説明

電子装置、FPGAのバージョン確認方法

【課題】電源を投入することなくFPGAのバージョンを目視により確認することができ、表示されたバージョンと実際のバージョンが異なる場合にはそのことをユーザに通知することができる電子装置等を提供すること
【解決手段】電子装置は、FPGAに電気的に接続され、FPGAのバージョンを人間が視認できるように表示するとともにFPGAが読み取ることができるように保持するバージョン表示部を備え、FPGAは、バージョンを記憶するバージョン記憶部を備え、電子装置に電源が投入されたときにバージョン表示部から読み取ったバージョンとバージョン記憶部に記憶されているバージョンとを比較し、両者が一致しない場合には、電子装置をリブートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPGA(Field Programmable Gate Array)に関し、特にFPGAに記憶された実行ファイルのバージョンを確認する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は回路も大規模かつ高速化、複雑化し、そういった回路から構成される装置には必ずといっていいほどFPGAが実装されている。FPGAを実装することにより、回路ミスやクロック遅延などを自由にデバック、調整することが可能になり基盤やゲートアレイの作り直しを防ぐことが可能になった。反面、その中身の実行ファイルのバージョンもデバックが進むにつれて増えていくため、評価している装置に実装されているFPGAのバージョンを確認する方法が必要となる。
【0003】
特許文献1には、デジタル通信装置の管理版数をレジスタに記憶し、これを通信回線を通して遠隔地から参照する方式が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ボード上のFPGAに記憶されたバージョン情報と制御機器に予め設定したバージョン情報を比較し、二つのバージョンが相違する場合には、相違する旨とバージョン番号をユーザに通知するバージョン監視装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】昭63−231657号公報
【特許文献2】特開2002−169701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術によれば、FPGAのバージョンを確認するためには装置の電源を投入する必要があり、電源投入前に目視によりバージョンを確認することができないという問題がある。
FPGAにバージョンを書いたラベルを貼り、目視で確認するという方法もあるが、何十、何百回とバージョンが変わる度にラベルを貼りかえるのもラベルの無駄であり、また実際にラベルとFPGAの中身の実行ファイルのバージョンが一致しているのかが保証されているわけではない。
【0007】
そこで、本発明は、電源を投入することなくFPGAのバージョンを目視により確認することができ、表示されたバージョンと実際のバージョンが異なる場合にはそのことをユーザに通知することができる電子装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の電子装置は、FPGAに電気的に接続され、FPGAのバージョンを人間が視認できるように表示するとともにFPGAが読み取ることができるように保持するバージョン表示部を備え、FPGAは、バージョンを記憶するバージョン記憶部を備え、電子装置に電源が投入されたときにバージョン表示部から読み取ったバージョンとバージョン記憶部に記憶されているバージョンとを比較し、両者が一致しない場合には、電子装置をリブートする。
【0009】
上記電子装置において、FPGAは、バージョン表示部から読み取ったバージョンとバージョン記憶部に記憶されているバージョンが一致せず、かつ、バージョン表示部から読み取ったバージョンが所定のバージョンである場合には、電子装置をリブートしないようにしてもよい。
【0010】
本発明の第2の電子装置は、FPGAに電気的に接続され、FPGAのバージョンを人間が視認できるように表示し、かつ、FPGAが読み取ることができるように保持するバージョン表示部と、FPGAと電気的に接続されたLEDを備え、FPGAは、バージョンを記憶するバージョン記憶部を備え、電子装置に電源が投入されたときにバージョン表示部から読み取ったバージョンとバージョン記憶部に記憶されているバージョンとを比較し、両者が一致しない場合には、LEDを所定の態様で点灯させる。
【0011】
上記第1または第2の電子装置において、バージョン表示部は、複数の2ピンポストとこの2ピンポストに着脱可能で2ピンポストをショートさせるストラップまたは複数のディップスイッチまたは複数のパッドと各パッドに着脱可能なチップ抵抗により構成してもよい。
【0012】
本発明の第3の電子装置は、FPGAに電気的に接続されFPGAのバージョンを記憶するメモリと、このメモリに電気的に接続された複数のLEDと、メモリ及びLEDに電源を供給するバッテリーとを備え、メモリは、メモリに記憶されたバージョンに応じてLEDを点灯または消灯させる。
【0013】
本発明のFPGAのバージョン確認方法によっても上記電子装置と同様に上記課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子装置の電源を投入することなくFPGAのバージョンを目視により確認することができ、表示されたバージョンと実際のバージョンが異なる場合にはそのことをユーザに通知することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の第1の実施例の構成について説明する。
図1のプリント配線基板1上にはFPGA6と2ピンポスト2、2ピンポスト2をショートさせる為のストラップ3、ポストとFPGA6とを結ぶパターン配線5がそれぞれ実装されている。プリント基板1上には、図示しない回路部品も実装され電子装置を構成している。
2ピンポスト2は複数個実装されており、各2ピンポスト2にストラップ3が取り付けられているか否かによりFPGA6に書き込まれている実行ファイルのバージョンを表している。実施例では、6個のポスト端子2を実装し、バージョンの整数桁を2つのポスト端子2が、小数桁を4つのポスト端子2が示す構成になっており、整数桁と小数桁の区別がつきやすいように整数桁と小数桁の間にシルク文字で小数点4を表記してある。
また、FPGA6のレジスタにもバージョンが記憶されている。
【0016】
次に、第1の実施例の動作の説明を図1と図2のフローチャートを使って説明する。
まず、利用者は、プリント基板1に実装されたFPGA6の実行ファイルのバージョンを確認するためにFPGA6にパターン配線5によって接続された2ピンポスト2を目視する。図1では2ピンポスト2は6個実装されており、バージョンの整数桁を示すために左側の2個、小数桁を示すために右側の4個のポストを使用する。また整数桁と小数桁の区別をするために、シルクにて小数点4を表記してある。ひとつのポストはそれぞれ1ビットの意味を持ち、実施例の場合は整数桁が2つのポストを使用しているので0〜3、小数桁は4つのポストを使用しているので0〜15を示すことが可能であるから、0.00〜3.15までの計64個のバージョンを示すことができる。各ポストが1か0のどちらかを示しているかはポストを導通させるストラップ3を差し込んであるかないかで確認する。ストラップのあるポストは1、ないポストは0を示す。この場合、FPGAの実行ファイルのバージョンは1.03となる。目視だけでバージョンを確認したい場合はこれでもいいが、実際に中身の実行ファイルのバージョンと一致しているかは電源を投入して確認することができる。
【0017】
FPGA6は、電源を投入されると2ピンポスト2により表わされるバージョンを読み込む(S1)。次に、S1で読み込んだバージョンとFPGA6内に記憶しているバージョンとを比較する(S2)。両者が一致する場合には、通常の動作を行い(S3)、一致しない場合にはリブートする(S4)。
【0018】
本実施例による効果はFPGA6に書かれている実行ファイルのバージョンを基盤の電源を投入することなく確認できることである。これはFPGA6のバージョンを2ポスト2を複数個実装しストラップ3のあるなしにより2進表示で示すことを可能にしたからである。
また、目視したバージョンと実際のFPGA6の中身のファイルバージョンが一致しているかどうかを電源投入して確認することも可能である。これは電源投入時にFPGA6にポストの示すバージョンとFPGA6に記憶されている実行ファイルの実際のバージョンを比較する機能を持たせたからである。
これらの効果より、今まで、例えばパーソナルコンピュータをFPGA6に繋いでバージョンを示すラベルと実際のバージョンとの比較をするなどして行っていた作業時間を大幅に短縮することができる。
【0019】
図3に本発明の第2の実施例を示す。
この実施例では、図1での2ピンポスト2をディップスイッチ7に置き換え、小数点の位置をシルク4aで表記したものである。第1の実施例と同様にディップスイッチのオン・オフによってFPGAのバージョンを表示する。
ディップスイッチに置き換えることで、バージョンの設定変更が容易に行えるようになるとともに、SMD(Surface Mount Device)部品を使えば多層基盤においてパターン配線の配線範囲への影響も軽減させることができる。
【0020】
図4に本発明の第3の実施例を示す。
この実施例では、ポストやディップスイッチの代わりにチップ抵抗9を使用している。チップ抵抗はパターン10を介して電源に繋がるビア11に接続されプルアップされる。チップ抵抗が外されている箇所はチップのパッド8のみが残るため、オープンとなる。チップ抵抗を使うことにより設置面積を縮小させることができ、更に部品コストを安価に抑えることができる。
【0021】
図5に本発明の第4の実施例を示す。
この実施例では、図1の第1の実施例の構成に加え、FPGA6とパターン配線5で接続されたLED(Light Emitting Diode)12を実装し、2ピンポスト2で示されたバージョンと実際のFPGAの実行ファイルのバージョンが異なっていた場合にLED12を点滅等させてバージョンが異なっていることを利用者が容易に知ることができるようにしている。
【0022】
第4の実施例の動作を示すフローチャートを図6に示す。
FPGA6がポストにより示されたバージョンを読み込み(S11)、FPGA6内に記憶されたバージョンと比較し(S12)、両者が一致した場合は通常動作をする(S13)ことは、図2に示した第1の実施例の場合と同一である。S12においてバージョンが不一致の場合には、LED12を点滅させる等所定の態様で点灯させる(S14)。
【0023】
第2及び第3の実施例でも、上記と同様にLEDを設けてバージョンの不一致をユーザに通知するように構成することができる。
【0024】
図7に本発明の第5の実施例を示す。
この実施例の構成は第1の実施例と同様であるが、FPGA6にバージョンの一致、不一致にかかわらず、強制的に電子装置を起動させる機能をもたせたものである。図7の実施例では、2ピンポスト2が所定の状態であるとき、例えばすべての2ピンポスト2が1を示す設定になっている場合には強制的に起動させることができる。
【0025】
第5の実施例のフローチャートを図8に示す。
FPGA6がポストにより示されたバージョンを読み込み(S21)、FPGA6内に記憶されたバージョンと比較し(S22)、両者が一致した場合は通常動作をする(S23)ことは、図2に示した第1の実施例の場合と同一である。S22においてバージョンが不一致の場合は、すべての2ピンポスト2が1を表わしているか否かを判定する(S24)。
すべての2ピンポスト2が1を表わしている場合には、バージョンが不一致でも強制的に起動させ通常動作を行う(S24の判定がイエス、S23)。そうでない場合は、リブートする(S24の判定がノー、S25)。
【0026】
第2及び第3の実施例でも、第5の実施例と同様に、ディップスイッチ7またはチップ抵抗9が所定の設定となっている場合にはバージョンが不一致でも強制的に起動させるようにすることができる。
【0027】
図9に本発明の第6の実施例を示す。
この実施例では、プリント基板1上にFPGA6と補助バッテリー13とフラッシュROM14とLED15を実装し、装置の主電源が切れた後でも補助バッテリー13がLED15とフラッシュROM14に電源を供給することによりバージョン情報を保持することを可能としたものである。
フラッシュROM14にFPGA6に記憶されている実行プログラムのバージョンを記憶しておき、上記の各実施例と同様にバージョンに応じてフラッシュROMがLED15を点灯・消灯させるように構成する。
補助バッテリー13は充電可能なので主電源が入っている間に充電され、主電源が切れた後も補助バッテリー13が放電するまでの間はFPGA6のバージョンを表示することが可能となる。
なお、FPGAのバージョンを記憶しておくメモリは、記憶内容の書き換えが可能なものであればフラッシュROM以外の種類のメモリを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施例の構成を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施例の構成を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施例の構成を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施例の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第5の実施例の構成を示す図である。
【図8】本発明の第5の実施例の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第6の実施例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 プリント配線基板
2 2ピンポスト
3 ストラップ
4 小数点
5 パターン配線
6 FPGA
7 ディップスイッチ
8 パッド
9 チップ抵抗
10 パターン配線
11 ビア
12 LED
13 補助バッテリー
14 フラッシュROM
15 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FPGAを備えた電子装置において、
前記FPGAに電気的に接続され、前記FPGAのバージョンを人間が視認できるように表示するとともに前記FPGAが読み取ることができるように保持するバージョン表示部を備え、
前記FPGAは、前記バージョンを記憶するバージョン記憶部を備え、前記電子装置に電源が投入されたときに前記バージョン表示部から読み取ったバージョンと前記バージョン記憶部に記憶されているバージョンとを比較し、両者が一致しない場合には、前記電子装置をリブートすることを特徴とした電子装置。
【請求項2】
前記FPGAは、前記バージョン表示部から読み取ったバージョンと前記バージョン記憶部に記憶されているバージョンが一致せず、かつ、前記バージョン表示部から読み取ったバージョンが所定のバージョンである場合には、前記電子装置をリブートしないことを特徴とした請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
FPGAを備えた電子装置において、
前記FPGAに電気的に接続され、前記FPGAのバージョンを人間が視認できるように表示し、かつ、前記FPGAが読み取ることができるように保持するバージョン表示部と、前記FPGAと電気的に接続されたLEDを備え、
前記FPGAは、前記バージョンを記憶するバージョン記憶部を備え、前記電子装置に電源が投入されたときに前記バージョン表示部から読み取ったバージョンと前記バージョン記憶部に記憶されているバージョンとを比較し、両者が一致しない場合には、前記LEDを所定の態様で点灯させることを特徴とした電子装置。
【請求項4】
前記バージョン表示部は、複数の2ピンポストとこの2ピンポストに着脱可能で前記2ピンポストをショートさせるストラップとにより構成されたことを特徴とした請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載の電子装置。
【請求項5】
前記バージョン表示部は、複数のディップスイッチにより構成されたことを特徴とした請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載の電子装置。
【請求項6】
前記バージョン表示部は、複数のパッドと各パッドに着脱可能なチップ抵抗とにより構成されたことを特徴とした請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載の電子装置。
【請求項7】
FPGAを備えた電子装置において、
前記FPGAに電気的に接続され前記FPGAのバージョンを記憶するメモリと、
このメモリに電気的に接続された複数のLEDと、
前記メモリ及び前記LEDに電源を供給するバッテリーとを備え、
前記メモリが、前記メモリに記憶されたバージョンに応じて前記LEDを点灯または消灯させることを特徴とした電子装置。
【請求項8】
電子装置が備えるFPGAのバージョンを確認する方法において、
前記FPGAに電気的に接続されたバージョン表示部に、前記FPGAのバージョンを人間が視認できるように表示するとともに前記FPGAが読み取ることができるように保持し、
前記FPGAが、前記電子装置に電源が投入されたときに前記バージョン表示部から読み取ったバージョンと前記FPGA内に予め記憶したバージョンとを比較し、両者が一致しない場合には、前記電子装置をリブートすることを特徴としたFPGAのバージョン確認方法。
【請求項9】
前記FPGAは、前記バージョン表示部から読み取ったバージョンと前記予め記憶したバージョンが一致せず、かつ、前記バージョン表示部から読み取ったバージョンが所定のバージョンである場合には、前記電子装置をリブートしないことを特徴とした請求項8に記載のFPGAのバージョン確認方法。
【請求項10】
電子装置が備えるFPGAのバージョンを確認する方法において、
前記FPGAに電気的に接続されたバージョン表示部に、前記FPGAのバージョンを人間が視認できるように表示するとともに前記FPGAが読み取ることができるように保持し、
前記FPGAが、前記電子装置に電源が投入されたときに前記バージョン表示部から読み取ったバージョンと前記FPGA内に予め記憶したバージョンとを比較し、両者が一致しない場合には、前記LEDを所定の態様で点灯させることを特徴とした請求項8または請求項9に記載のFPGAのバージョン確認方法。
【請求項11】
複数の2ピンポストと各2ピンポストに着脱可能で前記2ピンポストをショートさせるストラップとにより前記バージョンの表示及び保持を行うことを特徴とした請求項8ないし請求項10のいずれかひとつに記載のFPGAのバージョン確認方法。
【請求項12】
複数のディップスイッチにより前記バージョンの表示及び保持を行うことを特徴とした請求項8ないし請求項10のいずれかひとつに記載のFPGAのバージョン確認方法。
【請求項13】
複数のパッドと各パッドに着脱可能なチップ抵抗とにより前記バージョンの表示及び保持を行うことを特徴とした請求項8ないし請求項10のいずれかひとつに記載のFPGAのバージョン確認方法。
【請求項14】
電子装置が備えるFPGAのバージョンを確認する方法において、
前記FPGAに電気的に接続され前記FPGAのバージョンを記憶するメモリと、このメモリに電気的に接続された複数のLEDとにバッテリーから電源を供給し、
前記メモリが、前記メモリに記憶されたバージョンに応じて前記LEDを点灯または消灯させることを特徴としたFPGAのバージョン確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−146548(P2008−146548A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335642(P2006−335642)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】