説明

電子部品の放熱構造

【課題】既存の基板に接着剤の塗布量を規定して発熱電子部品を接着固定し所定の放熱効果を期待できる電子部品の放熱構造を得ること。
【解決手段】ヒートシンクと、前記ヒートシンクが裏面に固定された基板とで構成され、前記基板の表面において、搭載する発熱電子部品が接触する外周囲から外へ所定の絶縁距離を置いて前記外周囲を囲む境界線を定め、前記境界線の外側全面にのみ銅箔パターンが施され、前記境界線の内側全面は基板表面が露出し、前記外周囲の内側基板表面に接着剤を盛り付ける場所と塗布量を指定する盛り付け目安がシルク印刷されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の放熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1では、太陽光発電システムのパワーコンディショナである系統連系インバータ装置が開示されている。太陽光発電システムのパワーコンディショナの変換効率は、現在97.5%を実現しているものもあり、これ以上の効率アップは極めて難しいとされている。
【0003】
ところで、電源装置や発電システムで用いられるリアクトル(直流リアクトル、交流リアクトル)は、通電により発熱する。この発熱するリアクトルについて放熱対策を怠ると電力損失が大きくなる。
【0004】
すなわち、特許文献1の図2において、リアクトル51,12について放熱対策を施せば、太陽光発電システムのパワーコンディショナの変換効率の更なる効率アップが期待できる。この場合の放熱対策は、リアクトル51とリアクトル12とについてそれぞれ個別に行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3618902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図2に示されるようなリアクトルについての放熱対策としては、次のような点に留意する必要がある。
【0007】
電子部品の放熱構造としては、電子部品にヒートシンクを取り付けるのが一般的であるが、ヒートシンクは金属製であるから、リアクトルとヒートシンクとの間に絶縁材が必要である。そのとき、絶縁材としては一般的な基板でよいが、その基板がリアクトルの放熱性を悪くしないように工夫する必要がある。
【0008】
また、リアクトルを基板に密着させる接着剤は、予め基板に所定量塗布しておくが、その塗布量が少ないとリアクトルの放熱性を悪くするので、適切な接着剤塗布量を予め確定できる工夫が必要である。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、既存の基板に接着剤の塗布量を規定して発熱電子部品を接着固定し所定の放熱効果を期待できる電子部品の放熱構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、ヒートシンクと、前記ヒートシンクが裏面に固定された基板とで構成され、前記基板の表面において、搭載する発熱電子部品が接触する外周囲から外へ所定の絶縁距離を置いて前記外周囲を囲む境界線を定め、前記境界線の外側全面にのみ銅箔パターンが施され、前記境界線の内側全面は基板表面が露出し、前記外周囲の内側基板表面に接着剤を盛り付ける場所と塗布量を指定する盛り付け目安がシルク印刷されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発熱電子部品の熱を基板表面に設けた銅箔パターンに伝達するので、放熱がヒートシンクだけでなく、銅箔パターンでも行われるので、放熱性が向上する。発熱する電子部品の放熱処理を個別に行う放熱構造を、既存の基板を利用し、接着剤の塗布量を規定して構成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態による電子部品の放熱構造で用いる基板の構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に示す基板を用いた放熱構造の構成および放熱の様子を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる電子部品の放熱構造の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態による電子部品の放熱構造で用いる基板の構成を示す平面図である。図2は、図1に示す基板を用いた放熱構造の構成および放熱の様子を説明する断面図である。なお、説明の便宜から、発熱電子部品は、背景・課題で示したリアクトルであるとして説明する。
【0015】
図1と図2において、基板1は、一般に用いられている回路基板であり、単層基板であるか多層基板であるかは問わない。この基板1の裏面には、ヒートシンク2が固定されている。
【0016】
基板1の表面では、境界円3を基準に、この境界円3の外側全面に銅箔パターン4が施され、この境界円3の内側は銅箔パターン無しであり、盛り付け目安5がシルク印刷されている。
【0017】
境界円3は、ドーナツ状をしているリアクトル6の接触外周囲7の外側に絶縁距離8だけ離れた位置に定められている。また、盛り付け目安5は、リアクトル6の接触外周囲7の内側に位置決めされている。
【0018】
盛り付け目安5は、接着剤9を予め盛り付けしておく場所である。盛り付け目安5に予め盛り付けしておく接着剤9の量は、リアクトル6を盛り付け目安5に載せたとき、接着剤9がリアクトル6のドーナツ穴10を埋めるとともに、絶縁距離8を跨いで銅箔パターン4に到達できる程度の量である。盛り付け目安5の大きさは、その大きさ一杯に接着剤9を盛り付けると、上記した必要量の接着剤9を塗布できる大きさになっている。
【0019】
以上の構成において、図2に示すように、リアクトル6で発生した熱は、接着剤9に伝達される。そして、接着剤9に伝達される熱は、リアクトル6の配置場所では直接基板1に伝達され、リアクトル6の配置場所から離れた所では銅箔パターン4を介して基板1へ伝達され、基板1からヒートシンク2へ伝達される。
【0020】
そのとき、基板1の表面では、比較的広い範囲を熱伝導の優れた銅箔パターン4で被覆してあるので、放熱は、ヒートシンク2だけでなく、銅箔パターン4でも行われる。よって、放熱性を向上させることができる。
【0021】
したがって、太陽光発電システムのパワーコンディショナに通常使用されている直流リアクトルや交流リアクトルに以上説明した放熱構造を適用すれば、その直流リアクトルや交流リアクトルでの電力損失を減らすことが可能になるので、システム全体の変換効率をアップさせることができる。
【0022】
なお、リアクトルの放熱について説明したが、本実施の形態は、他の発熱電子部品にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0023】
このように、発熱する電子部品の放熱処理を個別に行う放熱構造を、既存の基板を利用し、接着剤の塗布量を規定して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように、本発明にかかる電子部品の放熱構造は、既存の基板に接着剤の塗布量を規定して発熱電子部品を接着固定し所定の放熱効果を期待できる電子部品の放熱構造として有用であり、特に、太陽光発電システムのパワーコンディショナに使用されている直流リアクトルや交流リアクトルでの電力損失を減らしシステム全体の効率アップを図るのに適している。
【符号の説明】
【0025】
1 基板
2 ヒートシンク
3 境界円
4 銅箔パターン
5 盛り付け目安
6 リアクトル(発熱電子部品)
7 リアクトルの接触外周囲
8 絶縁距離
9 接着剤
10 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクと、
前記ヒートシンクが裏面に固定された基板とで構成され、
前記基板の表面において、
搭載する発熱電子部品が接触する外周囲から外へ所定の絶縁距離を置いて前記外周囲を囲む境界線を定め、前記境界線の外側全面にのみ銅箔パターンが施され、前記境界線の内側全面は基板表面が露出し、前記外周囲の内側基板表面に接着剤を盛り付ける場所と塗布量を指定する盛り付け目安がシルク印刷されている
ことを特徴とする電子部品の放熱構造。
【請求項2】
前記盛り付け目安の大きさは、
前記発熱電子部品を載置したとき、前記接着剤が前記絶縁距離を跨いで前記銅箔パターンに到達できる程度の量を塗布できる大きさである
ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品の放熱構造。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−216730(P2012−216730A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82233(P2011−82233)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】