説明

電子部品、電子機器、および電子部品の製造方法

【課題】半田付け性を確保しつつ、ウィスカの発生を防止することができる電子部品、電子機器、および電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品は、モールド部1と、リード2と、防錆皮膜4とを有する。リード2はモールド部1から突出している。防錆皮膜4は、リード2の少なくとも一部を覆い、イミダゾール化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、電子機器、および電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉛(Pb)は毒性を有しているため、地下水の汚染などの問題を引き起こしている。このため電気電子製品へのPbの使用を制限する動きが世界的に強まっている。
【0003】
これに対応して、電気電子製品に用いられる電子部品の外部電極上に設けられる膜として、鉛を含有する膜から、鉛を含有しない膜への置き換えが進んでいる。具体的には、Sn(スズ)−Pb系めっき膜から、Snめっき膜、またはPbを含有せずSn基を有するめっき膜(Sn基合金めっき)に置き換えられている。Sn基を有しかつPbを含有しないめっき膜としては、たとえばSn−Bi(ビスマス)系およびSn−Ag(銀)系がある(たとえば特許文献1参照)。これらの膜により電子部品の半田付け性が確保されている。
【特許文献1】特開2002−161396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したPbを有しないSnめっき膜またはSn基合金めっき膜には、ウィスカが発生しやすいという問題があった。これはウィスカの発生を抑制する効果を有するPbが含有されていないためである。特にSnめっき膜においてウィスカが発生しやすい。
【0005】
ウィスカはSnが再結晶して針状に成長したものである。ウィスカは、場合によっては数mm程度の長さにまで成長することもあり、電気的な短絡を引き起こすことがある。このため上記のようにウィスカが発生しやすい電子部品が電子機器に用いられると、電子機器内でウィスカによる短絡が生じてしまうことがあった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、半田付け性を確保しつつ、ウィスカの発生を防止することができる電子部品、電子機器、および電子部品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子部品は、本体部と、外部電極と、第1の皮膜とを有する。外部電極は本体部から突出している。第1の皮膜は、外部電極の少なくとも一部を覆い、イミダゾール化合物を含有する。
【0008】
本発明の電子機器は、電子部品と、半田部と、回路部とを有する。電子部品は、本体部と、外部電極と、第1の皮膜とを有する。外部電極は本体部から突出している。第1の皮膜は、外部電極の少なくとも一部を覆い、イミダゾール化合物を含有する。外部電極の少なくとも一部は、半田付けされるための面を有する。半田部はこの面上に設けられている。回路部は、半田部を介して電子部品と電気的に接続されている。
【0009】
本発明の電子部品の製造方法は、本体部と本体部から突出する外部電極とを有する電子部品の製造方法であって、以下の工程を有する。
【0010】
イミダゾール化合物を含有する処理液が準備される。処理液に外部電極の少なくとも一部が浸される。処理液から外部電極が取り出されることで、外部電極の少なくとも一部を覆い、かつイミダゾール化合物を含有する皮膜が形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イミダゾール化合物を含有する第1の皮膜が外部電極の少なくとも一部を覆うことで、半田付け性が確保される。また第1の皮膜はSnを含有する必要がないので、Snに起因するウィスカの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電子部品の構成を概略的に示す平面図である。図2は、図1の線II−IIに沿った概略断面図である。
【0013】
図1および図2を参照して、本実施の形態の電子部品は、モールド部1と、リード2と、防錆皮膜4(第1の皮膜)とを有する。
【0014】
モールド部1は、電子部品の本体部であり、たとえば、半導体素子と、この半導体素子を封止する樹脂部とを有する。樹脂部は、たとえばエポキシ樹脂からなる。
【0015】
リード2はモールド部1から突出した外部電極である。リード2の先端部の面を基板(図示せず)などに半田付けすることで、本実施の形態の電子部品を実装することができる。リード2は、銅(Cu)または銅合金からなる。銅合金は、たとえば、Cu−Sn、Cu−Zn、Cu−FeなどのCu基合金である。
【0016】
防錆皮膜4はリード2の一部を覆っている。また防錆皮膜4はイミダゾール化合物を主成分とする有機防錆皮膜である。イミダゾール化合物とは、5員環上に窒素原子を1、3位に含む含窒素芳香複素環であるイミダゾール基を含む化合物である。
【0017】
好ましくは、イミダゾール化合物として、アルキルイミダゾール化合物、アリールイミダゾール化合物、アラルキルイミダゾール化合物、アルキルベンズイミダゾール化合物、アリールベンズイミダゾール化合物、またはアラルキルベンズイミダゾール化合物が用いられる。
【0018】
また好ましくは、防錆皮膜4はモールド部1との間に間隔SPを空けて設けられている。さらに好ましくは、間隔SPは0.1mm以上である。
【0019】
次に本実施の形態の電子部品の実装方法について説明する。まず基板のスルーホール(図示せず)に、防錆皮膜4によって被覆されたリード2が挿入される。そしてリード2およびスルーホールの各々の半田付けが行なわれる部分にポストフラックスが塗布される。ポストフラックスと接触した防錆皮膜4はリード2上から除去される。その後、半田付けが行なわれることで、実装が行なわれる。
【0020】
次に本実施の形態の電子部品の防錆皮膜4の形成方法について説明する。図3および図4のそれぞれは、本発明の実施の形態1における電子部品の製造方法の第1および第2工程を概略的に示す図である。
【0021】
図3を参照して、まず、モールド部1およびリード2を有する電子部品と、容器30に収められた防錆処理液3とが準備される。防錆処理液3は、イミダゾール化合物を含有している。具体的には、防錆処理液3は、たとえば、イミダゾール化合物とカルボン酸とによって構成されている。
【0022】
主に図4を参照して、防錆処理液3にリード2の一部が一定時間浸漬される。この浸漬は、モールド部1が防錆処理液3に接触しないように行なわれる。このため防錆処理液3の液面が波立たないように浸漬が行なわれる。また浸漬は防錆処理液3がリード2の根元近傍部に接触しないように行なわれる。このために、好ましくは、モールド部1と防錆処理液3との間隔SPが0.1mm以上とされる。
【0023】
次に防錆処理液3からリード2が取り出される。これによりリード2上に防錆処理液3が塗布される。次にこの塗布された防錆処理液3が乾燥される。これによりリード2の一部を覆い、かつイミダゾール化合物を含有する防錆皮膜4(図2)が形成される。
【0024】
本実施の形態によれば、イミダゾール化合物を含有する防錆皮膜4がリード2の一部を覆うことで、リード2に酸化皮膜(錆)が生じることが防止される。これによりリード2の半田の濡れ性が確保される。よってリード2の半田付け性が確保される。
【0025】
また防錆皮膜はSnを含有する必要がないので、Snに起因するウィスカの発生を防止することができる。
【0026】
また防錆処理液3はイミダゾール化合物を含有している。これにより防錆処理液3は優れた成膜性を有する。またこれにより防錆処理液3は錯体を作って銅表面にのみ選択的に有機皮膜を形成するので、リード2上に選択的に膜形成を行なうことができる。
【0027】
また防錆皮膜4の形成時に電子部品のモールド部1を防錆処理液3に浸漬させないので、モールド部1およびリード2の間に防錆処理液3が侵入することを防止することができる。よって防錆処理液3の侵入により、回路の腐食や、イオンマイグレーションによる短絡などがモールド部1内部において生じることを防止することができる。よって電子部品の信頼性を高めることができる。
【0028】
また間隔SP(図4)が0.1mm以上とされることで、上記の防錆処理液3の侵入を、より確実に防止することができる。
【0029】
また図4に示す浸漬中に防錆処理液3が波立たないようにすることで、上記の防錆処理液3の侵入を、より確実に防止することができる。
【0030】
なお図2を参照して、リード2の間隔SPに対応する部分には半田付けが行なわれないので、この部分に防錆皮膜4が形成されなくても半田付け性に問題は生じない。
【0031】
また本実施の形態では、防錆処理液3液面を波立たせないようにコントロールすることでモールド部1への防錆処理液3の侵入を防止したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえば浸漬前にリード2の根元近傍部に、防錆処理液3に溶解しにくい樹脂膜や撥水性の皮膜を形成しておけば、防錆処理液3の侵入を防止することができる。このような膜の材質としては、たとえばパラフィンまたはシリコーンを用いることができる。
【0032】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における電子機器の構成を概略的に示す断面図である。図5を参照して、本実施の形態の電子機器は、実施の形態1の電子部品と、半田部5と、回路部60とを有する。
【0033】
回路部60は、基材61と、配線62と、スルーホール電極6とを有する。スルーホール電極6は、スルーホール7を有する。
【0034】
基材61の材質は絶縁体である。この絶縁体は、たとえば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたもの、あるいは、紙基材またはポリエステル基材などにエポキシ樹脂またはフェノール樹脂などを含浸させたものである。
【0035】
半田部5は、リード2の先端部の面と、スルーホール7の内面とを繋ぐように設けられている。これにより半田部5は、リード2とスルーホール電極6とを電気的に接続している。半田部5は、たとえば、Sn−Cu系、Sn−Ag系、またはSn−Zn系である。具体的には、半田部5の材質は、たとえばSn−3.0Ag−0.5Cu組成を有する。
【0036】
次に本実施の形態の電子機器の製造方法について説明する。まず実施の形態1の電子部品が準備される。次に防錆皮膜4によって被覆されたリード2がスルーホール7に挿入される。次にポストフラックスが塗布される。次に、たとえば225℃以上に加熱されることで溶融した半田が、スルーホール7に供給される。これにより本実施の形態の電子機器が得られる。
【0037】
本実施の形態によれば、防錆皮膜4で被覆されたリード2の色は淡赤色であり、半田部5の色は銀白色であるため、スルーホール7内における半田の上がり状態を目視で容易に確認できる。よって電子機器の製造における検査性を向上することができる。
【0038】
また、防錆皮膜4はポストフラックスと反応して流動除去されるため、半田部5の組成が防錆皮膜4によって変化することが防止される。よって、設計どおりの機械的特性を有する半田部5を得ることができる。
【0039】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3における電子部品の構成を概略的に示す断面図である。
【0040】
図6を参照して、本実施の形態の電子部品は、モールド部1(図1)の代わりにモールド部1Vを有する。モールド部1Vは、モールド部1が有する構成に加えて、さらに金属部8と、防錆皮膜9とを有する。
【0041】
金属部8の材質は、銅または銅合金である。銅合金としては、たとえばCu−Sn、Cu−Zn、Cu−FeなどのCu基合金を用いることができる。
【0042】
また金属部8は、たとえば放熱板である。この放熱板と、モールド部1内部の電子回路とは、モールド部1の樹脂部により絶縁されている。またこの放熱板は、モールド部1内部の熱を、外部の部材に伝達したり、外部に放熱したりすることが容易となるようにする機能を有する。具体的にはこの放熱板は、たとえばモールド部1の樹脂部の表面に貼り付けられた金属板である。
【0043】
防錆皮膜9は、金属部8を覆っている。また防錆皮膜9の材質は、防錆皮膜4(図1)の材質と同様である。
【0044】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0045】
本実施の形態によれば、防錆皮膜9が金属部8の酸化を防止する。これにより、電子部品が大気中で保管される間、あるいは電子部品が基板への実装のために短時間に渡って加熱される間に、金属部8が酸化されることが防止される。
【0046】
また金属部8が放熱板の場合、電子部品が基板に実装される際に放熱板が酸化することを防止することができる。よって、電子部品の実装後に放熱板上にヒートシンクなどの放熱体が接続される場合に、接続熱抵抗が酸化部分により増大することを防止することができる。
【0047】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電子部品、電子機器、および電子部品の製造方法に特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態1における電子部品の構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における電子部品の製造方法の第1工程を概略的に示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における電子部品の製造方法の第2工程を概略的に示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2における電子機器の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態3における電子部品の構成を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 モールド部、2 リード、3 防錆処理液、4 防錆皮膜、5 半田部、6 スルーホール電極、7 スルーホール、8 金属部、9 防錆皮膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部から突出する外部電極と、
前記外部電極の少なくとも一部を覆い、イミダゾール化合物を含有する第1の皮膜とを備えた、電子部品。
【請求項2】
前記外部電極の前記少なくとも一部は、銅および銅合金のいずれかからなる、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記本体部は樹脂部を含む、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1の皮膜は、前記本体部との間に間隔を空けて設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記間隔は0.1mm以上である、請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記本体部は金属部を含み、
前記金属部を覆い、かつイミダゾール化合物を含有する第2の皮膜をさらに備えた、請求項1〜5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記金属部の少なくとも一部は、銅および銅合金のいずかからなる、請求項6に記載の電子部品。
【請求項8】
前記外部電極の前記少なくとも一部は、半田付けされるための面を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の電子部品。
【請求項9】
請求項8に記載の電子部品と、
前記面上に設けられた半田部と、
前記半田部を介して前記電子部品と電気的に接続された回路部とを備えた電子機器。
【請求項10】
本体部と前記本体部から突出する外部電極とを備えた電子部品の製造方法であって、
イミダゾール化合物を含有する処理液を準備する工程と、
前記処理液に前記外部電極の少なくとも一部を浸す工程と、
前記処理液から前記外部電極を取り出すことで、前記外部電極の少なくとも一部を覆い、かつイミダゾール化合物を含有する皮膜を形成する工程とを備えた、電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記浸す工程は、前記本体部が前記処理液に接触しないように行なわれる、請求項10に記載の電子部品の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−62301(P2010−62301A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226015(P2008−226015)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)