいる。駆動源は、一般に、校正用錘構造に隣接して、すなわち、図面の面の前方か後方に配置されている。
【0017】
図3は、校正用錘構造の詳細図である。この斜視図は、校正用錘を備えていない校正用錘構造を示している。図示された実施形態は、形状記憶合金(SMA)の細線として形成されているアクチュエータ18によって部分的に力を付与される2つの膝継ぎ手リンク17を備えた持ち上げ装置と、細線を加熱する手段とを備えている。校正用錘の向きは、校正用錘の軸線(z)によって示されている。
【0018】
形状記憶合金は、相転移温度以上に加熱されると生じる固体相転移によって物理的特性を変化させることを特徴としている。形状記憶合金は、相転移温度以上の温度にあるときよりも相転移温度以下の温度において比較的変形することができる。形状記憶合金が細線形状である場合には、相転移温度を超える温度上昇によって、細線は長さ方向に収縮して、引張り力として作用する力が、例えば、ここで示されている膝継ぎ手リンク17にかかり、それによって、それらの位置を変化させる。この温度上昇は、ここで示されているように、細線の一端に設けられた電気的接続部19によって細線18に電流を単に供給することによって生じ得る。この細線は、反対側(この図では見えない)において接地されている。形状記憶合金は、あるパーセントだけ長さが収縮する。例えば、約90℃の相転移温度を有し且つ約50%のニッケル成分を有しているニッケル−チタン合金は、約4%だけ収縮する。しかしながら、細線18は、可撓性であり且つ例えばここで示されているように電気的及び熱的に非伝導性のテフロンのような滑動合成ポリマーからなるローラー25の周囲に細線を巻き付けることによって方向を幾分変えられる。この細線はまた、レバー及び/又はローラーのような複数の方向変換手段によってもまた向きを変えることができる。
【0019】
校正用錘構造の横方向部材20は、ここでは載置ブラケット16と称される円形の切り欠きを含んでいる。校正用錘(図示せず)が校正用錘ホルダー21上にある休止位置において、校正用錘は載置ブラケット16に対して押圧される。校正用錘ホルダー21の下方には、2つの同一の構造の膝継ぎ手リンク17からなる持ち上げ装置とリセット要素としての圧縮コイルばね22とによって構成されている(同じく図4参照)。膝継ぎ手リンク17は、相互に結合されており且つSMA細線18を含む線形駆動装置の場合には、一緒に駆動源によって容易に動かすことができるように協働する。収縮するSMA細線18は、2つの膝継ぎ手リンク17に対して、図示された状態においては右向きの引張り力をかける。この力は、膝継ぎ手リンク17が折り曲げられ且つそれによって校正用錘ホルダー21の垂直方向下向きの変位を生じさせるという作用を有する。これは、リセット要素22を締結する。細線18は、校正用錘構造の横方向部材20内の開口部(ここでは見えない)内に延びている。この実施形態においては、校正用錘ホルダー21の垂直方向の動きは、2つのガイドロッド24によってガイドされる。この2つのガイドロッド24は、2つの横方向部材20に締結されており、ガイドロッド24の各々は、校正用錘ホルダー21の長穴23内に到達し、それによって校正用錘ホルダー21が軽く触るのを防止する。これと同時に、校正用錘ホルダー21の垂直方向の変位動作は、長穴23の高さによって限界が定められる。
【0020】
図4は校正位置と休止位置との間の中間位置にある図3の搬送機構の図である。唯一破断図によって示されている校正用錘ホルダー21の下方には、リセット要素として作用する圧縮コイルばね22を備えた2つの膝継ぎ手リンク17の構造が設けられている。膝継ぎ手リンク17の枢動軸線は、校正用錘の軸線(z)に対して直角に配置されており(同じく図1,2を参照)、膝継ぎ手リンク17は、堅牢な結合部材15によって相互に結合されている。膝継ぎ手リンクの各々は、実質的に、ベースプレート26又は校正用錘ホルダー21に部材29を係合することによって締結される2つの二次成形部材27,28によって構成されている。二次成形部材27,28は、結合手段30によって相互に結合されており、結合部材29によってベースプレート22に結合されており、結合手段31によって校正用錘ホルダー21に結合されている。二次成形部材27,28の設計に応じて、結合手段30,31は、例えば、固定部材を備えたロッドによって構成することができ、又はリベット止めすることができる。二次成形部材27,28は、校正用錘ホルダー21全体の下方に延びている一部品によって形成するか又は板状材料によって作ることができ且つロッド若しくは同様の部材によって結合することができる(同じく図5参照)。
【0021】
SMA細線18を含んでいる線形駆動装置は、互いに結合されている膝継ぎ手リンク17のうちの一方に締結されている。駆動装置が膝継ぎ手リンク17に引張り力を付与すると、膝継ぎ手リンク17は曲がり、それによって校正用錘ホルダー21の垂直方向下方への変位を生じさせる。これと同時に、圧縮コイルばね22は、校正用錘ホルダー21の重量及び最初はその上に載置されている校正用錘の重量によって圧縮されるか又は応力をかけられた状態にされる(この図には図示されていない)。校正用錘ホルダー21の下方への移動中に、校正用錘は校正用錘レシーバ上へ降ろされる(図1参照)。この時点では、最早、校正用錘ホルダー21と接触しない。
【0022】
駆動装置が引張り力をかけるのを停止すると、リセット要素22は再び圧縮することができ、それによって、膝継ぎ手リンク17を真っ直ぐにし且つ校正用錘ホルダー21を休止位置へ戻らせる。上方への動作において、校正用錘ホルダー21は、下から校正用錘を持ち上げ、それによって、秤の力伝達装置との力伝達結合から解放する。駆動装置がSMA細線18を含んでいる場合には、リセット要素22もまた、冷却されたときに元の長さに伸ばされ、これは力の適用を必要とする。
【0023】
搬送機構の第1の実施形態が図5に示されている。持ち上げ装置は、ロッドのような適当な結合手段によって結合されている平らなプレート材料からなる二次成形部材33,133によって組み立てられている2つの膝継ぎ手リンク117を備えている。膝継ぎ手リンク117の枢動軸線は、この実施形態における校正用錘の軸線(z)に平行に配置されている(同じく図1,2参照)。二次成形部材33,133は、もう一つ別の類似した係合手段32,232によって結合部材34,35に結合されている。結合部材34は、次いで、校正用錘ホルダー21に結合されている。結合部材35は、とりわけ、持ち上げ装置を校正用錘構造例えばベースプレート又は横方向部材に締結する役目を果たす(図2参照)。校正用錘構造は、例えば、校正用錘構造の横方向部材に取り付けるための結合ロッド32,232のうちの1つを使用することも可能である。
【0024】
膝継ぎ手リンク117の機能は、上記したものと類似している。しかしながら、ここで象徴的にのみ示されている駆動装置36は、中央の結合手段132に直接引張り力をかけ、それによって、図面で見ることができるように膝継ぎ手リンク117を曲げさせる。リセット要素37として、ベースプレートと校正用錘ホルダー21との間に締結されている圧縮コイルばねが設けられている。ここに示されている校正位置においては、ばね37は圧縮されており、一方、駆動装置36は、膝継ぎ手リンク117に引張り力を付与する。駆動装置36の引張り力がなくなると、ばね37は、再び殆ど完全に圧縮することができ、それによって、膝継ぎ手リンク117を真っ直ぐにして、校正用錘ホルダー21が休止位置へ戻るようにする。この実施形態に示されている膝継ぎ手リンク117の載置は、ほんの2乃至3ミリ秒の短い引張り力によって既に起動されている。
【0025】
圧縮コイルばねは、リセット要素のための可能な設計のうちのほんの一つである。図6は、脚状ばね38の形態を有するリセット要素及び駆動装置36の引張り力のための適用点を提供するレバー39以外は、同じ持ち上げ装置を備えた搬送機構を示している。持ち上げ装置すなわち膝継ぎ手リンクの機能は、図5の持ち上げ装置に類似している。明確化のために、校正用錘ホルダーは図6において省略された。更に、図6の実施形態は、ここでは柱の形態の例として示された変位ストッパ42を含んでいる。変位ストッパは、少なくとも1つの膝継ぎ手リンク117が休止位置においてストッパに当接し、それによって、搬送機構は休止位置に固定される。
【0026】
リセット要素38を脚状ばねとして設計することは極めて有利である。脚状ばね38は中央結合ロッド132の周囲に巻き付けられ、2つの脚部は、各々、下方及び上方の結合ロッド32,132に対して当接していて、脚状ばね38は、膝継ぎ手リンク117が折れ曲がりつつあるときに更に締め付けられ、力が膝継ぎ手リンクを引っ張るのを停止すると、脚状ばね38が十分に予張力を与えられている場合に、膝継ぎ手リンクを再び真っ直ぐにし且つ膝継ぎ手リンクは引き延ばされた位置を越えて動き且つこれらをストッパ42に押し付けられるであろう。脚状ばね38が膝継ぎ手リンク117に方向を規定された力をかけ且つばね38の中央結合ロッド132への取り付けによって拘束されるのが有利である。
【0027】
この実施形態における膝継ぎ手リンクは、下方の二次成形部材33のうちの一つに固定されたレバー39を含んでおり、ここでは象徴的にのみ示されている駆動源36がレバーに対して作用する。引張り力が停止されると、膝継ぎ手リンクばかりでなくレバー39が両矢印によって示されているように図面に関して右へ動き、校正用錘ホルダー(ここでは図示せず)は上方へ動かされる。レバー39は、膝継ぎ手リンクに作用するか又は例えば下方の二次成形部材33のうちの一つ又は軸132,133のうちの一つの上の異なる場所に取り付けることができる。図7は、2つの膝継ぎ手リンク117及びリセット要素としての板ばね40を備えた搬送機構を図示している。この種の搬送機構の設計及び機能は、図5及び6の説明において記載されたものと類似している。図5又は6に示されているように、引張り力をかける駆動装置は締結することができる。図7の実施形態においては、板ばね40は、スリーブを介して中央結合ロッド132に締結されて、校正中に、板ばね40は、上方及び下方の結合ロッド32によって一緒に押圧される。駆動装置の力(図5,6参照)が膝継ぎ手リンク117を引っ張ることを停止すると、板ばね40は、上方及び下方の結合ロッド32,232に押圧され、それによって、膝継ぎ手リンク117を再び真っ直ぐに且つ過剰に引き伸ばされた状態へと押す。
【0028】
ここでは、休止位置で示されている搬送機構の更に別の実施形態が図8に示されている。この種の搬送機構の設計及び機構は、図5乃至7の説明において説明されたものと類似している。再び若干の予張力がかけられたリセット要素は、ここでは、膝継ぎ手リンク117に力を付与したり、少なくとも1つのストッパ42に対する過剰に引き延ばされた位置にあって膝継ぎ手リンクを拘束している膝継ぎ手リンク117の少なくとも1つを引っ張っている引張りばね43として形成されている。この実施形態においては、引張りばね43は、二次成形部材33,133上とここでは詳細に示されていないホルダー例えばハウジングの壁との間にしっかりと取り付けられている。駆動源(図5又は6)が引張りばね43の力に対抗して作用する搬送機構に力をかける場合には、引張りばね43は更に引張り出され、膝継ぎ手リンク117は、折り曲げられる前に最初に引き伸ばされた状態を通過し、それによって、校正用錘ホルダー(図示せず)は降ろされ、校正用錘は、力伝達装置との力伝達接触状態とされる。
【0029】
これまでに示された膝継ぎ手リンクに加えて、例えば図5乃至8に示された機構に似た搬送機構に対して一体に形成された膝継ぎ手リンクを結合することも可能である。このタイプの膝継ぎ手リンク217が図9a及び9bに図示されている。図9aは、引き延ばされた状態の一体に形成された膝継ぎ手リンクを示しており、すなわち、膝継ぎ手リンクは、垂直方向に整合され且つ休止位置に近い状態にあるけれども、ストッパに対しては押し付けられていない。図9bは、その校正位置における一体化された膝継ぎ手リンクを示している。これらの図面は、校正用錘ホルダー21が図面の上縁の外側に位置している。手書きの線は、各々の部材が図面の面の後方に位置し、通常は視野から隠れていることを示している。
【0030】
膝継ぎ手リンク217は、好ましくは合成ポリマー材料によって作られるのが好ましい一部品である。膝継ぎ手リンク217は、相互に結合されている3つの機能領域からなる。第1の領域49は、変位ストッパ部材50を膝継ぎ手リンク217に締結する役目を果たす2つの開口部44を含んでいる。変位ストッパ部材50と膝継ぎ手リンク217とは、相互に固定され且つ単一構成要素として実現することもできる。第2の領域149は、第1の領域49に固定されており且つ長穴45を含んでいる。第3の領域249は、更に別の開口部46を含んでおり且つ撓み枢軸47によって第2の領域149に結合されており且つリセット要素としての引張りばね48によって第1の領域49に結合されている。
【0031】
一体に設計された膝継ぎ手リンク217は、図5乃至8に示された膝継ぎ手リンク117と置き換えることができる。更に、一体に形成された膝継ぎ手リンク217を使用することによって、ほんの2つの結合ロッド32,232を備えた設計の可能性が提供される。中央結合ロッド132(図5乃至8を参照)の機能は、撓み枢軸47によって引き継がれる。
【0032】
搬送機構を形成するためには、2つの膝継ぎ手リンク217が2つの結合ロッド32,232によって結合される。下方の結合ロッドは開口部46によって領域249にしっかりと結合されており、上方の結合ロッドは領域149内の長穴45によってガイドされる。この実施形態における2つの結合ロッド32,232は、固定位置においてハウジングに対して取り付けられている。校正用錘ホルダー21は、膝継ぎ手リンク217に結合されており、長穴45は、膝継ぎ手リンク217の垂直方向の変位範囲、従って、校正用錘ホルダーの変位範囲を規定している。
【0033】
ストッパ部材50は、その位置が開口部46に対応しており且つ下方の結合ロッド32の動きをガイドし且つ制限する長穴51を含んでいる。長穴51の2つの端部は、各々、第1及び第2のストッパ52及び53を含んでいる。第1のストッパ52は、搬送機構が休止位置にあるとき、膝継ぎ手リンクが真っ直ぐな位置を越えて動かされたとき、すなわち過剰に伸ばされたときの結合ロッド32のための制限ストッパである。ストッパ53は、搬送機構の校正位置すなわち校正用錘が力伝達装置と力伝達接触状態にあり、膝継ぎ手リンク217が折り曲がった状態にあるときの結合ロッド32の制限ストッパである。
【0034】
校正が行われるとき(図9b参照)に、締結部材54例えば穴又はフックによってストッパ部材50に結合されている駆動装置36(ここでは象徴的にのみ示されている)は、ストッパ部材50に引張り力をかけ、引張り方向は、図面において右手側に向けられている。この結果、ストッパ部材50と膝継ぎ手リンク217の領域49とは右に引っ張られる。膝継ぎ手リンク217の領域249が下方の結合ロッド32に堅固に結合されているので、駆動装置36は、リセット要素48を引っ張られるようにし、撓み枢軸47を曲げる。結局、領域249は、結合ロッド32を中心とする若干の回転によって旋回する。更に、校正用錘ホルダーに結合されている膝継ぎ手リンク217の第2の領域149が、下方に引っ張られ且つこれと同時に左側へ回転せしめられる。膝継ぎ手リンク217は曲がり、校正用錘ホルダー21は下方へ変位せしめられ、それによって、校正用錘は、力伝達装置と力伝達接触状態とされる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
図5乃至8は、ロッドによって結合されている平らな板の形状の二次成形部材によって組み立てられた膝継ぎ手リンクを示している。この種の膝継ぎ手リンクを、校正用錘ホルダーの全幅を占める一体に設計された二次成形部材33,133によって構成することも考えられる。図9に示されている一体ストッパ部材50を備えた一体形成された構成要素217によって2つの二次成形部材33,133を置き換えることも同様に可能である。
【0036】
形状記憶合金を含む上記した駆動装置に加えて、電子秤の校正用錘構造を駆動するための要件に適合する場合には少なくとも市販によって入手可能な駆動源好ましくはあらゆる駆動源を使用することができる。線形駆動装置の公知の技術には、とりわけ、スピンドル駆動装置、ベルト駆動装置、磁気駆動装置又はリニアーモーターが含まれる。
【0037】
上記の実施形態においては、リセット要素は、主として圧縮コイルばね、脚状ばね及び板ばねのようなばねであった。これらの明示的に名付けられたタイプのばねに加えて、類似した方法で作動する他の種類のばね又は構成要素を使用することも勿論可能である。発生される必要がある復元力の大きさに依存して、単一のリセット要素又は複数のリセット要素を使用することができる。
【0038】
ここに記載した力伝達装置は、公知の種類の力伝達装置のうちの一つを示しているだけである。本発明による校正用錘構造はまた、他の力伝達装置と組み合わせて使用することもできる。
【0039】
図5及び6においては、駆動装置の2つの異なる力作用点が例として示されているが、他の力作用点を有する構造を実現することもできる。
図5乃至8に示されたストッパ42は、例としてのみ機能する柱の形態を有している。同じ作用又は機能を有する他の如何なる概念も同様に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
校正用錘構造の種々の実施形態が図面に示されている。
【図1】図1は、電子秤の図式的に簡素化された側面図であり、伸長された校正用錘レシーバ及び力伝達装置に隣接して配置された校正用錘構造を備えており、校正用錘構造軸線を有する校正用錘が休止位置にある状態で示されている。
【図2】図2は、校正中における図1の力伝達装置及び校正用錘構造の図式的に簡素化された側面図である。
【図3】図3は、枢動軸線が校正用錘の軸線に直交している2つの膝継ぎ手リンクと形状記憶合金の細線の形態のアクチュエータとを備えた校正用錘構造の斜視図である。
【図4】図4は、継ぎ手の枢動軸線が校正用錘の軸線に直交している膝継ぎ手リンクの形態の持ち上げ装置の簡素化された前面図である。
【図5】図5は、リセット要素としての圧縮コイルばねと膝継ぎ手リンク形態の持ち上げ装置とを備えた搬送機構の校正位置における斜視図であり、継ぎ手の枢動軸線が校正用錘の軸線に平行に配置されており、膝継ぎ手リンクに直にかけられる引張り力によって変位がもたらされる。
【図6】図6は、リセット要素としての脚状ばねと膝継ぎ手リンク形態の持ち上げ装置とを備えた搬送機構の校正位置における斜視図であり、継ぎ手の枢動軸線が校正用錘の軸線に平行に配置されており、レバーによって変位がもたらされる。
【図7】図7は、リセット要素としての板ばねと膝継ぎ手リンク形態の持ち上げ装置とを備えた搬送機構の校正位置における斜視図であり、継ぎ手の枢動軸線が校正用錘の軸線に平行に配置されている。
【図8】図6は、リセット要素としての引張りばねと膝継ぎ手リンク形態の持ち上げ装置とを備えた搬送機構の休止位置における斜視図であり、継ぎ手の枢動軸線が校正用錘の軸線に平行に配置されている。
【図9a】図9aは、伸長位置にある一体に形成された膝継ぎ手リンクの側面図であり、変位ストッパが一体化されて組み込まれている。
【図9b】図9bは、校正位置にある一体に形成された膝継ぎ手リンクの側面図であり、変位ストッパが一体化されて組み込まれている。
【符号の説明】
【0041】
1 力伝達装置、 2 校正用錘構造、
3 固定の平行四辺形脚部、 4 平行四辺形ガイド、
5 可動の平行四辺形脚部、 6 円錐形部、
7 第1の結合部材、 8 第1のレバー、
9 第2のレバー、 10 第2の結合部材、
11 力補償装置、 12 直線状の切り込み、
13 校正用錘レシーバ、 14 校正用錘、
15 堅固な結合部材、 16 載置ブラケット、
17,117,217 膝継ぎ手リンク、
18 SMA細線、 19 電力供給リード線、
20 横方向部材、 21 校正用錘ホルダー、
22 圧縮コイルばね、 23 長穴、
24 ガイドロッド、 25 方向変換ローラー、
26 ベースプレート、 27 二次成形部材、
28 二次成形部材、 29 結合部材、
30 結合手段、 31 結合手段、
32 下方係合ロッド、 132 中央結合ロッド、
232 上方結合ロッド、 33,133 二次二次成形部材、
34 結合部材、 35 結合部材、
36 駆動装置、駆動源、
37 圧縮コイルばね、 38 脚状ばね、
39 レバー、 40 板ばね、
42 ストッパ、変位ストッパ、制限ストッパ、
43 引張りばね、 44 開口部、
45 長穴、 46 開口部、
47 撓み枢軸、 48 引張りばね、
49,149,249 一体の膝継ぎ手リンクの機能領域、
50 ストッパ部材、 51 長穴、
52 第1のストッパ、 53 第2のストッパ、
54 締結部材、 z 校正用錘の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
力伝達装置(1)を備えた電子秤のための校正用錘構造であって、
前記力伝達装置(1)に結合する機能を備えた少なくとも1つの校正用錘(14)と、搬送機構と、前記校正用錘の垂直方向の変位を生じさせるための駆動源とを含み、
前記搬送機構が、少なくとも1つのリセット要素(22,37,38,40,43,48)と、少なくとも1つの膝継ぎ手リンク(17,117,217)を有する持ち上げ装置とから成ることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項2】
請求項1に記載の校正用錘構造であって、
前記リセット要素(22,37,38,40,43,48)のリセット力が、校正用錘(14)と校正用錘ホルダー(21)との重力に対抗し且つ前記膝継ぎ手リンク(17,117,217)を校正位置から休止位置まで動かすのに十分な大きさであることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の校正用錘構造であって、
当該校正用錘構造が、その休止位置における前記膝継ぎ手リンク(17,117,217)のための変位ストッパ(42,53)を備えていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記リセット要素が、脚状ばね(38)、板ばね(40)又は引張りばね(43,48)であることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の校正用錘構造であって、
前記リセット要素が圧縮コイルばねであることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記少なくとも1つの膝継ぎ手リンク(17,117)が、直接に又は適当な結合手段(30,31;32,132,232)を介して相互に結合されている少なくとも2つの成形された部品(27,28;33,133)を含んでいることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項7】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記少なくとも1つの膝継ぎ手リンク(217)が1つの部片によって一体に形成されていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記駆動源が、線形駆動装置例えばリニアーモーター、スピンドル駆動装置、ベルト駆動装置又は磁気駆動装置であることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項9】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記駆動源が、加熱装置(19)と共に作動する形状記憶合金からなるアクチュエータ(18)を含んでいることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項10】
請求項9に記載の校正用錘構造であって、
形状記憶合金からなる前記アクチュエータ(18)が細線として形成されていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記駆動装置(36)が、少なくとも1つのローラー又は少なくとも1つのレバー(39)によって前記搬送装置に作用することを特徴とする校正用錘構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【公開番号】特開2006−177942(P2006−177942A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361249(P2005−361249)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(599082218)メトラー−トレド・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (130)
【氏名又は名称原語表記】Mettler−Toledo GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】