電子透かし埋め込み装置及び方法、そのプログラム
【課題】
電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化を防止し、かつ電子透かし埋め込み情報の安定的な検出を実現する。
【解決手段】
透かし埋め込み処理時に記録した埋め込みビットに対応する画素変更を基に埋め込みの程度の分析を行い、その分析結果に応じて電子透かし埋め込みの強度の調整を行う。埋め込みの程度の分析において、画像に含まれる複数の小領域ごとに、各々の埋め込みビットに対応する画素変更を集計し、全埋め込みビットに対応する集計から第1評価値を算出する。さらに近傍の小領域から得られる複数の第1評価値から第2評価値を算出する。この第1評価値又は第2評価値について判定して、その判定結果が所定の条件を満たさない場合、埋め込みパラメータを変更して、電子透かし埋め込みの強度を調整する。
電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化を防止し、かつ電子透かし埋め込み情報の安定的な検出を実現する。
【解決手段】
透かし埋め込み処理時に記録した埋め込みビットに対応する画素変更を基に埋め込みの程度の分析を行い、その分析結果に応じて電子透かし埋め込みの強度の調整を行う。埋め込みの程度の分析において、画像に含まれる複数の小領域ごとに、各々の埋め込みビットに対応する画素変更を集計し、全埋め込みビットに対応する集計から第1評価値を算出する。さらに近傍の小領域から得られる複数の第1評価値から第2評価値を算出する。この第1評価値又は第2評価値について判定して、その判定結果が所定の条件を満たさない場合、埋め込みパラメータを変更して、電子透かし埋め込みの強度を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子透かし埋め込み装置及び方法、及びそのプログラムに係り、特に画像などのデータに電子透かしを埋め込む技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子媒体に記録されたコンテンツに対する情報漏洩対策、著作権管理、コピー制御などを目的として、デジタルコンテンツに目立たないように付加情報を挿入する電子透かしの技術が種々提案されている。例えばその一つとして、非特許文献1には、パッチワーク方式と称する、信号の統計量を利用する電子透かし方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献1には、画像に対する電子透かしにおいて、パッチワーク方式のパッチを複数の画素に拡張した技術が開示されている。即ち、多ビットの情報を電子透かしとして画像に埋め込む際に、電子透かしを構成する各ビットの検出強度を測定し、電子透かし埋め込みの程度を定量化する。そして必要に応じて各ビット間の検出強度を調整することによって、全ビットの安定的な電子透かしの検出を可能とすると共に画質の向上を図っている。
【0004】
電子透かし技術においては、電子透かし埋め込み済みデータから埋め込み情報が安定して検出可能であること、及び電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化が最小限であることが望ましく、これら2つの要請はトレードオフの関係にある。具体的に言えば、埋め込み情報の検出を容易とするために、単純には電子透かし埋め込みによるデータの変更を大きくすることが考えられるが、多くの場合、データの大きな変更はコンテンツの劣化の程度も大きくする。一方、電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化を最小限にするために、単純には埋め込みによるデータの変更を小さくすることが考えられるが、多くの場合、データの小さな変更では埋め込み情報が安定して検出できない。そのため、コンテンツの劣化と透かし検出の安定性の両者のバランスを取ることが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−344720公報
【特許文献2】US公開2005/25333明細書
【非特許文献1】W. Bender, D. Gruhl, N. Morimoto, and A. Lu: "Techniques for data hiding", IBM Systems Journal, Vol.35, No.3&4, pp.313-336 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子透かし技術においては、埋め込み情報の安定した検出が可能であること、及び電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化が最小限であることが望ましい。
然るに、特許文献1に記載の電子透かし埋め込み処理装置は、電子透かしの安定した検出を可能とするために、透かし埋め込み後に検出処理を実行し、各埋め込みビットの検出強度を得たうえで、検出強度の過不足に基づいて埋め込み強度を調整するが、一般に検出処理は計算量が多いため、該電子透かし埋め込み処理装置では全体の処理時間が長いという課題がある。
【0007】
また、特許文献2や非特許文献1で提案されている、局所的な領域に全透かし情報を埋め込む方法では、埋め込み情報の位置分布の分析が透かし埋め込みの程度の分析に有効であるが、特許文献1に記載の電子透かし埋め込み処理装置ではこのような着眼点がなく、コンテンツの劣化の抑止と安定した電子透かしの検出の両方を実現するには十分とは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、好ましくは、データに電子透かし情報を埋め込む電子透かし埋め込み装置において、該電子透かし情報から多ビット情報の電子透かしパターンを生成する電子透かしパターン生成部と、該生成部で生成された該電子透かしパターンを該データに埋め込んで、変更されたデータを生成する電子透かし埋め込み部と、該変更データを分析して、該電子透かし埋め込み部によって埋め込まれた電子透かしの埋め込みの程度を判定し、当該判定に基づき該埋め込みパラメータを調整する変更データ分析部を有する電子透かし埋め込み装置として構成される。
また本発明は、この電子透かし埋め込み装置で実行される電子透かし埋め込み方法、及びプログラムとして把握される。
【0009】
好ましい例によれば、本発明は、埋め込みの程度の分析において、データに含まれる複数の小領域ごとに、各々の埋め込みビットに対応する画素変更を集計し、全埋め込みビットに対応する集計から第1評価値を算出する。この第1評価値を基に電子透かし埋め込みの程度を判定し、その判定結果に応じて、上記埋め込みパラメータを調整する。
【0010】
さらに好ましくは、近傍に位置する複数の小領域から算出された複数の第1評価値から、埋め込み情報の位置分布の評価を取り入れた第2評価値を算出する。この第2評価値を基に電子透かし埋め込みの程度を判定し、その判定結果に応じて、上記埋め込みパラメータを調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子透かし埋め込み対象となるコンテンツなどのデータの劣化を防止し、かつ安定した電子透かし検出を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】埋め込み情報を多ビットとする電子透かし埋め込み方法を説明する概念図。
【図2】全透かし情報が局所的な領域に集中した構造を画像上に複数回繰り返し配置した透かしパターンを用いて埋め込み情報を多ビットとする電子透かし埋め込み方法を説明する概念図。
【図3】人間の視覚特性を利用した電子透かし埋め込み方法を説明する概念図。
【図4】一実施例(実施例1)による、電子透かし埋め込み装置の構成例を示すブロック図。
【図5】電子透かし埋め込み装置を実現するハードウェア構成例を示すブロック図。
【図6】変更データ分析部における電子透かしの埋め込みの分析処理を説明する概念図。
【図7】電子透かし埋め込み装置の処理動作の例を示すフローチャート。
【図8】実施例2による電子透かし埋め込み装置の処理動作の例を示すフローチャート。
【図9】実施例2における変更データ分析部の分析処理を説明する概念図。
【図10】実施例3による電子透かし埋め込み装置の処理動作の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図を用いて詳細に説明する。
まず、一般的な電子透かしの埋め込みおよび検出について説明する。
電子透かし埋め込み対象画像をP、画像Pに埋め込む電子透かしパターンをWとする。また、iをインデックスとして、画像Pの第i番目の画素値をpi、電子透かしパターンWの第i番目のパターン値をwi、とする。電子透かしパターンWのパターン値は、電子透かし埋め込みにおいて画像Pの画素をどのように変更するかを定める値である。電子透かし埋め込みによって画質が大きく劣化することを防ぐ目的で、画素値の変更が全体として増加にも減少にも偏らないように電子透かしパターンWを設定するとよい。この場合、電子透かしパターンWは、次式を満たすように設定される。
【0014】
【数1】
【0015】
電子透かし埋め込み処理は次式で表される。
【0016】
【数2】
【0017】
ここで、画像Pに対して電子透かしパターンWを埋め込んだ透かし埋め込み済み画像をP’とし、透かし埋め込み済み画像P’の第i番目の画素値をpi’とする。すなわち、画素ごとに画素値と電子透かしパターンのパターン値を加えることで電子透かしが埋め込まれる。
【0018】
電子透かしの検出には、電子透かしパターンWを用いる。電子透かしの検出対象画像をQ、iをインデックスとして画像Qの第i番目の画素値をqi、とする。検出対象画像Qに対する電子透かし検出処理では、次式で表される検出値dを算出する。
【0019】
【数3】
【0020】
上式のように演算子「・」は、要素ごとの積を全ての要素に対して算出し、それら積の総和を算出する演算を表す。
【0021】
検出値は、検出対象画像Qに電子透かしパターンWが埋め込まれている場合は大きい値となり、埋め込まれていない場合は0近傍の小さい値となる。電子透かしパターンWで表される電子透かしが埋め込まれているか否かの判断は、検出値dを閾値と比較することで実現される。
【0022】
上記電子透かし埋め込み検出方法を説明する例として、画像P、電子透かしパターンWを次式のようにおく。
【0023】
【数4】
【0024】
ここで画像P、電子透かしパターンWは、ともに縦に4ピクセル、横に5ピクセルの大きさの長方形であるが、画像P、電子透かしパターンWの大きさや形状はこれに限らない。また、一般的に画像では隣り合う画素は近い値をもつ性質を有しており、上記例のように画素値を設定しても一般性を欠かない。本例では、透かし埋め込み済み画像P’は次式のように計算される。
【0025】
【数5】
【0026】
透かし埋め込み前の画像Pに対する検出値をdP、電子透かしパターンWを埋め込んだ透かし埋め込み済み画像P’に対する検出値をdP’とすると、これらは次式のように算出される。
【0027】
【数6】
【0028】
【数7】
【0029】
電子透かしパターンWのパターン値の総和が0であること([数1])と、画像では隣り合う画素は一般に近い値をもつことから、上記[数6]のように透かしが埋め込まれていない画像Pに対する検出値dPは0の近傍の値となる。一方、上記[数7]のように電子透かしパターンWを埋め込んだ透かし埋め込み済み画像P’に対する検出値dP’は、W・Wの近傍の値となる。したがって、透かし検出対象画像に対して算出した検出値がW・Wの近傍の値であるか、0の近傍の値であるか、を判定することによって、透かし検出対象画像に透かしパターンが埋め込まれているか否かを判定できる。透かしパターンが埋め込まれているか否かで1ビットの情報を表すことができるので、このようにして1ビットの情報の埋め込み検出が実現される。
【0030】
検出値がW・Wの近傍の値であるか0の近傍の値であるかを判定することが電子透かし情報の検出にあたるため、W・Wを0に近い小さい値としてしまった場合は、透かしパターンが埋め込まれているにも関わらず埋め込まれていないと判定する、または、透かしパターンが埋め込まれていないにも関わらず埋め込まれていると判定する、といった誤った検出結果が出力される可能性が大きくなる。したがって安定した電子透かしの検出のためにはW・Wが0と十分離れた大きな値であれば良い。
【0031】
W・Wを大きな値とする方法には、例えば、透かしパターンWの個々のパターン値を絶対値の大きな値に設定することが考えられる。これは、電子透かし埋め込みによる一つ一つの画素の画素値変更量を大きくすることに相当する。また、W・Wを大きな値とする別の方法には、例えば、透かしパターンWとしてより大きなパターンを用いることも考えられる。これは、電子透かし埋め込み対象とする画像領域を大きくすることに相当する。これとは逆に、透かしパターンWの個々のパターン値を絶対値の小さな値に設定し、電子透かし埋め込みによる一つ一つの画素の画素値変更量を小さくすること、あるいは、透かしパターンWとしてより小さなパターンを用い、電子透かし埋め込み対象とする画像領域を小さくすること、などによりW・Wを小さな値とすることができる。
【0032】
このように、透かしパターンWから算出される値W・Wは、電子透かしの埋め込み強度の尺度として利用できる。W・Wが大きい値であるような透かし埋め込みを、埋め込み強度が強い或いは大きいと表現し、逆にW・Wが小さい値であるような透かし埋め込みを埋め込み強度が弱い或いは小さいと表現する。
【0033】
電子透かしを強く埋め込むと安定した透かし検出が可能となるが、それと同時に画質への影響も大きくなる。また逆に、弱く埋め込むことで画質への影響を抑えることができるが、透かし検出が不安定になる。このように電子透かしの検出の信頼性と電子透かしによる画質への影響はトレードオフの関係にある。
【0034】
次に、埋め込み情報を多ビットとする電子透かし埋め込み方法について説明する。上記の電子透かし埋め込み検出方法では、1ビットの埋め込み情報しか表現できない。埋め込み情報を多ビットとする最も簡単な方法として、電子透かし埋め込み対象画像を、埋め込み情報1ビットずつに対応する小領域に分割して埋め込む方法がある。
【0035】
図1はこの方法を説明する概念図である。埋め込むべき情報である電子透かし情報:b0b1b2…が与えられたとき、各ビットに対して適切に電子透かしパターンを作成し、それぞれ画像中の対応する小領域に埋め込むことで複数のビットの埋め込みを実現する。どの小領域と埋め込みビットが対応するかは、予め決定された固定的な対応関係であってもよいし、埋め込み時に与えられる埋め込みパラメータから決定される対応関係であっても良い。
【0036】
電子透かし技術においては、電子透かし埋め込み済みデータから埋め込み情報が安定して検出可能であることが望ましい。ところが、電子透かし埋め込み済みデータが歪みや部分切り出しなどの処理を経ることや、透かし埋め込み時と透かし検出時の透かしパターンの位置にずれが生じること、などにより透かしが検出できなくなることが考えられる。
例えば、図1のように、画像を埋め込み情報1ビットずつに対応する小領域に分割して埋め込みを行う方式においては、電子透かし埋め込み済み画像が部分切り出し処理を経ることによって、あるビットに対応する領域が失われてしまう可能性がある。このような場合、たとえ残りのビットが全て検出できたとしても、埋め込み情報全体としての検出が失敗となる事態に陥る。
【0037】
この対策として、特許文献2や非特許文献1には、全透かし情報が局所的な領域に集中した構造を、画像上に複数回繰り返し配置した透かしパターンを用いることによって埋め込み情報を多ビットとする透かし埋め込み方法が提案されている。
図2はその方法を説明する概念図である。これは、埋め込み情報を多ビット化する際の画像分割を工夫した方法であるといえる。埋め込むべき情報である電子透かし情報:b0b1b2…が与えられたとき、全ビットを表現する適切な素パターンを作成し、素パターンを繰り返し配置することによって電子透かしパターンを作成する。素パターンには電子透かし情報を構成する各ビットに対して、対応する画素が少なくても1つ以上割り当てられる。このような電子透かしパターンを用いることで、透かし埋め込み済み画像が歪みや部分切り出しなどの処理を経た場合でも、画像の一部分から埋め込み情報全体としての検出が成功する可能性が大きくなる。
【0038】
電子透かし技術においては、電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化が最小限であることも望ましい。提案されている数多くの電子透かし方法においても電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化を抑制する様々な工夫が考えられている。画像信号に対する電子透かし埋め込みにおいては、埋め込み対象画像のそれぞれの画素に対して、画素値変更の目立ちやすさを考慮して画素値変更量を調整する手法がある。具体的には、電子透かしパターンWのパターン値を、対応する画素の画素変更の目立ちやすさに応じて調整する。画素変更が目立ちやすい画素に対してはパターン値の絶対値を小さくし、逆に画素変更が目立ちにくい画素に対してパターン値の絶対値を大きくすることで、全体として一定量の埋め込み強度を確保しつつも画質への影響を抑えることができる。
【0039】
このような人間の視覚特性を利用した電子透かし埋め込み方法を説明する概念図を、図3に示す。図3(a)は多値画像の一例を表しており、画像には空310、雲311、山312、建物313が含まれている。図3(b)は二値画像の一例を表しており、画像には白い背景320の上に文字321、図表323が配置されている。視覚特性を利用した電子透かし埋め込みとして、画像中のエッジ部分に相当する画素と平坦な部分に相当する画素の間に存在する画素変更の目立ちやすさの違いを利用した手法が一般に広く採用されている。これは、画素値の変更が同じ大きさであったとしても、平坦な部分では変更が目立ちやすく、エッジ部分ではその変更が目立ちづらいという人間の視覚特性(周波数マスキング効果)に基づいたものである。
【0040】
この手法を図3(a)の多値画像に対して用いる場合は、空310、雲311、山312、建物313の境界などに存在するエッジ部分の画素変更量を大きくし、空310、雲311、山312、建物313の内部に存在する平坦部分の画素変更を小さくする。この手法を図3(b)の二値画像に対して用いる場合は、画素変更を文字321や図表322の輪郭付近に限定し、背景320などの平坦部分には変更を加えないという埋め込み方法となる。特許文献2においては、二値画像に対してさらに深い分析によって変更画素を制御する手法が提案されている。
【0041】
特許文献2記載の電子透かし方法は、二値画像中のあらゆる画素に対して、その画素および隣接画素の状態から注目画素の画素値変更の目立ちにくさを基に画素変更優先度を算出し、透かし埋め込み時に優先度の高い画素から変更することで画質劣化を抑えることを可能とし、さらには、どの程度の優先度を有する画素まで画素値変更を実施するかによって電子透かしの強度の調節を可能としている。
【0042】
また同様な視覚特性として、同じ平坦部であってもその明るさによって画素値の変更の目立ちやすさに差が存在すること(輝度マスキング効果)も知られている。この効果利用した透かし埋め込み方法を図3(a)の多値画像に対して用いる場合は、空310と山312の平坦部に対して、例えば、画素値変更が目立ちにくい明るさである空310の平坦部において画素変更量を大きくし、画素値変更が目立ちやすい明るさである山312の平坦部において画素変更量を小さくする、などの埋め込み方法となる。
【0043】
このように、埋め込み対象画像のそれぞれの画素に対して画素値変更の目立ちやすさを考慮して画素値変更量を決定する手法を用いれば、全体として安定した埋め込み量を確保し、かつ透かし埋め込みによる画質の劣化を防止することが可能となる。
【0044】
次に、図4以降を参照して、本発明の好ましい実施例について説明する。
【実施例1】
【0045】
図4は、電子透かし埋め込み装置の構成を示す。
【0046】
電子透かし埋め込み装置400は、画像入力部421、電子透かし情報入力部422、埋め込みパラメータ入力部423、画像出力部424、電子透かしパターン生成部431、電子透かし埋め込み部432、変更データ分析部441を有する。画像入力部421は電子透かしの埋め込み対象データとなる画像411を入力する。電子透かし情報入力部422は、画像411に埋め込まれる電子透かし情報412を入力する。埋め込みパラメータ入力部423は、電子透かしの埋め込みを制御する情報として埋め込みパラメータ413を入力する。画像出力部424は、電子透かしが埋め込まれた電子透かし埋め込み済み画像414を出力する。この電子透かし埋め込み済み画像は、画質の劣化が抑止されかつ安定した電子透かし検出が実現されたものである。
【0047】
電子透かしパターン生成部431は、電子透かし情報入力部422から多ビット情報である電子透かし情報412を受け付け、さらに埋め込みパラメータ入力部423から埋め込みパラメータ413を受け取り、それらに基づいて図2で示されるような、適切な電子透かしパターンを生成する。
【0048】
電子透かし埋め込み部432は、画像入力部421から透かし埋め込みの対象である画像411を受け取り、埋め込みパラメータ入力部423から受けた埋め込みパラメータ413に従って、電子透かしパターン生成部431から出力された電子透かしパターンを画像411に埋め込む。この際、電子透かし埋め込み部432は、画像411に含まれる各画素について、図3に示したような、人間の視覚特性を利用した電子透かしの埋め込みをする。すなわち、画像411に埋め込まれる電子透かしパターンを、画素変更の目立ちやすさを考慮して調整する。そのために、電子透かし埋め込み部432は電子透かし埋め込みによる画素値の変更を一時的に記憶装置に記憶する。
【0049】
変更データ分析部441は、電子透かし埋め込み部432からの電子透かしパターンの埋め込まれた画像および電子透かし埋め込みによる画素値の変更の情報を、埋め込みパラメータ入力部423から埋め込みパラメータ413を受け付け、画素値の変更から明らかとなる電子透かしを構成するビットごとの埋め込み強度を分析する。さらにその分析結果に基づき、必要に応じて埋め込みパラメータ413を調整し、適切な埋め込み強度で電子透かしが埋め込まれるように、再度電子透かしの埋め込みを実行する。分析の結果、適切な埋め込み強度で電子透かしが埋め込まれたと判定した場合には、画像出力部424を介して電子透かし埋め込み済み画像を出力する。
【0050】
次に、図5を参照して、上記電子透かし埋め込み装置400の諸機能を実現する、ハードウェアの構成例について説明する。
そのハードウェア構成である情報処理装置50は、CPU500、RAM510、ハードディスク(HDD)等の記憶装置520、ユーザインターフェイス530、通信インターフェイス540、およびメディアインターフェイス550を有して構成される。CPU500は、RAM510又は記憶装置520に格納されたプログラムを実行して、図4に示す各部の機能を実現する。RAM510は、CPU500が実行するプログラムおよびCPU500が使用する画像などのデータを一時的に格納する。
【0051】
記憶装置520は、起動時にCPU500が実行するブートプログラムや、ハードウェアの制御を実現するプログラム、動画、音声、画像などのコンテンツ等のデータを格納する。ユーザインターフェイス530はマウス、キーボード、マイク、カメラ、スキャナなどの入力デバイスおよびスピーカーなどの音声出力デバイス、ディスプレイなどの画像表示デバイスである。通信インターフェイス540はネットワーク560を介して外部の装置と通信し、電子透かし埋め込み対象となるデータを受信して記憶装置520に格納し、さらには、透かし埋め込み済みデータをネットワーク560を介して送信する。メディアインターフェイス550はCD−ROM、DVD、磁気ディスク、半導体メモリなどの記録媒体570から、電子透かし埋め込み対象となるデータを読み出して記憶装置520に格納し、さらには、透かし埋め込み済みデータを記録媒体570に記録する。
電子透かし埋め込み装置400の諸機能を実現するプログラムは、通信インターフェイス540を介してネットワーク560から、又はメディアインターフェイス550を介して記録媒体570から受け付けられ、RAM510や記憶装置520に格納され、適宜CPU500で実行される。
【0052】
図6は、変更データ分析部441における電子透かし埋め込みデータの分析処理を概念的に示す。
変更データ分析部441は、電子透かし埋め込み部432より透かし埋め込みに伴う画素変更に関する情報、より具体的には、どの画素がどのような変更を加えられたのかを表す情報を受け付ける。そして、予め定められた大きさの単位領域内の画素変更を集計し、その単位領域における埋め込みの程度を評価するための第1評価値を算出する。同様に、単位領域を画像内でずらしながら画像のそれぞれの位置における第1評価値を算出し、それらから電子透かし埋め込みを分析、制御する。第1評価値の算出の例については後述する。
【0053】
図6(a)および(b)は、変更データ分析部441にて実行される、電子透かし埋め込みによる画素値変更の集計を説明する概念図である。ここでは例として、埋め込む電子透かし情報は8ビットであるとし、それをb0b1b2…b7と表す。図6(a)において、600は透かし埋め込みによって各画素がどのような変更を加えられたかを表す情報を示し、610は単位領域の一つを示す。
【0054】
第1評価値を算出するため、変更データ分析部441は単位領域610に含まれる画素値変更の大きさを、対応する埋め込みビットごとに加算する。加算結果は、単位領域610における各ビットの埋め込み強度を表す値となる。図6(b)は単位領域610における埋め込みビットに対する埋め込み強度の例を示す。電子透かし埋め込み部432は、図3を参照して説明したように、埋め込み対象画像のそれぞれの画素に対して画素値変更の目立ちやすさを考慮して画素値変更量を調整し埋め込みを実行するため、各ビット間の埋め込み強度にばらつきが生じている場合がある。
【0055】
例えば、図6(b)に示すように、埋め込み強度にばらつきが生じると、埋め込みビットb3のように埋め込み強度の小さいビットが存在することが考えられる。このように埋め込み強度が小さいビットは、透かし検出処理時にその検出を失敗する可能性が大きい。埋め込み情報は複数のビットで構成されているので、検出に失敗するビットが存在すると、仮に残りのビットが全て正しく検出できたとしても、単位領域610からの埋め込み情報全体としての検出が失敗となってしまう。このような事態を回避するため、予め誤り訂正分の冗長性を持たせて埋め込み情報を構成することができるが、たとえ誤り訂正を利用していたとしても埋め込み強度の小さいビットが含まれることは、埋め込み情報全体としての検出の安定性を低下させる要因であることに変わりはない。
【0056】
また、例えば図6(b)に示す埋め込みビットb5のように、埋め込み強度の大きいビットが存在することも考えられる。このように埋め込み強度が大きいビットは、透かし検出処理時に検出が成功する可能性が大きい。しかし、多ビットの埋め込み情報全体としての検出の成功失敗は埋め込み強度の小さいビットに左右されるため、このように埋め込み強度が大きいビットが埋め込み情報全体の検出に有効に利用されていない。それどころか、埋め込み強度が不必要に大きいビットが含まれることは、画質劣化を必要以上に引き起こす要因である。
【0057】
変更データ分析部441は、単位領域における各ビットの埋め込み強度を算出した後、これを第1評価関数に入力し、その出力として第1評価値を得る。ビットの埋め込み強度からその単位領域の第1評価値を算出する第1評価関数としては、例えば、全埋め込みビットの埋め込み強度に関する平均値算出関数が考えられる。また別の例として、全埋め込みビットの埋め込み強度のうちの最小値を算出する関数が考えられる。この場合に得られる第1評価値は、単位領域からの埋め込み情報全体としての検出しやすさの尺度を表すものとなる。
さらに別の例として、全埋め込みビットの埋め込み強度のうちの最大値を算出する関数が考えられる。この場合得られる第1評価値は、単位領域の埋め込みの超過度の尺度を表すものとなる。第1評価関数としては、上記した3つの例の他に、より複雑な計算式を用いることもできる。
【0058】
変更データ分析部441は、単位領域を画像内でずらすことにより、画像のそれぞれの位置における単位領域内の第1評価値を算出する。ここで、単位領域の大きさは、埋め込みに利用した電子透かしパターンの最小繰り返しサイズと同じ大きさであってもよいし、または、透かし検出処理時に検出対象とする画像領域と同じ大きさであってもよい。更に単位領域の大きさは、別の大きさであっても構わない。また、単位領域のずらし方は複数の単位領域が一部重なるようなずらし方であってもよい。
【0059】
図6(c)は、画像のそれぞれの位置における単位領域のうち、2つ領域620,621を例示している。埋め込み強度が画像内の位置ごとに様々に異なっているため、これら2つの単位領域内の第1評価値は、一般に異なった値をとる。例えば、空の部分や輪郭を多く含む単位領域620では第1評価値が高く、山や平坦部分を多く含む単位領域621では第1評価値が低くなることがあり得る。変更データ分析部441は、このように様々に異なる第1評価値を用い、電子透かし埋め込みを分析し電子透かし埋め込みの制御を行う。
【0060】
変更データ分析部441における分析の判定については、例えば以下のようなものが考えられる。第1評価値として埋め込み情報の検出しやすさの尺度を表す値を用い、第1評価値が予め定められた閾値以上の値であるような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みが十分な埋め込み強度を有しているか否かを判定できる。または、第1評価値が予め定められた閾値以下の値であるような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不足しているか否かを判定することができる。
また別の例として、第1評価値に単位領域の埋め込みの超過度の尺度を表す値を用い、全単位領域の第1評価値の平均値を算出し、その平均値が予め定められた閾値以上の値であるか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不必要に強いか否かを判定することができる。
【0061】
変更データ分析部441は、判定の結果に応じて以後の電子透かし埋め込みの制御を実行する。即ち、電子透かし埋め込みが適切に完了したと判定した場合には、透かし埋め込み済み画像を画像出力部424に出力する。
一方、電子透かし埋め込みが不適切にであったと判定した場合には、不適切であった原因に応じて一部または全ての画素に対する埋め込みを適切に修正するように、埋め込みパラメータを再度設定して電子透かし埋め込みを実行する。
なお、変更データ分析部441の実行する分析、判定、及びそれに基づくその後の制御は上記の例に限定されない。分析に利用する第1評価値は1種類であってもよいし、異なる複数の評価値を用いても良い。さらには、分析、判定、制御は予め定められたものであっても、埋め込みパラメータによって指定されるものであっても良い。
【0062】
次に、図7のフローチャートを参照して、電子透かし埋め込み装置400の処理動作について説明する。
まず、画像入力部421より透かし埋め込み対象である画像411が入力され、電子透かし情報入力部422より画像411に埋め込む情報である電子透かし情報412が入力される。さらに、埋め込みパラメータ入力部423より電子透かし埋め込みを制御する情報である埋め込みパラメータ413が入力される(S700)。
次に、電子透かしパターン作成部431は、電子透かし情報412と埋め込みパラメータ413に従って電子透かしパターンを作成する(S701)。電子透かし埋め込み部432は、受け付けた画像411に対して、埋め込みパラメータ413に従って電子透かしパターンを埋め込む。併せて、電子透かし埋め込み部432は埋め込みによる画素値の変更を記憶装置に記憶する(S702)。
【0063】
次に、変更データ分析部441は、電子透かし埋め込み部432からの画素変更情報を受け付け、埋め込みパラメータ413に従って単位領域ごとに画素変更情報を集計して、上記の第1評価値を算出する(S703)。そして変更データ分析部441は、この第1評価値に関して、予め設定された上記の条件を検証し、その条件を満たすか否かを判定する(S704)。判定の結果、条件を満たす場合には(S704:Y)、変更データ分析部441は、電子透かし埋め込み部432から受けた透かし埋め込み済み画像を画像出力部424から出力して(S706)、その画像は透かし埋め込み済み画像DBに記憶される。
【0064】
一方、第1評価値が予め設定された条件を満たさない場合(S704:N)、変更データ分析部441は条件を満たさなかった原因を解消するように、適切に埋め込みパラメータ413を調整し、再度電子透かし埋め込みを開始する(S705)。第1評価値に平均値算出関数を用いた場合、平均値に対して所定の範囲を超えている例えば埋め込みビットb3、b5(図6(b))について、埋め込みパラメータを再度調整して、電子透かしパターンを作成し、上記の処理動作を繰り返す。また、他の例として、第1評価値に最小値算出関数を用いた場合、最小値の埋め込みビットb3(図6(b))について、埋め込みパラメータを再度調整して、電子透かしパターンを作成し、上記の処理動作を繰り返す。第1評価値に最大値算出関数を用いた場合も同様である。
【実施例2】
【0065】
図8及び図9を参照して、実施例2について説明する。
この例は、上記した第1評価値に加えて第2評価値を利用して、電子透かしの埋め込みの程度を判定するものである。これにより、変更データ分析部における埋め込みの程度の判定において、ある単位領域の評価に関して、その領域の近傍の単位領域の評価を反映させるものである。
【0066】
本実施例による電子透かし埋め込み装置の構成は、実施例1の装置400と同じであるが、変更データ分析部441の実行する分析処理ステップが異なる。本実施例では、図8に示す処理フローにおいて、ステップS800−802が実施例1のステップS704と置き換わっている。
【0067】
すなわち、変更データ分析部441は、画像の単位領域ごとの画素変更を集計して第1評価値を算出した(S703)後に、それぞれの単位領域について第2評価値を算出する(S800)。第2評価値は、画像上の位置が近傍にある複数の単位領域の第1評価値を用いて算出される、埋め込みの程度を評価するための値である。そして、変更データ分析部441は算出した第1評価値および第2評価値に関して、予め設定された条件を検証し、条件を満たすか否かを判定する(S801)。
【0068】
電子透かし埋め込み部432より受け付けた画素変更に関する情報を単位領域ごとに集計し、単位領域ごとに第1評価値を算出するという変更データ分析部441の実行する処理は、本実施例と実施例1において同様である。変更データ分析部441はさらに、単位領域ごとに、画像上の位置関係が当該単位領域の近傍にある複数の単位領域に対する第1評価値から、当該単位領域における埋め込みの程度を評価するための第2評価値を算出する。
【0069】
図9は、変更データ分析部441の分析処理を説明する概念図である。
図9(a)において、900は算出した全ての第1評価値をそれぞれ対応する単位領域に配置した第1評価値情報を示し、910は単位領域の一つを示す。図9では単位領域の各々を、第1評価値が高いほど白く、第1評価値が低いほど黒く表示している。ここでは複数の単位領域の間に重なりがないようにずらして第1評価値を算出した例を表示しているが、実施例1でも説明したように、複数の単位領域が一部重なるようなずらし方であってもよい。図9(a)の単位領域910においては、第1評価値が周囲の単位領域よりも高い値となっている。例えば第1評価値として、埋め込み情報の検出しやすさの尺度を表す値を利用していた場合には、これは単位領域910において、埋め込み情報の検出が周囲と比較して容易であることを意味している。しかしこのように第1評価値だけから埋め込みの程度に関する分析結果を導くのではなく、実際の電子透かし埋め込み検出に即した分析を実行することにより、より正確な埋め込み程度の分析が実現できる。具体的には以下のような画像の変化を考慮した分析を行う。
【0070】
電子透かし埋め込み済み画像が電子透かし検出処理に入力されるとき、意図せず画素値が埋め込み直後とは異なっている場合がある。その原因としては様々考えられるが、例えば、画像が幾何学的に変形して位置にずれが生じていることや、画像がデータ圧縮やフォーマット変換などの処理を経ていること、または、画像が印刷、スキャンを経ていてにじみや歪みなどが加わったこと、などがある。このような意図しない画像の変化の特徴として、画像内容が大幅に変化するのではなく、画像の各領域が各々の近傍で影響を及ぼしあうことが挙げられる。電子透かしの埋め込み程度の分析を、実際の電子透かし埋め込み検出に即したものとするために、このような意図されていない画像の変化をも考慮することが有効である。
【0071】
図9(b)は、変更データ分析部441による第2評価値の算出の例を説明する図である。注目する単位領域920の第2評価値を算出するために、変更データ分析部441は、単位領域920の第1評価値とそれに隣接する4つの単位領域921、922、923、924のそれぞれの第1評価値を、第2評価関数に入力しその出力として第2評価値を得る。
【0072】
ここでは注目する単位領域に対する近傍単位領域として、上下左右に隣接する4つの単位領域を利用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、近傍単位領域として斜め方向に隣接するものも加えて、より多くの単位領域を利用しても良いし、近傍にはあるが、境界を共有して隣接している訳ではない単位領域を利用しても良い。複数の第1評価値から注目単位領域の第2評価値を算出する第2評価関数としては様々な関数があり得るが、例えば、入力第1評価値に関する平均値算出関数が考えられる。また、入力第1評価値の最小値や最大値を算出する関数も考えられるし、上記以外のより複雑なものを用いてもよい。
【0073】
変更データ分析部441は、注目する単位領域を画像内でずらして上記処理を実行することにより、画像のそれぞれの位置における第2評価値を算出する。そして、変更データ分析部441は、このように算出した第2評価値および第1評価値から、電子透かしの埋め込みの程度を分析し、分析結果を基に電子透かし埋め込みの調整制御を行う。
【0074】
このように、第1評価値だけではなく第2評価値も利用して分析を行うことにより、ある単位領域の評価に対して、近傍の単位領域の評価を反映させることができる。第1評価値として埋め込み情報の検出しやすさの尺度を表す値を利用した例では、第1評価値だけを利用した分析によって、図9(a)の単位領域910は埋め込み情報の検出が容易であると判定されていた。しかし、電子透かし埋め込み済み画像の画素値は、前述のように検出処理に入力される際には埋め込み直後から変化していることがあり、単位領域910のような検出の容易である領域が検出の困難な領域の中に孤立している領域では、周囲の領域の影響から検出が困難になる傾向がある。また逆に、単位領域911のように検出の困難である領域であったとしても、近傍の領域が検出の容易な領域であるような場合は、周囲の領域の影響から検出が容易になる傾向がある。このように第1評価値だけを利用した分析では正確な判定ができなかった場合について、第2評価値を導入することにより判定の精度を上げることが可能となる。第1評価値として検出しやすさの尺度を表す値を利用する場合に限らず、他の第1評価値を利用する場合においても、同様の分析が有効である。
【0075】
第2評価値を用いることによって、変更データ分析部441は、第1評価値と第2評価値を複合的に用いて分析する。具体的な分析として例えば以下のものが考えられる。第1評価値として埋め込み情報の検出しやすさの尺度を表す値を用い、「第1評価値が予め定められた閾値以上の値であり、かつ、その位置の第2評価値が予め定められた閾値以上である」という条件を満たすような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みが十分な埋め込み強度を有しているか否かを判定できる。
また別の例として、第1評価値に単位領域の埋め込みの超過度の尺度を表す値を用い、「全単位領域の第1評価値の平均値が予め定められた閾値以上の値であり、かつ、全単位領域の第2評価値の平均値が予め定められた閾値以上の値である」という条件が満たされるか否か判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不必要に強いか否かを判定できる。
【0076】
実施例1と同様に、変更データ分析部441の実行する分析は、上記のものに限られないし、第1評価値および第2評価値のそれぞれを複数種類用いて、複合的に実行されるものであっても良い。また、変更データ分析部441の分析結果に応じた電子透かし埋め込み処理の制御は実施例1と同様に実行される。分析、制御方法は予め定められたものであっても、埋め込みパラメータによって指定されるものであっても良い。
【実施例3】
【0077】
この例は、埋め込みパラメータを調整して電子透かしパターンを再度生成して、それを画像に埋め込む処理の、繰り返し回数を制限するものである。
【0078】
本実施例における電子透かし埋め込み装置の構成は、実施例1のものと同じであるが、変更データ分析部441の実行する処理ステップが異なる。すなわち変更データ分析部441は、電子透かしの埋め込み処理の実行回数を予め定められた繰り返し上限回数と比較するという判定処理を実行する。以下の説明では、埋め込み処理実行回数をt、繰り返し上限回数をtMAXと表すこととする。
【0079】
図10のフローチャートは、実施例1に変更を加えた実施例3としての電子透かし埋め込み装置の動作例を示す。実施例2に同じ変更を加えたものも、図10と同様であるが、それは取り立てて図示していない。図10において、実施例1(図7)と同じステップには同じ符号が付してあり、実施例3ではステップ1000、1001−1002が追加された。
【0080】
透かし埋め込み対象である画像411、画像411に埋め込む電子透かし情報412、および埋め込みパラメータ413が入力された(S700)後に、埋め込み処理を何回実行したかをカウントする変数であるtを「1」に設定する(S1000)。次に、電子透かしパターン作成部431で電子透かしパターンを作成し(S701)、電子透かし埋め込み部432は電子透かしパターンを埋め込むと共に、埋め込みによる画素値の変更を記憶装置に記憶する(S702)。変更データ分析部441は、単位領域ごとに画素変更情報を集計して第1評価値を算出し(S703)、その結果、第1評価値が所定の条件を満たすか否かを判定する(S704)。
【0081】
判定の結果、第1評価値が予め設定された条件を満たさない場合(S704:N)、変更データ分析部441は、予め設定された繰り返し上限を指定する変数tMAXと実際の埋め込み処理実行回数tとを比較し、tがtMAX以上であるか否かを判定する(S1001)。tがtMAX以上である場合(S1001:Y)、埋め込み処理実行回数が繰り返し上限に達したとみなし、電子透かし埋め込み装置400は電子透かし埋め込み済み画像を出力せずに終了する。
一方、tがtMAX以上ではない場合(S1001:N)、変更データ分析部441は埋め込み処理実行回数tを「1」だけ増やし(S1002)、第1評価値が予め設定された条件を満たさなかった原因を解消するように適切に埋め込みパラメータ413を調整し、再度電子透かし埋め込みを開始する(S705)。
【0082】
本実施例によれば、繰り返し上限tMAXと実際の埋め込み処理実行回数tとの比較結果に基づき、以後の電子透かし埋め込み処理の制御を行い、電子透かしの埋め込み処理の回数を制限することができる。なお、繰り返しの上限回数は、予め定められたものであっても、埋め込みパラメータによって最初に指定されるものであっても良い。
【0083】
tがtMAX以上である場合(S1001:Y)、埋め込み処理実行回数が繰り返し上限に達したとみななされるが、その後の制御としては様々なものがありうる。上記のように、何もせずに電子透かし埋め込み装置400の処理を終了する例や、図5のユーザインターフェイス530で表される画像表示デバイスに埋め込み処理実行回数が繰り返し上限に達した旨などを表示して処理を終了する例、さらには、画像表示デバイスに埋め込み処理実行回数が繰り返し上限に達した旨などを表示するとともに最後の電子透かし埋め込みで作成した電子透かし埋め込み済み画像を出力して終了する例、などが挙げられる。
【0084】
以上、幾つかの実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されずに種々変形して実施することができる。例えば、埋め込みパラメータや、利用する第1評価関数、第1評価値、第2評価関数、第2評価値、さらには変更データ分析部で実行する分析は、埋め込み対象データ信号、電子透かしパターンの配置方法などの埋め込み方式、想定する埋め込み検出間の画像変化の種類や程度に応じて変更することができる。
【符号の説明】
【0085】
400:電子透かし埋め込み装置 411:画像 412:電子透かし情報 413:埋め込みパラメータ 414:電子透かし埋め込み済み画像 421:画像入力部 422:電子透かし情報入力部 423:埋め込みパラメータ入力部 424:画像出力部 431:電子透かしパターン生成部 432:電子透かし埋め込み部 441:変更データ分析部
50:情報処理装置 500:CPU 510:RAM 520:記憶装置 530:ユーザインターフェイス 540:通信インターフェイス 550:メディアインターフェイス
560:ネットワーク 570:記録媒体
600:画素変更情報 610:単位領域 620、621:単位領域 900:第1評価値情報 910、911:単位領域 920:注目単位領域 921、922、923、924:隣接単位領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子透かし埋め込み装置及び方法、及びそのプログラムに係り、特に画像などのデータに電子透かしを埋め込む技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子媒体に記録されたコンテンツに対する情報漏洩対策、著作権管理、コピー制御などを目的として、デジタルコンテンツに目立たないように付加情報を挿入する電子透かしの技術が種々提案されている。例えばその一つとして、非特許文献1には、パッチワーク方式と称する、信号の統計量を利用する電子透かし方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献1には、画像に対する電子透かしにおいて、パッチワーク方式のパッチを複数の画素に拡張した技術が開示されている。即ち、多ビットの情報を電子透かしとして画像に埋め込む際に、電子透かしを構成する各ビットの検出強度を測定し、電子透かし埋め込みの程度を定量化する。そして必要に応じて各ビット間の検出強度を調整することによって、全ビットの安定的な電子透かしの検出を可能とすると共に画質の向上を図っている。
【0004】
電子透かし技術においては、電子透かし埋め込み済みデータから埋め込み情報が安定して検出可能であること、及び電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化が最小限であることが望ましく、これら2つの要請はトレードオフの関係にある。具体的に言えば、埋め込み情報の検出を容易とするために、単純には電子透かし埋め込みによるデータの変更を大きくすることが考えられるが、多くの場合、データの大きな変更はコンテンツの劣化の程度も大きくする。一方、電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化を最小限にするために、単純には埋め込みによるデータの変更を小さくすることが考えられるが、多くの場合、データの小さな変更では埋め込み情報が安定して検出できない。そのため、コンテンツの劣化と透かし検出の安定性の両者のバランスを取ることが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−344720公報
【特許文献2】US公開2005/25333明細書
【非特許文献1】W. Bender, D. Gruhl, N. Morimoto, and A. Lu: "Techniques for data hiding", IBM Systems Journal, Vol.35, No.3&4, pp.313-336 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子透かし技術においては、埋め込み情報の安定した検出が可能であること、及び電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化が最小限であることが望ましい。
然るに、特許文献1に記載の電子透かし埋め込み処理装置は、電子透かしの安定した検出を可能とするために、透かし埋め込み後に検出処理を実行し、各埋め込みビットの検出強度を得たうえで、検出強度の過不足に基づいて埋め込み強度を調整するが、一般に検出処理は計算量が多いため、該電子透かし埋め込み処理装置では全体の処理時間が長いという課題がある。
【0007】
また、特許文献2や非特許文献1で提案されている、局所的な領域に全透かし情報を埋め込む方法では、埋め込み情報の位置分布の分析が透かし埋め込みの程度の分析に有効であるが、特許文献1に記載の電子透かし埋め込み処理装置ではこのような着眼点がなく、コンテンツの劣化の抑止と安定した電子透かしの検出の両方を実現するには十分とは言えない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、好ましくは、データに電子透かし情報を埋め込む電子透かし埋め込み装置において、該電子透かし情報から多ビット情報の電子透かしパターンを生成する電子透かしパターン生成部と、該生成部で生成された該電子透かしパターンを該データに埋め込んで、変更されたデータを生成する電子透かし埋め込み部と、該変更データを分析して、該電子透かし埋め込み部によって埋め込まれた電子透かしの埋め込みの程度を判定し、当該判定に基づき該埋め込みパラメータを調整する変更データ分析部を有する電子透かし埋め込み装置として構成される。
また本発明は、この電子透かし埋め込み装置で実行される電子透かし埋め込み方法、及びプログラムとして把握される。
【0009】
好ましい例によれば、本発明は、埋め込みの程度の分析において、データに含まれる複数の小領域ごとに、各々の埋め込みビットに対応する画素変更を集計し、全埋め込みビットに対応する集計から第1評価値を算出する。この第1評価値を基に電子透かし埋め込みの程度を判定し、その判定結果に応じて、上記埋め込みパラメータを調整する。
【0010】
さらに好ましくは、近傍に位置する複数の小領域から算出された複数の第1評価値から、埋め込み情報の位置分布の評価を取り入れた第2評価値を算出する。この第2評価値を基に電子透かし埋め込みの程度を判定し、その判定結果に応じて、上記埋め込みパラメータを調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子透かし埋め込み対象となるコンテンツなどのデータの劣化を防止し、かつ安定した電子透かし検出を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】埋め込み情報を多ビットとする電子透かし埋め込み方法を説明する概念図。
【図2】全透かし情報が局所的な領域に集中した構造を画像上に複数回繰り返し配置した透かしパターンを用いて埋め込み情報を多ビットとする電子透かし埋め込み方法を説明する概念図。
【図3】人間の視覚特性を利用した電子透かし埋め込み方法を説明する概念図。
【図4】一実施例(実施例1)による、電子透かし埋め込み装置の構成例を示すブロック図。
【図5】電子透かし埋め込み装置を実現するハードウェア構成例を示すブロック図。
【図6】変更データ分析部における電子透かしの埋め込みの分析処理を説明する概念図。
【図7】電子透かし埋め込み装置の処理動作の例を示すフローチャート。
【図8】実施例2による電子透かし埋め込み装置の処理動作の例を示すフローチャート。
【図9】実施例2における変更データ分析部の分析処理を説明する概念図。
【図10】実施例3による電子透かし埋め込み装置の処理動作の例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図を用いて詳細に説明する。
まず、一般的な電子透かしの埋め込みおよび検出について説明する。
電子透かし埋め込み対象画像をP、画像Pに埋め込む電子透かしパターンをWとする。また、iをインデックスとして、画像Pの第i番目の画素値をpi、電子透かしパターンWの第i番目のパターン値をwi、とする。電子透かしパターンWのパターン値は、電子透かし埋め込みにおいて画像Pの画素をどのように変更するかを定める値である。電子透かし埋め込みによって画質が大きく劣化することを防ぐ目的で、画素値の変更が全体として増加にも減少にも偏らないように電子透かしパターンWを設定するとよい。この場合、電子透かしパターンWは、次式を満たすように設定される。
【0014】
【数1】
【0015】
電子透かし埋め込み処理は次式で表される。
【0016】
【数2】
【0017】
ここで、画像Pに対して電子透かしパターンWを埋め込んだ透かし埋め込み済み画像をP’とし、透かし埋め込み済み画像P’の第i番目の画素値をpi’とする。すなわち、画素ごとに画素値と電子透かしパターンのパターン値を加えることで電子透かしが埋め込まれる。
【0018】
電子透かしの検出には、電子透かしパターンWを用いる。電子透かしの検出対象画像をQ、iをインデックスとして画像Qの第i番目の画素値をqi、とする。検出対象画像Qに対する電子透かし検出処理では、次式で表される検出値dを算出する。
【0019】
【数3】
【0020】
上式のように演算子「・」は、要素ごとの積を全ての要素に対して算出し、それら積の総和を算出する演算を表す。
【0021】
検出値は、検出対象画像Qに電子透かしパターンWが埋め込まれている場合は大きい値となり、埋め込まれていない場合は0近傍の小さい値となる。電子透かしパターンWで表される電子透かしが埋め込まれているか否かの判断は、検出値dを閾値と比較することで実現される。
【0022】
上記電子透かし埋め込み検出方法を説明する例として、画像P、電子透かしパターンWを次式のようにおく。
【0023】
【数4】
【0024】
ここで画像P、電子透かしパターンWは、ともに縦に4ピクセル、横に5ピクセルの大きさの長方形であるが、画像P、電子透かしパターンWの大きさや形状はこれに限らない。また、一般的に画像では隣り合う画素は近い値をもつ性質を有しており、上記例のように画素値を設定しても一般性を欠かない。本例では、透かし埋め込み済み画像P’は次式のように計算される。
【0025】
【数5】
【0026】
透かし埋め込み前の画像Pに対する検出値をdP、電子透かしパターンWを埋め込んだ透かし埋め込み済み画像P’に対する検出値をdP’とすると、これらは次式のように算出される。
【0027】
【数6】
【0028】
【数7】
【0029】
電子透かしパターンWのパターン値の総和が0であること([数1])と、画像では隣り合う画素は一般に近い値をもつことから、上記[数6]のように透かしが埋め込まれていない画像Pに対する検出値dPは0の近傍の値となる。一方、上記[数7]のように電子透かしパターンWを埋め込んだ透かし埋め込み済み画像P’に対する検出値dP’は、W・Wの近傍の値となる。したがって、透かし検出対象画像に対して算出した検出値がW・Wの近傍の値であるか、0の近傍の値であるか、を判定することによって、透かし検出対象画像に透かしパターンが埋め込まれているか否かを判定できる。透かしパターンが埋め込まれているか否かで1ビットの情報を表すことができるので、このようにして1ビットの情報の埋め込み検出が実現される。
【0030】
検出値がW・Wの近傍の値であるか0の近傍の値であるかを判定することが電子透かし情報の検出にあたるため、W・Wを0に近い小さい値としてしまった場合は、透かしパターンが埋め込まれているにも関わらず埋め込まれていないと判定する、または、透かしパターンが埋め込まれていないにも関わらず埋め込まれていると判定する、といった誤った検出結果が出力される可能性が大きくなる。したがって安定した電子透かしの検出のためにはW・Wが0と十分離れた大きな値であれば良い。
【0031】
W・Wを大きな値とする方法には、例えば、透かしパターンWの個々のパターン値を絶対値の大きな値に設定することが考えられる。これは、電子透かし埋め込みによる一つ一つの画素の画素値変更量を大きくすることに相当する。また、W・Wを大きな値とする別の方法には、例えば、透かしパターンWとしてより大きなパターンを用いることも考えられる。これは、電子透かし埋め込み対象とする画像領域を大きくすることに相当する。これとは逆に、透かしパターンWの個々のパターン値を絶対値の小さな値に設定し、電子透かし埋め込みによる一つ一つの画素の画素値変更量を小さくすること、あるいは、透かしパターンWとしてより小さなパターンを用い、電子透かし埋め込み対象とする画像領域を小さくすること、などによりW・Wを小さな値とすることができる。
【0032】
このように、透かしパターンWから算出される値W・Wは、電子透かしの埋め込み強度の尺度として利用できる。W・Wが大きい値であるような透かし埋め込みを、埋め込み強度が強い或いは大きいと表現し、逆にW・Wが小さい値であるような透かし埋め込みを埋め込み強度が弱い或いは小さいと表現する。
【0033】
電子透かしを強く埋め込むと安定した透かし検出が可能となるが、それと同時に画質への影響も大きくなる。また逆に、弱く埋め込むことで画質への影響を抑えることができるが、透かし検出が不安定になる。このように電子透かしの検出の信頼性と電子透かしによる画質への影響はトレードオフの関係にある。
【0034】
次に、埋め込み情報を多ビットとする電子透かし埋め込み方法について説明する。上記の電子透かし埋め込み検出方法では、1ビットの埋め込み情報しか表現できない。埋め込み情報を多ビットとする最も簡単な方法として、電子透かし埋め込み対象画像を、埋め込み情報1ビットずつに対応する小領域に分割して埋め込む方法がある。
【0035】
図1はこの方法を説明する概念図である。埋め込むべき情報である電子透かし情報:b0b1b2…が与えられたとき、各ビットに対して適切に電子透かしパターンを作成し、それぞれ画像中の対応する小領域に埋め込むことで複数のビットの埋め込みを実現する。どの小領域と埋め込みビットが対応するかは、予め決定された固定的な対応関係であってもよいし、埋め込み時に与えられる埋め込みパラメータから決定される対応関係であっても良い。
【0036】
電子透かし技術においては、電子透かし埋め込み済みデータから埋め込み情報が安定して検出可能であることが望ましい。ところが、電子透かし埋め込み済みデータが歪みや部分切り出しなどの処理を経ることや、透かし埋め込み時と透かし検出時の透かしパターンの位置にずれが生じること、などにより透かしが検出できなくなることが考えられる。
例えば、図1のように、画像を埋め込み情報1ビットずつに対応する小領域に分割して埋め込みを行う方式においては、電子透かし埋め込み済み画像が部分切り出し処理を経ることによって、あるビットに対応する領域が失われてしまう可能性がある。このような場合、たとえ残りのビットが全て検出できたとしても、埋め込み情報全体としての検出が失敗となる事態に陥る。
【0037】
この対策として、特許文献2や非特許文献1には、全透かし情報が局所的な領域に集中した構造を、画像上に複数回繰り返し配置した透かしパターンを用いることによって埋め込み情報を多ビットとする透かし埋め込み方法が提案されている。
図2はその方法を説明する概念図である。これは、埋め込み情報を多ビット化する際の画像分割を工夫した方法であるといえる。埋め込むべき情報である電子透かし情報:b0b1b2…が与えられたとき、全ビットを表現する適切な素パターンを作成し、素パターンを繰り返し配置することによって電子透かしパターンを作成する。素パターンには電子透かし情報を構成する各ビットに対して、対応する画素が少なくても1つ以上割り当てられる。このような電子透かしパターンを用いることで、透かし埋め込み済み画像が歪みや部分切り出しなどの処理を経た場合でも、画像の一部分から埋め込み情報全体としての検出が成功する可能性が大きくなる。
【0038】
電子透かし技術においては、電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化が最小限であることも望ましい。提案されている数多くの電子透かし方法においても電子透かし埋め込みによるコンテンツの劣化を抑制する様々な工夫が考えられている。画像信号に対する電子透かし埋め込みにおいては、埋め込み対象画像のそれぞれの画素に対して、画素値変更の目立ちやすさを考慮して画素値変更量を調整する手法がある。具体的には、電子透かしパターンWのパターン値を、対応する画素の画素変更の目立ちやすさに応じて調整する。画素変更が目立ちやすい画素に対してはパターン値の絶対値を小さくし、逆に画素変更が目立ちにくい画素に対してパターン値の絶対値を大きくすることで、全体として一定量の埋め込み強度を確保しつつも画質への影響を抑えることができる。
【0039】
このような人間の視覚特性を利用した電子透かし埋め込み方法を説明する概念図を、図3に示す。図3(a)は多値画像の一例を表しており、画像には空310、雲311、山312、建物313が含まれている。図3(b)は二値画像の一例を表しており、画像には白い背景320の上に文字321、図表323が配置されている。視覚特性を利用した電子透かし埋め込みとして、画像中のエッジ部分に相当する画素と平坦な部分に相当する画素の間に存在する画素変更の目立ちやすさの違いを利用した手法が一般に広く採用されている。これは、画素値の変更が同じ大きさであったとしても、平坦な部分では変更が目立ちやすく、エッジ部分ではその変更が目立ちづらいという人間の視覚特性(周波数マスキング効果)に基づいたものである。
【0040】
この手法を図3(a)の多値画像に対して用いる場合は、空310、雲311、山312、建物313の境界などに存在するエッジ部分の画素変更量を大きくし、空310、雲311、山312、建物313の内部に存在する平坦部分の画素変更を小さくする。この手法を図3(b)の二値画像に対して用いる場合は、画素変更を文字321や図表322の輪郭付近に限定し、背景320などの平坦部分には変更を加えないという埋め込み方法となる。特許文献2においては、二値画像に対してさらに深い分析によって変更画素を制御する手法が提案されている。
【0041】
特許文献2記載の電子透かし方法は、二値画像中のあらゆる画素に対して、その画素および隣接画素の状態から注目画素の画素値変更の目立ちにくさを基に画素変更優先度を算出し、透かし埋め込み時に優先度の高い画素から変更することで画質劣化を抑えることを可能とし、さらには、どの程度の優先度を有する画素まで画素値変更を実施するかによって電子透かしの強度の調節を可能としている。
【0042】
また同様な視覚特性として、同じ平坦部であってもその明るさによって画素値の変更の目立ちやすさに差が存在すること(輝度マスキング効果)も知られている。この効果利用した透かし埋め込み方法を図3(a)の多値画像に対して用いる場合は、空310と山312の平坦部に対して、例えば、画素値変更が目立ちにくい明るさである空310の平坦部において画素変更量を大きくし、画素値変更が目立ちやすい明るさである山312の平坦部において画素変更量を小さくする、などの埋め込み方法となる。
【0043】
このように、埋め込み対象画像のそれぞれの画素に対して画素値変更の目立ちやすさを考慮して画素値変更量を決定する手法を用いれば、全体として安定した埋め込み量を確保し、かつ透かし埋め込みによる画質の劣化を防止することが可能となる。
【0044】
次に、図4以降を参照して、本発明の好ましい実施例について説明する。
【実施例1】
【0045】
図4は、電子透かし埋め込み装置の構成を示す。
【0046】
電子透かし埋め込み装置400は、画像入力部421、電子透かし情報入力部422、埋め込みパラメータ入力部423、画像出力部424、電子透かしパターン生成部431、電子透かし埋め込み部432、変更データ分析部441を有する。画像入力部421は電子透かしの埋め込み対象データとなる画像411を入力する。電子透かし情報入力部422は、画像411に埋め込まれる電子透かし情報412を入力する。埋め込みパラメータ入力部423は、電子透かしの埋め込みを制御する情報として埋め込みパラメータ413を入力する。画像出力部424は、電子透かしが埋め込まれた電子透かし埋め込み済み画像414を出力する。この電子透かし埋め込み済み画像は、画質の劣化が抑止されかつ安定した電子透かし検出が実現されたものである。
【0047】
電子透かしパターン生成部431は、電子透かし情報入力部422から多ビット情報である電子透かし情報412を受け付け、さらに埋め込みパラメータ入力部423から埋め込みパラメータ413を受け取り、それらに基づいて図2で示されるような、適切な電子透かしパターンを生成する。
【0048】
電子透かし埋め込み部432は、画像入力部421から透かし埋め込みの対象である画像411を受け取り、埋め込みパラメータ入力部423から受けた埋め込みパラメータ413に従って、電子透かしパターン生成部431から出力された電子透かしパターンを画像411に埋め込む。この際、電子透かし埋め込み部432は、画像411に含まれる各画素について、図3に示したような、人間の視覚特性を利用した電子透かしの埋め込みをする。すなわち、画像411に埋め込まれる電子透かしパターンを、画素変更の目立ちやすさを考慮して調整する。そのために、電子透かし埋め込み部432は電子透かし埋め込みによる画素値の変更を一時的に記憶装置に記憶する。
【0049】
変更データ分析部441は、電子透かし埋め込み部432からの電子透かしパターンの埋め込まれた画像および電子透かし埋め込みによる画素値の変更の情報を、埋め込みパラメータ入力部423から埋め込みパラメータ413を受け付け、画素値の変更から明らかとなる電子透かしを構成するビットごとの埋め込み強度を分析する。さらにその分析結果に基づき、必要に応じて埋め込みパラメータ413を調整し、適切な埋め込み強度で電子透かしが埋め込まれるように、再度電子透かしの埋め込みを実行する。分析の結果、適切な埋め込み強度で電子透かしが埋め込まれたと判定した場合には、画像出力部424を介して電子透かし埋め込み済み画像を出力する。
【0050】
次に、図5を参照して、上記電子透かし埋め込み装置400の諸機能を実現する、ハードウェアの構成例について説明する。
そのハードウェア構成である情報処理装置50は、CPU500、RAM510、ハードディスク(HDD)等の記憶装置520、ユーザインターフェイス530、通信インターフェイス540、およびメディアインターフェイス550を有して構成される。CPU500は、RAM510又は記憶装置520に格納されたプログラムを実行して、図4に示す各部の機能を実現する。RAM510は、CPU500が実行するプログラムおよびCPU500が使用する画像などのデータを一時的に格納する。
【0051】
記憶装置520は、起動時にCPU500が実行するブートプログラムや、ハードウェアの制御を実現するプログラム、動画、音声、画像などのコンテンツ等のデータを格納する。ユーザインターフェイス530はマウス、キーボード、マイク、カメラ、スキャナなどの入力デバイスおよびスピーカーなどの音声出力デバイス、ディスプレイなどの画像表示デバイスである。通信インターフェイス540はネットワーク560を介して外部の装置と通信し、電子透かし埋め込み対象となるデータを受信して記憶装置520に格納し、さらには、透かし埋め込み済みデータをネットワーク560を介して送信する。メディアインターフェイス550はCD−ROM、DVD、磁気ディスク、半導体メモリなどの記録媒体570から、電子透かし埋め込み対象となるデータを読み出して記憶装置520に格納し、さらには、透かし埋め込み済みデータを記録媒体570に記録する。
電子透かし埋め込み装置400の諸機能を実現するプログラムは、通信インターフェイス540を介してネットワーク560から、又はメディアインターフェイス550を介して記録媒体570から受け付けられ、RAM510や記憶装置520に格納され、適宜CPU500で実行される。
【0052】
図6は、変更データ分析部441における電子透かし埋め込みデータの分析処理を概念的に示す。
変更データ分析部441は、電子透かし埋め込み部432より透かし埋め込みに伴う画素変更に関する情報、より具体的には、どの画素がどのような変更を加えられたのかを表す情報を受け付ける。そして、予め定められた大きさの単位領域内の画素変更を集計し、その単位領域における埋め込みの程度を評価するための第1評価値を算出する。同様に、単位領域を画像内でずらしながら画像のそれぞれの位置における第1評価値を算出し、それらから電子透かし埋め込みを分析、制御する。第1評価値の算出の例については後述する。
【0053】
図6(a)および(b)は、変更データ分析部441にて実行される、電子透かし埋め込みによる画素値変更の集計を説明する概念図である。ここでは例として、埋め込む電子透かし情報は8ビットであるとし、それをb0b1b2…b7と表す。図6(a)において、600は透かし埋め込みによって各画素がどのような変更を加えられたかを表す情報を示し、610は単位領域の一つを示す。
【0054】
第1評価値を算出するため、変更データ分析部441は単位領域610に含まれる画素値変更の大きさを、対応する埋め込みビットごとに加算する。加算結果は、単位領域610における各ビットの埋め込み強度を表す値となる。図6(b)は単位領域610における埋め込みビットに対する埋め込み強度の例を示す。電子透かし埋め込み部432は、図3を参照して説明したように、埋め込み対象画像のそれぞれの画素に対して画素値変更の目立ちやすさを考慮して画素値変更量を調整し埋め込みを実行するため、各ビット間の埋め込み強度にばらつきが生じている場合がある。
【0055】
例えば、図6(b)に示すように、埋め込み強度にばらつきが生じると、埋め込みビットb3のように埋め込み強度の小さいビットが存在することが考えられる。このように埋め込み強度が小さいビットは、透かし検出処理時にその検出を失敗する可能性が大きい。埋め込み情報は複数のビットで構成されているので、検出に失敗するビットが存在すると、仮に残りのビットが全て正しく検出できたとしても、単位領域610からの埋め込み情報全体としての検出が失敗となってしまう。このような事態を回避するため、予め誤り訂正分の冗長性を持たせて埋め込み情報を構成することができるが、たとえ誤り訂正を利用していたとしても埋め込み強度の小さいビットが含まれることは、埋め込み情報全体としての検出の安定性を低下させる要因であることに変わりはない。
【0056】
また、例えば図6(b)に示す埋め込みビットb5のように、埋め込み強度の大きいビットが存在することも考えられる。このように埋め込み強度が大きいビットは、透かし検出処理時に検出が成功する可能性が大きい。しかし、多ビットの埋め込み情報全体としての検出の成功失敗は埋め込み強度の小さいビットに左右されるため、このように埋め込み強度が大きいビットが埋め込み情報全体の検出に有効に利用されていない。それどころか、埋め込み強度が不必要に大きいビットが含まれることは、画質劣化を必要以上に引き起こす要因である。
【0057】
変更データ分析部441は、単位領域における各ビットの埋め込み強度を算出した後、これを第1評価関数に入力し、その出力として第1評価値を得る。ビットの埋め込み強度からその単位領域の第1評価値を算出する第1評価関数としては、例えば、全埋め込みビットの埋め込み強度に関する平均値算出関数が考えられる。また別の例として、全埋め込みビットの埋め込み強度のうちの最小値を算出する関数が考えられる。この場合に得られる第1評価値は、単位領域からの埋め込み情報全体としての検出しやすさの尺度を表すものとなる。
さらに別の例として、全埋め込みビットの埋め込み強度のうちの最大値を算出する関数が考えられる。この場合得られる第1評価値は、単位領域の埋め込みの超過度の尺度を表すものとなる。第1評価関数としては、上記した3つの例の他に、より複雑な計算式を用いることもできる。
【0058】
変更データ分析部441は、単位領域を画像内でずらすことにより、画像のそれぞれの位置における単位領域内の第1評価値を算出する。ここで、単位領域の大きさは、埋め込みに利用した電子透かしパターンの最小繰り返しサイズと同じ大きさであってもよいし、または、透かし検出処理時に検出対象とする画像領域と同じ大きさであってもよい。更に単位領域の大きさは、別の大きさであっても構わない。また、単位領域のずらし方は複数の単位領域が一部重なるようなずらし方であってもよい。
【0059】
図6(c)は、画像のそれぞれの位置における単位領域のうち、2つ領域620,621を例示している。埋め込み強度が画像内の位置ごとに様々に異なっているため、これら2つの単位領域内の第1評価値は、一般に異なった値をとる。例えば、空の部分や輪郭を多く含む単位領域620では第1評価値が高く、山や平坦部分を多く含む単位領域621では第1評価値が低くなることがあり得る。変更データ分析部441は、このように様々に異なる第1評価値を用い、電子透かし埋め込みを分析し電子透かし埋め込みの制御を行う。
【0060】
変更データ分析部441における分析の判定については、例えば以下のようなものが考えられる。第1評価値として埋め込み情報の検出しやすさの尺度を表す値を用い、第1評価値が予め定められた閾値以上の値であるような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みが十分な埋め込み強度を有しているか否かを判定できる。または、第1評価値が予め定められた閾値以下の値であるような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不足しているか否かを判定することができる。
また別の例として、第1評価値に単位領域の埋め込みの超過度の尺度を表す値を用い、全単位領域の第1評価値の平均値を算出し、その平均値が予め定められた閾値以上の値であるか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不必要に強いか否かを判定することができる。
【0061】
変更データ分析部441は、判定の結果に応じて以後の電子透かし埋め込みの制御を実行する。即ち、電子透かし埋め込みが適切に完了したと判定した場合には、透かし埋め込み済み画像を画像出力部424に出力する。
一方、電子透かし埋め込みが不適切にであったと判定した場合には、不適切であった原因に応じて一部または全ての画素に対する埋め込みを適切に修正するように、埋め込みパラメータを再度設定して電子透かし埋め込みを実行する。
なお、変更データ分析部441の実行する分析、判定、及びそれに基づくその後の制御は上記の例に限定されない。分析に利用する第1評価値は1種類であってもよいし、異なる複数の評価値を用いても良い。さらには、分析、判定、制御は予め定められたものであっても、埋め込みパラメータによって指定されるものであっても良い。
【0062】
次に、図7のフローチャートを参照して、電子透かし埋め込み装置400の処理動作について説明する。
まず、画像入力部421より透かし埋め込み対象である画像411が入力され、電子透かし情報入力部422より画像411に埋め込む情報である電子透かし情報412が入力される。さらに、埋め込みパラメータ入力部423より電子透かし埋め込みを制御する情報である埋め込みパラメータ413が入力される(S700)。
次に、電子透かしパターン作成部431は、電子透かし情報412と埋め込みパラメータ413に従って電子透かしパターンを作成する(S701)。電子透かし埋め込み部432は、受け付けた画像411に対して、埋め込みパラメータ413に従って電子透かしパターンを埋め込む。併せて、電子透かし埋め込み部432は埋め込みによる画素値の変更を記憶装置に記憶する(S702)。
【0063】
次に、変更データ分析部441は、電子透かし埋め込み部432からの画素変更情報を受け付け、埋め込みパラメータ413に従って単位領域ごとに画素変更情報を集計して、上記の第1評価値を算出する(S703)。そして変更データ分析部441は、この第1評価値に関して、予め設定された上記の条件を検証し、その条件を満たすか否かを判定する(S704)。判定の結果、条件を満たす場合には(S704:Y)、変更データ分析部441は、電子透かし埋め込み部432から受けた透かし埋め込み済み画像を画像出力部424から出力して(S706)、その画像は透かし埋め込み済み画像DBに記憶される。
【0064】
一方、第1評価値が予め設定された条件を満たさない場合(S704:N)、変更データ分析部441は条件を満たさなかった原因を解消するように、適切に埋め込みパラメータ413を調整し、再度電子透かし埋め込みを開始する(S705)。第1評価値に平均値算出関数を用いた場合、平均値に対して所定の範囲を超えている例えば埋め込みビットb3、b5(図6(b))について、埋め込みパラメータを再度調整して、電子透かしパターンを作成し、上記の処理動作を繰り返す。また、他の例として、第1評価値に最小値算出関数を用いた場合、最小値の埋め込みビットb3(図6(b))について、埋め込みパラメータを再度調整して、電子透かしパターンを作成し、上記の処理動作を繰り返す。第1評価値に最大値算出関数を用いた場合も同様である。
【実施例2】
【0065】
図8及び図9を参照して、実施例2について説明する。
この例は、上記した第1評価値に加えて第2評価値を利用して、電子透かしの埋め込みの程度を判定するものである。これにより、変更データ分析部における埋め込みの程度の判定において、ある単位領域の評価に関して、その領域の近傍の単位領域の評価を反映させるものである。
【0066】
本実施例による電子透かし埋め込み装置の構成は、実施例1の装置400と同じであるが、変更データ分析部441の実行する分析処理ステップが異なる。本実施例では、図8に示す処理フローにおいて、ステップS800−802が実施例1のステップS704と置き換わっている。
【0067】
すなわち、変更データ分析部441は、画像の単位領域ごとの画素変更を集計して第1評価値を算出した(S703)後に、それぞれの単位領域について第2評価値を算出する(S800)。第2評価値は、画像上の位置が近傍にある複数の単位領域の第1評価値を用いて算出される、埋め込みの程度を評価するための値である。そして、変更データ分析部441は算出した第1評価値および第2評価値に関して、予め設定された条件を検証し、条件を満たすか否かを判定する(S801)。
【0068】
電子透かし埋め込み部432より受け付けた画素変更に関する情報を単位領域ごとに集計し、単位領域ごとに第1評価値を算出するという変更データ分析部441の実行する処理は、本実施例と実施例1において同様である。変更データ分析部441はさらに、単位領域ごとに、画像上の位置関係が当該単位領域の近傍にある複数の単位領域に対する第1評価値から、当該単位領域における埋め込みの程度を評価するための第2評価値を算出する。
【0069】
図9は、変更データ分析部441の分析処理を説明する概念図である。
図9(a)において、900は算出した全ての第1評価値をそれぞれ対応する単位領域に配置した第1評価値情報を示し、910は単位領域の一つを示す。図9では単位領域の各々を、第1評価値が高いほど白く、第1評価値が低いほど黒く表示している。ここでは複数の単位領域の間に重なりがないようにずらして第1評価値を算出した例を表示しているが、実施例1でも説明したように、複数の単位領域が一部重なるようなずらし方であってもよい。図9(a)の単位領域910においては、第1評価値が周囲の単位領域よりも高い値となっている。例えば第1評価値として、埋め込み情報の検出しやすさの尺度を表す値を利用していた場合には、これは単位領域910において、埋め込み情報の検出が周囲と比較して容易であることを意味している。しかしこのように第1評価値だけから埋め込みの程度に関する分析結果を導くのではなく、実際の電子透かし埋め込み検出に即した分析を実行することにより、より正確な埋め込み程度の分析が実現できる。具体的には以下のような画像の変化を考慮した分析を行う。
【0070】
電子透かし埋め込み済み画像が電子透かし検出処理に入力されるとき、意図せず画素値が埋め込み直後とは異なっている場合がある。その原因としては様々考えられるが、例えば、画像が幾何学的に変形して位置にずれが生じていることや、画像がデータ圧縮やフォーマット変換などの処理を経ていること、または、画像が印刷、スキャンを経ていてにじみや歪みなどが加わったこと、などがある。このような意図しない画像の変化の特徴として、画像内容が大幅に変化するのではなく、画像の各領域が各々の近傍で影響を及ぼしあうことが挙げられる。電子透かしの埋め込み程度の分析を、実際の電子透かし埋め込み検出に即したものとするために、このような意図されていない画像の変化をも考慮することが有効である。
【0071】
図9(b)は、変更データ分析部441による第2評価値の算出の例を説明する図である。注目する単位領域920の第2評価値を算出するために、変更データ分析部441は、単位領域920の第1評価値とそれに隣接する4つの単位領域921、922、923、924のそれぞれの第1評価値を、第2評価関数に入力しその出力として第2評価値を得る。
【0072】
ここでは注目する単位領域に対する近傍単位領域として、上下左右に隣接する4つの単位領域を利用する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、近傍単位領域として斜め方向に隣接するものも加えて、より多くの単位領域を利用しても良いし、近傍にはあるが、境界を共有して隣接している訳ではない単位領域を利用しても良い。複数の第1評価値から注目単位領域の第2評価値を算出する第2評価関数としては様々な関数があり得るが、例えば、入力第1評価値に関する平均値算出関数が考えられる。また、入力第1評価値の最小値や最大値を算出する関数も考えられるし、上記以外のより複雑なものを用いてもよい。
【0073】
変更データ分析部441は、注目する単位領域を画像内でずらして上記処理を実行することにより、画像のそれぞれの位置における第2評価値を算出する。そして、変更データ分析部441は、このように算出した第2評価値および第1評価値から、電子透かしの埋め込みの程度を分析し、分析結果を基に電子透かし埋め込みの調整制御を行う。
【0074】
このように、第1評価値だけではなく第2評価値も利用して分析を行うことにより、ある単位領域の評価に対して、近傍の単位領域の評価を反映させることができる。第1評価値として埋め込み情報の検出しやすさの尺度を表す値を利用した例では、第1評価値だけを利用した分析によって、図9(a)の単位領域910は埋め込み情報の検出が容易であると判定されていた。しかし、電子透かし埋め込み済み画像の画素値は、前述のように検出処理に入力される際には埋め込み直後から変化していることがあり、単位領域910のような検出の容易である領域が検出の困難な領域の中に孤立している領域では、周囲の領域の影響から検出が困難になる傾向がある。また逆に、単位領域911のように検出の困難である領域であったとしても、近傍の領域が検出の容易な領域であるような場合は、周囲の領域の影響から検出が容易になる傾向がある。このように第1評価値だけを利用した分析では正確な判定ができなかった場合について、第2評価値を導入することにより判定の精度を上げることが可能となる。第1評価値として検出しやすさの尺度を表す値を利用する場合に限らず、他の第1評価値を利用する場合においても、同様の分析が有効である。
【0075】
第2評価値を用いることによって、変更データ分析部441は、第1評価値と第2評価値を複合的に用いて分析する。具体的な分析として例えば以下のものが考えられる。第1評価値として埋め込み情報の検出しやすさの尺度を表す値を用い、「第1評価値が予め定められた閾値以上の値であり、かつ、その位置の第2評価値が予め定められた閾値以上である」という条件を満たすような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みが十分な埋め込み強度を有しているか否かを判定できる。
また別の例として、第1評価値に単位領域の埋め込みの超過度の尺度を表す値を用い、「全単位領域の第1評価値の平均値が予め定められた閾値以上の値であり、かつ、全単位領域の第2評価値の平均値が予め定められた閾値以上の値である」という条件が満たされるか否か判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不必要に強いか否かを判定できる。
【0076】
実施例1と同様に、変更データ分析部441の実行する分析は、上記のものに限られないし、第1評価値および第2評価値のそれぞれを複数種類用いて、複合的に実行されるものであっても良い。また、変更データ分析部441の分析結果に応じた電子透かし埋め込み処理の制御は実施例1と同様に実行される。分析、制御方法は予め定められたものであっても、埋め込みパラメータによって指定されるものであっても良い。
【実施例3】
【0077】
この例は、埋め込みパラメータを調整して電子透かしパターンを再度生成して、それを画像に埋め込む処理の、繰り返し回数を制限するものである。
【0078】
本実施例における電子透かし埋め込み装置の構成は、実施例1のものと同じであるが、変更データ分析部441の実行する処理ステップが異なる。すなわち変更データ分析部441は、電子透かしの埋め込み処理の実行回数を予め定められた繰り返し上限回数と比較するという判定処理を実行する。以下の説明では、埋め込み処理実行回数をt、繰り返し上限回数をtMAXと表すこととする。
【0079】
図10のフローチャートは、実施例1に変更を加えた実施例3としての電子透かし埋め込み装置の動作例を示す。実施例2に同じ変更を加えたものも、図10と同様であるが、それは取り立てて図示していない。図10において、実施例1(図7)と同じステップには同じ符号が付してあり、実施例3ではステップ1000、1001−1002が追加された。
【0080】
透かし埋め込み対象である画像411、画像411に埋め込む電子透かし情報412、および埋め込みパラメータ413が入力された(S700)後に、埋め込み処理を何回実行したかをカウントする変数であるtを「1」に設定する(S1000)。次に、電子透かしパターン作成部431で電子透かしパターンを作成し(S701)、電子透かし埋め込み部432は電子透かしパターンを埋め込むと共に、埋め込みによる画素値の変更を記憶装置に記憶する(S702)。変更データ分析部441は、単位領域ごとに画素変更情報を集計して第1評価値を算出し(S703)、その結果、第1評価値が所定の条件を満たすか否かを判定する(S704)。
【0081】
判定の結果、第1評価値が予め設定された条件を満たさない場合(S704:N)、変更データ分析部441は、予め設定された繰り返し上限を指定する変数tMAXと実際の埋め込み処理実行回数tとを比較し、tがtMAX以上であるか否かを判定する(S1001)。tがtMAX以上である場合(S1001:Y)、埋め込み処理実行回数が繰り返し上限に達したとみなし、電子透かし埋め込み装置400は電子透かし埋め込み済み画像を出力せずに終了する。
一方、tがtMAX以上ではない場合(S1001:N)、変更データ分析部441は埋め込み処理実行回数tを「1」だけ増やし(S1002)、第1評価値が予め設定された条件を満たさなかった原因を解消するように適切に埋め込みパラメータ413を調整し、再度電子透かし埋め込みを開始する(S705)。
【0082】
本実施例によれば、繰り返し上限tMAXと実際の埋め込み処理実行回数tとの比較結果に基づき、以後の電子透かし埋め込み処理の制御を行い、電子透かしの埋め込み処理の回数を制限することができる。なお、繰り返しの上限回数は、予め定められたものであっても、埋め込みパラメータによって最初に指定されるものであっても良い。
【0083】
tがtMAX以上である場合(S1001:Y)、埋め込み処理実行回数が繰り返し上限に達したとみななされるが、その後の制御としては様々なものがありうる。上記のように、何もせずに電子透かし埋め込み装置400の処理を終了する例や、図5のユーザインターフェイス530で表される画像表示デバイスに埋め込み処理実行回数が繰り返し上限に達した旨などを表示して処理を終了する例、さらには、画像表示デバイスに埋め込み処理実行回数が繰り返し上限に達した旨などを表示するとともに最後の電子透かし埋め込みで作成した電子透かし埋め込み済み画像を出力して終了する例、などが挙げられる。
【0084】
以上、幾つかの実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されずに種々変形して実施することができる。例えば、埋め込みパラメータや、利用する第1評価関数、第1評価値、第2評価関数、第2評価値、さらには変更データ分析部で実行する分析は、埋め込み対象データ信号、電子透かしパターンの配置方法などの埋め込み方式、想定する埋め込み検出間の画像変化の種類や程度に応じて変更することができる。
【符号の説明】
【0085】
400:電子透かし埋め込み装置 411:画像 412:電子透かし情報 413:埋め込みパラメータ 414:電子透かし埋め込み済み画像 421:画像入力部 422:電子透かし情報入力部 423:埋め込みパラメータ入力部 424:画像出力部 431:電子透かしパターン生成部 432:電子透かし埋め込み部 441:変更データ分析部
50:情報処理装置 500:CPU 510:RAM 520:記憶装置 530:ユーザインターフェイス 540:通信インターフェイス 550:メディアインターフェイス
560:ネットワーク 570:記録媒体
600:画素変更情報 610:単位領域 620、621:単位領域 900:第1評価値情報 910、911:単位領域 920:注目単位領域 921、922、923、924:隣接単位領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データに電子透かし情報を埋め込む電子透かし埋め込み装置であって、
該電子透かし情報から多ビット情報の電子透かしパターンを生成する電子透かしパターン生成部と、
該生成部で生成された該電子透かしパターンを該データに埋め込んで、変更されたデータを生成する電子透かし埋め込み部と、
該変更データを分析して、該電子透かし埋め込み部によって埋め込まれた電子透かしの埋め込みの程度を判定し、当該判定に基づき該埋め込みパラメータを調整する変更データ分析部を有することを特徴とする電子透かし埋め込み装置。
【請求項2】
前記変更データ分析部は、
該電子透かし埋め込み部による電子透かし埋め込みによって変更されたデータを、該データに含まれる複数の小領域ごとに集計し、該小領域ごとに電子透かしの埋め込みの程度を評価するための第1評価値を算出し、該第1評価値が所定の条件を満しているかを判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の電子透かし埋め込み装置。
【請求項3】
前記変更データ分析部は、更に、
該小領域ごとに、該データにおける位置関係が近傍にある複数の該小領域に対して算出した該第1評価値から、該小領域における電子透かしの埋め込みの程度を評価するための第2評価値を算出し、該第1評価値及び該第2評価値が所定の条件を満しているかを判定する、
ことを特徴とする請求項2の電子透かし埋め込み装置。
【請求項4】
前記変更データ分析部は、
該第1評価値を算出する場合、該電子透かしパターンの全埋め込みビットの埋め込み強度に関する平均値を計算して該第1評価値を求めるか、
又は該電子透かしパターンの全埋め込みビットの埋め込み強度のうちの最小値を求めて、該第1評価値とするか、
又は該電子透かしパターンの全埋め込みビットの埋め込み強度のうちの最大値を求めて、該第1評価値とする、ことを特徴とする請求項2記載の電子透かし埋め込み装置。
【請求項5】
前記変更データ分析部は、
該第1評価値が予め定められた閾値以上の値であるような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みが十分な埋め込み強度を有しているか否かを判定するか、
又は、該第1評価値が予め定められた閾値以下の値であるような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不足しているか否かを判定するか、
又は、該第1評価値に単位領域の埋め込みの超過度の尺度を表す値を用いて、全単位領域の第1評価値の平均値を算出し、該平均値が予め定められた閾値以上の値であるか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不必要に強いか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項2記載の電子透かし埋め込み装置。
【請求項6】
前記変更データ分析部は、
該第1評価値が予め定められた閾値以上の値であり、かつ、その位置の該第2評価値が予め定められた閾値以上であるかを判定する、
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかの項記載の電子透かし埋め込み装置。
【請求項7】
データに電子透かし情報を埋め込む電子透かし埋め込み方法であって、
該電子透かし情報から多ビット情報の電子透かしパターンを生成するステップと、
該電子透かしパターンを該データへ埋め込んで、変更されたデータを生成するステップと、
該変更されたデータを分析して、埋め込まれた電子透かしパターンの埋め込みの程度が予め定められた所定の条件を満すかを判定するステップと、
該判定の結果、該埋め込みの程度が該所定の条件を満たさない場合、埋め込みパラメータを変更して、再び電子透かしパターンを生成し、生成された該電子透かしパターンを該データに埋め込んで、変更されたデータを生成するステップと
を含むことを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項8】
前記判定の結果、再度の電子透かしの埋め込み処理を伴って繰り返される電子透かし埋め込み処理の実行回数と、予め設定された所定回数を比較する比較ステップと、
該比較において、電子透かし埋め込み処理実行回数が該所定回数に達したと判定された場合、該電子透かしの再埋め込みを中止するステップと、を含む、請求項7の電子透かし埋め込み方法。
【請求項9】
前記埋め込みの程度の判定において、
該電子透かし埋め込みステップによる電子透かし埋め込みによって変更されたデータを、該データに含まれる複数の小領域ごとに集計し、当該小領域ごとに電子透かしの埋め込みの程度を評価するための第1評価値を算出し、該第1評価値が該所定の条件を満しているかを判定する、請求項7乃至8のいずれかの項記載の電子透かし埋め込み方法。
【請求項10】
前記埋め込みの程度の判定において、更に
該小領域ごとに、該データ上の位置関係が近傍にある複数の小領域に対して算出した該第1評価値から当該小領域における電子透かしの埋め込みの程度を評価するための第2評価値を算出し、該第1評価値及び該第2評価値が所定の条件を満しているかを判定する、
請求項9の電子透かし埋め込み方法。
【請求項11】
CPUによって、データに電子透かし情報を埋め込む電子透かし埋め込み方法を実行するプログラムであって、
該電子透かし情報から多ビット情報の電子透かしパターンを生成するステップと、
該電子透かしパターンを該データへ埋め込んで、変更されたデータを生成するステップと、
該変更されたデータを分析して、埋め込まれた電子透かしパターンの埋め込みの程度が予め定められた所定の条件を満すかを判定するステップと、
該判定の結果、該埋め込みの程度が該所定の条件を満たさない場合、埋め込みパラメータを変更して、再び電子透かしパターンを生成し、生成された該電子透かしパターンを該データに埋め込んで、変更されたデータを生成するステップと
を実行することを特徴とする電子透かし埋め込み用プログラム。
【請求項1】
データに電子透かし情報を埋め込む電子透かし埋め込み装置であって、
該電子透かし情報から多ビット情報の電子透かしパターンを生成する電子透かしパターン生成部と、
該生成部で生成された該電子透かしパターンを該データに埋め込んで、変更されたデータを生成する電子透かし埋め込み部と、
該変更データを分析して、該電子透かし埋め込み部によって埋め込まれた電子透かしの埋め込みの程度を判定し、当該判定に基づき該埋め込みパラメータを調整する変更データ分析部を有することを特徴とする電子透かし埋め込み装置。
【請求項2】
前記変更データ分析部は、
該電子透かし埋め込み部による電子透かし埋め込みによって変更されたデータを、該データに含まれる複数の小領域ごとに集計し、該小領域ごとに電子透かしの埋め込みの程度を評価するための第1評価値を算出し、該第1評価値が所定の条件を満しているかを判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の電子透かし埋め込み装置。
【請求項3】
前記変更データ分析部は、更に、
該小領域ごとに、該データにおける位置関係が近傍にある複数の該小領域に対して算出した該第1評価値から、該小領域における電子透かしの埋め込みの程度を評価するための第2評価値を算出し、該第1評価値及び該第2評価値が所定の条件を満しているかを判定する、
ことを特徴とする請求項2の電子透かし埋め込み装置。
【請求項4】
前記変更データ分析部は、
該第1評価値を算出する場合、該電子透かしパターンの全埋め込みビットの埋め込み強度に関する平均値を計算して該第1評価値を求めるか、
又は該電子透かしパターンの全埋め込みビットの埋め込み強度のうちの最小値を求めて、該第1評価値とするか、
又は該電子透かしパターンの全埋め込みビットの埋め込み強度のうちの最大値を求めて、該第1評価値とする、ことを特徴とする請求項2記載の電子透かし埋め込み装置。
【請求項5】
前記変更データ分析部は、
該第1評価値が予め定められた閾値以上の値であるような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みが十分な埋め込み強度を有しているか否かを判定するか、
又は、該第1評価値が予め定められた閾値以下の値であるような単位領域が存在するか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不足しているか否かを判定するか、
又は、該第1評価値に単位領域の埋め込みの超過度の尺度を表す値を用いて、全単位領域の第1評価値の平均値を算出し、該平均値が予め定められた閾値以上の値であるか否かを判定することによって、電子透かし埋め込みの埋め込み強度が不必要に強いか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項2記載の電子透かし埋め込み装置。
【請求項6】
前記変更データ分析部は、
該第1評価値が予め定められた閾値以上の値であり、かつ、その位置の該第2評価値が予め定められた閾値以上であるかを判定する、
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかの項記載の電子透かし埋め込み装置。
【請求項7】
データに電子透かし情報を埋め込む電子透かし埋め込み方法であって、
該電子透かし情報から多ビット情報の電子透かしパターンを生成するステップと、
該電子透かしパターンを該データへ埋め込んで、変更されたデータを生成するステップと、
該変更されたデータを分析して、埋め込まれた電子透かしパターンの埋め込みの程度が予め定められた所定の条件を満すかを判定するステップと、
該判定の結果、該埋め込みの程度が該所定の条件を満たさない場合、埋め込みパラメータを変更して、再び電子透かしパターンを生成し、生成された該電子透かしパターンを該データに埋め込んで、変更されたデータを生成するステップと
を含むことを特徴とする電子透かし埋め込み方法。
【請求項8】
前記判定の結果、再度の電子透かしの埋め込み処理を伴って繰り返される電子透かし埋め込み処理の実行回数と、予め設定された所定回数を比較する比較ステップと、
該比較において、電子透かし埋め込み処理実行回数が該所定回数に達したと判定された場合、該電子透かしの再埋め込みを中止するステップと、を含む、請求項7の電子透かし埋め込み方法。
【請求項9】
前記埋め込みの程度の判定において、
該電子透かし埋め込みステップによる電子透かし埋め込みによって変更されたデータを、該データに含まれる複数の小領域ごとに集計し、当該小領域ごとに電子透かしの埋め込みの程度を評価するための第1評価値を算出し、該第1評価値が該所定の条件を満しているかを判定する、請求項7乃至8のいずれかの項記載の電子透かし埋め込み方法。
【請求項10】
前記埋め込みの程度の判定において、更に
該小領域ごとに、該データ上の位置関係が近傍にある複数の小領域に対して算出した該第1評価値から当該小領域における電子透かしの埋め込みの程度を評価するための第2評価値を算出し、該第1評価値及び該第2評価値が所定の条件を満しているかを判定する、
請求項9の電子透かし埋め込み方法。
【請求項11】
CPUによって、データに電子透かし情報を埋め込む電子透かし埋め込み方法を実行するプログラムであって、
該電子透かし情報から多ビット情報の電子透かしパターンを生成するステップと、
該電子透かしパターンを該データへ埋め込んで、変更されたデータを生成するステップと、
該変更されたデータを分析して、埋め込まれた電子透かしパターンの埋め込みの程度が予め定められた所定の条件を満すかを判定するステップと、
該判定の結果、該埋め込みの程度が該所定の条件を満たさない場合、埋め込みパラメータを変更して、再び電子透かしパターンを生成し、生成された該電子透かしパターンを該データに埋め込んで、変更されたデータを生成するステップと
を実行することを特徴とする電子透かし埋め込み用プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−258585(P2010−258585A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104029(P2009−104029)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(500194887)日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(500194887)日立アイ・エヌ・エス・ソフトウェア株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]