説明

電子部品収納用パッケージおよび電子装置

【課題】入出力部材を備えた電子部品収納用パッケージにおいて、入出力部材を枠体に固定するためのロウ材が枠体の内周面を水平方向に伝うことによって、枠体の耐久性が低下する可能性があった。
【解決手段】本発明の一態様に基づく電子部品収納用パッケージは、絶縁部材、および前記枠体で囲まれた領域の内側から外側に引き出された配線導体を具備した入出力部材を備え、前記配線導体が引き出された方向に平行な前記絶縁部材の側面が、前記枠体の内周面と外周面との間から前記枠体の外側にかけて位置する第1領域および前記枠体の内周面と外周面との間から前記枠体の内側にかけて位置する第2領域を有し、前記第1領域がメタライズ層に覆われていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子のような電子部品が収納される電子部品収納用パッケージおよびこれを用いた電子装置に関する。このような電子装置は各種電子機器に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
電子部品を収納する電子部品収納用パッケージ(以下、単にパッケージともいう)としては、例えば、特許文献1に記載されたパッケージが知られている。特許文献1に記載のパッケージは、内蔵される半導体素子と外部電気回路基板とを電気的に接続するための入出力端子を備えている。入出力端子は、誘電体からなる平板部と、平板部の上面に形成された線路導体と、平板部の上面に線路導体を間に挟んで接合された、誘電体からなる立壁部とを備えている。
【0003】
特許文献1に記載の入出力端子においては、平板部の下面、立壁部の上面、ならびに平板部および立壁部における線路導体の伝送方向に平行な側面の全体がメタライズ層に覆われている。入出力端子の上記の表面がメタライズ層に覆われている場合には、ロウ材による枠体と入出力端子との接合性を良好なものにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−280473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、パッケージの小型化が求められていることから、入出力端子の小型化も求められている。しかしながら、パッケージおよび入出力端子の小型化を進めた場合、枠体と入出力端子とを接合するロウ材が枠体で囲まれた領域内で濡れ広がることによって、枠体の耐久性が低下する可能性がある。具体的には、入出力端子における上記の側面全体にメタライズ層が形成されている場合、この側面の全体にロウ材が濡れ広がり易くなる。
【0006】
上記の側面における枠体で囲まれた領域にロウ材が濡れ広がった場合、ロウ材が枠体の内周面において水平方向に濡れ広がりやすくなる。この水平方向に濡れ広がったロウ材は、枠体の内周面の角部に溜まりやすくなる。このような場合、枠体を構成する材料の熱膨張係数とロウ材を構成する材料の熱膨張係数の差に起因して、枠体の角部に過度の応力が加わる可能性がある。そのため、枠体の耐久性が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、小型化した場合であっても良好な耐久性を有する電子部品収納用パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様に基づく電子部品収納用パッケージは、電子部品が載置される載置領域を上面に有する基板と、前記載置領域を囲むように前記基板の上面に設けられた、内周面および外周面に開口する貫通孔を有する枠体と、絶縁部材、および前記枠体で囲まれた領域の内側から外側に引き出された配線導体を具備し、前記貫通孔にロウ材で接合された入出力部材とを備えている。
【0009】
また、前記配線導体が引き出された方向に平行な前記絶縁部材の側面が、前記枠体の内
周面と外周面との間から前記枠体の外側にかけて位置する第1領域および前記枠体の内周面と外周面との間から前記枠体の内側にかけて位置する第2領域を有している。そして、本態様の電子部品収納用パッケージは、前記第1領域がメタライズ層に覆われていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
上記態様の電子部品収納用パッケージにおいては、絶縁部材における上記の側面全体がメタライズ層に覆われているのではなく、上記の側面がメタライズ層に覆われた第1領域およびメタライズ層に覆われていない第2領域を有している。そして、これらの領域の境界が枠体の内周面と外周面との間に位置している。
【0011】
単にロウ材の量を減らした場合、ロウ材が枠体の内周面を濡れ広がる可能性を小さくできるが、入出力部材の枠体への接合性が低下する、あるいは、パッケージの気密性が低下する可能性がある。しかしながら、上記態様のパッケージにおいては、メタライズ層で覆われた第1領域が、枠体の内周面と外周面との間から枠体の外側にかけて位置している。そのため、ロウ材が枠体の外側に向かって濡れ広がるので、ロウ材の量を過度に減らすことなく、ロウ材が枠体の内周面を濡れ広がる可能性を小さくできる。結果として、小型化した場合であっても良好な耐久性を有するパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態の電子部品収納用パッケージおよびこれを備えた電子装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示す電子部品収納用パッケージにおける入出力部材の斜視図である。
【図3】(a)は、図2に示す入出力部材の側面図、(b)は、図2に示す入出力部材の平面図、(c)は、図2に示す入出力部材の底面図である。
【図4】(a)は、図2に示す入出力部材の第1の変形例を示す平面図であり、(b)は図4(a)に示す入出力部材の領域Aを拡大した拡大平面図である。
【図5】(a)は、図2に示す入出力部材の第2の変形例を示す平面図であり、(b)は図5(a)に示す入出力部材の領域Bを拡大した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態の電子部品収納用パッケージ(以下、単にパッケージともいう)およびこれを備えた電子装置について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明に係るパッケージおよび電子装置は、本明細書が参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0014】
図1〜3に示すように、本実施形態のパッケージ1は、基板3と、この基板3の上面に設けられた、内周面および外周面に開口する貫通孔を有する枠体5と、この貫通孔にロウ材で接合された入出力部材7とを備えている。
【0015】
本実施形態における基板3は、四角板形状の平板部およびこの平板領域の四隅からそれぞれ側方に引き出されたネジ止め部を有している。平板部は、上面に電子部品9が載置される載置領域を有している。それぞれのネジ止め部にはネジ止め孔が形成されている。これらのネジ止め孔においてネジ11を用いてパッケージ1を実装基板13にネジ止め固定することができる。
【0016】
なお、本実施形態において載置領域とは、基板3を平面視した場合に電子部品9と重な
り合う領域を意味している。基板3の大きさとしては、例えば、平板部の一辺を5mm〜50mmに設定することができる。また、基板3の厚みとしては、例えば、0.3mm〜3mmに設定することができる。
【0017】
本実施形態においては載置領域が基板3の上面の中央部に形成されているが、電子部品9が載置される領域を載置領域としていることから、例えば、基板3の上面の端部に載置領域が形成されていても何ら問題ない。また、本実施形態の基板3は一つの載置領域を有しているが、基板3が複数の載置領域を有し、それぞれの載置領域に電子部品9が載置されていてもよい。
【0018】
基板3の上面における載置領域には電子部品9が配設される。電子部品9としては、例えば、光半導体素子、IC素子やLSI素子およびコンデンサのような部品を用いることができる。光半導体素子としては、例えば、LD素子に代表される、光ファイバに対して光を出射する発光素子、あるいは、PD素子に代表される、光ファイバからの光を受光する受光素子、もしくはIC素子やLSI素子に代表される電気的な信号処理を行なう半導体素子が挙げられる。なお、本実施形態の電子装置101においては、電子部品9として光半導体素子を用いている。光半導体素子は、後述する光ファイバとの間で光学結合が行われる。
【0019】
電子部品9には、ボンディングワイヤ15の一方の端部が電気的に接続される。電子部品9は、このボンディングワイヤ15およびリード端子(不図示)などを介して外部の配線回路(不図示)との間で信号の入出力を行うことができる。このように、基板3の上面には電子部品9が配設される。そのため、基板3としては、少なくとも電子部品9が配設される部分には高い絶縁性を有していることが求められる。
【0020】
高い絶縁性を有する基板3は、複数の絶縁性部材を積層することによって作製できる。そして、この基板3の載置領域に電子部品9が載置される。絶縁性部材としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体および窒化珪素質焼結体のようなセラミック材料を用いることができる。また、これらのセラミック材料の代わりにガラスセラミック材料を用いてもよい。
【0021】
これらのガラス粉末およびセラミック粉末を含有する原料粉末、有機溶剤並びにバインダを混ぜることにより混合部材を作製する。この混合部材をシート状に成形することにより複数のセラミックグリーンシートを作製する。作製された複数のセラミックグリーンシートを積層することにより複数の積層体を作製する。複数の積層体をそれぞれ約1600度の温度で一体焼成することにより基板3が作製される。
【0022】
なお、基板3としては、複数の絶縁性部材が積層された構成に限られるものではない。一つの絶縁性部材により基板3が構成されていてもよい。また、基板3として、少なくとも電子部品9が配設される部分に高い絶縁性を有していることが求められることから、例えば、金属部材上に絶縁性部材を積層した構成としてもよい。特に、基板3に対して高い放熱性が求められる場合、基板3が上記の構成であることが好ましい。金属部材は高い放熱性を有しているからである。金属部材上に絶縁性部材を積層した構成とすることで、電子部品9から絶縁性部材および基板3を介した電子装置101の放熱性を高めることができる。
【0023】
具体的には、本実施形態のパッケージ1のように、絶縁性の載置基板17を備えていてもよい。本実施形態のパッケージ1では、基板3が金属部材からなり、この基板3の載置領域上に載置基板17が配設されている。そして、この載置基板17上に電子部品9が載置されている。
【0024】
金属部材としては、具体的には、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンおよびタングステンのような金属材料、あるいはこれらの金属からなる合金やこれらの金属を積層した金属基板を用いることができる。このような金属材料のインゴットに圧延加工法、打ち抜き加工法のような金属加工法を施すことによって基板3を構成する金属部材を作製することができる。
【0025】
また、載置基板17としては、絶縁性部材と同様に絶縁性の良好な部材を用いることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体および窒化珪素質焼結体のようなセラミック材料、またはガラスセラミック材料を用いることができる。
【0026】
本実施形態のパッケージ1は、載置領域を囲むように基板3の上面に配設された枠体5を備えている。枠体5は、平面視した場合の内周面および外周面がそれぞれ四角形の筒形状であり、4つの側壁部分によって構成されている。枠体5は、銀ロウのような接合部材を介して基板3に接合されている。また、枠体5は、内周面および外周面に開口する貫通孔(第1の貫通孔)を有している。
【0027】
枠体5は、平面視した場合の外周を一辺5mm以上50mm以下に設定することができる。また、外周と内周との間の幅で示される枠体5の厚みは、例えば0.5mm以上2mm以下に設定することができる。また、枠体5の高さとしては、例えば3mm以上30mm以下に設定することができる。
【0028】
枠体5としては、例えば、基板3と同様に、絶縁性の良好な部材、あるいは金属部材を用いることができる。絶縁性の良好な部材としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体および窒化珪素質焼結体のようなセラミック材料を用いることができる。また、金属部材としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルトおよびタングステンのような金属材料、あるいはこれらの金属材料からなる合金を用いることができる。
【0029】
第1の貫通孔には入出力部材7が取り付けられている。入出力部材7はロウ材を介して第1の貫通孔に接合されている。本実施形態における入出力部材7は、絶縁部材19および配線導体25を具備している。配線導体25は、枠体5で囲まれた領域の内側から外側に引き出されている。絶縁部材19は、平板形状の第1の絶縁部材21および平板形状の第2の絶縁部材23を具備している。
【0030】
第1の絶縁部材21は四角板形状である。第1の絶縁部材21の例示的な大きさとしては、平面視した場合における配線導体25が引き出される方向に平行な一辺が1〜10mm程度、平面視した場合における配線導体25が引き出される方向に垂直な一辺が5〜50mm程度、厚みが0.3〜3mm程度である。
【0031】
第1の絶縁部材21としては、絶縁性部材と同様に絶縁性の良好な部材を用いることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体および窒化珪素質焼結体のようなセラミック材料、又はガラスセラミック材料を用いることができる。
【0032】
第1の絶縁部材21の上面には複数の配線導体25が配設されている。各配線導体25は、枠体5で囲まれた領域の内側から外側に引き出されている。すなわち、配線導体25の一端が枠体5の内側に位置するとともに、他端が枠体5の外側に位置している。配線導体25は電子部品9と外部の配線回路とを電気的に接続するための部材である。そのため
、電子部品9や載置基板17と電気的に接続されたボンディングワイヤ15の他方の端部が配線導体25の一端に電気的に接続されている。なお、図1〜5において、視覚的な理解を容易にするために配線導体25に斜線を加えている。
【0033】
第1の絶縁部材21および配線導体25の上には第2の絶縁部材23が配設されている。このとき、配線導体25の一端および他端がそれぞれ露出するように、第2の絶縁部材23が配線導体25の上に配設される。第2の絶縁部材23は四角板形状である。第2の絶縁部材23の例示的な大きさとしては、平面視した場合における配線導体25が引き出される方向に平行な一辺が0.5〜2.5mm程度、平面視した場合における配線導体25が引き出される方向に垂直な一辺が5〜50mm程度、厚みが0.3〜3mm程度である。第2の絶縁部材23としては、第1の絶縁部材21と同様に絶縁性の良好な部材を用いることが好ましい。
【0034】
上述の通り、絶縁部材19は第1の絶縁部材21および第2の絶縁部材23によって構成されている。この絶縁部材19における配線導体25が引き出された方向に平行な一対の両側面19aには、それぞれメタライズ層(第1のメタライズ層27)が配設されている。メタライズ層は、入出力部材7と枠体5(第1の貫通孔)とを接合するロウ材の入出力部材7に対する濡れ性を高めるために設けられている。なお、図1〜3において、視覚的な理解を容易にするために第1のメタライズ層27に斜線を加えている。
【0035】
第1のメタライズ層27としては、例えば、マンガン、モリブデンおよびタングステンのような金属材料、あるいはこれらの金属材料からなる合金を用いることができる。また、ロウ材としては、入出力部材7を枠体5に良好に接合できるものであれば特に限定されない。例えば、金−錫ロウあるいは銀ロウを用いることができる。
【0036】
本実施形態のパッケージ1においては、上記の両側面19aが、枠体5の内周面と外周面との間から枠体5の外側にかけて位置する第1領域29および枠体5の内周面と外周面との間から枠体5の内側にかけて位置する第2領域31をそれぞれ有している。そして、上記側面19aの全体がメタライズ層に覆われるのではなく、第1領域29のみが第1のメタライズ層27に覆われた構成となっている。すなわち、上記の側面19aが、第1のメタライズ層27に覆われた第1領域29および第1のメタライズ層27に覆われていない第2領域31を有している。
【0037】
言い換えれば、上記の両側面19aが、枠体5の内周面と外周面との間から枠体5の外側にかけて位置して第1のメタライズ層27に覆われた領域と、枠体5の内周面と外周面との間から枠体5の内側にかけて位置して第1のメタライズ層27に覆われていない領域とを有している。そして、これらの領域の境界が枠体5の内周面と外周面との間に位置している。
【0038】
そのため、入出力部材7と枠体5とを接合するロウ材が、第1のメタライズ層27を介して第1領域29において濡れ広がり易くなり、第1のメタライズ層27に覆われていない第2領域31および第1のメタライズ層27に覆われた領域と、第1のメタライズ層27に覆われていない領域の境界から、第1の貫通孔を介して枠体5の内周面において濡れ広がり難くなる。
【0039】
これによって、枠体5の内周面であって絶縁部材19の上記側面19aに隣接する部分に、このロウ材が濡れ広がる可能性が低減される。また、例えば枠体5の内周面であって上記側面19aに隣接する部分が入出力部材7と近接する場合には、入出力部材7と枠体5の内周面と枠体5の内周面であって上記側面19aに隣接する部分との間に余剰なロウ材が溜められる可能性が低減される。
【0040】
従って、ロウ材が枠体5の内周面における上記側面19aに隣接する部分から水平方向に濡れ広がることが抑制されるので、枠体5の内周面の角部や入出力部材7と枠体5の内周面と枠体5の内周面であって上記側面19aに隣接する部分との間に溜まることが抑制される。
【0041】
結果として、枠体5の内周面の角部や入出力部材7と枠体5の内周面と枠体5の内周面であって上記側面19aに隣接する部分との間に溜まるロウ材と枠体5および入出力部材7との熱膨張係数差に起因した熱応力の発生や、熱応力がロウ材などの局部に集中することが抑制されるとともに、枠体5、入出力部材7およびロウ材に生じるクラックや割れを抑制することができる。結果として、小型化した場合であっても良好な耐久性と気密性を有するパッケージ1を提供することができる。
【0042】
単に入出力部材7と枠体5とを接合するロウ材の量を減らした場合もまた、このロウ材が枠体5の内周面を濡れ広がる可能性を小さくできるが、一方で、入出力部材7の枠体5への接合性が低下する、あるいは、パッケージ1の気密性が低下する可能性がある。
【0043】
しかしながら、本実施形態のパッケージ1においては、第1のメタライズ層27で覆われた第1領域29が、枠体5の内周面と外周面との間から枠体5の外側にかけて位置している。そのため、ロウ材が枠体5の外側に向かって濡れ広がるとともに、枠体5の外周面と第1領域29との角部にはロウ材によるメニスカスが形成されるので、ロウ材の量を過度に減らすことなく、ロウ材が枠体5の内周面を濡れ広がる可能性を小さくできるとともに、パッケージ1の耐久性と気密性を維持するために必要な入出力部材7と枠体5との接合強度を確保することができる。結果として、小型化した場合であっても良好な耐久性と気密性を有するパッケージ1を提供することができる。
【0044】
第1領域29と第2領域31の境界は、上述の通り、枠体5の内周面と外周面との間に位置している。このとき、枠体5の内周面と外周面との間における第2領域31の幅D1が、枠体5の内周面と外周面との間の幅D2、言い換えれば、枠体5の厚みの70〜90%程度であることが好ましい。
【0045】
幅D1が幅D2の70%以上である場合には、パッケージ1の耐久性と気密性を維持するために必要な入出力部材7と枠体5との接合面積が確保され、入出力部材7の枠体5への接合性を良好なものにでき、また、パッケージ1の気密性を良好なものにできる。また、幅D1が幅D2の90%以下である場合には、入出力部材7と枠体5とを接合するロウ材が枠体5の内周面を濡れ広がることをより確実に抑制できる。なお、図2,3において、一点鎖線X1は枠体5の内周面と上下に重なり合う部分を、一点鎖線X2は枠体5の外周面と上下に重なり合う部分をそれぞれ意味している。
【0046】
また、第1領域29と第2領域31との境界が、図2,3(a)に示すように、枠体5の内周面に対して平行であることが好ましい。言い換えれば、第1のメタライズ層27を側面視した場合に、枠体5の内周面に近い端部が枠体5の内周面に対して平行であることが好ましい。枠体5の内周面に対して平行でない、すなわち、第1領域29と第2領域31との境界と、枠体5の内周面との間隔が一定でない場合、これらの間隔が最も狭い部分をロウ材が伝って、枠体5の内周面に濡れ広がり易くなるとともに、第1領域29と第2領域31との境界と、枠体5の内周面との間隔が狭い部分と広い部分において、ロウ材と枠体5および入出力部材7との熱膨張係数差に起因して生じる熱応力が偏って分布しやすくなる。そのため、これらの熱応力の偏りに起因した枠体5、入出力部材7およびロウ材にクラックや割れが生じやすくなる。
【0047】
しかしながら、第1領域29と第2領域31との境界が、枠体5の内周面に対して平行である場合には、入出力部材7の枠体5への接合性を良好なものにしつつも、ロウ材が枠体5の内周面に濡れ広がることをより確実に抑制できる。また、第1領域29と第2領域31との境界と、枠体5の内周面との間隔が一定であることから、ロウ材と枠体5および入出力部材7との熱膨張係数差に起因して生じる熱応力が偏って分布することが抑制され、熱応力の偏りに起因したクラックや割れの発生を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態のパッケージ1は、第1の絶縁部材21の下面および第2の絶縁部材23の上面に設けられた第2のメタライズ層33をさらに備えている。そのため、入出力部材7の上面側および下面側においても、入出力部材7を枠体5に強固に接合することができる。なお、図3〜5において、視覚的な理解を容易にするために第2のメタライズ層33に斜線を加えている。
【0049】
絶縁部材19の上面19bおよび下面19cは、図4に示すように、それぞれ側面19aと同様に、枠体5の外周面側に位置してメタライズ層が表面に形成された領域および枠体5の内周面側に位置してメタライズ層が表面に形成されていない領域を有していてもよいが、図3に示すように、第1の絶縁部材21の下面全体および第2の絶縁部材23の上面全体に第2のメタライズ層33が設けられていることが、入出力部材7と枠体5との接合強度を確保するために好ましい。
【0050】
第1の絶縁部材21の下面に設けられた第2のメタライズ層33の表面を伝って枠体5の内周面に濡れ広がったロウ材は、枠体5の内周面において下方向、言い換えれば、基板3に向かって濡れ広がりやすいからである。さらに、ロウ材は、第1の絶縁部材21の下面に設けられた第2のメタライズ層33にも濡れ広がり、余剰なロウ材を第2のメタライズ層33で溜めることができるとともに、第1の絶縁部材21の下面と枠体5の内周面との間で形成される角部にロウ材によるメニスカスを形成することができる。
【0051】
本実施形態のパッケージ1においては、上述の通り、基板3と枠体5とが銀ロウのような接合部材を介して接合されている。そのため、ロウ材が基板3に向かって濡れ広がったとしても、基板3および枠体5の耐久性に対して影響を与える可能性が低く、さらには第1の絶縁部材21の下面に余剰なロウ材を溜めつつ入出力部材7と枠体5との接合強度を高めることができる。
【0052】
また、第2の絶縁部材23の上面に設けられた第2のメタライズ層33の表面を伝って枠体5の内周面に濡れ広がったロウ材は、枠体5の内周面において上方向に向かって濡れ広がりやすく、さらに、ロウ材は、第2の絶縁部材23の上面に設けられた第2のメタライズ層33にも濡れ広がり、余剰なロウ材を第2のメタライズ層33で溜めることができるとともに、第2の絶縁部材23の上面と枠体5の内周面との間で形成される角部にロウ材によるメニスカスを形成することができる。
【0053】
本実施形態のパッケージ1を用いた電子装置101においては、後述の通り、枠体5と蓋体103とが、例えば、金−錫ロウを用いて接合される。そのため、ロウ材が枠体5の上端に向かって濡れ広がったとしても、枠体5および蓋体103の耐久性に対して影響を与える可能性が低く、さらには第2の絶縁部材23の上面に余剰なロウ材を溜めつつ入出力部材7と枠体5との接合強度を高めることができる。
【0054】
従って、第1の絶縁部材21の下面全体および第2の絶縁部材23の上面全体に第2のメタライズ層33が設けられている場合には、パッケージ1の耐久性を低下させる可能性が小さい一方で、入出力部材7を枠体5にさらに強固に接合することができることから好ましい。
【0055】
なお、第2の絶縁部材23の上面や第1の絶縁部材21の下面に設けられた第2のメタライズ層33の表面を伝って枠体5の内周面にロウ材が濡れ広がった場合であって、入出力部材7と枠体5との接合強度を確保しつつ、このロウ材が枠体5の内周面において水平方向に濡れ広がる可能性をより確実に低減することが求められる場合には、例えば、図5に示すように、第2の絶縁部材23の上面に第2のメタライズ層33を設けても良く、または、図5と同様に第1の絶縁部材21の下面に形成された第2のメタライズ層33は、上記側面19aに近接した枠体5の内周面側が切り欠かれた形状に形成されても良い。
【0056】
図5においては、第2の絶縁部材23の上面における、枠体5の内周面や蓋体103が接合されるリング形状である金属部材と上下に重なり合う領域であって絶縁部材19の両側面19aに近接する領域Yを除く部分に第2のメタライズ層33が設けられている。言い換えれば、第2のメタライズ層33が、第2の絶縁部材23の上面における、枠体5の内周面や蓋体103が接合されるリング形状である金属部材と上下に重なり合う領域であって絶縁部材19の両側面19aに近接する部分が切り欠かれた形状で第2の絶縁部材23の上面に設けられている。
【0057】
本実施形態のパッケージ1における枠体5は、上記第1の貫通孔とは別に第2の貫通孔を有していてもよい。第2の貫通孔には、筒状の光ファイバ保持部材35(以下、単に保持部材35という)が取り付けられている。保持部材35は光ファイバを保持して固定するための部材である。保持部材35は、光ファイバを固定して位置決めを図るとともに、筒状であることによって、この筒形状の中空部分で電子部品9と光ファイバとの間での光の伝達を行うことができる。
【0058】
保持部材35としては、少なくとも光ファイバを固定できる程度の強度を有していることが好ましい。具体的には、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルトおよびタングステンのような金属部材、あるいはこれらの金属からなる合金を用いることができる。このような金属部材のインゴットに圧延加工法、打ち抜き加工法のような金属加工法を施すことによって筒状の保持部材35を作製することができる。
【0059】
特に、枠体5と保持部材35とが、同じ金属部材を用いて形成されていることが好ましい。枠体5と保持部材35との熱膨張差を小さくすることができるので、枠体5と保持部材35との間に生じる応力を小さくすることができるからである。
【0060】
本実施形態の電子装置101の使用時においては、保持部材35の他方の端部にフェルール(不図示)が固定される。フェルールは、保持部材35の筒の内部に対して一方の端部が開口する貫通孔を有している。そして、この貫通孔に光ファイバが挿入固定される。このようにフェルールが保持部材35に挿入固定されることによって、光ファイバと電子部品9との光学結合を行うことができる。
【0061】
フェルールとしては、例えば、ジルコニア、アルミナ等のセラミック材料をもちいることができる。また、光ファイバとしては、石英ガラスのような透光性の材料を用いることができる。フェルールは筒状の保持部材35の内周面に接合されても保持部材35の他方の端部の端面に接合されてもどちらでもよい。
【0062】
次に、一実施形態の電子装置101について、図面を用いて詳細に説明する。本実施形態の電子装置101は、上記の実施形態に代表される素子収納用パッケージ1と、素子収納用パッケージ1の載置領域内に載置された電子部品9と、枠体5と接合された、電子部品9を封止する蓋体103とを備えている。
【0063】
図1に示すように、本実施形態の電子装置101においては、基板3の載置領域に電子部品9が載置されている。電子部品9は、ボンディングワイヤ15を介して入出力部材7の配線導体25に電気的に接続される。この電子部品9に配線導体25などを介して外部信号を入出力することによって電子部品9から所望の入出力を得ることができる。
【0064】
蓋体103は、枠体5と接合され、電子部品9を封止するように設けられている。蓋体103は、枠体5の上面に接合されている。そして、基体、枠体5および蓋体103で囲まれた空間において電子部品9を封止している。このように電子部品9を封止することによって、長期間のパッケージ1の使用による電子部品9の劣化を抑制することができる。
【0065】
蓋体103としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルトおよびタングステンのような金属部材、あるいはこれらの金属からなる合金を用いることができる。また、枠体5と蓋体103は、例えば、金−錫ロウを用いて接合してもよい。
【0066】
また、枠体5と蓋体103とは直接に接合されていても良いが、例えば、平面視した場合に枠体5と重なり合うようなリング形状である金属部材、いわゆるシールリングを間に挟んで接合されていても良い。
【0067】
以上、一実施形態の素子収納用パッケージおよびこれを備えた電子装置について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【符号の説明】
【0068】
1・・・電子部品収納用パッケージ(パッケージ)
3・・・基板
5・・・枠体
7・・・入出力部材
9・・・電子部品
11・・・ネジ
13・・・実装基板
15・・・ボンディングワイヤ
17・・・載置基板
19・・・絶縁部材
19a・・・側面
19b・・・上面
19c・・・下面
21・・・第1の絶縁部材
23・・・第2の絶縁部材
25・・・配線導体
27・・・第1のメタライズ層
29・・・第1領域
31・・・第2領域
33・・・第2のメタライズ層
35・・・保持部材
101・・・電子装置
103・・・蓋体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が載置される載置領域を上面に有する基板と、
前記載置領域を囲むように前記基板の上面に設けられた、内周面および外周面に開口する貫通孔を有する枠体と、
絶縁部材、および前記枠体で囲まれた領域の内側から外側に引き出された配線導体を具備し、前記貫通孔にロウ材で接合された入出力部材とを備えた電子部品収納用パッケージであって、
前記配線導体が引き出された方向に平行な前記絶縁部材の側面は、前記枠体の内周面と外周面との間から前記枠体の外側にかけて位置する第1領域および前記枠体の内周面と外周面との間から前記枠体の内側にかけて位置する第2領域を有し、
前記第1領域がメタライズ層に覆われていることを特徴とする電子部品収納用パッケージ。
【請求項2】
前記第1領域と前記第2領域との境界が、前記枠体の内周面に対して平行であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項3】
前記メタライズ層を第1のメタライズ層とした場合に、
前記絶縁部材の下面に設けられた第2のメタライズ層をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の電子部品収納用パッケージ。
【請求項4】
請求項1に記載の電子部品収納用パッケージと、
該電子部品収納用パッケージの前記載置領域に載置された電子部品と、
前記枠体の上面に接合された、前記電子部品を封止する蓋体とを備えた電子装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−115169(P2013−115169A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258762(P2011−258762)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)