説明

電子部材固定構造

【課題】下地の伸縮による電子部材の歪を抑制し、電子部材の破損を阻止する電子部材固定構造を得る。
【解決手段】電子部材固定構造10は、面方向に伸縮する膜材12と、膜材12の表面に配置されたフレキシブル性を有するシート状の太陽電池モジュール14と、膜材12の表面に固定されると共に太陽電池モジュール14の周縁部を移動可能に支持する枠縁材16と、を備えている。枠縁材16は、左右対称に配置された断面コ字状の部材からなり、太陽電池モジュール14の両側の周縁部が挿入されている。枠縁材16の内部には太陽電池モジュール14の外れを阻止するための粘着剤24が充填されている。膜材12が面方向に伸縮すると、太陽電池モジュール14の周縁部と枠縁材16とが相対的に移動し、太陽電池モジュール14が膜材12の伸縮に追従しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の電子部材を固定する電子部材固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の電子部材の一例として太陽電池モジュールを建物の屋根に固定した構造が知られている。
【0003】
下記特許文献1には、屋根の野地板に固定された断面I字状の固定部材の上面に、フレキシブル性を維持した太陽電池モジュールを搭載し、太陽電池モジュールを上方から押圧固定する断面T字状の押え具を固定部材の上面の溝に嵌合させると共に、押え具と太陽電池モジュールと固定部材にそれぞれ形成された取付け穴に固定具を貫通させて固定する太陽電池モジュールの設置方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−123936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の太陽電池モジュールの設置方法では、押え具と太陽電池モジュールと固定部材にそれぞれ形成された取付け穴に、固定具としての差し込みピンを貫通させることにより、屋根の野地板に押え具と太陽電池モジュールと固定部材とを一体に固定するため、面内及び面外方向に伸縮する下地に太陽電池モジュールを設置する際に上記設置方法を適用することは難しい。すなわち、上記設置方法では下地が伸縮すると、下地の伸縮により発生する力が太陽電池モジュールに作用して太陽電池モジュールが歪む。このため、太陽電池モジュールの破損や発電性能の低下が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、下地の伸縮による電子部材の歪を抑制し、電子部材の破損を阻止する電子部材固定構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明に係る電子部材固定構造は、面方向に伸縮する下地と、前記下地の表面に配置されたシート状の電子部材と、前記下地に取り付けられ、前記電子部材を移動可能に支持すると共に前記電子部材の移動量を制限する制限部材と、を有するものである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、面方向に伸縮する下地の表面に制限部材が設けられており、シート状の電子部材が制限部材により移動可能に支持されると共に電子部材の移動量が制限されている。下地が面方向に伸縮したときに、下地に対して電子部材が相対的に移動することで、電子部材が下地の伸縮に追従しない。このため、電子部材の歪の発生が抑制され、電子部材の破損が阻止される。また、電子部材が制限部材により移動量を制限されるため、下地の表面の所定の位置から離れることがない。
【0009】
請求項2の発明に係る電子部材固定構造は、請求項1に記載の発明において、前記制限部材は、前記下地に固定され、前記電子部材の周縁部を移動可能に支持する枠縁材であるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、下地に固定された枠縁材に電子部材の周縁部が移動可能に支持されており、下地が面方向に伸縮したときに、電子部材の周縁部と枠縁材とが相対的に移動する。このため、電子部材が下地の伸縮に追従せず、電子部材の歪の発生が抑制される。
【0011】
請求項3の発明に係る電子部材固定構造は、請求項1に記載の発明において、前記制限部材は、前記電子部材の周縁部に沿って設けられ、前記下地に固定される支持片と、前記電子部材の周縁部に設けられ、前記支持片に移動可能に支持される枠縁材と、を備えるものである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、下地に固定される支持片が電子部材の周縁部に沿って設けられており、電子部材の周縁部に設けられた枠縁材が支持片に移動可能に支持されている。これにより、下地が面方向に伸縮したときに、電子部材の枠縁材と支持片とが相対的に移動する。このため、電子部材が下地の伸縮に追従せず、電子部材の歪の発生が抑制される。
【0013】
請求項4の発明に係る電子部材固定構造は、請求項1に記載の発明において、前記制限部材は、前記電子部材に複数形成された孔部と、前記下地に固定され、前記孔部に挿通されると共に前記孔部の内径よりも小さい外径の軸部と、前記軸部の頭部に設けられ前記電子部材の抜けを阻止する抜け止め部と、を備えたピンと、を有するものである。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、下地に固定されたピンの軸部が電子部材に複数形成された孔部にそれぞれ挿通されており、軸部の頭部の抜け止め部によって電子部材がピンから外れることが阻止されている。電子部材の孔部の内径よりピンの軸部の外径が小さく形成されており、下地が面方向に伸縮したときに、電子部材の孔部内でピンの軸部が移動する。このため、電子部材が下地の伸縮に追従せず、電子部材の歪の発生が抑制される。
【0015】
請求項5の発明に係る電子部材固定構造は、請求項1に記載の発明において、前記制限部材は、前記下地に固定された第1レールと、前記電子部材に設けられ、前記第1レールと直交する方向に配置された第2レールと、前記第1レールと前記第2レールに跨って設けられ、前記第1レール及び前記第2レールから抜けないように支持されると共に前記第1レール及び前記第2レールを移動する移動部材と、を有するものである。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、下地に第1レールが固定され、電子部材に第1レールと直交する方向に配置された第2レールが設けられており、第1レールと第2レールに跨って移動部材が設けられている。移動部材は第1レール及び第2レールから抜けないように支持されている。下地が面方向に伸縮したときに、第1レール及び第2レールに移動可能に支持された移動部材を介して第1レールと第2レールとが相対的に移動する。このため、電子部材が下地の伸縮に追従せず、電子部材の歪の発生が抑制される。
【0017】
請求項6の発明に係る電子部材固定構造は、請求項1に記載の発明において、前記制限部材は、前記下地に固定された第1板材と、前記電子部材に設けられた第2板材と、前記第1板材に固定され、前記第2板材をスライド可能に保持する保持部材と、を有するものである。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、下地に固定された第1板材に保持部材が固定されており、保持部材が電子部材に設けられた第2板材をスライド可能に保持する。これにより、下地が面方向に伸縮したときに、下地に設けられた保持部材と電子部材に設けられた第2板材とが相対的に移動する。このため、電子部材が下地の伸縮に追従せず、電子部材の歪の発生が抑制される。
【0019】
請求項7の発明に係る電子部材固定構造は、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記枠縁材と前記電子部材の周縁部、又は前記電子部材に設けられた前記枠縁材と前記支持片との間に、前記電子部材の外れを抑制するための粘着剤が充填されているものである。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、枠縁材と電子部材の周縁部、又は電子部材に設けられた枠縁材と支持片との間に粘着剤を充填することで、電子部材の周縁部の枠縁材からの外れ、又は電子部材に設けられた枠縁材の支持片からの外れが抑制される。
【0021】
請求項8の発明に係る電子部材固定構造は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の発明において、前記電子部材がフレキシブル性を備えた太陽電池であるものである。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、電子部材がフレキシブル性を備えた太陽電池であり、下地が面方向に伸縮しても太陽電池の歪の発生が抑制される。
【0023】
請求項9の発明に係る電子部材固定構造は、請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の発明において、前記下地が、建物の屋根に取り付けられる膜材であるものである。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、膜材が、建物の屋根に取り付けられており、電子部材が制限部材により膜材に取り付けられたときに、電子部材が膜材の伸縮に追従せず、電子部材の歪の発生が抑制される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電子部材固定構造によれば、下地の伸縮による電子部材の歪を抑制し、電子部材の破損を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子部材固定構造の全体構成を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る電子部材固定構造の全体構成を示す図であって、(A)は膜材の伸長前の状態を示す断面図、(B)は膜材の伸長後の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電子部材固定構造の全体構成を示す図であって、(A)は膜材の伸長前の状態を示す断面図、(B)は膜材の伸長後の状態を示す断面図である。
【図4】(A)は本発明の第3実施形態に係る電子部材固定構造の全体構成を示す斜視図であり、(B)はこの電子部材固定構造の全体構成を示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る電子部材固定構造の全体構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る電子部材固定構造の全体構成を示す図であって、第2板材の下面部に沿った断面を太陽電池モジュールの下方側から見た断面図である。
【図7】(A)は本発明の第5実施形態に係る電子部材固定構造の全体構成を示す一部を裁断した側面図であり、(B)はこの電子部材固定構造に用いられる第1板材と保持部材と第2板材を示す一部を裁断した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1を用いて、本発明の電子部材固定構造の第1実施形態について説明する。
【0028】
図1には、電子部材固定構造10の全体構成が平面図にて示されている。図2(A)には、電子部材固定構造10の膜材の伸長前の状態が、図2(B)には電子部材固定構造10の膜材の伸長後の状態が断面図にて示されている。これらの図に示されるように、電子部材固定構造10は、面方向に伸縮する下地としての膜材12と、膜材12の表面上に配置されたシート状の電子部材としての太陽電池モジュール14と、膜材12の表面に取り付けられると共に太陽電池モジュール14の周縁部を移動可能に支持する制限部材としての枠縁材16と、を備えている。
【0029】
膜材12は、建物(図示省略)の屋根に取り付けられる屋根材であり、テントやドーム型の屋根材などに使用されている。膜材12は、ガラス繊維、又はポリアミド、ポリエステルなどの合成樹脂製の繊維を編みこんだ基布の表面に、撥油性、撥水性に優れたフッ素樹脂被膜を形成したものである。膜材12の表面に形成されたフッ素樹脂被膜によって膜材12の表面に汚れが付着しにくく、耐久性に優れる。膜材12は、建物の内圧や建物の外部に吹き付ける風などの外力によって、面方向(面内方向と面外方向の両方を含む)に伸縮するものである。すなわち、膜材12は、施工時に初期張力を導入しながら施工される。また、施工後には、風、熱膨張、積雪、溜水などの外力によって張力がかかり、面方向に伸縮する。本実施形態では、膜材12は、例えば最大5%程度伸びる構成とされている。
【0030】
太陽電池モジュール14は、フレキシブル性を備えたシート状部材であり、ポリイミドなどの電気絶縁性を有する樹脂製のフィルム基板上に薄膜の太陽電池セルを配置し、電極と共に太陽電池セルの表面(受光面)を光透過性の保護フィルムで被覆したものである。太陽電池セルとフィルム基材、及び太陽電池セルと保護フィルムとは接着剤で接着されている。太陽電池セルは、例えば、結晶Si、多結晶Si、アモルファスSi、CIGS化合物半導体などの光発電素子で構成されている。太陽電池モジュール14は、任意の曲率で曲げることができるものである。本実施形態では、太陽電池モジュール14は略長方形状に形成されており、例えば、長さが3500〜6000mmで、幅が350〜500mmで、厚さが1〜10mmとされている。なお、太陽電池モジュール14の寸法はこれに限定されるものではない。また、本実施形態では、太陽電池モジュール14の縦方向の引張強度は約1400〜1500N/cm、横方向の引張強度は約1100〜1200N/cmとされている。
【0031】
図1に示されるように、枠縁材16は、太陽電池モジュール14の長手方向の縁部に沿って配置された一対の縦枠材18と、太陽電池モジュール14の幅方向の縁部に沿って配置された一対の横枠材20と、を備えている。平面視にて一対の縦枠材18の両端部と、一対の横枠材20の両端部とを接触するように配置することで、略矩形状の枠縁材16が形成されている。本実施形態では、膜材12が面方向に伸縮するため、一対の縦枠材18の両端部と一対の横枠材20の両端部とは連結されていない。枠縁材16は、例えば、樹脂又はゴムにより形成されている。
【0032】
図2に示されるように、枠縁材16の一対の縦枠材18は、左右対称に配置された略「コ」字状の部材であり、略「コ」字状の部材の開口部が太陽電池モジュール14側を向くように配置されている。一対の縦枠材18は、上壁部18Aと、上壁部18Aの幅方向端部から下方側に屈曲された縦壁部18Bと、縦壁部18Bの下端部から幅方向内側に屈曲された下壁部18Cと、を備えている。
【0033】
縦枠材18の下壁部18Cは、接着剤22により膜材12の表面に接合(接着固定)されている。一対の縦枠材18の内側の端面間の距離は、太陽電池モジュール14の幅よりも短く設定されており、太陽電池モジュール14の幅方向両側の縁部が一対の縦枠材18の内部に挿入されて一対の縦枠材18に挟まれた状態で支持されている。
【0034】
縦枠材18の内部、すなわち、太陽電池モジュール14の幅方向両側の縁部と縦枠材18の内壁面との間には、太陽電池モジュール14の縁部を保持すると共に太陽電池モジュール14の外れを抑制するための粘着剤24が充填されている。粘着剤24としては、例えば、低粘度のシリコーン樹脂、エラストマーなどが用いられている。
【0035】
図示を省略するが、枠縁材16の長手方向両側の一対の横枠材20は、左右対称に配置された略「コ」字状の部材であり、縦枠材18と同様に、上壁部20Aと、上壁部20Aの外側端部から下方側に屈曲された縦壁部と、縦壁部の下端部から幅方向内側に屈曲された下壁部と、を備えている(図2を参照)。
【0036】
横枠材20の下壁部は、接着剤22により膜材12の表面に固定されている。長手方向両側の一対の横枠材20の内側の端面間の距離は、太陽電池モジュール14の長手方向の長さよりも短く設定されており、太陽電池モジュール14の長手方向両側の縁部が一対の横枠材20の内部に挿入されて一対の縦枠材18に挟まれた状態で支持されている。
【0037】
横枠材20の内部、すなわち、太陽電池モジュール14の長手方向両側の縁部と縦枠材18の内壁面との間には、太陽電池モジュール14の縁部を保持すると共に太陽電池モジュール14の外れを抑制するための粘着剤24が充填されている。
【0038】
枠縁材16を構成する縦枠材18及び横枠材20は、太陽電池モジュール14の周縁部を移動可能に支持すると共に、太陽電池モジュール14の移動量を制限する制限部材とされている。
【0039】
なお、膜材12の表面のフッ素樹脂被膜は難接着性を有するため、縦枠材18の下壁部18C及び横枠材20の下壁部を膜材12の表面に接着剤22により接着固定する際は、予め膜材12の被接着部のフッ素樹脂被膜の表面処理を行うことが好ましい。表面処理方法としては、重クロム酸カリウム、金属ナトリウムやナトリウム−ナフタレン錯体を用いた化学的処理方法、コロナ放電、プラズマ放電、スパッタエッチング等の放電処理による方法、フッ化アルゴンエキシマレーザーを照射して処理する方法などが用いられる。また、フッ素樹脂被膜の表面処理方法については、特開2007−330885号公報等に記載されている。
【0040】
接着剤22としては、反応硬化型の接着剤、ホットメルト型接着剤などが用いられる。例えば、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤、臭素系接着剤、アクリル変性シリコーン系接着剤、ブチルゴム系接着剤などが用いられる。なお、接着剤18に代えてゴム系、アクリル樹脂系などの粘着剤を用いてもよい。
【0041】
図1に示されるように、太陽電池モジュール14は、膜材12の表面の横方向及び縦方向に複数並べて配置されており、複数の太陽電池モジュール14はそれぞれ枠縁材16により膜材12の表面に対して移動可能に支持されている。図示を省略するが、太陽電池モジュール14の内部に設けられた電極には配線が接続されており、枠縁材16の内側に配線が引き出されて外部の電源と接続される配線処理が施されている。
【0042】
太陽電池モジュール14を膜材12の表面に取り付ける際には、枠縁材16を構成する縦枠材18及び横枠材20のうちの1辺を残して3辺に対応する縦枠材18及び横枠材20を膜材12の表面に接着剤22により予め接着する。そして、太陽電池モジュール14の縁部を3辺に対応する縦枠材18及び横枠材20に挿入する。その後、残りの1辺となる縦枠材18又は横枠材20を太陽電池モジュール14の縁部に外挿し、その縦枠材18又は横枠材20を膜材12の表面に接着剤22により接着することで、太陽電池モジュール14の取り付けが完了する。
【0043】
次に、本実施形態の電子部材固定構造10の作用並びに効果について説明する。
【0044】
図1及び図2(A)に示されるように、面方向に伸縮する膜材12の表面に枠縁材16が設けられており、太陽電池モジュール14の周縁部が枠縁材16の縦枠材18及び横枠材20により移動可能に支持されると共に、太陽電池モジュール14の移動量が縦枠材18及び横枠材20によって制限されている。図2(B)に示されるように、建物(図示省略)の屋根に取り付けられた膜材12が、建物の内圧や風などの外力等によって面方向(面内方向及び面外方向)に伸縮したとき、膜材12の伸縮により縦枠材18及び横枠材20が移動し、これによって、太陽電池モジュール14の周縁部と縦枠材18及び横枠材20とが相対的に移動する。このため、太陽電池モジュール14が膜材12の伸縮に追従せず、太陽電池モジュール14の歪の発生が抑制される。このため、太陽電池モジュール14の破損を阻止することができる。なお、図2(B)では、膜材12が面方向に伸長した状態が示されている。
【0045】
また、太陽電池モジュール14が枠縁材16により移動量を制限されるため、太陽電池モジュール14が膜材12の表面の所定の位置から離れることがない。
【0046】
例えば、膜材12は最大約5%伸びる可能性があり、太陽電池モジュール14は約2〜3%程度の歪で発電素子が壊れ、発電能力が低下する可能性があるが、本実施形態では、太陽電池モジュール14の周縁部と縦枠材18及び横枠材20とが相対的に移動することによって、膜材12の伸縮による太陽電池モジュール14の歪の発生が抑制される。このため、太陽電池モジュール14の破損や発電能力の低下を阻止することができる。
【0047】
また、本実施形態では、枠縁材16のいずれか1辺に対応する縦枠材18又は横枠材20を取り外すことで、枠縁材16から太陽電池モジュール14を引き抜くことができるため、太陽電池モジュール14を交換することができる。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0049】
図3には、電子部材固定構造30の全体構成が断面図にて示されており、図3(A)には膜材12の伸長前の状態が、図3(B)には膜材12の伸長後の状態が示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造30は、膜材12に対して太陽電池モジュール14を移動可能に支持すると共に太陽電池モジュール14の移動量を制限する制限部材32を備えている。制限部材32は、膜材12の表面に固定された支持部材34と、太陽電池モジュール14の周縁部の裏面に設けられて支持部材34に移動可能に支持される枠縁材38と、を備えている。
【0050】
支持部材34は、太陽電池モジュール14の周縁部に沿って設けられており、太陽電池モジュール14の周縁部より外側で膜材12の表面に固定される取付部34Aと、取付部34Aから膜材12の表面と所定の間隔をおいて太陽電池モジュール14の周縁部側に延びた支持片34Bと、を備えている。取付部34Aは接着剤36により膜材12の表面に接合(接着固定)されており、この状態で、支持片34Bは膜材12の表面とほぼ平行に配置されている。
【0051】
枠縁材38は、平面視にて略略矩形状に形成されており、太陽電池モジュール14の長手方向の縁部に沿って配置された一対の縦枠材40と、太陽電池モジュール14の幅方向の縁部に沿って配置された一対の横枠材(図示省略)と、を備えている。枠縁材38は、例えば、樹脂又はゴムにより形成されている。
【0052】
枠縁材38の一対の縦枠材40は、左右対称に配置された略「コ」字状の部材であり、略「コ」字状の部材の開口部が支持片34Bの先端側(太陽電池モジュール14の外側)を向くように配置されている。一対の縦枠材40は、上壁部40Aと、上壁部40Aの幅方向内側端部から下方側に屈曲された縦壁部40Bと、縦壁部40Bの下端部から幅方向外側に屈曲された下壁部40Cと、を備えている。
【0053】
縦枠材40の上壁部40Aは、接着剤42により膜材12の周縁部の裏面に接合(接着固定)されている。一対の支持片34Bの先端は、一対の縦枠材40の内部(上壁部40Aと下壁部40Cとの間)にそれぞれ挿入されており、縦枠材40が支持片34Bに移動可能に支持されている。縦枠材40の内部、すなわち、支持片34Bの先端と縦枠材40の内壁面との間には、太陽電池モジュール14の外れを抑制するための粘着剤24が充填されている。
【0054】
図示を省略するが、枠縁材38の長手方向両側の一対の横枠材と支持片は、縦枠材40と支持片34Bとほぼ同じ構成とされている。
【0055】
このような電子部材固定構造30では、太陽電池モジュール14の裏面の周縁部に設けられた枠縁材38が膜材12に固定された支持部材34の支持片34Bに移動可能に支持されている。これにより、膜材12が面方向に伸縮したときに、太陽電池モジュール14に設けられた枠縁材38と支持片34Bとが相対的に移動する。このため、太陽電池モジュール14が膜材12の伸縮に追従せず、太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制することができる。このため、太陽電池モジュール14の破損や発電能力の低下を阻止することができる。
【0056】
次に、本発明の第3実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1及び第2実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0057】
図4(A)には、電子部材固定構造50の全体構成が斜視図にて示されており、図4(B)には、電子部材固定構造50の全体構成が断面図にて示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造50は、シート状の太陽電池モジュール52と、膜材12に対して太陽電池モジュール52を移動可能に支持すると共に太陽電池モジュール52の移動量を制限する制限部材54と、を備えている。制限部材54は、太陽電池モジュール52に4隅に形成された円形状の孔部52Aと、膜材12に固定されて孔部52Aに挿通されるピン56と、を備えている。ピン56は、孔部52Aに挿通される円柱状の軸部56Aと、軸部56Aの頭部に設けられて孔部52Aの抜けを阻止する抜け止め部56Bと、を備えている。軸部56Aの外径は、孔部52Aの内径よりも小さく形成されており、軸部56Aが孔部52A内で移動可能となっている。抜け止め部56Bは、軸部56Aの直径よりも大きく形成されると共に、孔部52Aの内径よりも大きく形成されている。
【0058】
本実施形態では、ピン56は、合成樹脂等により形成されている。軸部56Aの端面は、膜材12の表面に図示しない接着剤又は粘着剤により接合されている。
【0059】
ピン56は、太陽電池モジュール52の孔部52Aの位置に合わせて膜材12の表面に複数設けられている。本実施形態では、太陽電池モジュール52を膜材12の表面に仮止めした後、ピン56の軸部56Aを太陽電池モジュール52の孔部52Aに挿通して軸部56Aの端面を膜材12の表面に図示しない接着剤又は粘着剤により接合することで、太陽電池モジュール52が膜材12の表面に取り付けられる。
【0060】
このような電子部材固定構造50では、膜材12の表面に固定されたピン56の軸部56Aが太陽電池モジュール52の4隅に形成された孔部52Aに挿通されており、ピン56の抜け止め部56Bによって太陽電池モジュール52がピン56の軸部56Aから外れることが阻止されている。太陽電池モジュール52の孔部52Aの内径よりピン56の軸部56Aの外径が小さく形成されており、膜材12が面方向に伸縮したときに、太陽電池モジュール52の孔部52Aとピン56の軸部56Aが相対的に移動する。このため、太陽電池モジュール52が膜材12の伸縮に追従せず、太陽電池モジュール52の歪の発生を抑制することができる。
【0061】
次に、本発明の第4実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1〜第3実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0062】
図5には、電子部材固定構造70の全体構成が断面図にて示されている。この図に示されるように、電子部材固定構造70は、膜材12に対して太陽電池モジュール14を移動可能に支持すると共に太陽電池モジュール14の移動量を制限する制限部材72を備えている。制限部材72は、膜材12の表面に固定された一対の第1レール74と、太陽電池モジュール14に裏面に第1レール74と直交する方向に配設された一対の第2レール76と、第1レール74と第2レール76に跨って配置された移動部材78と、を備えている。
【0063】
第1レール74は、略矩形状の筒状部材からなり、上面部には長手方向に沿って移動部材78の軸部78Aがスライド可能に挿通されるスリット74Aが形成されている。第1レール74の下面部は、膜材12の表面に接着剤80により接合されている。
【0064】
第2レール76は、略矩形状の筒状部材からなり、下面部には長手方向に沿って移動部材78の軸部78Aがスライド可能に挿通されるスリット76Aが形成されている。第2レール76の上面部は、太陽電池モジュール14の裏面の縁部に接着剤82により接合されている。本実施形態では、第2レール76は、太陽電池モジュール14の裏面の幅方向両側の縁部に沿って設けられており、第1レール74は、膜材12の表面における太陽電池モジュール14の長手方向両側の縁部と対向する位置に設けられている。
【0065】
移動部材78は、上下方向に延在する軸部78Aの下端部に第1レール74を摺動する摺動部78Bと、軸部78Aの上端部に第2レール76を摺動する摺動部78Cと、を備えている。摺動部78Bは、円盤状に形成されており、その外径は第1レール74のスリット74Aから抜けないようにスリット74Aの幅よりも大きく形成されている。また、移動部材78は、軸部78Aの上端部に第2レール76を摺動する摺動部78Cを備えている。摺動部78Cの外径は、第2レール76のスリット76Aから抜けないようにスリット76Aの幅よりも大きく形成されている。
【0066】
このような電子部材固定構造70では、膜材12の表面に固定された一対の第1レール74と、太陽電池モジュール14の裏面に第1レール74と直交する方向に配設された一対の第2レール76とが設けられており、第1レール74と第2レール76とに跨って移動部材78が設けられている。膜材12が面方向に伸縮したときに、第1レール74及び第2レール76に移動可能に支持された移動部材78を介して第1レール74と第2レール76とが相対的に移動する。このため、太陽電池モジュール14が膜材12の伸縮に追従せず、太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制することができる。
【0067】
次に、本発明の第5実施形態の電子部材固定構造について説明する。なお、第1〜第4実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0068】
図6には、電子部材固定構造90の全体構成が太陽電池モジュール14の下方側から見た断面図にて示されている。図7(A)には電子部材固定構造90の全体構成が一部を裁断した側面図にて示されており、図7(B)には制限部材が斜視図にて示されている。これらの図に示されるように、電子部材固定構造90は、膜材12に対して太陽電池モジュール14を移動可能に支持すると共に太陽電池モジュール14の移動量を制限する制限部材92を備えている。制限部材92は、膜材12の表面に固定された第1板材94と、太陽電池モジュール14の裏面に設けられた第2板材96と、第1板材94に固定されて第2板材96をスライド可能に保持する保持部材98と、を備えている。
【0069】
第2板材96は、平面視にて太陽電池モジュール14の裏面の4隅に設けられており、接着剤(図示省略)により太陽電池モジュール14の裏面に接合されている。また、第1板材94は、膜材12の表面における第2板材96と対向する位置に配置されており、接着剤(図示省略)により膜材12の表面に接合されている。
【0070】
図7(B)に示されるように、保持部材98は、断面視にて略T字状に形成されており、第1板材94の上面部に接合される円柱状の軸部98Aと、軸部98Aの上端に設けられた円板状の保持部98Bと、を備えている。保持部98Bの外径は軸部98Aの外径よりも大きく形成されている。
【0071】
第2板材96の下面部には、軸部98Aが移動可能に挿通される円形状の小径穴96Aが設けられており、小径穴96Aの上方に保持部98Bが移動可能に保持される円形状の大径穴96Bが設けられている。すなわち、軸部98Aの外径よりも小径穴96Aの内径が大きく形成されると共に、保持部98Bの外径よりも大径穴96Bの内径が大きく形成されている。
【0072】
保持部材98の軸部98Aが第2板材96の小径穴96Aに挿通されると共に、保持部98Bが第2板材96の大径穴96Bに保持されることで、第1板材94と第2板材96とが相対的に移動するようになっている。
【0073】
このような電子部材固定構造90では、膜材12の表面に固定された第1板材94に保持部材98が固定されており、太陽電池モジュール14の裏面に設けられた第2板材96が保持部材98によってスライド可能に保持されている。これにより、膜材12が面方向に伸縮したときに、膜材12の第1板材94に設けられた保持部材98と太陽電池モジュール14の第2板材96とが相対的に移動する。このため、太陽電池モジュール14が膜材12の伸縮に追従せず、太陽電池モジュール14の歪の発生を抑制することができる。
【0074】
なお、保持部材98の形状や第2板材96の小径穴96A及び大径穴96Bの形状は、第5実施形態の形状に限定されるものではなく、保持部材が第2板材をスライド可能に保持する形状であれば、他の形状に変更可能である。
【0075】
なお、上記第1〜第5実施形態では、フレキシブル性を備えたシート状の太陽電池モジュール14が用いられているが、これに限定されず、LED、液晶パネル、プラズマパネル等のシート状の電子部材を固定する構造にも本発明を適用することができる。
【0076】
上記第1〜第5実施形態では、面方向に伸縮する膜材12が用いられているが、これに限定されず、面方向に伸縮する下地であれば、膜材以外の下地にも本発明の電子部材固定構造を適用することができる。
【0077】
また、上記第1〜第5実施形態では、膜材12は建物の屋根に使用される屋根材であるが、これに限定されず、他の構造物等に使用される下地にも本発明の電子部材固定構造を適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
10 電子部材固定構造
12 膜材(下地)
14 太陽電池モジュール(電子部材)
16 枠縁材(制限部材)
24 粘着剤
30 電子部材固定構造
32 制限部材
34 支持部材
34B 支持片
38 枠縁材
50 電子部材固定構造
52 太陽電池モジュール
52A 孔部
54 制限部材
56 ピン
56A 軸部
56B 抜け止め部
70 電子部材固定構造
72 制限部材
74 第1レール
76 第2レール
78 移動部材
90 電子部材固定構造
92 制限部材
94 第1板材
96 第2板材
98 保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方向に伸縮する下地と、
前記下地の表面に配置されたシート状の電子部材と、
前記下地に取り付けられ、前記電子部材を移動可能に支持すると共に前記電子部材の移動量を制限する制限部材と、
を有する電子部材固定構造。
【請求項2】
前記制限部材は、前記下地に固定され、前記電子部材の周縁部を移動可能に支持する枠縁材である請求項1に記載の電子部材固定構造。
【請求項3】
前記制限部材は、
前記電子部材の周縁部に沿って設けられ、前記下地に固定される支持片と、
前記電子部材の周縁部に設けられ、前記支持片に移動可能に支持される枠縁材と、
を備える請求項1に記載の電子部材固定構造。
【請求項4】
前記制限部材は、
前記電子部材に複数形成された孔部と、
前記下地に固定され、前記孔部に挿通されると共に前記孔部の内径よりも小さい外径の軸部と、前記軸部の頭部に設けられ前記電子部材の抜けを阻止する抜け止め部と、を備えたピンと、
を有する請求項1に記載の電子部材固定構造。
【請求項5】
前記制限部材は、
前記下地に固定された第1レールと、
前記電子部材に設けられ、前記第1レールと直交する方向に配置された第2レールと、
前記第1レールと前記第2レールに跨って設けられ、前記第1レール及び前記第2レールから抜けないように支持されると共に前記第1レール及び前記第2レールを移動する移動部材と、
を有する請求項1に記載の電子部材固定構造。
【請求項6】
前記制限部材は、
前記下地に固定された第1板材と、
前記電子部材に設けられた第2板材と、
前記第1板材に固定され、前記第2板材をスライド可能に保持する保持部材と、
を有する請求項1に記載の電子部材固定構造。
【請求項7】
前記枠縁材と前記電子部材の周縁部、又は前記電子部材に設けられた前記枠縁材と前記支持片との間に、前記電子部材の外れを抑制するための粘着剤が充填されている請求項2又は請求項3に記載の電子部材固定構造。
【請求項8】
前記電子部材がフレキシブル性を備えた太陽電池である請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の電子部材固定構造。
【請求項9】
前記下地が、建物の屋根に取り付けられる膜材である請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の電子部材固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−4695(P2013−4695A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133628(P2011−133628)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(591255612)サンゴバン株式会社 (8)
【出願人】(512014784)株式会社テラシス (3)
【Fターム(参考)】