説明

電子装置

【課題】部品点数を削減する。製造を簡単とする。装置の小型化を図る。
【解決手段】装置ケース11を導電性の部材で形成する。基板9の電子回路が構築された側の面(表面)9aとは反対側の面(裏面)9bの全面に導電性のパターン(導電性のベタパターン)9cを形成する。導電性のベタパターン9cを装置ケース11の内面(内段面11dの一方側の壁面11d1)に接触させて基板9を装置ケース11の内部空間11c内に取り付ける。基板9に構築された電子回路と端子部10との間に基板9を貫通させて、かつその接地面12aを導電性のベタパターン9cに接触させて、貫通コンデンサ12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子回路が構築された基板を装置ケース内に収納した電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の電子装置では、基板に構築された電子回路を正常に動作させるために、装置ケース内にシールドを設けて外来電磁波を遮蔽するようにしたり、貫通コンデンサを設けて信号線から侵入するノイズを遮断するようにして、耐ノイズ性能を強化している。
【0003】
図3に特許文献1に示された耐ノイズ性能を強化した従来の電子装置の要部を示す。この電子装置では、樹脂ケース(装置ケース)1を下側の樹脂ケース1−1と上側の樹脂ケース1−2との上下2分割構造とし、下側の樹脂ケース1−1にターミナル(端子部)2をインサート成形している。
【0004】
また、下側の樹脂ケース1−1と上側の樹脂ケース1−2とを重ね合わせて作られる空間1−3を基板収納室とし、この基板収納室1−3に電子部品3が搭載されたプリント基板4を収納すると共に、このプリント基板4の電子部品3が搭載されている面(表面)を覆うようにして金属プレート5と金属製シールドカバー6とを設けている。
【0005】
また、金属プレート5を貫通させて貫通コンデンサ7を半田付けし、すなわち貫通コンデンサ7の接地面を金属プレート5に半田接続し、貫通コンデンサ7の一方側のリード7aをプリント基板4上のパターンを介してターミナル2に接続し、貫通コンデンサ7の他方側のリード7bをプリント基板4上のパターンを介して内部回路に接続している。
【0006】
また、プリント基板4の電子部品3が搭載されている面とは反対側の面(裏面)に、金属プレート5と金属製シールドカバー6と対応して接地パターン(導電パターン)8を設けている。
【0007】
この電子装置では、金属プレート5と金属製シールドカバー6と接地パターン8とをシールド(遮蔽構造)として、プリント基板4に搭載されている電子部品3が外来電磁波から遮蔽される。また、信号線から侵入するノイズ、すなわちターミナル2を介して侵入するノイズが貫通コンデンサ7によって遮断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公平7−5676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に示された電子装置では、装置ケースを樹脂製としているので、遮蔽構造として金属プレートや金属製シールドカバーを必要とし、部品点数が多くなる。また、金属プレートや金属製シールドカバーの形状を基板収納室内の形状に合わせる必要があり、設計の複雑さを招き、製造が難しくなる。また、基板収納室は金属プレートや金属製シールドカバーを収納するスペースを必要とするので、装置の大型化をもたらす、という問題もあった。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、部品点数を削減でき、製造が簡単で、装置の小型化も図ることが可能な電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために本発明は、電子回路が構築された基板と、この基板に構築された電子回路との間の電気信号を中継する端子部と、基板を収納する基板収納室および端子部を収納する端子収納室を有する装置ケースとを備えた電子装置であって、装置ケースは、導電性の部材で形成され、基板は、電子回路が構築された側の面とは反対側の面の全面に導電性のパターンが形成され、この導電性のパターンを装置ケースの内面に接触させて取り付けられ、基板に構築された電子回路と端子部との間に基板を貫通させてかつその接地面を導電性のパターンに接触させて貫通コンデンサが設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明では、基板の電子回路が構築された側の面を基板の表面、基板の電子回路が構築された側の面とは反対側の面を基板の裏面とすると、基板の裏面の全面に導電性のパターンが形成されている。そして、この基板の裏面に形成された導電性のパターンを装置ケースの内面に接触させて、基板が装置ケースに取り付けられる。また、基板に構築された電子回路と端子部との間に基板を貫通させて、貫通コンデンサが設けられる。
【0013】
本発明において、装置ケースは導電性の部材で形成されている。これにより、装置ケースの内面と基板裏面の導電性のパターンとによって、基板に構築された電子回路を外来電磁波から遮蔽する遮蔽構造が形成される。また、本発明において、貫通コンデンサは、基板裏面の導電性のパターンにその接地面を接触させて設けられ、この基板裏面の導電性のパターンを介して装置ケースと接続され、ケースアースされる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装置ケースの内面と基板裏面の導電性のパターンとによって遮蔽構造が形成され、貫通コンデンサの接地面が基板裏面の導電性のパターンを介して装置ケースと接続されてケースアースされ、従来必要としていた金属プレートや金属製シールドカバーを必要とせず、部品点数を削減でき、製造が簡単で、装置の小型化を図ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電子装置の一実施の形態の要部を示す側断面図である。
【図2】この電子装置において貫通コンデンサを基板にナットで固定するようにした例を示す図である。
【図3】特許文献1に示された従来の電子装置の要部を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1はこの発明に係る電子装置の一実施の形態の要部を示す側断面図である。同図において、9は電子回路が構築された基板、10は基板9に構築された電子回路との間の電気信号を中継する端子部、11は装置ケース、12は貫通コンデンサである。
【0017】
装置ケース11は、ケース本体11−1とキャップ11−2とを備えており、キャップ11−2はケース本体11−1の開口部11aに被せられている。キャップ11−2にはケース本体11−1の内部を覗くことができるようにガラス窓11bが設けられている。
【0018】
また、ケース本体11−1およびキャップ11−2は導電性の部材で形成されており、ケース本体11−1の内部空間11cにはその内部空間11cを左側の室11c1と右側の室11c2とに分ける位置に内段面11dが設けられている。なお、キャップ11−2は、樹脂部材で形成するようにしてもよい。この場合、ケース本体11−1が本発明でいう装置ケースとなる。
【0019】
基板9は、電子回路が構築された側の面を表面9a、電子回路が構築された側の面とは反対側の面を裏面9bとし、裏面9bの全面に導電性のパターン(以下、導電性のベタパターンと呼ぶ)9cが形成されている。そして、表面9aを内部空間11c内の左側の室11c1側に向けて、裏面9bに形成されている導電性のベタパターン9cを内部空間11c内の内段面11dの一方側の壁面(装置ケースの内面)11d1に接触させて、基板9が装置ケース11の内部空間11c内にネジ13,13によって固定されている。
【0020】
端子部10は、端子台10−1と、この端子台10−1に設けられた複数の端子ネジ10−2とから構成され、端子ネジ10−2には電源ラインや信号ラインが接続される。端子台10−1は内部空間11c内の内段面11dの他方側の壁面(装置ケースの内面)11d2にネジ14,14によって固定されている。
【0021】
貫通コンデンサ12は、基板9に構築された電子回路と端子部10との間に基板9を貫通させて、かつその接地面12aを導電性のベタパターン9cに接触させて設けられている。この例では、貫通コンデンサ12の本体部12bが円盤状とされ、この本体部12bの下面を接地面12aとし、この接地面12aを導電性のベタパターン9cに接触させている。また、本体部12aの一方側から導出されたリード12cを端子部10の端子ネジ10−2に接続し、本体部12aの他方側から導出されたリード12dを基板9を貫通させて表面9a側に突出させ、表面9aに形成されている内部回路への配線パターンに半田接続している。
【0022】
この電子装置では、装置ケース11内に、内部空間11cを左側の室11c1と右側の室11c2とに隔離するようにして基板9が取り付けられている。この場合、左側の室11c1が電子回路が構築された基板9を収納する基板収納室とされ、右側の室11c2が端子部10を収納する端子収納室とされる。すなわち、基板9によって隔離された装置ケース11内の電子回路が構築された面側の空間が基板収納室11c1とされ、基板9によって隔離された装置ケース11内の導線性のベタパターン9cが形成された面側の空間が端子収納室11c2とされる。
【0023】
また、この電子装置では、装置ケース11が導電性の部材で形成されており、この装置ケース11の内面と基板9の裏面9aに形成されている導電性のベタパターン9cとによって、基板9に構築された電子回路を外来電磁波から遮蔽する遮蔽構造が形成される。また、この電子装置では、貫通コンデンサ12が基板9の裏面9bの導電性のベタパターン9cにその接地面12aを接触させて設けられ、この導電性のベタパターン9cを介して装置ケース11と貫通コンデンサ12の接地面12aとが接続され、ケースアースされる。これにより、従来必要としていた金属プレートや金属製シールドカバーを必要とせず、部品点数を削減することができる。また、製造が簡単となり、装置の小型化を図ることもできる。
【0024】
また、本実施の形態では、装置ケース11内に基板9を取り付けると、この基板9自体が基板収納室11c1と端子収納室11c2とを隔離する隔離板の役割を果たすので、別途隔離板を設ける必要がない。また、装置ケース11内に隔壁を設ける必要がないので、装置ケース11内のスペースを広くすることができる。
【0025】
なお、上述した実施の形態では、貫通コンデンサ12の本体部12aの他方側から導出されたリード12dを基板9の表面9a側に突出させて半田接続するようにしたが、図2に示すように、リード12dにネジ山を形成するようにし、このネジ山にナット15を締め付けて基板9に固定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、電子回路が構築された基板を装置ケース内に収納した電子装置として、バルブポジショナや圧力センサなど各種の電子装置に適用することが可能である
【符号の説明】
【0027】
9…基板、9a…表面、9b…裏面、9c…導電性のパターン(導電性のベタパターン)、10…端子部、10−1…端子台、10−2…端子ネジ、11…装置ケース、11−1…ケース本体、11−2…キャップ、11a…開口部、11b…ガラス窓、11c…内部空間、11c1…左側の室(基板収納室)、11c2…右側の室(端子収納室)、11d…内段面、11d1…一方側の壁面、11d2…他方側の壁面、12…貫通コンデンサ、12a…接地面、12b…本体部、12c…一方側のリード、12d…他方側のリード、13,14…ネジ、15…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路が構築された基板と、この基板に構築された電子回路との間の電気信号を中継する端子部と、前記基板を収納する基板収納室および前記端子部を収納する端子収納室を有する装置ケースとを備えた電子装置であって、
前記装置ケースは、導電性の部材で形成され、
前記基板は、前記電子回路が構築された側の面とは反対側の面の全面に導電性のパターンが形成され、この導電性のパターンを前記装置ケースの内面に接触させて取り付けられ、
前記基板に構築された電子回路と前記端子部との間に前記基板を貫通してかつその接地面を前記導電性のパターンに接触させて貫通コンデンサが設けられている
ことを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電子装置において、
前記基板は、前記装置ケース内に、1つの空間を2つの空間に隔離するようにして取り付けられ、
前記基板収納室は、前記基板によって隔離された前記装置ケース内の前記電子回路が構築された面側の空間とされ、
前記端子収納室は、前記基板によって隔離された前記装置ケース内の前記導線性のパターンが形成された面側の空間とされている
ことを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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