説明

電子部品保持体

【課題】電子部品のリードをバスバーにレーザ溶接するに当たり、電子部品本体が損傷を受けることを防ぐ。
【解決手段】一対のバスバー30の各突出端には電極部31が対向した形態で設けられ、各電極部31は、相手との対向面とは反対側の面が凹んだ段差状に形成される。突出壁36には、間に切込線39が入れられることで一対の脚部35が開閉可能に形成される。両脚部35が開放された状態では、両脚部35の間に挿通溝47が形成されて同挿通溝47の底部に設けられた収容部43まで抵抗器15のリード17が挿通可能であり、閉鎖された状態では、リード17を収容部43に留めたまま挿通溝47を閉鎖可能とされる。低位面37に載せられたリード17に対して上方からレーザ光が照射される設定となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を保持した電子部品保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電子部品保持体の一例として、自動車に搭載されたエンジンのO2センサ用のコネクタに内蔵される抵抗器保持体が知られている。このものは、抵抗器本体の両端から互いに逆向きにリードが突設された抵抗器と、一対のバスバーが互いに平行をなす姿勢で貫通状に埋設された合成樹脂製の基体とが備えられ、抵抗器の両リードが、両バスバーにおける基体の一端側から互いに対向した形態で突出した突出端の間に渡されて固定された構造である。
【0003】
ここで、バスバーとリードとの固着力をより高めるためにレーザ溶接を利用することが提案され、具体的には、バスバーの突出端からスリットを切り、同スリット内にリードを落とし込んだのち、リードにおけるスリットの底部に載った部分に上方からレーザ光を照射することにより、リードの下面とスリットの底部との間を溶接して固着するようになっている。なお、このようなレーザ溶接により電子部品のリードを固着する方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−243827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の方法では、レーザ光は上方からスリット内を通って同スリットの底部に載っているリードの上面に照射されることから、リードに当たったのち周囲に拡散して、一部のレーザ光が抵抗器本体に当たり、同抵抗器本体を焼損させるおそれがあって、その防止策の出現が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、電子部品のリードをバスバーにレーザ溶接するに当たり、電子部品本体が損傷を受けることを未然に防止するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、部品本体の両端から互いに逆向きにリードが突設された電子部品と、一対のバスバーが互いに平行をなす姿勢で貫通状に埋設された合成樹脂製の基体とが備えられ、前記電子部品の両リードが、前記両バスバーにおける前記基体の一端側から互いに対向した形態で突出した突出端の間に渡されて、レーザ溶接により固定された電子部品保持体であって、前記バスバーの突出端には、間に切込線が入れられることで一対の脚部が開閉可能に形成され、前記両脚部が開放された状態では、両脚部の間に挿通溝が形成されて同挿通溝の底部に設けられた収容部まで前記電子部品のリードが挿通可能であり、前記両脚部が閉鎖された状態では、前記リードを前記収容部に留めたまま前記挿通溝を閉鎖可能となっているところに特徴を有する。
【0007】
電子部品のリードは、バスバーの突出端に設けられた一対の脚部が開放された状態において、その間に形成された挿通溝に挿通され、溝底の収容部に収容される。続いて両脚部を閉じると、リードが収容部に留められたまま挿通溝が閉鎖される。この状態からリードに向けてレーザ光が照射されると、リードと収容部との接触部分が溶接されて固着される。照射されたレーザ光はリードに当たったのち拡散し、そのとき電子部品の本体側に向かう拡散光があったとしても、同拡散光は閉じた両脚部により遮られて、電子部品の本体に当たることが回避され、焼損すること等が未然に防止される。
【0008】
また、以下のような構成としてもよい。
(1)前記バスバーの突出端は、相手との対向面とは反対側の面が凹んだ段差状に形成されて、この段差部における突出壁に、間に切込線が入れられることで前記一対の脚部が開閉可能に形成されるとともに、前記両脚部が開放された場合に形成される前記挿通溝の底部に設けられた前記収容部が、前記段差部における低位面と繋がる形態で形成されており、前記低位面に載せられた前記リードに対して前記低位面に向かう方向にレーザ光が照射される設定となっている。
【0009】
電子部品のリードは、バスバーの段差部の突出壁に設けられた一対の脚部が開放された状態において、その間に形成された挿通溝に挿通され、段差部の低位面に載せられつつ溝底の収容部に収容される。続いて両脚部を閉じると、リードが低位面に載せられかつ収容部に留められたまま挿通溝が閉鎖される。この状態からリードにおける低位面に載せられた部分の外面に向けてレーザ光が照射されると、リードと低位面との接触部分が溶接されて固着される。電子部品の本体側に向かうレーザの拡散光は、閉じた状態の突出壁で遮られて、電子部品の本体に当たることが回避される。
バスバーの突出端を段差状に形成して、その低位面にリードを載せて溶接するようにしたから、低位面の厚さ分の溶接長を得ることができ、固着力が高められる。
【0010】
(2)前記低位面における前記リードが載置される面には、前記リードの下面側の外形形状に倣った凹面が形成されている。
リードと低位面との間の接触面積、すなわち溶接面積を大きく採ることができ、固着力をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品のリードをバスバーにレーザ溶接するに当たり、電子部品本体が損傷を受けることを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るカバー付きの抵抗器保持体の正面図
【図2】同正面から見た断面図
【図3】同側面図
【図4】同側断面図
【図5】抵抗器の溶接部分において脚部が開いた状態を示す側面図
【図6】その斜視図
【図7】脚部が閉じた状態を示す側面図
【図8】その斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図8によって説明する。
本実施形態では電子部品保持体として抵抗器保持体10が例示されており、この抵抗器保持体10は、自動車に搭載されたエンジンのO2 センサ用のコネクタに内蔵されるものであって、図1ないし図4に示すように、大まかには抵抗器15と、これを保持する基体20とから構成されている。
【0014】
抵抗器15は、図4に示すように、略円柱形をなす抵抗器本体16の両端面から、丸線からなるリード17が互いに逆向きに突設された形状である。
基体20は合成樹脂製であって、インサート成形によって、一対のバスバー30が互いに平行をなす姿勢でかつ上下方向に貫通した形態で埋設されている。バスバー30は、導電性に優れた金属板から、細長い帯状に打ち抜かれ、かつ長さ方向の途中位置で90度捻られた形状となっている。
【0015】
一対のバスバー30は、上記したように基体20を上下に貫通して設けられており、両バスバー30における基体20の上面から突出した部分は電極部31とされ、互いに対向した形態で配されている。詳しくは後記するように、両電極部31の間に抵抗器15の両リード17が渡されて、レーザ溶接により固定されている。
両バスバー30における基体20の下面から突出した部分は端子部32とされ、両端子部32は同一平面上で平行姿勢で並んだ形態で配されている。
【0016】
基体20の上面には、図4に示すように、保持された抵抗器15の本体16を前後両側から挟持する挟持壁22が突設されており、また、抵抗器15の配設部分を覆って保護する合成樹脂製のカバー24が被着されるようになっている。
【0017】
さらに、抵抗器15のリード17をバスバー30の両電極部31の間に渡してレーザ溶接により固着する部分の構造について、図5ないし図8により説明する。
各電極部31の上面には、それぞれの板厚方向の内側の領域(例えば板厚の半分の領域)で、かつ幅方向の中央部において、一対の脚部35が開閉可能に立設されている。一対の脚部35は、図7に示すように、両脚部35が閉じた場合には、抵抗器15の本体16の端面を覆うべく突出壁36を構成するようになっており、同突出壁36の回りに位置する電極部31の上面が、低位面37となっている。
【0018】
一対の脚部35は、上記の突出壁36に対して縦方向に切込線39が入れられることで形成されており、より詳細には、両脚部35の対向する内側面は、図5に示すように、上部側が平面40であるのに対して、下端部では、抵抗器15のリード17の半径よりも若干大きい半径の1/4円をなす曲面41となっている。この両曲面41の間に、抵抗器15のリード17の上半分をクリアランスを持って収容可能とした収容部43が形成されるようになっている(図7参照)。両脚部35の外側面の下端部は、内側面側が凹んでいる分、円弧状に膨出形成され、補強が図られている。
また、電極部31の上面における幅方向の中央部、詳細には、一対の脚部35における対向した内側面の下端の間の位置から、低位面37の外側の端縁に亘る板厚方向の全領域に、リード17の外形に倣った半円形断面をなす凹面45が形成されている。
【0019】
上記した一対の脚部35は、初めは図5及び図6に示すように開いた状態で形成されており、詳細には両脚部35は、下端を中心として上端が互いに離間するようにV字形に開かれ、そのとき特に、両脚部35の対向した内側面における平面40の下端同士の間隔が、抵抗器15のリード17を径方向に挿通可能な寸法とされている。すなわち、両脚部35が開いた状態では、両脚部35の間に、抵抗器15のリード17を凹面45に向けて挿通可能とした挿通溝47が形成された形態となる。
【0020】
このように一対の脚部35が開いた形態の電極部31を形成するには、例えばバスバー30の一方の突出端側をプレス加工により叩いて段差形状としたのち、打ち抜くことにより形成することができる。
一方、レーザ溶接装置では、レーザ光Bは下向きで、かつ突出壁36の外側において低位面37上で露出したリード17の上面を指向して照射されるようになっている。
【0021】
続いて、レーザ溶接作業の工程の一例を説明する。基体20は、バスバー30の電極部31を上に向けた姿勢を取って溶接装置の所定位置にセットされ、このとき電極部31に設けられた一対の脚部35は、図5及び図6に示すように開いた状態にある。続いて図5の矢線に示すように、抵抗器15の両リード17が、開いた一対の脚部35の間に形成された挿通溝47に対して上方から挿通され、挿通溝47の底部から低位面37に亘って形成された凹面45に下半分が嵌ることで、抵抗器15が支持される。
【0022】
次に、両脚部35が、上端を図示しない工具で挟む等によって、図7及び図8に示すように閉じられる。閉じられた両脚部35により、挿通溝47がほぼ閉鎖された突出壁36が形成され、併せて両脚部35の対向した内側面の下端部の曲面41の間に形成された収容部43内に、リード17の上半分が若干のクリアランスを持って収容される。上記のように形成された突出壁36は、支持された抵抗器15の本体16の端面に対し、高さ方向については上縁を超えて、奥行方向についてはほぼ全域を遮った形態とされる。
【0023】
この状態から、レーザ光Bが、図8の矢線に示すように、リード17における低位面37側で露出した部分の上面に真下を向いて照射される。このレーザ光Bの照射に伴い、リード17のうち主に低位面37側の凹面45と接触した下面側の半円の周面領域が溶接されて固着される。これにより抵抗器15は、バスバー30の両電極部31の間に渡されて電気的に接続された状態において、基体20に対して保持される。
ここで、照射されたレーザ光Bはリード17の上面に当たったのち全方位に向けて拡散するが、抵抗器本体16側に向かう拡散光は突出壁36で遮られ、抵抗器本体16さらには同抵抗器本体16を挟んだ挟持壁22(図4参照)に当たることが回避される。
【0024】
以上のように本実施形態では、抵抗器15のリード17を電極部31に渡して支持したのち、一対の脚部35を閉じることにより、リード17に対するレーザ光の照射位置の内側に突出壁36を形成するようにしている。そのため、リード17に当たったのち抵抗器本体16側に向かうレーザ光Bの拡散光は突出壁36で遮られて、抵抗器本体16さらには同抵抗器本体16を挟んだ挟持壁22に当たることが回避され、それらが焼損すること等が未然に防止される。
【0025】
また、突出壁36の外側に低位面37を設けてその低位面37にリード17を載せて溶接するようにしたから、突出壁36の外側における低位面37の厚さ分の溶接長を得ることができる。しかも、その低位面37には半円形断面の凹面45が形成されてリード17の下半分が嵌められるようになっているから、広い接触面に亘って溶接することが可能となって、きわめて高い固着力を得ることができる。
【0026】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、突出壁を形成するべく一対の脚部を電極部の幅方向の中央部のみに設けたが、全幅に亘って設けるようにしてもよい。
(2)上記実施形態では、抵抗器のリードが、低位面に対して半円分食い込むようにして載せられる構造としたが、食い込み量は任意であり、最低限低位面に対して線接触状態で載せられる構造であってもよい。
(3)抵抗器のリードの長さは上記実施形態よりも長く設定されて、電極部の外側に突出するようになっていてもよい。
【0027】
(4)上記実施形態では、電極部について、突出壁の外側に低位面を備えた段差形状とした場合を例示したが、バスバーの板厚が薄いような場合は、段差状とすることなく、電極部の全厚さにわたって一対の脚部を形成するようにしてもよい。この場合は、抵抗器のリードの長さを脚部の外面からさらに外側に突出する長さとし、同リードにおける脚部から突出した部分の付け根に向けてレーザ光を斜め方向に照射するとよい。
両脚部の間に形成された収容部の外面側の下縁に対してリードが接触した部分が溶接され、レーザ光の拡散光は閉じられた両脚部で遮られる。
(5)上記実施形態では、電子部品として抵抗器を例示したが、これに限らず、例えばダイオード等、電子部品本体の両端から一対のリードを突出させた電子部品全般について適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
B…レーザ光
10…抵抗器保持体(電子部品保持体)
15…抵抗器(電子部品)
16…抵抗器本体(部品本体)
17…リード
20…基体
30…バスバー
31…電極部(段差部)
35…脚部
36…突出壁
37…低位面
39…切込線
43…収容部
45…凹面
47…挿通溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品本体の両端から互いに逆向きにリードが突設された電子部品と、一対のバスバーが互いに平行をなす姿勢で貫通状に埋設された合成樹脂製の基体とが備えられ、前記電子部品の両リードが、前記両バスバーにおける前記基体の一端側から互いに対向した形態で突出した突出端の間に渡されて、レーザ溶接により固定された電子部品保持体であって、
前記バスバーの突出端には、間に切込線が入れられることで一対の脚部が開閉可能に形成され、
前記両脚部が開放された状態では、両脚部の間に挿通溝が形成されて同挿通溝の底部に設けられた収容部まで前記電子部品のリードが挿通可能であり、
前記両脚部が閉鎖された状態では、前記リードを前記収容部に留めたまま前記挿通溝を閉鎖可能となっていることを特徴とする電子部品保持体。
【請求項2】
前記バスバーの突出端は、相手との対向面とは反対側の面が凹んだ段差状に形成されて、この段差部における突出壁に、間に切込線が入れられることで前記一対の脚部が開閉可能に形成されるとともに、
前記両脚部が開放された場合に形成される前記挿通溝の底部に設けられた前記収容部が、前記段差部における低位面と繋がる形態で形成されており、
前記低位面に載せられた前記リードに対して前記低位面に向かう方向にレーザ光が照射される設定となっていることを特徴とする請求項1記載の電子部品保持体。
【請求項3】
前記低位面における前記リードが載置される面には、前記リードの下面側の外形形状に倣った凹面が形成されていることを特徴とする請求項2記載の電子部品保持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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