説明

電子部品用熱可塑性ウレタン樹脂組成物の製造方法及びその製造方法によって得られたハードディスク装置用電子部品

【課題】 電子部品のアウトガス発生問題のない電子部品用ウレタン樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 ラクトンポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、鎖伸長剤としての低分子量グリコール(C)と、を反応させて得られる電子部品用ウレタン樹脂組成物の製造方法であって、前記ラクトンポリオール(A)が、低分子量グリコール開始剤(A−1)に対し、オクチル酸第一スズ及び/又はジブチルスズジラウレート(A−3)を原料に対して0.0001重量%〜0.001重量%の存在下で、ラクトン(A−2)を反応温度150〜180℃で付加重合させ、反応終点到達後、速やかに120℃以下に降温することで得られ、環状ラクトンオリゴマー及びラクトンモノマーの合計量が0.5重量%以下含有するものであることを特徴とする電子部品用ウレタン樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱環境下においてハードディスク装置等の機能障害を引き起こす原因となるアウトガスの発生を低減した電子部品用熱可塑性ウレタン樹脂組成物の製造方法及びその製造方法によって得られたハードディスク装置用電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置は、アルミニウム合金或いはセラミックス等で形成された円盤上に磁性体を固着させたハードディスクと、磁気ヘッドから構成されている。磁気ヘッドは、ハードディスクと約0.1〜0.5μmの隙間を介して取り付けられており、ハードディスクへの情報の記録及びハードディスクから情報の読み出しを行う。従って、ハードディスクの磁性面や磁気ヘッドに塵埃が付着すると機能に障害をきたし、情報の記録や読み出しが不可能になる。
【0003】
ハードディスク及び磁気ヘッドは、カバーと容器本体から形成される密閉容器内に収納されており、カバーと容器本体の隙間にパッキンを配置することで、外部より侵入する塵埃を遮断している。さらに、密閉容器内には高性能フィルターを有する空気清浄機を装着し、内外からの塵埃を捕集して内部の空気を清浄に維持している。しかしながら、近年、アクセスタイムの高速化、ハードディスク装置の小型化、記憶容量の高密度化が進むにつれ、密閉容器内にある電子部品から発生するアウトガスによるごく微量の汚染で、容易にハードディスク装置機能障害が起こるようになってきた。
【0004】
ハードディスク装置内部は、動作中に幾分、熱が発生するため、電子部品は熱環境下に曝されることになる。従って、ハードディスク装置内部に使用される電子部品は、従来耐熱性を優先し、熱環境下で物性低下が少なく、熱劣化しにくいエステル系ポリウレタンが使用されてきている。なかでも、耐加水分解性の良いラクトン系ポリウレタン樹脂が使用されることが多い。しかし、従来の汎用ポリエステルポリオールや汎用ポリラクトンポリオールを使用したウレタン樹脂電子部品は、ハードディスク装置の動作中に熱環境下に曝されることによって、樹脂中に含まれるBHT等の添加剤が揮発または昇華し、多量のアウトガスを発生するため、ハードディスク装置内を汚染し、機能障害を引き起こしていた。
【0005】
このアウトガス対策のため、成形した電子部品の後処理工程として超音波洗浄処理や加熱・真空処理を導入し、アウトガス成分をあらかじめ除去することが、行われている。しかし、ウレタン樹脂中に含まれるBHTなどの添加剤に対しては、除去効果があったものの、抜本的な解決には至っていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、成形部品の超音波洗浄処理、加熱真空処理工程等の必要のない、電子部品のアウトガス発生問題のない電子部品用熱可塑性ウレタン樹脂組成物の製造方法及びその製造方法によって得られたハードディスク用電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ラクトン系ウレタン樹脂のアウトガス問題について鋭意研究した結果、ラクトンポリオール(A)中に含まれるモノマー、オリゴマーにその原因があることを見出し、そうしたモノマー、オリゴマーの少ないウレタン樹脂について開発を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、ラクトンポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、鎖伸長剤としての低分子量グリコール(C)と、を反応させて得られる電子部品用熱可塑性ウレタン樹脂組成物の製造方法であって、前記ラクトンポリオール(A)が、低分子量グリコール開始剤(A−1)に対し、オクチル酸第一スズ及び/又はジブチルスズジラウレート(A−3)を原料に対して0.0001重量%〜0.001重量%の存在下で、ラクトン(A−2)を反応温度150〜180℃で付加重合させ、反応終点到達後、速やかに120℃以下に降温することで得られ、環状ラクトンオリゴマー及びラクトンモノマーの合計量が0.5重量%以下含有するものであることを特徴とする電子部品用熱可塑性ウレタン樹脂組成物の製造方法及びその製造方法によって得られたハードディスク用電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法により得られた電子部品は電子機器特にハードディスク装置等に用いて、使用時に熱環境下に曝されても、装置内部で発生する環状ラクトンオリゴマー、ラクトンモノマー等のアウトガス量が非常に低レベルであるため、ハードディスク装置の機能障害を引き起こす確率が非常に低いものである。このように電子部品からのアウトガス発生量の低減化に対し、本発明は極めて大きな貢献可能な電子部品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の環状ラクトンオリゴマー及び環状ラクトンモノマーの合計量が、0.5重量%以下含有するラクトンポリオール(A)とは、低分子量グリコール開始剤(A−1)に、ラクトン(A−2)を付加重合する際、特定の触媒(A−3)を使用し、特定の製造方法で製造することにより得られるものである。
【0011】
本発明のラクトンポリオール(A)は、環状ラクトンオリゴマー及び環状ラクトンモノマーの合計量が0.5重量%以下含有し、その内訳として好ましくは単量体:0.01〜0.1重量%、2量体:0.02〜0.08重量%、3量体:0.05〜0.12重量%、4量体:0.02〜0.08重量%、5量体:0.02〜0.05重量%である。特定の操作によって得られたラクトンポリオール中の環状ラクトンオリゴマーの合計量は0.5重量%を越えてしまうことはないが、万が一0.5重量%を越えてしまった場合、これらの問題を克服するために環状ラクトンオリゴマーやモマーを減少させるための後処理が必要となり、作業上非常に非効率となってしまう。
【0012】
環状ラクトンオリゴマー、ラクトンモノマーの含有量の測定方法としては、下記の<ガスクロ 条件>
機種 島津 GC−7A
条件 カラム glass :5% SE−30 1.1m
担体 ユニポートHP 80−100メッシュ
カラム温度 : 150℃→320℃
ホールド時間 : 1min
昇温速度 : 15℃/min
注入口温度 : 300℃
キャリーガス :ヘリウム 50ml/min
燃焼ガス :Air 0.5Kg/cm2
H2 0.6Kg/cm2
検出器 : FID
分析方法によりガスクロマトグラフ測定装置で行われる。特に分子量が1000を越えるような比較的分子量が大きい場合には、以下のような前処理をすることが望ましい。ラクトンポリオールを内部標準に含む溶媒に溶解し、それをヘキサンにて抽出、ラクトンポリオールを析出させ、ヘキサン層に環状エステル化合物を抽出させる。これをガスクロマトグラフにより測定し、内部標準からラクトンポリオール中に含まれる環状ラクトンオリゴマー、モノマーの量を算出することができる。本発明の環状ラクトンオリゴマーとは、ラクトンモノマーの2量体、3量体、4量体、5量体等を指称する。
【0013】
低分子量グリコール開始剤(A−1)としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が利用でき、これらの中から単独または併用して利用できる。
【0014】
ラクトン(A−2)とは、ε−カプロラクトンを主に使用するが、これ以外のラクトンを本発明の効果を損なわない範囲で併用することも可能で、その例としては、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、β−メチル−ε−カプロラクトン、γ−メチル−ε−カプロラクトン、β,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトン、エナントラクトン、ドデカノラクトン等の化合物を挙げることができるが、これに限るものではない。
【0015】
特定の触媒(A−3)としては、オクチル酸第一スズ、 ジブチルスズジラウレート が挙げられる。
【0016】
触媒の使用量は、原料に対して0.0001重量%〜0.001重量%の範囲で用いることができる。触媒量が0.0001重量%未満の場合は反応速度が極端に遅く、反応終点に到達しないため、ラクトンポリオール中に多量の環状ラクトンモノマーが残存する。逆に0.001重量%を越える場合はラクトンポリオール重合体やウレタンの耐加水分解性をはじめ、色相、熱安定性が悪化する。
【0017】
反応温度は150℃から180℃の範囲で進行させるが、特に160℃から170℃が好ましい。反応温度が、150℃未満であると反応速度が著しく遅くなり反応終点に到達するのに多大の時間を要する。逆に反応温度が180℃より高い場合は酸化反応による着色の原因になったり、反応が速すぎ環状ラクトンオリゴマーの生成を促進させてしまう。
【0018】
反応時間は使用する触媒の種類、触媒量、反応温度によって反応速度が異なるため、残存モノマー量の追跡により反応終点を見極める。残存モノマー量は0.1重量%以下になると反応を続けてもそれ以上減少せず、ほぼ一定となるため、0.1重量%以下に到達した時点を反応終点と見なす。反応終点到達後は速やかに120℃以下に降温し、反応を終了させなければならない。
【0019】
ラクトンモノマーを付加重合する際に上記以外の触媒、例えば、テトライソプロピルチタネート等のチタン系触媒を使用すると、環状ラクトンオリゴマーの生成速度が速く、生成したラクトンポリオール中には、0.5重量%より多くの環状ラクトンオリゴマー、ラクトンモノマーが存在するため、これをウレタン化し、成形した電子部品は本発明の目的を達成できない。また、スズ系触媒を使用した場合でも、反応終点到達時に反応を終了させず、過剰に加熱を続けると、環状ラクトンオリゴマー量は、増加し、ラクトンポリオール中に0.5重量%より多く存在するようになるため、これをウレタン化し、成形した電子部品は本発明の目的を達成できない。
【0020】
ポリイソシアネート(B)とは、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンー1,5−ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添化トリレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート等の化合物を挙げることができるが、これに限るものではない。
【0021】
鎖伸長剤(C)としては、低分子量グリコールを使用し、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が利用できる。
【0022】
上記成分より構成される電子部品用熱可塑性ウレタン樹脂組成物は、公知の製造方法により熱可塑性ポリウレタン樹脂としてペレット形状で製造され、これを成形機で電子部品を成形できる。熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法は、例えば、環状ラクトンオリゴマー及びラクトンモノマーの合計量が0.5重量%以下含有するラクトンポリオール(A)に、過剰のポリイソシアネート(B)をあらかじめ120℃以下の温度において反応を完結させた末端イソシアネートプレポリマーと、鎖伸長剤(C)との2液をそれぞれ計量して混合攪拌するプレポリマー法、ラクトンポリオール(A)と鎖伸長剤(C)を混合したポリオールコンパウンドと、ポリイソシアネート(B)の2液をそれぞれ計量して混合攪拌するワンショット法、または、上記の原料を定量ポンプで計量し強烈に攪拌した後、バット上に注下して、更に例えば80〜200℃、好ましくは120〜160℃の温度で反応させ、その後粉砕する方法、さらには、80〜250℃、好ましくは120〜250℃に設定された押出機に上記の原料を供給し、該押出機内で原料を混練、搬送しながら重合を行い熱可塑性ポリウレタンをダイから押し出す方法の何れを用いても良い。
【0023】
上記製造において、イソシアネート基と活性水素との反応等量比は特に制限はないが、通常0.95から1.05、好ましくは0.97〜1.03である。尚、上記環状ラクトンオリゴマー及びラクトンモノマーとの合計量を0.5重量%以下とする低分子量グリコールを開始剤とするラクトンポリオール(A)及び鎖伸長剤(C)の活性水素含有化合物が吸湿していると発泡して得られるポリウレタンの強度が低くなるので、その場合は事前に100℃前後の温度で減圧下、脱水脱泡しておくことが好ましい。
【0024】
触媒は使用しなくても良いが、使用した方が良い結果を与える場合が多い。触媒としては、通常用いられているウレタン化触媒が何れも使用できるが、例えば、ビスマス、鉛、スズ、鉄、アンチモン、ウラン、カドミウム、コバルト、トリウム、アルミニウム、水銀、亜鉛、ニッケル、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、マンガン、ジルコニウム、カルシウム等の有機化合物、無機化合物等が挙げられる。好ましい触媒は有機金属化合物、特にジアルキルスズ化合物が好ましい。代表的な有機スズ触媒としては、例えばオクチル酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、オレイン酸第一スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズメルカプトプロピオネート、ジブチルスズドデシルメルカプチド等が挙げられる。使用する触媒の量は他の原
料の性質、反応条件、所望の反応時間などによって決定されるものであるので、特に制限されるものではないが、おおむね、触媒は反応混合物の全重量の0.0001〜約5重量%、好ましくは約0.001〜2重量%の範囲で活性水素含有化合物に混合して使用される。
【0025】
上記製造方法により得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂には、その他、副資材として、酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、充填剤、帯電防止剤、及び着色剤等を本発明の目的に悪影響を及ぼさない範囲で添加することも可能である。
上記製造方法により得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂は、通常用いられる射出成形機、押出成形機等により、容易に電子部品用ウレタン成形物を成形することができる。
【0026】
本発明の電子部品とは、ハードディスク装置用電子部品であり、特に好ましくはストッパーである。本発明は、これ以外の耐熱性を要求される電子部品としても使用可能である。
【実施例】
【0027】
次に、実施例及び比較例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例及び比較例の部は、特記しないかぎり重量部を表す。
【0028】
<ラクトンポリオールの合成>
10L4ッ口フラスコにジエチレングリコール451部とε−カプロラクトン8049部および、触媒0.0425部を仕込み、窒素導入管より窒素ブローしながら170℃まで昇温し、反応を進行させた。反応中、残存ラクトンモノマー量を2時間毎に追跡し、残存ラクトンモノマー量が全仕込量の0.1重量%以下になった時点で速やかに120℃以下に降温し、反応を終了させた。
【0029】
〈環状ラクトンの定量方法〉
溶剤抽出法
合成したラクトンポリオール約1gをテトラハイドロフラン0.5mlに溶解させる。このとき、内部標準物質としてジイソブチルフタレートを10mg加える。この溶液にn−ヘキサンを2.5ml加えてヘキサン層に環状ラクトンオリゴマー及び環状ラクトンモノマーを抽出させる。抽出液2μlをガスクロマトグラフィーに注入し、検出した環状ラクトンオリゴマー量及び環状ラクトンモノマー量を検量線より算出した。
【0030】
<ウレタン樹脂からのアウトガス評価方法>
(熱抽出法)
熱可塑性ウレタン樹脂サンプルを密閉したチャンバー内で熱環境下に曝す。発生したアウトガスを活性炭に吸着させ、さらに別のチャンバー内で活性炭よりアウトガス成分を熱抽出し、グラスウールに濃縮する。濃縮したアウトガス成分をガスクロマトグラフィー/質量分析法で定性及び定量した。
(評価)
○:検出されたモノマー及びオリゴマーの合計量が50ppm以下である。
×:検出されたモノマー及びオリゴマーの合計量が50ppmより多い。
【0031】
〈機械強度の評価〉
射出成形により得られたテストピースを用い、JIS−K−7311に準じて硬度、引張強度、伸度を測定した。
【0032】
(合成例1)
触媒にオクチル酸第一スズを用い、上記重合方法にてラクトン ポリオールを得た。溶剤抽出法により、ラクトンポリオール中の環状ラクトンオリゴマー及び環状ラクトンモノマーを定量した。
【0033】
(合成例2)
触媒にジブチルスズジラウレートを用い、上記重合方法にてラクトンポリオールを得た。溶剤抽出法により、ラクトンポリオール中の環状ラクトンオリゴマー及び環状ラクトンモノマーを定量した。
【0034】
(合成例3)
触媒にテトライソプロピルチタネートを用い、上記重合方法にてラクトンポリオールを得た。溶剤抽出法により、ラクトンポリオール中の環状ラクトンオリゴマー及び環状ラクトンモノマーを定量した。
【0035】
(合成例4)
触媒にオクチル酸第一スズを用い、上記重合方法にてラクトンポリオールを合成し、反応終点終了後も170℃で20時間、過剰に加熱した。溶剤抽出法により、ラクトンポリオール中の環状ラクトンオリゴマー及び環状ラクトンモノマーを定量した。
【0036】
(合成例1〜4)で得たラクトンポリオール中の環状ラクトンオリゴマー及び環状ラクトンモノマーの定量結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
(実施例1)
合成例1で得たラクトンポリオール(水酸基価=56.3)998部にMDI723部を加え、80℃で反応させ、プレポリマー(NCOeq=360.4)を得た。このプレポリマーに1,4−ブタンジオール215部を加え、高速攪拌混合してバットに流延し、180℃で1時間反応させた。この反応物を粉砕した後、押出機によりペレット化し、熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。
【0039】
(実施例2)
合成例1で得たラクトンポリオール(水酸基価=56.3)998部に1,4−ブタンジオール215部を加えて攪拌混合した後、MDIを723部を加え、高速攪拌混合してバットに流延し、実施例1と同様の方法で熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。
【0040】
(実施例3)
合成例1で得たラクトンポリオール(水酸基価=56.3)998部にTODI792部を加え、80℃で反応させ、プレポリマー(NCOeq=360.2)を得た。このプレポリマーに1,4−ブタンジオール223部及びオクチル酸第一スズ0.2部を加え、高速攪拌混合してバットに流延し、実施例1と同様の方法で熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。
【0041】
(実施例4)
合成例2で得たラクトンポリオール(水酸基価=55.9)1003部にMDI727部を加え、80℃で反応させ、プレポリマー(NCOeq=359.6)を得た。このプレポリマーに1,4−ブタンジオール216部及を加え、高速攪拌混合してバットに流延し、実施例1と同様の方法で熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。
【0042】
(比較例1)
合成例3で得たラクトンポリオール(水酸基価=55.4)1006部にMDI726部を加え、80℃で反応させ、プレポリマー(NCOeq=360.3)を得た。このプレポリマーに1,4−ブタンジオール216部及を加え、高速攪拌混合してバットに流延し、実施例1と同様の方法で熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。
【0043】
(比較例2)
合成例4で得たラクトンポリオール(水酸基価=56.3)998部にMDI723部を加え、80℃で反応させ、プレポリマー(NCOeq=360.5)を得た。このプレポリマーに1,4−ブタンジオール215部及を加え、高速攪拌混合してバットに流延し、実施例1と同様の方法で熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た。
【0044】
(実施例1〜4)(比較例1、2)で得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂は、前記した方法で機械強度の評価と、熱抽出法によるアウトガス成分の評価を行った。結果を表2に示した。
【0045】
【表2】

【0046】
用いた化合物は、略号を用いて示していたが略号と化合物の関係は以下の通りである。
[略 号]
MDI :4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
TODI :トリジンジイソシアネート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトンポリオール(A)と、ポリイソシアネート(B)と、鎖伸長剤としての低分子量グリコール(C)と、を反応させて得られる電子部品用熱可塑性ウレタン樹脂組成物の製造方法であって、
前記ラクトンポリオール(A)が、低分子量グリコール開始剤(A−1)に対し、オクチル酸第一スズ及び/又はジブチルスズジラウレート(A−3)を原料に対して0.0001重量%〜0.001重量%の存在下で、ラクトン(A−2)を反応温度150〜180℃で付加重合させ、反応終点到達後、速やかに120℃以下に降温することで得られ、環状ラクトンオリゴマー及びラクトンモノマーの合計量が0.5重量%以下含有するものであることを特徴とする電子部品用ウレタン樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法によって得られたハードディスク装置用電子部品。

【公開番号】特開2011−102406(P2011−102406A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33160(P2011−33160)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2000−106416(P2000−106416)の分割
【原出願日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】