説明

電子黒板

【課題】冷却効率の良好なプロジェクタを備えた電子黒板を提供すること。
【解決手段】電子黒板1は、赤、緑、青の各色光を射出する光源であるLED31R,31G,31Bと、各色光の光軸35に沿ってそれぞれ配置されている光学変換部32R,32G,32Bおよび光学変調部33R,33G,33Bからなる光学装置30を有するプロジェクタ3を筐体2に内蔵しており、各光軸35は、冷却空気の流れ方向と直交する同一面にあって、冷却空気によって光学装置30が同時且つ同等に冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射機器と冷却機構とを備えた電子黒板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投射機器による資料等のプレゼンテーションと、プレゼンテーション討議の記録の書き込みとを同時に行うために、投射機器を内蔵した電子黒板も知られている。この電子黒板には、投射部を黒板へ向けた投射機器が、電子黒板のアームの先端に設けられている。投射機器は、黒板の任意位置へ任意の大きさの映像を投射でき、黒板の所望位置に映像が投射されない余白部を設けることが可能である。この余白部へ筆記具等で文字や絵などを書き込むことにより、プレゼンテーションの記録が残せる(例えば特許文献1)。
【0003】
また、投射機器は、光源部や光学変調部等の冷却が必要であり、特許文献1では、ファンによりアームへ吸い込んだ空気によって、光源部や光学変調部等を冷却する構成が簡単に述べられている。また、投射機器における冷却について、ファンにより導入した空気を、ダクト等によって光源部や光変調部等へ個別に導き、それぞれを十分に冷却する構成となっている。この冷却構成は、光学変調部の方式が液晶パネルによるものや、マイクロミラーデバイスによるもの等であっても、方式に関わりなく、ほぼ同様なものである(例えば特許文献2および3)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−341289号公報
【特許文献2】特開2005−338236号公報
【特許文献3】特開2006−301368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術では、アームに投射機器を取り付ける方式であるため、投射機器を少しでも小型軽量にする必要がある。そのため、電子黒板の筐体内に投射機器を配置することが考えられるが、従来のように、ダクトと吸気および排気用の複数のファンとを用いて冷却空気を導く方式では、光学変調部等の冷却は十分行えるが、小型軽量化が困難である。また、ダクトを廃した方式では、小型化は図れるが、空気の流れが阻害されて、光学変調部等の冷却が十分に行われ難い、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる電子黒板は、筐体と、筐体に保持され記録対象が描かれる記録シートと、光源および光源から射出された光束を画像信号に応じて変調して投射するための光学装置を有する投射機器と、投射機器を冷却する冷却空気を流動させる冷却部と、を備え、光学装置は、光束の光軸が冷却空気の流動方向と略直交するように配置されていることを特徴とする。
【0008】
この電子黒板において、電子黒板が備える投射機器は、発熱部を有しており、発熱部による熱の影響を排除するため、冷却空気で冷却されている。殊に、投射機器を主に構成する光学装置は、光学装置を構成する光源等の各光学要素が同等に冷却されて、機能維持されることが好ましい。そのために、光源から射出される光束の光軸が、冷却空気の流動方向と略直交するように、光学装置を配置する。つまり、各光学要素に対して、温度や流速等がほぼ同様の冷却空気を同時に供給し、各光学要素を同条件の冷却空気によって同等に冷却する。このような配置により、各光学要素へ冷却空気を導くダクト等が不要であり、また、冷却空気の滞留等に起因する冷却効果の低下を防ぎ、光学装置の十分な冷却が行える。そして、投射機器の小型化を図ることができ、電子黒板は、投射機器を備えながらも、コンパクトに構成することが可能となる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる電子黒板において、温度センサをさらに備え、投射機器の温度が設定温度以上の場合には、冷却部を稼動させ、投射機器の温度が設定温度以下の場合には、冷却部を停止させることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、電子黒板は、温度センサを用いることにより、投射機器の温度が設定以上に上昇した場合にのみ、冷却部を稼動させて、光学装置等を冷却する。そして、効率良く冷却される配置の光学装置を有する投射機器が十分に冷却されて、温度が設定以下になった場合には、冷却部を停止させ、冷却部が必要以上に稼動し続ける無駄を排除する。これにより、電子黒板の省電力化が図れる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる電子黒板において、投射機器は、記録シートを保持する筐体の内部に収容されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、投射機器は、小型化された光学装置を有しコンパクトに構成されて、電子黒板の筐体の内部に納められている。筐体は、記録シートを保持しつつ電子黒板を形成しており、この筐体をできるだけ小さくするように、光学装置等が筐体内部へ配置されている。従って、電子黒板は、従来の投射機器を内蔵していない電子黒板とほぼ同様な外観であって、ユーザーは、使用に際して、ほとんど違和感等を抱くことがない。また、投射機器の設置場所を新たに確保する必要がなく、部屋のスペースを有効に活用でき、且つ投射機器を使用する会議等の準備を短時間で行うことが可能である。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる電子黒板において、冷却空気は、投射機器が収容された筐体の一端側から吸入され、筐体内を略直線状に流れて投射機器を冷却後、筐体の他端側から排出されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、筐体は、冷却空気が筐体の一端側から他端側へほぼ直線状に流れるように構成されていて、冷却空気の滞留等を防ぎスムーズな冷却空気の流れが形成されている。投射機器の光学装置等は、この冷却空気の流れに沿って配置されているため、冷却空気の通りが良好であり、それぞれが十分に冷却される。投射機器の主構成装置である光学装置は、冷却空気の流れ方向とほぼ直角をなす光軸に沿って光源等の各光学要素が配置されている。これにより、光源等の各光学要素には、冷却空気が同方向から同時に供給され、それぞれの光学要素が効率的に冷却される。光学装置は、ばらつきの少ないほぼ均一な温度に保たれ、長期に機能を維持することが可能である。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかる電子黒板において、冷却部は、他端側にのみ設けられたファンであることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、冷却空気は、筐体内を略直線状に流れる単純な構成であるため、屈曲したダクトに沿わせて冷却空気を流す場合のような強い圧力の付与が不要である。従って、この場合、冷却部として冷却空気の吸入および排出を行うためのファンは、他端側にのみ設けられている。この場合、他端側に設けられたファンが筐体から冷却空気を排出し、筐体内を負圧にすることにより、一端側からは冷却空気が吸入され、投射機器が冷却される。冷却空気が筐体内を略直線状に流れる構成にすることにより、ファンを最少の1台だけ設置して冷却空気を吸排気することが可能である。また、筐体内を冷却空気の流路とするため、冷却空気の流量が十分に確保でき、ファンの回転数を落として静粛な稼動が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、電子黒板の具体的な実施形態について図面に従って説明する。本実施形態における電子黒板は、記録対象が書き込まれる黒板や白板等としての役目をする記録シートと、映像を拡大投射するプロジェクタ(投射機器)と、を備えている。また、電子黒板は、プロジェクタを効果的に冷却する構成を備えている。
(実施形態)
【0018】
図1は、本実施形態の電子黒板の外観を示す斜視図である。電子黒板1は、矩形をなした枠状の筐体2と、筐体2が形成する枠状の内側を塞ぐように設けられ筆記具等で文字や図形等の記録対象を前面側に書き込める記録シート9と、を備えている。筐体2は、矩形枠状の上部を形成する上部筐体2aと、下部を形成する下部筐体2bと、上部筐体2aおよび下部筐体2bのそれぞれの左右端部を連結する2本の側部筐体2cと、筐体2の後面側を塞ぐ後部筐体(不図示)と、を有している。
【0019】
上部筐体2aは、内部が空洞の直方体であって、この空洞には、図示していないプロジェクタ(投射機器)3が収容されている。また、上部筐体2aは、上部筐体2aの前面を向いた面に設けられプロジェクタ3の投射部34からの光束を射出するための射出孔2eと、一方の側部筐体2cの側に位置する側端面に設けられ、プロジェクタ3を冷却するための冷却空気を取り入れるための吸気口4と、他方の側部筐体2cに設けられプロジェクタ3を冷却した冷却空気を排気するための排気口5と、を有している。吸気口4には、塵埃等の浸入を防ぐフィルタ(不図示)が設けられている。
【0020】
そして、下部筐体2bは、記録シート9に文字や図形等を書き込む筆記具等を収容する受部2dと、電子黒板1を稼動させるための操作ボタン類と液晶表示部とが配置された操作パネル6と、パーソナルコンピュータ等の外部機器を接続するためのコネクタ部7と、図示していないスキャナで読み取った記録シート9の記録対象を印刷するプリンタ8と、を有している。
【0021】
以上のような構成の電子黒板1をプレゼンテーションに用いれば、プレゼンターは、まずコネクタ部7に接続したパーソナルコンピュータから、プレゼンテーション等の資料を電子黒板1へ送り、プロジェクタ3の投射部34から投射することにより、拡大された見やすい資料によって説明が行える。同時に、プレゼンターは、説明の補足内容や討議内容を記録シート9へ書き込むことができ、投射資料と合わせて理解し易いプレゼンテーションを行える。この場合、プロジェクタ3は、電子黒板1の筐体2の内部に収容されており、プロジェクタ3のために新たな設置スペースおよび電源の確保、配線作業等を行う必要が無く、電子黒板1用の設置スペースと電源とが確保できれば良いため、プレゼンテーションの準備が短時間で簡便に行える。
【0022】
次に、筐体2に収容されているプロジェクタ3について説明する。図2は、電子黒板に搭載されたプロジェクタの概構成を示す斜視図である。また、図3は、液晶パネルを用いた光学装置の詳細な構成を示す模式図である。本実施形態におけるプロジェクタ3は、光源からの赤、緑、青の各色光を、それぞれの色用の3枚の液晶パネルへ射出し、各液晶パネルで色光毎に変調された光学像を合成して、投射部34からカラー画像を含む光束39を投射する光学装置30を有するものである。プロジェクタ3は、収容されている上部筐体2aが筐体2の外観バランスを損ねるように大きくなることを防ぐために、光学装置30を小型化し、さらに各構成要素を個別にばらして配置している。
【0023】
具体的な構成要素としては、図2に示すように、光学装置30と、プロジェクタ3を制御するためのCPU(Central Processing Unit)等の制御部を含んで実装された制御基板部17と、プロジェクタ3へ電力を供給する電源部18と、が挙げられる。これら構成要素は、冷却が必要な発熱部であって、そのため、構成要素を冷却するために、吸気口4から冷却空気10を導入し、排気口5から排気するように、排気口5の近傍に排気ファン50が設けられている。つまり、冷却空気10は、上部筐体2aの内部を長手方向へ直線状に流れて、プロジェクタ3を冷却する。冷却空気10が上部筐体2aの内部を直線状に流れるため、冷却空気10の流れに対しての抵抗が少なく、排気ファン50のみで冷却空気10の導入が可能である。
【0024】
また、プロジェクタ3の各構成要素は、上部筐体2a内に、上部筐体2aの長手方向に沿って光学装置30、制御基板部17、電源部18の順で直線状に分散配置されており、冷却空気10が滞留することなくスムーズに流れて、冷却効果の向上が図れる配置となっている。さらに、上部筐体2aに構成要素を分散配置することにより、上部筐体2aの大きさを極小に押さえるように収容することができ、筐体2の外観バランスも保持される。
【0025】
そして、冷却空気10の流れに沿って構成要素の配置を上流側から説明すると、まず、吸気口4側に光学装置30が位置する。光学装置30は、支持枠36内に光学要素が納められていて、支持枠36には、赤、緑、青の色光毎の光学要素を冷却するために、冷却空気10を導くための導風孔37a,37b,37cが設けられている。支持枠36の上部には、光学要素を冷却した後の冷却空気10の温度を測定するための温度センサ14が設けられ、温度センサ14が測定した温度に基づいて、排気ファン50が制御される。温度センサ14は、光学装置30において最も温度管理が必要とされる光学変調部33の各液晶セル332R,332G,332Bの近傍に設置され、冷却空気10の温度から液晶セル332R,332G,332Bの温度を推定している。なお、液晶セル332R,332G,332Bが規定温度以下に冷却されている状態であれば、制御基板部17や電源部18等も十分に冷却される。
【0026】
ここで、光学装置30について詳細に説明する。図3に示す光学装置30は、図2の吸気口4の方向から見た配置であって、赤、緑、青の各色光を射出する光源であるLED(Light Emitting Diode)31(31R,31G,31B)と、各色光の光軸35R,35G,35Bに沿ってそれぞれ配置され、色光の偏光方向を揃える偏光変換部321R,321G,321B、および照度分布を均一化するロッドインテグレータ322R,322G,322Bからなる光学変換部32(32R,32G,32B)と、を有している。そして、光学装置30は、同じく光軸35R,35G,35Bに沿って配置され、入射偏光板331R,331G,331B、液晶セル332R,332G,332B、および出射偏光板333R,333G,333Bからなり、偏光方向の揃った色光を変調して色光毎の光学像を形成する液晶パネルである光学変調部33(33R,33G,33B)と、を有している。
【0027】
さらに、光学装置30は、色光毎に形成された光学像を合成してカラー画像を形成するためのクロスダイクロイックプリズム38と、カラー画像を投射するための投射部34と、を有している。これらLED31と、光学変換部32と、光学変調部33とは、各色光の光軸35R,35G,35Bに沿ってそれぞれ配置されており、各色光をクロスダイクロイックプリズム38の所定面へ入射させる。そして、光学装置30は、各色光の光軸35R,35G,35Bが、上部筐体2aの長手方向と略直交する同一平面上にあり、さらに赤色光および青色光の光軸35R,35Bは、電子黒板1の上下方向に向いた同一直線上にあり、緑色光の光軸35Gは、この直線と直角をなすように構成されている。
【0028】
このような光学装置30において、LED31からクロスダイクロイックプリズム38へ至る光学変換部32および光学変調部33の作用について、赤色光を例にして説明する。LED31Rから射出されたランダム偏光である赤色光は、光学変換部32Rの偏光変換部321Rへ入射する。偏光変換部321Rは、直角三角形のプリズムと平行四辺形のプリズムとが互いの斜面が対向するように張り合わされたものであり、平行四辺形のプリズムの両斜面に誘電体多層膜が形成されている。
【0029】
赤色光は、貼り合わされた斜面の誘電体多層膜において、特定方向の直線偏光(この場合P偏光)が透過されてロッドインテグレータ322Rへ射出され、P偏光と直交する方向の直線偏光(S偏光)が他方の誘電体多層膜へ反射される。S偏光は、他方の誘電体多層膜でさらに反射されて光軸35Rに沿って進み、図示していない1/2波長板によってP偏光に変換される。このように偏光変換部321Rは、ランダム偏光である赤色光をP偏光に揃えることにより、光学変調部33Rにおける赤色光の利用効率の向上を図るものである。
【0030】
ロッドインテグレータ322Rは、光軸35Rに対して垂直な断面が矩形状をした透明部材からなり、ロッドインテグレータ322Rへ入射した赤色光は、ロッドインテグレータ322Rの内面で反射を繰り返し、P偏光のまま照度が均一化されて光学変調部33Rへ射出される。
【0031】
光学変調部33Rは、ロッドインテグレータ322Rの側から順に、P偏光のみを透過させる入射偏光板331Rと、入射した偏光光の偏光方向を変調する液晶セル332Rと、S偏光のみを透過させる出射偏光板333Rと、を有している。ロッドインテグレータ322Rから入射した赤色光は、光学変調部33Rの入射偏光板331Rを透過し、液晶セル332Rにおいて、制御基板部17からの画像信号に応じて、偏光方向が画素単位で切り換えられる。偏光方向が画素単位で切り換えられた赤色光は、出射偏光板333Rで、P偏光が吸収され、S偏光のみが透過してクロスダイクロイックプリズム38へ入射する。なお、LED31Gから射出された緑色光およびLED31Bから射出された青色光も、赤色光と同様に、偏光および変調されてクロスダイクロイックプリズム38へ入射する。
【0032】
クロスダイクロイックプリズム38は、三角柱状の4つのプリズムを張り合わせたもので、断面が略正方形の角柱状である。X字状の張り合わせ面には、誘電体多層膜が形成されている。クロスダイクロイックプリズム38の投射部34に面する側面を除いた3つの側面には、赤、緑、青の光学像を含む色光がそれぞれ入射し、クロスダイクロイックプリズム38は、各色光を誘電体多層膜によって反射または透過することにより、カラー画像を合成する。合成されたカラー画像は、投射部34から外部へ拡大投射される。
【0033】
このような構成の光学装置30において、赤色光の光軸35Rに沿ってそれぞれ配置された光学要素であるLED31Rと、光学変換部32Rと、光学変調部33Rとを冷却するために、支持枠36に導風孔37aが設けられている。同様に、緑色光および青色光の光学要素を冷却するための導風孔37bおよび導風孔37cが、支持枠36に設けられている。これら導風孔37a,37b,37cは、図2に示すように、上部筐体2aの長手方向と略直交する支持枠36の同一面上にあり、冷却空気10の流れに対しても略直交している。そのため、導風孔37a,37b,37cを介して、冷却空気10をほぼ同時に各光学要素へ当てて、冷却することが可能である。各光学要素を冷却した冷却空気10は、導風孔37a,37b,37cと対向する支持枠36の面に開けられている導風孔(不図示)へ抜けて、略直線状に流れる。
【0034】
光学装置30の下流側には、複数の制御基板部17が実装面を上部筐体2aの長手方向と平行にして立設されている。このような立設により、冷却空気10が実装面に沿って整然と流れ、発熱したCPUやIC(Integrated Circuit)等が効果的に冷却される。また、制御基板部17の下流側には、電源部18が位置している。電源部18は、電源ブロックと光源駆動ブロックとで構成されており、電源ブロックは、外部から供給された電力を光源駆動ブロックや制御基板部17等に供給し、光源駆動ブロックは、LED31に電力を供給している。また、電源ブロックと光源駆動ブロックとは、冷却空気10の流れを妨げないように、流れ方向と略平行に配置されて冷却される。
【0035】
そして、比較的発熱量の多い電源部18は、排気ファン50の近傍に設けられていて、電源部18を冷却して暖まった冷却空気10が他の構成要素の冷却に用いられることなく、即、排気される。
【0036】
次に、電子黒板1の記録シート9について説明する。図4は、電子黒板の記録シートの構成を示す斜視図である。電子黒板1は、筐体2の一方の側部筐体2cに沿って設けられている駆動ローラ21と、他方の側部筐体2cに沿って設けられている従動ローラ22と、駆動ローラ21を駆動するためのモータやギア等を有するシート搬送部20と、を備えている。記録シート9は、駆動ローラ21と従動ローラ22との間に掛け回されていて、筐体2の前面側に位置するシート面へ文字や図形等の記録対象を書き込むことが可能である。
【0037】
また、電子黒板1は、筐体2の後面側に位置する記録シート9のシート面に近接して、スキャナ15を備えている。スキャナ15は、記録シート9がシート搬送部20による駆動ローラ21の回転に連動して移動すると、記録シート9に書き込まれている記録対象を順に読み取る。電子黒板1がスキャナ15を備えることにより、記録シート9に書かれた記録対象を書き写すような手間等をかけずに保存でき、記録対象の消去後、記録シート9へ新たな記録対象の書き込みが可能である。さらに、電子黒板1は、スキャナ15で読み取った記録対象をプリンタ8で印刷して出力したり、プロジェクタ3で投射したり、コネクタ部7を介して外部へ伝送したりすることも行える。
【0038】
次に、以上のような構成の電子黒板1を制御する制御系について説明する。図5は、電子黒板の制御部を主に示すブロック図である。電子黒板1の制御部40は、制御基板部17に実装されていて、プロジェクタ3を制御するプロジェクタ制御部12と、プリンタ8を制御するプリンタ制御部13と、スキャナ15を制御するスキャナ制御部16と、シート搬送部20を制御する搬送制御部25と、排気ファン50を制御するファン制御部55と、温度センサ14を制御するセンサ制御部46と、操作パネル6を制御するパネル制御部45と、コネクタ部7を介する入出力を制御するインターフェース44と、を有している。
【0039】
また、制御部40は、各制御部による処理を総合的に制御するCPU41と、CPU41が参照して各種処理をするためのプログラム等を保存しているROM(Read Only Memory)42と、スキャナ15が読み取った記録対象等を一時的に保存するためのRAM(Random Access Memory)43と、を有している。これら制御部40を構成する各々は、内部バス47を介してそれぞれ互いに接続されている。
【0040】
そして、操作パネル6には、プロジェクタ3、プリンタ8、スキャナ15およびシート搬送部20を含めて、ユーザーが電子黒板1を稼動させる操作をするための操作ボタン類と、操作状態を表示する液晶表示部と、が集中配置されている。操作ボタン類は、電子黒板1に電力を供給してスタンバイさせるための電源ボタンと、プロジェクタ3の電源、映像のフォーカス、投射照度等を操作するための各種の機器ボタンと、シート搬送部20を稼動させるための搬送ボタンと、記録シート9の記録対象をスキャナ15で読み取るための読取ボタンと、記録対象をプリンタ8から印刷出力するための印刷ボタンと、記録対象をプロジェクタ3で投射するための投射ボタン等である。
【0041】
次に、このような構成の電子黒板1の使用例について説明する。図6は、電子黒板の設置例を示す斜視図である。この一例では、電子黒板1がプレゼンテーションルーム60において用いられる場合であって、パーソナルコンピュータ(不図示)からコネクタ部7を介して入力されたプレゼンテーション資料を、プロジェクタ3によって、電子黒板1と対向して置かれたスクリーン65へ投射し、さらに、記録シート9に書かれた補足記録等の記録対象をスキャナ15(図4)で読み取って保存する。
【0042】
この場合において、スタンバイ状態の電子黒板1を機能させるためにCPU41が実行する操作手順の一例について、図5および図6を参照して説明する。まず、コネクタ部7からパーソナルコンピュータのデータ信号を受信すると、プロジェクタ3でプレゼンテーション資料のデータ投射をするようプロジェクタ制御部12へ指示する。この時、プロジェクタ制御部12は、操作パネル6の機器ボタンによるフォーカス等の調整にも対応する。こうして、プロジェクタ3は、投射部34からスクリーン65へプレゼンテーション資料を見やすく拡大投射する。
【0043】
また、CPU41は、搬送ボタンの入力信号を受信すると、シート搬送部20を稼動させて記録シート9を移動させる指示を、搬送制御部25へ行う。この場合、搬送制御部25は、入力信号を受信している間のみシート搬送部20を稼動させる。搬送ボタンが押されて入力信号が送られてくるのは、記録シート9の前面へ補足記録等(記録対象)を書き込んで余白がなくなった場合等に、未書き込みの後面側を前面に移動させて書き込むためである。さらに、読取ボタンの入力信号を受信すれば、記録シート9の前面に書き込まれた記録対象のすべてを、スキャナ15で読み取る指示をスキャナ制御部16へ行う。従って、読取ボタンによる入力前には、読み取りたい記録対象を記録シート9の前面に移動させる必要があり、事前に記録シート9の移動量を調整しておく。スキャナ15で読み取った記録対象は、名前を付与されてRAM43に保存される。
【0044】
そして、印刷ボタンの入力信号を受信すると、液晶表示部に表示されRAM43に保存されている記録対象、または記録シート9上の記録対象をプリンタ8で印刷するようプリンタ制御部13へ指示する。従って、印刷ボタンによる入力前には、液晶表示部に表示されている記録対象を選択しておく。これにより、プリンタ8は、指定された記録対象を印刷して出力する。
【0045】
また、投射ボタンの入力信号を受信すると、RAM43に保存した記録対象をプロジェクタ3で投射するよう、プロジェクタ制御部12へ指示する。投射ボタンは、RAM43に保存した記録対象をプロジェクタ3で投射するためのものであり、印刷ボタンによる入力と同様、投射ボタンによる入力前には、液晶表示部に表示されRAM43に保存されているデータから投射する記録対象を選択しておく。プロジェクタ3は、指定された記録対象をスクリーン65へ拡大投射する。なお、再度、投射ボタンによる入力によって、プレゼンテーション資料の投射へ戻ることが可能である。
【0046】
そして、CPU41は、電源ボタンのオフ信号を受信すると、電子黒板1の機能を停止させる。この場合、RAM43に保存されている記録対象のデータは消去され、プロジェクタ3は冷却が完了してから機能を停止する。
【0047】
次に、プロジェクタ3を冷却するために、CPU41が実行するフローについて説明する。図7は、電子黒板の冷却制御の手順を示すフローチャートである。まず、ステップS1において、温度センサ14が測定した光学装置30の温度を示す温度信号を、センサ制御部46を介して受信し、ステップS2へ進む。
【0048】
ステップS2において、受信した温度信号が設定した規定以上の温度を示しているか否かを判断する。規定温度は、光学装置30を長期間機能維持するために、これ以上の温度になることを回避したい温度値である。受信温度が規定温度以下であれば、ステップS6へ進み、一方、規定温度以上であれば、ステップS3へ進む。
【0049】
ステップS3において、排気ファン50の稼動をファン制御部55へ指示する。排気ファン50の稼動により、冷却空気10が吸気口4から上部筐体2aへ導入される。冷却空気10は、支持枠36の導風孔37a,37b,37cを通って、赤色光、緑色光および青色光のそれぞれのLED31、光学変換部32、光学変調部33を冷却する。この場合、各色光のLED31、光学変換部32、光学変調部33が冷却空気10の流れと略直交するように配置されているので、冷却空気10は、それぞれのLED31、光学変換部32、光学変調部33へほぼ同時に当たって、効率よく冷却することが可能である。排気ファン50の稼動を指示後、ステップS4へ進む。
【0050】
ステップS4において、排気ファン50の稼動により、温度センサ14から規定温度以下の温度信号を受信したか否かを判断する。規定温度以下に下がっていなければ、ステップS4において、温度の下がるのを待ち、一方、規定温度以下に下がっていれば、ステップS5へ進む。
【0051】
ステップS5において、光学装置30を含めプロジェクタ3の温度が規定温度以下に下がったと判断して、排気ファン50の停止をファン制御部55へ指示する。指示後、ステップS6へ進む。
【0052】
ステップS6において、機器ボタンの電源ボタンからオフ信号を受信したか否かを判断する。オフ信号を受信していなければ、プロジェクタ3を停止させずにステップS1へ戻り、一方、オフ信号を受信していれば、フローを終了する。この一連の操作により、プロジェクタ3は、映像の投射中、常にほぼ一定の温度を保って、安定した状態で稼動することが可能である。
【0053】
以下、本実施形態の主な効果をまとめて記載する。
【0054】
プロジェクタ3を内蔵する電子黒板1は、LED31から射出される光束39の光軸35が、冷却空気10の流れる方向と略直交するように、光学装置30の光学変換部32および光学変調部33を配置している。よって冷却空気10を筐体2内で略直線状に流すことができ、光学装置30に対して、冷却空気10を同時に当てて効率良く冷却することが可能である。プロジェクタ3は、高温で劣化することなく、長期に渡り機能維持でき、製品の長寿命化が図れる。また、冷却空気10が筐体2内を略直線状に流れる構成で冷却空気10への抵抗が少なくなるため、排気ファン50のみによって、冷却空気10を吸排気することが可能である。また、排気ファン50の回転数を落とすことができ、静粛な運転が行える。また、上記構成とすることにより、電子黒板1内のプロジェクタ3の設置スペースを小型化することができ、電子黒板1を大型化することなくプロジェクタ3を電子黒板1内に設置することができる。
【0055】
プロジェクタ3は、LED31を用いることにより、光源の小型化、低消費電力化、発熱の抑制を図ることができ、電子黒板1は、上部筐体2aの内部にプロジェクタ3をコンパクトに収容することが可能である。従って、上部筐体2aが巨大化して、筐体2の外観バランスを崩すようなことがない。
【0056】
電子黒板1は、温度センサ14を備えており、プロジェクタ3の温度が規定以上に上昇した場合にのみ、排気ファン50を稼動させて、光学装置30等を冷却する。これにより、排気ファン50が必要以上に稼動し続ける無駄を排除して、省電力化を図ることが可能である。
【0057】
また、電子黒板1は、上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0058】
光学装置30は、液晶セル332R,332G,332Bを用いたものに限定されず、マイクロミラーを用いた構成のものであっても良い。図8は、マイクロミラーを用いた光学装置を示す模式図であって、図2に示す吸気口4側から見た図である。この場合、光学装置70は、赤色光、緑色光および青色光の光束39を、光軸85に沿って、交互に射出する光源71と、光束39を均一な照度分布にする導光ロッド72と、導光ロッド72からの光束39をマイクロミラー74へ向け反射する反射ミラー73と、反射ミラー73からの光束39を変調して画像を形成するマイクロミラー74と、画像をスクリーン等へ投射する投射部75と、マイクロミラー74を冷却するためのヒートシンク76と、を有し、支持枠77に収容されている。支持枠77には、光源71を冷却する冷却空気を導く導風孔80aと、ヒートシンク76を冷却する冷却空気を導く導風孔80bと、が設けられている。光軸85は、本実施形態の光軸35と同様、冷却空気の流れと略直角をなしていて、導風孔80を通った冷却空気は、光源71およびヒートシンク76をほぼ同時に、効率的に冷却することが可能である。
【0059】
電子黒板1は、プロジェクタ3を上部筐体2aにすべて収容する構成に限定せず、上部筐体2a、下部筐体2b、側部筐体2cおよび筐体2の後面側へ分散させて配置しても良い。このような分散配置により、電子黒板1は、よりコンパクトにすることが可能となる。
【0060】
また、プロジェクタ3の冷却において、プロジェクタ3の構成要素が直線状に配置されていると、冷却空気10の流れがスムーズであるため、冷却空気10の吸排気は、排気ファン50のみでも十分であるが、排気ファン50に加え、光学装置30の吸気口4側に吸気ファン等を追加設置した構成であっても良い。より多くの冷却空気10を取り込むことができ、冷却効果を高められる。また、排気ファン50を設置せず吸気ファンのみを配置した構成でも良い。
【0061】
光学装置30の光学変換部32および光学変調部33は、上部筐体2aの長手方向と略直交する同一面上に配置されているが、この配置に限定されず、上部筐体2aの長手方向と平行な同一面上に配置されていても良い。この場合、ファンを追加して冷却空気10を上下方向に流し、光学変換部32および光学変調部33に対して、略直交して流れる冷却空気10を供給して冷却することにより、同等の効果を得ることができる。
【0062】
プロジェクタ3は、電子黒板1の筐体2内に収容される構成ではなく、本実施形態のようにプロジェクタを収容した別収容体を、電子黒板1の筐体2に取り付ける構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態の電子黒板の外観を示す斜視図。
【図2】電子黒板に搭載されたプロジェクタの概構成を示す斜視図。
【図3】液晶パネルを用いた光学装置の詳細な構成を示す模式図。
【図4】電子黒板の記録シートの構成を示す斜視図。
【図5】電子黒板の制御部を主に示すブロック図。
【図6】電子黒板の設置例を示す斜視図。
【図7】電子黒板の冷却制御の手順を示すフローチャート。
【図8】マイクロミラーを用いた光学装置を示す模式図。
【符号の説明】
【0064】
1…電子黒板、2…筐体、3…投射機器としてのプロジェクタ、4…吸気口、5…排気口、6…操作パネル、7…コネクタ部、9…記録シート、10…冷却空気、12…プロジェクタ制御部、14…温度センサ、15…スキャナ、16…スキャナ制御部、17…制御基板部、18…電源部、20…シート搬送部、25…搬送制御部、30…光学装置、31…光源としてのLED、32…光学変換部、33…光学変調部、34…投射部、35…光軸、36…支持枠、37a,37b,37c…導風孔、39…光束、40…制御部、44…インターフェース、45…パネル制御部、46…センサ制御部、50…冷却部としての排気ファン、55…ファン制御部、60…プレゼンテーションルーム、65…スクリーン、321R,321G,321B…偏光変換部、322R,322G,322B…ロッドインテグレータ、331R,331G,331B…入射偏光板、332R,332G,332B…液晶セル、333R,333G,333B…出射偏光板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に保持され記録対象が描かれる記録シートと、
光源および該光源から射出された光束を画像信号に応じて変調して投射するための光学装置と、を有する投射機器と、
前記投射機器を冷却する冷却空気を流動させる冷却部と、を備え、
前記光学装置は、前記光束の光軸が前記冷却空気の流動方向と略直交するように配置されていることを特徴とする電子黒板。
【請求項2】
請求項1に記載の電子黒板において、
温度センサをさらに備え、
前記投射機器の温度が設定温度以上の場合には、前記冷却部を稼動させ、前記投射機器の温度が前記設定温度以下の場合には、前記冷却部を停止させることを特徴とする電子黒板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子黒板において、
前記投射機器は、前記記録シートを保持する筐体の内部に収容されていることを特徴とする電子黒板。
【請求項4】
請求項3に記載の電子黒板において、
前記冷却空気は、前記投射機器が収容された前記筐体の一端側から吸入され、前記筐体内を略直線状に流れて前記投射機器を冷却後、前記筐体の他端側から排出されることを特徴とする電子黒板。
【請求項5】
請求項3に記載の電子黒板において、
前記冷却部は、前記他端側にのみ設けられたファンであることを特徴とする電子黒板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−311814(P2008−311814A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155982(P2007−155982)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】