説明

電極の評価方法

【課題】電極合材層中の結着材の分布を煩雑な手段を用いて調べることなく、迅速かつ簡易に電極合材層中の結着材の偏析の程度を評価する方法を提供すること。
【解決手段】本発明によって提供される電極の評価方法は、評価対象である電極84Aの電極合材層90Aを電極集電体82Aから剥離することによって、該電極集電体と該電極合材層との界面における界面剥離強度Aを測定すること、評価対象である電極の電極合材層の一部をその周囲の該電極合材層から破断するようにして電極集電体から剥離することによって、該電極集電体と該電極合材層との界面における界面剥離強度及び該電極合材層の破断強度を包含する膜強度Bを測定すること、界面剥離強度Aと前記膜強度Bとの強度比A/Bを求め、該強度比A/Bから上記評価対象である電極合材層中の結着材の偏析の程度を推定すること、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池その他の電池に備えられる電極の評価方法に関し、結着材(バインダ)を含む電極の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池その他の電池(典型的には二次電池)は、例えば、電気を駆動源として利用する車両に搭載される電源、或いはパソコンや携帯端末その他の電気製品等に用いられる電源として重要性が高まっている。特に軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましい。
【0003】
典型的な構成のリチウムイオン二次電池では、導電性部材(電極集電体)の上にリチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得る物質(電極活物質)を主体とする電極材料が層状に形成された構成(以下、かかる層状形成物を「電極合材層」という。)の電極を備える。かかる電極では、典型的には、電極活物質と結着材(バインダ)等とを適当な溶媒(例えば水)に分散させて混練したペースト状の組成物(ペースト状組成物にはスラリー状組成物及びインク状組成物が包含される。)を調製し、これを電極集電体上に塗布して乾燥することにより該集電体上に電極合材層が形成されている。
ここで、電池の組み立ての際や充放電の際等に電極合材層が電極集電体から剥がれてしまわないように、電極集電体と電極合材層との間には十分な剥離強度(密着力)が必要とされる。電極合材層と電極集電体との間の剥離強度(密着力)の測定に関する従来技術として特許文献1から4が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−287936号公報
【特許文献2】特開2010−211975号公報
【特許文献3】特開2008−103098号公報
【特許文献4】特開2006−107780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電極集電体上に塗布されたペースト状の組成物を乾燥して電極合材層を形成する際、組成物の表面から該組成物中の溶媒が蒸発するため、溶媒の対流によって該組成物に含まれる結着材が移動して組成物の表面に結着材が偏析(マイグレーション)してしまう場合がある。電極合材層の表面側に結着材が偏析してしまうと、該電極合材層の表面側の強度が集電体側の強度に比べて高くなる。このため、電極合材層と電極集電体との間に十分な剥離強度が認められる場合であっても、電極合材層に外力が加わった際に該電極合材層の強度のより弱い部分である電極集電体側から電極合材層が剥がれてしまう虞がある。従って、製造対象の電池における電極合材層の電極集電体からの剥がれにくさ(即ち剥離強度)を正しく把握することが重要である。このことに関し電極合材層と電極集電体との間の剥離強度を測定するだけでは十分ではない。即ち、当該剥離強度は電極合材層中の結着材の分布(結着材の偏析の有無)に影響を受けているからである。
ここで、上記特許文献1に記載の技術では、電極合材層中の結着材をオスミウム酸で染色することによって結着材の分布を評価しているが、分布を測定するのに多大な時間と費用を要するという問題があった。また、その他の従来技術として電極合材層中の結着材を臭素で染色して結着材の分布を評価する方法もあるが、かかる方法も上記方法と同様の問題を抱えると共に、使用する結着材によっては染色することができないものがあり、かかる場合には結着材の分布を評価することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来の課題を解決すべく創出されたものであり、その目的は、電極合材層中の結着材の分布を上記臭素染色等のような煩雑な手段を用いることなく、迅速かつ簡易に電極合材層中の結着材の偏析の程度を評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現すべく、本発明により、少なくとも電極活物質と結着材とを含む電極合材層が電極集電体上に形成された電極における該電極合材層中の該結着材の偏析を評価する方法が提供される。即ちここで開示される電極の評価方法は、上記評価対象である電極の上記電極合材層を上記電極集電体から剥離することによって、該電極集電体と該電極合材層との界面における界面剥離強度Aを測定すること、上記評価対象である電極の上記電極合材層の一部をその周囲の該電極合材層から破断するようにして(引きちぎるようにして)上記電極集電体から剥離することによって、該電極集電体と該電極合材層との界面における界面剥離強度及び該電極合材層の破断強度を包含する膜強度Bを測定すること、上記界面剥離強度Aと上記膜強度Bとの強度比A/Bを求め、該強度比A/Bから上記評価対象である電極合材層中の上記結着材の偏析の程度を推定すること、を包含することを特徴とする。
【0008】
本発明の電極の評価方法では、電極集電体と電極合材層との界面における界面剥離強度Aを測定すると共に、電極合材層の破断強度(即ち電極合材層の厚さ方向の膜強度)を包含する膜強度Bを測定し、これらの強度比A/Bを求める。
膜強度B中の破断強度は電極合材層中の結着材の分布に影響を受ける(即ち、結着材が電極合材層の一部に部分的に集中している(偏析している)場合には、該部分における破断強度は、結着材が電極合材層の全体に亘り良好に分散している場合と比較して大きくなる。)ため、上記のように破断強度を含む膜強度Bを測定して、強度比A/Bを求めることにより合材層中の結着材の偏析の程度を評価できる。
【0009】
ここで開示される評価方法の好適な一態様では、上記強度比A/Bが所定の値以上の場合には良品と判断し、上記強度比A/Bが前記所定の値よりも小さい場合には不良品と判断すること、をさらに包含することを特徴とする。
強度比A/Bが所定の値(目的とする電池の構造、使用する材料等により異なる)以上の場合には、電極合材層中で結着材が良好に分散していると共に電極合材層と電極集電体との間の界面剥離強度と破断強度との強度差が小さいと判断される。即ち、上記条件を満たす電極は、電極集電体と電極合材層との間で十分な密着力を備えており適当な破断強度を備えているため剥がれにくい電極となり得る。
【0010】
ここで開示される評価方法の好適な他の一態様では、上記界面剥離強度Aは、上記電極合材層の縁部から剥離角度90度にて上記電極合材層を上記電極集電体から剥離することによって測定し、且つ、上記膜強度Bは、上記電極合材層の縁部を除く中央部分から剥離強度90度にて上記電極合材層の一部をその周囲の該電極合材層から破断する(引きちぎる)ようにして上記電極集電体から剥離することによって測定することを特徴とする。
かかる構成によると、界面剥離強度A及び膜強度Bを迅速且つ簡易に測定することができる。
【0011】
ここで開示される評価方法の好適な他の一態様では、上記界面剥離強度Aは、予め上記電極合材層の一部を該電極合材層の他の部分から切断しておき剥離角度180度にて該電極合材層の一部を上記電極集電体から剥離することによって測定し、且つ、上記膜強度Bは、上記電極合材層の縁部を除く中央部分から剥離強度180度にて上記電極合材層の一部をその周囲の該電極合材層から破断する(引きちぎる)ようにして上記電極集電体から剥離することによって測定することを特徴とする。
かかる構成によると、界面剥離強度A及び膜強度Bをより短時間で測定することができる。
【0012】
ここで開示される評価方法の好適な他の一態様では、上記界面強度A及び上記膜強度Bを測定する際に、上記電極合材層の剥離する部分の表面に予め粘着テープを貼り付けておくことを特徴とする。
かかる構成によると、上記強度を測定する際に粘着テープと共に電極合材層を電極集電体から剥離するため、電極合材層の意図しない部分が破断されるという不具合を防止することができると共に電極合材層の剥離が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外形を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1中のII‐II線に沿う断面図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係る電極の評価方法において界面剥離強度Aを測定する装置の構造を模式的に示す斜視図である。
【図3B】図3Aの一部を拡大して示す斜視図である。
【図4A】本発明の一実施形態に係る電極の評価方法において膜強度Bを測定する装置の構造を模式的に示す斜視図である。
【図4B】図4Aの一部を拡大して示す斜視図である。
【図5A】本発明の他の一実施形態に係る電極の評価方法において界面剥離強度Aを測定する装置の構造を模式的に示す斜視図である。
【図5B】図5A中の5B−5B線に沿う断面図である。
【図5C】電極合材層を電極集電体から剥離した状態を模式的に示す断面図である。
【図6A】本発明の他の一実施形態に係る電極の評価方法において膜強度Bを測定する装置の構造を模式的に示す斜視図である。
【図6B】図6A中の6B−6B線に沿う断面図である。
【図6C】電極合材層を電極集電体から剥離した状態を模式的に示す断面図である。
【図7】臭素染色後の例1に係る負極合材層の状態を示す断面SEM画像である。
【図8】臭素染色後の例2に係る負極合材層の状態を示す断面SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事項は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0015】
ここで開示される電極の評価方法では、評価対象である電極の上記界面剥離強度Aと上記膜強度Bとを測定して、かかる強度比A/Bから電極合材層中の結着材の偏析の程度を推定することを包含する。
【0016】
以下、上記界面剥離強度A及び膜強度Bを求めるために採用し得る手順の一好適例(第1実施形態)を図3Aから図4Bを参照しつつ説明する。なお、以下の説明では電極と記載している通り、本発明の実施に当たっては正極及び負極のいずれにおいても適応することができる。即ち、以下の説明を正極に適応する場合には以下の説明中の電極を正極と読み替えることができ、負極に適応する場合には負極と読み替えることができる。好ましい一形態として、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の比較的偏析しやすい結着材を含むリチウムイオン二次電池用の負極に対して本発明の評価方法を適応することができる。
【0017】
図3A及び図4Aに示すように、本実施形態に係る90度剥離強度測定器110は、大まかに言って、評価対象である電極84(84A)を載置する載置台120と、電極84(84A)の電極合材層90(90A)を固定する引張冶具(例えばクランプ)130とを備えている。引張冶具130は、引張速度の調整が可能であり、載置台120に対して垂直方向(図3A及び図4Aの矢印X1及びX2の方向)に昇降移動が可能に構成されている。また、引張冶具130には、電極合材層90(90A)を電極集電体82(82A)から剥離する際の剥離力を計測可能な計測器140が取り付けられている。載置台120は、水平方向(図3A及び図4Aの矢印Y1及びY2の方向)に移動可能に構成されている。電極合材層90(90A)を電極集電体82(82A)から(破断するように)剥離する際に、電極合材層90(90A)と電極集電体82(82A)との界面が引張冶具130の移動方向(図3A及び図4Aの矢印X1の方向)に対して常に90度の角度(剥離角度)に保たれるように、引張冶具130と載置台120とは連動して移動する。引張冶具130と載置台120とはコード150によって連結されており、かかるコード150によって引張冶具130の垂直方向の移動(図3A及び図4Aの矢印X1の方向)と載置台120の水平方向の移動(図3A及び図4Aの矢印Y1の方向)とが連動し、上記剥離角度が90度の一定に保たれる。
【0018】
まず、上記界面剥離強度Aの測定方法について説明する。
図3Aに示すように、載置台120の上に評価対象である電極84を載置する。このとき、載置台120から電極84が動かないように電極84を両面粘着テープ160を介して載置台120に固定する。なお、載置台120に固定する電極84は必要に応じて適当な大きさに切り出してもよい。
図3Aに示すように、長尺状の電極集電体82の両面に形成された電極合材層90のいずれか一方において、電極合材層90の片方の縁部から所定の長さだけ電極合材層90を電極集電体82から剥離する。このとき、電極合材層90と電極集電体82との界面における界面剥離強度Aを測定するため、図3Aに示すように、電極合材層90の縁部から該電極合材層90の幅方向の全体(即ち電極合材層90の一部を破断させない状態で)を電極集電体82から剥離する。そして、電極合材層90及び電極集電体82のうち剥離された部分を引張冶具130に固定する。
引張冶具130を垂直方向(図3Aの矢印X1の方向)に上昇させることによってコード150を介して載置台120も水平方向(図3Aの矢印Y1の方向)に移動し、剥離角度90度を保った状態で電極合材層90を電極集電体82から剥離する。このときに計測器140で測定される剥離力は、図3Bに示すように、電極合材層90と電極集電体82との界面における界面剥離強度Aである。このようにして界面剥離強度Aを測定する。
なお、図3Aに示す例では、下側の電極合材層90を電極集電体82から剥離しているが、上側の電極合材層90を電極集電体82から剥離してもよい。この場合は上側の電極集電体90を引張冶具130に固定して上記界面剥離強度Aを測定するが、測定中に上側の電極合材層90が意図しない部分で破断しないように該電極合材層90の表面に粘着テープを貼り付けることが好ましい。
【0019】
次に、上記膜強度Bの測定方法について説明する。
図4Aに示すように、上記界面剥離強度Aを測定した際に用いた電極84よりも幅方向の長さが長い電極84Aを両面粘着テープ160を介して載置台120上に載置する。なお、電極84,84Aはサイズが異なるのみで使用する材料や組成比は同じである。
長尺状の電極集電体82Aの両面に形成された電極合材層90Aのいずれか一方において、上記界面剥離強度Aを測定した際の電極合材層90と同じ幅方向の長さとなるように電極合材層90Aの一部を電極集電体82Aから剥離する。より具体的には、電極合材層90Aの縁部を除く中央部分から所定の長さだけ電極合材層90Aの一部をその周囲の該電極合材層90Aから破断するようにして(引きちぎるようにして)電極集電体82Aから剥離する。そして、電極合材層90Aのうち剥離された部分を引張冶具130に固定する。膜強度Bを測定する際に、剥離された電極合材層90Aが途中で破断されない(引きちぎられない)ように該剥離させる方の電極合材層90Aの表面に粘着テープ170を貼り付けて該電極合材層90Aと粘着テープ170とを引張冶具130に固定することが好ましい。
引張冶具130を垂直方向(図4Aの矢印X1の方向)に上昇させることによってコード150を介して載置台120も水平方向(図4Aの矢印Y1の方向)に移動し、剥離角度90度を保った状態で電極合材層90Aの一部をその周囲の該電極合材層90Aから破断するようにして電極集電体82Aから剥離する。このときに計測器140で測定される剥離力は、図4Bに示すように、電極合材層90Aと電極集電体82Aとの界面における界面剥離強度及び電極合材層90Aの破断強度(即ち電極合材層90Aの厚さ方向の強度)を包含する膜強度Bである。このようにして膜強度Bを測定する。
【0020】
上記の方法により測定された界面剥離強度Aと膜強度Bとの強度比A/Bを求めることによって、該強度比A/Bから評価対象である電極84(84A)の電極合材層90(90A)中の結着材の偏析の程度を推定することができる。上記膜強度Bに包含される電極合材層の破断強度は、電極合材層中の結着材の分布に影響を受ける。
一般に、電極合材層中の結着材は均一に分布(分散)していることが求められ、それを評価するためには上記強度比A/Bの値が1に近いことが望ましい。電極合材層中の結着材が良好に分散している場合には、電極合材層の破断強度は厚さ方向の全体に亘って同程度となり得る。即ち結着材が部分的に偏在していないため破断強度が局所的に強くなることはなく、上記強度比A/Bの値は1に近づく。一方、電極合材層中の結着材が偏析している場合には、結着材が部分的に偏在しているため破断強度が局所的に強くなり、上記強度比A/Bの値は0に近づく。
好ましくは、ここで開示される電極の評価方法では、上記強度比A/Bが所定の値以上の場合には良品と判断し、上記強度比A/Bが上記所定の値よりも小さい場合には不良品と判断すること、をさらに包含する。ここで、上記所定の値は、目的とする電池の構造、使用する材料等により異なるので、所望する電池に応じて適宜設定することができる。
【0021】
ここで開示される電極の評価方法は、従来のように電極合材層中の結着材の分布を臭素染色等のような煩雑な手段を用いて調べる必要がなく、評価対象である電極の上記界面剥離強度A及び上記膜強度Bを測定することによって電極合材層中の結着材の偏析の程度を迅速且つ簡易に推定することができる。さらに、結着材の種類によっては染色できないようなものであっても上記評価方法によれば電極合材層中の結着材の偏析の程度を推定することが可能である。
【0022】
ここで開示される電極の評価方法は、例えば、電極の製造方法(ひいては電池の製造方法)に組み込むことができる。以下、ここで開示される電極を製造する方法の好適な実施形態の一つとして、電極集電体の表面に電極合材層が形成されたリチウムイオン二次電池用電極(負極)を製造する方法を例にして説明するが、本発明の適用対象をかかる電池お及び電極に限定することを意図したものではない。
【0023】
ここで開示されるリチウムイオン二次電池用電極(負極)の製造方法は、組成物塗布工程と、電極合材層形成工程と、電極の評価工程とを包含する。
まず、組成物塗布工程について説明する。組成物塗布工程には、負極活物質(電極活物質)と、結着材と、を少なくとも含むペースト状の組成物を用意すること、及び該用意した組成物を負極集電体(電極集電体)上に塗布することが含まれている。
【0024】
ここで開示されるリチウムイオン二次電池の負極に用いられる負極活物質(電極活物質)としては、例えば、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属複合酸化物(リチウムチタン複合酸化物等)等が例示される。中でも天然黒鉛(もしくは人造黒鉛)を主成分とする負極活物質(典型的には、実質的に天然黒鉛(もしくは人造黒鉛)からなる負極活物質)の使用が好ましい。
【0025】
ここで開示されるリチウムイオン二次電池の負極に用いられる結着材(即ち、組成物用途に用いられる結着材(バインダ))としては、一般的なリチウムイオン二次電池の負極に使用される結着材を適宜採用することができる。例えば、負極合材層を形成するために水系の溶媒を含む組成物を用いる場合には、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリレート(アクリル酸エステル単独重合体または共重合体)等が挙げられる。
また、ここで開示されるリチウムイオン二次電池の負極は必要に応じて増粘材を含有することができる。かかる増粘材としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等が挙げられる。
【0026】
上記負極活物質と結着材と増粘材とを溶媒中で混ぜ合せる(混練)操作は、例えば、適当な混練機(プラネタリーミキサー、ホモディスパー、クレアミックス、フィルミックス等)を用いて行うことができる。特に限定するものではないが、乾燥効率を向上させるために組成物の固形分濃度(不揮発分、即ち負極合材層形成成分の割合。)は、例えば凡そ45質量%以上(典型的には50〜80質量%)であることが好ましい。固形分濃度が上記範囲よりも小さすぎると、組成物が負極集電体上で弾かれてしまい、均一な厚みに塗工できない場合がある。一方、固形分濃度が上記範囲よりも大きすぎると、組成物の取扱性(例えば、該組成物を負極集電体(特に箔状集電体)に塗布する際の塗工性等)が低下しやすくなることがある。
【0027】
上記負極集電体としては、従来のリチウムイオン二次電池の負極に用いられている集電体と同様、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、銅材やニッケル材或いはそれらを主体とする合金材を用いることができる。負極集電体の形状は、リチウムイオン二次電池の形状等に応じて異なり得るため、特に制限はなく、棒状、板状、シート状、箔状、メッシュ状等の種々の形態であり得る。
【0028】
次に、電極(負極)合材層形成工程について説明する。電極合材層形成工程では、電極集電体(負極集電体)上に塗布された組成物を適当な乾燥手段で乾燥させることにより電極集電体(負極集電体)上に電極合材層(負極合材層)を形成することが含まれている。
例えば、組成物が塗布された負極集電体が乾燥炉内を通過することによって、かかる組成物を乾燥させることができる。このときの乾燥温度は、例えば、凡そ50℃〜200℃(例えば凡そ60℃〜160℃)である。乾燥時間は、例えば、凡そ10秒〜120秒(例えば凡そ20秒〜60秒)である。上記組成物から溶媒を除去することによって負極集電体上に負極合材層を形成する。その後、必要に応じて圧縮(プレス)する。これにより、負極集電体と、該負極集電体上に形成された負極合材層とを備える負極を作製することができる。圧縮(プレス)方法としては、従来公知のロールプレス法、平板プレス法等の圧縮方法を採用することができる。
【0029】
次に、電極(負極)の評価工程について説明する。電極の評価工程では、上記のようにして作製された電極(負極)の一部を評価対象の電極とし、上述した電極の評価方法を用いる。即ち、上記評価対象電極について、上記界面剥離強度A及び上記膜強度Bを測定して、強度比A/Bを求める。そして、求めた強度比A/Bを予め設定した所定の値X(Xは、電池の構造等に応じて任意に決定することができる。)と比較して、強度比A/Bが値X以上の場合には上記作製された電極を良品と判断して、値Xよりも小さい場合には上記作製された電極を不良品と判断する。
なお、強度比A/Bを所定の値X以上に調整する方法としては、例えば、組成物塗布工程において使用する結着材の種類、粒径、含有率の変更、電極合材層形成工程における組成物の乾燥条件(例えば、乾燥温度や乾燥時間)の変更等の方法が挙げられる。
【0030】
以下、上記製造方法によって良品と判断された負極を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の一形態を図面を参照しつつ説明するが、本発明をかかる実施形態に限定することを意図したものではない。以下の実施形態では、捲回電極体および電解液を角型形状の電池ケースに収容した構成のリチウムイオン二次電池を例にして説明する。
【0031】
図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10を模式的に示す斜視図である。図2は、図1中のII−II線に沿う断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10は、金属製(樹脂製又はラミネートフィルム製も好適である。)の電池ケース15を備える。このケース(外容器)15は、上端が開放された扁平な直方体状のケース本体30と、その開口部20を塞ぐ蓋体25とを備える。溶接等により蓋体25は、ケース本体30の開口部20を封止している。ケース15の上面(すなわち蓋体25)には、捲回電極体50の正極(正極シート)64と電気的に接続する正極端子60および該電極体の負極(負極シート)74と電気的に接続する負極端子70が設けられている。また、蓋体25には、従来のリチウムイオン二次電池のケースと同様に、電池異常の際にケース15内部で発生したガスをケース15の外部に排出するための安全弁40が設けられている。ケース15の内部には、正極シート64および負極シート74を計二枚のセパレータシート95とともに積層して捲回し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって作製される扁平形状の捲回電極体50及び電解質(例えば非水電解液)が収容されている。
【0032】
ここで開示されるリチウムイオン二次電池の正極(正極シート)64で用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な材料であって、リチウム元素と一種または二種以上の遷移金属元素を含むリチウム含有化合物(例えばリチウム遷移金属複合酸化物)が挙げられる。例えば、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn)、或いは、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3)のような三元系リチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
【0033】
上記導電材としては、例えば、カーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料を用いることができる。カーボン粉末としては、種々のカーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等)、グラファイト粉末等のカーボン粉末を用いることができる。
【0034】
また、上記結着材(バインダ)としては、一般的なリチウムイオン二次電池の正極に使用される結着材と同様のものを適宜採用することができる。水系の溶媒を用いて組成物を調製する場合には、上記負極に使用されるものを適宜採用することができる。また、溶剤系の溶媒を用いて組成物を調製する場合には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等の有機溶媒(非水溶媒)に溶解するポリマー材料を用いることができる。溶剤系の溶媒としては、例えばN−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。
【0035】
上記正極集電体としては、従来のリチウムイオン二次電池の正極に用いられている集電体と同様、導電性の良好な金属からなる導電性部材が好ましく用いられる。例えば、アルミニウム材又はアルミニウム材を主体とする合金材を用いることができる。正極集電体の形状は、上記負極集電体の形状と同様であり得る。
かかる正極を製造する際に、上記負極と同様に本発明に係る電極の評価方法を適用させることで、正極における結着材の偏析の程度を評価することができ、より性能に優れた正極を作製することができる。
【0036】
図2に示すように、捲回電極体50を作成する際に、正極シート64の正極合材層非形成部分(即ち正極合材層66が形成されずに正極集電体62が露出した部分)と負極シート74の負極合材層非形成部分(即ち負極合材層80が形成されずに負極集電体72が露出した部分)とがセパレータシート95の幅方向の両側からそれぞれはみ出すように、正極シート64と負極シート74とを幅方向にややずらして重ね合わせる。その結果、捲回電極体50の捲回方向に対する横方向において、正極シート64および負極シート74の電極合材層非形成部分がそれぞれ捲回コア部分(すなわち正極シート64の正極合材層形成部分と負極シート74の負極合材層形成部分と二枚のセパレータシート95とが密に捲回された部分)から外方にはみ出ている。かかる正極側はみ出し部分に正極端子60を接合して、上記扁平形状に形成された捲回電極体50の正極シート64と正極端子60とを電気的に接続する。同様に負極側はみ出し部分に負極端子70を接合して、負極シート74と負極端子70とを電気的に接続する。なお、正負極端子60,70と正負極集電体62,72とは、例えば、超音波溶接、抵抗溶接等によりそれぞれ接合することができる。
【0037】
上記電解質としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒(有機溶媒)に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選択される一種又は二種以上を用いることができる。また、上記支持塩(支持電解質)としては、例えば、LiPF等のリチウム塩を用いることができる。さらに上記非水電解液に、ジフルオロリン酸塩(LiPO)やリチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)を溶解させてもよい。
また、上記セパレータシートとしては、例えば、樹脂からなる多孔性シート(微多孔質樹脂シート)を好ましく用いることができる。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等の多孔質ポリオレフィン系樹脂シートが好ましい。
【0038】
上述した電極の評価方法では、評価対象である電極の界面剥離強度A及び膜強度Bを剥離角度90度にて測定していたが、界面剥離強度A及び膜強度Bを測定できる限り剥離角度は特に限定されない。以下、第2実施形態として剥離強度180度にて電極を評価する方法について図5Aから図6Cを参照しつつ説明する。
【0039】
図5A及び図6Aに示すように、本実施形態に係る180度剥離強度測定器310は、大まかに言って、評価対象である電極284を載置する載置台320と、電極284の電極合材層290を固定する引張冶具330とを備えている。引張冶具330は、引張速度の調整が可能であり、載置台320に対して垂直方向(図5A及び図6Aの矢印X1及びX2の方向)に昇降移動が可能に構成されている。また、引張冶具330の下端部には、電極合材層290の表面に接着(固着)可能な両面粘着テープ360が取り付けられており、引張冶具330の上部には、電極合材層290を電極集電体282から剥離する際の剥離力を計測可能な計測器340が取り付けられている。電極合材層290を載置台320に対して垂直方向(図5A及び図6Aの矢印X1の方向)に引張上げることによって、該電極合材層290を電極集電体282から(破断するように)剥離する際に、電極284自体が移動しないように載置台320上には電極284を固定するための両面粘着テープ370が配置されている。
【0040】
まず、第2実施形態に係る電極の評価方法の上記界面剥離強度Aの測定方法について説明する。
図5Aに示すように、評価対象である電極284を両面粘着テープ370を介して載置台320の上に載置(固定)する。なお、載置台320に固定する電極284は必要に応じて適当な大きさに切り出してもよい。
図5Aに示すように、長尺状の電極集電体282の両面に形成された電極合材層290のうち上側に形成された電極合材層290の一部を、引張冶具330に取り付けられた両面粘着テープ360の横断面形状(典型的には円形状)と相似形状(典型的には同一の断面積)になるように切り欠いて(切断して)測定部分292を形成する。そして、図5A及び図5Bに示すように、電極合材層290の測定部分292を引張冶具330に取り付けられた両面粘着テープ360に固定する。なお、測定部分292を形成する際に、該測定部分292の周囲の電極合材層290を上記のように切り欠く必要は必ずしもなく、少なくとも切り込みを入れて該測定部分292の周囲の電極合材層290と離間した状態であればよい。そして、引張冶具330を垂直方向(図5Aの矢印X1の方向)に上昇させることによって剥離角度180度にて電極合材層290の測定部分292を電極集電体282から剥離する(図5C参照)。このときに計測器340で測定される剥離力は、図5Cに示すように、電極合材層290(測定部分292)と電極集電体282との界面における界面剥離強度Aである。このようにして界面剥離強度Aを測定する。
【0041】
次に、第2実施形態に係る電極の評価方法の上記膜強度Bの測定方法について説明する。
図6Aに示すように、上記界面剥離強度Aを測定したときと同様に、評価対象である電極284を両面粘着テープ370を介して載置台320の上に載置(固定)する。次いで、図6A及び図6Bに示すように、引張冶具330に取り付けられた両面粘着テープ360に電極合材層290の縁部を除く中央部分を固定する。そして、引張冶具330を垂直方向(図6Aの矢印X1の方向)に上昇させることによって剥離角度180度にて電極合材層290の一部をその周囲の該電極合材層290から破断するようにして(引きちぎるようにして)電極集電体282から剥離する(図6C参照)。このときに計測器340で測定される剥離力は、図6Cに示すように、電極合材層290と電極集電体282との界面における界面剥離強度及び電極合材層290の破断強度(即ち電極合材層290の厚さ方向の強度)を包含する膜強度Bである。このようにして膜強度Bを測定する。
本実施形態に係る電極の評価方法によると、剥離角度90度で測定する場合に比べてより短時間で界面剥離強度A及び膜強度Bを測定することができ、評価対象である電極合材層中の結着材の偏析の程度を推定することができる。
【0042】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0043】
[負極シートの作製]
<例1>
負極活物質としての天然黒鉛と、結着材としてのSBRと、増粘材としてのCMCとの質量比が98:1:1となるように秤量し、これら材料を水に分散させてペースト状の組成物を調製した。かかる組成物を厚さ10μmの負極集電体(銅箔)上にダイコーターを用いて片面当たり10mg/cm(固形分基準)となるように塗布した後に、該組成物を乾燥温度60℃、乾燥時間25秒(搬送速度0.2m/s)で乾燥することによって負極集電体上に負極合材層を備える例1に係る負極シートを作製した。
<例2>
負極活物質としての天然黒鉛と、結着材としてのSBRと、増粘材としてのCMCとの質量比が98:1:1となるように秤量し、これら材料を水に分散させてペースト状の組成物を調製した。かかる組成物を厚さ10μmの負極集電体(銅箔)上にダイコーターを用いて片面当たり10mg/cm(固形分基準)となるように塗布した後に、該組成物を乾燥温度160℃、乾燥時間10秒(搬送速度0.2m/s)で乾燥することによって負極集電体上に負極合材層を備える例2に係る負極シートを作製した。
【0044】
[電極評価試験]
上記作製した例1及び例2に係る負極シートに対して、上述した第1実施形態の電極の評価方法に準じて界面剥離強度A及び膜強度Bを測定し、これらから強度比A/Bを求めた。測定結果を表1に示す。また、負極合材層と負極集電体との間に剥がれが生じているか否かを確認した。
また、上記作製した例1及び例2に係る負極シートに含まれる結着材を臭素で染色して、負極合材層中の結着材の偏析の程度を確認した。即ち、臭素で染色した後の各負極合材層の断面SEM(走査型電子顕微鏡)画像において、それぞれの負極合材層を厚み方向に二分(典型的には図7及び図8中の一点鎖線で示すように厚み方向に二等分)したときの負極集電体に近接する下層部における結着材の数N1と、厚み方向に二分したときの負極集電体よりも対極側に離れた上層部における結着材の数N2とを測定して、結着材の比(偏析指数)N1/N2を求めた。測定結果を表1に示す。なお、図7及び図8は臭素染色後の負極合材層の状態を示す断面SEM画像である。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、例2に係る負極シートは例1に係る負極シートよりも界面剥離強度Aが大きいにも関わらず負極集電体と負極合材層との間に剥がれが生じていることが確認された。また、図7及び図8の断面SEM画像より、偏析指数N1/N2(結着材の比)は例1に係る負極シートの方が例2に係る負極シートよりも大きく、例1に係る負極シートでは負極合材層中で結着材が良好に分散しているが、例2に係る負極シートでは負極合材層の表面側に結着材が偏析していることが確認された。これらの結果より、界面剥離強度Aが相対的に大きくとも負極合材層中で結着材が偏析している場合には負極集電体と負極合材層との間に剥がれが生じてしまうことが確認された。
また、強度比A/Bは例1に係る負極シートの方が例2に係る負極シートよりも大きく、強度比A/Bと偏析指数N1/N2とは同様の傾向を示していることから、本発明に係る電極の評価方法は、結着材を染色して断面SEM画像から偏析指数を求める方法に代わる手法として使用可能であることが確認された。
【0047】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る電極の評価方法は、電極合材層中の結着材の偏析の程度を推定することができ、該評価方法を用いて良品と判断された電極は、電極集電体と電極合材層との間の剥離強度(密着力)が高く電極として安定している。このため、該電極を含む電池(例えばリチウムイオン二次電池)は、特に車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料自動車のような電動機を備える自動車)に搭載されるモーター(電動機)用電源として好適に使用し得る。
【符号の説明】
【0049】
10 リチウムイオン二次電池
15 電池ケース
20 開口部
25 蓋体
30 ケース本体
40 安全弁
50 捲回電極体
60 正極端子
62 正極集電体
64 正極(正極シート)
66 正極合材層
70 負極端子
72 負極集電体
74 負極(負極シート)
80 負極合材層
82,82A 電極集電体
84,84A 電極
90,90A 電極合材層
95 セパレータシート
110 90度剥離強度測定器
120 載置台
130 引張冶具(クランプ)
140 計測器
150 コード
160 両面粘着テープ
170 粘着テープ
282 電極集電体
284 電極
290 電極合材層
292 測定部分
310 180度剥離強度測定器
320 載置台
330 引張冶具
340 計測器
360,370 両面粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも電極活物質と結着材とを含む電極合材層が電極集電体上に形成された電極における該電極合材層中の該結着材の偏析を評価する方法であって、
前記評価対象である電極の前記電極合材層を前記電極集電体から剥離することによって、該電極集電体と該電極合材層との界面における界面剥離強度Aを測定すること、
前記評価対象である電極の前記電極合材層の一部をその周囲の該電極合材層から破断するようにして前記電極集電体から剥離することによって、該電極集電体と該電極合材層との界面における界面剥離強度及び該電極合材層の破断強度を包含する膜強度Bを測定すること、
前記界面剥離強度Aと前記膜強度Bとの強度比A/Bを求め、該強度比A/Bから前記評価対象である電極合材層中の前記結着材の偏析の程度を推定すること、
を包含することを特徴とする、電極の評価方法。
【請求項2】
前記強度比A/Bが所定の値以上の場合には良品と判断し、前記強度比A/Bが前記所定の値よりも小さい場合には不良品と判断すること、をさらに包含することを特徴とする請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記界面剥離強度Aは、前記電極合材層の縁部から剥離角度90度にて前記電極合材層を前記電極集電体から剥離することによって測定し、且つ、
前記膜強度Bは、前記電極合材層の縁部を除く中央部分から剥離強度90度にて前記電極合材層の一部をその周囲の該電極合材層から破断するようにして前記電極集電体から剥離することによって測定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項4】
前記界面剥離強度Aは、予め前記電極合材層の一部を該電極合材層の他の部分から切断しておき剥離角度180度にて該電極合材層の一部を前記電極集電体から剥離することによって測定し、且つ、
前記膜強度Bは、前記電極合材層の縁部を除く中央部分から剥離強度180度にて前記電極合材層の一部をその周囲の該電極合材層から破断するようにして前記電極集電体から剥離することによって測定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の評価方法。
【請求項5】
前記界面強度A及び前記膜強度Bを測定する際に、前記電極合材層の剥離する部分の表面に予め粘着テープを貼り付けておくことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−62139(P2013−62139A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199757(P2011−199757)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】