説明

電子顕微鏡用試料箱

【課題】試料箱を再び開いて試料に必要な気体又は液体を導入し、試料の動的変化を観察する時間を延ばすことが可能なガイド孔及びプラグを有する電子顕微鏡用試料箱を提供する。
【解決手段】電子顕微鏡用試料箱は、第1の基板11、第2の基板12及び金属密着層13を備える。第1の基板11は、第1の表面111、第2の表面112、第1の凹溝113及び少なくとも1つの第1のガイド孔114を有する。第1の凹溝113は、第2の表面112に設けられる。第1の表面111上には、第1の凹溝113に対応した第1の薄膜115が形成される。第1のガイド孔114が、第1の凹溝113の外周に設けられるとともに第1の基板11に穿設される。第2の基板12は、第3の表面121、第4の表面122及び第2の凹溝123を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡用試料箱に関し、特に、ガイド孔を有する電子顕微鏡用試料箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、電子顕微鏡を操作して試料を観察する際、電子顕微鏡内の真空環境は、試料を観察する解像度及び正確度にとって非常に重要である。従来の電子顕微鏡は固体の物体構造を観察したり、生体組織、ウイルスを脱水処理した後の試料を観察したりするために用いるが、試料の選択には限界があり、試料の動態状態を観察することは困難である。
【0003】
試料の選択に限界がある条件下では、電子顕微鏡が対応可能な範囲も制限される。この問題を解決するために、気体又は液体中に保存された試料を観察することができる電子顕微鏡の試料装置が研究者により開発されている。試料は、化学粒子、生化学分子又は生体組織でもよい。電子顕微鏡の試料装置は、試料を試料箱中へ収納し、シーラント材料又はポリマーシーラント材料により密封する。しかし、シーラント材料は、試料中の水分を吸収しやすく、ポリマーシーラント材料は試料の水分を蒸発させ易い為、電子顕微鏡の真空度が低下し、試料の解像度及び観察効率に悪影響を与える虞がある。
【0004】
上述の問題点を解決するために、電子顕微鏡用試料箱が開発されている。この試料箱は、試料収納室を有する以外に、ガスチャンバ及び緩衝チャンバを有する。この試料箱は、試料の気体が拡散したり液体が蒸発したりすることを防ぐために、所定の圧力に達するまで不活性ガスをガスチャンバへ充填させ、気体試料の拡散又は液体試料の蒸発速度を緩める。この試料箱は、密封度の問題を解決することができるが、ガスチャンバ中へ充填させる不活性ガスは、試料を観察する解像度に悪影響を与える上、試料箱の組成が複雑であるため、コストが増える虞がある。
【0005】
さらに、従来の電子顕微鏡の試料装置は、気体又は液体の中に試料を置いた後に完全に密封することができるが、密封後、再び開くことはできない。さらに、このように完全に密封した環境下では、組織又は細胞生体の観察が制限を受ける。密閉された空間には、有限の酸素及び緩衝液が存在し、組織又は細胞の生体試料の保存期間が短くなるため、試料の動的変化を長時間観察することはできない。
【0006】
その上、従来の電子顕微鏡の試料装置の密封方式は、シーラント材料又はポリマーシーラント材料により密封する方式であるが、このシーラント材料又はポリマーシーラント材料は、試料中の水分を吸収し、電子顕微鏡中の真空環境へ蒸発させる。この現象は、電子顕微鏡の真空度が低下するだけでなく、試料の元々の保存環境が破壊してしまうこともある。
【0007】
この問題点に鑑み、高度な密封度を有し、電子顕微鏡用試料箱を再び開くことができる上、気体又は液体が保存された試料を電子顕微鏡により正確に観察し、電子顕微鏡により観察することができる試料の種類を増やすことができる技術が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、試料箱を再び開いて試料に必要な気体又は液体を導入して試料の動的変化を観察する時間を延ばすことが可能なガイド孔及びプラグを有する電子顕微鏡用試料箱を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、電子顕微鏡の真空度を低下させずに気体又は液体の試料を試料箱中へ完全に密封させることができる密封度が高い電子顕微鏡用試料箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、第1の基板、第2の基板及び金属密着層を備えた電子顕微鏡用試料箱であって、第1の基板は、第1の表面、第2の表面、第1の凹溝及び少なくとも1つの第1のガイド孔を有し、第1の凹溝は、第2の表面に設けられ、第1の表面上には、第1の凹溝に対応した第1の薄膜が設けられ、少なくとも1つの第1のガイド孔が、第1の凹溝の外周に設けられるとともに第1の基板に穿設され、第2の基板は、第3の表面、第4の表面及び第2の凹溝を有し、第2の凹溝は、第4の表面に設けられ、第3の表面上には、第2の凹溝に対応した第2の薄膜が設けられ、金属密着層は、第1の基板と第2の基板との間に形成され、第1の基板、第2の基板及び金属密着層の間には、気体又は液体の試料を保存して収納する空間が形成されることを特徴とする電子顕微鏡用試料箱が提供される。
【0010】
上述の第1のガイド孔は、好ましくは第1の薄膜及び第1の基板に穿設され、第1の基板、第2の基板及び金属密着層により形成した空間と外部とを連通させ、第1のガイド孔から試料を試料箱中へ入れ、第1のガイド孔から気体又は液体をその中へ導入する。
【0011】
上述の第1の凹溝及び第2の凹溝は、フォトリソグラフィ工程、さらにはウェットエッチング工程、ドライエッチング工程、深堀反応性イオンエッチング(deep reactive−ion etching)工程により凹溝構造を形成する。第1の凹溝及び第2の凹溝の形状は、特に限定されておらず、規則形状又は不規則形状でもよいし、円柱体、錐体、正方体又は長方体でもよいが、円柱体、錐体、正方体又は長方体であることが好ましい。
【0012】
上述の金属密着層は、第2の表面と第4の表面との間、第2の表面と第2の薄膜との間、或いは第1の薄膜と第2の薄膜との間に形成されて、異なる体積及び形状の試料箱の内部空間が形成され、異なる体積の試料及び異なる解像度での観察の必要性に応じて調整することができる。空間の体積は、0.01〜100mm3であり、好ましくは0.05〜50mm3であり、さらに好ましくは0.1〜10mm3である。空間の高さは10〜1000μmであり、好ましくは20〜700μmであり、さらに好ましくは30〜550μmである。
【0013】
前述の金属密着層は、金属材料を含んで金属半田材料を形成する。この金属材料は、Ti、Cr、Sn、In、Bi、Cu、Ag、Ni、Zn、Au及びTi−W合金からなる群から選ばれる1種以上を含む金属材料からなり、好ましくは、Sn、Ni、Zn、Au及びInからなる群から選ばれる1種以上を含む金属材料からなり、さらに好ましくは、Sn、Auからなる群から選ばれる1種以上を含む金属材料からなることが好ましい。この金属密着層中の組成には接着層、冶金層及び半田層が含まれてもよく、接着層は、Ti、Ti−W合金又はCrからなる。冶金層は、Ni、Cu又はAuからなる。本発明が適用する金属材料は、防水性及び密封度に優れ、生体適合性を有するという長所を有するが、密着性を得るために高温にする必要があるため、下部基板と上部基板とを密着させる際、試料箱内の試料が変質する虞がある。操作方法において、まず、70℃以上の高温で、金属密着層により第1の基板と第2の基板とを密着させてから試料箱内に試料を置く。
【0014】
前述の第2の基板には、少なくとも1つの第2のガイド孔が設けられている。この第2のガイド孔は、好ましくは第2の凹溝の外周に設けられて第2の基板に穿設され、第1の基板、第2の基板及び金属密着層により画成された空間が外界と連通し、試料を第2のガイド孔から空間へ入れるとともに、第2のガイド孔から気体及び液体をその中へ入れる。
【0015】
前述の第1のガイド孔の孔径は、10〜1000μmであり、好ましくは50〜700μmであり、さらに好ましくは100〜500μmである。第2のガイド孔の孔径は、10〜1000μmであり、好ましくは50〜700μmであり、さらに好ましくは100〜500μmである。各ガイド孔の孔径のサイズは、観察の必要に応じて調整し、電子顕微鏡の操作や観察の邪魔とならない状況下で適宜調整することができる。製造方法において、第1のガイド孔及び第2のガイド孔は、深堀反応性イオンエッチング(deep reactive ion etching)又はレーザ穿孔技術により製作する。基本的にガイド孔の機能は、気体又は液体の試料を置いたり、試料に必要な気体又は液体(例えば、酸素、窒素、緩衝液、培養液など)を導入したりし、試料の動的変化を観察する時間を延ばすことにある。試料が細胞である場合、ガイド孔により細胞に必要な酸素及び培養液を導入することにより、細胞試料の生存時間を伸ばすとともに、細胞試料の動的変化をリアルタイムで観察することができる。
【0016】
本発明の電子顕微鏡用試料箱は、第1のガイド孔及び第2のガイド孔を収納する少なくとも1つのプラグをさらに含む。このプラグの材料は特に限定されるわけではなく、金属、形状記憶金属、ポリマー、プラスチック、セラミック、アクリル又はそれらの組み合わせからなり、好ましくは、形状記憶金属、ポリマー、プラスチック、セラミック又はそれらの組み合わせからなり、さらに好ましくは、形状記憶金属からなる。この形状記憶金属は、Ni−Ti合金、銅ベース合金、Cu−Zn合金、Cu−Al−Mn合金、Cu−Al−Ni合金、Cu−Al−Be合金、Cu−Al−Be−Zr合金及びCu−Al−Ni−Be合金からなる群から選ばれる1種以上を含む材料からなり、好ましくは、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金及びCu−Al−Mn合金からなる群から選ばれる1種以上を含む材料からなり、さらに好ましくは、Ni−Ti合金からなる。上述の形状記憶金属は、熱により膨張したり収縮したりする記憶特性を有するため、好適な材料でプラグを製作し、ガイド孔を密封することにより、本発明の電子顕微鏡用試料箱の密封度を高めることができる。
【0017】
前述の電子顕微鏡試料箱の第1の薄膜及び第2の薄膜は、製造工程におけるエッチングの選択肢を増やして第1の基板、第2の基板の表面硬さを高めることができるように、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si34)又はそれらの組み合わせからなってもよい。第1の薄膜及び第2の薄膜の厚さは、それぞれ1〜100nmであり、好ましくは5〜80nmである。
【0018】
第1の薄膜の外層には、一層の第1の保護層をさらに形成し、同じ道理により、第2の薄膜125の外層にさらに一層の第2の保護層126を形成する。第1の保護層116及び第2の保護層126の材料は、硬い特性を有する窒化ケイ素(Si34)であることが好ましい。この構成により、第1の薄膜及び第2の薄膜が破れることを防ぎ、製造工程におけるエッチングの選択肢を増やすことができる。
【0019】
上述した本発明の第1の基板及び第2の基板は、シリコン基板、ガラス基板又はポリマー基板であり、好ましくはシリコン基板である。第1の基板及び第2の基板の厚さは、10〜1000μmであり、好ましくは100〜250μmである。
【0020】
上述したことから分かるように、本発明の電子顕微鏡用試料箱は、金属密着層を有し、試料箱へ試料を置く前に、金属密着層により第1の基板と第2の基板とを密着させる。さらに、本発明の試料箱は、少なくとも1つの第1のガイド孔及び少なくとも1つの第2のガイド孔を有し、実際に使用する際、試料を試料箱の第1のガイド孔及び第2のガイド孔から入れてから、プラグにより第1のガイド孔及び第2のガイド孔を密封し、本発明の試料箱を最終的に完全に密封した状態にし、電子顕微鏡で動的変化を観察する。本発明のプラグにより、第1のガイド孔及び第2のガイド孔を再び開くことができるため、第1のガイド孔及び第2のガイド孔から気体又は液体(例えば、酸素又は緩衝液)を導入し、試料の動的変化を観察する時間を延ばすことができる。
【0021】
また、本発明の電子顕微鏡用試料箱は、その構造及び製作が従来の試料箱より簡素であり、本発明が選択する材料及び製作方法は、当業者であれば容易に取得したり理解したりし易い。そのため、上述したように、気体又は液体を保存する本発明の試料は、電子顕微鏡により試料の動的変化をリアルタイムで観察したり、試料の観察時間を延ばしたりするとともに、簡単な試料箱構造により、従来の電子顕微鏡試料箱の密封度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の電子顕微鏡用試料箱を示す平面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る電子顕微鏡用試料箱を示す立体斜視図である。
【図3】本発明の第1実施例に係る電子顕微鏡用試料箱を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る電子顕微鏡用試料箱を示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る電子顕微鏡用試料箱を示す断面図である。
【図6】本発明の第4実施例に係る電子顕微鏡用試料箱を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図に基づいて説明する。なお、これによって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(第1実施例)
図1〜図3を参照する。図1は、本実施例の電子顕微鏡用試料箱を示す平面図である。図2は、図1の線A−A’に沿った本実施例の電子顕微鏡用試料箱を示す断面斜視図である。図3は、図1の線A−A’に沿った本実施例の電子顕微鏡用試料箱を示す断面図である。図1〜図3に示すように、本発明の電子顕微鏡用試料箱は、第1の基板11、第2の基板12及び金属密着層13を含む。本実施例の第1の基板11及び第2の基板12は、シリコン基板である。第1の基板11及び第2の基板12の厚さは、それぞれ250μmである。
【0025】
さらに詳細には、第1の基板11は、第1の表面111、第2の表面112、第1の凹溝113及び2つの第1のガイド孔114を有する。第1の凹溝113は、第2の表面112に設けられる。第1の表面111上には、第1の凹溝113に対応した第1の薄膜115が設けられる。また、上述の第1のガイド孔114は、第1の凹溝113の外周に設けられ、第1の基板11に穿設される。
【0026】
上述の第2の基板12は、第3の表面121、第4の表面122及び第2の凹溝123を有する。第2の凹溝123は、第4の表面122に形成される。第3の表面121上には、第2の凹溝123に対応した第2の薄膜125が形成される。
【0027】
また、上述の金属密着層13は、第1の基板11の第1のガイド孔114と、第2の基板12の第4の表面122との間に形成される。第2の表面112、第4の表面122及び金属密着層13により画設された空間14内には、気体又は液体の試料が収容される。本実施例の試料は、種類が特に限定されるわけではなく、気体又は液体の試料が保存され、電子顕微鏡で観察される要求を満たす限り、如何なる物も本実施例に応用することができる。
【0028】
また、本実施例では、フォトリソグラフィ工程又はウェットエッチング工程により、第2の表面112上に第1の凹溝113を形成し、第4の表面122上に第2の凹溝123を形成し、第1の凹溝113及び第2の凹溝123の形状を錐形状に形成する。
【0029】
また、本実施例の第1のガイド孔114は、深堀反応性イオンエッチング(deep reactive ion etching)により製作されて第1の薄膜115及び第1の基板11に穿設される。本実施例の第1のガイド孔114の孔径は250μmである。
【0030】
第1のガイド孔114の機能は、観察する試料をこのガイド孔から空間14中へ入れ、第1のガイド孔114から気体(例えば、酸素、窒素など)又は液体(例えば、緩衝液又は酸、アルカリ溶液など)を導入し、試料の動的変化を観察することにある。
【0031】
上述の第1の薄膜115及び第2の薄膜125は、第1の基板11及び第2の基板12の硬度を高めて基板が割れ難いようにするとともに、エッチング過程のエッチングの選択肢を増やすことができるように、二酸化ケイ素(SiO2)からなる。
【0032】
上述した本実施例の金属密着層13は、接着層、冶金層及びはんだ層から構成される。接着層は、Ti−W合金からなり、冶金層は銅からなる。本実施例では、まず、約130℃の高温で、自動整列包装法(automatic alignment packaging method)を利用し、金属密着層13により第1の基板11及び第2の基板12を接着してから、空間14中へ試料を収納する。
【0033】
本実施例において、金属密着層13、第2の表面112及び第4の表面122により空間14を画成し、電子顕微鏡の電子ビームを第1の基板11の第1の凹溝113に沿って空間14に透過させてから、第2の基板12の第2の凹溝123へ透過させる。空間14は、体積が4mm3であり、高さが550μmである。さらに、本実施例では、基板の硬度を高めて、エッチング過程におけるエッチングの選択肢を増やすために、第1の薄膜115の外層に第1の保護層116を形成し、第2の薄膜125の外層にさらに一層の第2の保護層126を形成する。第1の保護層116及び第2の保護層126は、硬度が高い窒化ケイ素(Si34)からなる。
【0034】
また、本実施例は2つのプラグ15を有する。このプラグ15により、第1のガイド孔114を密封し、完全に密封した電子顕微鏡用試料箱を形成する。これ以外に、プラグ15が第1のガイド孔114から抜き取られるため、試料箱は観察の必要性に応じて再び開いたり密封したりすることができる。本実施例のプラグ15は、形状記憶金属のTi−Ni合金からなり、プラグ15を氷点下以下の温度で所定時間置いた後、Ti−N合金の温度が氷点下以下になったときに取り出して室温中の試料箱の第1のガイド孔114中へ挿入すると、Ti−Ni合金の温度が室温まで徐々に上がるため、プラグ15が膨張して第1のガイド孔114が密封され、試料箱が完全に密封される。
【0035】
細胞試料の観察により、本実施例の使用方式を説明する。細胞試料は、第1のガイド孔114から室温の空間14へ入れ、氷点下以下の温度であるTi−Ni合金のプラグ15を取り出して第1のガイド孔114を塞ぎ、プラグ15により第1のガイド孔114を密封する。これにより、本実施例の試料箱は、完全に密封された状態となる。続いて、完全に密封された試料箱を電子顕微鏡中へ置き、細胞の動的変化をリアルタイムで観察する。その後、観察の必要に応じ、第1のガイド孔114からプラグ15を再び取り外し、所望の酸素又は培養液へ細胞試料を入れて動的変化をさらに観察する。
【0036】
(第2実施例)
図4を参照する。図4は、本発明の第2実施例に係る電子顕微鏡用試料箱を示す断面図である。第2実施例は、第1実施例と略同じであり、金属密着層13が第2の表面112と第2の保護層126との間に配置され、金属密着層13がSn−In共晶半田である点だけが異なる。
【0037】
第2実施例の空間14の体積は2mm3であり、第1実施例の空間14の体積より小さい。第2実施例の試料箱が収納可能な試料の体積は第1実施例より小さいが、解像度は第1実施例より好ましい。そのため、観察する試料の体積、所望の電子顕微鏡の解像度に応じて、空間14の体積が異なる電子顕微鏡用試料箱を選択することができる。
【0038】
(第3実施例)
図5を参照する。図5は、本発明の第3実施例に係る電子顕微鏡用試料箱を示す断面図である。第3実施例は、第1実施例及び第2実施例と略同じであり、金属密着層13が第2の表面112と第2の保護層126との間に配置され、0.2mm3の空間14が形成される点だけが異なる。本実施例の空間14の体積は、第1実施例及び第2実施例の空間14より小さい。第3実施例の試料箱が収納可能な試料体積は、第1実施例及び第2実施例より小さいが、第1実施例及び第2実施例より解像度が好ましい。そのため、観察する試料の体積、所望の電子顕微鏡の解像度の大きさに応じて、空間14の体積が異なる電子顕微鏡用試料箱を選択することができる。
【0039】
また、本実施例は、深堀反応性イオンエッチング(deep reactive ion etching)により、第2の基板12上に2つの第2のガイド孔124を設け、第2の薄膜125及び第2の基板12に第2のガイド孔124を穿設させる。第2のガイド孔124の孔径は250μmである。
【0040】
また、第3実施例の第2のガイド孔124は、Ti−Ni合金のプラグ15により密封し、第1のガイド孔114と同じ機能を得てもよい。
【0041】
(第4実施例)
図6を参照する。図6は、本発明の第4実施例に係る電子顕微鏡用試料箱を示す断面図である。第4実施例は、第3実施例と略同じであるが、第1の薄膜115、第1の保護層116、第2の薄膜125及び第2の保護層126により、第1の凹溝113及び第2の凹溝123の底部だけを覆い、第1の凹溝113及び第2の凹溝123の構造強度を高め、凹溝が破裂して試料が溢れ出ることを防ぐことができる上、エッチングの選択肢を増やすこともできる。
【0042】
本実施例では、第1の表面111及び第3の表面121の薄膜により覆われていない部分に、レーザ穿孔技術により、第1のガイド孔114及び第2のガイド孔124を形成する。第1のガイド孔114及び第2のガイド孔124は、第1の表面111及び第3の表面121だけに穿設され、それぞれの孔径が250μmに形成される。本実施例では、最終的にTi−Ni合金からなるプラグ15により、第1のガイド孔114及び第2のガイド孔124を密封する。
【0043】
当該分野の技術を熟知するものが理解できるように、本発明の好適な実施例を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではない。本発明の主旨と領域を逸脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の特許請求の範囲は、このような変更や修正を含めて広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0044】
11 第1の基板
12 第2の基板
13 金属密着層
14 空間
15 プラグ
111 第1の表面
112 第2の表面
113 第1の凹溝
114 第1のガイド孔
115 第1の薄膜
116 第1の保護層
121 第3の表面
122 第4の表面
123 第2の凹溝
124 第2のガイド孔
125 第2の薄膜
126 第2の保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板、第2の基板及び金属密着層を備えた電子顕微鏡用試料箱であって、
前記第1の基板は、第1の表面、第2の表面、第1の凹溝及び少なくとも1つの第1のガイド孔を有し、前記第1の凹溝は、前記第2の表面に設けられ、前記第1の表面上には、前記第1の凹溝に対応した第1の薄膜が形成され、前記第1のガイド孔が、前記第1の凹溝の外周に設けられるとともに前記第1の基板に穿設され、
前記第2の基板は、第3の表面、第4の表面及び第2の凹溝を有し、前記第2の凹溝は、前記第4の表面に設けられ、前記第3の表面上には、前記第2の凹溝に対応した第2の薄膜が形成され、
前記金属密着層は、前記第1の基板と前記第2の基板との間に形成され、
前記第1の基板、前記第2の基板及び前記金属密着層により空間が画成されることを特徴とする電子顕微鏡用試料箱。
【請求項2】
前記第1のガイド孔は前記第1の薄膜に穿設されることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項3】
前記金属密着層は、前記第2の表面と前記第4の表面との間に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項4】
前記金属密着層は、前記第2の表面と前記第2の薄膜との間に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項5】
前記金属密着層は、前記第1の薄膜と前記第2の薄膜との間に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項6】
前記第2の基板は、少なくとも1つの第2のガイド孔を含み、
前記第2のガイド孔は、前記第2の凹溝の外周に設けられて前記第2の基板に穿設されることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項7】
前記第1のガイド孔の孔径は10〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項8】
前記第2のガイド孔の孔径は10〜1000μmであることを特徴とする請求項6に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項9】
前記第1のガイド孔に挿入する少なくとも1つのプラグをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項10】
前記第2のガイド孔に挿入する少なくとも1つのプラグをさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項11】
前記第1の薄膜及び前記第2の薄膜は、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si34)又はそれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項12】
前記第1の薄膜及び前記第2の薄膜の厚さは1〜100nmであることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項13】
前記第1の薄膜の外層には、第1の保護層が形成してあることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項14】
前記第1の保護層は、窒化ケイ素(Si34)からなることを特徴とする請求項13に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項15】
前記第2の薄膜の外層には、第2の保護層が形成してあることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項16】
前記第2の保護層は、窒化ケイ素(Si34)からなることを特徴とする請求項15に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項17】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、シリコン基板、ガラス基板又はポリマー基板であることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項18】
前記第1の基板及び前記第2の基板の厚さは10〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項19】
前記金属密着層は、Ti、Cr、Sn、In、Bi、Cu、Ag、Ni、Zn、Au及びTi−W合金からなる群から選ばれる1種以上を含む金属材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項20】
前記プラグは、Ni−Ti合金、銅ベース合金、Cu−Zn合金、Cu−Al−Mn合金、Cu−Al−Ni合金、Cu−Al−Be合金、Cu−Al−Be−Zr合金及びCu−Al−Ni−Be合金からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項9に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項21】
前記第1の凹溝及び前記第2の凹溝の形状は、円柱体、錐体、正方体又は長方体であることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。
【請求項22】
前記第1の基板、前記第2の基板及び前記金属密着層により画成される空間の体積は0.01〜100mm3であることを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡用試料箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−16494(P2013−16494A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−151129(P2012−151129)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(511193400)ナショナル チャオ ツン ユニヴァーシティー (4)
【Fターム(参考)】