説明

電子秤のための校正用錘構造

【課題】 極めて小さく、コンパクトで且つ使用できる方法に順応性がある秤の校正用錘の搬送機構の駆動源の提供。
【解決手段】 力伝達装置(1,101)を備えた電子秤のための校正用錘構造(4,104)は、力伝達装置(1,101)に結合することができる校正用錘(3,103)を含んでおり、更に、前記校正用錘(3,103)のガイドされた動きをもたらすために力搬送機構及び駆動源を含んでいる。前記駆動源は、前記力搬送機構と協働し且つ少なくとも一部が形状記憶合金からなるアクチュエータ(16)を含んでおり、該アクチュエータ(16)は、温度変化の結果として生じる形状記憶合金の構造変化によって前記校正用錘(3,103)を動かすようになされている。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、電子秤のための校正用錘構造に関し、特に、校正用錘構造のための駆動源に関する。
【背景技術】
【0002】
電子秤は、多くの場合には、内部の校正用錘によって校正される。校正を行うためには、特別に規定された体積の校正用錘が、基準値が決定される秤の力測定セル内に配置されている力伝達装置に対して力伝達接触状態にされる。この基準値に基づいて、秤の更に別の秤量パラメータを調整することができる。校正がなされた後に、校正用錘と力伝達装置との間の接触が再び解除され、校正用錘が休止位置に固定される。上記のプロセスにおいては、校正用錘は、休止位置から校正位置へと動かされ、少なくとも1つの持ち上げ部材と駆動源とを含んでいる搬送機構によって休止位置へと戻される。校正位置においては、校正用錘は力伝達装置に対して力伝達接触状態とされ、休止位置においては、力伝達接触は存在しない。
【0003】
公知の技術状況は、種々の持ち上げ部材と校正用錘構造を実現したものとを含んでいる。
EP 0 468 159 B1に開示されている校正用錘は、水平方向に相対的に摺動する対として配置された楔状部材によって垂直方向に動かされ、それによって、校正用錘は、秤の力伝達装置に対して力伝達接触状態とされる。この持ち上げ部材は、楔状部材に結合されている軸を介してモーターによって駆動される。(特許文献1参照)
校正用錘の同様な垂直方向の昇降は、EP 0 955 530 A1に記載されている装置によって達成される。錘は、電気的に駆動される持ち上げ部材によって動かされるホルダー上に載置される。(特許文献2参照)
DE 203 18 788 U1に記載されている一体化された校正用錘は、線形駆動装置によって駆動される傾斜路形状の持ち上げ部材によって昇降され且つある種の傾斜した平行運動を行う。(特許文献3参照)
多くの秤においては、校正用構造及び力伝達装置は、EP 0 955 540 A1に開示された方法で前後に配置されている。校正用錘はまた、例えば、円形シリンダの形状を有しているEP 0 789 232 B1に開示されている校正用錘のような力伝達装置に対して横切る方向に取り付けられている2つの校正用錘に分離することもできる。この2つの同一の錘は、力伝達装置の2つの対向する側部に配置されている。校正用錘を動かすための異なる機構が記載されている。第1の場合には、ガイドピンを含んでいる校正用錘は、支持受け台として構成されている校正用錘ホルダー上に載置される。校正を行うためには、一方の側で枢動せしめられる校正用錘ホルダーが下方に傾斜せしめられ、それによって、校正用錘は、ロッド又はレバーの形状を有し且つ力伝達装置に結合されている校正用錘ホルダーの下方の2つの校正用錘レシーバ上へと降下せしめられる。第2の変形例においては、休止位置にある錘は、力伝達装置に結合されている校正用錘レシーバ間に配置されている校正用錘ホルダー上に載置される。校正を行うためには、校正用錘ホルダーの垂直方向下方への動きによって、校正用錘が校正用錘レシーバと接触状態とされる。
【0004】
一般的には、上記の持ち上げ部材は小さなサーボモーターによって駆動される。秤の力測定セル内に比較的大きな空間を使用し、それによって力測定セル自体の大きさばかりでなく秤の大きさが不必要に大きくなることは、サーボモーターを使用することにおける不利な点である。
【0005】
特に、高感度の電子秤においては、秤量結果は、帯電及び静電的な相互作用によって影響を受け又は変化さえせしめられる。搬送機構を駆動するために使用されるサーボモーターは、作動中に摩擦によって静電場を形成する電気的に非伝導性のギヤボックス部品を含んでいる。結果的に得られる静電場及び電磁場もまた、特に高感度の秤における秤量結果に影響を及ぼすほど十分に強い。(特許文献4及び5参照)
秤に関連する代替的な駆動源がJP 59090031 Aに示されており、これは、サンプルの体積及び比重の測定のための秤と結合して使用される形状記憶合金(SMA)の使用方法を開示している。この形状記憶合金は、両端がフックに結合された空間的な巻細線形状を有している。上方のフックは秤に結合されており、サンプルは下方フックに懸架される。サンプルの重量は、最初は空気中で測定される。次のステップにおいて、SMA細線が赤外線に曝され、それによって間接的に加熱される。この加熱によって、SMA材料の軸線方向の収縮が起こり、このSMA材料の収縮は、全過程に亘ってフックに締結されたままであるサンプルが、定位置に設定された水槽内へと降下せしめられて水中でのサンプルの重量が測定されるという作用を有する。
【0006】
この場合には、長さを変えることができ且つ伸長部として又は秤量パンの代用品として配置される螺旋状ばねの形状記憶合金が使用される。このばねは、ばね及び水槽の上方に配置されている秤から自由に懸架されている。ばねの動きは、拘束されてガイドされておらず、その結果、サンプルは自由に回転し、傾き又は揺動する。この種の測定における重要な問題は、サンプルを液体内に完全に浸すことができ、液体が容器から逃げない限り速度はこのプロセスにおいては関係がないことである。(特許文献6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ほとんど常に、公知の従来技術による校正用錘は、比較的大きな駆動源を含んでいる。従って、校正用錘構造の改良は、特に、搬送機構の駆動源の最適化及び小型化を必要とする。駆動源は、極めて小さく、コンパクトで且つ使用できるように順応性があることを必要とする。
【特許文献1】EP 0 468 159 B1公報
【特許文献2】EP 0 955 530 A1公報
【特許文献3】DE 203 18 788 U1公報
【特許文献4】EP 0 955 540 A1公報
【特許文献5】EP 0 789 232 B1公報
【特許文献6】JP 59090031 A公報
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点は、本願請求項1による特徴を備えた校正用錘構造によって解決される。力伝達装置を備えた電子秤のための校正用錘構造は、当該秤の力伝達装置に結合された少なくとも1つの校正用錘を備え且つ前記校正用錘のガイドされた動きをもたらすために搬送機構及び駆動源も備えている。駆動源は、搬送機構と協働し且つ形状記憶合金の内部構造の変化によって校正用錘を動かす形状記憶合金によって少なくとも一部分が校正されているアクチュエータを備えている。
【0009】
形状記憶合金は、2つの極めて特徴的な特性を有している。すなわち、形状記憶合金は、擬弾性であり且つ形状記憶作用を示す。これらの特徴は、固相転移すなわち形状記憶合金に特有である分子の再配列に関する。ほとんどの形状記憶合金においては、これらが相転移温度範囲にあるときに、約10℃の温度変化は相変化を開始させるのに十分である。相転移温度以下の温度では、形状記憶合金はマルテンサイト相である。この位相は、物質が比較的軟らかく且つ二次成形可能であるという事実によって区別される。相転移温度以上の温度においては、形状記憶合金は、材料がより堅牢であるオーステナイト相にある。
【0010】
形状記憶合金は、これらが受ける温度及び/又は機械的な力に依存した種々の物理特性を有している。
形状記憶作用は、形状記憶合金からなる対象物の温度が合金の相転移温度以下に低下したときに観察される。柔軟なマルテンサイト相にあることは容易に変形することができる。温度が再び引き続いて相転移温度以上に上昇したときに、物質は、変態してオーステナイト相へと戻り、変態はまたその元の形状を回復する。
【0011】
形状記憶合金は更に、所謂、擬弾性を示す。この作用は、合金が完全にオーステナイト相すなわち相転移温度以上の温度にあるときに生じる。擬弾性は、温度変化なしで起こる等温作用である。例えば、形状記憶合金によって作られた対象物が十分に大きな力を受ける場合に、それはオーステナイト相からマルテンサイト相へと転移するであろう。変形可能なマルテンサイトによる力を受けると、対象物は変形を受けることによって応答する。しかしながら、力が再び無くなると、対象物はオーステナイト相の元の形状に戻る。
【0012】
温度上昇によって惹き起こされる相転移は、例えば駆動源として使用することができるエネルギを解放する。温度変化は、形状記憶合金と接触している加熱装置、例えば、IR放熱器、熱線コイル、高温空気の蒸気又は電流源によって容易に生じ得る。電流源が加熱装置として使用されるのが好ましい。これは極めて小さく且つコンパクトに設計することができ且つ秤の電子部品によって簡単に且つ正確に制御することができるという事実に加えて、電流源は、殆どが秤量結果に影響を及ぼし得る付加的な熱を発生させないという利点を有する。
【0013】
相転移は、使用されている形状記憶合金に依存して変化するある温度範囲以上で起こる。転移温度範囲は、温度を特別な値に保持すことによって形状変化すなわち収縮を停止すること又は加熱速度によって形状変化の速度を部分的に決定することを可能にする。
【0014】
例えば、この種の材料によって作られた細線は、転移温度以上に加熱されると、使用されている形状記憶合金に応じてあるパーセントだけ長さが収縮するであろう。この結果、細線は、この細線が取り付けられている対象物に対して引っ張り力をかけることができる。この作用は、搬送機構に引っ張り力を付与し、それによって位置を変えさせるために使用される。アクチュエータの設計は、かけられている力の大きさ及び性質を決定する。例えば、形状記憶合金によって作られた細線は、温度が相転移温度以上に上昇せしめられたときに、それ自体が収縮する。従って、単純に温度変化の結果として、形状記憶合金からなる細線は、これが取り付けられている対象物に引っ張り力をかけることができる。従って、直線状の形状記憶合金を使用することは好ましい選択である。なぜならば、細線は簡単に且つ迅速に加熱することができ且つ付加的な冷却手段を使用しないで空気中で迅速に冷却することもできるからである。形状記憶合金は、校正動作中にのみ加熱される。このファクタの結果として、アクチュエータの細線として設計したことと共に、力測定セルに影響を及ぼし得る如何なる静電的な影響もほとんど無く、従って、秤量結果に有害な作用を及ぼすことが殆どない。
【0015】
少なくとも部分的に形状記憶合金からなるアクチュエータは、駆動源の一部分を表すだけでなく、位置を点検するためのセンサーとして使用することもできる。形状記憶合金が細線形状を有している場合には、この細線は、マルテンサイト相とオーステナイト相とにおいて、各々、異なる電気抵抗値を有するであろう。従って、この細線の抵抗を測定することによって、形状記憶合金の電流の相状態、従って、細線が収縮しているか否か、すなわち、搬送機構に引っ張り力が作用しているか否かを判定することができる。これは、校正用錘構造のコンパクトさに関して更なる利点を示す。なぜならば、搬送機構の機能点検のためのセンサーを付加する必要性を排除するからである。
【0016】
細線形状を有しているアクチュエータの引っ張り力は、温度の上昇によって生じる相変化の結果として起こる細線の長さ方向の収縮に関連している。所与の校正用錘に最適に適合されている引っ張り力を達成するためには、細線の長さは使用されている形状記憶合金の種類に応じた特別なパーセンテージだけ変化するので、細線の長さは、変位運動に対して適切に選択される必要がある。このようにして決定される細線の長さによって、幾つかの場合には、伝達される力を最大にするために細線を巻き付け経路で導くことが有利かも知れない。従って、好ましくは、相転移によって解放される細線の引っ張り力は、少なくとも1つの円筒形のローラーの周囲に及び/又はレバーを介して再度導かれる。更に、レバー及び/又はローラーによる経路の変化によって、秤の力測定セル内の細線の極めて省スペースで且つ順応性のある配置が可能となる。
【0017】
経路を変化させるローラーは、滑らかで電気的及び熱的に非伝導性の材料によって構成されるのが好ましい。この非伝導性材料は、細線自体又はローラーに摩耗を生じさせることなく又は細線をローラー形状に切断することなく、細線が方向変換ローラーに対して滑動するのが可能になる。従って、特に良好な適合材料は、合成ポリマー特にテフロンである。
【0018】
校正用錘構造の搬送機構は、リセット部材及び持ち上げ部材を含んでいる。単一の部材、例えば、ばねがリセット部材の機能と持ち上げ部材の機能とを結合した機構を行うことも可能である。持ち上げ部材は、校正用錘を備えた校正用錘ホルダーのガイドされた動きをもたらし、それによって、校正用錘は、校正が行われるときに秤の力伝達装置と力伝達接触状態とすることができる。校正が完了した後に、力伝達接触状態は再び解放され、力伝達機構は休止位置に戻される必要がある。この作業は、搬送機構を休止位置へと移動させるのに十分な力を提供するリセット部材によって行われる。
【0019】
リセット部材は更に、細線形状のアクチュエータが冷却されるときに元の長さへと伸ばす機能をも有している。熱の供給が中断されるとすぐに細線は冷却し始める。細線を形成している形状記憶合金が相転移温度より低くなると、より二次成形可能になり、従って、細線は再び元の形状及び長さに戻る。このプロセスは、リセット部材によって支援され且つ促進される。
【0020】
搬送機構は、種々の種類の持ち上げ部材を含んでいる。好ましくは、持ち上げ部材は、圧縮コイルばねのように対になって相対的に摺動する楔状部材又は少なくとも1つの膝継ぎ手として形成される。コイルばねの場合には、コイルばねは、同時にリセット部材として機能することもできる。
【0021】
校正を行うためには、校正用錘は、力伝達装置と結合されている少なくとも1つの校正用錘レシーバと力伝達接触状態にされる。
アクチュエータの少なくとも一部分を形成している形状記憶合金は、70℃以上好ましくは80℃以上の相転移温度を有している。従って、少なくとも部分的に形状記憶合金からなる駆動源を備えている秤が、秤にとって一般的である−10〜+70℃の温度で貯蔵することができる。
【0022】
形状記憶合金は、とりわけ、Niti,CuZn,CuZnAl,CuZnGa,CuZnSn,CuZnSi,CuAlNi,CuAuZn,CuSn,AuCd,AgCd,NiAl及びFePtからなる群を含んでいる。好ましい選択は、少なくとも40%、好ましくは約50%のニッケル成分を有するニッケル−チタン合金である。この合金は、少なくとも90℃の相転移温度を有している。約150μmの直径を有するこの合金の細線は、相転移温度より上昇したときに約4%だけ長さが収縮するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
電子秤の力伝達装置ばかりでなく校正用錘構造の幾つかの実施形態に関する校正用錘構造のレイアウトを図面に示し、以下において説明する。好ましくは細線形状の形状記憶合金によって作られているアクチュエータは、以下、SMA細線と称する。
【0024】
図1及び2は、共に、従来技術において記載されている校正用錘構造4の側面図であり、例えば電子秤内の力測定セルの力伝達装置1に関する配置を示している。図1における校正用錘構造4は休止位置にあり、一方、図2は校正位置を示している。力伝達装置1は、固定平行四辺形脚部5と可動平行四辺形脚部7とを含んでおり、可動平行四辺形7は、2つの平行四辺形ガイド6によって固定平行四辺形脚部5に束縛されている。秤量パン(図面には示されていない)は、円錐部8を介して可動平行四辺形7に結合しており、可動四辺形脚部7は、固定平行四辺形脚部5に対して秤量パンに対する荷重に応答して重力方向に可動である。力伝達装置1は、第1結合部材9を含んでおり、この第1の結合部材9は、力が可動平行四辺形脚部7内へ導入されたときに、力をレバー機構に伝達する。図示された力伝達装置1においては、レバー機構は、第2の結合部材12を第2のレバー11に結合されている第1の力低減レバー10を備えている。第1及び第2の結合部材9,12は、各々、薄い結合部の形態の可撓性の継ぎ手によって第1及び第2のレバー10,11に対して作用する。
【0025】
可動平行四辺形脚部7の重力方向の変位によって、力がレバー機構に伝達される。レバー機構は、力を減じ且つ力を更に力補償装置41に伝達する。力補償装置41は、電磁理論に基づいていることが多く、図面に詳細には示されていない。
【0026】
平行ガイド機構5,6,7、第1及び第2の結合部材9,12並びに第1及び第2のレバー10,11は、ブロックの種々の材料部分がその最も大きな面に対して直角な材料ブロック内に切り込まれた狭い直線状の切り込み13の形態の材料が存在しない空間によって互いに分離されるような形態で実質的にレンガ形状の材料ブロック内に形成されている。狭い直線状の切り込み13は、放電加工によって形成されるのが好ましい。
【0027】
レバー10は穴を備え、この穴において2つの校正用錘レシーバが適切な締結部材44によって取り付けられ、その結果、校正用錘レシーバ2は、第1のレバー10の力入力側上の短い方のレバーアームの伸長部として機能する。校正用錘レシーバ2のうちの第2のレシーバは、力伝達装置の反対側(この図においては視野から隠れている)の第1のレシーバに対して平行に配置されている。
【0028】
図1からわかるように、秤量プロセス中に、校正用錘3は校正用錘ホルダー14上に載置され且つ載置ブラケットとして形成されている校正用錘構造の横部材21に対して押圧される。校正用錘3は、校正用錘の軸線(z)を含んでいる。明確化のために、見る人に対向する横部材はこの図面からばかりでなく図2からも省略されている。休止位置においては、校正用錘3は力伝達装置のレバー機構から完全に分離されている。
【0029】
校正を行うためには、図2に示されているように、搬送機構によって校正用錘が2つの校正用錘レシーバ上に降ろされ、それによって、校正用錘がレバー機構と力伝達接触状態とされる。図示された状態においては、校正用錘3は、校正用重量レシーバ2上に完全に載置され、もはや校正用錘ホルダー14と接触していない。搬送機構は、校正用錘ホルダー14によって視野から隠れている。搬送機構は、持ち上げ部材と駆動源とを含んでいる。多くの場合には、偏心器が、市販によって入手可能なサーボモーター(図示せず)によって動力が供給される持ち上げ部材として使用される。一般的には、駆動源は、校正用錘構造の横に配置されている。校正用錘は、図面に関して図面の面の前方か後方にある。
【0030】
図3は、SMA細線16がアクチュエータの一部分を形成している校正用錘構造の斜視図である。校正用錘構造は、ベースプレート22上に取り付けられており且つ包囲ブラケットとして形成されている2つの横部材21,121と、持ち上げ部材23,123からなる搬送機構と、圧縮コイルばねとして形成されているリセット部材18と、校正用錘ホルダー314と、3つの方向変換ローラー17,117,217と、象徴的に示されている電気加熱装置のための電気接続部37を備えたアクチュエータとして機能するSMA細線16とから実質的に構成されている。載置ブラケットとして形成されている校正用錘構造の2つの横部品21,121は、休止位置にある校正用錘(図1及び2を参照)を固定する機能を果たす。校正用錘の向きは、ここでは、校正用錘の軸線(z)によって示されている。校正用錘のための座として、横部品21,121は、ほぼ円形の切欠を備えている。校正用錘は、休止位置においては、校正用錘ホルダー314上に載置されており、リセットばね18の力によって載置ブラケット21,121に対して押圧されて、激しい落下又は衝撃の場合に校正用錘が定位置から飛び出さないように保護されている。
【0031】
校正用錘ホルダー314は、持ち上げ部材23,123に対して堅牢に結合されており且つ横部品21,121に締結されている2つのガイドロッド25によって垂直方向移動が束縛されており且つ2つの長穴24を通って校正用錘ホルダー内へ達している。長穴24は、校正用錘ホルダー314の最大移動範囲を規定しており、これと同時に、更に、校正用錘ホルダー314が移動しないようにするための安全ガードとしても機能する。
【0032】
校正用錘ホルダー314は、持ち上げ部材23,123及び/又はリセットばね18によって垂直方向に動かされる。持ち上げ部材23,123は、少なくとも一つがSMA細線16を含んでいるアクチュエータに結合されている2つの膝継ぎ手リンクの形態に設計されている。膝継ぎ手リンク23,123は、図5に更に明確に示されている。原理的には、各膝継ぎ手リンクは、関節結合を備えた2つの二次成形部品によって構成されている。この継ぎ手に作用する水平方向の力によって、例えば、図示した例においては横部材121に向かう方向に、膝が曲げられる。この結果、膝継ぎ手状持ち上げ部材23,123に締結されている校正用錘ホルダー314は、長穴24及びガイドロッド25によってガイドされる垂直方向下方への動きを行う。
【0033】
個々に示された実施形態においては、SMA細線16は、膝継ぎ手リンク123の連結部に直に締結されている。膝継ぎ手リンク123は、次いで、膝継ぎ手リンク23に結合される。アクチュエータとして機能する細線16は、形状記憶合金からなる。この掲示用記憶合金は、温度が該形状記憶合金の相転移温度以上に上昇すると、マルテンサイト相からオーステナイト相への相転移によって長さが収縮する。図面において象徴的にのみ示されている例えば、電流源のような電気加熱装置のための接続部37は、SMA細線16を加熱する役目を果たす。回路を閉じるのに必要とされる第2の電気細線は、細線の他端に接続されているけれども、この図面では、校正用錘ホルダー314及び横部品121によって視野から隠れている。簡素化のために、その後の図面及び実施形態は、電気加熱装置例えば電流源のための接続部のみを示している。電流源の場合には、接地接続は、電源接続部と反対側の端部においてSMA細線の適当な位置に配置されている。
【0034】
この実施形態において使用されている形状記憶合金は、温度が相転移温度範囲へと浄書したときに長さが約4%収縮する。膝継ぎ手リンク23,123のbucklingのための十分な力を発生するためには、長さが約100mmのニッケル−チタン細線16が使用されて、細線を引っ張ることによって約4mmの変位を生じる。
【0035】
利用可能な空間を最適に使用するため及び引っ張り力を伝達するために、細線16は、少なくとも1つのローラーの周囲、本実施形態においては3つの方向変換ローラー17,117,217の周囲に整えられている。円柱形状の2つのローラー17,117が校正用錘構造の狭い方の側部のうちの一つの上に配置されており、等しい形状の更に別のローラー217が反対側の狭い側部上に配置されている。回転可能に取り付けられている円柱状のローラーは、少なくとも1つのリング状の溝27を含んでおり、SMA細線16がこのリング状の溝27を通ってベースプレート22に平行に整えられている。この実施形態におけるローラーは、電気的及び熱的に非伝導性であり且つ適切な処理による極めて滑らかな面を有して、SMA細線は事実上は摩耗しない方法でガイドされるようになされたテフロンからなる。テフロンは更に、SMA細線がその長手方向に自由に滑動するようにしておく。図3におけるローラー(17,117,217)の各々は、ローラーの周囲の少なくとも一部分に沿ってSMA細線16をガイドする3つの溝27を含んでいる。
【0036】
SMA細線16は、ローラー17に締結され、そこからローラー117まで続き、ローラー17へと戻り、両方のローラー17及び117によって1回以上再度導かれた後に、この細線は、校正用錘構造の反対側に設けられた第1のローラー217へと校正用錘構造の横部品21,121内の2つの穴(そのうちの1つだけが見ることができる)内を通過している。ローラー217は、細線16の方向を変更して、細線16が更に別の穴(ここでは見えない)を通過して持ち上げ部材123へと至るようにする。持ち上げ部材123には細線16の他端が締結されている。細線16に電流が供給される限り、細線16は元の長さに対して収縮した状態にあり且つ持ち上げ部材23,123に対して力を付与して、校正用錘ホルダー314の垂直方向下方への動きを生じるようにしている。この場合には、SMA細線16の収縮によって発生される力は、校正用錘ホルダー314及び校正用錘の重力と共に、リセットばね18のばね力に対向する必要がある。プロセス中に、校正用錘は、各々、校正用錘ホルダー314と横部品21,121との間の空間内に配置されている2つの校正用錘レシーバ(図1又は2を参照)上へと降ろされる。校正用錘ホルダー314を休止位置へ戻すためには、細線16への熱の流れが遮断される。細線16は、冷却し、より容易に変形可能なマルテンサイト相へと転移し、その長さが再び延びる。その結果、持ち上げ部材23,123に作用する力は減少し、リセットばね18のばね力によって、校正用錘ホルダー314は休止位置へと押し上げられる。この状態で、リセットばねは、SMA細線16が冷却されている間、SMA細線の残っている引っ張り力に対抗し、これはまた、校正用錘ホルダー314及び校正用錘の重力にも対抗する。これと同時に、膝継ぎ手リンク23,123を真っ直ぐにすることによって、リセットばね18の力は、冷却されているときにSMA細線16に作用して細線は伸びて元の長さに戻る。
【0037】
図4は、図3とほぼ同じ校正用錘構造を示しており、この図においては、SMA細線16が別の経路に沿って経路付けされている以外は、同じ参照符号が類似の部材に対して使用されている。SMA細線16は、同様に、膝継ぎ手リンク123に結合されているけれども、唯一の円柱状のローラー217の周囲に整えられている。細線16の一端は膝継ぎ手123に結合されており、他端はローラー217に結合されている。この実施形態においては、溝27は、円柱状ローラーを取り巻いている一種の渦巻形に進む溝内に結合されている。SMA細線16を加熱するために、電気加熱装置に対する接続部37が同じく設けられている。
【0038】
膝継ぎ手リンクの形状の持ち上げ部材の機能原理は図5において見ることができる。図5は、校正用錘ホルダー314、2つの膝継ぎ手リンク23,123、リセットばね18及びアクチュエータの一部分を形成しているSMA細線16を含んでいる搬送機構を図示している。校正用錘の向きは、校正用錘の軸線(z)によって示されている。膝継ぎ手リンク23,123の各々は、継ぎ手状の結合部を備えた2つの二次成形部品30からなり、継ぎ手の軸線は、校正用錘の軸線(z)に対して直角に向けられている。二次成形部品30は、例えばリベット又はピンのような適当な結合手段29によって相互に結合されており且つ同じ種類の更に別の結合手段26によって隣接している部品38に結合されている。隣接部品38は、各々、次いで、校正用錘ホルダー314及びベースプレート22に締結される。結合手段26,29は、関節継ぎ手と同様に、完全な膝継ぎ手リンク23,123が曲げられ、続いて再び伸ばすことができるような方法で二次成形部品の相対的な回転を可能にするような構造とされている。2つの膝継ぎ手23,123が一緒に動くようにさせるために、これらは、堅牢な結合手段45によって結合されている。結合手段45は、例えば、ロッド又はバーの形状とすることができる。休止位置から校正位置への変位動作の方向は、膝継ぎ手23,123の曲げられた位置によって図5に示されている。膝継ぎ手リンク23,123の二次成形部品30は、図面の面に直角な方向に校正用錘ホルダー314の一杯の深さに亘って延びた長さが、例えば、ロッドによって結合されている対形態で配置されている少なくとも4つの薄い二次成形部品30によって作られている。膝継ぎ手23,123間にはリセットばね18が配置されており、リセットばね18は、次いで、ベースプレート22及び校正用錘ホルダー314に結合されている。リセットばね18の機能は既に上記した。SMA細線16は、少なくとも膝継ぎ手23,123上に結合されていて、SMA細線16が温度の上昇による長さの収縮を受けたときに、相互に結合された膝継ぎ手23,123に力がかかり、それによって両方の膝継ぎ手が曲げられ、次いで、校正用錘ホルダー314の垂直方向下方への変位を生じさせるようになされている。
【0039】
少なくとも1つの膝継ぎ手を備えた持ち上げ部材もまた、図6及び7の側面図に示されているように配置することができる。両方の図面における膝継ぎ手の回転軸線は、校正用錘の軸線(z)に平行に配置されている。膝継ぎ手リンク223の設計は、図5と似ており、一部品構造を有する膝継ぎ手を形成している二次成形部品130が本実施形態における校正用錘ホルダー314の殆ど全幅を占めているか又は二次成形部品130が例えばピン又はリベットのような適当な結合手段126,129によって回転可能に係合されている平らな板として形成されている。膝継ぎ手223が板形状とされている場合には、一対のリンク223が、例えばロッドのような結合手段126,129によって互いに結合されており、これらのロッドは、校正用錘ホルダー314の幅にほぼ等しい長さである。同じく図5に示されているように、SMA細線16は、2つの二次成形部品130間において好ましくは結合手段129に締結されていて、SMA細線16が温度上昇による長さの収縮を受けたときに引っ張り力が膝継ぎ手129及び2つの二次成形部品130によって形成されている継ぎ手内に曲がるようにされ、この継ぎ手は、次いで、図面に示されているように、校正用錘ホルダー314の垂直方向下方への変位を生じさせる。搬送機構も同様に、圧縮コイルばねの形状を有しており且つベースプレート22と校正用錘ホルダー314との間に装備されているリセット部材118を含んでいる。リセット部材118の機能は既に説明したリセット部材に似ている。
【0040】
SMA細線16は、上記した実施形態におけるように膝継ぎ手リンクに直に取り付けられるか又は膝継ぎ手に結合されているレバーか若しくはローラーによって再び方向を変えることができる。図7は、実質的に図6と同じ搬送機構を示しているけれども、SMA細線16からなる駆動源のための代替的な取り付けを示している。SMA細線16は、レバー40に締結されており、レバー40は、図7の膝継ぎ手の中央位置に配置されている結合手段129に堅固に係合されている。レバーに引っ張り力がかかると、該レバーは、図6及び7に図示されているように、膝継ぎ手223を曲げさせるであろう。レバー40は、中央位置において結合手段に堅固に結合するか2つの二次成形部品130のうちの一方の下端に結合することができる。レバー40の代わりに、膝継ぎ手に締結されたローラーを備えたSMA細線16の引っ張り力を再び方向を変えることもまた考えられる。
【0041】
上記の膝継ぎ手の他に、校正用錘構造はまた、他の搬送機構及び/又は図8乃至11に示された持ち上げ部材をも含むことができる。
図8は、持ち上げ部材がばね構造として構成されている校正用錘構造の前面図である。校正用錘ホルダー314は、少なくとも2つの圧縮コイルばね上に載置されている。図においては、三角形に配置されている3つのコイルばね31,131が存在する。圧縮コイルばね131は、校正用錘ホルダー314の半分の中央下方に配置されている。ばね31とは対照的に、ばね131は、ベースプレート22上に直に取り付けられておらず、一種の台39上に支持されている。3つの圧縮コイルばね31,131のこの構造は、校正用錘ホルダー314が傾く傾向を減じる。これらのばね31,131のばね力は、校正用錘と校正用錘ホルダー314との重力に対抗するのに十分な強さを有している。校正用錘の向きは、校正用錘の軸線(z)によって示されている。
【0042】
この実施形態におけるSMA細線16は、校正用錘ホルダー314に直に結合されており且つ方向変換ローラー32上を延びている。方向変換ローラー32まで第1の線に平行に延びている第2の細線116は可動のスライド33に結合されている。休止位置においては、スライド33は、超過荷重ボルト34に接触しており、それによって、校正用錘ホルダー314の位置を係止している。細線16,116が電気加熱装置のための指示された接続部37によって加熱されると、SMA細線16は、より短い長さに収縮し且つばね31,131の力に抗して校正用錘ホルダー314を下方へ引っ張る。第2の細線116もまた、同時に、より短い長さに収縮し且つスライド33を摺動させ、その結果、超過荷重ボルト34はその安全な束縛状態へと給送される。従って、校正用錘ホルダーの最大の垂直方向変位は、超過荷重ボルト34とベースプレート22との間の距離によって決定される。
【0043】
持ち上げ部材としてここで使用されているバネ構造は、加熱された細線16の引っ張り力によって圧縮される。校正が完了した後に、加熱装置は遮断され、細線16は冷却してより容易に変形し得る状態に再び戻る。ばね31,131は、再び圧縮され、校正用錘ホルダー314を休止位置へ動かし、SMA細線が冷却されたときにSMA細線16に力をかけて元の長さへと再び伸ばす。このようにして、このばね構造は、持ち上げ部材としてのみならずリセット部材として機能する。スライド33は、更に別のリセットばね42の力によって超過荷重34の下で引っ張り戻される。リセットばね42もまた、スライド33に締結されている細線116を伸ばして元の長さへと戻す。リセットばね42は、圧縮コイルばね31との接触がない状態で締結されている。
【0044】
ばね構造を形成している圧縮コイルばね31,131が同時にリセット部材の機能を引き受けることもまた可能である。これは、図8における超過荷重ボルト34の位置と方向変換ローラー32の位置とを切り換えることによって行われる。従って、第2のSMA細線116ばかりでなくリセットばね42も余分になる。
【0045】
EP 0 468 159 B1に開示されている搬送機構は、持ち上げ部材として楔部材を含んでおり、同様に、電気加熱装置を備えたSMA細線によって作動せしめられる。図9は、楔部材を備えた搬送機構の前面図である。校正用錘ホルダーは、対になって相対的に動く楔部材35,36,136によって垂直方向に動かされる。楔部材36,136は、堅牢な結合部材46によって相互に堅固に結合されている。細線形状の形状記憶合金がアクチュエータとして使用されている場合には、細線は、2つの下方の楔部材36,136のうちの一方に取り付けられている。細線の一端に接続された電気加熱装置(接続部37は象徴的にのみ示されている)によって細線を加熱することによって、温度が相転移温度の範囲内へと上昇せしめられると、SMA細線16は、より短い長さへと収縮するであろう。SMA細線16を短くすることによって解放される機械的エネルギは、楔部材36,136の水平方向の変位を生じさせる。図9の状態においては、楔部材36,136は左へ動く。これと同時に、2つの上方楔部材35は、楔部材36,136によってそれらの接触面に沿って下方へ滑動し、それによって、上方の楔部材35に結合されている校正用錘ホルダー314が下降せしめられる。SMA細線16の長さは、温度上昇の存在下で細線が楔部材136に締結されているリセットばね218のリセット力に抗して下方の楔部材を動かすことができるであろう。リセットばね218は、再び、楔部材35,36,136をその休止位置へ戻す機能及びSMA細線16を冷却段階中に伸ばして元の長さへ戻す機能を果たす。
【0046】
校正用錘構造104と力伝達装置101との組み合わせの更に別の実施形態が、EP 0 789 232 B1に開示されている。この組み合わせは、SMA細線を含んでいるアクチュエータと共に図10及び11に斜視図で示されている。図10には、一体化された力伝達装置101上に横方向に配置されている2つの校正用錘103(一方のみが図面に含まれている)が存在する。校正用錘103が休止位置にあるときには、校正用錘は、力伝達装置101の固定部品に締結されている校正用錘ホルダー114上に完全に載置しており、校正用錘の力伝達装置101のレバー機構との係合は存在しない。校正を行うためには、校正用錘ホルダー114は、校正用錘103が、力伝達装置101のレバー機構に結合されている2つの校正用錘レシーバ102(一方のみが図面内に存在する)上へと降ろされ、それによって、校正用錘はレバー機構との力伝達接触状態とされる。校正用錘ホルダー114の動きは、SMA細線16を電気的に加熱することによって開始され、加熱されたSMA細線16は、校正用錘ホルダー114の底部に引っ張り力を付与する。電気加熱装置のための接続部37は、この図面においては象徴的にのみ示されている。細線16は、ベースプレート122に結合されているローラー43によって方向の変換を与えられ、方向の更なる回旋及び/又は回転は、使用できる空間に依存する。好結果の校正の後に、細線16への電流の供給は遮断され、校正用錘ホルダー114は、リセットばね318の力によって休止位置へ戻される。この動作において、校正用錘ホルダー114は、下から校正用錘に接触して持ち上げ、それによって、校正用錘103と校正用錘レシーバ102との間の力伝達接触を解放する。更に、リセットばね318は、校正後に冷却されたときに細線16を伸ばして元の長さに戻す。
【0047】
図11においては、同様に力伝達装置101において横方向に配置された2つの校正用錘103が存在する。第2の校正用錘は、力伝達装置101の反対側にあり且つこの斜視図においては視野から隠れている。図11における校正用錘構造204は、フォーク形状の校正用錘ホルダー214からなり、このフォークの閉塞端部は、力伝達装置101の固定部品上に傾斜可能に枢動せしめられる。力伝達装置101から離れる方向に向いているフォークの歯の自由端部において、SMA細線16の一端が校正用錘ホルダー214に取り付けられている。SMA細線16は、ベースプレート122上に取り付けられているローラー43によって所定の方向の回旋を付与され且つ利用できる空間に応じてSMA細線は更に引き上げられ及び/又は何回かの方向の変換が付与される。SMA細線16は、ここでは接続部37として象徴的にのみ示されている電気加熱装置に接続され、それによって、細線は、例えば電流を適用することによって加熱することができる。相転移温度まで加熱することによってSMA細線16は長さが収縮せしめられ且つ校正用錘ホルダー214に引っ張り力をかけて、校正用錘が該力に応答して下方へ傾く。この結果、休止位置に校正用錘103は、校正用錘ホルダー214の溝20内の位置決めピン19によって保持され、力伝達装置101のレバー機構と係合している2つの校正用錘レシーバ102上に降ろされると校正用錘ホルダー214との接触状態が失われる。レバー機構及び校正用錘103がこのようにして力伝達接触状態になった状態で校正を行う。校正が完了した後にSMA細線16への電流の供給は遮断される。校正用錘ホルダー214とベースプレート122との間でSMA細線16に隣接して配置され且つ同様に校正用錘ホルダー214に抗して作用しているリセットばね418は、校正用錘ホルダー214を休止位置へ戻らせ且つ校正用錘レシーバ102と校正用錘103との間の力伝達接触を分離させる。リセットばね418は更に、電流がオフに切り換えられた後に、細線が冷却したときに該細線を元の長さへ伸ばす機能を有する。
【0048】
上記の例に示されているアクチュエータの全ては、ワイヤー形状を有し且つ少なくとも一部分が形状記憶合金によって構成され、電気加熱装置に接続することによって加熱されるのが好ましい。細線の温度が形状記憶合金の相転移温度以上に上昇すると、細線は長さが収縮する。この現象は、一般的な方法によって細線の電気抵抗を測定することによって校正用錘構造の機能を点検するために使用される。細線の電気抵抗はその長さに依存する。測定された抵抗値は、細線の長さを示し、従って、校正用錘構造が休止位置にあるか又は校正位置にあるかの指示を提供する。なぜならば、搬送機構従って校正用錘の変位は、SMA細線の長さの変化につながっているからである。
【0049】
図3の例に示されているように、SMA細線は、校正用錘構造の狭い方の側部に配置されている複数のローラーの周囲に調整することができる。さもなければ、校正用錘構造は、SMA細線の経路を決めるこの概念に限定されない。校正用構造の幅に沿って配置された又は校正用錘構造のベースプレートに対して角度を付けて配向されている少なくとも1つのローラー又は少なくとも1つのレバーによって細線の方向を変えることも考えられる。SMA細線は極めて可撓性であるので、秤の力測定セル内で利用できる空間によって示されるように配置すること、コイル状に巻くこと及び/又は種々の方向を有する区分内に経路付けすることが可能である。
【0050】
これらの例から見ることができるように、SMA細線は、少なくとも1つのローラーによって方向変換を付与される。力の伝達を最適化するためには、細線を何回か再度方向変換して、細線が例えば細線の両端が同じ構成要素に作用する一種のループを形成するようにするか又は細線を互いに平行に配列する1以上の細線を使用することが可能である。方向変換手段として、ローラーに加えて例えばレバーのような他の要素を使用することができることももちろん可能である。
【0051】
アクチュエータは、マルテンサイト相とオーステナイト相との間を転移することによって温度変化に応答する能力を備えた形状記憶合金によって構成されている。多数の形状記憶合金が知られている。好ましい実施形態におけるアクチュエータは、形状記憶合金によって作られるのが好ましい。とりわけ、この形状記憶合金としては、NiTi,CuZn,CuZnAl,CuZnGa,CuZnSn,CuZnSi,CuAlNi,CuAuZn,CuSn,AuCd,AgCd,NiAl及びFePtからなる群の合金がある。好ましくは、理想的には、約50%のニッケルを含んでおり且つ少なくとも90℃の相転移温度を有するNiTi合金が使用される。
【0052】
SMA細線の長さは、形状記憶合金の組成、発生される力及び必要とされる持ち上げ高さによって決定される。約50%のニッケルを含み且つ約150μmの直径を有するニッケル−チタン合金のSMA細線は、温度が相転移温度まで上昇したときに長さが約4%だけ収縮する。
【0053】
使用されている形状記憶合金は長い作動寿命によって特徴付けられている。合金によって作られた細線は、材料の疲労を受けることなく約10,000回、好ましくは100,000回加熱したり冷却したりすることができる。
【0054】
例示的な実施形態におけるアクチュエータは、細線として形成されるのが好ましい。なぜならば、細線は、良好な抵抗特性及び加熱特性を示すからである。丸いか、楕円か又は矩形の直径を有するフラットリボンとしてアクチュエータを設計することもまた可能である。
【0055】
材料がその形状を変えることができる特性によって、更に別の可能性が提供される。従って、例えば、適切な運動学的束縛によって、リセット部材と持ち上げ部材との機能を同時に果たすことができる圧縮コイルばねの形態の形状記憶合金を使用することができる。
【0056】
校正を行うためには、校正用錘が、力伝達装置のレバー機構に結合されている校正用錘レシーバと力伝達接触状態にされる。ここに説明された例においては、校正用錘のこの動きは、校正用錘の垂直方向の変位又は傾斜動作によってもたらされる。細線の可撓性を使用することによって、更に別の伝達機構を実現することが可能である。従って校正用錘が下方に引っ張られて校正用錘レシーバとの接触状態から解除すること又は駆動源がレールの側路を動かし、それによって校正用錘の停止を解放することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上記した好ましい実施形態は、校正用錘構造と一体化された力伝達装置との組み合わせを例示している。図1に示されているような校正用錘構造と組み合わせることができる他の公知の力伝達装置が存在する。もちろん、図1に示された校正用錘構造と組み合わせることができる如何なる力伝達装置もまた、上記した実施形態による形状記憶合金を含んでいるアクチュエータと組み合わせることもできる。
【0058】
ここに提供した種類の校正用構造は、高分解能の秤ばかりでなく、分解能の低い秤において使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、伸長した校正用錘レシーバを備え、力伝達装置に隣接して配置された電子秤の力伝達装置と校正用錘軸線を有する校正用錘の休止位置にある校正用錘構造の簡素化された側面図である。
【図2】図2は、校正用錘構造が行われている間の図1の力伝達装置と校正用錘の図面的に簡素化された側面図である。
【図3】図3は、3つのローラーによって折り曲げられた経路に沿って方向付けされた細線形状の形状記憶合金によって作られたアクチュエータを備えた校正用錘構造の斜視図である。
【図4】図4は、1つのローラーによって折り曲げられた経路に沿って方向付けされた細線形状の形状記憶合金によって作られたアクチュエータを備えた校正用錘構造の斜視図である。
【図5】図5は、リンクの回転軸線が校正用錘の軸線に向けられている膝継ぎ手リンクとして形成されている持ち上げ部材を備えた搬送機構の前面図であり、リンクの回転軸線が校正用錘の軸線に直角に向けられている。
【図6】図6は、膝継ぎ手リンクとして形成されている持ち上げ部材を備えた搬送機構の側面図であり、リンクの回転軸線が校正用錘の軸線に平行に向けられている。
【図7】図7は、膝継ぎ手リンクとして形成されている持ち上げ部材を備えた搬送機構の側面図であり、リンクの回転軸線が校正用錘の軸線に平行に向けられており、アクチュエータが、レバーによって一の方向からもう一つ別の方向へガイドされる。
【図8】図8は、ばね構造の形態の持ち上げ部材を備えた搬送機構の前面図である。
【図9】図9は、対状態で相対的に移動する楔形状の持ち上げ部材を備えた搬送機構の簡素化された前面図である。
【図10】図10は、校正用錘ホルダーを垂直方向に降下させることによって、校正用錘を力伝達装置に対して力伝達接触状態とする横方向に配置された校正用錘構造を備えた力伝達装置の簡素化された斜視図である。
【図11】図11は、校正用錘ホルダーを傾斜動作させることによって、校正用錘を力伝達装置に対して力伝達接触状態とする横方向の校正用錘構造を備えた力伝達装置の簡素化された斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1,101 力伝達装置、 2,102 校正用錘レシーバ、
3,103 校正用錘、 4,104,204 校正用錘構造、
5 固定平行四辺形脚部、 6 平行四辺形ガイド、
7 可動の平行四辺形脚部、 8 円錐形、
9 第1の結合部材、 10 第1のレバー、
11 第2のレバー、 12 第2の結合部材、
13 線形切り込み、
14,114,214,314 校正用錘ホルダー、
16,116 SMA細線、 17,117,217 方向変換ローラー、
18,118,218,318,418 リセット部材、
19 位置決めピン、 20 溝、
21,121 載置 ブラケットとして形成された横方向部材、
22,122 ベースプレート、
23,123,223 持ち上げ部材、
24 長穴、 25 ガイドロッド、
26,126 結合手段、 27 溝、
28 横方向部材内の穴、 29,129 結合手段、
30,130 二次成形部品、
31,131 圧縮コイルばね、 32 方向変換ローラー、
33 側部、 34 超過荷重ボルト、
35,36,136 楔状部材、
37 電気加熱装置のための接続部、
38,138 隣接部片、 39 受け台、
40 方向変換レバー、 41 力補償装置、
42 リセットばね、 43 方向変換ローラー、
44 締結手段、 45 堅牢な結合手段、
46 堅牢な結合手段、 z 校正用錘の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
力伝達装置(1,101)を備えている電子秤のための校正用錘構造(4,104)であって、
前記力伝達装置(1,101)に結合することができる少なくとも1つの校正用錘(3,103)を含んでおり、
更に、校正用錘(3,103)のガイドされた動きをもたらすための搬送機構及び駆動源を含み、
前記駆動源が前記搬送機構と協働し且つ少なくとも一部分が形状記憶合金によって作られているアクチュエータ(16)を備えており、前記アクチュエータ(16)は、前記形状記憶合金の構造的な変化によって前記校正用錘(3,103)を動かし、前記構造的な変化は、温度変化の結果として生じることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項2】
請求項1に記載の校正用錘構造であって、
前記駆動源が、前記アクチュエータ(16)と協働する電気加熱装置を含んでいることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項3】
請求項1乃至2のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記力搬送機構が少なくとも1つのリセット部材と少なくとも1つの持ち上げ部材とを備えていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項4】
請求項3に記載の校正用錘構造であって、
前記力搬送機構が、前記リセット部材の機能と前記持ち上げ部材の機能との結合された機能を果たすことができる少なくとも1つの部材を備えていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の校正用錘構造であって、
前記リセット部材が、前記力搬送機構と前記校正用錘(3,103)とをそれらの各々の休止位置へ動かすと同時にその冷却段階中に前記形状記憶合金(16)をその元の形状及び/又は長さに戻すのに十分な大きさのリセット力を有していることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項6】
請求項3乃至5のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記リセット部材が少なくとも1つのばね(18,118,218,318,418,42)を含んでいることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
少なくとも一部分が形状記憶合金によって構成されているアクチュエータ(16)が、前記力搬送機構の機能点検を行うためのセンサーとして機能する能力を備えていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記アクチュエータ(16)の力が、少なくとも1つの方向変換手段(17,117,217,32,40,43)によってその方向を変えるようになされていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項9】
請求項8に記載の校正用錘構造であって、
前記方向変換手段が、滑らかな滑動材料好ましくはテフロンからなるローラー(17,117,217,32,43)であることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項10】
請求項3乃至9のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記搬送機構の前記持ち上げ部材が、対になって又は少なくとも1つのナックル継ぎ手リンク(23,123,223,323)の形態で相対的に動く楔部材(35,135,36)の形態に作られていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項11】
請求項3乃至9のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記搬送機構の前記持ち上げ部材が、少なくとも2つの圧縮コイルばね(31,131)を含む構造形態に作られていることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項12】
請求項11に記載の校正用錘構造であって、
前記持ち上げ部材のばねの組(31,131)が、同時に前記リセット部材の機構を果たすことを特徴とする校正用錘構造。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
前記形状記憶合金が、NiTi,CuZn,CuZnAl,CuZnGa,CuZnSn,CuZnSi,CuAlNi,CuAuZn,CuSn,AuCd,AgCd,NiAl及びFePtからなる群から選択されたものであることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項14】
請求項13に記載の校正用錘構造であって、
前記形状記憶合金が、少なくとも40%好ましくは約50%のニッケル成分と、少なくとも80℃好ましくは少なくとも90℃の相転移温度とを有するニッケルチタン合金からなる群から選択されたものであることを特徴とする校正用錘構造。
【請求項15】
請求項1乃至14のうちのいずれか一項に記載の校正用錘構造であって、
形状記憶合金からなるアクチュエータ(16)の一部分が細線形状に作られていることを特徴とする校正用錘構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−184279(P2006−184279A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359977(P2005−359977)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(599082218)メトラー−トレド・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (130)
【氏名又は名称原語表記】Mettler−Toledo GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】