説明

電子部品搭載用基板及びその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,電子部品搭載用基板及びその製造方法に関し,特に電子部品搭載用凹部とビアホールとを覆うように,絶縁基材に放熱板を接着したものに関する。
【0002】
【従来技術】
従来,電子部品搭載用基板としては,例えば,図に示すごとく,絶縁基材95に設けた電子部品搭載用凹部形成用の開口部950と,その周辺に設けた複数のビアホール96と,絶縁基材95の下側において開口部950およびビアホール96を被覆するよう設けた放熱板91とを有するものがある。
放熱板91は,接着シート92及び半田93により,絶縁基材95に接着されている。
上記電子部品搭載用凹部97には,電子部品971が搭載され,導体回路94とボンディングワイヤー972により電気的に接続した後,樹脂封止される。
【0003】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来の電子部品搭載用基板においては,図に示すごとく,電子部品搭載用凹部及びその周辺を樹脂封止する際に,空気99が,ビアホール96の中に封じ込められる場合がある。この空気は,電子部品搭載用基板に熱衝撃を与えたとき膨張し,封止用樹脂973や接着シート92に,クラックの発生をもたらす。
【0004】
また,このクラックから電子部品搭載用凹部97の中に湿気が浸入するおそれがある。この湿気は,電子部品971に損傷を与えるおそれがある。また,この空気が移動し,ボンディングワイヤー972に達すると,ボンディングワイヤー972が断線したり腐食したりするおそれがある。
【0005】
本発明はかかる従来の問題点に鑑み,樹脂封止により電子部品搭載用凹部及びその周辺を完全に密封することができる,電子部品搭載用基板及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0006】
【課題の解決手段】
本発明は,絶縁基材に設けた開口部,及び該開口部の下側を被覆し電子部品が直接載置される放熱板により構成された電子部品搭載用凹部と,該電子部品搭載用凹部の周辺において上記絶縁基材を貫通して設けられたビアホールとを有してなる電子部品搭載用基板において,
上記ビアホールを被覆するように上記放熱板を配置し,上記絶縁基材と放熱板との間はにより接着され,かつ該樹脂は上記ビアホール内に連続して充填されていることを特徴とする電子部品搭載用基板にある。
【0007】
本発明において最も注目すべきことは,上記ビアホール内には,絶縁基材と放熱板とを接着する樹脂が連続して充填されていることである。
記樹脂としては,例えば,エポキシ系樹脂,シリコン系又はアクリル基含有のエポキシ系等の接着剤等を用いることが出来る。
上記放熱板は,上記絶縁基材との対向面に,放熱板と絶縁基材との間の樹脂厚みを調整するための突出片を有していることが好ましい。これにより,放熱板と絶縁基材との間のを,両者を接着可能な厚みとすることができ,十分な接着強度を確保することができる。
【0008】
突出片の高さは,20〜80μmであることが好ましい。これにより,絶縁基材と放熱板との間に,接着強度確保に必要な樹脂を保持することができる。また,樹脂がビアホール内に浸入しすぎてビアホールの上方へ大量に溢流してしまうことを防止できる。
上記ビアホールは,例えば,その内壁に導電めっき膜を形成することができる。この導電めっき膜により,絶縁基材の表側面及び裏側面にそれぞれ形成した導体回路の間の電気的接続及び熱伝導を図ることができる。
【0009】
次に,本発明の電子部品搭載用基板の製造方法としては,例えば,絶縁基材に設けた開口部,及び該開口部の下側を被覆し電子部品が直接載置される放熱板により構成された電子部品搭載用凹部と,該電子部品搭載用凹部の周辺において上記絶縁基材を貫通して設けられたビアホールとを有してなる電子部品搭載用基板を製造する方法において,
まず,絶縁基材に開口部を形成すると共に該開口部の周辺において絶縁基材を貫通するビアホールを形成し,
次に,上記絶縁基材の開口部の周辺に,樹脂を配置し,
次に,上記絶縁基材上に,上記開口部及びビアホールを被覆するように放熱板を配置すると共に,上記樹脂をビアホール内に浸入させ,
その後,上記樹脂を固化し,上記放熱板を絶縁基材に接着することを特徴とする電子部品搭載用基板の製造方法がある。
【0010】
記樹脂は,例えば,接着時において,シート状又はペースト状等の樹脂を用いることができる。接着材(上記樹脂を意味する。以下同様)がシート状の場合には,接着材を施す部分に予め成形又は切断し,これを絶縁基材又は放熱板に貼着する。また,ペースト状の場合には,ディスペンサー等により絶縁基材又は放熱板に塗布する。
上記接着材をビアホール内に浸入させる際には,放熱板を絶縁基材に押圧するか,又は毛管現象を利用する。
【0011】
上記の浸入させる際の押圧力は,接着材として樹脂を用いた場合には,0.5〜1.0kgf/cmであることが好ましい。また,上記接着材は,接着時において,20,000〜80,000cpsの粘度を有する樹脂であることが好ましい。
押圧力が1.0kgf/cmを越える場合,又は接着材の粘度が20,000cps未満に場合には,絶縁基材と放熱板との間の接着材を,接着に必要な十分な厚みとすることが困難となるおそれがある。一方,押圧力が0.5kgf/cm未満の場合,又は接着材の粘度が80,000cpsを越える場合には,ビアホール内に接着材を充填させることが困難な場合がある。
【0013】
【作用及び効果】
本発明の電子部品搭載用基板においては,ビアホール内に,絶縁基材と放熱板とを接着する樹脂が連続して充填されている。そのため,ビアホールの上部及び下部には,凹凸部分がない。それ故,電子部品搭載用凹部及びその周辺を樹脂封止する際に,ビアホール内に空気が封じ込められることがない。このため,電子部品搭載用基板が熱衝撃を受けた場合にも,封止用樹脂及び樹脂にクラックが発生することがない。従って,電子部品搭載用凹部及びその周辺を完全に密封することができる。
【0014】
また,本発明の電子部品搭載用基板の製造方法においては,ビアホール内に樹脂を浸入させ,ビアホールの内部全体に樹脂を充填している。そのため,ビアホールの上部及び下部には,凹凸部分が形成されない。従って,本発明により製造された電子部品搭載用基板は,上記のごとく,電子部品搭載用凹部及びその周辺を完全に密封することができる。
また,本発明の製造方法によれば,容易に電子部品搭載用基板を製造することができる。
【0015】
本発明によれば,樹脂封止により電子部品搭載用凹部及びその周辺を完全に密封することができる,電子部品搭載用基板及びその製造方法を提供することができる。
【0016】
【実施例】
実施例1
本発明の実施例にかかる電子部品搭載用基板について,図1〜図4を用いて説明する。
本例の電子部品搭載用基板10は,電子部品搭載用凹部75と,電子部品搭載用凹部75の周辺に設けられた複数のビアホール50とを有している。
電子部品搭載用凹部75は,絶縁基材5に設けた開口部55,及び開口部55の下側を被覆する放熱板3により構成されている。ビアホール50は,絶縁基材5を貫通して設けられている。
絶縁基材5と放熱板3との間は,接着材としてのエポキシ系の樹脂接着剤1により接着されている。ビアホール50の中には,樹脂接着剤1が連続して充填されている。
【0017】
ビアホール50は,その内壁が導電めっき膜6により被覆されている。導電めっき膜6は,絶縁基材5の表側面に設けた導体回路61と,絶縁基材5の裏側面に設けた導体回路62との間を接続している。表側面に設けた導体回路61は,図2に示すごとく,電子部品搭載用凹部75の周囲全体を枠状に囲んでいる。この枠状の導体回路61の任意な位置には,複数のビアホール50が形成されている。
【0018】
また,絶縁基材5と放熱板3との間における樹脂接着剤1と隣接する部分は,半田2により接着されている。
電子部品搭載用凹部75の中には,電子部品7が搭載される。電子部品7は,ボンディングワイヤー70により,絶縁基材5の表側面に設けた導体回路61と接続している。電子部品搭載用凹部75及びその周辺は,封止用樹脂79により樹脂封止される。
【0019】
次に,上記電子部品搭載用基板10の製造方法について,図3,図4を用いて説明する。
まず,図3に示すごとく,絶縁基材5に,電子部品搭載用凹部形成用の開口部55を形成する。開口部55の周辺に,絶縁基材5を貫通する複数のビアホール50を形成する。絶縁基材5の表側面及び裏側面に,導体回路61,62を形成する。また,ビアホール50の内壁を導電めっき膜6により被覆する。
次に,絶縁基材5の開口部55の周辺に沿って,シート状の樹脂接着剤1を配置する。また,樹脂接着剤1と隣接する部分に,ペースト状の半田2をディスペンサーにより塗布する。
【0020】
次に,絶縁基材5の裏側面に,開口部55及びビアホール50を被覆するよう放熱板3を配置し,積層する。絶縁基材5に対して放熱板3を押圧し,これらをリフロー炉に入れて,樹脂接着剤1及び半田2を溶融する。このときの放熱板を押圧する圧力は,0.5kgf/cmである。樹脂接着剤1の粘度は,65,000cpsである。そして,図4に示すごとく,樹脂接着剤1をビアホール50の中に浸入させる。
その後,絶縁基材5と放熱板3との一体品を冷却して,樹脂接着剤1及半田2を固化する。これにより,絶縁基材5と放熱板3とが接着され,図1に示す上記電子部品搭載用基板10が得られる。
【0021】
次に,本例の作用効果について説明する。
本例の電子部品搭載用基板10においては,図1に示すごとく,ビアホール50の中には,絶縁基材5と放熱板3とを接着する樹脂接着剤1が連続して充填されている。そのため,ビアホール50の上部及び下部には,凹凸部分がない。
それ故,電子部品搭載用凹部75及びその周辺を樹脂封止する際に,ビアホール50の中に空気が封じ込められることがない。このため,電子部品搭載用基板10が熱衝撃を受けた場合にも,封止用樹脂79及び樹脂接着剤1にクラックが発生することがない。従って,電子部品搭載用凹部75及びその周辺を完全に密封することができる。
【0022】
また,本例の電子部品搭載用基板の製造方法においては,図4に示すごとく,ビアホール50の中に樹脂接着剤1を浸入させ,ビアホール50の内部全体に充填している。そのため,ビアホール50の上部及び下部には,凹凸部分が形成されない。従って,本例により製造された電子部品搭載用基板10は,上記のごとく,電子部品搭載用凹部内を完全に密封することができる。
また,本例の製造方法によれば,容易に電子部品搭載用基板10を製造することができる。
【0023】
実施例2
本例の電子部品搭載用基板においては,図5に示すごとく,放熱板3が,絶縁基材5との対向面に突出片31を有している。突出片31は,放熱板3と絶縁基材5との間の樹脂接着剤1の厚みを調整するためのものである。突出片31の高さTは,60μmである。突出片31は,図6に示すごとく,電子部品搭載用凹部75の周辺に形成されている。
【0024】
放熱板3を絶縁基材5に接着する際には,まず,放熱板3における,電子部品搭載用凹部75と突出片31との間に,シート状の樹脂接着剤1を配置する。次いで,この放熱板3の上に,絶縁基材5を配置し,押圧しながら両者を接着する。その後,溶融した半田2を,絶縁基材5と放熱板3との間に供給し,固化して,両者を接着する。
その他は,実施例1と同様である。
【0025】
本例においては,放熱板3に,上記の突出片31を設けているため,押圧力を過度に加えたとしても,放熱板3と絶縁基材5との間の樹脂接着剤1の厚みを十分に確保することができる。そのため,十分な接着強度を確保することができる。また,接着材1がビアホール50の中に浸入しすぎてビアホール50の上方へ大量に溢流してしまうことを防止できる。
その他は,実施例1と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の電子部品搭載用基板の要部断面図。
【図2】実施例1の絶縁基材の表側面を示す平面図。
【図3】実施例1の,絶縁基材と放熱板との配置関係を示す説明図。
【図4】実施例1の,接着材のビアホールへの浸入状態を示す説明図。
【図5】実施例2の電子部品搭載用基板の要部断面図。
【図6】実施例2の放熱板の平面図。
【図7】従来例の電子部品搭載用基板の要部断面図。
【図8】従来例の問題点を示す説明図。
【符号の説明】
1...樹脂接着剤,
10...電子部品搭載用基板,
2...半田,
3...放熱板,
31...突出片,
5...絶縁基材,
50...ビアホール,
55...開口部,
61,62...導体回路,
7...電子部品,
70...ボンディングワイヤー,
75...電子部品搭載用凹部,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材に設けた開口部,及び該開口部の下側を被覆し電子部品が直接載置される放熱板により構成された電子部品搭載用凹部と,該電子部品搭載用凹部の周辺において上記絶縁基材を貫通して設けられたビアホールとを有してなる電子部品搭載用基板において,
上記ビアホールを被覆するように上記放熱板を配置し,上記絶縁基材と放熱板との間はにより接着され,かつ該樹脂は上記ビアホール内に連続して充填されていることを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項2】
請求項1において,上記放熱板は,上記絶縁基材との対向面に,放熱板と絶縁基材との間の樹脂厚みを調整するための突出片を有していることを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項3】
絶縁基材に設けた開口部,及び該開口部の下側を被覆し電子部品が直接載置される放熱板により構成された電子部品搭載用凹部と,該電子部品搭載用凹部の周辺において上記絶縁基材を貫通して設けられたビアホールとを有してなる電子部品搭載用基板を製造する方法において,
まず,絶縁基材に開口部を形成すると共に該開口部の周辺において絶縁基材を貫通するビアホールを形成し,
次に,上記絶縁基材の開口部の周辺に,樹脂を配置し,
次に,上記絶縁基材上に,上記開口部及びビアホールを被覆するように放熱板を配置すると共に,上記樹脂をビアホール内に浸入させ,
その後,上記樹脂を固化し,上記放熱板を絶縁基材に接着することを特徴とする電子部品搭載用基板の製造方法。
【請求項4】
請求項において,上記樹脂は,接着時において,20,000〜80,000cpsの粘度を有することを特徴とする電子部品搭載用基板の製造方法。
【請求項5】
請求項3又は4のいずれか一項において,上記放熱板は,該放熱板と絶縁基材との間の厚みを調整するための突出片を有していることを特徴とする電子部品搭載用基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】特許第3552301号(P3552301)
【登録日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【発行日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−240574
【出願日】平成6年9月7日(1994.9.7)
【公開番号】特開平8−78843
【公開日】平成8年3月22日(1996.3.22)
【審査請求日】平成13年7月4日(2001.7.4)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【参考文献】
【文献】特開平5−13963(JP,A)
【文献】特開平4−109690(JP,A)
【文献】特開平6−163737(JP,A)
【文献】特開平4−76980(JP,A)