説明

電子計算機およびプログラム

【課題】電子計算機において、元の数式を表示させたままの状態で、当該数式を演算処理する順番およびその順番毎の演算結果を確認可能にする。
【解決手段】演算対象として表示部19の数式表示領域19aに表示された数式「2×(3+4×(5+4))」は、その表示内容をそのままにして、各演算子の演算優先順位に従った各数式要素Lが、順次「(5+4)」→「4×(5+4)」→「3+4×(5+4)」→「2×(3+4×(5+4))」とアンダーラインと太字により識別表示される。そして、この演算優先順位に従った各数式要素の識別表示と共に、その都度、該当する数式要素の解LAが、順次「9」→「36」→「39」→「78」と同様の太字により前記表示部19の解表示領域19bに表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数式の演算過程を学習するのに適した電子計算機およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数式の演算過程を学習するのに適した電子式卓上計算機が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この電子式卓上計算機は、演算対象となる数式が表示された状態で「ENTER」キーが押下されると、当該キー押下される毎に、数式中の各演算子のうち演算の優先順位に従い選択された演算子のみが順番に演算処理される。そして、演算の優先順位に従った前記数式の演算処理の都度、当該演算処理された数式要素がその解に置き換えられて表示される。これにより、前記数式の演算結果が導かれるまでの演算の進行状況を、段階を追って確認できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−200483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の電子式卓上計算機では、数式に含まれる各演算子の演算優先順位に従い演算処理した各数式要素は、その演算処理の都度、当該演算処理の解に置き換えられて数式表示される。このため、与えられた数式をどのような順番で演算処理して行くのか、およびその時々の解を確認することはできるものの、解に置き換えられた元の数式要素の内容は勿論、演算処理が進むほど元の数式そのものが分からなくなってしまう問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、元の数式を表示させたままの状態で、当該数式を演算処理する順番およびその順番毎の演算結果を確認することが可能になる電子計算機およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の電子計算機は、数式を表示する数式表示手段と、この数式表示手段により表示された数式を構成する各数式要素の演算の優先順位に従い、当該各数式要素の演算を順次実行する演算実行手段と、この演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、前記数式表示手段により表示された数式の中の当該演算が実行された数式要素を識別して表示する識別表示手段と、前記演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、当該演算が実行された数式要素に対応する解を表示する途中解表示手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の電子計算機は、前記請求項1に記載の電子計算機において、前記演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、当該演算が不可であった場合には当該演算が不可である旨を表示する演算不可表示手段をさらに備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の電子計算機は、前記請求項1または請求項2に記載の電子計算機において、前記識別表示手段は、前記演算実行手段による今回の数式要素の演算の実行に伴い、直前の数式要素の演算で得られた解が、今回の数式要素の演算で得られた解とは異なり、かつ、今回の演算処理により消滅することなく残っている場合、今回演算が実行された数式要素を既に演算が実行された数式要素とは異なる形態で識別して表示し、前記途中解表示手段は、前記演算実行手段による今回の数式要素の演算の実行に伴い、直前の数式要素の演算で得られた解が、今回の数式要素の演算で得られた解とは異なり、かつ、今回の演算処理により消滅することなく残っている場合、今回演算が実行された数式要素に対応する解を前記解とは別に表示する、ことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の電子計算機は、前記請求項3に記載の電子計算機において、前記識別表示手段は、前記演算実行手段による今回の数式要素の演算の実行に伴い、今回の数式要素の演算で得られた解が複数の異なる形態で識別表示された数式要素に対応する解から得られた解である場合に、今回演算が実行された数式要素を既に演算が実行された数式要素とは異なる形態で識別して表示し、前記途中解表示手段は、前記演算実行手段による今回の数式要素の演算の実行に伴い、今回の数式要素の演算で得られた解が複数の異なる形態で識別表示された数式要素に対応する解から得られた解である場合に、今回演算が実行された数式要素に対応する解を前記解とは別に表示する、ことをさらに特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の電子計算機は、前記請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電子計算機において、前記演算実行手段は、前記各数式要素の演算を一定時間毎に順次実行し、前記途中解表示手段は、前記識別表示手段により演算が実行された数式要素が識別されて表示されるのと共に、当該数式要素に対応する解を順次更新表示する、ことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載のプログラムは、表示部を備えた電子機器のコンピュータを制御するためのプログラムであって、前記コンピュータを、前記表示部に数式を表示させる数式表示制御手段、この数式表示制御手段により表示された数式を構成する各数式要素の演算の優先順位に従い、当該各数式要素の演算を順次実行する演算実行手段、この演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、前記数式表示制御手段により表示された数式の中の当該演算が実行された数式要素を識別して表示させる識別表示制御手段、前記演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、当該演算が実行された数式要素に対応する解を前記表示部に表示させる途中解表示制御手段、として機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、元の数式を表示させたままの状態で、当該数式を演算処理する順番およびその順番毎の演算結果を確認することが可能になる電子計算機およびプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電子計算機の実施形態に係る小型電子式計算機の電子回路の構成を示すブロック図。
【図2A】前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理を示すフローチャート。
【図2B】前記図2AのステップS9における判断処理の詳細を示すフローチャート。
【図3】前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の具体例(その1)を示す図。
【図4】前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の具体例(その2)を示す図。
【図5】前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の具体例(その3)を示す図。
【図6】前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の変形例を示す図。
【図7】前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の具体例(その4)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面により本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の電子計算機の実施形態に係る小型電子式計算機の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0017】
この小型電子式計算機10は、コンピュータである制御部(CPU)11を備えている。
【0018】
制御部(CPU)11は、ROM(フラッシュROM)12に予め記憶されているシステムプログラム、あるいはメモリカードなどの外部記憶媒体13から記憶媒体読み書き部14を介してROM12に読み込まれた計算機制御プログラム、あるいは通信ネットワークN上のWebサーバ(プログラムサーバ)15から通信制御部16を介してダウンロードされ前記ROM12に読み込まれた計算機制御プログラムに従い、RAM17を作業用メモリとして回路各部の動作を制御する。そして、前記ROM12に予め記憶されたシステムプログラムや計算機制御プログラムは、キー入力部18からのキー入力信号に応じて起動される。
【0019】
前記制御部(CPU)11には、前記ROM12、記憶媒体読み書き部14、通信制御部16、RAM17、キー入力部18が接続される他に、液晶表示部(LCD)19が接続される。
【0020】
ROM12には、本電子式計算機10の全体の動作を司る計算機制御プログラム、ユーザ任意に入力される各種の数式に応じた演算処理を実行するための数式演算プログラムなどからなる各種処理プログラム12aが記憶される。
【0021】
また、ROM12には、あらゆる数式を構成するための全ての種類の演算子が、それぞれその演算子相互の演算優先順位に対応付けられて記述された演算子優先順位テーブル12bが記憶される。なお、この演算子優先順位テーブル12bに記述される各演算子は、当該演算子が数式中の括弧内にあるか否かなど、数式演算の全ての規則が当然考慮された優先順位に対応付けられる。
【0022】
具体的には、例えば四則演算の各演算子「+」、「―」、「×」、「÷」については、「×」と「÷」、「+」と「―」はそれぞれ同じ優先順位であり、「×」や「÷」の方が、「+」や「―」よりも高い優先順位となっている。そして、それぞれの演算子は、括弧内に存在する場合には、括弧外のどの演算子よりも高い優先順位となっている。
【0023】
さらに、ROM12には、前記数式演算プログラムに従った数式の演算処理を、当該数式に含まれる各演算子の演算優先順位に従って一定時間毎またはユーザからの指示に応じて順番に実行し、その各演算子に応じた演算処理の都度、当該演算処理された数式要素を順番に識別表示させると共にその解を個別表示させるための演算過程識別表示作成プログラム12cが記憶される。この演算過程識別表示作成プログラム12cは、演算対象となる数式が表示部19に表示された状態で、ユーザ操作に応じて演算過程スライドショーモードの実行が指示された際に起動される。
【0024】
RAM17には、数式記憶エリア17a、途中解記憶エリア17b、識別表示部記憶エリア17cが確保される。
【0025】
数式記憶エリア17aには、ユーザ操作に応じてキー入力された数式データ、または外部記憶媒体13から読み込まれた数式データ、または外部ネットワークN上のWebサーバ15から読み込まれた数式データが、演算対象の数式データとして記憶される。
【0026】
途中解記憶エリア17bには、前記演算過程スライドショーモードに従った数式演算プログラムおよび演算過程識別表示生成プログラム12cによる数式演算処理に伴い、演算対象の数式に含まれる各演算子の演算優先順位に従い順番に演算実行される各数式要素を演算処理した際の途中の解が記憶される。
【0027】
識別表示部記憶エリア17cには、前記演算過程スライドショーモードに従った数式演算プログラムおよび演算過程識別表示生成プログラム12cによる数式演算処理に伴い、演算対象の数式に含まれる各演算子の演算優先順位に従い順番に演算実行されるところの各数式要素が、識別表示すべき部分として記憶される。
【0028】
入力部18には、本電子式計算機10に搭載された各種の演算モードを指定する際に操作される「機能キー」18a、各種の数値・文字・記号データを入力する際に操作される「数字・文字キー」18b、選択されたり入力されたりした各種データの確定や演算の実行を指示する際に操作される「実行キー」18c、表示画面上のカーソルや選択項目などで示される入力位置を移動表示させる際に操作される「↑」「↓」「←」「→」の各カーソルキー18d、現在実行中の機能を終了して表示中のデータを消去する際に操作される「ACキー」18eなどが設けられる。
【0029】
さらに入力部18には、表示部19の表示画面上に重ねて設けた透明タッチパネル19Tも備えられる。
【0030】
RAM17には、前記数式記憶エリア17a、途中解記憶エリア17b、識別表示部記憶エリア17cの他、各種の演算処理に伴い制御部11に入出力される種々のデータを一時記憶するための作業エリアが確保される。
【0031】
表示部19は、例えば18桁4行表示の表示画面を備えたドットマトリクス型液晶表示部からなり、演算対象の数式が数字・記号・演算子からなる18桁の要素に収まった場合、当該表示画面の1行目の領域が数式表示領域19a、2〜4行目の領域が解表示領域19bとして設定される(図5参照)。
【0032】
次に、前記構成による電子式計算機10の演算過程スライドショー機能について説明する。
【0033】
図2Aは、前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理を示すフローチャートである。
【0034】
図2Bは、前記図2AのステップS9における判断処理の詳細を示すフローチャートである。
【0035】
[実施例1]
図3は、前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の具体例(その1)を示す図である。
【0036】
ユーザ操作に応じて数式記憶エリア17aから読み出された演算対象の数式「2×(3+4×(5+4))」が、図3(A)に示すように、表示部19の数式表示領域19aに表示された状態で(ステップS1)、「機能キー」18aおよび「実行キー」18cの操作に応じて演算過程スライドショーモードの実行が指示されると(ステップS2(YES))、以下の演算過程識別表示生成プログラム12cに従った数式演算処理(ステップS3〜S15)が開始される。
【0037】
先ず、前記表示された数式に含まれる個々の演算子を指定するためのカウンタnが初期値“1”にセットされる(ステップS3)。
【0038】
すると、前記数式「2×(3+4×(5+4))」におけるn(=1)番目の演算子「×」とn+1(=2)番目の演算子「+」(括弧内)との演算優先順位が、演算子優先順位テーブル12bに基づき比較され(ステップS4)、n(=1)番目の演算子「×」の優先順位が低いか否か判断される(ステップS5)。
【0039】
ここでは、演算子「×」の優先順位よりも演算子「+」(括弧内)の優先順位の方が高いため、n(=1)番目の演算子「×」の優先順位が低いと判断され(ステップS5(YES))、カウンタnが“+1”されて“2”にセットされる(ステップS6)。
【0040】
すると次に、前記数式「2×(3+4×(5+4))」におけるn(=2)番目の演算子「+」(括弧内)とn+1(=3)番目の演算子「×」(括弧内)との演算優先順位が比較される(ステップS4)。ここでは、演算子「+」(括弧内)の優先順位よりも演算子「×」(括弧内)の優先順位の方が高いため、n(=2)番目の演算子「+」(括弧内)の優先順位が低いと判断される(ステップS5(YES))。
【0041】
するとさらに、カウンタnが“+1”されて“3”にセットされ(ステップS6)、前記数式「2×(3+4×(5+4))」におけるn(=3)番目の演算子「×」(括弧内)とn+1(=4)番目の演算子「+」(重括弧内)との演算優先順位が比較される(ステップS4)。ここでは、演算子「×」(括弧内)の優先順位よりも演算子「+」(重括弧内)の優先順位の方が高いため、n(=3)番目の演算子「×」(括弧内)の優先順位が低いと判断される(ステップS5(YES))。
【0042】
するとさらに、カウンタnが“+1”されて“4”にセットされる(ステップS6)。ここで、前記数式「2×(3+4×(5+4))」におけるn(=4)番目の演算子「+」(重括弧内)とn+1(=5)番目の演算子との演算優先順位が比較されるが(ステップS4)、当該数式には5番目以降の演算子が存在しないので、n(=4)番目の演算子「+」(重括弧内)の優先順位が低くないと判断される(ステップS5(NO))。
【0043】
すると、このn(=4)番目の演算子「+」(重括弧内)に係る数式要素「(5+4)」の演算処理が実行され(ステップS7)、解が得られない演算エラーであるか否かが判断される(ステップS8)。
【0044】
ここでは、前記数式要素「(5+4)」の解「9」が得られて演算エラーではないと判断される(ステップS8(NO))。
【0045】
続いて、今回演算処理された数式要素「(5+4)」の解「9」が新規の解であるか否かが判断される(ステップS9)。
【0046】
具体的には、まず、直前の数式要素の演算で得られた解が今回の数式要素の演算で得られた解とは異なり、かつ、今回の演算処理により消滅することなく残っているか否かが判断される(ステップT1)。ここで、ステップT1で正(YES)と判断されると、今回の数式要素の演算で得られた解は新規の解であると判断される(ステップS9(YES))。一方、ステップT1で否(NO)と判断されると、今回の数式要素の演算で得られた解が、複数の異なる形態で識別表示された数式要素に対応する解から得られたか否かが判断される(ステップT2)。ここで、ステップT2で正(YES)と判断されると、今回の数式要素の演算で得られた解は新規の解であると判断される(ステップS9(YES))。一方、ステップT2で否(NO)と判断されると、今回の数式要素の演算で得られた解は新規の解ではないと判断される(ステップS9(NO))。
【0047】
ここでは、前記数式要素「(5+4)」の解「9」は、第1優先順位の演算子に応じた演算の解であるので、直前の演算で得られた解はそもそも存在しないのでステップT1は否(NO)、同様にステップT2も否(NO)と判断され、新規の解ではないと判断される(ステップS9(NO))。
【0048】
すると、図3(B)に示すように、今回演算処理されたn(=4)番目の演算子「+」(重括弧内)に係る数式要素「(5+4)」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「9」LAが表示部19の解表示領域19bに太字により表示される(ステップS10)。
【0049】
するとこの処理以降の内部処理では、前記演算処理されたn番目の演算子に係る数式要素をその解に置換して処理する。つまり、この時点では、前記数式「2×(3+4×(5+4))」の今回演算処理された数式要素「(5+4)」Lは、その解「9」LAに置換され、以降、数式「2×(3+4×9)」として処理される(ステップS12)。
【0050】
すると、前記内部処理用数式「2×(3+4×9)」において、未処理で残っている演算子が有るか否か判断され(ステップS13)、この場合には有ると判断されるので(ステップS13(YES))、前記ステップS3からの処理に戻る。
【0051】
すると、前記ステップS3〜S7による同様の処理を経て、前記内部処理用数式「2×(3+4×9)」で演算優先順位が高いn(=3)番目の演算子「×」(括弧内)に係る数式要素「4×9」の演算処理が実行される。ここでは、解「36」が得られるので演算エラーではないと判断される(ステップS8(NO))。また、直前の演算で得られた解「9」は残っておらず(ステップT1(NO))、解「36」は複数の異なる形態で識別表示された数式要素に対応する解から得られた解ではないので(ステップT2(NO))、新規の解ではないと判断される(ステップS9(NO))。そして、図3(C)に示すように、表示されている数式「2×(3+4×(5+4))」にて対応するところの数式要素「4×(3+4)」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「36」LAが表示部19の解表示領域19bに前回の解「9」から書き替えられて太字により表示される(ステップS10)。
【0052】
するとこの処理以降の内部処理では、前回までの内部処理用数式「2×(3+4×9)」の今回演算処理された数式要素「4×9」が、その解「36」に置換され、以降、数式「2×(3+36)」として処理される(ステップS12)。
【0053】
この後、再びステップS3からの処理に戻り、前記内部処理用数式「2×(3+36)」で演算優先順位が高いn(=2)番目の演算子「+」(括弧内)に係る数式要素「3+36」の演算処理が実行される。ここでは、解「39」が得られるので演算エラーではないと判断される(ステップS8(NO))。また、直前の演算で得られた解「36」は残っておらず(ステップT1(NO))、解「39」は複数の異なる形態で識別表示された数式要素に対応する解から得られた解ではないので(ステップT2(NO))、新規の解ではないと判断される(ステップS9(NO))。そして、図3(D)に示すように、表示されている数式「2×(3+4×(5+4))」にて対応するところの数式要素「3+4×(5+4)」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「39」LAが表示部19の解表示領域19bに前回の解「36」から書き替えられて太字により表示される(ステップS10)。
【0054】
すると前回同様に、この処理以降の内部処理では、前回までの内部処理用数式「2×(3+36)」の今回演算処理された数式要素「3+36」が、その解「39」に置換され、以降、数式「2×39」として処理される(ステップS12)。
【0055】
この後、再びステップS3からの処理に戻り、前記内部処理用数式「2×39」で最後の演算子であるn(=1)番目の演算子「×」に係る数式要素「2×39」の演算処理が実行される。ここでは、解「78」が得られて演算エラーではないと判断される(ステップS8(NO))。また、直前の演算で得られた解「78」は残っておらず(ステップT1(NO))、解「78」は複数の異なる形態で識別表示された数式要素に対応する解から得られた解ではないので(ステップT2(NO))、新規の解ではないと判断される(ステップS9(NO))。そして、図3(E)に示すように、表示されている数式「2×(3+4×(5+4))」にて対応するところの数式要素「2×(3+4×(5+4))」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「78」LAが表示部19の解表示領域19bに前回の解「39」から書き替えられて太字により表示される(ステップS10)。
【0056】
するとここで、内部処理用数式はその解「78」となり(ステップS12)、未処理で残っている演算子は無いと判断されるので(ステップS13(NO))、前記一連の演算過程スライドショーモードに伴う演算処理は終了される(ステップS15)。
【0057】
このように、演算対象として表示部19の数式表示領域19aに表示された数式「2×(3+4×(5+4))」は、その表示内容をそのままにして、各演算子の演算優先順位に従った各数式要素Lが、順次「(5+4)」→「4×(5+4)」→「3+4×(5+4)」→「2×(3+4×(5+4))」とアンダーラインと太字により識別表示される。そして、この演算優先順位に従った各数式要素の識別表示と共に、その都度、該当する数式要素の解LAが、順次「9」→「36」→「39」→「78」と同様の太字により前記表示部19の解表示領域19bに表示される。
【0058】
このため、元の数式を表示させたままの状態で、当該数式を演算処理する順番およびその順番毎の演算結果をスライドショーにして容易に確認することが可能となる。
【0059】
[実施例2]
図4は、前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の具体例(その2)を示す図である。
【0060】
ユーザ操作に応じて演算対象の数式「2×2÷0+2」が、図4(A)に示すように、表示部19の数式表示領域19aに表示された状態で(ステップS1)、演算過程スライドショーモードの実行が指示される(ステップS2(YES))。
【0061】
すると、カウンタnが初期値“1”にセットされ(ステップS3)、前記数式「2×2÷0+2」におけるn(=1)番目の演算子「×」とn+1(=2)番目の演算子「÷」との演算優先順位が比較され(ステップS4)、n(=1)番目の演算子「×」の優先順位が低いか否か判断される(ステップS5)。
【0062】
ここでは、演算子「×」の優先順位と演算子「÷」の優先順位は同じであるため、n(=1)番目の演算子「×」の優先順位が低くないと判断される(ステップS5(NO))。
【0063】
すると、このn(=1)番目の演算子「×」に係る数式要素「2×2」の演算処理が実行され(ステップS7)、解が得られない演算エラーであるか否かが判断される(ステップS8)。
【0064】
ここでは、前記数式要素「2×2」の解「4」が得られて演算エラーではないと判断される(ステップS8(NO))。
【0065】
続いて、今回演算処理された数式要素「2×2」の解「4」が新規の解であるか否かが判断される(ステップS9)。
【0066】
ここでは、前記数式要素「2×2」の解「4」は、第1優先順位の演算子に応じた演算の解であるので、直前の演算で得られた解はそもそも存在しないのでステップT1は否(NO)、同様にステップT2も否(NO)と判断され、新規の解ではないと判断される(ステップS9(NO))。
【0067】
すると、図4(B)に示すように、今回演算処理されたn(=1)番目の演算子「×」に係る数式要素「2×2」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「4」LAが表示部19の解表示領域19bに太字により表示される(ステップS10)。
【0068】
するとこの処理以降の内部処理では、前記数式「2×2÷0+2」の今回演算処理された数式要素「2×2」Lは、その解「4」LAに置換され、以降、数式「4÷0+2」として処理される(ステップS12)。
【0069】
すると、前記数式「4÷0+2」において、未処理で残っている演算子が有るか否か判断され(ステップS13)、この場合には有ると判断されるので(ステップS13(YES))、前記ステップS3からの処理に戻る。
【0070】
すると、前記内部処理用数式「4÷0+2」で演算優先順位が高いn(=1)番目の演算子「÷」に係る数式要素「4÷0」の演算処理が実行される(ステップS3〜S7)。
【0071】
ここでは、前記数式要素「4÷0」(表示上「2×2÷0」)の解は得られず演算エラーであると判断される(ステップS8(YES))。
【0072】
すると、図4(C)に示すように、今回演算エラーとして判断された内部処理用数式「4÷0+2」におけるn(=1)番目の演算子「÷」に係る数式要素「4÷0」(表示上「2×2÷0」)Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、エラーメッセージ「ERROR」Mが表示部19の解表示領域19bに太字により表示される(ステップS14)。
【0073】
そして、前記一連の演算過程スライドショーモードに伴う演算処理は終了される(ステップS15)。
【0074】
このように、演算対象として表示部19の数式表示領域19aに表示された数式は、その表示内容をそのままにして、各演算子の演算優先順位に従った各数式要素Lが、順次アンダーラインと太字により識別表示される。そして、この演算優先順位に従った各数式要素の識別表示と共に、その都度、該当する数式要素の解LAが、順次同様の太字により前記表示部19の解表示領域19bに表示される。
【0075】
また、各演算子の演算優先順位毎の各対応する数式要素の演算過程において、演算エラー生じた場合には、当該演算エラーが生じたところの数式要素Lが識別表示されると共にエラーメッセージMが表示されて演算終了される。
【0076】
このため、元の数式を表示させたままの状態で、当該数式を演算処理する順番およびその順番毎の演算結果をスライドショーにして容易に確認することが可能となるだけでなく、この演算処理の過程において発生した演算エラーの数式要素を明確に確認することが可能になる。
【0077】
[実施例3]
図5は、前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の具体例(その3)を示す図である。
【0078】
ユーザ操作に応じて演算対象の数式「2×(3+4)+3×(5+6)」が、図5(A)に示すように、表示部19の数式表示領域19aに表示された状態で(ステップS1)、演算過程スライドショーモードの実行が実行されると(ステップS2(YES))、先ず、前記表示された数式に含まれる個々の演算子を指定するためのカウンタnが初期値“1”にセットされる(ステップS3)。
【0079】
すると、前記数式「2×(3+4)+3×(5+6)」におけるn(=1)番目の演算子「×」とn+1(=2)番目の演算子「+」(括弧内)との演算優先順位が、演算子優先順位テーブル12bに基づき比較され(ステップS4)、n(=1)番目の演算子「×」の優先順位が低いか否か判断される(ステップS5)。
【0080】
ここでは、n(=1)番目の演算子「×」の優先順位が低いと判断され(ステップS5(YES))、カウンタnが“+1”されて“2”にセットされる(ステップS6)。
【0081】
すると次に、前記数式「2×(3+4)+3×(5+6)」におけるn(=2)番目の演算子「+」(括弧内)とn+1(=3)番目の演算子「+」との演算優先順位が比較される(ステップS4)。ここでは、演算子「+」(括弧内)の優先順位の方が演算子「+」の優先順位よりも高いため、n(=2)番目の演算子「+」(括弧内)の優先順位が低くないと判断される(ステップS5(NO))。
【0082】
すると、このn(=2)番目の演算子「+」に係る数式要素「(3+4)」の演算処理が実行され(ステップS7)、解が得られない演算エラーであるか否かが判断される(ステップS8)。
【0083】
ここでは、前記数式要素「(3+4)」の解「7」が得られて演算エラーではないと判断される(ステップS8(NO))。
【0084】
続いて、今回演算処理された数式要素「(3+4)」の解「7」が新規の解であるか否かが判断される(ステップS9)。
【0085】
ここでは、前記数式要素「(3+4)」の解「7」は、第1優先順位の演算子に応じた演算の解であるので、直前の演算で得られた解はそもそも存在しないのでステップT1は否(NO)、同様にステップT2も否(NO)と判断され、新規の解ではないと判断される(ステップS9(NO))。
【0086】
すると、図5(B)に示すように、今回演算処理されたn(=2)番目の演算子「+」に係る数式要素「(3+4)」L1がアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「7」L1aが表示部19の解表示領域19bに太字により表示される(ステップS10)。
【0087】
するとこの処理以降の内部処理では、前記数式「2×(3+4)+3×(5+6)」の今回演算処理された数式要素「(3+4)」L1は、その解「7」L1aに置換され、以降、数式「2×7+3×(5+6)」として処理される(ステップS12)。
【0088】
すると、前記数式「2×7+3×(5+6)」において、未処理で残っている演算子が有るか否か判断され(ステップS13)、この場合には有ると判断されるので(ステップS13(YES))、前記ステップS3からの処理に戻る。
【0089】
すると、前記ステップS3〜S10による同様の処理を経て、前記数式「2×7+3×(5+6)」のn(=1)番目の演算子「×」に係る数式要素「2×7」の演算処理が実行され、図5(C)に示すように、表示されている数式「2×(3+4)+3×(5+6)」の前記n(=1)番目の演算子「×」に係る数式要素「2×(3+4)」L1がアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「14」L1aが表示部19の解表示領域19bに前回の解「7」から書き替えられて太字により表示される(ステップS8(NO)→ステップS9(NO)→ステップS10)。
【0090】
するとこの処理以降の内部処理では、前回までの内部処理用の数式「2×7+3×(5+6)」の今回演算処理された数式要素「2×7」が、その解「14」に置換され、以降、数式「14+3×(5+6)」として処理される(ステップS12)。
【0091】
この後、再びステップS3からの処理に戻り、前記内部処理用数式「14+3×(5+6)」で演算優先順位が高いn(=3)番目の演算子「+」(括弧内)に係る数式要素「5+6」の演算処理が実行される(ステップS3〜S7)。
【0092】
ここでは、前記数式要素「5+6」の解「11」が得られて演算エラーではないと判断される(ステップS8(NO))。
【0093】
そして、今回演算処理された数式要素「5+6」の解「11」は新規の解であるか否かが判断される(ステップS9)。直前の演算で得られた解「14」L1aが今回の演算で得られた解「11」とは異なり、かつ、今回の演算処理により消滅することなく残っている。従って、ステップT1で正(YES)と判断されるので、今回の演算で得られた解「11」は新規の解であると判断される(ステップS9(YES))。すると、これ以降の演算処理に伴う数式要素L2の識別表示は、これ以前に演算処理された数式要素L1の識別表示とは別の識別形態とし、その数式要素L2の解L2aも以前の数式要素L1の解L1aとは別に新たに表示する設定とする(ステップS11)。
【0094】
すると、図5(D)に示すように、今回演算処理された数式要素「5+6」L2がアンダーラインと斜体太字により新たに識別表示されると共に、その解(途中解)「11」L2aが表示部19の解表示領域19bに前回の解(途中解)「14」L1aとは別の新たな斜体太字により表示される(ステップS10)。
【0095】
するとこの処理以降の内部処理では、前記内部処理用数式「14+3×(5+6)」の今回演算処理された数式要素「(5+6)」L2は、その解「11」L2aに置換され、以降、数式「14+3×11」として処理される(ステップS12)。
【0096】
すると、前記内部処理用数式「14+3×11」において、未処理で残っている演算子が有るか否か判断され(ステップS13)、この場合には有ると判断されるので(ステップS13(YES))、前記ステップS3からの処理に戻る。
【0097】
すると、前記ステップS3〜S10による同様の処理を経て、前記内部処理用数式「14+3×11」で演算優先順位が高いn(=2)番目の演算子「×」に係る数式要素「3×11」の演算処理が実行され、図5(E)に示すように、表示されている数式「2×(3+4)+3×(5+6))」にて対応するところの数式要素「3×(5+6)」L2がアンダーラインと斜体太字により識別表示されると共に、その解「33」La2が表示部19の解表示領域19bに前回の解「11」から書き替えられて同斜体太字により表示される(ステップS8(NO)→ステップS9(NO)→ステップS10)。
【0098】
するとこの処理以降の内部処理では、前回までの内部処理用数式「14+3×11」の今回演算処理された数式要素「3×11」が、その解「33」に置換され、以降、数式「14+33」として処理される(ステップS12)。
【0099】
この後、再びステップS3からの処理に戻り、前記内部処理用数式「14+33」で最後の演算子であるn(=1)番目の演算子「+」に係る数式要素「14+33」の演算処理が実行される(ステップS3〜S7)。
【0100】
ここで、今回演算処理された数式要素「14+33」の解「47」は新規の解であるか否かが判断される(ステップS9。まず、ステップT1において、直前の演算で得られた解「33」は今回の演算処理により消滅しているので、否と判断される(ステップT1(NO))。すると、ステップT2において、今回の演算で得られた解「47」が複数(2つ)の異なる形態で識別表示された数式要素(「2×(3+4)」及び「3×(5+6)」)に対応する解(「14」及び「33」)から得られたと判別される(ステップT2(YES))。従って、今回の演算で得られた解「47」は新規の解である判断される(ステップS9(YES))。
【0101】
すると、これ以降の演算処理に伴う数式要素L3の識別表示は、これ以前に演算処理された数式要素L1,L2の識別表示とは別の識別形態とし、その数式要素L3の解L3aも以前の数式要素L1,L2の解L1a,L2aとは別に新たに表示する設定とする(ステップS11)。
【0102】
すると、図5(F)に示すように、演算優先順位に応じて既に演算処理された数式要素「2×(3+4)」L1および数式要素「3×(5+6)」L2の識別表示、当該各数式要素L1,L2の解「14」L1a,「33」L2aはそのままに、今回演算処理された内部処理用数式「14+33」に対応するところの数式要素(この場合は全要素)「2×(3+4)+3×(5+6)」L3が網掛けにより識別表示されると共に、その解「47」L3aが表示部19の解表示領域19bに新たに網掛けにして表示される(ステップS10)。
【0103】
するとここで、内部処理用数式はその解「47」となり(ステップS12)、未処理で残っている演算子は無いと判断されるので(ステップS13(NO))、前記一連の演算過程スライドショーモードに伴う演算処理は終了される(ステップS15)。
【0104】
このように、演算対象として表示部19の数式表示領域19aに表示された数式は、その表示内容をそのままにして、各演算子の演算優先順位に従った各数式要素L1,L2,L3が、順次別々の識別形態により識別表示される。そして、この演算優先順位に従った各数式要素L1,L2,L3の形態の異なる識別表示と共に、その都度、該当する各数式要素の解L1a,L2a,L3aが、順次異なる形態により前記表示部19の解表示領域19bに別々に表示される。
【0105】
このため、元の数式を表示させたままの状態で、当該数式を演算処理する順番およびその順番毎の演算結果を、異なる途中解が生じてもそれぞれ明確にスライドショーとして確認することが可能となる。
【0106】
[変形例]
図6は、前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の変形例を示す図である。
【0107】
前記[実施例3]では、図6(A)に示すように、演算対象の数式における演算優先順位毎の数式要素L1,L2,L3に各対応する解L1a,L2a,L3aは、表示部19の解表示領域19bにおいて改行して個別に表示すると共に、対応する数式要素の識別形態と同種の識別形態として表示した。
【0108】
これに対して、図6(B)に示すように、前記数式における演算優先順位毎の数式要素L1,L2,L3に各対応する解L1a,L2a,L3aは、表示部19の解表示領域19bに1行表示にして個別に表示しても良いし、さらに数式表示領域19aでの数式表示に対応させた途中解L1a,L2aと最終解L3aとの関係式にして、より解り易く表示してもよい。
【0109】
また、前記[実施例3]では、図6(A)に示すように、演算対象の数式における演算優先順位毎の数式要素L1,L2,L3は、第1の数式要素L1がアンダーラインと太字、第2の数式要素L2がアンダーラインと斜体太字、第1,第2を含む第3の数式要素L3が網掛けにより、それぞれ異なる形態で識別表示した。
【0110】
これに対して、図6(C)に示すように、各数式要素L1,L2,L3とも、字体は共通で、例えば縦縞網掛(v),横縞網掛け(h),囲み枠(w)など、網掛けの種類や色分け、反転をしてそれぞれ異なる形態で識別表示してもよい。この場合、各数式要素L1,L2,L3に対応する解L1a,L2a,L3aも同様に、縦縞網掛(v),横縞網掛け(h),囲み枠(w)など、網掛けの種類や色分け、反転をしてそれぞれ異なる形態で識別表示すればよい。
【0111】
[実施例4]
図7は、前記電子式計算機10の演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理に従った表示動作の具体例(その4)を示す図である。
【0112】
この実施例4では、液晶表示部19の表示領域が、上段1行表示の数式表示領域19aと下段1行表示の解表示領域19bとからなる2行表示に限られる場合について説明する。
【0113】
この2行表示の電子式計算機10における演算過程スライドショーモードの実行を伴う数式演算処理(図2A参照)では、ステップS9,S11の処理を行わない。
【0114】
ユーザ操作に応じて演算対象の数式「2×(3+4)+3×(5+6)」が、図7(A)に示すように、表示部19の数式表示領域19aに表示された状態で(ステップS1)、演算過程スライドショーモードの実行が実行されると(ステップS2(YES))、先ず、前記表示された数式に含まれる個々の演算子を指定するためのカウンタnが初期値“1”にセットされる(ステップS3)。
【0115】
すると、前記数式「2×(3+4)+3×(5+6)」におけるn(=1)番目の演算子「×」とn+1(=2)番目の演算子「+」(括弧内)との演算優先順位が、演算子優先順位テーブル12bに基づき比較され(ステップS4)、n(=1)番目の演算子「×」の優先順位が低いか否か判断される(ステップS5)。
【0116】
ここでは、n(=1)番目の演算子「×」の優先順位が低いと判断され(ステップS5(YES))、カウンタnが“+1”されて“2”にセットされる(ステップS6)。
【0117】
すると次に、前記数式「2×(3+4)+3×(5+6)」におけるn(=2)番目の演算子「+」(括弧内)とn+1(=3)番目の演算子「+」との演算優先順位が比較され(ステップS4)、n(=2)番目の演算子「+」の優先順位が低くないと判断される(ステップS5(NO))。
【0118】
すると、このn(=2)番目の演算子「+」に係る数式要素「(3+4)」の演算処理が実行され(ステップS7)、解「7」が得られて演算エラーではないと判断される(ステップS8(NO))。
【0119】
すると、図7(B)に示すように、今回演算処理されたn(=2)番目の演算子「+」に係る数式要素「(3+4)」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「7」LAが表示部19下段の解表示領域19bに太字により表示される(ステップS10)。
【0120】
するとこの処理以降の内部処理では、前記数式「2×(3+4)+3×(5+6)」の今回演算処理された数式要素「(3+4)」Lは、その解「7」LAに置換され、以降、数式「2×7+3×(5+6)」として処理される(ステップS12)。
【0121】
すると、前記数式「2×7+3×(5+6)」において、未処理で残っている演算子が有るか否か判断され(ステップS13)、この場合には有ると判断されるので(ステップS13(YES))、前記ステップS3からの処理に戻る。
【0122】
すると、前記ステップS3〜S10による同様の処理を経て、前記数式「2×7+3×(5+6)」のn(=1)番目の演算子「×」に係る数式要素「2×7」の演算処理が実行され、図7(C)に示すように、表示されている数式「2×(3+4)+3×(5+6)」の前記n(=1)番目の演算子「×」に係る数式要素「2×(3+4)」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「14」LAが表示部19下段の解表示領域19bに前回の解「7」から書き替えられて太字により表示される(ステップS10)。
【0123】
するとこの処理以降の内部処理では、前回までの内部処理用の数式「2×7+3×(5+6)」の今回演算処理された数式要素「2×7」が、その解「14」に置換され、以降、数式「14+3×(5+6)」として処理される(ステップS12)。
【0124】
この後、再びステップS3からの処理に戻り、前記内部処理用数式「14+3×(5+6)」で演算優先順位が高いn(=3)番目の演算子「+」(括弧内)に係る数式要素「5+6」の演算処理が実行される(ステップS3〜S7)。
【0125】
すると、図7(D)に示すように、前回演算処理された数式要素「2×(3+4)」に対する識別表示は解除され、今回演算処理された数式要素「5+6」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解(途中解)「11」LAが表示部19下段の解表示領域19bに前回の解(途中解)「14」と入れ替えられて太字により表示される(ステップS10)。
【0126】
するとこの処理以降の内部処理では、前記内部処理用数式「14+3×(5+6)」の今回演算処理された数式要素「(5+6)」Lは、その解「11」LAに置換され、以降、数式「14+3×11」として処理される(ステップS12)。
【0127】
すると、前記内部処理用数式「14+3×11」において、未処理で残っている演算子が有るか否か判断され(ステップS13)、この場合には有ると判断されるので(ステップS13(YES))、前記ステップS3からの処理に戻る。
【0128】
すると、前記ステップS3〜S10による同様の処理を経て、前記内部処理用数式「14+3×11」で演算優先順位が高いn(=2)番目の演算子「×」に係る数式要素「3×11」の演算処理が実行され、図7(E)に示すように、表示されている数式「2×(3+4)+3×(5+6))」にて対応するところの数式要素「3×(5+6)」Lだけがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「33」LAが前回の解「11」から書き替えられて同太字により表示される(ステップS10)。
【0129】
するとこの処理以降の内部処理では、前回までの内部処理用数式「14+3×11」の今回演算処理された数式要素「2×11」が、その解「33」に置換され、以降、数式「14+33」として処理される(ステップS12)。
【0130】
この後、再びステップS3からの処理に戻り、前記内部処理用数式「14+33」で最後の演算子であるn(=1)番目の演算子「+」に係る数式要素「14+33」の演算処理が実行される(ステップS3〜S7)。
【0131】
すると、図7(F)に示すように、今回演算処理された内部処理用数式「14+33」に対応するところの数式要素(この場合は全要素)「2×(3+4)+3×(5+6)」Lがアンダーラインと太字により識別表示されると共に、その解「47」LAが表示部19の解表示領域19bに入れ替えられて同太字により表示される(ステップS10)。
【0132】
するとここで、内部処理用数式はその解「47」となり(ステップS12)、未処理で残っている演算子は無いと判断されるので(ステップS13(NO))、前記一連の演算過程スライドショーモードに伴う演算処理は終了される(ステップS15)。
【0133】
このように、2行表示の小型電子式計算機10であっても、演算対象として表示部19上段の数式表示領域19aに表示された数式は、その表示内容をそのままにして、各演算子の演算優先順位に従った各数式要素L…が、順次識別表示される。そして、この演算優先順位に従った各数式要素L…の順次識別表示と共に、その都度、該当する各数式要素の解LA…が、順次表示部19下段の解表示領域19bに入れ替えられて表示される。
【0134】
このため、元の数式を表示させたままの状態で、当該数式を演算処理する順番およびその順番毎の演算結果を、途中解が生じてもそれぞれ明確にスライドショーとして確認することが可能となる。
【0135】
なお、前記実施形態において記載した電子式計算機10による演算過程スライドショーモードでの動作手法、すなわち、図2A,図2Bのフローチャートに示す数式演算処理などの手法は、コンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカード等)、磁気ディスク(フロッピディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD−ROM、DVD等)、半導体メモリ等の外部記憶媒体(13)に格納して配布することができる。そして、電子式計算機10のコンピュータ(11)は、この外部記憶媒体(13)に記憶されたプログラムを記憶装置(12)(17)に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、前記実施形態において説明した元の数式を完全表示したままでの演算過程スライドショー機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0136】
また、前記手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態として通信ネットワーク(公衆回線)N上を伝送させることができ、この通信ネットワークNに接続された通信装置(16)によって前記プログラムデータを電子式計算機10のコンピュータ(11)に取り込み、前述した元の数式を完全表示したままでの演算過程スライドショー機能を実現することもできる。
【0137】
さらに、前記プログラムデータをパーソナルコンピュータに取り込み、前述した元の数式を完全表示したままでの演算過程スライドショー機能を実現することもできる。
【0138】
なお、本願発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0139】
10 …電子式計算機
11 …制御部(CPU)
12 …ROM
12a…各種処理プログラム
12b…演算子優先順位テーブル
12c…演算過程識別表示作成プログラム
13 …外部記憶媒体
14 …記憶媒体読み書き部
15 …Webサーバ
16 …通信制御部
17 …RAM
17a…数式記憶エリア
17b…途中解記憶エリア
17c…識別表示部記憶エリア
18 …入力部
18a…「機能キー」
18b…「数字・文字キー」
18c…「実行キー」
18d…「カーソルキー」
18e…「ACキー」
19 …表示部
19a…数式表示領域
19b…解表示領域
19T…タッチパネル
N …通信ネットワーク
L,L1,L2,L3…数式要素
LA,L1a,L2a,L3a…解

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数式を表示する数式表示手段と、
この数式表示手段により表示された数式を構成する各数式要素の演算の優先順位に従い、当該各数式要素の演算を順次実行する演算実行手段と、
この演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、前記数式表示手段により表示された数式の中の当該演算が実行された数式要素を識別して表示する識別表示手段と、
前記演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、当該演算が実行された数式要素に対応する解を表示する途中解表示手段と、
を備えたことを特徴とする電子計算機。
【請求項2】
前記演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、当該演算が不可であった場合には当該演算が不可である旨を表示する演算不可表示手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の電子計算機。
【請求項3】
前記識別表示手段は、前記演算実行手段による今回の数式要素の演算の実行に伴い、直前の数式要素の演算で得られた解が、今回の数式要素の演算で得られた解とは異なり、かつ、今回の演算処理により消滅することなく残っている場合、今回演算が実行された数式要素を既に演算が実行された数式要素とは異なる形態で識別して表示し、
前記途中解表示手段は、前記演算実行手段による今回の数式要素の演算の実行に伴い、直前の数式要素の演算で得られた解が、今回の数式要素の演算で得られた解とは異なり、かつ、今回の演算処理により消滅することなく残っている場合、今回演算が実行された数式要素に対応する解を前記解とは別に表示する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子計算機。
【請求項4】
前記識別表示手段は、前記演算実行手段による今回の数式要素の演算の実行に伴い、今回の数式要素の演算で得られた解が複数の異なる形態で識別表示された数式要素に対応する解から得られた解である場合に、今回演算が実行された数式要素を既に演算が実行された数式要素とは異なる形態で識別して表示し、
前記途中解表示手段は、前記演算実行手段による今回の数式要素の演算の実行に伴い、今回の数式要素の演算で得られた解が複数の異なる形態で識別表示された数式要素に対応する解から得られた解である場合に、今回演算が実行された数式要素に対応する解を前記解とは別に表示する、
ことをさらに特徴とする請求項3に記載の電子計算機。
【請求項5】
前記演算実行手段は、前記各数式要素の演算を一定時間毎に順次実行し、
前記途中解表示手段は、前記識別表示手段により演算が実行された数式要素が識別されて表示されるのと共に、当該数式要素に対応する解を順次更新表示する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の電子計算機。
【請求項6】
表示部を備えた電子機器のコンピュータを制御するためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記表示部に数式を表示させる数式表示制御手段、
この数式表示制御手段により表示された数式を構成する各数式要素の演算の優先順位に従い、当該各数式要素の演算を順次実行する演算実行手段、
この演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、前記数式表示制御手段により表示された数式の中の当該演算が実行された数式要素を識別して表示させる識別表示制御手段、
前記演算実行手段により前記各数式要素の演算が順次実行される毎に、当該演算が実行された数式要素に対応する解を前記表示部に表示させる途中解表示制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−107772(P2011−107772A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259148(P2009−259148)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】