説明

電極カテーテル

【課題】操作性を向上させることが可能であると共に、カテーテル先端部の耐トルク性を向上させることが可能な電極カテーテルを提供する。
【解決手段】電極カテーテル10には、導線用孔322を有するカテーテル本体部30と、電極42が外周側に設けられ、内筒部41aにカテーテル本体部30の延伸方向から離れる向きに向かって延伸する部分を有するコアワイヤ62を挿通させているカテーテル先端部40と、を有し、コアワイヤ62の基端側にはカテーテル先端部40から突出する突出部分62aが存在し、この露出部分62aには回転防止部62bが存在し、カテーテル本体部30とカテーテル先端部40の間にはカテーテル本体部30に対しての回転が規制されている係合部材52が存在し、係合部材52には、回転防止部62bが差し込まれると共に回転防止部62bに当接してコアワイヤ62の回転を規制する切欠部が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓における微弱な電位を直接を検出するために、電極カテーテルが用いられている。この電極カテーテルの中には、たとえば特許文献1に示すように、先端側がループ形状に設けられているタイプが存在する。かかる電極カテーテルにおいては、先端側のループ形状(以下、カテーテル先端部とする。)は、形状記憶合金を材質とするコアワイヤを内部に挿通させることによって維持されている。なお、特許文献1においては、このコアワイヤは、ループ形状のカテーテル先端部から続く直線状のカテーテル本体部の内孔まで延伸したものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4545384号公報(段落0019、図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているように、コアワイヤがカテーテル本体部の内孔まで延伸する等のように長く設けられている場合には、当該コアワイヤが長くなる分だけ、カテーテル先端部に隣接する曲げ領域が曲がり難くなる、という問題がある。そのような問題を解消するためには、コアワイヤを極力短くすることが望ましい。すなわち、コアワイヤがあまり曲げ領域に差し掛からない構成とすることが望ましい。
【0005】
しかしながら、上述のようにコアワイヤが短くなると、次のような問題が生じる。すなわち、短いコアワイヤを用いて電極カテーテルを製作する場合、カテーテル先端部のチューブにコアワイヤを挿入し、その後にそのコアワイヤの基端側をカテーテル本体部のチューブに挿入するが、その挿入に際しては、コアワイヤをチューブに対して接着剤を用いて接合している。
【0006】
しかしながら、チューブは樹脂を材質としていて、当該樹脂製のチューブは、形状記憶合金を材質とするコアワイヤに対する接着性が良好ではない。そのため、カテーテル先端部を回転させるべく回転トルクを付与すると、チューブに対する接着状態からコアワイヤが剥がれてしまう。そのような剥がれが発生すると、カテーテル先端部を回転させるためのトルクを与えても所期の回転は実現されない。また、そのような剥がれが発生すると、ループ状のカテーテル先端部がカテーテル本体部から脱落してしまう、といった虞もある。
【0007】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、その目的とするところは、操作性を向上させることが可能であると共に、カテーテル先端部の耐トルク性を向上させることが可能な電極カテーテルを提供しよう、とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の電極カテーテルは、少なくとも一つの電極を備え、電極に接続された導線を挿通させる内孔を有するカテーテル先端部と、カテーテル先端部の内孔に挿通され、他の部分よりも拡径されて形成された回転防止部がその基端側に設けられているコアワイヤと、カテーテル先端部にその先端が接続され、導線を挿通させる内孔を有し、前記回転防止部が差し込まれたときに回転防止部に当接する形状の切欠部を有する係合部材と、係合部材の基端に接続固定され、導線を挿通させる内孔を有するカテーテル本体部とを備える、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電極カテーテルは、上述の発明に加えて更に、回転防止部は、コアワイヤの他の部分の直径よりも扁平に拡径している拡幅部であり、切欠部には、延伸方向に沿って係合部材を貫通すると共に拡幅部を挿通させることが可能な第1扁平孔部と、延伸方向に沿うと共に係合部材の中途部分まで形成されていて拡幅部を差し込むことが可能な第2扁平孔部とが設けられていて、第1扁平孔部の拡径方向と第2扁平孔部の拡径方向とは、係合部材の周方向における角度が異なる配置となっている、ことが好ましい。
【0010】
また、本発明の電極カテーテルは、上述の発明に加えて更に、カテーテル先端部は、カテーテル本体部の延伸方向から離れる向きに向かって延伸する部分を有する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、電極カテーテルにおいて、操作性を向上させることが可能となる。また、カテーテル先端部の耐トルク性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電極カテーテルの全体構成を示す斜視図である。
【図2】カテーテル先端部および係合キャップ体を分解して拡大した状態示す斜視図である。
【図3】カテーテル本体の構成を示す縦断面図である。
【図4】カテーテル先端部の構成を示す部分的な横断面図である。
【図5】アンカー部材の構成を示し、(A)はアンカー部材の先端側から見た状態を示す斜視図であり、(B)はアンカー部材の基端側から見た状態を示す斜視図である。
【図6】アンカー部材の構成を示し、(A)はアンカー部材の先端側から見た状態を示す平面図であり、(B)はアンカー部材の基端側から見た状態を示す底面図である。
【図7】アンカー部材の構成を示し、(A)は図6における先端側の横断面図であり(図6におけるA−A断面図)、(B)は図6における基端側の横断面図である(図6におけるB−B断面図)。
【図8】コアワイヤの拡幅部付近の形状を示す部分的な斜視図である。
【図9】外周キャップの構成を示し、(A)は外周キャップの側面図であり、(B)は外周キャップ先端側の横断面図であり(図9(A)のI−I断面図)、(C)は外周キャップ先端側の縦断面図であり(図9(A)のII−II断面図)、(D)は外周キャップ基端側の縦断面図である(図9(A)のIII−III断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る、電極カテーテル10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、図1の電極カテーテル10の延伸方向において操作ハンドル部20が位置する側を基端側、それとは逆のカテーテル先端部40が位置する側を先端側として説明する。
【0014】
<構成について>
図1は、電極カテーテル10の全体構成を示す図である。図1に示すように、電極カテーテル10は、操作ハンドル部20と、カテーテル本体部30と、カテーテル先端部40と、係合キャップ体50と、を有している。
【0015】
操作ハンドル部20は、カテーテル本体部30の基端側に接続されている。この操作ハンドル部20は、使用者が把持する把持部21を具備していて、この把持部21に対して取手部22を出入可能としている。また、カテーテル本体部30の内部には、NiTi合金等で作られた金属線からなるプルワイヤ60が引き通されている。このプルワイヤ60の先端は、カテーテル先端部40側に固定されており、基端は把持部21の内部に固定されている。そして、カテーテル本体部30の基端が取手部22に固定されている。そのため、取手部22を把持部21に対して出入させると、カテーテル先端部40が湾曲する。
【0016】
図2に示すように、カテーテル本体部30は、アウターチューブ31と、マルチルーメンチューブ32とを具備している。アウターチューブ31は、マルチルーメンチューブ32を覆う外筒部分である。このアウターチューブ31には、図1に示すように、硬質チューブ部311と、軟質チューブ部312とが設けられている。硬質チューブ部311は、アウターチューブのうち軟質チューブ部312よりも基端側に位置する部分であり、軟質チューブ部312は硬質チューブ部311よりも先端側に位置する部分である。軟質チューブ部の硬度は、軟質チューブ部よりも軟らかく設けられている。すなわち、軟質チューブ部312は、操作ハンドル部20の操作に伴って柔軟に湾曲する程度に、硬質チューブ部311よりも柔軟に設けられている。
【0017】
また、マルチルーメンチューブ32は、上述したアウターチューブ31の内部空間に位置するチューブ状の部材である。このマルチルーメンチューブ32には、プルワイヤ用孔321と、導線用孔322とが設けられている。図3に示すように、プルワイヤ用孔321は、プルワイヤ60が挿通される孔部分であり、マルチルーメンチューブ32の径方向の外方側に位置している。また、導線用孔322は、プルワイヤ用孔321と同じく径方向の外側に位置している。この導線用孔322には、導線61が挿通され、請求項でいうカテーテル本体部の内孔に対応する。本実施の形態では、プルワイヤ用孔は2つ設けられていて、導線用孔322は4つ設けられている。それらの孔は、いずれも他の各孔に対して非連通に設けられている。ただし、プルワイヤ用孔321および導線用孔322の個数およびその形状は、図3以外のものに適宜変更可能である。
【0018】
なお、アウターチューブ31の材質は、ポリアミド系樹脂を材質として形成されている。ポリアミド系樹脂とは、例えば、ナイロン6、ナイロン64、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、N−アルコキシメチル変性ナイロン、ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸縮重合体、メタキシロイルジアミン−アジピン酸縮重合体のような各種脂肪族または芳香族ポリアミドをハードセグメントとし、ポリエステル、ポリエーテル等のポリマーをソフトセグメントとするブロック共重合体が代表的であり、その他、前記ポリアミドと柔軟性に富む樹脂とのポリマーアロイ(ポリマーブレンド、グラフト重合、ランダム重合等)や、前記ポリアミドを可塑剤等で軟質化したもの、さらには、これらの混合物をも含む概念である。ただし、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドのうち、脂肪族ポリアミド(ナイロン系樹脂)であることが好ましい。
【0019】
アウターチューブ31として好適に用いられる材料としては、その加工性の観点から例えば「PEBAX」(ARKEMA社の登録商標)が挙げられる。
【0020】
また、マルチルーメンチューブ32の材質も、上述のアウターチューブ31と同様としても良い。ただし、マルチルーメンチューブ32がアウターチューブ31よりも硬くなる場合には、カテーテル本体部30の挿入性が悪化するため、マルチルーメンチューブ32はアウターチューブ31よりも硬度が低い材質から形成されることが望ましい。また、マルチルーメンチューブ32においては、プルワイヤ用孔321および/または導線用孔322の周囲は、マルチルーメンチューブ32の他の部分と別部材から形成されていても良い。そのような別部材としては、マルチルーメンチューブ32の他の部分よりも摩擦の小さな樹脂(たとえばフッ素樹脂)を材質としても良い。
【0021】
また、導線用孔322には、所定の本数の導線61が纏められた導線群61Aが挿通される。この導線群61Aは、操作ハンドル部20から延伸し、その導線群61Aの先端側は、カテーテル先端部40に存在する電極42,43にそれぞれ電気的に接続されている。
【0022】
図2に示すように、カテーテル先端部40は、カテーテル本体部30の中心軸から略垂直な仮想平面上に広がるループ形状を有している。換言すれば、電極カテーテル10は、請求項でいう「カテーテル本体部の延伸方向から離れる向きに向かって延伸する部分」を有している。このようなループ形状は、血管内部で周方向の電位を測定するときに好適な形状といえる。
【0023】
図4は、カテーテル先端部40を直線状に伸ばした状態における横断面図である。この図4に示すように、カテーテル先端部40は、チューブ部材41と、リング状電極42と、先端電極43とを有している。チューブ部材41は中空状に設けられていて、その中空状の部分である内筒部41a(請求項でいうカテーテル先端部の内孔に相当する)に導線61及びコアワイヤ62(後述する)が挿通される。なお、チューブ部材41の材質は、上述のアウターチューブ31と同様である。
【0024】
このチューブ部材41の外筒部41bには、その延伸方向に沿って所定の間隔毎に、リング状電極42が取り付けられている。リング状電極42は、請求項でいう電極に対応する。このリング状電極42は、外筒部41bに対して例えば接着剤を介して固定されている。より詳細には、外筒部41bには、その外周面から中心側に向かって窪む凹部41cが設けられていて、この凹部41cにリング状電極42が接着剤を介して固定されている。また、それぞれのリング状電極42には、いずれかの導線61の先端部が電気的に接続されている。なお、図2においては、リング状電極42は7個設けられているが、そのリング状電極42の個数はいくつであっても良い。このリング状電極42は、導電性を有しつつも化学的に安定な材質から形成されている。そのような材質としては、たとえば白金、金、イリジウムまたはこれらの合金等が挙げられる。
【0025】
また、先端電極43は、カテーテル先端部40の最も先端側に取り付けられている電極であり、その外観は少なくとも半球(半球以上全球未満)を成すように設けられている。このような形状を先端電極43が奏していることにより、当該先端電極43が血管を損傷するのを防止可能としている。図4に示すように、この先端電極43には、脚部43aと球体部43bとが設けられていて、脚部43aが内筒部41aに挿入された状態で先端電極43がチューブ部材41の先端側に取り付けられている。また、球体部43bには内部の空洞部分である挿通穴43b1が設けられている。
【0026】
図2に示すように、カテーテル先端部40の基端側には、係合キャップ体50が取り付けられる。この係合キャップ体50(請求項における「係合部材」に相当)には、外周キャップ51と、アンカー部材52とが、設けられている。また、図2に示すような先端側のループ形状を維持するために、カテーテル先端部40の内部には、金属線からなるコアワイヤ62が設けられている。外周キャップ51は、アンカー部材52を覆う筒状の部材である。
【0027】
図9(A)に示すように、外周キャップ51は、先端に向かって縮径するように形成された先端縮径部51aと、アウターチューブ31の外径と略等しい外径を有する筒状部51bとを有している。なお、先端縮径部51aの先端の内径は、先端に行くに連れて縮径しており(図9(B)参照)、チューブ部材41の外径と略一致する。
【0028】
この外周キャップ51の内部形状は、先端縮径部51aの縦断面が円形(図9(C)参照)になるように形成されている。また、筒状部51bの内部は、縦断面が略円形になるように形成されているが、基端から先端縮径部51aの手前まで伸びる平面である平面部51c,51cが、平行に対向して設けられている(図9(D)参照)。
【0029】
なお、外周キャップ51の基端側はマルチルーメンチューブ32を覆い、外周キャップ51の先端側はチューブ部材41を覆うように設けられている。そして、マルチルーメンチューブ32及びチューブ部材41は、この状態で、外周キャップ51に対して固定されている。固定の方法は、接着剤による接着や、融着等の方法が用いられる。即ち、外周キャップ51は、カテーテル本体部30及びカテーテル先端部40に対して、一体的に固定されている。また、外周キャップ51の材質は、上述のアウターチューブ31と同様である。
【0030】
コアワイヤ62は、基端側が直線状に形成されており、先端側が図2に示すようなループ形状をしている。具体的には、コアワイヤ62は、図4に示すようにカテーテル先端部40の内筒部41aに挿通されると共に、その先端側は、球体部43bに固定されている。また、コアワイヤ62の基端側はチューブ部材41から突出した突出部分62aとなっている。すなわち、図2および図4に示すように、コアワイヤ62の多くの部分はチューブ部材41の内筒部41aに入り込んでいるが、コアワイヤ62の基端側には、チューブ部材41から突出する突出部分62aが存在している。コアワイヤ62は、材質を形状記憶合金としていて、そのような形状記憶合金としては、Ni−Ti合金を挙げることができる。好ましいNi−Ti合金としては、ニチノールを挙げることができる。
【0031】
より詳細に説明すると、球体部43bの挿通穴43b1にはコアワイヤ62が挿入され、そのコアワイヤ62の先端側が挿通穴43b1の内壁面43b2(図4では底面)に取り付けられている。また、挿通穴43b1には導線61も挿入されていて、この導線61も球体部43bの内壁面43b2に取り付けられている。
【0032】
このコアワイヤ62は、図2に示すようなループ形状を記憶させられている。すなわち、このコアワイヤ62に外力を加えると図2に示すようなループ形状から容易に変形する。しかしながら、コアワイヤ62からその外力を取り除くと、コアワイヤ62は、図2に示すようなループ形状(記憶させられている形状)に戻るように設定されている。
【0033】
コアワイヤ62の基端側の突出部分62aには、拡幅部62bが設けられている。拡幅部62bは、図8に示すように、コアワイヤ62の直径よりも大きな寸法で外径側に突出する箇所が存在する部分である。すなわち、上述の外径側に向かう方向を幅方向とすると、拡幅部62bの幅方向の寸法(幅寸法)は、コアワイヤ62の直径よりも大きく設けられている。
【0034】
好ましい拡幅部62bの幅寸法としては、コアワイヤ62の直径の1.5〜3倍程度とするものがあるが、これ以外の幅寸法であっても良い。なお、以下の説明では、拡幅部62bのうち扁平底部53c1と当接する部分を、拡幅端面62b1と称呼する。また、拡幅部62bは、請求項でいう回転防止部の一例に対応する。
【0035】
外周キャップ51の内筒部には、アンカー部材52が配置される。アンカー部材52は、請求項でいう係合部材に対応する。このアンカー部材52は、樹脂、セラミックスや金属を材質として形成されている。図5〜図7に示すように、アンカー部材52は、円柱状の部材に凹部や孔部が設けられた形状を成している。詳細に述べると、アンカー部材52の径方向の中心には、ワイヤ挿通孔53が設けられている。ワイヤ挿通孔53は、コアワイヤ62の基端側を挿入する孔部分である。このワイヤ挿通孔53は、先端側の開口から中途部分までの孔形状(図5(A)および図6(A)参照)と、基端側の開口から中途部分までの孔形状(図5(B)および図6(B)参照)とが異なっている。具体的には、ワイヤ挿通孔53の先端側の開口から中途部分までの孔形状は、図5(A)および図6(A)に示すように、当該ワイヤ挿通孔53の径方向の中心がコアワイヤ62に対応して円形状に膨らみつつも、全体としては扁平形状(図6(A)においてY方向が特に長い形状)に設けられている。
【0036】
なお、以下の説明においては、Y方向に長い扁平形状を成す部分を、第1扁平孔部53aとする。また、ワイヤ挿通孔53において第1扁平孔部53aよりも弧状に膨らんでいる部分を、弧状拡張部53bとする。また、図6においては、X方向とY方向とは直交していて、さらに図7のZ方向は、X方向およびX方向に直交している。
【0037】
一方、図5(B)および図6(B)に示すように、ワイヤ挿通孔53の基端側の開口から中途部分までの孔形状は、略十字形状を成すように設けられている。すなわち、図6(B)に示すように、ワイヤ挿通孔53は、Y方向の扁平形状(第1扁平孔部53a)とX方向の扁平形状とが交差して十字状となるように設けられている。ただし、X方向の扁平形状とY方向の扁平形状との交差部分においては、コアワイヤ62の直径に対応させて、若干膨らんだ形状となっている。以下の説明においては、第1扁平孔部53aと交差するX方向の扁平孔部分を、第2扁平孔部53cとする。これら第1扁平孔部53aと第2扁平孔部53cとは、請求項でいう切欠部に対応する。
【0038】
第1扁平孔部53aのY方向(幅広方向)の長さは、コアワイヤ62の直径よりも大きく、コアワイヤ62の拡幅部62bを挿通させることができる長さに設けられている。また、第1扁平孔部53aのX方向(幅狭方向)の長さは、拡幅部62bを十分に挿通させることができる長さに設定されている。
【0039】
第2扁平孔部53cは、コアワイヤ62の拡幅部62bを挿入させることが可能な幅と長さに設けられている。なお、第2扁平孔部53cの幅は、第1扁平孔部53aの幅よりも狭い。すなわち、第1扁平孔部53aは、拡幅部62bの挿入に余裕をもたせた状態となっている。また、図7(A)に示すように、第2扁平孔部53cは、アンカー部材52の軸線方向においては、中途部分までしか形成されていない。すなわち、アンカー部材52の内部には、第2扁平孔部53cの扁平底部53c1が存在している。そして、この扁平底部53c1では、コアワイヤ62の拡幅部62bの拡幅端面62b1に当接して、拡幅部62bが先端側に抜けるのを阻止することを可能としている。
【0040】
ここで、第1扁平孔部53aと第2扁平孔部53cの幅寸法は、以下の通りである。コアワイヤ62の拡幅部62bが第2扁平孔部53cに入り込んでいる場合、その入り込みの状態においては、拡幅部62bの外壁面が第2扁平孔部53cの内壁面に突き当たり、拡幅部62bが第1扁平孔部53aに向かって回転するのが規制される。すなわち、第2扁平部53cの幅寸法は、そのような回転の規制に対応した幅寸法となっている。しかも、第2扁平孔部53cは第1扁平孔部53aよりも幅が狭く設けられている。そのため、拡幅部62bが第2扁平孔部53cの内部で回動する範囲は、第1扁平孔部53aよりも圧倒的に小さい状態に設けられている。
【0041】
また、図5〜図7に示すように、アンカー部材52のワイヤ挿通孔53よりも外径側には、プルワイヤ係止孔54が設けられている。本実施の形態では、プルワイヤ係止孔54は2つ設けられているが、この個数はいくつであっても良い。プルワイヤ係止孔54は、プルワイヤ60の先端側を係止するための孔部分である。このプルワイヤ係止孔54は、基端側の開口から先端側の開口までの間に位置する中途部分までの直径が、先端側の開口から中途部分までの直径よりも小さく設けられている。以下の説明においては、プルワイヤ係止孔54のうち、基端側の開口から中途部分までの孔部分を小径部分54aとし、同じく先端側の開口から中途部分までの孔部分を大径部分54bとする。なお、プルワイヤ60の先端側には、不図示の係止部材が取り付けられる。この係止部材の直径は、プルワイヤ係止孔54の小径部分54aの内径(直径)よりは大きく、プルワイヤ係止孔54の大径部分54bの内径(直径)よりは小さく設けられている。かかる係止部材としては、ピン状の部材、ナット状の部材等がある。
【0042】
図7(B)に示すように、小径部分54aと大径部分54bとの境界には、係止底部54cが存在する。係止底部54cは、プルワイヤ60の先端側に取り付けられる係止部材(図示省略)の基端側の底面が突き当たる部分である。それにより、プルワイヤ60の先端側はアンカー部材52に係止されている。
【0043】
また、アンカー部材52の外周側には、窪み部55が設けられている。図5〜図7に示すように、窪み部55は、アンカー部材52の外周側から中心に向かって窪んでいる部分である。本実施の形態では、窪み部55は4つ設けられているが、その個数はいくつであっても良い。窪み部55は、アンカー部材52の外周面から径方向の中心に向かい、湾曲した形状に切り欠いた形状に設けられている。図6に示すように、この窪み部55の径方向中心側の内壁面は、たとえば外観が円形状に纏められた導線群61Aが位置したときに、その円形状の導線群61Aに対応するように、円弧形状に設けられている。そして、この窪み部55と外周キャップ51の内周面とで構成される内孔(請求項における係合部材の内孔に相当)に、導線群61Aが引き通される。
【0044】
また、アンカー部材52の外周面には、平坦部56,56が設けられている。平坦部56,56は、アンカー部材52の外周面において、夫々平行に平坦状に設けられている部分である。なお、アンカー部材52は、外周キャップ51の中に配置されるときに、この平坦部56,56が外周キャップ51の平面部51c,51cと合わされる(嵌合する)ように設計されている。そのため、アンカー部材52は、外周キャップ51内部に配置されたときには、外周キャップ51に対して相対的な回転が防止されることになる。
【0045】
以上のような構成を有する電極カテーテル10の製造方法のうち、係合キャップ体50に係る部分について、以下に説明する。
【0046】
本実施の形態における電極カテーテル10においては、アンカー部材52の先端側(図7の左側)からコアワイヤ62の基端側の直線部分を挿入するように、アンカー部材52に対してコアワイヤ62を相対的に移動させる。そして、この挿入によって、拡幅部62bをアンカー部材52の基端側から突出させるようにする。この挿入においては、拡幅部62bの外方側は、第1扁平孔部53aに位置している。そして、拡幅部62bがアンカー部材52の基端側から突出した後に、拡幅部62bが第2扁平孔部53cに位置するように、アンカー部材52とコアワイヤ62の相対的な回転位置を調整する。
【0047】
そして、この回転調整の後に、上述の挿入する向きとは逆向き(図7で右から左に向かう向き)にアンカー部材52に対してコアワイヤ62を相対的に移動させる。すると、拡幅端面62b1は、扁平底部53c1と当接するが、その当接によってコアワイヤ62は先端側方向に移動するのが(先端側へ抜けることが)規制される。このような位置にて、コアワイヤ62とアンカー部材52とが取り付けられる。
【0048】
その後に、外周キャップ51がアンカー部材52を覆う状態とする。そして、外周キャップ51の基端側によってマルチルーメンチューブ32(またはアウターチューブ31)が覆われる状態とし、その後に外周キャップ51とマルチルーメンチューブ32(またはアウターチューブ31)とを取り付ける。
【0049】
なお、この取り付けは、外周キャップ51とマルチルーメンチューブ32(またはアウターチューブ31)との間に接着剤を介在させ、その接着剤の固化によって実現されても良く、外周キャップ51とマルチルーメンチューブ32(またはアウターチューブ31)とを熱融着させることによって実現されても良い。
【0050】
また、外周キャップ51とマルチルーメンチューブ32(またはアウターチューブ31)との間の取り付けに前後して、外周キャップ51とカテーテル先端部40との取り付けを行う。この取り付けにおいては、外周キャップ51の先端側によってチューブ部材41が覆われる状態とし、その後に外周キャップ51とチューブ部材41とを取り付ける。この取り付けにおいても、外周キャップ51とチューブ部材41との間に接着剤を介在させ、その接着剤の固化によって実現されても良く、外周キャップ51とチューブ部材41とを熱融着させることによって実現されても良い。
【0051】
ここで、上述の取付状態が実現された後においては、カテーテル先端部40を変形させても、拡幅部62bは第2扁平孔部53cに嵌まり込んでいる(位置している)状態が維持される。しかも、係止部材が大径部分に入り込んでいる(位置している)状態が維持される。なお、拡幅端面62b1は扁平底部53c1と当接していることが好ましく、係止部材の基端側の底面が係止底部54cに当接していることが好ましい。
【0052】
<作用について>
上述した構成の電極カテーテル10においては、コアワイヤ62の基端側には拡幅部62bが設けられていて、この拡幅部62bの外側がアンカー部材52の第2扁平孔部53cに嵌まり込んでいる(位置している)。このため、コアワイヤ62がアンカー部材52に対して回転しようとすると、拡幅部62bの外壁面が第2扁平孔部53cの内壁面に突き当たる。それにより、コアワイヤ62がアンカー部材52に対して回転するのが阻止される。
【0053】
ここで、コアワイヤ62は、カテーテル先端部40に取り付けられている。しかも、カテーテル先端部40は、コアワイヤ62の持つ形状記憶特性によって、外力が与えられていない状態では、図2に示すようなループ形状を呈していて、カテーテル先端部40の回転は、コアワイヤ62と一体的に行うようになっている。そのため、カテーテル先端部40を例えば血管内で回転させると、血管壁等にループ形状部分が擦れるときにループ部分よりも基端側の部分に大きな負荷(トルク)が発生する。
【0054】
このような場合であっても、上述のようにコアワイヤ62とアンカー部材52との回転が単なる接着ではなく部品形状に基づいて規制されており、且つ、アンカー部材52と外周キャップ51との回転も部品形状に基づいて規制されているため、カテーテル先端部40がカテーテル本体部30に対して脱落することが防がれる。
なお、アンカー部材52のプルワイヤ係止孔54には、プルワイヤ60が挿通されていると共に、アンカー部材52の窪み部55には導線群61Aが位置している。しかも、プルワイヤ60は、マルチルーメンチューブ32のプルワイヤ用孔321に挿通され、導線群61Aは同じくマルチルーメンチューブ32の導線用孔322に挿通されている。このため、プルワイヤ60および導線群61Aの存在によっても、アンカー部材52は、カテーテル本体部30に対して捻じれ難くなる。換言すれば、アンカー部材52がカテーテル本体部30に対して回転しようとしても、プルワイヤ60および導線群61Aの存在によって、アンカー部材52が回転し難くなる。
【0055】
以上のように、カテーテル先端部40がカテーテル本体部30に対して回転しようとしても、(1)拡幅部62bの外壁面が第2扁平孔部53cの内壁面に突き当たること、(2)プルワイヤ60および導線群61Aの存在によって、アンカー部材52がカテーテル本体部30に対する回転が規制されること、によって、カテーテル先端部40がカテーテル本体部30に対して回転し難くなる。
【0056】
<効果について>
本実施の形態では、操作性を向上させるためにコアワイヤ62を短くして、コアワイヤ62がカテーテル本体部30側(軟質チューブ312)に入り込まない構成となっている。そのため、軟質チューブ312が曲がりやすくなり、電極カテーテル10の操作性を向上させることが可能となる。
【0057】
その上、本実施の形態では、上述したようにカテーテル先端部40のカテーテル本体部30に対する回転が規制されている。すなわち、本実施の形態では、コアワイヤ62はカテーテル本体部30には固着されず、従ってコアワイヤ62が従来よりも短くなっているのにも拘らず、カテーテル先端部40のカテーテル本体部30に対する耐トルク性を向上させることが可能となる。すなわち、本実施の形態によれば、カテーテル先端部40がカテーテル本体部30に対して回転するのを効果的に防止できると同時に、電極カテーテル10の操作性を向上させることが可能となる。
【0058】
<変形例について>
以上、本発明の一実施の形態に係る、電極カテーテル10について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0059】
上述の実施の形態においては、カテーテル先端部40がループ形状に設けられているタイプの電極カテーテル10について説明している。しかしながら、本発明は、上述のようなタイプに限られるものではない。たとえば、カテーテル先端部が複数本に分かれていて、それら複数本のカテーテル先端部が放射状に設けられているタイプの電極カテーテル等、先端に比較的大きな構造を有する電極カテーテルにも本発明を適用することが可能である。
【0060】
上述の実施の形態においては、この第2扁平孔部53cに拡幅部62bを位置させて、カテーテル先端部40のカテーテル本体部30に対する回転を規制している。しかしながら、カテーテル先端部40のカテーテル本体部30に対する回転の規制は、第1扁平孔部53aに拡幅部62bを位置させて実現するようにしても良い。すなわち、第1扁平孔部53aは、第2扁平孔部53cと同様に扁平形状となっているため、この第1扁平孔部53aに拡幅部62bを位置させることにより、カテーテル先端部40のカテーテル本体部30に対する回転を規制することができる。なお、第1扁平孔部53aに拡幅部62bを位置させる構成を採用する場合、アンカー部材52に第2扁平孔部53cが存在しない構成としても良い。また、第1扁平孔部53aに拡幅部62bを位置させる構成を採用する場合、拡幅部62bから第1扁平孔部53aが抜けるのを防ぐ抜け止めをコアワイヤ62のうちアンカー部材52の基端側に取り付けるようにしても良い。
【0061】
また、上述の実施の形態では、第1扁平孔部53aの幅広方向と、第2扁平孔部53cの幅広方向とは直交した配置となっている。しかしながら、両者の幅広方向は、必ずしも直交した配置となっていなくても良く、アンカー部材52の周方向において、第1扁平孔部53aと第2扁平孔部53cとが重ならない角度配置であれば、どのような角度配置であっても良い。
【0062】
また、上述の実施の形態では、第1扁平孔部53aと第2扁平孔部53cとが請求項でいう切欠部に対応するものとしている。しかしながら、第1扁平孔部53aと第2扁平孔部53cとのうち、いずれか一方のみが切欠部に対応するものとしても良い。また、第1扁平孔部53aと第2扁平孔部53c以外の切欠形状をアンカー部材52に設けて、それを切欠部としても良い。そのような切欠形状としては、拡幅部62bを位置させることが可能な溝形状が挙げられる。
【0063】
また、上述の実施の形態においては、外周キャップ51で覆われるアンカー部材52は、外周キャップ51との間での回転止めがされているか否かについては特に述べていない。しかしながら、アンカー部材52の外周面に存在する平坦部56を利用して、外周キャップ51に対してアンカー部材52が回転しない構成としても良い。この場合、平坦部56に接着剤を位置させたり、外周キャップ51の内壁面を平坦部56に向けて熱変形させたり、平坦部56を含めたアンカー部材52の外周面に外周キャップ51の内壁面を熱融着させても良い。
【0064】
また、カテーテル本体部30は、マルチルーメンチューブ32が先端側のみに設けられていると共に残りの部分がアウターチューブ31のみ(シングルルーメン)であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…電極カテーテル
20…操作ハンドル部
30…カテーテル本体部
31…アウターチューブ
32…マルチルーメンチューブ
40…カテーテル先端部
41…チューブ部材
41a…内筒部(カテーテル先端部の内孔に対応)
42…リング状電極(電極に対応)
50…係合キャップ体(係合部材に対応)
51…外周キャップ
51a…先端縮径部
51b…筒状部
51c…平面部
52…アンカー部材
53…ワイヤ挿通孔
53a…第1扁平孔部(切欠部の一部に対応)
53b…弧状拡張部
53c…第2扁平孔部(切欠部の一部に対応)
53c1…扁平底部
54…プルワイヤ係止孔
54a…小径部分
54b…大径部分
54c…係止底部
55…窪み部
56…平坦部
60…プルワイヤ
61 導線
61A…導線群
62…コアワイヤ
62a…突出部分
62b…拡幅部(回転防止部に対応)
62b1…拡幅端面
311…硬質チューブ部
312…軟質チューブ部
321…プルワイヤ用孔
322…導線用孔(カテーテル本体部の内孔に対応)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電極を備え、前記電極に接続された導線を挿通させる内孔を有するカテーテル先端部と、
前記カテーテル先端部の内孔に挿通され、他の部分よりも拡径されて形成された回転防止部がその基端側に設けられているコアワイヤと、
前記カテーテル先端部にその先端が接続され、前記導線を挿通させる内孔を有し、前記回転防止部が差し込まれたときに回転防止部に当接する形状の切欠部を有する係合部材と、
前記係合部材の基端に接続固定され、前記導線を挿通させる内孔を有するカテーテル本体部と、
を備えることを特徴とする電極カテーテル。
【請求項2】
請求項1記載の電極カテーテルであって、
前記回転防止部は、前記コアワイヤの他の部分の直径よりも扁平に拡径している拡幅部であり、
前記切欠部には、前記延伸方向に沿って前記係合部材を貫通すると共に前記拡幅部を挿通させることが可能な第1扁平孔部と、前記延伸方向に沿うと共に前記係合部材の中途部分まで形成されていて前記拡幅部を差し込むことが可能な第2扁平孔部とが設けられていて、
前記第1扁平孔部の拡径方向と前記第2扁平孔部の拡径方向とは、前記係合部材の周方向における角度が異なる配置となっている、
ことを特徴とする電極カテーテル。
【請求項3】
請求項1または2記載の電極カテーテルであって、
前記カテーテル先端部は、前記カテーテル本体部の延伸方向から離れる向きに向かって延伸する部分を有する、
ことを特徴とする電極カテーテル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−85874(P2013−85874A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231668(P2011−231668)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(594170727)日本ライフライン株式会社 (83)
【Fターム(参考)】