説明

電子部品実装用接合剤およびこれを用いた電子部品の実装方法

【課題】 所定の必要量に対して過小または過剰に供給されることなく、優れた品質で安定して電子部品を実装できる接合剤を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂前駆体100重量部、潜在性硬化剤2〜20重量部、無機増粘剤1〜30重量部、および導電性粒子10〜150重量部からなる電子部品実装用接合剤であって、導電性粒子の含有量を従来の半分以下にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子部品を回路基板に装着するための電子部品実装用接合剤、および同接合剤を用いた電子部品の実装方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子部品実装用接合剤として、銀、パラジウム等の金属粉を樹脂に充填した接着剤や、クリーム半田等が知られている。接着剤は、その電気的接合性を向上させるため、粒径約1〜50μmの金属粉を樹脂に対して、重量比で3倍以上含有させるのが一般的である。
【0003】クリーム半田は、その融点が200℃前後と高いため、耐熱温度の低い電子部品や基板には使用できないという問題があった。また、クリーム半田の成分中には鉛が含まれるため、安全衛生および地球環境保護の点でも問題があった。また、前記のような従来の接着剤は、樹脂中に充填される金属粉の量が多いため、非常に粘度が高かった。そのため、印刷、塗布または転写方式にこの接着剤を使用すると、接着剤が所定の必要量に対して過小または過剰に供給され、その結果、電子部品と基板との電気的接合が不可能となったり、隣接する電極間が電気的に短絡したりするという問題が生じていた。
【0004】また、従来の接着剤は、硬化物の樹脂架橋密度が低いため、接着強度が劣っており、硬化後に部品が基板から欠落するという問題があった。基板から部品が欠落するの防止するため、別途、封止剤を用いて、基板上に部品を封止して接着強度を補う方法があるが、実装工程が繁雑になるという新たな問題が生じた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題に鑑み、耐熱温度の低い電子部品や基板を接合することができ、かつ優れた品質の電子回路基板を製造できる電子部品実装用接合剤を提供することを目的とする。また、上記の接合剤を用いて、電子部品を基板上に実装する方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の電子部品実装用接合剤は、エポキシ樹脂前駆体100重量部、潜在性硬化剤2〜20重量部、無機増粘剤1〜30重量部、および導電性粒子10〜150重量部からなることを特徴とする。また、本発明による電子部品の実装方法は、上記電子部品実装用接合剤を装着しようとする電子部品の電極または回路基板の電極に塗布する工程、前記両者を相互に機械的に加圧して接近させる工程、加熱して前記エポキシ樹脂前駆体を硬化させ前記部品を基板上に固定する工程を含むことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】上記のように、本発明の電子部品実装用接合剤は、エポキシ樹脂前駆体、潜在性硬化剤、無機増粘剤および導電性粒子を含み、エポキシ樹脂に対する導電性粒子の含有量を従来の半分以下にしたことを特徴とする。従来、1〜50μm程度の粒径を有する金属粉をエポキシ樹脂に対して、重量比で3倍含ませると、粘度は、350Pa・S程度となり、非常に粘性が高い。ところが、金属粉の含有量をエポキシ樹脂に対して、重量比で1.5倍程度に減らすと、得られる接合剤の粘度は、30〜100Pa・Sに低下する。そのため、導電性粒子が接合剤中で沈降しやすくなり、例えば、回路基板上に接合剤を塗布すると、基板側に導電性粒子の密度の高い層が形成され、その上層に導電性粒子の密度が低い層が形成される。導電性粒子の密度が高い層での導電性粒子の量は、従来と同程度かそれ以上であるため、電子部品を回路基板の電極上に配置し、両者を相互に機械的に加圧して、電子部品の電極が導電性粒子の密度が低い層を押しのけるように回路基板の電極に接近させ、両者を導電性粒子の密度が高い層で両者を接合すると、両者を電気的に良好に接続することができる。
【0008】エポキシ樹脂前駆体100重量部に対して、導電性粒子が10重量部より少ないと電気的接合が阻害されて不都合である。150重量部より多いと接合剤の粘度が高くなり、接合剤の供給量が不安定となる。エポキシ樹脂前駆体100重量部に対して、導電性粒子が10〜150重量部であると、接合剤を安定して供給することができ、かつ基板と部品との電気的な接合も良好である。また、導電性粒子の比重が、エポキシ樹脂前駆体の比重の3倍以上であると、電気的な接続を安定しておこなうことができる。導電性粒子の形状を非球形にすると、さらに電気的接合性が向上して都合がよい。
【0009】接合剤に含まれる潜在性硬化剤は、エポキシ樹脂前駆体の100重量部に対して、2重量部より少ないと、十分に硬化せず、20重量部より多いと、保存性が悪くなる。エポキシ樹脂前駆体100重量部に対して、接合剤に含まれる潜在性硬化剤を2〜20重量部とすると、確実に硬化できるとともに保存性も良い。また、エポキシ樹脂前駆体が、少なくとも1種の多官能型エポキシ樹脂前駆体を含むと、得られる接合剤の接着強度をさらに向上させることができる。
【0010】
【実施例】以下に、具体的な実施例を挙げて、本発明の電子部品実装用接合剤をより詳細に説明する。
《実施例1〜4》エポキシ樹脂として、表1に示す樹脂を用いた。
【0011】
【表1】


【0012】また、硬化剤として、2−メチルイミダゾールアジン(油化シェルエポキシ(株)社製;商品名:エピキュアM12AZ)、無機増粘剤として、アエロジル(日本アエロジル(株)社製;商品名:アエロジル200)を用いた。導電性粒子Aには、粒径3.3μm、比重5.3の銀粉末、導電性粒子Bには、粒径5.1μm、比重2.3のニッケル−金でコートされたポリスチレン粒子を用いた。そして、上記各配合成分を表2に示す重量比で混合し、電子部品実装用接合剤(実施例1〜4)を作製した。
【0013】
【表2】


【0014】《比較例1〜6》実施例と同様の配合成分を表3に示す重量比で混合して、電子部品実装用接合剤(比較例1〜6)を作製した。
【0015】
【表3】


【0016】上記のようにして得られた接合剤について、各種特性を測定した。その測定方法は以下の通りである。
1)接続抵抗値:JISII型くし型電極基板の全面に接合剤を塗布し、しばらくの間水平に放置した。そして、基板を加熱して接合剤を硬化させた後、電極間の抵抗値を抵抗率計にて測定した。
2)接着強度:JIS−k−6850に準じて測定した。
3)粘度:E型粘度計(3゜コーン、0.5rpm、25℃)での2回転目の数値を読み取った。
4)硬化時間:基板上に接合剤を塗布し、リフロー炉にて、温度150℃で40秒、50秒、60秒、70秒、および80秒の各時間加熱した後、触針法で硬化を確認した。最も短い時間で硬化を確認できた時間を硬化時間とした。
5)保存安定日数:接合剤の製造直後の粘度(η0)をE型粘度計で測定した後、この接合剤を25±1℃で放置した。そして、定期的に、E型粘度計で粘度(η1)を測定した。η1≧2×η0となるまでに要した日数を保存安定日数とした。各接合剤の特性測定の結果を表4に示す。
【0017】
【表4】


【0018】表4より、本発明による電子部品実装用接合剤は、適度な粘度を有し、接続抵抗値が小さく、接着強度に優れていた。また、硬化時間および保存安定日数も実用に適した範囲内であった。
【0019】また、実施例1で作製した接合剤と、比較例7として用意した錫および鉛を含む融点183℃以上のペースト状のリフロー用半田とを用いて、以下のようにして、耐熱温度の低い電子部品の実装の可・不可を評価した。まず、実施例1の接合剤を用いて電子部品を実装できる温度および時間の条件に設定された実工程用リフロー炉内を通過する基板および部品にかかる温度を測定した。このとき得られる温度プロファイルにおける最高温度をリフローピーク温度とした。次に、接合剤を回路基板に印刷した後、耐熱温度180℃の水晶発振子を装着し、上記の実工程用リフロー炉内を通過させた後、部品破壊の有無を確認した。その結果を表5に示す。
【0020】また、比較例7として用意した半田を用いて電子部品を実装できる条件に設定された実工程用リフロー炉を用い、上記と同様にして、温度プロファイルおよびリフローピーク温度を求めた。そして、この半田を回路基板に印刷した後、上記と同様にして、部品破壊の有無を確認した。その結果を表5に示す。
【0021】
【表5】


【0022】表5より、実施例1で作製した接合剤が硬化し得るリフローピーク温度は、半田のリフローピーク温度よりも低いため、耐熱温度の低い電子部品を熱破壊することなく基板上に実装することができた。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、耐熱温度の低い電子部品を高精度で基板上に実装することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エポキシ樹脂前駆体100重量部、潜在性硬化剤2〜20重量部、無機増粘剤1〜30重量部、および導電性粒子10〜150重量部からなることを特徴とする電子部品実装用接合剤。
【請求項2】 前記エポキシ樹脂前駆体が、少なくとも1種類の多官能型エポキシ樹脂前駆体を含む請求項1記載の電子部品実装用接合剤。
【請求項3】 前記導電性粒子の比重が、前記エポキシ樹脂前駆体の比重の3倍以上であり、かつ導電性粒子の形状が非球形である請求項1記載の電子部品実装用接合剤。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の電子部品実装用接合剤を装着しようとする電子部品の電極または回路基板の電極に塗布する工程、前記両者を相互に機械的に加圧して接近させる工程、加熱して前記エポキシ樹脂前駆体を硬化させ前記部品を基板上に固定する工程を含むことを特徴とする電子部品の実装方法。