説明

電子部品収容用トレー

【課題】上段のトレーの収容部が下段のトレーの収容部に嵌まり込んで下段のトレーの収容部に収容した電子部品に当たることを防止できる、かつトレーの板厚を薄くしても下段のトレーが上段のトレーを支えることができるようにする。
【解決手段】トレー2の上板2aに凹み形成した各収容部3内にボタン形電池1をそれぞれ収容した状態で上下複数段に積み重ねて使用する。収容部3は、大半の個数を占める第1収容部10と、トレー2の上板2aにおいて分散状に配されて上段のトレー2を受け止める第2収容部11とに分かれている。第2収容部11は、底板3aの周縁から垂直に立ち上がる周側板11aと、周側板11aの上端から外向きに張り出して上板2aまで立ち上がる段差板11bとを含む。トレー2を積み重ねた際には、上段のトレー2の周縁部が下段のトレー2の周縁部で支持され、上段のトレー2の第2収容部11の下端部が、下段のトレー2の第2収容部11の段差板11bでそれぞれ受け止め支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボタン形電池などの電子部品を収容するための電子部品収容用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、ボタン形電池を縦横に整列させて収容するトレーが開示されている。つまり、前記トレーの上板には複数の収容部が凹み形成されており、各収容部内に電池をそれぞれ収容した状態で、トレーを上下複数段に積み重ねるようになっている。このトレーを重ねた状態で搬送や保管などが行われる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−87490号公報(図1・4)
【特許文献2】実開平6−12392号公報(図1・5)
【特許文献3】実開昭62−93062号公報(第1・3図)
【特許文献4】特開2001−1217号公報(図1・3)
【特許文献5】特開平10−329886号公報(図1・3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、上段のトレーの収容部や補強用溝の下面が下段のトレーの上板に載って、上段のトレーが下段のトレーに支持される。ところが、特許文献1では、複数種類のトレーを作成する必要があり、その分だけ金型の種類が増えるうえに、トレーの種類が多い分だけ管理が煩わしくなる。
【0005】
特許文献2では、トレーを上下方向に重ねたときに、上段のトレーの収容部が下段のトレーの収容部に嵌まり込んで下段のトレーに収容した電池に当たってしまう。このため、下段のトレーの電池に上段側のトレーの重量が加わってしまい、最悪の場合には電池の破損などを招くおそれがある。また、電池の厚みによってトレーを積み重ねたときの全体の上下高さ寸法が変動するために、前記積み重ねたトレーを梱包する段ボール箱の上下高さ寸法などを電池の厚みで変える必要があり、段ボール箱などの汎用性が得られないことになる。
【0006】
一方、特許文献5に示すごとく、上段のトレーの周縁部を下段のトレーの周縁部で支持することも考えられるが、トレーの製造コストや重量軽減のためにトレーの板厚を薄くしたときには電池の重量でトレーが撓んでしまう。すると、上段のトレーの収容部が下段のトレーの収容部に嵌まり込んで、特許文献2と同様に下段のトレーに収容した電池に当たってしまう。
【0007】
この対策としては、特許文献3や特許文献4に示すごとく、上段のトレーの収容部の下端を下段のトレーの収容部でそれぞれ受け止め支持することが考えられるが、下段のトレーの収容部のみで上段のトレーを受け止めたのでは、収容部の周側板の板厚を薄くすると、収容部の周側板の強度が小さくなって、下段のトレーが上段のトレーを支えきれなくなるところに問題がある。
【0008】
また、特許文献3では、収容部の周側板の一部の傾斜を急峻に形成して、上段のトレーの収容部の下端が下段のトレーの収容部の上端に載るように設定してあり、搬送時の振動などでトレーが横方向にずれ動くと、上段のトレーの収容部の下端が下段のトレーの収容部の上端から外れるおそれがある。この場合も、下段のトレーが上段のトレーを支えきれなくなる。
【0009】
特許文献4では、上段のトレーを支えるための縦板の高さ寸法分だけトレー自体の厚さ寸法が大きくなっており、トレーを積み重ねたときには、その上下高さ寸法が大きくなって嵩張ってしまう。
【0010】
そこで本発明の目的は、上段のトレーの収容部が下段のトレーの収容部に嵌まり込んで下段のトレーの収容部に収容した電子部品に当たることを防止できるうえ、トレー自体の厚さ寸法やトレーの板厚寸法を小さくしても下段のトレーが上段のトレーを支えることができる電子部品収容用トレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明が対象とする電子部品収容用トレー2は、図2に示すごとく、複数の収容部3を上板2aに凹み形成してあって、各収容部3内に電子部品1をそれぞれ収容した状態で上下複数段に積み重ねて使用する。ここでの電子部品1には、ボタン形電池やコンデンサーなどが該当する。
【0012】
本発明では、図1に示すごとく、収容部3が、大半の個数を占める第1収容部10と、トレー2の上板2aにおいて分散状に配されて上段のトレー2を受け止める第2収容部11とに分かれている。第1収容部10は、図2に示すごとく、電子部品1が載置される底板3aと、この底板3aの周縁から上板2aまで立ち上がる周側板10aとを含む。第2収容部11は、電子部品1が載置される底板3aと、この底板3aの周縁から垂直に立ち上がる周側板11aと、この周側板11aの上端から外向きに張り出して上板2aまで立ち上がる段差板11bとを含む。トレー2を積み重ねた際には、図4に示すごとく、上段のトレー2の周縁部が下段のトレー2の周縁部で支持されるとともに、上段のトレー2の各第2収容部11の下端部が、下段のトレー2の各第2収容部11の段差板11bでそれぞれ受け止め支持される。
【0013】
各第2収容部11の段差板11bは、図2に示すごとく周側板11aの上端から水平外向きに張り出したのちに上板2aまで垂直に立ち上がってもよく、周側板11aの上端から斜めあるいは円弧状に立ち上がって上板2aに繋がるように立ち上がってもよい。第1収容部10の周側板10aは、垂直に立ち上がってもよく、テーパー状に立ち上がってもよい。
【0014】
詳しくは、トレー2の周縁部は、図2に示すごとく、トレー2の上板2aの上側へ膨出した枠部5と、上板2aの下側へ垂設した周側板2bとを含む。周側板2bの上下中間には、係止部7が内向きに膨出形成してある。トレー2を積み重ねた際には、上段のトレー2の周側板2bの内側に下段のトレー2の枠部5が入り込んで、下段のトレー2の枠部5に上段のトレー2の係止部7の下板7bが載ることで、上段のトレー2の周縁部が下段のトレー2の周縁部で支持される。
【0015】
より詳しく説明すると、係止部7には、図3に示すごとく、V字状に凹んだ凹部9が少なくとも一箇所形成されており、凹部9は、枠部5の上端から係止部7の下板7bにかけて形成されている。
【0016】
各収容部3の底板3aの中央に、図2に示すごとく、下方へ向けて膨出する抑え部12が形成されているものとすることができる。
【0017】
電子部品1は、ボタン形電池であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上段のトレー2の周縁部が下段のトレー2の周縁部で支持されたうえで、電子部品1を収容した上段側のトレー2の重量が、上段側のトレー2の上板2aに分散状に配された第2収容部11を介して、下段側のトレー2の第2収容部11で受け止められる。これにより、上段側のトレー2は、周縁部および上板2aの全体にわたって均等に支持されて、トレー6の撓みが抑えられる。
【0019】
したがって、上段のトレー2の収容部3が下段のトレー2の収容部3に過度に嵌まり込んで下段のトレー2の収容部3に収容した電子部品1に当たることを確実に防止できる。しかも、トレー2の板厚を薄くしても下段のトレー2が、上段のトレー2を確実に支えることができる。また、第2収容部11の周側板11aが垂直に立ち上がっているので、その周側板11aが傾斜している場合よりも撓み難くなって、上段側のトレー2の重量を周側板11aでしっかりと受け止めることができる。
【0020】
また、上段のトレー2が下段のトレー2の収容部3の蓋として機能して、下段のトレー2の収容部3内の電子部品1の飛び出しを防止するが、下段のトレー2の第1収容部10の上端開口を確実に塞ぐうえでは、上段のトレー2の第1収容部10を下段のトレー2の第1収容部10内にある程度嵌まり込ませることが好ましい。第2収容部11の段差板11bがトレー2の上板2aよりも低い分だけ、上段のトレー2の高さが低くなって上段のトレー2の第1収容部10の下端部が下段のトレー2の第1収容部10内に嵌まり込む。したがって、下段のトレー2の第1収容部10の上端開口を確実に塞ぐことができるとともに、第1収容部10と第2収容部11との電池の高さ位置を同一にできる。
【0021】
上段のトレー2の周側板2bの内側に下段のトレー2の枠部5が入り込んで、下段のトレー2の枠部5に上段のトレー2の係止部7の下板7bが載ると、上段のトレー2の周縁部を下段のトレー2の周縁部で支持した状態を確実に保持できる。したがって、下段のトレー2の各第2収容部11の段差板11bが、上段のトレー2の各第2収容部11の下端部を確実に受け止め、トレー2の撓みを確実に抑えることができる。
【0022】
係止部7に凹部9を形成すると、係止部7の形成によって強度が低下したトレー2の周縁部を凹部9で補強できて、トレー2の撓みをより確実に抑えることができる。
【0023】
各収容部3の底板3aの中央に抑え部12を形成してあると、トレー2を積み重ねたときに、上段のトレー2の抑え部12が下段のトレー2の収容部3に収容された電子部品1の上下の回転を阻止して、電子部品1がひっくり返った状態のままトレー2から取り出されて使用されることを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図面は、本発明に係る電子部品収容用トレーの実施例を示しており、トレーに収容される電子部品としてはボタン形電池を例示した。ボタン形電池1は、図2に示すごとく、全体が扁平な円盤形状に形成されていて、外径寸法が4.8〜6.8mm、厚さ寸法が1.25〜2.7mmである。
【0025】
ボタン形電池1は、図1に示すごとくトレー2の上板2aにおいて縦横に並べて形成された複数個の収容部3内に、それぞれ1個ずつ収容される。各収容部3は、図2に示すごとく、トレー2の上板2aにおいて中空の有底円筒状に凹み形成してある。各ボタン形電池1は、収容部3内では正極および負極が上下に同一方向に向くように収容される。各収容部3の深さ寸法は、ボタン形電池1の厚さ寸法よりも大きくなっており、ボタン形電池1の全体が、収容部3内に収まるようになっている。
【0026】
トレー2は、厚さ寸法が0.5mmのポリスチレン樹脂(PS)などで真空成形する。トレー2は、図1に示すごとく平面視で長方形に形成されており、図4に示すごとく上下複数段に積み重ねて使用できる。トレー2は、図2および図3に示すごとく、この上板2aの周縁に沿って上側へ膨出する枠部5と、この枠部5の外側の縁から上板2aの下側へ外拡がりテーパー状に垂設した周側板2bと、この周側板2bの下端に設けた鍔部6とを有する。
【0027】
トレー2の周側板2bの上下中間には、複数の係止部7が内向きに膨出形成してある。各係止部7は、アンダーカット処理によってそれぞれ成形されており、傾斜板7aの下端に下板7bが水平状に連続している。トレー2を積み重ねたときに、図4に示すごとく、上段のトレー2の周側板2bの内側に下段のトレー2の枠部5が入り込んで、下段のトレー2の枠部5に上段のトレー2の係止部7が載る。
【0028】
係止部7は、トレー2の長方形の周縁の四隅近傍および前記周縁の二つの長辺の中央にそれぞれ配されており、図3に示すごとく、各係止部7には、V字状に凹んだ凹部9が複数形成されている。各凹部9は、係止部7の形成によって強度が低下したトレー2の周縁部を補強するためのものであり、トレー2の枠部5の上端から係止部7の下板7bにかけて形成される。図1に示すごとく、トレー2の周縁の四隅近傍の各係止部7には、二つの凹部9がそれぞれ形成されており、前記長辺の中央の各係止部7には、四つの凹部9がそれぞれ形成されている。
【0029】
収容部3は、大半の個数を占める第1収容部10と、トレー2の上板2aにおいて分散状に配されて上段のトレー2を受け止める第2収容部11とに分かれている。第2収容部11の個数は、第1収容部10に比べてかなり少なく、図1では、200個の収容部3のうちの12個のみが第2収容部11に設定されている。
【0030】
第1収容部10は、図2に示すごとく、ボタン形電池1が載置される底板3aと、この底板3aの周縁からトレー2の上板2aまで上広がりテーパー状に立ち上がる周側板10aとからなる。第2収容部11は、ボタン形電池1が載置される底板3aと、この底板3aの周縁から垂直に立ち上がる周側板11aと、この周側板11aの上端から外向きに張り出して上板2aまで立ち上がる段差板11bとからなる。
【0031】
各収容部3の底板3aの中央には、下方へ向けて膨出する抑え部12が形成されており、トレー2を積み重ねたときには、図4に示すごとく、上段のトレー2の抑え部12が下段のトレー2の収容部3内に入り込む。この抑え部12によって下段のトレー2の収容部3に収容されたボタン形電池1の上下の回転が阻止される。抑え部12の下面は、鍔部6の下面とほぼ同一高さに設定されている。
【0032】
トレー2を上下に積み重ねたときには、先ず上段のトレー2の周側板2bの内側に下段のトレー2の枠部5が入り込んで、下段のトレー2の枠部5に上段のトレー2の係止部7が載り、上段のトレー2の周縁部が下段のトレー2の周縁部で支持される。
【0033】
次いで、上段のトレー2の各第2収容部11の下端の周縁が、下段のトレー2の各第2収容部11の段差板11bの内側周縁に載って受け止められる(図4の状態)。前述のごとく、第2収容部11は、トレー2の上板2aにおいて分散状に配されているので、上段のトレー2の全体を下段のトレー2の各第2収容部11で受け止めて支えることになり、上段のトレー2が撓むことが確実に低減される。
【0034】
これによって、上段のトレー2の各収容部3が、下段のトレー2の各収容部3に深く入り込んでボタン形電池1に押し当たることが防止される。最下段のトレー2の各収容部3の抑え部12の下面が載置面16上に当たることで、最下段のトレー2が下方に撓もうとすることが阻止される。
【0035】
枠部5は、トレー2の縦横の四辺の全てに形成してもよく、四辺のうちの三辺のみに形成してもよい。係止部7は、トレー2の周側板2bの全域にわたって連続的に設けてもよい。
【0036】
以上の実施例においては、電子部品としてボタン形電池を例に説明したが、この電子部品は扁平円形のコンデンサーなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る電子部品収容用トレーの平面図
【図2】図1のA−A線断面図
【図3】係止部を示す斜視図
【図4】トレーを積み重ねた状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0038】
1 ボタン形電池
2 トレー
2a 上板
2b 周側板
3 収容部
3a 底板
5 枠部
7 係止部
7a 傾斜板
7b 下板
9 凹部
10 第1収容部
10a 周側板
11 第2収容部
11a 周側板
11b 段差板
12 抑え部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収容部を上板に凹み形成して、前記各収容部内に電子部品をそれぞれ収容した状態で上下複数段に積み重ねて使用する電子部品収容用トレーにおいて、
前記収容部は、大半の個数を占める第1収容部と、前記上板において分散状に配されて上段の前記トレーを受け止める第2収容部とに分かれており、
前記第1収容部は、前記電子部品が載置される底板と、この底板の周縁から前記上板まで立ち上がる周側板とを含み、
前記第2収容部は、前記電子部品が載置される底板と、この底板の周縁から垂直に立ち上がる周側板と、この周側板の上端から外向きに張り出して前記上板まで立ち上がる段差板とを含み、
前記トレーを積み重ねた際には、上段の前記トレーの周縁部が下段の前記トレーの周縁部で支持されるとともに、上段の前記トレーの前記各第2収容部の下端部が、下段の前記トレーの前記各第2収容部の前記段差板でそれぞれ受け止め支持されることを特徴とする電子部品収容用トレー。
【請求項2】
前記周縁部は、前記上板の上側へ膨出した枠部と、前記上板の下側へ垂設した周側板とを含み、
前記周側板の上下中間には、係止部が内向きに膨出形成してあり、
前記トレーを積み重ねた際には、上段の前記トレーの前記周側板の内側に下段の前記トレーの前記枠部が入り込んで、下段の前記トレーの前記枠部に上段の前記トレーの前記係止部の下板が載ることで、上段の前記トレーの前記周縁部が下段の前記トレーの前記周縁部で支持される請求項1記載の電子部品収容用トレー。
【請求項3】
前記係止部には、V字状に凹んだ凹部が少なくとも一箇所形成されており、
前記凹部は、前記枠部の上端から前記係止部の前記下板にかけて形成されている請求項2記載の電子部品収容用トレー。
【請求項4】
前記各収容部の底板の中央に、下方へ向けて膨出する抑え部が形成されている請求項1又は2又は3記載の電子部品収容用トレー。
【請求項5】
前記電子部品が、ボタン形電池である請求項1又は2又は3又は4記載の電子部品収容用トレー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−161264(P2007−161264A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356397(P2005−356397)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】