説明

電子符号識別方法および装置

本公報は電子符号読取の方法および装置を開示する。本方法によれば、電極(4,5)を用いて、計測される符号(11)に交流電気信号を流し、前記電極(4,5)を通って流れる電流か電圧が計測される。本発明によれば、電流またはそれに応じた電圧の実数成分(8)と虚数成分(9)を規定し、前記電極(4,5)が本質的に無損失な表面の上にあれば、電流または電圧の実数成分(8)と虚数成分(9)に対して、その電流または電圧の実質的な変化が、当該電流または電圧の前記虚数成分(9)のみに生じるように、角度補正を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文部に基づいた電子符号を検出する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、該方法を用いた装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来技術によれば、光学読取式のバーコードと間接読取式のRFID(無線ICタグ)識別子の両方が貨物輸送に使用されている。
【0004】
バーコードは、標準化された技術としての強みを有している。しかし、この技術は目に見える記号と、少なくとも視認距離を隔てて行われる読取技術もまた必要とし、それが該視認距離はアプリケーションの使用を制限する。前記目に見える記号は、該技術を悪用されやすくする。
【0005】
無線ICタグ技術は、遠隔での可読性、製品へ符号を完全に隠蔽する可能性を含む、符号の偽造を防ぐために使用されうる、バーコード技術を上回る長所を多く有している。しかしながら、無線ICタグ技術に使用される識別子は、バーコード技術よりも明らかに高価である。
【0006】
特許文献1は一つの解決策を開示しており、そこでの読取装置は貨幣価値を割り当てた照合用の抵抗印を容量的に計測するのに用いられている。その機械は、計測が近距離において非接触で行われることを可能にする。計測では、それぞれの抵抗の抵抗値が特定のあらかじめ規定された制限内となるように、いくつか(例えば8つ)の抵抗の桁分が同時計測によって定まる。したがって、このことは宝くじの電気的な正確さを見積もるための“デジタル技術”の使用の一つになる。もし、抵抗器の全てが所定の制限の範囲内であればそのくじは受理され、一方ただ一つの逸脱があっても拒絶される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,818,019号公報明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の技術の不備を取り除くこと、および、そのために、電子符号を読み取るための、全く新しい方法と装置を作り出すことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、いくつかの導電線から符号を形成することに基づいており、その導電線からは電極を用いて実数部と虚数部の両方が電気的に確定されると共に、前記電極が原則的に無損失の表面の上にあれば、角度補正は電流の前記実数部と虚数部に対して、電流の大きな変化が電流の前記虚数部のみに生じるようになされる。
【0010】
本発明の好適な実施例によれば、計測された実数部と虚数部は角度補正によって、実数部が主に損失を計測するように補正される。
【0011】
さらに具体的には、本発明による方法は、請求項1の特徴部分の記載されているものによって特徴付けられる。
【0012】
一方、本発明による装置は、請求項12の特徴部分の記載されているものによって特徴付けられる。
【発明の効果】
【0013】
少なからぬ長所が、本発明の助けにより獲得される。
【0014】
本発明は、その不可視性によって、バーコードに対する明らかな長所をもたらす。不可視の符号は、とりわけ簡単にコスト効率よく、偽造製品を突き止めるために使用されうる。
【0015】
実際には、本発明での適用は、無線ICタグ技術やバーコード技術のそれと似ている。本発明における符号は、視認可能にするかあるいは不透明な保護膜の下に隠すことができる。本発明における符号は、例えば、アクセス制御アプリケーション、製品データの符号化、認証、および、製品の素生の検査にも使用できる。
【0016】
電子的に読取可能な無線ICタグに関して、本発明は、一方で、少なからぬ費用面での長所を提供する。なぜなら、印刷技術を使用して前記符号を製作することができるからである。
【0017】
マーキングの電気特性を最適化するおかげで、計測用電子機器がより安い構成部品から製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における計測装置の一例を示す。
【図2】本発明における計測対象の一例を示す。
【図3a】電極間に読み取られる符号がない場合の、本発明における計測装置の電極間の等価回路を示す。
【図3b】電極間に読み取られる符号がある場合の、本発明における計測装置の電極間の等価回路を示す。
【図4】本発明における計測装置の観点から、符号の抵抗の増大に対する読取されるマーキングの実数成分と虚数成分の反応をグラフを使って示す。
【図5】最初の計測の結果による角度補正後の本発明による計測装置をグラフを使って示す。実数成分が下の曲線、虚数成分が上の曲線である。
【図6】角度補正後のアドミタンスの実数成分を示す。
【図7】本発明における計測装置によって読み取られた、低品質の符号の計測結果を示す。
【図8】本発明における計測装置によって読み取られた、虚数成分と実数成分とに分けられた符号の計測結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、実施例を用いて、添付図面を参照して、本発明を検討する。
【実施例】
【0020】
図1は計測装置1を示しており、そこでは発振器2によって給電される二つの活性電極4が電流を活性化しており、計測される表面と、場合によってはその内の導電性構造を電流が流れる。当該図面における装置では、中間電極5は信号の計測に使用される。配線と増幅器6の静電容量(相補型金属酸化膜半導体、または、接合型電界効果トランジスタ)は、一般に読取電極5のインピーダンスが容量性の短絡回路を示すほど大きい。そうでない場合には、増幅器の入力を極めて低インピーダンスにする電流帰還を前記増幅器6に備えてもよい。前記信号は位相検波器7を用いて、その信号を対象物と同相に結合された交流電力と混合することで検出され、それにより前記信号は90度分位相変位させられる。もしも、該計測に差異がなければ、ブリッジの平衡を保つために、前記導体間の容量結合が逆位相信号で取り消される。本図面の装置に基づく回路は、表面のアドミタンスの虚数成分9と実数成分8を計測する。
【0021】
図2は、導電性を有する(不透明な)符号11がベース10の上面に形成される状態を示している。前記ベース10は、紙、板、プラスチック、または、他の類似の、一般的に非導電性の表面であってもよい。本図では、符号11の幅が一定で、符号間の間隔が調節されるように符号化が行われている。よって、前記符号には、導電性構造11の間に、短い隔たり12と長い隔たり13が存在する。一部の状況では、対象物に対する容量的な結合を弱める薄いプラスチックフィルムが前記符号11の上面に存在する。
【0022】
もしも図2における前記符号が、図1の装置によって走査されるならば、前記アドミタンスは原則として2つの数値の間で変化するであろう。図3aの電気回路は、計測される前記対象物が単に紙である状況を表現する。また、図3bでは、ベース10の上面に導電層が存在する状況に対応する。領域が分割されるので、正確なモデルには、いくつかのコンデンサと抵抗器を使用して状況を表現することが求められる。走査が通過して行われる表面にいくつかの導電構造がある場合は、アドミタンスの変調を生み出す。この場合は、単一周波数での計測時に、インピーダンス計測は対象物のアドミタンスの虚数成分と実数成分を提示する。計測に関して、前記符号が実数成分と虚数成分の双方を修正する状態と比較して、何がアドミタンスの虚数成分と実数成分の変動であるかが重要な問題である。本発明の中心思想は、計測の信号雑音比を最大限に高められるように、計測を実行する方法である。
【0023】
対象物の電気抵抗のノイズが実存しないと仮定すると、電子機器に関して、実数成分かまたは虚数成分の電流を最大限に高める試みが行われる。これは、対象物との容量結合を最大限に高めること、幅広の電極と幅広の符号にすること、および、計測電極から符号の距離を最小限に抑えることによってもたらされる。しかしながら、高周波においては電子機器のノイズではなく、対象物のノイズが多くの場合信号雑音比を確定する。前記ノイズは多くの場合、読取機の“ハンチング”と傾斜、および、紙(対象物)の粗さから生じる。ほとんどの基体は導電性がないので、この問題は、主としてアドミタンスの虚数成分においてのみノイズを引き起こす。前記表面はある程度損失を有するにもかかわらず、実数成分のノイズは常に虚数成分のノイズよりも小さいままである。ノイズはまた前記符号の上面でも生じる。前記符号が高伝導性を有し、しかし、インクが“斑点状”であり、特に、紙の粗さのせいであるなら、符号の上面での問題は、虚数成分と実数成分は両方ともノイズが多くなるだろうことになる。良導体のブリッジを渡ってのみ、電流が入力電極から計測電極へ流れるので、前記実数成分もまたとても小さいままである。
【0024】
まず第一に、該問題を若干数学的に検討する。対象物の単純な等価回路を仮定すると、この場合は読取ヘッドが符号の上面にある時の状況で、コンデンサと抵抗の直列接続がインピーダンスを表現する。符号の外では、対象物がコンデンサのみで表現できるほど、ほとんど全く無損失である。電子機器の受け取る電流は、式1で与えられる。

【0025】
最初に、できる限り高い周波数を用いることと、できる限り近づけて導電性符号の計測を試みることにより、大きな静電容量を生じさせることによって、前記電流は最大限に高められることが分かる。
【0026】
図4は、曲線40を用いて、抵抗が増大する時の計測アドミタンスの実数成分と虚数成分の動作を示している。当該図面は計測距離が一定である標準化された説明であり、そのキャパシタンス(静電容量)は一定の大きさとなる。さらに、符号を伴わないアドミタンスを表現する楕円43が図に記載されている。計測されたアドミタンスの虚数成分と実数成分が等しい大きさである場合、その場合は計測されたインピーダンスの虚数成分と実数成分もまた必然的に等しい大きさとなるが、実数成分の変調は点44においてr=1の時に最大になることが分かる。良質な導電性の表面を計測する仮定の状況(黒い楕円42)もまた図に記載されている。円41は“穴あき”符号が計測される状況を示す。その場合、実数成分と虚数成分の双方の変化はとても大きくなる。絶縁基材を用いると、実数部分の値とその変動が小さくなるので、r=1となるように距離とインクの伝導率を選択することが最良であり、それによりアドミタンスの実数成分の信号雑音比は最大になる。抵抗値が無限に増加するとき、前記曲線は楕円43に接近する。
【0027】
本方法は本質的に、対象物のアドミタンスの実数成分と虚数成分をお互いから切り離すことに基づく。高周波において、特に矩形波を用いる時、いわゆる角度誤差に関する正確な情報はない。方形波では高次の高調波を含んでおり、実数成分と虚数成分の完全な概念がある意味では悪い。本発明の一実施例によれば、重要な事実は下記の角度補正方程式が計測された実数成分と虚数成分を対象とすることである。

【0028】
添え字uは、角度補正されたアドミタンスに関連する。補正角度はαで示される。本方法の基本思想は、計測装置が紙(プラスチック)の表面を走査する時に、符号のない場所で実数成分の変動が最小限に抑えられるように前記補正角度を選択することにある。較正は、紙の表面に意図的に模様を記すか、あるいは紙の表面からの距離が変化するように計測ポイント(ペン)を揺動することによって改善することができる。これは、本実施例で用いられる表面の校正を行なうのに好ましいものである。別の代替案は、符号のない領域で符号を走査する時に、角度の較正を行うことである。そのような符号のない無損失な表面が、ポイントを計測することによって走査される時、原則として無損失計測する成分のみが変化する。このことは、該角度をアドミタンスの実数成分の変化を最小限に抑えることによって見つけられることを意味する。前記角度が紙にポイントを打ち込むことが前記角度の実数成分に影響を及ぼさないように選択されるならば、実数成分の前記雑音もまた最小限に抑えられる。実際には、読取周波数を変更しない限り、角度の較正は一度だけなされなければならない。分離し独立した較正が計測ポイント毎になされなければならないかどうかは、電子機器の製品バリエーションによって決まる。
【0029】
角度補正の目的は、従って、紙の性質とポイントの位置の変化による変動を計測信号から除去し、符号の性質のみに依存するようにするものである。暗雑音は除去される。
【0030】
角度補正において、座標系の回転角度は、対象物の無損失誘電材料の変化が角度補正されたRe(実数成分)信号に現れないように選択される。
【0031】
この目的は、計測ポイントに対して無損失の誘電率のみの変化を生むことによって、例えば、紙の上面に向かってポイントを下げることにより達成される。この後、角度補正されたRe信号とIm(虚数成分)信号が分析される。角度αは、調整によって引き起こされる変化がIm信号にのみ現れるか、Re信号の最小値に達するまで調整される。変化が符号においてのみ現れる補正後に、前記Re信号は計測される。
【0032】
図5は、50MHzで動作するアドミタンス・ポイントで薄いプラスチックを介して符号を走査する検査を示す。たとえ虚数成分50が実数成分51よりも明らかに強いとしても、虚数成分50の雑音はとても大きいことが分かる。これは、紙の粗さによって引き起こされる。符号の走査の前に、実数成分51は計測され、虚数成分50は約28°の角度補正によって補正された。角度補正がなければ、両方の成分が容量変調によって主に確定されるであろう。
【0033】
図6は、アドミタンスの実数成分60のみを示す。本件において、符号の伝導率が最適化されていないにもかかわらず、実数成分の信号雑音比はとてもよい。要するに、この計測においては、紙の上面の雑音はデジタル化の使用によって確定される。雑音の総量の少なさは、粗末な符号でさえも読み取れるように、トリガーレベルを実数成分のゼロポイントに近づけるように定めることができるという事実によってもたらされる。
【0034】
図7は、符号が至近状態から読み取られるが、紙の粗さのせいで符号が“斑点あり状態”となっている特別なケースを示す。この特別なケースにおいては、実数成分71の虚数成分70に対する比は最適ではないので、実数成分71は虚数成分70よりも大幅に小さいままである。一方で、符号が“斑点あり状態”となっているので、両方とも符号の上面で雑音が多い。このような状況においては、計測に虚数成分も含めることが最良である。この、符号の上面で両方の雑音が大きいとみなされる状況は、図4に示されている。
【0035】
これらの計測において、符号の伝導率が大きすぎ、このために、虚数成分から取得される信号が優勢であることに留意すべきである。
【0036】
図8は、一方、典型的な計測状況を示す。破線は虚数成分を表し、実践は計測したインピーダンスの実数成分である。図を見ても分かるように、実数成分の信号雑音比は虚数成分の信号雑音比よりも明らかによい。
【0037】
本方法の一つの中心思想は、実数成分と虚数成分をお互いに区別するように、計測ヘッドの役割を果たすペンの較正を行うことである。無損失の誘電表面にセットされたときに、前記ペンが実数成分に変化を生まないように、補正角度を調整することによってこのことをなしうる。別の方法は、誘電表面をこすって、表面を横切って走査するとき実数成分で変動が起きないことを確保することである。実際の計測状況において、実数成分は紙の表面の上に定め直され、そして、トリガーレベルがあらかじめ定められるか、あるいは、アルゴリズムが信号強度に基づく適合するトリガーのレベルを求める。実数成分の雑音は小さいので、トリガーレベルをゼロにとても近づけて定めることができる。符号の伝導率に誤差があるか、符合が“斑点あり状態”となっている状況でのみ、実数成分の変調の代わりにベクトルの長手方向の変調を使用することは価値がある。原則として、信号雑音比が最適化されるように、お互いに適合する比率で実数成分と虚数成分の長さが重みづけされることによって、符号は復調されうる、と一般的にみなされる。
【0038】
原則として、アドミタンスの実数成分と虚数成分から符号の正確な伝導率を計測できる。この記載は数学的にとても難しい。なぜなら、領域が分割されている。この記載はペンの平均距離、電極の幅と比較した符号の幅等によって決定する。しかしながら、もしも特定のアプリケーションのためにペンを較正するならば、符号の上面と外側の変数rの変化が距離の小さな変化と無関係であるように、実験的に(あるいはFEM(有限要素法)計算を使用して数値的に)次式を求めることができる。

【0039】
これは単に両方の項が距離に比例する事実のためである、それゆえ、両方の変数を使用することによって、距離の変化を消去することができる。問題の方法は、符号の絶対的な抵抗率を計測しないが、代わりに符号や紙の抵抗率の差に比例することに留意すべきである。もしもセンサー情報を計測するなら、そのようなより正確な伝導率の計測は重要である。しかしながら、もしも計測線に加えて、その伝導率が分かっている基準線が符号に設置されるか、あるいは、もしもその数値データが符号情報に関連して与えられるならば、センサー情報の計測結果を実数成分の計測に戻すことができる。この場合は、センサーの抵抗分の抵抗値rをアドミタンスYの実数成分と虚数成分の方程式から算出することができる。

【0040】
この方程式において、添字refは参照符号の計測結果を示し、添字aはセンサーの計測結果を示す。もちろん、前記方程式は、前記参照符号が前記センサーの形状と類似した形状を有する場合のみ、確実に使用することができる。もしも実数成分か虚数成分のどちらかがアドミタンスに対して支配的であるならば、前記方程式はもちろん簡約される。一方、前記参照符号と前記センサーの両方の上面で、虚数成分がほぼかわらないことはよく起こる。そして、この理由によって、前記センサーの大まかな伝導率は、多くの場合単純な計算によって得られる。式4においては、アドミタンスYは角度補正後のアドミタンスを示すことに留意すべきである。
【0041】
前記符号はいくつかの異なる方法で作ることができる。ひとつの可能性は“複写”すること、バーコードで使用される方法である。ここで、しかしながら、ペンやマウスで走査するときに起きる速度変化を取り除く自然な方法を容認する方法が導入される。さらに、前述の方法は紙のインピーダンスに近づくように定められたトリガーレベルに基づいていない。したがって、 “ゼロ基準”としての符号を使用しない図2の符号において、情報は線の幅変調に保存される。そして、伝導線の幅は一定である。もしも、符号(非伝導材料)の時間の間に蓄積する試料の数を分け、そして、これと、試料の数に近づく伝導符号の最大値か、あるいは、手近な導電領域から蓄積された試料の数の平均の数を分けるならば、二つの線のお互いからの間隔を示す標準化した符号情報を、隣接する線の幅から獲得するだろう。この数は速度とは無関係である。一方で、既知の符号と固定されたトリガーレベルを使用すれば、長い符号と短い符号の比率が一定であり、そしてそのことが検出か誤読取を可能にする。このタイプの符号化は、もしも線の幅が最小化されるならば、読取られる表面の符号よりも混じりけのない紙があり、符号を見え難く保つことができる。長時間をかけ、よい材料を用いれば、40マイクロメートル幅の線さえも達成できる。その場合は、符号の可視性はより低下するだろう。適切な短い符号の幅は、導電領域の幅と同じ階数である。そして、それに応じて広い間隔が、読取の信号雑音比と選択された誤差補正アルゴリズム次第で1.5〜3倍幅となりうる。もしも倍率が1.5とするだけでも、伝播の単位当たり1/2.25の情報密度を獲得する。例えば、40マイクロメートル幅の線は1/90 ビット毎マイクロメートルで伝導するだろう。すなわち、96ビットのEPCコードは約9ミリ長の符号を必要とする。実際には、ペンのようなポイントでの好ましい走査長は3〜5センチメートルである。だから、EPCコードは少なくとも250マイクロメートルの符号幅を要求されるだろう。たとえより長い距離をペンで走査することができ、殊に、もしマウス型のインターフェイスを使用したとしても、当該距離は容易に5センチメートル〜10センチメートルであることができる。このことは、たとえ大きなビット数であっても電子的に符号化できることを意味する。さらに、二次元符号が類似の方法からなっていたならば、情報量はその何倍もとなりうる。
【0042】
本発明のひとつの実施例によれば、符号の読取はしたがって以下のように最適化することができる。ひとたび電極構造と、符号からの距離と、読取周波数とが安定すると、静電容量のリアクタンスが伝導インクの抵抗と同じ階数であるように、インクの伝導率は最適化される。計測用電子機器を用いて、計測されたアドミタンスの実数成分と虚数成分は、実数成分が損失のみを計測するように、角度補正によって修正される。これは、ポイントを非伝導誘電表面の近くに持っていくことによって、簡単に見ることができる。前記補正は容量ブリッジに関連して、あるいは混合後にアナログであってよい。前記補正はまたAD補正後はデジタル処理されてもよい。角度補正後に、符号の解釈は主に実数成分からなる。もしも、例えば、インクの起点の調査のために伝導率のよりよい情報を必要とするならば、アドミタンスを用いて、インピーダンスの実数成分を算出し、それから符号の伝導率を決定することができる。
【0043】
本発明はまた以下のようにも表現できる。計測される誘電材料(紙、板、プラスチック)の誘電率は、損失を伴う要素と無損失の要素を含む複合体である。本発明における読取器はその両方を計測する。無損失の要素は分極からなる。損失を伴う要素は分極に関係する損失か、伝導性損失のどちらかからなる。無塵紙の誘電率はほとんど完全に無損失である。
【0044】
例えば図3aと図3bの電極5と4によって示される読取器のポイントを、符号のない場所の計測対象(紙、板、プラスチック)の表面の上で動かすとき、読取器のポイントによって計測される無損失の誘電率に比例する信号は以下の理由によって変化する。

1.紙の繊維の働きによって、誘電率が異なるポイントに変化する。

2.紙に吸収された水分が異なる様式、異なる場所で誘電率を変化させる。

3.ポイントが傾くとき、ポイントから紙への接続が変化し、信号に影響を与える。

損失を伴う誘電率に比例する信号は全くない。
【0045】
この無損失の誘電率に比例する信号は、角度補正された信号(Re origとIm orig)の両方に現れる。それは変調と復調の間の位相差による。補正角度αを変えることで、この位相差を変えることができる(座標の回転とも呼ばれる)。角度を変えることで、新しい信号ReとImを形成することができる。適合する角度を用いて、無損失の誘電率の変化にもたらされた信号はIm成分にのみ現れる。同時に、Re信号から完全に消える。
【0046】
したがって、実際には角度補正は、読取器を無塵紙の上で動かすことと、前記移動によって引き起こされる変化が実数成分にのみ現れるまでか、もし虚数成分に現れるなら、最小限で極小さいように前記角度αを調整することによって行われる。その場合、実数成分はそれゆえにインピーダンスの損失を伴う抵抗成分のみを計測する。
【0047】
したがって、符号においては、損失を伴う誘電率のみがあるので、Re信号は符号においてのみ変化する。
【0048】
上記の角度補正作業は本来一般的に1回限りであり、一度だけ行われるか、あるいは、比較的とびとびの間隔(月に一度から年に一度)で繰り返される必要がある。
【0049】
本発明は、電圧か電流の入力を使用して実行することができる。その場合では、電圧入力が計測電極間の電流を計測するために使用され、電流入力が計測電極間の電圧を計測するために使用される。計測変数(電流か電圧)を計測信号としてより広く参照することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極(4,5)を用いて、計測される符号(11)に交流電気信号を流し、
前記電極(4,5)を通って流れる電流か、或いは前記電極間の電圧を計測する電子符号の読取方法において、
電流またはそれに応じた電圧の実数成分(8)と虚数成分(9)を規定し、
前記電極(4,5)が本質的に無損失な表面の上にあれば、電流またはそれに応じた電圧の実数成分(8)と虚数成分(9)に対して、その電流または電圧の実質的な変化が、当該電流または電圧の前記虚数成分(9)のみに生じるように、角度補正を行なうことを特徴とする電子符号の読取方法。
【請求項2】
前記計測装置(1)によって確かめられるキャパシタンスのリアクタンスが、前記計測装置(1)によって確かめられる伝導インクの抵抗と同じ桁数であるように、計測装置(1)の計測周波数と、前記符号(11)から計測ヘッドの読取距離と、前記符号(11)の抵抗とを選択することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計測が接触距離からの走査計測として実行されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記符号は、導電符号線の間の非導電領域を変化させることによって形成されることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の方法。
【請求項5】
手動走査における走査速度の変化が考慮されることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記計測装置(1)に受け取られる電流が次式で表わされ、

該式において、RとCが読取される印のインピーダンスの抵抗分と容量分を表わすものとすると、
計測システムの読取距離と、符号の電気的性質と、計測周波数が、r=1の条件をできるだけ正確に満たすように選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記計測装置が無損失の誘電表面に配置されたときに、前記ペンが実数成分に変化を生まないように、補正角度を調整することによって前記計測装置が較正されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
誘電表面を擦り、その擦った表面を計測して、前記計測装置を調整することによって、前記擦った表面上を走査するときに、計測結果の実数成分に変動が起きないように前記計測装置が較正されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
計測中に、計測結果の実数成分(8)を、符号化されていない材料(8)の表面に定め直し、前記電子機器(1)の計測開始のトリガーレベルを、前記定め直された実数成分(8)に基づいてあらかじめ定めることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
計測中に、アルゴリズムが信号強度に基づき、適合する計測開始のトリガーレベルを求めることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
電極(4,5)を用いて、計測される符号(11)に交流電気信号を流す手段と、
電極(4,5)を通って流れる電流か、或いは前記電極間の電圧を計測する手段と、を備える電子符号の読取装置において、
電流または電圧の実数成分(8)と虚数成分(9)を規定する手段(2,4,5,3,6,7)と、
前記電極(4,5)が本質的に無損失な表面の上にあれば、電流または電圧の実数成分(8)と虚数成分(9)に対して、その電流または電圧の実質的な変化が、当該電流または電圧の前記虚数成分(9)のみに生じるように、角度補正を行なう手段を備えることを特徴とする電子符号の読取装置。
【請求項12】
前記計測装置(1)によって確かめられるキャパシタンスのリアクタンスが、前記計測装置(1)によって確かめられる伝導インクの抵抗と同じ桁数であるように、計測装置(1)の計測周波数と、計測ヘッドの前記符号(11)からの読取距離と、前記符号(11)の抵抗とを選択する手段を備えることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
接触距離からの計測を走査計測として実行する手段を備えることを特徴とする請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
導電符号線(11)の間の非導電領域を規定することによって、前記符号を読取る手段を備えることを特徴とする請求項11,12又は13に記載の装置。
【請求項15】
手動走査における走査速度の変化を考慮する手段を備えることを特徴とする、請求項11,12,13又は14に記載の装置。
【請求項16】
前記計測装置(1)に受け取られるか電流が次式で表わされ、

該式において、RとCが読取される印のインピーダンスの抵抗分と容量分を表わすものとすると、
計測システムの読取距離と、符号の電気的性質と、計測周波数が、r=1の条件をできるだけ正確に満たすように選択する手段を備えることを特徴とする請求項11〜15のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
前記計測装置が無損失の誘電表面に配置されたときに、前記計測装置(1)の読取ペン(4,5)が実数成分に変化を生まないように、補正角度を調整することによって較正する手段を有することを特徴とする請求項11〜16のいずれか一つに記載の装置。
【請求項18】
誘電表面を擦り、その擦った表面計測し、前記計測装置を調整することによって、前記擦った表面上を走査するときに、計測結果の実数成分に変動が起きないように、前記計測装置を較正できる手段を備えることを特徴とする請求項11〜17のいずれか一つに記載の装置。
【請求項19】
計測中に、計測結果の実数成分(8)を、符号が含まれていない材料(8)の表面の上に定め直すことができ、前記電子機器(1)の計測開始のトリガーレベルを、前記定め直された実数成分(8)に基づいてあらかじめ定めることができる手段を備えることを特徴とする請求項11〜18のいずれか一つに記載の装置。
【請求項20】
計測中に、信号強度に基づき、適合する計測開始のトリガーレベルをアルゴリズムを用いて見つけることができる手段を備えることを特徴とする請求項11〜19のいずれか一つに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−521338(P2011−521338A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508965(P2011−508965)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050398
【国際公開番号】WO2009/138571
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(301036984)
【Fターム(参考)】