説明

電子部品用断熱材及びその製造方法

【課題】 溶剤を使用せず、製造工程が少なく、成形加工性に優れ、経済性にも優れる押出成形によって製造できる電子部品用断熱材10の製造方法を提供する。
【解決手段】 背面層、発泡層及び粘着層が順に積層されてなり、25℃における熱伝導率が0.20W/m・K以下であること、また、総厚みが100〜500μm、総厚みの2.0〜40%が粘着層であることを特徴とし、さらに、背面層、発泡層及び粘着層の3層を多層共押出成形法で製膜し、該製膜と同時に前記発泡層の発泡倍率が1.1〜3.0倍となるように発泡させることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用断熱材に関し、さらに詳しくは、電子部品に対する外部からの熱や温度変化の影響を解消し、電子部品の使用温度を適正に保ち、電子部品の表面に密着性のよい電子部品用断熱材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「EVA」は「エチレン−酢酸ビニル共重合体」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「LLDPE」は「直鎖低密度ポリエチレン」、「HDPE」は「高密度ポリエチレン」、及び「MFR」は「メルトフローレート」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、電子部品には使用環境、外気温などに依存してその性能や特性が変化するものが多く存在する。例えば、二次電池などの各種電池やディスプレイデバイスが挙げられる。リチウムイオン電池などの二次電池をはじめとした各種電池はデジタルカメラ、携帯電話、ノートパソコンなどの電子機器に用いられているが、その放電特性や充電特性は放電時または充電時の外気の温度に依存して変化する。そのため、適正な起電力を得ることができる温度条件に制約があり、その温度条件を逸脱すると、実用上十分な起電力を得ることが困難になる場合がある。自然光表示ディスプレイデバイスの表示領域における発光作用に伴って生じる熱、または、非発光ディスプレイデバイスのバックライト等の光源からの熱により、周辺の駆動回路素子の劣化や誤作動が引き起こされることがある。電子部品に対する外部からの熱や温度変化の影響を解消する優れた断熱性を有し、また、発泡体であっても外観がよく、表面の滑り性がよく、使用時の作業性や機械適性も必要である。さらに、電子部品と外装部品や他の隣接する外部との間に設置されるために、弾力性及び伸縮性に富み、折り曲げ自在で軽量であり、電子部品などの表面に密着性がよく、やり直す際には剥離し易い必要もある。しかしながら、製造においては高価になってはならない。
従って、電子部品用断熱材は、発泡体であっても外観がよく、表面の滑り性がよく、使用時の作業性や機械適性に優れ、電子部品と外装部品や他の隣接する外部との間に設置されるために、電子部品などの表面に密着性がよく、弾力性及び伸縮性に富み、折り曲げ自在で軽量であり、かつ、電子部品に対する外部からの熱や温度変化の影響を解消する優れた断熱性が求められ、さらに、溶剤を使用せず、製造工程が少なく、成形加工性に優れ、経済性にも優れる押出成形によって製造できる電子部品用断熱材の製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−179846号公報
【特許文献2】特開2001−313487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術)従来、ゴム20〜90質量%及び樹脂発泡体10〜80質量%からなる配合物よりなる断熱材が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、電子部品の表面との間に気密構造の間隙を形成するような外皮を備え、この間隙を真空ないし低圧の状態に保つ電子部品用断熱部材が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、断熱部の厚さが増すため、電子機器の小型化、高密度実装を実現するのは困難であり、製造工程が多く、煩雑であるためにコストが高いという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、発泡体であっても外観がよく、表面の滑り性がよく、使用時の作業性や機械適性に優れ、電子部品と外装部品や他の隣接する外部との間に設置されるために、電子部品などの表面に密着性がよく、弾力性及び伸縮性に富み、折り曲げ自在で軽量であり、かつ、電子部品に対する外部からの熱や温度変化の影響を解消する優れた断熱性の電子部品用断熱材を提供し、さらに、溶剤を使用せず、製造工程が少なく、成形加工性に優れ、経済性にも優れる押出成形によって製造できる電子部品用断熱材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる電子部品用断熱材は、電子部品と外部との熱伝導制限する電子部品用断熱材であって、背面層、発泡層及び粘着層が順に積層されてなり、25℃における熱伝導率が0.20W/m・K以下であるように、したものである。
請求項2の発明に係わる電子部品用断熱材は、上記電子部品用断熱材の総厚みが200〜500μmであり、総厚みの5.0〜30%が粘着層の厚みであるように、したものである。
請求項3の発明に係わる電子部品用断熱材の製造方法は、請求項1〜2のいずれかに記載の電子部品用断熱材の製造方法であって、少なくとも背面層、発泡層及び粘着層の3層を多層共押出成形法で製膜し、該製膜と同時に前記発泡層の発泡倍率が1.1〜3.0倍となるように発泡させるように、したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の本発明によれば、発泡体であっても外観がよく、表面の滑り性がよく、使用時の作業性や機械適性に優れ、電子部品と外装部品や他の隣接する外部との間に設置されるために、電子部品などの表面に密着性がよく、弾力性及び伸縮性に富み、折り曲げ自在で軽量であり、かつ、電子部品に対する外部からの熱や温度変化の影響を解消する断熱性に優れる効果を奏する。
請求項2の本発明によれば、電子部品などの表面に密着性がよりよく、断熱性に優れる効果を奏する。
請求項3の本発明によれば、公知のインフレーション製膜法で、1工程で少なくとも3層が製膜でき、より低コストで製造できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の1実施例を示す電子部品用断熱材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
(電子部品用断熱材)本願発明の電子部品用断熱材10は、図1に示すように、背面層11、発泡層13及び粘着層19からなり、25℃における熱伝導率が0.20W/m・K以下とすることで、十分な断熱性が得られる。0.20W/m・Kを超えると、十分な断熱性を得られない可能性がある。
【0012】
電子部品用断熱材10は、発泡層13の両側に背面層11と粘着層19を設けているので、断熱性に優れると共に、粘着層19によって電子部品の表面に対する密着性を付与することができる。また、電子部品用断熱材10の総厚みが200〜500μmとし、200μm未満では含有するガス量が少なく発泡感が不足し、500μmを超えると、電子機器の小型化に対応できなくなるため好ましくない。粘着層19の厚みとしては、全体総厚みの5.0〜30%の範囲内が好ましい。粘着層19の厚みが全体厚みの5.0%未満の場合、粘着性が不足し、発泡層13を支えることができなくなる可能性があり、好ましくない。また、全体の30%を越えると、電子部品用断熱材10の剛性が不足するため好ましくない。
【0013】
電子部品用断熱材10は、通常、長尺帯状として巻き取って保管されるので、巻かれて隣接してしまう背面層11と粘着層19とが密着して巻き戻しできなくなるおそれがあるが、本願発明の電子部品用断熱材10では、背面層11と粘着層19との間の接着力(巻き戻し力)が小さく、電子部品用断熱材10が重なった状態であっても、容易に分離することができるので、作業性が高い。
【0014】
(製造方法)本願発明の電子部品用断熱材10の製造方法は、背面層11、発泡層13及び粘着層19の3層を多層共押出成形法で製膜し、該製膜と同時に前記発泡層の発泡倍率が1.1〜3.0倍となるように発泡させることで、1工程で少なくとも3層が製膜でき、製造工程を少なく、低コストで経済性にも優れる。また、多層共押出成形法で製膜することで、発泡体であっても外観がよく、表面の滑り性がよく、使用時の作業性や機械適性に優れ、かつ、再使用する際にも、剥離し易い。さらに、共押出成形法では溶剤を使用しないので、火災の危険や環境への負担が少ない。
【0015】
(背面層)背面層11としては、熱可塑性樹脂、すなわち、高温によって可逆的に軟化する樹脂であれば如何なるものでも用いることができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル樹脂、塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等のポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスチレン、耐熱ポリスチレン等のスチレン系樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、ポリカーボネートなどがあげられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
背面層11をもうけることで、発泡層13が直接ダイリップに接触しなくでき、製膜加工時に発泡層13から発生するダイリップの樹脂状付着物(メヤニ)の発生を防止することができる。また、これらの熱可塑性樹脂を背面層11として用いた場合には、多層共押出成形法で製膜する際に発泡層13と背面層11(熱可塑性樹脂)との間に酸変性樹脂などの接着性樹脂を用いてもよい。
【0017】
(発泡層)発泡層13は熱可塑性樹脂と発泡剤、好ましくは化学発泡剤とからなる組成物を多層共押出法での製膜と同時に発泡して形成し、かつ、発泡倍率を1.1〜3.0倍とする。
【0018】
(発泡層のMFR)本願発明の積層体における発泡層13は、熱可塑性樹脂からなるベース樹脂に発泡剤を添加することで構成される。ベース樹脂は高溶融強度、溶融弾性を示す低MFRのものが好ましく、MFRが0.5〜2.0g/10分のものが好適である。MFRがこの範囲未満では発泡倍率が得られず、また、この範囲を超えると気泡形状が悪くなる。
【0019】
(発泡剤)化学発泡剤としては、無機系発泡剤が好ましい。有機系発泡剤はアンモニアガス、窒素ガス、一酸化炭素ガス等の分解ガスを発生すること、また、分解残渣や昇華性物質が、加工機、金属製品等の汚染、腐食を引き起こすことから好ましくない。本発明に用いる無機系発泡剤としては、発生ガスが炭酸ガス及び水蒸気である炭酸水素ナトリウムからなる発泡剤が好適である。
【0020】
(添加量)本願発明においては、上記のような発泡剤を0.1〜2.0質量%の範囲の添加である。ベース樹脂に0.1〜2.0質量%の発泡剤を添加することで、発泡倍率が1.1〜3.0倍である発泡層を得ることができる。発泡倍率がこの範囲未満では緩衝性が不十分であり、また、この範囲を超えると独立気泡が得にくく、表面状態が悪くなる。発泡倍率を1.1〜3.0倍とすることで、緩衝機能と、ハンドリング適性、強度を実現できる。さらに好ましい発泡剤の添加は0.2〜1.0質量%の添加である。0.1質量%以下では分散が悪く、十分な発泡が得られず、2.0質量%を超えると、微細な発泡が実現できず、製造時にメヤニが発生しやすいため好ましくない。
【0021】
(メヤニ)押出成形法では、ダイスから押出される際に、ダイスの出口(ダイリップ)に押出樹脂組成物やその酸化物などの樹脂状付着物(メヤニ)が発生する欠点があり、その都度清掃しなければならない。表面層11を設けることで、成型加工時のダイリップの樹脂状付着物(メヤニ)発生を防止することができ、生産性を向上できる。
【0022】
発泡剤の添加は一般的に高濃度のマスターバッチを用いて、ベース樹脂と混合させて所望の添加濃度とする。マスターバッチの濃度は、発泡層13中の発泡剤濃度が0.1〜2.0質量%の範囲となるように、適宜定めればよい。また、背面層11、発泡層13及び粘着層19のいずれにも、機能に影響のない範囲で、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料等の着色剤、その他などの添加剤を加えてもよい。
【0023】
(粘着層)粘着層19に用いられる樹脂は、スチレン系熱可塑性エラストマー、軟質プロピレン重合体、メタロセン触媒下で製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体が好適に利用できる。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、水添ジエン系共重合体やスチレン−イソブチレン系ブロック共重合体があげられる。水添ジエン系共重合体に用いられるビニル芳香族化合物は、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。共役ジエンは、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられるが、物性面で優れた水添ジエン系共重合体を得るためには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましい。
【0025】
水添ジエン系共重合体は、上記ビニル芳香族化合物重合体ブロック(A)、共役ジエン重合体、又はビニル芳香族化合物と共役ジエンとのランダム共重合体ブロック(B)、ビニル芳香族化合物と共役ジエンのうちビニル芳香族化合物が漸増するテーパーブロック(C)の少なくとも(A)と(B)とを含むジエン系ブロック共重合体に水素添加をして得られるものである。ここで、ジエン系ブロック共重合体は、(A)−(B)、(A)−(B)−(A)、あるいは、(A)−(B)−(C)の構成が好ましい。また、ブロック(A)とブロック(B)とは、必ずしも明確に区別される必要はなく、ブロック(A)からブロック(B)に移行するにしたがい、ビニル芳香族化合物が漸減するようなテーパー部分をもつ構成でもよい。更に、本発明の水添ジエン系共重合体は、ブロック(B)の共役ジエン部分の80%以上、好ましくは90%以上が水添されて飽和されていることが必要である。ここで、80%以下の水添率では耐熱性、耐候性に劣るものとなる。
【0026】
スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体は、ハードセグメントがポリスチレン系化合物(A)、ソフトセグメントがポリイソブチレン(B)で構成された、(A)−(B)−(A)トリブロック共重合体である。ソフトセグメントをポリイソブチレンとすることで二重結合を一切含まない。スチレン−イソブチレン系ブロック共重合体のポリスチレン系化合物としては、スチレン、o−、m−、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0027】
軟質プロピレン重合体は、示差走査熱量分析で測定される融点が120℃未満または融点が観測されないものである。ここで融点が観測されないとは、−40℃〜200℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。
また軟質プロピレン重合体は、プロピレン由来の構成単位を40〜100モル%、エチレン由来の構成単位を0〜30モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位を0〜30モル%の量で含むことができる(ここでプロピレンとエチレンと炭素数4〜20のαオレフィンの合計を100モル%とする)。より好ましくは、プロピレン由来の構成単位が60〜80モル%、エチレン由来の構成単位が12〜23モル%、炭素数4〜20のα−オレフィン由来の構成単位が0〜20モル%の範囲である。なお、本発明の軟質プロピレン重合体は、アイソタクティックポリプロピレン製造用のメタロセン触媒を用いて製造することができ、例として三井化学社のノティオが上梓されており、グレードを適宜選択して1種又はブレンドして用いることができる。
【0028】
本発明に用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、メタロセン触媒の存在下で製造されたエチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体で、密度が0.91以下のものを好適に利用できる。密度が0.91を超えると粘着力が不足するので好ましくない。
【0029】
粘着層19には、本発明の特性を阻害しない範囲で、ロジン及びロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、ポリエチレンワックス等の公知の粘着付与剤を添加してもよい。
【0030】
(製造法)電子部品用断熱材10の製造方法としては、インフレーション製膜法、Tダイ製膜法等があり、好ましくはインフレーション製膜法である。Tダイ製膜法では、溶融樹脂がTダイスから吐出直後に急冷されるため、透明度が高くなり、マットな質感が得られにくい。インフレーション製膜法を用いることで、徐々に冷却がなされ、光沢度の低いマットな表面を得ることができるため、好ましい。
【0031】
(厚さ)電子部品用断熱材10は背面層11/発泡層13/粘着層19の3層構成からなる積層体で、総厚みは200μm〜500μmが好適である。200μm未満では含有するガス量が少なく発泡感が不足し、500μmを超えると、オーバースペックとなるため好ましくない。粘着層19の厚さとしては、粘着積層体10の総厚みの2.0〜40%とする。この範囲未満では発泡層13の泡がはじけたり、凹凸状となって外観が悪く、また、この範囲を超えると発泡層13の厚さが相対的に薄くなり、緩衝機能が減少してしまう。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)下記の背面層11、発泡層13、粘着層19の組成物を用いて、インフレーション共押出製膜機を用いて、製膜温度230℃にて、背面層11を30μm、発泡層13を235μm、粘着層19を35μmの3層からなる総厚300μmの実施例1の粘着積層体10を得た。
・<背面層>LDPE(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)
・<発泡層>LDPE(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を97質量部、日東化工(株)製発泡剤マスターバッチ、ファインブローS−20N(20%マスターバッチ)を3質量部を調整した。
・<粘着層>クレイトンポリマー製クレイトンMD6649(MFR=15g/10分(190℃))。
上記積層体の(第2層)の発泡倍率は1.8倍であった。各物性を表1に示した。
【0034】
(実施例2)下記の背面層11、発泡層13、粘着層19の組成物を用いて、インフレーション共押出製膜機を用いて、製膜温度230℃にて、背面層11を15μm、発泡層13を270μm、粘着層19を15μmの3層からなる総厚300μmの実施例2の粘着積層体10を得た。
・<背面層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を100質量部調整した。
・<発泡層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を97質量部、日東化工(株)製発泡剤マスターバッチ、ファインブローS−20N(20%マスターバッチ)を3質量部調整した。
・<粘着層>JSR(株)製ダイナロン1320P(スチレン含量=10%、MFR=3.5g/10分(230℃))を100質量部調整した。
上記積層体の(第2層)の発泡倍率は2.0倍であった。各物性を表1に示した。
【0035】
(実施例3)下記の背面層11、発泡層13、粘着層19の組成物を用いて、インフレーション共押出製膜機を用いて、製膜温度230℃にて、背面層11を15μm、発泡層13を230μm、粘着層19を55μmの3層からなる総厚300μmの実施例3の粘着積層体10を得た。
・<背面層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を100質量部調整した。
・<発泡層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を97質量部、日東化工(株)製発泡剤マスターバッチ、ファインブローS−20N(20%マスターバッチ)を3質量部調整した。
・<粘着層>クレイトンポリマー製クレイトンMD6649(MFR=15g/10分(190℃))を20質量部、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、日本ポリエチレン(株)製カーネルKS340T(密度=0.880g/cm3、MFR=3.5g/10分)を80質量部調整した。
上記積層体の(第2層)の発泡倍率は1.8倍であった。各物性を表1に示した。
【0036】
(実施例4)下記の背面層11、発泡層13、粘着層19の組成物を用いて、インフレーション共押出製膜機を用いて、製膜温度230℃にて、背面層11を20μm、発泡層13を230μm、粘着層19を50μmの3層からなる総厚300μmの実施例4の粘着積層体10を得た。
・<背面層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を100質量部調整した。
・<発泡層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を97質量部、日東化工(株)製発泡剤マスターバッチ、ファインブローS−20N(20%マスターバッチ)を3質量部調整した。
・<粘着層>三井化学(株)製ノティオPN−2060(MFR=6g/10分(230℃))を100質量部調整した。
上記積層体の(第2層)の発泡倍率は1.8倍であった。各物性を表1に示した。
【0037】
(比較例1)下記の背面層11、発泡層13、粘着層19の組成物を用いて、インフレーション共押出製膜機を用いて、製膜温度160℃にて、背面層11を10μm、発泡層13を30μm、粘着層19を10μmの3層からなる総厚50μmの比較例1の粘着積層体10を得た。
・<背面層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を100質量部調整した。
・<発泡層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を100質量部調整した。
・<粘着層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.919g/cm3、MFR=2.0g/10分、引張弾性率=115MPa)を100質量部調整した。
上記積層体の各物性を表1に示した。
【0038】
(比較例2)下記の背面層11、発泡層13、粘着層19の組成物を用いて、インフレーション共押出製膜機を用いて、製膜温度160℃にて、背面層11を10μm、発泡層13を30μm、粘着層19を10μmの3層からなる総厚50μmの比較例2の粘着積層体10を得た。
・<背面層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.923g/cm3、MFR=4.0g/10分)を100質量部調整した。
・<発泡層>低密度ポリエチレン樹脂(密度=0.923g/cm3、MFR=4.0g/10分)を100質量部調整した。
・<粘着層>エチレン−メタアクリル酸メチル共重合樹脂、住友化学(株)製アクリフトXM790(メタアクリル酸メチル含有量=16%、密度=0.930g/cm3、MFR=7.0g/10分)を100質量部調整した。
上記積層体の各物性を表1に示した。
【0039】
(測定方法)発泡倍率は、実施例及び比較例の粘着積層体10を製膜し23℃に1日間静置した後に、厚さ方向に切断し、該切断面を光学顕微鏡で撮影し、発泡層13の発泡部と未発泡部の面積比から発泡倍率を算出した。
初期粘着力は、厚み3mmのメタクリル板に積層体をJIS Z0237に規定されたゴムロール(重さ2kg、幅45mm、ロール径95mm、ゴム硬度80±5Hs)を用い、1往復圧着し、1時間後の剥離強度を300mm/分の引張り速度で測定した。
巻き戻し力は、積層体が10枚以上重なった状態で切り出し、25mm幅の短冊状にカットして、表裏面の剥離強度を300mm/分の引張り速度で測定した。
熱伝導率は、熱伝導率(λ)は、積層体の密度(ρ)、熱拡散率(α)、比熱容量(C)を用いてλ=αρCの式より算出した。比重、熱拡散率、比熱容量は以下に記す方法により求めた。比重は、電子比重計MD−300S(アルファーミラージュ株式会社製)を用いて、積層体の密度を測定した。熱拡散率は、熱拡散率測定装置LFA447Nanoflash(NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱拡散率を測定した。測定方向は積層体面に対して垂直方向とした。比熱容量は、JIS K 7123に準拠し、示差走査熱量計EXSTAR6000(セイコーインスツルメンツ株式会社製)により25℃における比熱容量を算出した。
【0040】
【表1】

【0041】
(評価結果)実施例1〜4の電子部品用断熱材10はいずれも、1回の短い工程で低コストで製造でき、25℃における熱伝導率がいずれも0.20W/m・K以下と、良好な断熱性を示した。ステンレス曲面へ貼着したところ、伸縮性があるので、強固に密着し貼着でき、シワ、浮きなどの発生になく、また、使用時までは汚染から保護されているので、埃やゴミの混入もなく、綺麗に貼り合せられていた。
比較例1〜2の電子部品用断熱材10はいずれも、短い工程で低コストで製造できたが、25℃における熱伝導率がいずれも0.20W/m・K以上と、断熱性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
(産業上の利用可能性)本発明は、リチウムイオン電池などの二次電池などの各種電池や、プラズマディスプレイなどのディスプレイデバイスが挙げられ、電池やデバイスはデジタルカメラ、携帯電話、ノートパソコンなどの電子機器に用いることができる。しかしながら、断熱性に優れ、物品表面に良好に密着し、剥離もできる用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
10:粘着積層体
11:背面層
13:発泡層
19:粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と外部との熱伝導制限する電子部品用断熱材であって、背面層、発泡層及び粘着層が順に積層されてなり、25℃における熱伝導率が0.20W/m・K以下であることを特徴とする電子部品用断熱材。
【請求項2】
上記電子部品用断熱材の総厚みが200〜500μmであり、総厚みの5.0〜30%が粘着層の厚みであることを特徴とする請求項1に記載の電子部品用断熱材。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の電子部品用断熱材の製造方法であって、少なくとも背面層、発泡層及び粘着層の3層を多層共押出成形法で製膜し、該製膜と同時に前記発泡層の発泡倍率が1.1〜3.0倍となるように発泡させることを特徴とする電子部品用断熱材の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−5797(P2011−5797A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153229(P2009−153229)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】