説明

電子線照射型無菌真空充填方法及びその装置

【課題】電子線を照射して滅菌処理を施した容器内に、無菌状態下で液体を充填できて、しかも経済的に製作できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】容器1を搬送する搬送路10の端部に、開閉可能な搬入側及び搬出側のシャッタ21A、21Bと22A、22Bを備える第1及び第2の滅菌充填ライン20A、20Bを併設している。搬送路10の端部に振り分け機構11を設け、これを各滅菌充填ライン20A、20B側に切り換えて複数の容器1を搬入して収容する。各滅菌充填ライン20A、20Bにはそれぞれ、各容器1を収容した内部を交互に真空引きする真空ポンプVP等の真空引き手段、収容した各容器1に対して電子線を照射して滅菌する電子線照射手段23A、23B、連結され真空引き後に動作して各容器1に対して同時に液体貯蔵タンク26から液体を充填する充填機構部27A、27Bを設け、真空滅菌処理操作と真空充填操作を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子線照射型無菌真空充填方法及びその装置に係り、電子線を照射して滅菌処理した容器に無菌状態で液体を充填できる電子線照射型無菌真空充填方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、プラスチック製の開口した容器は、飲料や食品や医薬品、更に化粧品等の液体を充填するために使用されている。この種の容器は、液体の充填前に内部を滅菌処理して無菌状態にし、その後容器内に液体を充填して密封している。液体を充填に使用する容器の滅菌処理装置は、設備が大掛かりな薬剤を用いるものに代え、高速で搬送する容器の内外面に電子線を照射して滅菌することが提案されており、容器に液体を真空中で充填する装置や、液体の充填量を適切にする装置も提案されている。
【0003】
例えば特許文献1の電子線照射装置は、プラスチック製の容器の搬送路中に、減圧状態を維持する照射処理槽を配置し、これに設けた電子線照射手段から容器に対して電子線を照射して滅菌処理し、次の充填工程に搬出するようにしている。しかも、この装置では照射処理槽の前後に設ける圧力調整槽に清浄空気を流し、滅菌処理工程中では無菌状態を維持することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2の液体充填装置では、プラスチック製の小容器に液体を真空充填するため、液体槽と真空容器とをバルブを設けた連結管で接続し、真空容器中に多数の小容器を詰め込んでから真空ポンプで減圧した後、バルブを開放して液体槽から真空容器に液体を流入させて各小容器に一括充填することが記載されている。
【0005】
更に、特許文献3の液体充填装置では、容器に正確な液量の液体を充填するため、充填タンクと充填ノズル間を連通する液通路に、開閉する充填バルブを設けて容器内へ液体を充填できるようにしている。そして、充填ノズルに隣接して吸引ノズルの液吸出口を開口させ、充填バルブの開閉及び吸引ノズルを真空ラインに導通させる切替制御を行わせる制御装置を有して構成し、大気圧下で容器内に多めに充填した液体を、真空引きにより所定の高さまでまで吸引することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−162647号公報
【特許文献2】特開昭63−203503号公報
【特許文献3】特許第3021129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1の電子線照射装置は、滅菌工程で連続して搬送されてくる各容器を、電子線の照射により滅菌処理してから、次の充填工程で容器内に液体を充填するものである。このため、搬送路中に容器滅菌装置と液体充填装置とを別々に設置せねばならず、製造装置の全体が大型化してしまうし、液体充填装置を使用して液体を容器内に充填する際、無菌状態を維持する構造が複雑となる欠点がある。
【0008】
また、連続して容器を滅菌処理する上記した電子線照射装置に、特許文献2に記載された小容器内に液体を真空充填する技術を組み合せることは難しく、また特許文献3に記載された充填装置を組み合せるには全体構造が複雑となる問題があった。
【0009】
本発明の目的は、滅菌処理を施した容器内に、無菌状態下で液体を充填できる電子線照射型無菌真空充填方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、電子線の照射で滅菌処理でき、しかも経済的に製作できる電子線照射型無菌真空充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電子線照射型無菌真空充填方法は、搬送路の端部の振り分け機構を切り換え操作し、搬送されてくる複数の容器を第1及び第2の滅菌充填ラインに交互に振り分けて搬入して収容し、複数の前記容器を収容した一方の前記滅菌充填ライン内を真空引きしてから、前記各容器に対して電子線照射手段から電子線を照射して滅菌する操作を行うとき、他方の前記滅菌充填ラインでは液体貯蔵タンクの液体を充填機構部により各容器に充填してから、前記各容器を外部に搬出する操作を行わせ、前記各滅菌充填ラインで交互に容器の滅菌及び液体の充填操作を繰り返すことを特徴としている。
【0012】
また、本発明の電子線照射型無菌真空充填装置は、容器を搬送する搬送路の端部に、開閉可能な搬入側及び搬出側のシャッタを備える第1及び第2の滅菌充填ラインを併設し、前記搬送路の端部に設けられて前記各滅菌充填ライン側に切り換えて複数の前記容器を搬入して収容する振り分け機構を設け、前記各滅菌充填ラインにはそれぞれ、複数の前記容器を収容した内部を交互に真空引きする真空引き手段と、内部に収容した前記各容器に対して電子線を照射して滅菌する電子線照射手段を設けると共に、連結され真空引き後に動作して前記各容器に対して同時に液体貯蔵タンクから液体を充填する充填機構部を設けて構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子線照射型無菌真空充填方法によれば、搬送路の端部に複数の容器を収容する第1及び第2の滅菌充填ラインを併設して交互に操作し、内部に収容した複数の容器に対して真空状態において電子線照射による滅菌処理と液体貯蔵タンクの液体の充填処理、さらに各容器の外部に搬出までを交互に行うようにしたので、各容器を無菌状態に維持したままで内部に液体を充填できる利点がある。
【0014】
また、本発明の電子線照射型無菌真空充填装置によれば、搬送路の端部に複数の容器を収容する第1及び第2の滅菌充填ラインを併設し、各滅菌充填ラインに真空引き手段や電子線照射手段や充填機構部をそれぞれ設け、収容した各容器の真空殺菌処理を行う部分と真空充填処理を行う部分を一体化したので、装置全体を小型化して据付面積の低減でき、しかも経済的に製作できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子線照射型無菌真空充填装置の一実施例を一部断面して示す概略平面図である。
【図2】図1の一部断面した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、搬送路の端部に複数の容器を収容する第1及び第2の滅菌充填ラインを併設している。各滅菌充填ラインには、真空引き手段や各容器に対する電子線照射手段及び充填機構部をそれぞれ設けており、搬送路の端部の振り分け機構を切り換えて各滅菌充填ライン内に複数の容器を収容し、真空滅菌処理から真空充填処理と各容器の外部への搬出操作を交互に行わせている。
【実施例1】
【0017】
本発明に使用する電子線照射型無菌真空充填装置を図1及び図2に示している。この装置は、搬送路10で搬送されてくる容器1の処理速度が100〜200本/分程度である無菌充填を行う2ラインバッチ方式、即ち一方のラインにて真空引きを行っているとき、他方のラインにおいて各容器に対して電子線を照射して滅菌処理を行い、電子線照射後の真空開放の直前に液体を真空充填する一連の操作を、各ラインで交互に繰り返すものである。なお、容器1の処理速度が更に増加した場合には、4ラインバッチ方式や6ラインバッチ方式等の複数ライン毎の増設で対応することが可能である。
【0018】
容器1を搬送する搬送路10の終端に、矢印で示す如く左右に回転動作する振り分け機構11を設けており、また搬送路10の終端に第1及び第2の滅菌充填ライン20A、20Bを併設している。各滅菌充填ライン20A、20Bは、搬送分岐路12A、12Bを介して搬送路10に連なっており、振り分け機構11が動作したとき、矢印で示す如く搬送路10で搬送されてくる複数の容器を、各滅菌充填ライン20A、20Bに振り分けて搬入させ、内部に収容する。
【0019】
第1及び第2の滅菌充填ライン20A、20Bは、容器1の搬入側及び搬出側に開閉可能なシャッタ21A、21Bと22A、22Bを備えており、また、各滅菌充填ライン20A、20Bには、複数の容器を搬入する双方の内部を交互に真空引きするため、真空引き手段を設けている。
【0020】
図1の真空引き手段は、それぞれバルブ25A、25Bを有する配管24A、24Bと真空ポンプVPとから構成された例であり、各配管24A、24Bをそれぞれ滅菌充填ライン20A、20Bと接続している。バルブ25A、25Bは、交互に開閉操作されて滅菌充填ライン20A、20B側内を真空ポンプVPにより交互に真空引きを実施する。
【0021】
各滅菌充填ライン20A、20Bにはそれぞれ、図2に示す如く上方に電子線源(図示せず)を有する電子線照射手段23A、23Bを設けている。滅菌充填ライン20A、20B内が真空を維持した状態のとき、電子線照射手段23A、23Bから内部に収容された複数の容器1に対して電子線を照射し、滅菌処理が行えるようにしている。
【0022】
また、各滅菌充填ライン20A、20B内には、それぞれ充填機構部27A、27Bを設けており、各充填機構部27A、27Bはそれぞれ注入バルブ28A、28Bを経て液体貯蔵タンク26に連結している。これら各充填機構部27A、27Bは、各滅菌充填ライン20A、20B内を真空引き手段で真空引きした後に回転動作し、滅菌充填ライン20A、20Bに収容した各容器1内に同時に液体を充填できるものを使用する。このように真空引き後の状態を利用するので、各容器1へ液体を充填する際に、液体の駆動用ポンプが不要にできる。
【0023】
本発明の電子線照射型無菌真空充填方法は、各滅菌充填ライン20A、20B内に容器1が収容されてない状態の運転開始前に、電子線照射手段23A、23Bから電子線の照射を行い、滅菌充填ライン20A、20Bの内部を滅菌状態にしてから、下記のような手順で交互に繰り返して実施する。
【0024】
まずステップ1で、滅菌充填ライン20Aの搬入側のシャッタ21Aを開き、搬出側のシャッタ22Aを閉じた状態で、振り分け機構11を切り換え、搬入路10から複数の容器1を一方の滅菌充填ライン20Aに搬入して収容する。このとき、バルブ25Aは閉じ、バルブ25Bは開いて真空ポンプVPを動作させ、他方の滅菌充填ライン20B側はこの内部の真空引きを行っている。
【0025】
次のステップ2では、滅菌充填ライン20A内に複数の容器1の収容が終了した時点で、搬入側のシャッタ21Aを閉じ、バルブ25Aを開いて真空ポンプVPを動作させ、滅菌充填ライン20A側の内部の真空引きを開始する。このとき、真空引きが終わった滅菌充填ライン20B側では、電子線照射手段23Bから電子線を照射し、内部に収容した各容器1の滅菌処理を行っている。
【0026】
ステップ3では、滅菌充填ライン20A側内が所定の真空度に達したら、電子線照射手段23Aから電子線を照射し、内部に収容した各容器1を滅菌する。このとき、注入バルブ28Aを閉じ同時に注入バルブ28Bを開き、他方の滅菌充填ライン20B側の充填機構部27Bを動作させてから注入バルブ28Bを開き、液体貯蔵タンク26の液体を各容器1対して真空充填を行っている。
【0027】
その後のステップ4では、バルブ25Aを閉じ同時に注入バルブ28Aを開き、滅菌充填ライン20A側内の各容器1に対して、液体貯蔵タンク26から液体を真空充填する。このとき、他方の滅菌充填ライン20B側はバルブ25Bを閉じ、搬出側のシャッタ22Bを開いて、内部の全ての容器1を矢印で示す如く次の工程に搬出を行っている。
【0028】
最後のステップ5では、滅菌充填ライン20A側はバルブ25Aを閉じ、搬出側のシャッタ22Aを開いて、内部の全ての容器1を矢印で示す如く次の工程に搬出する。このとき、他方の滅菌充填ライン20B側は、搬入側のシャッタ21Bを開き、搬出側のシャッタ22Bを閉じてから、振り分け機構11を切り換え、搬入路10から複数の容器1を他方の滅菌充填ライン20Bに搬入して収容する。その後、ステップ1に記載した滅菌充填ライン20B側内部の真空引きの操作が行われる。
【0029】
上記したステップ1から5の操作は、滅菌充填ライン20A及び20B側で交互に繰り返され、複数の容器1を収容した内部の真空引きを行うと共に、各容器1の電子線による滅菌処理と、真空状態を活用した各容器1への液体の無菌真空充填処理が連続して実施される。
【符号の説明】
【0030】
1…容器、10…搬送路、11…振り分け機構、20A、20B…滅菌充填ライン、21A、21B、22A、22B…シャッタ、23A、23B…電子線照射手段、26…液体貯蔵タンク、27A、27B…充填機構部、VP…真空ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路の端部の振り分け機構を切り換え操作し、搬送されてくる複数の容器を第1及び第2の滅菌充填ラインに交互に振り分けて搬入して収容し、複数の前記容器を収容した一方の前記滅菌充填ライン内を真空引きしてから、前記各容器に対して電子線照射手段から電子線を照射して滅菌する操作を行うとき、他方の前記滅菌充填ラインでは液体貯蔵タンクの液体を充填機構部により各容器に充填してから、前記各容器を外部に搬出する操作を行わせ、前記各滅菌充填ラインで交互に容器の滅菌及び液体の充填操作を繰り返すことを特徴とする電子線照射型無菌真空充填方法。
【請求項2】
容器を搬送する搬送路の端部に、開閉可能な搬入側及び搬出側のシャッタを備える第1及び第2の滅菌充填ラインを併設し、前記搬送路の端部に設けられて前記各滅菌充填ライン側に切り換えて複数の前記容器を搬入して収容する振り分け機構を設け、前記各滅菌充填ラインにはそれぞれ、複数の前記容器を収容した内部を交互に真空引きする真空引き手段と、内部に収容した前記各容器に対して電子線を照射して滅菌する電子線照射手段を設けると共に、連結され真空引き後に動作して前記各容器に対して同時に液体貯蔵タンクから液体を充填する充填機構部を設けて構成したことを特徴とする電子線照射型無菌真空充填装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−1108(P2011−1108A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147199(P2009−147199)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】