説明

電子部品の封止方法およびその利用

【課題】プラスチック材料からなる構成部材同士の接着性に優れた電子部品の封止方法およびその利用を提供する。
【解決手段】本発明の電子部品の封止方法は、ケース1aおよびベース1bにおける互いに対向する対向面に塩基性触媒Aを塗布する塗布工程と、対向面に塗布された塩基性触媒Aにエポキシ樹脂組成物Bを接触させ、エポキシ樹脂組成物Bを硬化する硬化工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の封止方法およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
制御用小型継電器(以下、「リレー」という)は、電気量や物理量といった条件に応じて電気信号を出力することで電気回路を制御する装置である。リレーは、テレビ、電子レンジ、エアコン等の家庭電化製品、工作機械、食品関連機械等の産業機械、自動車、鉄道関連等の運輸機器等において広く利用されており、特にプリント配線基板に搭載される電気・電子部品において使用量が増加している。
【0003】
リレーに対して求められる特性の一つとして、気密性の保持がある。すなわち、リレーは、成形材に金属端子を接着させた構造を有するが、成形材と金属端子との密着性が不十分であると、半田フラックスの浸入や悪性ガスの侵入等によって、接点間でオン−オフを繰り返すというリレーの機能を保持することができなくなってしまう。このため、成形材と金属端子とに強い密着性を持たせ、リレー内部の気密性を保つことが可能な封止剤が強く求められている。
【0004】
従来、封止剤として、エポキシ樹脂組成物が一般的に用いられている。そして、一液性エポキシ樹脂組成物(潜在性硬化剤を予めエポキシ樹脂組成物と混合しておくタイプのエポキシ樹脂組成物)においては、潜在性硬化剤として、一般的にジシアンジアミドが用いられている。また、ジシアンジアミドを除く潜在性硬化剤(例えばエポキシ樹脂アダクト系化合物等)(特許文献1)、ジシアンジアミドと、ジシアンジアミドを除く潜在性硬化剤との混合物(特許文献2)、潜在性イミダゾール化合物およびジシアンジアミド等の潜在性硬化剤の混合物(特許文献3)等の潜在性硬化剤が提案されている。また、例えば非特許文献1には、リレーの成形材(内部にスイッチやコイル等を格納するためのケース)の材料としてLCP(液晶ポリマー)を用いた場合、エポキシ樹脂にイミダゾールを添加することにより、LCPとエポキシ樹脂との接着性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−207029号公報(平成13年7月31日公開)
【特許文献2】特許第3797616号公報(平成18年4月28日登録)
【特許文献3】特開2004−115552号公報(平成16年4月15日公開)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】信学技報, vol. 109, no. 173, EMD2009-56, pp. 157-162, 平成21年8月21日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、安全性および環境への影響等に鑑み、半田の鉛フリー化が進められている。それにより、リレーをプリント配線板に表面実装する際の半田の温度が、従来の230〜240℃よりも20〜30℃高くなっている。それゆえ、封止剤に対しても、これに対応できる耐熱性が要求されるようになってきている。
【0008】
また、リレーの構成部材は、端子材料、コイル、磁石等以外は、プラスチック材料が主体であるため、硬化温度は120℃以下であることが望まれている。
【0009】
よって、封止剤に対しては、120℃以下の低温で硬化することができ、かつ、半田処理を行なう際の高温処理条件下においても、プラスチック材料からなる構成部材同士(例えば成形材を構成するカバーおよびベース)の接着性を向上させてリレーの気密性を保持する能力が求められている。
【0010】
しかしながら、ジシアンジアミドは高融点の化合物であるため、ジシアンジアミドのみを潜在性硬化剤として用いる場合、120℃以下の硬化温度では、エポキシ樹脂の未反応物が残る場合がある。さらに、得られる硬化物の耐熱性が不十分であるため、気密不良が生じるという問題がある。
【0011】
また、特許文献1〜3に記載された潜在性硬化剤についても、鉛フリー化に伴う半田処理温度の上昇に伴う耐熱性不足による気密不良が生じるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラスチック材料からなる構成部材同士の接着性に優れた電子部品の封止方法およびその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、プラスチック材料からなる構成部材同士の接着性に優れた電子部品の封止方法について鋭意検討した検討した結果、少なくとも樹脂材料からなる2つの部材の対向面に事前に塩基性触媒を塗布し、その後にエポキシ樹脂組成物を塗布し硬化することで、所望の効果を示す封止部を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の電子部品の封止方法は、上記の課題を解決するために、塩基性触媒及びエポキシ樹脂組成物を用いて、樹脂材料からなる2つの部材を接着させることにより、電子部品を封止する電子部品の封止方法であって、上記2つの部材における互いに対向する対向面に塩基性触媒を塗布する塗布工程と、上記対向面に塗布された上記塩基性触媒にエポキシ樹脂組成物を接触させ、該エポキシ樹脂組成物を硬化する硬化工程と、を含むことを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、硬化工程では、上記対向面に塗布された上記塩基性触媒にエポキシ樹脂組成物を接触させ、該エポキシ樹脂組成物を硬化するので、上記エポキシ樹脂組成物は、対向面に塗布された塩基性触媒に接触することで、硬化反応が開始する。このため、硬化物からなる封止部は、2つの部材との界面での密着性が強くなり、気密性が向上する。
【0016】
したがって、上記の構成によれば、プラスチック材料(樹脂材料)からなる構成部材同士の接着性を飛躍的に向上させて気密封止を行なうことができる。
【0017】
また、本発明の電子部品の封止方法は、上記硬化工程では、上記2つの部材の隙間に上記エポキシ樹脂組成物を流し込むことが好ましい。
【0018】
また、本発明の電子部品の封止方法は、上記塗布工程では、上記対向面に、上記塩基性触媒を噴霧することが好ましい。
【0019】
これにより、2つの部材における対向面に均等に塩基性触媒を塗布することができる。
【0020】
また、本発明の電子部品の封止方法は、上記2つの部材は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)で構成され、上記塩基性触媒として、イミダゾール化合物または第三級アミン化合物を用いることが好ましい。また、本発明の電子部品の封止方法は、上記2つの部材は、LCP(液晶ポリマー)で構成され、上記塩基性触媒として、イミダゾール化合物を用いることが好ましい。
【0021】
上記のように、2つの部材の材料および塩基性触媒の組合せで封止することにより、2つの部材同士の接着性をさらに向上させることができる。
【0022】
また、本発明の電子部品の封止方法は、上記硬化工程では、ジシアンジアミドを含むエポキシ樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、ジシアンジアミドは、靭性付与効果を示し、樹脂材料からなる部材と金属材料からなる金属部材との接着性を向上させる。それゆえ、上記の構成によれば、樹脂材料からなる2つの部材同士の接着性のみならず、該部材と金属部材との接着性を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の電子部品の封止方法は、リレーの成形材を構成する、ケースおよびベースを接着することにより、リレーを封止することが好ましい。
【0025】
本発明の二液性封止キットは、上記の課題を解決するために、塩基性触媒及びエポキシ樹脂組成物を用いて、樹脂材料からなる2つの部材を接着させることにより、電子部品を封止するための二液性封止キットであって、上記2つの部材における互いに対向する対向面に塗布するための塩基性触媒と、対向面に塗布された上記塩基性触媒に接触させるためのエポキシ樹脂組成物との2成分で構成されていることを特徴としている。
【0026】
本発明の二液性封止キッドを用いれば、プラスチック材料(樹脂材料)からなる構成部材同士の接着性を向上させることができる。
【0027】
本発明の電子部品は、上記の課題を解決するために、樹脂材料からなる2つの部材と、該2つの部材間を封止する封止部とを備えた電子部品であって、上記封止部は、塩基性触媒を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物で構成されており、上記塩基性触媒は、上記2つの部材間の中心位置よりも、上記2つの部材の両方または一方の部材における近傍位置のほうが多く分布していることを特徴としている。また、上記電子部品はリレーであることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、上記封止部は、塩基性触媒を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物で構成されており、上記塩基性触媒は、上記2つの部材間の中心位置よりも、上記2つの部材の両方または一方の部材における近傍位置のほうが多く分布しているので、封止部は、2つの部材との界面での密着性が強くなり、気密性が向上する。それゆえ、上記の構成によれば、プラスチック材料(樹脂材料)からなる構成部材同士の接着性に優れた封止部を実現でき、特性の良好な電子部品を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の電子部品の封止方法は、以上のように、上記2つの部材における互いに対向する対向面に塩基性触媒を塗布する塗布工程と、上記対向面に塗布された上記塩基性触媒にエポキシ樹脂組成物を接触させ、該エポキシ樹脂組成物を硬化する硬化工程と、を含む構成である。
【0030】
それゆえ、プラスチック材料(樹脂材料)からなる構成部材同士の接着性を飛躍的に向上させて気密封止を行なうことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】リレーの外観を示す模式図である。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態における封止方法の手順を模式的に示した模式図であり、(b)は、従来の封止方法の手順を模式的に示した模式図である。
【図3】リレーの成形材を構成する、ケース及びベースの嵌合構造の他の構成を示す図である。
【図4】本実施形態の電子部品の一例であるリレーの封止部を示し、(a)は、封止部の構成を概略的に示した断面図であり、(b)は、封止部における塩基性触媒の分布を模式的に示したグラフである。
【図5】リフロー処理における半田の温度変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
【0033】
〔1〕電子部品の封止方法
(1−1)電子部品の封止方法
本実施形態の封止方法は、塩基性触媒及びエポキシ樹脂組成物を用いて、少なくとも樹脂材料からなる2つの部材を接着させることにより、電子部品を封止する方法である。本実施形態の封止方法を適用し得る電子部品は、気密封止や絶縁封止を行なうことに有用性があるものであれば特に限定されず、通常「電気部品」と称されるものであってもよい。例えば、リレー、スイッチ、センサー等を挙げることができる。
【0034】
また、接着の対象となる2つの部材は、樹脂材料からなる部材であれば特に限定されない。例えば、リレーの成形材を構成するケースおよびベースを接着する場合を挙げることができる。以下、本実施形態の封止方法として、ケースとベースとの接着によりリレーを封止する封止方法について、説明する。
【0035】
図1は、リレーの外観を示す模式図である。図1に示されるように、リレー100は、外観上、成形材1と、金属端子2とからなっている。成形材1の内部には、コイル、スイッチなどリレーを構成する各種部品が格納されている(図示せず)。成形材1は、ケース1aとベース1bとで構成されている。ケース1aは、ベース1bの周囲を取り囲む枠の役割を果たす。ベース1bは、リレーを構成する品、すなわちリレー本体である。ケース1aおよびベース1bの外枠は、樹脂材料で構成されており、互いに嵌合する構成になっている。
【0036】
リレー100の封止において、ケース1aおよびベース1b間の部位は、強い密着性を持たせて封止する上で、封止困難な部位である。特に、形成された封止部とケース1aおよびベース1bとの界面における気密性を保持することが重要となる。本実施形態の封止方法では、このようなケース1aおよびベース1b間の部位に事前に塩基性触媒を塗布し、その後にエポキシ樹脂組成物を塗布している。図2(a)は、本実施形態の封止方法の手順を模式的に示した模式図であり、図2(b)は、従来の封止方法の手順を模式的に示した模式図である。
【0037】
図2(a)に示されるように、本実施形態の封止方法は、塗布工程と、塗布工程後に行われる硬化工程とを含む構成である。
【0038】
塗布工程では、ケース1aおよびベース1bの互いに対向する対向面に塩基性触媒Aを塗布する。
【0039】
硬化工程では、対向面に塗布された塩基性触媒Aにエポキシ樹脂組成物Bを接触させ、このエポキシ樹脂組成物Bを硬化する。具体的には、まず、ケース1aおよびベース1bの上面にエポキシ樹脂組成物Bを塗布する。そして、このエポキシ樹脂組成物Bを加熱して、硬化させる。エポキシ樹脂組成物Bを加熱している間、このエポキシ樹脂組成物Bは、ケース1aとベース1bとの隙間に流れ込み、塩基性触媒Aが塗布された対向面に接触することで、速硬化反応が開始する。このため、形成された封止部3は、ケース1aおよびベース1bとの界面(図2(a)における点線で囲まれた部分)での密着性が強くなり、気密性が向上する。
【0040】
一方、従来の封止方法では、図2(b)に示されるように、塩基性触媒Aを事前に塗布することなく、ケース1aおよびベース1bの上面に、エポキシ樹脂組成物Bとして一液性組成物を塗布している。このため、エポキシ樹脂組成物Bは、ケース1aとベース1bとの隙間に流れ込んでも対向面で速硬化反応が開始することがない。それゆえ、形成された封止部3は、ケース1aおよびベース1bとの界面で密着性が弱くなり、気密性を保持することができなくなる。
【0041】
また、従来の封止方法では、エポキシ樹脂組成物として一液性組成物を使用しているので、エポキシ樹脂組成物中に予めエポキシ樹脂との反応性が高い熱潜在性硬化剤が含まれることになる。それゆえ、従来の封止方法では、エポキシ樹脂組成物を常温で安定化させるために、熱潜在性硬化剤は、室温(例えば25℃)で固体状態であり、高い温度(100〜120℃)で溶解する化合物が選択される。したがって、従来の封止方法では、この熱潜在性硬化剤の溶解温度でエポキシ樹脂組成物の硬化を行なう必要があり、これが硬化温度の低温化の制約となる。
【0042】
一方、本実施形態の封止方法では、予めエポキシ樹脂との反応性が高い塩基性触媒Aを塗布した状態で、エポキシ樹脂組成物Bが接触すると速硬化反応が開始するようになっている。それゆえ、本実施形態の封止方法で使用されるエポキシ樹脂組成物Bは、反応性が高い塩基性触媒Aと分離して調製されるので、比較的低い温度(例えば60℃〜80℃)で硬化することができる。したがって、本実施形態の封止方法によれば、従来の封止方法と比較して、さらに低温でエポキシ樹脂組成物Bを硬化させることができる。
【0043】
このように、本実施形態の封止方法では、さらなる低温硬化が可能であり、かつ、ケース1aおよびベース1b間の部位に強い密着性を持たせ気密性が高い封止を実現することができる。
【0044】
接着対象であるケース1aおよびベース1bは、互いに嵌合した構成であれば、特に限定されない。例えば、図3に示される構成を挙げることができる。図3に示された嵌合構造では、ケース1aは、上面と内周面との両方でベース1bと嵌合する構成になっている。このため、ベース1bは、水平方向に突出した突出部分を有している。
【0045】
図3に示された嵌合構造である場合、塗布工程では、ケース1aおよびベース1bの突出部分における互いに対向する対向面に塩基性触媒Aを塗布する。そして、硬化工程にて、ケース1aおよびベース1bの隙間に、液状のエポキシ樹脂組成物Bを流し込み、加熱硬化することで封止部が形成される。
【0046】
(1−2)塗布工程
(1−2−1)塩基性触媒
塩基性触媒とは、室温で塩基性を示し、加熱することにより溶解、分解、転移反応等により活性化し、エポキシ樹脂に対して付加し硬化を促進することができる化合物である。上記塩基性触媒としては、脂肪族アミン、変性アミン、芳香族アミン、イミダゾール化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物が挙げられる。これらは、1種単独でも2種類以上組み合わせても使用することができる。
【0047】
脂肪族アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、メンセンジアミン等を用いることがきる。また、変性アミンとしては、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物等を用いることができる。また、芳香族アミンとしては、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等を用いることができる。
【0048】
これらの中でも、イミダゾール化合物および第三級アミン化合物は、連鎖重合型触媒であるため、エポキシ樹脂との反応性が高い。それゆえ、本発明の方法においては、塩基性触媒として、イミダゾール化合物および第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0049】
イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−シアノ−2−エチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等を用いることができる。
【0050】
また、第三級アミン化合物としては、ジメチルアルキルアミン、メチルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビスシクロウンデセン、トリスジメチルアミノメチルフェノール等を用いることができる。
【0051】
(1−2−2)塩基性触媒の塗布方法
塩基性触媒の塗布方法は、2つの部材間に塩基性触媒を塗布することが可能であれば、特に限定されない。例えば、はけやグリスを用いた手塗り方法、ディスペンサーを用いて塩基性触媒を霧状に噴霧するスプレー方法、スタンプ方法等が挙げられる。特に、2つの部材における対向面に均等に塩基性触媒を塗布できることから、ディスペンサーを用いたスプレー方法が好ましい。
【0052】
また、ディスペンサーを用いて塩基性触媒を塗布する場合、塩基性触媒は液状であることが好ましい。なお、塩基性触媒が常温で固体であっても、加熱することにより液状化すれば、ディスペンサーを用いて塩基性触媒を噴霧して塗布することが可能である。また、パターン化したマスクを通して、塩基性触媒を選択的にスプレー塗布することも可能である。
【0053】
(1−2−3)塩基性触媒の塗布量
本実施形態の封止方法では、塩基性触媒の塗布量が少ない場合、ケースおよびベースの接着性が低下するため、気密性が不十分になる。一方、塩基性触媒の塗布量が多い場合、エポキシ樹脂組成物と塩基性触媒とが混合し、その混合液体の粘度が低下し、成形材側面へのエポキシ樹脂組成物の流れ込みが増加する。このため、成形材内部にエポキシ樹脂組成物が浸入し、リレー特性に悪影響を及ぼすことが懸念される。このような観点から、塩基性触媒は、エポキシ樹脂組成物90mgに対し、好ましくは0.1〜5mg、より好ましくは0.1〜1mg、特に好ましくは0.15〜0.5mg塗布する。
【0054】
(1−3)硬化工程
(1−3−1)エポキシ樹脂組成物
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、主剤であるエポキシ樹脂、硬化剤であるジシアンジアミド、熱潜在性硬化剤、およびフィラーとしての無機フィラーを含有する。
【0055】
エポキシ樹脂は、ベンゼン環、ナフタレン環、水添ベンゼン環のような芳香族環または水添芳香族環と2個以上の末端エポキシ基を有し、室温付近で液状のエポキシ樹脂を意味している。芳香族環と水添芳香族環にはアルキル、ハロゲンなどの置換基が結合していてもよい。
【0056】
末端エポキシ基と芳香族環または水添芳香族環とはオキシアルキレン、ポリ(オキシアルキレン)、カルボオキシアルキレン、カルボポリ(オキシアルキレン)、アミノアルキレンなどにより結合されている。また、芳香族環や水添芳香族環は直接またはアルキレン、オキシアルキレン、ポリ(オキシアルキレン)等で結合されている。
【0057】
エポキシ樹脂として、具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA−1,2−プロピレンオキサイド2モル付加物ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、オルソフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロイソフタル酸ジグリシジルエステル、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン−3−グリシジルエーテル、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリジルアミノメチレン)シクロヘキサン、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル等が例示できる。
【0058】
本発明ではこれらのエポキシ樹脂群の中から1種類以上を選び使用される。併用する場合の比率は任意である。硬化物の耐熱性からいえば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルとの組合せ、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルとの組合せ等を使用するのが好ましい。なお、これらの例示されたエポキシ樹脂は、単独で使用してもよいし、2種類以上組み合わせて併用してもよい。
【0059】
ジシアンジアミドは単独化合物である。ジシアンジアミドは靭性付与効果を示し、潜在性硬化剤として汎用されている化合物であるが、高融点(融点約180〜200℃)であり、制御用小型電子部品等の電子部品の作成時に求められる120℃以下という低い硬化温度では、未反応物が残る場合がある。エポキシ樹脂組成物では、120℃以下の硬化温度を得るために、後述する熱潜在性硬化剤が併用される。また、シアンジアミドは、エポキシ樹脂と端子の材料である金属との接着性を高める機能を有する。
【0060】
熱潜在性硬化剤とは、エポキシ樹脂と混合系中で安定な硬化剤であり、室温でエポキシ樹脂を硬化する活性を持たず、加熱することにより溶解、分解、転移反応等により活性化し、エポキシ樹脂に対して硬化促進剤として機能する化合物である。
【0061】
なお、エポキシ樹脂組成物は、80℃から120℃で加熱を行なうことにより、硬化するように調製することが好ましい。
【0062】
上記熱潜在性硬化剤としては、エポキシ樹脂アダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物、イミダゾール化合物、尿素誘導体、第三級アミン化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて併用してもよい。
【0063】
エポキシ樹脂組成物には、無機フィラーが含まれていてもよい。無機フィラーの具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカチタニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート、タルク、マイカ等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて併用してもよい。また、これらの中でもシリカ、アルミナ及びタルクを単独または2種類以上併用して用いることが好ましい。
【0064】
エポキシ樹脂組成物では、必要に応じて、粘度調整のためのチクソ剤、カーボンブラックや酸化鉄といった着色剤等が混合されていてもよい。例えば、後述する実施例では、着色剤としてカーボンブラックを用いている。
【0065】
(1−3−2)加熱温度について
エポキシ樹脂組成物の硬化は、上記エポキシ樹脂組成物を加熱することによって行なうことができる。加熱温度としては、特に限定されるものではないが、硬化時の温度がリレー特性へ変動を与えるため、60℃〜120℃であることが好ましく、80℃〜110℃であることがより好ましい。
【0066】
電子部品がリレーである場合、リレーの構成部材は端子材料、コイル、磁石等以外はプラスチック材料が主体であるため、エポキシ樹脂組成物を120℃以下の低温で硬化させることが望まれる。本実施形態の封止方法では、上述のように、エポキシ樹脂組成物Bは、反応性が高い塩基性触媒Aと分離して調製され、比較的低い溶解温度(例えば60℃〜80℃)の熱潜在硬化剤を選択しても常温で安定化することができるため、120℃以下の低温で十分に硬化させることができる。
【0067】
(1−4)リレーの成形材(ケースおよびベース)の材質
リレーの成形材を構成するケースおよびベースは、内部にスイッチやコイル等を格納するために用いられ、その材質は特に限定されるものではないが、PBT(ポリブチレンテレフタレート)やLCP(液晶ポリマー)が汎用されている。PBTは、エンジニアリングプラスチックの一つであり、熱安定性や寸法精度、電気特性に優れるため、電気部品、電子部品や自動車部品等に幅広く利用されている。しかしながら、接着性は高いが、耐熱性が低いという欠点がある。一方、LCPは、剛直鎖の配向に起因する耐熱性、優れた強度特性、低熱膨張性および配向状態を得やすいが、接着性が低いという欠点がある。
【0068】
これまでに、PBTおよびLCPの両方に対して接着性が良好な接着剤は見出されていないが、本実施形態の封止方法では、120℃以下の低温で硬化することができるため、耐熱性が低いPBTにも十分に適用でき、高い封止能力を有するので、接着性が低いLCPにも十分適用できる。よって、PBTおよびLCPは、共に、本実施形態の封止方法の接着対象として好ましく用いることができる。
【0069】
特に、成形材がPBTで構成されている場合、塩基性触媒として、イミダゾール化合物または第三級アミン化合物を用いることが好ましい。また、成形材がLCPで構成されている場合、塩基性触媒として、イミダゾール化合物を用いることが好ましい。このように塩基性触媒を用いることにより、後述する実施例に示されるように、封止部の気密性を向上させることが可能になる。
【0070】
また、成型材の材質がLCPである場合、エポキシ樹脂にイミダゾールを添加した混合物を用いることにより、LCPとエポキシ樹脂との接着性を高めることができることが報告されている(非特許文献1)。本実施形態の封止方法においては、成形材表面にイミダゾールを直接塗布することで、その接着性向上の効果が顕著に現れる。
【0071】
また、リレー等の電子部品を基板上に実装する場合、半田を用いて、金属端子が基板に固定されるが、鉛フリーの半田を用いてリフローまたはフロー処理を行なう場合は、従来の半田を用いる場合よりも半田の温度は20〜30℃増加し、電子部品全体の温度は最高250〜260℃に達する。
【0072】
硬化工程にてジシアンジアミドを含むエポキシ樹脂組成物を用いた場合、このような高温処理に供しても、金属端子および成形材同士の封止状態を保つことができ、鉛フリーの半田処理後であっても気密性を維持することができる。それゆえ、本実施形態の封止方法を用いて少なくとも2つの部材を接着させることによって、接着対象の部材間にリークを発生させることなく、電子部品を気密封止または絶縁封止することができる。電子部品が気密封止されているか否かは、例えば、日本電気制御機器工業会規格 NECA0404 制御機器の封止(気密性)試験方法(リレーハンドブック、眞野國夫著、森北出版)を行なうことによって確認することができる。また、電子部品が絶縁封止されているか否かは、例えば耐トラッキング法(JIS C2134)によって確認することができる。
【0073】
〔2〕二液性封止キット
本実施形態の二液性封止キットは、塩基性触媒とエポキシ樹脂組成物との2成分で構成されている。塩基性触媒は、2つの部材における互いに対向する対向面に塗布するための成分であり、エポキシ樹脂組成物は、対向面に塗布された上記塩基性触媒に接触させるための成分である。
【0074】
二液性封止キットとは、2成分からなり、封止方法の工程において、2成分を混合することなく、各工程において単独で使用するキットを意味する。本実施形態では、塗布工程で使用される塩基性触媒、および硬化工程で使用されるエポキシ樹脂組成物が、二液性封止キットに該当する。なお、実使用においては、二液性封止キットに〔1〕電子部品の封止方法で記載したような手順が記載された説明書が添付される。
【0075】
この二液性封止キットは、2成分を混合することなく用いるため、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤が予め混合された一液性エポキシ樹脂組成物と対比される概念である。また、二液性封止キットは、エポキシ樹脂と硬化剤/硬化促進剤の混合物との2成分、もしくはエポキシ樹脂/硬化促進剤の混合物と硬化剤との2成分に分離されており、使用直前に両者を混合して使用される二液性エポキシ樹脂組成物とも対比される概念である。
【0076】
二液性エポキシ樹脂組成物は、配合時の計量ミスによる硬化不良が起こりやすいことや配合後のポットライフが短いこと等の欠点がある。また、硬化剤にポリアミドアミン、脂肪族アミン等を用いた場合、硬化物の耐熱性が低く、半田処理後の気密不良が生じる事が多い。
【0077】
また、近年、一液性エポキシ樹脂組成物は、材料ロスが少なく、生産性の高いことから、多く用いられるようになってきている。しかしながら、一液性エポキシ樹脂組成物は、上述したとおり、熱潜在性硬化剤の溶解温度でエポキシ樹脂組成物の硬化を行なう必要があり、これが硬化温度の低温化の制約となる。
【0078】
本実施形態の二液性封止キットは、塗布工程で使用される塩基性触媒、および硬化工程で使用されるエポキシ樹脂組成物を混合せずに使用する。このような使用により、ケースおよびベース間の部位に強い密着性を持たせ気密性が高い封止を実現することができる。
【0079】
〔3〕電子部品
本実施形態の電子部品は、上述の封止方法により形成された封止部を備えた構成である。すなわち、本実施形態の電子部品は、樹脂材料からなる2つの部材と、該2つの部材間を封止する封止部とを備えた電子部品であって、封止部3は、塩基性触媒を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物で構成されている。
【0080】
図4は、本実施形態の電子部品の一例であるリレーの封止部を示し、図4(a)は、封止部の構成を概略的に示した断面図であり、図4(b)は、封止部における塩基性触媒の分布を模式的に示したグラフである。
【0081】
図4(a)および(b)に示されるように、ケース1aとベース1bとを封止する封止部3には、塩基性触媒を多く含む塩基性触媒リッチ層3aが存在する。この塩基性触媒リッチ層3aは、ケース1aおよびベース1bに接触して形成されている。すなわち、封止部3における塩基性触媒は、ケース1aおよびベース1b間の中心位置(2つの部材間の中心位置)よりも、ケース1aおよびベース1bの両方または何れか一方の部材における近傍位置のほうが多く分布している。ここでいう「近傍位置」は、ケース1aおよびベース1bからの距離が5〜30μmの範囲内にある位置のことである。
【0082】
封止部3において塩基性触媒がケース1aおよびベース1bの近傍に多く分布しているか否かは、例えば、顕微イメージングFT−IRやガスクロマトグラフィ質量分析GC−MSによって確認することができる。特に、顕微イメージングFT−IRは、簡易に且つ正確に分析することができるので好ましい。
【0083】
本発明者は、封止部3について、顕微イメージングFT−IRを用いて、塩基性触媒の分布を確認した。以下、封止部3を顕微イメージングFT−IRにより分析した結果について、説明する。なお、この分析では、封止部3は、塩基性触媒としてイミダゾール化合物を用いて作製している。そして、Varian社製のFT−IR(3100FT−IR)に顕微アタッチメント(600UMA)を取付けて、封止部3について、ケース1a近傍、ケース1aとベース1bとの中央部、ベース1b近傍での塩基性触媒の量を測定した。
【0084】
その結果、塩基性触媒としてイミダゾール化合物を塗布したケース1a近傍およびベース1b近傍において、950cm〜1000cm−1付近のピーク(イミダゾール由来のピーク)の増加が確認され、ケース1a近傍およびベース1b近傍の領域は、ケース1aとベース1bとの中央部よりも塩基性触媒の量が増加していた。よって、塩基性触媒の添加による気密性の向上は、塩基性触媒が接着部位近傍に存在するためであると考えられる。
【0085】
なお、本実施形態の電子部品は、リレーに限定されず、気密封止や絶縁封止を行なうことに有用性があるものであればよく、通常電気部品と称されるものであってもよい。例えば、スイッチ、センサー等を挙げることができる。
【実施例】
【0086】
エポキシ樹脂組成物(B)の調製
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂AER260(旭化成製)100重量部と、潜在性硬化剤としてイミダゾール系硬化剤(商品名:PN−23、味の素ファインテクノ(株)製)5重量部と、ジシアンジアミド(商品名:DDA5、PTIジャパン製)8重量部と、フィラーとして炭酸カルシウム(商品名:日東粉化製)20重量部と、着色剤としてカーボンブラック1重量部とを混合した後、ミキシングロールを使って混練し、エポキシ樹脂組成物(B)を調製した。
【0087】
〔実施例1〕
まず、スプレーノズル(商品名:781−SS、サンエイテック製)を用いて、硬化剤(A)として塩基性触媒であるイミダゾール化合物(商品名:2E4MZ、四国化成製)0.5mgを、図2に示されるように、ケースおよびベースにおける互いに対向する対向面に塗布した。なお、ケースおよびベースの基材(材質)はLCP(液晶ポリマー)である。その後、ケースおよびベースの上面にエポキシ樹脂組成物(B)90mgを塗布した。そして、エポキシ樹脂組成物(B)を100℃で60分硬化させ、リレーを作製した。
【0088】
作製したリレーは、リフロー炉((株)トーヨーコーポレーション、NRY−540S−7Z)を用い、リフロー処理に供した。図5は、リフロー処理における半田の温度変化の一例を示すグラフである。横軸は時間、縦軸は温度を表す。本実施例では、リフロー処理(IRS法)は、予備加熱を150℃(図5におけるT1)で90〜120秒(図5におけるt1)行い、200℃(図5におけるT2)30秒以内(図5におけるt2)かつ最高温度が250℃(図5におけるT3)以下で加熱する条件にて処理を行った。なお、IRS法の詳細は、品質・信頼性ハンドブック(ソニー(株)等)に記載されている。
【0089】
その後、日本電気制御機器工業会規格 NECA0404 制御機器の封止(気密性)試験方法(リレーハンドブック、眞野國夫著、森北出版)に従って70℃に加熱したフッ素系不活性液体に1分間浸漬させ、気密性評価試験を行った。結果は、目視にて観察し、接着性が高くかつ浸漬中に気泡が発生しない場合を◎、気泡が発生しない場合を○、浸漬中に気泡が発生した場合を×として表した。塩基性触媒の有無および基材および気密性評価試験の結果を表1に示した。
【0090】
また、作製したリレーの成形材(ケースおよびベース)を分解し、ケース−ベース間のエポキシ樹脂の流れ込みを確認するとともに、未硬化エポキシ樹脂成分の有無を目視により確認した。目視での上記観察は、具体的には、まず、ケース−ベース間に挟まれた領域におけるエポキシ樹脂組成物において透明な部分が分離しているか否かを観察した。そして、透明な部分が分離していない場合には、未硬化成分の分離が発生していないとして○と判断した。透明な部分が確認された場合は、未硬化成分の分離が発生しているとして×と判断した。
【0091】
〔実施例2〜5、比較例1〜7〕
実施例2では、表1に示されるように、硬化剤として実施例1と異なる塩基性触媒である第三級アミン化合物(商品名:JER3010、ジャパンエポキシレジン社製)を用いて、実施例1と同様の気密性評価試験、流れ込みの確認、及び未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定を行った。
【0092】
実施例3では、表1に示されるように、硬化剤(A)として実施例2と同じ第三級アミン化合物を用い、かつ、硬化剤(A)を塗布する基材として実施例1で用いた基材と異なるPBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いて、実施例1と同様の気密性評価試験、流れ込みの確認、及び未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定を行った。
【0093】
実施例4では、表1に示されるように、硬化剤(A)として実施例1と同じイミダゾール化合物を用い、硬化剤(A)を塗布する基材として実施例3と同じPBTを用いた。そして、硬化剤(A)およびエポキシ樹脂組成物(B)の塗布量に対する硬化剤(A)の塗布量の割合(表1では、A/(A+B)*100(%)と表記)を実施例1と異なる割合にして、実施例1と同様の気密性評価試験、流れ込みの確認、及び未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定を行った。
【0094】
実施例5では、表1に示されるように、硬化剤(A)および基材ともに、実施例1と同じものを用いた。そして、硬化剤(A)およびエポキシ樹脂組成物(B)の塗布量に対する硬化剤(A)の塗布量の割合を実施例1と異なる割合にして、実施例1と同様の気密性評価試験、未硬化エポキシ樹脂の有無の判定、及び流れ込みの判定を行った。
【0095】
比較例1では、表2に示されるように、硬化剤(A)として実施例1と異なるグルタル酸(東京化成工業製)を用い、かつ硬化剤(A)を塗布する基材として実施例1と同じLCPを用いて、実施例1と同様の気密性評価試験、流れ込みの確認、及び未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定を行った。
【0096】
比較例2および3では、表2に示されるように、硬化剤(A)を塗布する工程を省いて、エポキシ樹脂組成物(B)を塗布する工程のみを行い、実施例1と同様の気密性評価試験、流れ込みの確認、及び未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定を行った。なお、比較例2では、基材として実施例3と同じPBTを用いた。また、比較例3では、基材として実施例1と同じLCPを用いた。
【0097】
比較例4および5では、表2に示されるように、硬化剤(A)および基材ともに、実施例1と同じものを用いた。そして、硬化剤(A)およびエポキシ樹脂組成物(B)の塗布量に対する硬化剤(A)の塗布量の割合を実施例1と異なる割合にして、実施例1と同様の気密性評価試験、流れ込みの確認、及び未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定を行った。
【0098】
比較例6では、表2に示されるように、硬化剤(A)およびエポキシ樹脂組成物(B)の混合物を調製した。そして、この混合物を、リレーを構成する成形材におけるエポキシ樹脂組成物塗布面に塗布した後、実施例1と同様にして気密性評価試験、流れ込みの確認、及び未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定を行った。
【0099】
比較例7では、表2に示されるように、硬化剤(A)を塗布する工程およびエポキシ樹脂組成物(B)を塗布する工程の順番を、実施例1と逆の順番にして、実施例1と同様にして気密性評価試験、流れ込みの確認、及び未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定を行った。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
表1および表2における実施例1〜5と比較例1〜3との比較結果から、ケースおよびベースの対向面に事前に硬化剤(A)として塩基性触媒を塗布させた状態で、エポキシ樹脂組成物(B)を塗布し硬化する(表1,2では「A→B→硬化」と記載)ことにより、気密性が向上することがわかった。また、流れ込みの確認、および未硬化エポキシ樹脂成分の有無の判定結果から、比較例1〜3では、未硬化エポキシ樹脂成分が確認された一方、実施例1〜5では、未硬化エポキシ樹脂成分が確認されなかった。エポキシ樹脂を封止剤として用いたシールリレーでは、この未硬化エポキシ樹脂成分が接点に付着することにより、リレー特性の寿命が短くなることが知られている(例えば特許公開2001−220429号公報:平成13年8月14日公開)。よって、本発明の封止方法は、気密性を向上させるだけでなく、リレーの寿命に影響する未硬化エポキシ樹脂成分の抑制についても顕著な効果を奏することが分かった。
【0103】
また、実施例1および実施例2の結果から、基材がLCPである場合、硬化剤(A)としてイミダゾール化合物を塗布したほうが気密性を向上させることができることがわかった。また、実施例3および実施例4の結果から、基材がPBTである場合、硬化剤(A)としてイミダゾール化合物および第三級アミン化合物のいずれを塗布しても、気密性を向上させることができることがわかった。
【0104】
また、表1および表2における比較例6,7の結果は、塩基性触媒(硬化剤(A))およびエポキシ樹脂組成物(B)の塗布について、混合物を塗布し硬化する、あるいは、塗布する順番を変更すると、気密性を示すことができず、さらには未硬化エポキシ樹脂成分も確認されることを意味する。それゆえ、塩基性触媒(硬化剤(A))およびエポキシ樹脂組成物(B)の塗布の順番(「A→B→硬化」)が、気密性向上および未硬化エポキシ樹脂成分の抑制のために重要であることがわかった。
【0105】
また、表2における比較例4の結果から、硬化剤(A)として塩基性触媒を塗布させた状態で、エポキシ樹脂組成物(B)を塗布し硬化しても、エポキシ樹脂組成物(B)に対する硬化剤(A)の塗布量が多すぎると、硬化剤(A)およびエポキシ樹脂組成物(B)の混合液体の粘度が低下し、成形材内部への流れ込みが増加することがわかった。一方、比較例5の結果から、エポキシ樹脂組成物(B)に対する硬化剤(A)の塗布量が少なすぎると、接着性が低下し気密性を示さないことが分かった。以上の比較例4,5の結果、および実施例1〜5の結果から、本発明の効果を奏する最適な塩基性触媒の塗布量は、エポキシ樹脂組成物90mgに対し、0.1〜5mgであることがわかった。
【0106】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の封止方法は、2つの部材における互いに対向する対向面に塩基性触媒を塗布する塗布工程と、対向面に塗布された上記塩基性触媒にエポキシ樹脂組成物を接触させ、該エポキシ樹脂組成物を硬化する硬化工程とを含むので、低温硬化が可能であり、かつ接着性に優れた電子部品を製造することができる。したがって、各種電子産業に幅広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 成形材
1a ケース(部材)
1b ベース(部材)
2 金属端子
3 封止部
100 リレー(電子部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性触媒及びエポキシ樹脂組成物を用いて、樹脂材料からなる2つの部材を接着させることにより、電子部品を封止する電子部品の封止方法であって、
上記2つの部材における互いに対向する対向面に塩基性触媒を塗布する塗布工程と、
上記対向面に塗布された上記塩基性触媒にエポキシ樹脂組成物を接触させ、該エポキシ樹脂組成物を硬化する硬化工程と、を含むことを特徴とする電子部品の封止方法。
【請求項2】
上記硬化工程では、上記2つの部材の隙間に上記エポキシ樹脂組成物を流し込むことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の封止方法。
【請求項3】
上記塗布工程では、上記対向面に、上記塩基性触媒を噴霧することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の封止方法。
【請求項4】
上記2つの部材は、PBT(ポリブチレンテレフタレート)で構成され、
上記塩基性触媒として、イミダゾール化合物または第三級アミン化合物を用いることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の封止方法。
【請求項5】
上記2つの部材は、LCP(液晶ポリマー)で構成され、
上記塩基性触媒として、イミダゾール化合物を用いることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の封止方法。
【請求項6】
上記硬化工程では、ジシアンジアミドを含むエポキシ樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1に記載の電子部品の封止方法。
【請求項7】
リレーの成形材を構成する、ケースおよびベースを接着することにより、リレーを封止することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の封止方法。
【請求項8】
塩基性触媒及びエポキシ樹脂組成物を用いて、樹脂材料からなる2つの部材を接着させることにより、電子部品を封止するための二液性封止キットであって、
上記2つの部材における互いに対向する対向面に塗布するための塩基性触媒と、
対向面に塗布された上記塩基性触媒に接触させるためのエポキシ樹脂組成物との2成分で構成されていることを特徴とする二液性封止キット。
【請求項9】
樹脂材料からなる2つの部材と、該2つの部材間を封止する封止部とを備えた電子部品であって、
上記封止部は、塩基性触媒を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物で構成されており、
上記塩基性触媒は、上記2つの部材間の中心位置よりも、上記2つの部材の両方または一方の部材における近傍位置のほうが多く分布していることを特徴とする電子部品。
【請求項10】
上記電子部品がリレーであることを特徴とする請求項9に記載の電子部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−187236(P2011−187236A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49603(P2010−49603)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】