説明

電子装置の熱対策構造

【課題】電子装置内の熱に弱い電子部品の防熱を行うことができる電子装置の熱対策構造を提供する。
【解決手段】筐体内に、隔壁によって隔てられ、筐体の外壁に密着した、電子部品を収容するための密閉された格納室を備え、格納室の隔壁に対応する内壁を、断熱材で覆うことで、格納室内の温度上昇を抑制して、電子部品の防熱を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の熱対策構造に関し、特に、基地局装置の熱対策構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末と無線通信を行う基地局等の電子装置では、高温度に弱い発振回路などの電子部品を、基地局筐体内の比較的周囲温度の低いところを部品設置場所にしている。
【0003】
また、従来、発振回路の温度変化に対する発振周波数の変動を抑制するために、例えば、発振回路を恒温槽に収納して、発振回路の温度変化を抑制し、発信周波数を安定化させるとか、あるいは、特許文献1に開示するように、発振回路に電圧制御型の発振回路を使用すると共に、発振回路に温度センサを設け、温度センサにて検出された発振回路の温度に応じて発振回路に入力する制御電圧を変化させることにより、温度変化に対する発振周波数を自動で補正する、といったことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−036739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、基地局の小型化がさらに進み、温度が低い部品設置場所が少なくなってきているために、高温度に弱い電子部品が使えなくなってきている。
【0006】
また、恒温槽は、温度を制御するための回路等が必要なことからサイズ規模が大きくなるため、小型化が進む基地局等には適さない。
【0007】
そのため、小型の電子装置内に実装される熱に弱い電子部品の防熱が要望されている。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、電子装置内の熱に弱い電子部品の防熱を行うことができる電子装置の熱対策構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、電子装置筐体内に発熱部材がある電子装置の熱対策構造において、前記筐体内に、隔壁によって隔てられ、前記筐体の外壁に密着した、電子部品を収容するための密閉された格納室を備え、前記格納室の前記隔壁に対応する内壁は、断熱材で覆われていることを特徴とする。
【0010】
前記隔壁の内部には、空気層が設けられていることが好ましい。また、前記隔壁は、前記筐体の外壁と一体となって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、格納室の隔壁に対応する内壁を断熱材で覆うことで、筐体内部の発熱部材からの高温の伝熱を防止するので、格納室内に収容された熱に弱い電子部品の温度上昇を抑制することができる。すなわち、本発明は、電子装置内の熱に弱い電子部品の防熱を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】基地局装置の全体斜視図である。
【図2】本発明に係る基地局装置の熱対策構造の実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図3】本発明に係る基地局装置の熱対策構造の実施形態を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明の電子装置の熱対策構造は、温度上昇が大きくなる基地局装置(例えば、自然空冷の小型の基地局装置。)において、高温度に弱い基準発振器などの電子部品を、装置内部のパワーアンプ等の高温熱源からの防熱のために、隔壁によって隔てられ、筐体内壁に密着した格納室に収納し、筐体外壁から外部空気の低温を格納室に密着した筐体内壁に伝えるとともに、隔壁に対応する内壁を断熱材で覆うことにより、格納室内の温度上昇を抑制して、電子部品の防熱を行うものである。
【0014】
図1は、基地局装置の全体斜視図である。基地局装置の筐体13は、図に示すように、周囲が複数のフィン12で囲まれている。複数のフィン12は、フィン方向が筐体外壁11に対して垂直になるようにして、筐体外側に突出させて、互いに所定の間隔を隔てて配置されている。
【0015】
図2は、本発明に係る基地局装置の熱対策構造の実施形態を示す要部拡大斜視図であり、図3は、部分拡大断面図である。図2は、基地局装置の天板を外した状態を示している。図2および図3に示すように、基地局装置の筐体外壁11は、筐体外壁11と一体となった複数のフィン12を備えている。また、基地局装置の筐体13の筐体内壁14には、格納室15が筐体内壁14に密着して設けられている。
【0016】
格納室15は、隔壁16によって、パワーアンプ等の高温熱源が収容される領域と隔てられ、密閉されている。そして、格納室15には、熱に弱い電子部品が収容され、ここでは、発振回路の基準発振器17が収容されている。格納室14は、例えば、3辺がそれぞれ4〜6cm、8〜12cm、1〜3cmの大きさの密閉された直方体の形状を有している。格納室15は、筐体外壁11およびフィン12と同じ材料で形成されており、アルミニウム(熱伝導率約200W/mK)または銅(熱伝導率約400W/mK)等の熱伝導率が良い材料(熱伝導率100W/mK以上の材料)で形成されている。
【0017】
また、格納室15は、少なくとも6面のうち面積の最も大きい面15Aで、筐体内壁14と密着しており、筐体内壁14と格納室15との間には、接触を確実にして熱伝導性を良好にするために熱伝導性グリス(図示せず)が塗布されている。熱伝導性グリスの厚さは、100μm以下が好ましい。熱伝導性グリスとしては、例えば、酸化アルミニウム等を配合したシリコングリスが挙げられる。さらに、フィン12は、格納室15と密着している部分の筐体外壁11に設置されているフィン12Aと、密着していない筐体外壁11部分に設置されている12Bとを備えている。筐体外壁11は、筐体内壁14を介して筐体内部の熱を受け取り、フィン12A,12Bは、筐体外壁11が受け取った熱を、外部に放熱させる。このとき、フィン12Aからは、格納室15の熱が外部に放熱され、フィン12Bからは、筐体内部のパワーアンプ等の高温熱源が収容される領域の熱が外部に放熱される。このとき、フィン12Bにおける熱が、フィン12Aを介して格納室15に伝わらないよう、フィン12Aとフィン12Bとの間には、隙間が設けられている。
【0018】
また、格納室15では、パワーアンプ等の高温熱源から発せられる熱の格納室内への伝熱を防ぐため、少なくとも隔壁16に対応する内壁15A,15Bが断熱材18で覆われている。断熱材18としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。さらに、隔壁16の内部には、空気層19が設けられており、パワーアンプ等の高温熱源から発せられる熱の格納室内への防熱効果をより高めている。なお、この空気層19の構成は、その両端を塞いで密閉状態としたり、隔壁16を貫通させて外部の空気を流入可能な状態にしたりしてよい。
【0019】
なお、上述した実施の形態では、筐体の外壁とフィンを成型するときに同時に格納室をも一体成型して、隔壁と筐体の外壁とが一体となるようにしても良い。
【0020】
上述したように、本発明に係る電子装置の熱対策構造は、格納室の隔壁に対応する内壁を断熱材で覆うことで、筐体内部の発熱部材からの高温の伝熱を防止するので、格納室内に収容された基準発振器等の熱に弱い電子部品の温度上昇を抑制することができる。すなわち、本発明は、電子装置内の熱に弱い電子部品の防熱を行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
11 筐体外壁
12 フィン
13 筐体
14 筐体内壁
15 格納室
16 隔壁
17 基準発振器
18 断熱材
19 空気層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置筐体内に発熱部材がある電子装置の熱対策構造において、
前記筐体内に、隔壁によって隔てられ、前記筐体の内壁に密着した、電子部品を収容するための密閉された格納室を備え、
前記格納室の前記隔壁に対応する内壁は、断熱材で覆われていることを特徴とする電子装置の熱対策構造。
【請求項2】
前記隔壁の内部には、空気層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置の熱対策構造。
【請求項3】
前記隔壁は、前記筐体の外壁と一体となって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置の熱対策構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−129279(P2012−129279A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277854(P2010−277854)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】