電極予備体、ランプ、バックライトユニット、液晶表示装置及びランプ用電極予備体の製造方法
【課題】電極用部材とリード棒用部材との固着力を高めることができる電極予備体等を提供する。
【解決手段】電極予備体は、電極用部材63と、溶着用部材69と、リード棒用部材65とを備える。当該電極予備体は、電極用部材63の底部とリード棒用部材65の一端とを溶着用部材69を介して当接させた状態で、溶着用部材69に向けてレーザ光を照射させて、電極用部材63とリード棒用部材65とを固着してなる。電極用部材63とリード棒用部材65との固着部分は、電極用部材63とリード棒用部材65とが他方の部材側に不規則に張り出す構造となっている(図中の「L1」、「M1」である。)。
【解決手段】電極予備体は、電極用部材63と、溶着用部材69と、リード棒用部材65とを備える。当該電極予備体は、電極用部材63の底部とリード棒用部材65の一端とを溶着用部材69を介して当接させた状態で、溶着用部材69に向けてレーザ光を照射させて、電極用部材63とリード棒用部材65とを固着してなる。電極用部材63とリード棒用部材65との固着部分は、電極用部材63とリード棒用部材65とが他方の部材側に不規則に張り出す構造となっている(図中の「L1」、「M1」である。)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプに組み込む前の電極予備体、及び当該電極予備体を電極として備えるランプ、バックライトユニット、液晶表示装置並びにランプ用電極予備体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷陰極型のランプの電極に利用される電極予備体に、有底筒状の電極用部材の底部にリード棒用部材の一端をレーザ溶接により固着したものがある。
溶接時は、図12の(a)に示すように、有底筒状をした電極用部材901の底部901aとリード棒用部材903の一端面903aとを当接させた状態(当接部分が溶接予定部となる。)で、溶接予定部に対応する電極用部材901の底部901aにレーザを照射している。
【0003】
具体的には、電極用部材901の底901aに対して略直行する方向であって電極用部材901の開口側から電極用部材901底部901aに向けて(図中の矢印Oである。)レーザを照射している(特許文献参照)。
【特許文献1】特開2005−93119号公報
【特許文献2】特開2003−272520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電極用部材901とリード棒用部材903とを上述のようにレーザ溶接により固着した場合に、電極予備体901の強度が弱くなるという課題がある。
具体的には、電極予備体に対して振動試験を行った結果、図12の(a)に示すように、溶接部分(底部901a)の全体にクラック905が入る(図12の(a)は、溶接前の状態を示す図であるが、便宜上、当該図12の(a)を利用している。)。
【0005】
図12の(b)は、底部にクラックが入った電極予備体を図12の(a)の矢印Oの方向から見た図である。
底部901aのクラック905が、図12の(b)に示すように、連続的して1つの円形状になった場合には、電極用部材901の底部901aが筒部901bから外れることが判明した。なお、図12の(a)における電極用部材901は、縦断面を示す図であり、本来はハッチングを施すべきであるが、クラック905が紛らわしくなるので、ハッチングを省略している。
【0006】
上記の課題に鑑み、本発明は、電極用部材とリード棒用部材とを溶接により直接的又は間接的に固着してなる電極予備体における電極用部材の強度を含めた電極用部材とリード棒用部材との固着力を高めることができる電極予備体、ランプ、バックライトユニット、液晶表示装置及び前記固着力を高めることができる電極予備体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る電極予備体は、電極用部材とリード棒用部材とが溶接により固着されてなるランプ用の電極予備体であって、前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造となっていることを特徴とし、又は、電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して溶接により固着されてなるランプ用電極予備体であって、前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造となっていることを特徴とし、あるいは、電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して溶接により固着されてなるランプ用電極予備体であって、前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記溶着用部材が前記電極用部材とリード棒用部材との少なくとも一方の部材側に不規則に張り出す構造となっていることを特徴としている。
【0008】
ここで、少なくとも一方の部材が他方の部材に張り出すことは、当然、他方の部材も一方の部材側に張り出すこととなり、「不規則に張り出す構造」とは、互いの部材から張り出す量、大きさ、形状等のいずれかが異なる構造、あるいは、一方の部材と他方の部材との境界の形状が不規則な形状をした構造をいい、溶接後の他部材側への張り出しは、張り出している側の自部材から連続して張り出した連続構造をしていても良いし、あるいは、自部材と離間して張り出した離間構造(独立した海島構造や共連続構造等である。)をしていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電極予備体では、固着部分において、固着に係る部材が他の部材側に不規則に張り出す構造を有しており、この構造を有することで、張り出している側の自部材と張り出されている側の他部材との固着強度が高まることを実験により確認できている。
また、電極用部材は、筒状の一端に端壁を備え、当該端壁への他部材の張り出しは、前記電極用部材の端壁における固着側と反対側の面にまで達していないことを特徴としている。このため、例えば、当該端壁への他部材の張り出しが、前記電極用部材の端壁における固着側と反対側の面にまで達している場合に比べて、端壁における固着部分と境界面が広くなり、結果的に、溶接後の電極用部材における端壁内の強度を高めることができる。
【0010】
さらに、合金領域は放電空間中の電子によりスパッタリングを受けやすく、張り出し部分が合金となり且つ張り出し部分が電極用部材の端壁における固着側と反対側の面(内面)に達している場合には、当該張り出し部分がスパッタリングを受け、これにより飛散した合金が蛍光体層に付着すると輝度低下や色むらを招くが、張り出し部分が電極用部材の端壁における固着側と反対側の面にまで達していないので、前記スパッタリングを受け難くできる。
【0011】
なお、ここでいう「他部材」とは、電極用部材とリード棒用部材とが直接固着している場合はリード棒用部材が該当し、電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して間接的に固着している場合は溶着用部材とリード棒用部材とが該当する。
一方、本発明に係るランプ、バックライトユニット及び液晶表示装置は、上記電極予備体を電極として備えるので、電極とリード棒との固着強度の高い電極を有することとなる。
【0012】
さらに、本発明に係る製造方法では、電極用部材とリード棒用部材とを当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、前記レーザ溶接は、前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分を、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われることを特徴とし、又は、電極用部材とリード棒用部材とを溶着用部材を介して当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、前記レーザ溶接は、前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分を、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われることを特徴とし、あるいは、電極用部材とリード棒用部材とを溶着用部材を介して当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、前記レーザ溶接は、前記溶着用部材を前記電極用部材とリード棒用部材との少なくとも一方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われることを特徴としている。
【0013】
この方法によると、固着部分が不規則に張り出す構造になり、その固着力が高まることが試験により確認されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る液晶表示装置、バックライトユニット、ランプ及び電極予備体について説明する。
1.液晶表示装置の構成について
図1は、発明に係る液晶表示装置を示す図であり、内部の様子がわかるように、一部を切り欠いている。
【0015】
液晶表示装置1は、例えば、液晶カラーテレビであり、液晶画面ユニット3とバックライトユニット5とが筐体4に組み込まれてなる。液晶画面ユニット3は、例えば、カラーフィルタ基板、液晶、TFT基板、駆動モジュール等(図示せず)を備え、液晶画面ユニット3の外部からの画像信号に基づいてカラー画像を液晶画面ユニット3の画面6に表示する。
2.バックライトユニットの構成について
図2は、バックライトユニットの概略斜視図であり、内部の様子が分かるように前面パネルの一部を切り欠いている。このバックライトユニット5は、図1に示す液晶画面ユニット3をその裏側から直接照射する、いわゆる、直下型のユニットである。
【0016】
バックライトユニット5は、所定方向(ここでは、ユニットの短手方向)に間隔をおいて複数列(例えば、14列)に配された直管状の蛍光ランプ(以下、この蛍光ランプを「ランプ」という。)7a,7b,7c,・・・,7n(以下、それぞれのランプを区別する必要がない時は、単に「7」の符号を用いる。)と、これらランプ7を収納する筐体9と、この筐体9の前面(開口部)を覆う前面パネル11とを備える。なお、図2では、ランプ7の固定手段、配線等の記載を省略している。
【0017】
筐体9は、白色のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製で、その内面がランプ7から発せられた光を表側に反射させる反射面となっている。なお、筐体9は、樹脂以外の材料、例えば、アルミニウム等の金属製であっても良く、また、反射面は、アルミニウム等の金属を蒸着して構成しても良い。
前面パネル11は、各ランプ7からの光を拡散させて平行光(前面パネル11の法線方向)として取り出すためのもので、例えば、拡散板17,拡散シート19,レンズシート21等から構成されている。なお、拡散板17には、アクリル材料が用いられている。
3.ランプの構成について
図3は、ランプを示す図であり、内部の電極構造体の構成等が分かるように切り欠いている。
【0018】
ランプ7は、1本のガラス管31の端部31a,31bに、冷陰極型の電極構造体33,35が封着されてなる、いわゆる冷陰極型の蛍光ランプである。この電極構造体33,35は、封止体48,50を介してガラス管31に封着されている。なお、封止体48,50には、その線膨張係数がガラス管31と近い材料が用いられる。
両端が封止されたガラス管31の内部に形成された放電空間40には、例えば、水銀や希ガス(例えば、アルゴン、ネオン)等が所定量封入されている。なお、希ガスは、減圧状態で封入されている。
【0019】
ガラス管31は、その横断面形状が、例えば円形状であり、内面には蛍光体層43が形成されている。ガラス管31の材料として、例えば、鉛フリーガラス(SiO2−BaO−Al2O3−Na2O+K2O−CeO2)が用いられる。なお、この場合、上記の封止体48,50には、当該ガラス管31と略同じ膨張係数のガラスを選択することが好ましい。
【0020】
なお、ガラス管31の材料に上記鉛フリーガラス以外の材料、例えば、ホウ珪酸ガラス(SiO2−B2O3−Al2O3−K2O−TiO2)を用いても良い。この場合も封止体の材料として、ガラス管と膨張係数が等しいガラス(例えばビードガラス)を用いることができる。ガラス管31は、内径が1.4[mm]以上7.0[mm]以下の範囲、肉厚が0.2[mm]以上0.6[mm]以下の範囲のものが多用されているが、本発明はこの寸法に限定するものではない。
【0021】
蛍光体層43は、例えば、3波長型の各蛍光体を含んでいる。3波長型の蛍光体としては、例えば、希土類蛍光体が利用され、ここでは、赤色発光のユーロピウム付活酸化イットリウム[Y2O3:Eu3+](略号:YOX)、緑色発光のセリウム・テルビウム共付活リン酸ランタン[LaPO4:Ce3+,Tb3+](略号:LAP)及び青色発光のユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+](略号:BAM−Bであり、「−B」については後述する。)の3種類が利用されている。
【0022】
この蛍光体層43は、図3から分かるように、一対の電極45,47間に対応するガラス管31の内面だけでなく、有効発光長を最長にするために、電極45,47の筒部45b,47bにおける外周面と対向している(ガラス管31における)内面(筒部45b,47bの内方側(放電空間の中央側)端から、外方側(底部45a,47aの外面側)端までの間の一部又は全部)にも形成されている。つまり、蛍光体層43の管軸方向の各端は、筒部45b,47bの内方端と外方端との間に存在する。
4.電極構造体(電極予備体)について
電極構造体33,35(本発明の電極に相当する。)は、例えば有底筒状の電極45,47と、当該電極45,47の底部45a,47aに間接的に固着されたリード棒49,51と、リード棒49,51に固着された外部導入線53,55を備える。なお、本実施の形態における電極構造体は、外部導入線53,55を備えているが、当該外部導入線を備えていなくても良い。
【0023】
電極45,47は、いわゆる冷陰極型であり、筒部45b、47bと、筒部45b,47bの一端に設けられた底部(発明の「端壁」に相当する。)45a,47aとからなる。なお、電極構造体33,35は、ガラス管31の端部31a,31bに封着されたものをいい、電極予備体は、ガラス管31に封着される前のもの、つまり、ガラス管31に組み込む前のものを指す。
【0024】
本実施の形態では、電極45,47としてはニッケル材料が用いられ、リード棒49,51として鉄とニッケルとの合金(FeNi)材料が、外部導入線53,55としてマンガンとニッケルの合金(MnNi)がそれぞれ用いられている。
なお、リード棒49,51は、ガラス管31に鉛フリーガラスを用いた場合、鉄とニッケルの合金を用いたが、ガラス管31に例えば、ホウ珪酸ガラスを用いると、例えばコバール(Ni−Co−Fe)、モリブデン、タングステンを用いることができる。
【0025】
電極45,47とリード棒49,51との間接的な固着は、レーザ溶接(レーザ加工)により行なわれている。つまり、電極45,47は、後述する溶着材57,59を介して、リード棒49,51に固着されている。
この固着された状態では、電極45,47とリード棒49,51との固着部分(溶着材を含む。)が、電極45,47を構成する成分のうち少なくとも1つの成分を含む領域と、リード棒49,51を構成する成分のうち少なくとも1つの成分を含む領域との少なくとも1つの領域が他部材側に不規則に張り出す構造(以下、単に「張り出す構造」ともいう。)となっている。
【0026】
ここで、電極45,47を構成する成分のうち少なくとも1つの成分を含む領域と、リード棒49,51を構成する成分のうち少なくとも1つの成分を含む領域との2つの領域が不規則に張り出す場合を、「相互に張り出す構造」ともいい、後で詳細に説明する。)となっている。
なお、リード棒49,51と外部導入線53,55との固着には、例えば抵抗溶接が利用され、また、電極45,47とリード棒49,51とが溶着材57,59を介して固着される場合でも、「電極45,47とリード棒49,51との固着部分」には、溶着材57,59を含んでいる。
5.電極予備体の製造方法について
図4は、電極予備体の製造方法を説明する図である。
【0027】
電極予備体61は、電極構造体33,35の電極45,47となるべき電極用部材63と、溶着材57,59となるべき溶着用部材69と、リード棒49,51となるべきリード棒用部材65と、電極構造体33,35の外部導入線53,55となるべき導入線用部材67とがこの順で固着されてなる。
具体的には、電極用部材63の底部63aとリード棒用部材65の一端面65aとを溶着用部材69を介して仮止めし、この状態で、図4の(a)、(b)に示すように、溶着用部材69の長手方向の略中心を通り且つリード棒用部材65の軸心と直交する線分Aに対してリード棒用部材65側に所定角度B傾斜した方向から、溶着用部材69の外周面であって長手方向の略中央に向けて、レーザを照射する。レーザの照射する目標位置は、溶着用部材69の周方向に等間隔(角度)を置いた複数個所(コストや位置調整の煩雑さ等の関係により、ここでは3箇所である。)である。
【0028】
上記の仮止めは、公知の技術により実施することができ、電極用部材63とリード棒用部材65とを溶着用部材69を介して当接させた状態で溶接することで行われる。
ここで、仮止めの溶接を、例えば、電極用部材63やリード棒用部材65の融点よりも低い温度で溶接(例えば抵抗溶接)する場合、溶着用部材69の材料に、電極用部材63やリード棒用部材65の融点よりも低いものを使用する必要があるが、さらに、電極用部材63やリード棒用部材65の体積に比べて小さいものが好ましい。これは、溶接時の操作性(溶け易さ)を向上させると共に熱容量を小さく(高効率)できるからである。
【0029】
図5は、電極予備体製造時のレーザのエネルギー強度と照射時間との関係を示す図である。
照射するレーザのエネルギー強度は、電極用部材63とリード棒用部材65との固着部分が一気に溶融して均一な合金層とならない(合金層が形成されない)強度、つまり、電極用部材63とリード棒用部材65との固着部分を、電極用部材63とリード棒用部材65との部材のうち少なくとも一方が他方の部材側に不規則に張り出した構造とし、その構造を維持できる強度である。
【0030】
同図に示すように、固着部分に均一な合金層(領域)が形成されないようにレーザのエネルギー強度を低めている分、照射時間は長くなっている。具体的には、照射するレーザのエネルギー強度は、2[kW]以上5[kW]以下の範囲、例えば4.6[kW]であり、照射時間は4[ms]以上20[ms]以下の範囲、例えば15[ms]である。
ここでいう「均一な合金層」とは、合金層内のどの場所においても、当該合金を構成している部材に由来の元素の割合が一定である領域をいい、例えば、SEMにより元素分析をおこなった場合に、均一さが確認できる範囲である。具体的には、SEMにより、倍率90[倍]で行って得られた分析分布図において、0.1[mm2]で区画したときに、区画された領域における元素の割合が同じである領域が均一な合金層である。
【0031】
なお、図5には、図10に示す電極予備体の製造時のレーザの照射エネルギーと時間との関係を破線で示している。
つまり、本実施の形態に係る電極予備体61の製造時のレーザのエネルギー強度は、従来の電極予備体901でのレーザのエネルギー強度より低くなっている。これは、従来のエネルギー強度で電極用部材とリード棒用部材とを溶接すると、その固着部分に電極用部材とリード棒用部材との合金が形成され、張り出した構造を有するように溶接できないためである。換言すれば、固着部分における不規則に張り出した構造は、電極用部材とリード棒用部材(と溶着用部材)との均一な合金(層)が形成される前の段階であり、合金が形成されるエネルギー強度よりも低いレーザを照射することで得られる。
【0032】
なお、電極用部材、リード棒用部材及び溶着用部材の各材料が上記材料と異なると、各部材の融点も異なり、当然にレーザのエネルギー強度や照射時間も上記範囲から外れることもあり得る。
上記の製造方法により、溶接後のリード棒用部材65の一端部分(65a)、溶接後の電極用部材63の底部63a、さらには溶着用部材69から形成される固着部分が(相互に)不規則に張り出した構造となる。
【0033】
なお、この不規則に張り出した部分は、当該部分の温度がそのまま降温し、後述する、溶接後の電極用部材の境界が規則な凹凸状(電極用部材がリード棒用部材側に張り出すと共に溶着用部材とリード棒用部材との合金領域が電極用部材側に張り出している。)をしている。
同様に、溶接後のリード棒用部材の境界が不規則な凹凸状(リード棒用部材が電極用部材側に張り出すと共に溶着用部材とリード棒用部材との合金領域がリード棒用部材側に張り出している。)をしている。つまり、溶接後の電極用部材の境界の形状が、溶接前の溶着用部材のリード棒用部材との当接面と異なる形状になり、また、溶接後のリード棒用部材の境界の形状が、溶接前のリード棒用部材の溶着用部材との当接面と異なる形状になる。
6.固着部分について
(1)サンプル1
図6は、電極予備体の縦断面における溶接部分の元素分布図であり、(a)は、電極用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(b)は、溶着用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(c)は、リード棒用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(d)は、(a)〜(c)を重ねたものを示す。また、図7は、図6の(d)のトレース図である。
【0034】
ここで、上述したが、電極用部材63はニッケルにより構成され、リード棒用部材65はニッケルと鉄との合金により構成され、さらに溶着用部材69はコバール箔(ニッケル、コバルト及び鉄の合金である。)により構成されている。このため、電極用部材63と溶着用部材69との合金領域(図7の「Q1」である。)は電極用部材63由来のニッケルが主成分となり、リード棒用部材65と溶着用部材69との合金領域(図7の「R1」である。)はリード棒用部材65由来の鉄が主成分となる。
【0035】
ここで、上記の合金領域Q1,R1は、この領域内においては、合金層内のどの場所においても、当該合金を構成している部材に由来の元素の割合が一定であり、均一な合金層である。
以下、図7を用いて、電極予備体の縦断面における固着部分の状態について説明する。
図7において、リード棒用部材65と溶着用部材69の合金領域R1を右上がりのハッチングで示し、当該合金領域R1と電極用部材63との境界を「I1」の線分で、また合金領域R1とリード棒用部材65との境界を「J1」の線分でそれぞれ表す。
【0036】
なお、線分C1−C1は、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面であり、線分D1−D1は、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面である。
溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面が直線状(線分C1−C1に相当する。)であるのに対し、溶接後の電極用部材63と合金領域R1との境界I1の線分は、同図に示すように、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面を示す線分C1−C1を跨がる様(乗り越える様)に不規則なジグザグ状をしている。
【0037】
つまり、電極用部材63を構成する成分の少なくとも1つ(ここでは、ニッケルである。)を含む領域が線分C1−C1を超えてリード棒用部材65側にくさび状に不規則な形状で張り出し(図中の符号「L1」である。)、また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1、すなわち、溶着用部材69を構成する成分の少なくとも1つ(ここでは、コバルトである)を含む領域が線分C1−C1を超えて電極用部材63側に不規則に張り出している(図中の符号「K1」である。)。
【0038】
ここで、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面(線分C1−C1の一部に相当する。)が溶接により変化し、電極用部材63を構成しているすべての成分を含んだ領域が当該当接面である線分C1−C1を超えて張り出しており、この境界線であるL1が、直線状でなく、また、一定周期で同じ形状とない不規則な形状をしている。
さらに、溶着用部材69のC1−C1を超えて電極用部材63側への張り出している領域(図中の符号「K1」である。)はここでは3つあるが、これらすべての領域における張り出し先端とC1−C1との距離で表す張り出し量、張り出している領域の境界I1とC1−C1との交差位置の間隔(C1−C1上の距離である。)で表す張り出し幅が異なり、また、その形状も異なっている。このようにC1−C1を超えて張り出す領域において、張り出す量、張り出し幅、形状等が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
【0039】
同様に、電極用部材63のC1−C1を超えて溶着用部材69側への張り出している領域(図中の符号「L1」である。)はここでは2つあるが、これらすべての領域において、張り出している領域の境界I1とC1−C1との交差位置の間隔(C1−C1上の距離である。)で表す張り出し幅が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
一方、電極用部材63と溶着用部材69との互いの張り出しは、電極用部材63からの張り出し領域(図中の符号「L1」である。)と、溶着用部材69からの張り出し領域(図中の符号「K1」である。)との両領域において、張り出し量、張り出し幅、形状が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
【0040】
なお、電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出し量は図中の符号「F1」であり(本例では線分D1−D1と偶然に一致しているだけである。)、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1の電極用部材63側への張り出し量は図中の符号「E1」である(両張り出し量とも、線分C1−C1を基準としている。)。
また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1内であって電極用部材63との境界I1に近接する部分では、電極用部材63と溶着用部材69との合金領域Q1が形成されている。つまり、この領域では、電極用部材63、溶着用部材69、リード棒用部材との合金となる。
【0041】
同様に、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面が直線状(線分D1−D1に相当する。)であるのに対し、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1とリード棒用部材65の境界J1の線分は、同図に示すように、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面を示す線分D1−D1を跨がる様(乗り越える様)な不規則な形状をしている。つまり、リード棒用部材65を構成するすべて成分を含んだ領域が線分D1−D1を超えて電極用部材63側に不規則に張り出し(図中の符号「M1」である。)、また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1、つまり、溶着用部材69を構成する成分とリード棒用部材65を構成する成分とを含んだ領域が線分D1−D1を超えてリード棒用部材65側に不規則に張り出している(図中の符号「N1」である。)。
【0042】
なお、リード棒用部材65の電極用部材63側への張り出し量は図中の符号「G1」であり、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1のリード棒用部材65側への張り出し量は図中の符号「H1」である。
ここでも、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面(線分D1−D1の一部に相当する。)が溶接により変化し、リード棒用部材65を構成している成分を含んだ領域が当該当接面である線分D1−D1を超えて張り出しており、この境界線であるJ1が、直線状でなく、また、一定周期で同じ形状となるような形状でない。
【0043】
また、溶着用部材69のリード棒用部材65への張り出す領域(図中の符号「N1」である。)は、その張り出し量、張り出し幅、形状が異なっており、不規則に張り出す構造をしている。
一方、溶着用部材69とリード棒用部材65との互いの張り出しは、溶着用部材69からの張り出し領域(図中の符号「N1」である。)と、リード棒用部材65からの張り出し領域(図中の符号「M1」である。)との両領域において、張り出し量、張り出し幅、形状、張り出す領域数が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
【0044】
なお、張り出した構造は、ここでは、電極用部材63側とリード棒用部材65側との2箇所、すなわち、相互に張り出す構造をしているが、本発明は、電極用部材63側とリード棒用部材65側との少なくとも一方に張り出す構造であれば良い。
また、本発明に係る固着部分は、図7に示すように、合金領域R1の電極用部材63側への張り出し先端と、合金領域R1のリード棒用部材65側への張り出し先端との間としている。
【0045】
次に張り出し量について具体的に説明する。
溶接後の電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出し量F1は0.20[mm]程度であり、一方、合金領域R1の電極用部材63側への張り出し量E1は0.07[mm]程度である。
リード棒用部材65の電極用部材63側への張り出し量G1は0.07[mm]程度であり、また、合金領域R1のリード棒用部材65側への張り出し量H1は0.33[mm]程度である。
【0046】
なお、図6〜図7で示す電極予備体61に使用される溶接前の電極用部材63及びリード棒用部材65は、有底筒状の電極用部材63の底部の厚みが0.2[mm]で、筒部の外径が2.7[mm]で、リード棒用部材の外径が0.8[mm]である。また、溶着用部材69の厚みが0.2[mm]、外径が0.8[mm]である。
(2)サンプル2
図8は、電極予備体の縦断面における溶接部分の元素分布図であり、(a)は、電極用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(b)は、溶着用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(c)は、リード棒用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(d)は、(a)〜(c)を重ねたものを示す。また、図9は、図8の(d)のトレース図である。
【0047】
ここで、電極用部材63、リード棒用部材65及び溶着用部材69は、サンプル1での電極用部材63、リード棒用部材65及び溶着用部材69と同じ仕様(材質、寸法)であり、また、レーザ溶接時の条件も同じである。このため、電極用部材63と溶着用部材69との間で形成される合金領域(図9の「Q2」である。)や電極用部材63と溶着用部材69との間で形成される合金領域(図9の「R2」である。)も、サンプル1と同じ成分を有する。
【0048】
以下、図9を用いて、電極予備体の縦断面における固着部分の状態について説明する。
図9において、リード棒用部材65と溶着用部材69の合金領域R2を右上がりのハッチングで示し、当該合金領域R2と電極用部材63との境界を「I2」の線分で、また合金領域R2とリード棒用部材65との境界を「J2」の線分でそれぞれ表す。
なお、線分C2−C2は、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面であり、線分D2−D2は、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面である。
【0049】
溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面が直線状(線分C2−C2に相当する。)であるのに対し、溶接後の合金領域R2と電極用部材63の境界I2の線分は、同図に示すように、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面を示す線分C2−C2を跨がる様(乗り越える様)に不規則な形状をし、さらに渦巻くように回り込んでいる。
【0050】
つまり、電極用部材63を構成する成分の少なくとも1つの成分を含む領域が線分C2−C2を超えてリード棒用部材65側に不規則な形状で張り出し(図中の符号「L2a」、「L2b」である。)、また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2、すなわち、溶着用部材69を構成する成分であるコバルトを含む領域が線分C2−C2を超えて電極用部材63側に不規則に張り出している(図中の符号「K2」である。)。
【0051】
電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出しは、電極用部材63の底部63aから連続した状態での張り出す領域L2aと、電極用部材63の底部63aから離間した状態での張り出す(いわゆる、海島構造(孤立した構造)である。)領域L2bとがある。
なお、電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出しを換言すると、固着部分において、固着(溶接)前に電極用部材63とリード棒用部材65とを当接させた当接面よりもリード棒用部材65側に位置する範囲(領域)であって、溶接前における電極用部材63の外周縁よりも内側に、電極用部材63の成分を含んだ領域が存在することを意味する。
【0052】
そして、この電極用部材63の成分を含む領域が、溶接前における電極用部材63の外周縁から連続して分布していても良いし、独立して分布していても良い。
ここでも、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面(線分C2−C2の一部に相当する。)が溶接により変化し、電極用部材63を構成しているすべての成分を含んだ領域が当該当接面である線分C2−C2を超えて張り出しており、この境界である線分I2が、直線状でなく、また、一定周期で同じ形状となるような形状でなく、このような形状の張り出しを不規則な張り出しとしている。
【0053】
また、ここでも、電極用部材63と溶着用部材69における互いの相手側への張り出しを換言すると、固着部分において、固着(溶接)前に電極用部材63と溶着用部材69とを当接させた当接面よりも電極用部材63(又は溶着用部材69)側に位置する範囲(領域)に、溶着用部材69の成分を含んだ領域が存在し、逆に、当接面よりも溶着用部材69側に位置する範囲(領域)に、電極用部材63の成分を含んだ領域が存在することを意味する。
【0054】
そして、この電極用部材63を構成している一部又は全部の成分を含んだ領域が、電極用部材63、溶接前における電極用部材63の外周縁から連続して分布していても良いし、独立して分布していても良い。
なお、電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出し量は図中の符号「F2」であり、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2の電極用部材63側への張り出し量は図中の符号「E2」である(両張り出し量とも、線分C2−C2を基準としている。)。
【0055】
また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2内であって電極用部材63との境界I2に近接する部分では、電極用部材63と溶着用部材69との合金領域Q2が形成されている。
同様に、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面が直線状(線分D2−D2に相当する。)であるのに対し、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2とリード棒用部材65の境界J2の線分は、同図に示すように、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面を示す線分D2−D2を跨がる様(乗り越える様)な不規則な形状をしている。
【0056】
つまり、リード棒用部材65を構成するすべての成分を含んだ領域が線分D2−D2を超えて電極用部材63側に不規則に張り出し(図中の符号「M2」である。)、また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2、つまり、溶着用部材69を構成する成分とリード棒用部材65を構成する成分とを含んだ領域が線分D2−D2を超えてリード棒用部材65側に不規則に張り出している(図中の符号「N2」である。)。
【0057】
また、サンプル2においては、電極用部材63の境界を示す線分I2と、リード棒用部材の65の境界を示す線分J2とが重なり合う領域(この線分を符号「IJ」で示す。)がある。つまり、電極用部材63を構成するすべての成分を含んだ領域とリード棒用部材65を構成する成分の一部を含んだ領域とが隣接している(このことは、溶着用部材を介さずに、電極用部材63とリード棒用部材65とを直接当接させてレーザ溶接した場合でも、両者の固着部分が相互に張り出した構造となることを示している。)。
【0058】
なお、リード棒用部材65の電極用部材63側への張り出し量は図中の符号「G2」であり、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2のリード棒用部材65側への張り出し量は図中の符号「H2」である。
ここでも、固着部分は、図9に示すように、合金領域R2の電極用部材63側への張り出し先端と、合金領域R2のリード棒用部材65側への張り出し先端との間としている。
【0059】
次に張り出し量について具体的に説明する。
溶接後の電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出し量F2は0.27[mm]程度であり、一方、合金領域R2の電極用部材63側への張り出し量E2は0.17[mm]程度である。
リード棒用部材65の電極用部材63側への張り出し量G2は、0.24[mm]程度であり、また、合金領域R1のリード棒用部材65側への張り出し量H2は0.24[mm]程度である。
7.溶接強度試験について
本発明にかかる電極予備体(以下、発明品という。)について引張試験を行った。
【0060】
引張試験は、電極予備体における電極用部材とリード棒用部材とをそれぞれ固定して、両者の固着部分にリード棒用部材の軸心方向と平行な方向の引張負荷を作用させて、その破壊した荷重から引張強度を算出した。なお、本発明品との比較のために、上記で説明した従来方法で製造した電極予備体(以下、従来品という。)についても同様の引張試験を行っている。
(1)発明品
発明品は、上記の実施の形態に係る電極予備体61である。
【0061】
溶接前の電極用部材63は、図3に示すように、筒部の軸心方向の全長L1が5.0[mm]、外径D1が1.7[mm]で、筒部の肉厚は、0.1[mm]である。底部63aの肉厚は0.2[mm]である。溶接前のリード棒用部材65の外径D2は0.8[mm]であり、溶接前の溶着用部材69は円板状(但し、箔を利用したものである。)をし、その厚さは0.2[mm]で、外径が0.8[mm]である。なお、この電極予備体61が組み込まれるガラス管31は、外径が3[mm]、内径が2[mm]である。
【0062】
レーザの照射箇所は、図4の(a)に示すように、溶着用部材69(電極用部材63とリード棒用部材65との間である。)の周方向に等間隔をおいた3箇所で、図4の(b)に示すように、レーザの照射方向とリード棒用部材65の軸心との角度Bが5度以上30度以下の範囲、例えば、15度で行われる。
ここで、レーザの角度を5度より小にすると、電極用部材63にレーザ光が遮られるため好ましくない。一方、レーザの角度を30度より大にすると、リード棒用部材65と溶着用部材69とに有効に照射されないため好ましくない。
【0063】
上記電極予備体61を製造する際のレーザの加工時の条件は、上述したように、レーザのエネルギー強度が4.6[kW]で、照射時間が15[ms]である。
なお、このレーザ加工の条件や照射位置は、一例であり、当然、電極用部材61等の材料、寸法が変わると、その条件も変わる。また、サンプル1及びサンプル2において、電極用部材61、溶着用部材69、リード棒用部材65の材料、寸法は同一であり、レーザ加工の条件や照射位置は同一であるが、その張り出した構造は互いに異なることが分かる。
(2)従来品
図10は、引張強度試験に用いた従来品を説明する図である。
【0064】
従来の方法で製造した電極予備体(従来品という。)921は、発明品と同様に、電極用部材923とリード棒用部材925とから構成されている。
ここでの電極用部材923は、横断面形状が円形状の筒部923aと、当該筒部923aの一端を塞ぐ底部923bと、底部923bから筒部923aと反対側に延出してリード棒用部材925の一端部925aを外嵌する外嵌部923cとを有し、縦断面形状が「H」字状をしている。
【0065】
従来方法で電極予備体921を製造する際のレーザの照射箇所は、図10の矢印で示すように、リード棒用部材925の周方向に等間隔をおいた複数個所(例えば、120度の等間隔で3箇所)で、レーザ光の照射は、外嵌部923c内に挿入されているリード棒用部材925の一端部925aに向けて行なわれる。
なお、上記「H」字状の電極用部材921は、外嵌部を有しない電極用部材(例えば、背景技術で説明した電極用部材901である。)に比べて、固着強度が高い傾向にあり、この形状の従来品よりも固着強度が高いことが発明品に要求されている。
【0066】
ここで、従来品の仕様について説明する。
電極予備体921は、ニッケル(Ni)製の電極用部材923と、タングステン(W)製のリード棒用部材925とから構成される。
溶接前の電極用部材923は、図10に示すように、軸心方向の全長9L1が5.5[mm]、外径9D1が1.7[mm]で、筒部の肉厚9t1は、0.1[mm]である。外嵌部923cを含めた底部923bの肉厚9t2は0.75[mm]である。溶接前のリード棒用部材925の外径9D2は0.8[mm]である。
【0067】
上記電極予備体921を製造する際のレーザの加工時の条件は、上述したように、レーザエネルギが5[kW]以上8[kW]以下の範囲で、照射時間が4[ms]以上5[ms]以下の範囲である。
(3)試験結果
試験は、発明品61、従来品921とも5本行い、その平均値が、発明品61では199[N]であるのに対し、従来品921では132[N]であり、発明品61の方が従来品921に比べて、約1.5倍になっているのが分かる。つまり、本発明に係る電極予備体61は、従来の方法で製作した電極予備体921に対して、電極用部材63とリード棒用部材65との固着強度が、約1.5倍に向上したといえる。
【0068】
これは、電極用部材63とリード棒用部材65との固着部分が相互に不規則に張り出した構造を有しているため、張り出した構造の領域内の合金領域の面積が拡大したため、固着強度が向上したと考えられる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態とすることも可能である。
1.電極予備体
(1)溶着用部材の有無について
実施の形態では、電極用部材とリード棒用部材との溶接に、溶着用部材を介して間接的に固着していたが、電極用部材とリード棒用部材とを直接的に固着しても良く、この場合においても、電極用部材とリード棒用部材との固着部分に、実施の形態で説明したような、不規則に張り出した構造が見られ、電極用部材とリード棒用部材との固着強度を高めることができる。
(2)形状について
実施の形態における電極用部材の形状が有底筒状、つまりカップ状をしていたが、他の形状であっても良い。他の形状としては、上記の「溶接強度について」で説明した「H」字形状等がある。
(3)材質について
実施の形態では、電極用部材の材料はニッケルで、リード棒用部材の材料はニッケルと鉄との合金であったが、他の材料も当然用いることができる。例えば、電極用部材及びリード棒用部材にモリブデンを使用しても良く、また、コバールも使用できる。
【0069】
但し、本発明では、電極用部材とリード棒用部材とを少なくとも一方を不規則に相手部材側に張り出す構造で固着するため、両部材は、レーザ等による加熱によって張り出すような融点を有している必要がある。具体的には、両部材の融点の差が、500[℃]以下の範囲、より張り出させるためには、前記融点の差が、100[℃]以下の範囲が好ましい。
【0070】
図11は、リード棒用部材をモリブデンで構成した場合の元素分布の概略図である。
本例における電極予備体101は、ニッケルにより構成された電極用部材103と、モリブデンにより構成されたリード棒用部材105と、電極用部材103とリード棒用部材105との間に配されかつ両者を結合するための溶着用部材107とからなる。なお、溶着溶部材107は、コバールにより構成されている。
【0071】
この電極予備体101は、溶着用部材107を介しての電極用部材103とリード棒用部材105との固着部分において、溶着用部材107を構成するすべての成分を含む領域(図11の符号「L3」で示す。)がリード棒用部材105側に張り出す構造となっている。
また、固着部分において、溶着用部材107を構成する成分のすべてを含んだ領域(図11の符号「R3」で示す。)と、電極用部材103を構成する成分うちの少なくとも1つの成分と溶着溶部材107を構成する成分のうちの少なくとも1つの成分とを含んだ領域(図11の符号「K3」で示す。)が、電極用部材103側に不規則に張り出す構造となっている。
【0072】
電極用部材103と合金領域K3との境界を示す線分I3は、図11に示すように、不規則な形状をしており、また、電極用部材103と溶着用部材107との互いの張り出しは、電極用部材103からの張り出し領域(図中の符号「L3」である。)と、溶着用部材107からの張り出し領域(図中の符号「R3」である。)との両領域において、張り出し量、張り出し幅、形状、張り出し領域の数が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
【0073】
このように、固着部分において不規則な張り出し構造を有するので固着部分の固着強度が向上する。
(4)溶接について
実施の形態では、溶接方法としてレーザを用いた場合について説明したが、電極用部材とリード棒用部材との固着部分(溶着用部材が介在する場合も含む)を、その内部で少なくとも一方の部材を他方の部材側に張り出した構造にし、当該構造を維持したまま、電極用部材とリード棒用部材とを直接的又は間接的に固着(溶接)することができれば良く、例えば、抵抗溶接や、レーザ溶接と抵抗溶接を組み合わせた溶接等を利用することもできる。
【0074】
抵抗溶接においてガラス材料との接着強度を高める酸化膜を有する材料を用いる場合、リード棒用部材と導入線用部材とを抵抗溶接した後に、酸化膜の形成処理をして電極用部材とリード棒用部材とを抵抗溶接している。そして、電極用部材とリード棒用部材とを抵抗溶接した後に、リード棒部材への封止体の溶着を行い、当該溶着が完了すると、上記の酸化膜を除去するために、還元処理が行なわれる。
【0075】
ここで、リード棒用部材と導入線用部材とを抵抗溶接した後に酸化膜の形成処理を行なうのは、先に酸化膜が形成された状態で抵抗溶接すると溶接電流が妨げられ、溶接強度が不安定になるからであり、また、電極用部材とリード棒用部材との抵抗溶接後に封止体の溶着を行うのは、先に封止体が溶着されると、その後の溶接の熱によって封止体にひずみやクラックが生じてしまうからである。
【0076】
したがって、酸化膜が形成されたまま電極用部材の溶接を行う必要があるが、レーザ溶接の場合は、酸化膜の有無に関係なく、安定した溶接強度を得ることができる。
また、電極用部材にニオブ材料を利用する場合、上記の還元処理においてニオブが水素を吸蔵して脆化してしまうため、酸化膜が形成されたリード棒用部材に封止体の溶接を行った後に、リード棒用部材と電極用部材とを溶接する必要があり、レーザ溶接が好適に利用される。
2.ランプ形状
上記実施の形態では、ランプのガラス管が、直管状をしていたが、当然他の形状をしていても良い。他の形状としては、例えば、「コ」字状、「U」字状、「L」字状、「V」字状、さらには、環状等がある。
【0077】
また、上記実施の形態では、ガラス管は直管状で屈曲部を有していないが、1箇所あるいは2箇所以上で屈曲部を有しても良い。
3.ランプのガラス管
実施の形態等のガラス管は、鉛フリーガラス、ホウ珪酸ガラスに限らず、鉛ガラス、ソーダガラス等を用いてもよい。この場合に、暗黒始動性を改善するには、ガラス内のナトリウムの含有量が5[mol%]以上20[mol%]以下であることが好ましい。すなわち、上記したようなガラスは、酸化ナトリウム(Na2O)に代表されるアルカリ金属酸化物を多く含み、例えば、酸化ナトリウムの場合はナトリウム(Na)成分が時間の経過とともにガラス管の内面に溶出する。ナトリウムは電気陰性度が低いため、(保護膜の形成されていない)ガラス管の内側端部に溶出したナトリウムが、暗黒始動性の向上に寄与するものと思われるからである。
【0078】
また、ガラス管を構成するガラスの膨張係数を調節することにより、放電ランプにおけるリード線が封着されている部分のリード線とガラス管との封着強度を高めることができる。例えば、リード線がタングステン製の場合には、ガラスの膨張係数を36×10−7[K−1]以上45×10−7[K−1]以下とすることが好ましい。この場合、ガラス中のアルカリ金属成分およびアルカリ土類金属成分の合計を4[mol%]以上10[mol%]以下とすることでガラスの膨張係数を上記の範囲とすることができる。
【0079】
一方、リード線がコバール(Kovar)製、モリブデン製の場合には、ガラスの膨張係数を45×10−7[K−1]以上56×10−7[K−1]以下とすることが好ましい。この場合、ガラス中のアルカリ金属成分およびアルカリ土類金属成分の合計を7[mol%]以上14[mol%]以下とすることでガラスの膨張係数を上記の範囲とすることができる。
【0080】
さらに、リード線がジュメット製や鉄とニッケルとクロムとの合金の場合には、ガラスの膨張係数を94×10−7[K−1]近傍とすることが好ましい。この場合、ガラス中のアルカリ金属成分およびアルカリ土類金属成分の合計を20[mol%]以上30[mol%]以下とすることでガラスの膨張係数を上記の範囲とすることができる。
また、ガラスに遷移金属の酸化物をその種類によって所定量をドープすることにより254[nm]や313[nm]の紫外線を吸収することができる。具体的には、例えば酸化チタン(TiO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収し、組成比率2[mol%]以上ドープすることにより313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化チタンを組成比率5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまうため、組成比率0.05[mol%]以上5.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0081】
また、酸化セリウム(CeO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化セリウムを組成比率0.05[mol%]以上0.5[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。なお、酸化セリウムに加えて酸化スズ(SnO)をドープすることにより、酸化セリウムによるガラスの着色を抑えることができるため、酸化セリウムを組成比率5.0[mol%]以下までドープすることができる。この場合、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]以上ドープすれば313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、この場合においても酸化セリウムを組成比率が5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまう。
【0082】
また、酸化亜鉛(ZnO)の場合は、組成比率2.0[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化亜鉛を組成比率10[mol%]より多くドープした場合、ガラスの膨張係数が大きくなり、リード線がタングステン製である場合に、リード線の膨張係数(約44×10−7[K−1])とガラスの膨張係数に差異が生じ、封着が困難となるため、酸化亜鉛を2.0[mol%]以上10[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。ただし、リード線がコバール製やモリブデン製の場合には、リード線の膨張係数(約51×10−7[K−1])がタングステン製の場合よりも大きくなるため、酸化亜鉛を組成比率14[mol%]以下までドープすることができる。さらに、酸化亜鉛を組成比率20[mol%]より多くドープした場合、ガラスが失透してしまうおそれがあるため、酸化亜鉛を2.0[mol%]以上20[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0083】
また、酸化鉄(Fe2O3)の場合は、組成比率0.01[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化鉄を組成比率2.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化鉄を組成比率0.01[mol%]以上2.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0084】
また、ガラス中の水分含有量を示す赤外線透過率係数は、0.3以上1.2以下の範囲、特に0.4以上0.8以下の範囲となるように調整することが好ましい。赤外線透過率係数が1.2以下であれば、外部電極蛍光ランプ(EEFL)や長尺の冷陰極蛍光ランプ等の高電圧印加ランプに適用可能な低い誘電正接を得やすくなり、0.8以下であれば誘電正接が十分に小さくなって、さらに高電圧印加ランプに適用可能となる。
なお、赤外線透過率係数(X)は下式で表すことができる。
[数式1]X=(log(a/b))/t
a:3840[cm−1]付近の極小点の透過率[%]
b:3560[cm−1]付近の極小点の透過率[%]
t:ガラスの厚み
4.放電ランプの蛍光体層
上記実施の形態では、蛍光体粒子として、YOX、LAP及びBAMを利用しているが、本発明における蛍光体粒子は、上記のものに限定するものではなく、他の蛍光体粒子を利用することもできる。この場合に、上記材料のものを含め、青色の蛍光体粒子は430[nm]以上460[nm]以下の範囲に、緑色の蛍光体粒子は510[nm]以上550[nm]以下の範囲に、赤色の蛍光体粒子は600[nm]以上780[nm]以下の範囲に、それぞれ発光ピークを有するものである。
(1)紫外線
例えば、近年、液晶カラーテレビの大型化に伴って、バックライトユニットの開口を塞ぐ拡散板に寸法安定性の良いポリカーボネートが使用されるようになっている。このポリカーボネートは、水銀が発する313[nm]の波長の紫外線により劣化しやすい。このような場合には、波長313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体粒子を利用すると良い。
【0085】
なお、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体粒子としては、以下のものがある。
(a)青色
ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1−x−ySrxEuyMg1−zMnzAl10O17]又は[Ba1−x−ySrxEuyMg2−zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0≦z<0.1なる条件を満たす数であるであることが好ましい。
【0086】
このような蛍光体粒子としては、例えば、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+] (略号:BAM−B)や、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+](略号:SBAM−B)等がある。
【0087】
この蛍光体粒子は、後述の緑色の蛍光体粒子と主成分が同じで、zの値によっては緑色用となる。このため、略号の最後に色を表す(−B)、(−G)を付加して色を区別する。
(b)緑色
・マンガン不活マグネシウムガレート[MgGa2O4:Mn2+](略号:MGM)
・マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al11O19:Mn2+](略号:CMZ)
・テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+](略号:CAT)
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1−x−ySrxEuyMg1−zMnzAl10O17]又は[Ba1−x−ySrxEuyMg2−zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0.1≦z≦0.6なる条件を満たす数であり、zは0.4≦x≦0.5であることが好ましい。
【0088】
このような蛍光体粒子としては、例えば、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:BAM−G)や、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:SBAM−G)等がある。
【0089】
(c)赤色
・ユーロピウム付活リン・バナジン酸イットリウム[Y(P,V)O4:Eu3+](略号:YPV)
・ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Eu3+](略号:YVO)
・ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド[Y2O2S:Eu3+](略号:YOS)
マンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム[3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+](略号:MFG)
・ジスプロシウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Dy3+](赤と緑の2成分発光蛍光体粒子であり、略号:YDS)
なお、一種類の発光色に対して、異なる化合物の蛍光体粒子を混合して用いても良い。例えば、青色にBAM−B(313[nm]を吸収する。)のみ、緑色にLAP(313[nm]を吸収しない。)とBAM−G(313[nm]を吸収する。)、赤色にYOX(313[nm]を吸収しない。)とYVO(313[nm]を吸収する。)の蛍光体粒子を用いても良い。このような場合は、前述のように波長313[nm]を吸収する蛍光体粒子が、総重量組成比率で50[%]より大きくなるように調整することで、紫外線がガラス管外に漏れ出ることをほとんど防止できる。
【0090】
したがって、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体粒子を蛍光体層に含む場合には、上記のバックライトユニットの開口を塞ぐポリカーボネートからなる拡散板等の紫外線による劣化が抑制され、バックライトユニットとしての特性を長時間維持することができる。
ここで、「313[nm]の紫外線を吸収する」とは、254[nm]付近の励起波長スペクトル(励起波長スペクトルとは、蛍光体粒子を波長変化させながら励起発光させ、励起波長と発光強度をプロットしたものである)の強度を100[%]としたときに、313[nm]の励起波長スペクトルの強度が80[%]以上のものと定義する。すなわち、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体粒子とは、313[nm]の紫外線を吸収して可視光に変換できる蛍光体粒子である。
(2)高色再現について
液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極蛍光ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0091】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体粒子を用いることで、実施の形態での蛍光体粒子を用いる場合よりも、色度範囲の拡大を図ることができる。具体的には、CIE1931色度図において、高色再現用の当該蛍光体粒子の色度座標値が、実施の形態で使用した3つの蛍光体粒子の色度座標値を結んでできる三角形を含んで色再現範囲を広げる座標に位置する。
【0092】
なお、以下に記載している蛍光体粒子(粉体)の色度座標値は、大塚電子(株)製の分光分析値装置(MCPD−7000)で測定した値を、小数点以下第4桁で四捨五入したものである。また、この色度座標値は、それぞれの蛍光体粒子における代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、若干異なる値を示す場合がある。
(a)青色
・ユーロピウム付活ストロンチウム・クロロアパタイト[Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.153、y=0.030
上記以外に、ユーロピウム付活ストロンチウム・カルシウム・バリウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SBCA)も使用でき、上記波長313[nm]の紫外線も吸収できるSBAM−Bも高色再現用に使用できる。
【0093】
(b)緑色
・BAM−G、色度座標:x=0.136、y=0.572
・CMZ、色度座標:x=0.164、y=0.722
・CAT、色度座標:x=0.284、y=0.635
・テルビウム・マンガン共付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+,Mn2+](略号:CAM)、色度座標:x=0.256、y=0.657
・マンガン付活ジンクリリケート[Zn2SiO4:Mn2+](略号:ZSM)、色度座標:x=0.248、y=0.700
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、MGMも高色再現用に使用することもできる。
【0094】
(c)赤色
・YOS、色度座標:x=0.658、y=0.330
・YVO、色度座標:x=0.661、y=0.328
・MFG、色度座標:x=0.708、y=0.288
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、YVO、YDSも高色再現用に使用することもできる。
【0095】
また、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体粒子のみで測定した代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体粒子が示す色度座標値は、上述した値と若干異なる場合があり得る。
参考として上記実施の形態の各蛍光体粒子の色度座標値は、YOX(x=0.643、y=0.348)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM−B(x=0.148、y=0,055)で構成されている。
【0096】
さらに、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体粒子は各波長につき1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
ここで、上記の高色再現用の蛍光体粒子を用いて蛍光体層を形成した場合について説明する。ここでの評価は、CIE1931色度図内においてNTSC規格の3原色の色度座標値を結ぶNTSC三角形(NTSCtriangle)の面積を基準とした、高色再現用の蛍光体粒子を用いた場合の3つの色度座標値を結んできる三角形の面積の比(以下、NTSC比という。)で行なう。
【0097】
例えば、青色としてBAM−B、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いるとNTSC比が92[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いるとNTSC比が100[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYOXを用いるとNTSC比が95[%]となり、赤色としてYVOを用いた場合や青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いた場合に比べて輝度を10[%]向上させることができる。
【0098】
なお、ここでの評価に用いた色度座標値は、ランプ等が組み込まれた液晶表示装置とした状態で測定したものである。
5.その他
実施の形態に係る電極予備体を、バックライトユニットの光源として利用されるランプとして説明したが、他の用途、例えば一般照明用のランプに適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、電極用部材とリード棒用部材とを溶接してなる電極予備体における電極用部材の強度等を高めるのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】発明に係る液晶表示装置を示す図であり、内部の様子がわかるように、一部を切り欠いている。
【図2】バックライトユニットの概略斜視図であり、内部の様子が分かるように前面パネルの一部を切り欠いている。
【図3】ランプを示す図であり、内部の電極の構成等が分かるように切り欠いている。
【図4】電極予備体の製造方法を説明する図である。
【図5】電極予備体製造時のレーザのエネルギーと照射時間との関係を示す図である。
【図6】電極予備体の縦断面における溶接部分の元素分布図である。
【図7】図6の(d)のトレース図である。
【図8】電極予備体の縦断面における溶接部分の元素分布図である。
【図9】図8の(d)のトレース図である。
【図10】引張強度試験に用いた従来品を説明する図である。
【図11】リード棒用部材をモリブデンで構成した場合の元素分布の概略図である。
【図12】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0101】
1 液晶表示装置
5 バックライトユニット
7 ランプ
31 ガラス管
33,35 電極構造体
45,47 電極
45a,47a 底部
45b,47b 筒部
49,51 リード棒
61 電極予備体
63 電極用部材
65 リード棒用部材
69 溶着用部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプに組み込む前の電極予備体、及び当該電極予備体を電極として備えるランプ、バックライトユニット、液晶表示装置並びにランプ用電極予備体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷陰極型のランプの電極に利用される電極予備体に、有底筒状の電極用部材の底部にリード棒用部材の一端をレーザ溶接により固着したものがある。
溶接時は、図12の(a)に示すように、有底筒状をした電極用部材901の底部901aとリード棒用部材903の一端面903aとを当接させた状態(当接部分が溶接予定部となる。)で、溶接予定部に対応する電極用部材901の底部901aにレーザを照射している。
【0003】
具体的には、電極用部材901の底901aに対して略直行する方向であって電極用部材901の開口側から電極用部材901底部901aに向けて(図中の矢印Oである。)レーザを照射している(特許文献参照)。
【特許文献1】特開2005−93119号公報
【特許文献2】特開2003−272520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電極用部材901とリード棒用部材903とを上述のようにレーザ溶接により固着した場合に、電極予備体901の強度が弱くなるという課題がある。
具体的には、電極予備体に対して振動試験を行った結果、図12の(a)に示すように、溶接部分(底部901a)の全体にクラック905が入る(図12の(a)は、溶接前の状態を示す図であるが、便宜上、当該図12の(a)を利用している。)。
【0005】
図12の(b)は、底部にクラックが入った電極予備体を図12の(a)の矢印Oの方向から見た図である。
底部901aのクラック905が、図12の(b)に示すように、連続的して1つの円形状になった場合には、電極用部材901の底部901aが筒部901bから外れることが判明した。なお、図12の(a)における電極用部材901は、縦断面を示す図であり、本来はハッチングを施すべきであるが、クラック905が紛らわしくなるので、ハッチングを省略している。
【0006】
上記の課題に鑑み、本発明は、電極用部材とリード棒用部材とを溶接により直接的又は間接的に固着してなる電極予備体における電極用部材の強度を含めた電極用部材とリード棒用部材との固着力を高めることができる電極予備体、ランプ、バックライトユニット、液晶表示装置及び前記固着力を高めることができる電極予備体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る電極予備体は、電極用部材とリード棒用部材とが溶接により固着されてなるランプ用の電極予備体であって、前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造となっていることを特徴とし、又は、電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して溶接により固着されてなるランプ用電極予備体であって、前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造となっていることを特徴とし、あるいは、電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して溶接により固着されてなるランプ用電極予備体であって、前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記溶着用部材が前記電極用部材とリード棒用部材との少なくとも一方の部材側に不規則に張り出す構造となっていることを特徴としている。
【0008】
ここで、少なくとも一方の部材が他方の部材に張り出すことは、当然、他方の部材も一方の部材側に張り出すこととなり、「不規則に張り出す構造」とは、互いの部材から張り出す量、大きさ、形状等のいずれかが異なる構造、あるいは、一方の部材と他方の部材との境界の形状が不規則な形状をした構造をいい、溶接後の他部材側への張り出しは、張り出している側の自部材から連続して張り出した連続構造をしていても良いし、あるいは、自部材と離間して張り出した離間構造(独立した海島構造や共連続構造等である。)をしていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る電極予備体では、固着部分において、固着に係る部材が他の部材側に不規則に張り出す構造を有しており、この構造を有することで、張り出している側の自部材と張り出されている側の他部材との固着強度が高まることを実験により確認できている。
また、電極用部材は、筒状の一端に端壁を備え、当該端壁への他部材の張り出しは、前記電極用部材の端壁における固着側と反対側の面にまで達していないことを特徴としている。このため、例えば、当該端壁への他部材の張り出しが、前記電極用部材の端壁における固着側と反対側の面にまで達している場合に比べて、端壁における固着部分と境界面が広くなり、結果的に、溶接後の電極用部材における端壁内の強度を高めることができる。
【0010】
さらに、合金領域は放電空間中の電子によりスパッタリングを受けやすく、張り出し部分が合金となり且つ張り出し部分が電極用部材の端壁における固着側と反対側の面(内面)に達している場合には、当該張り出し部分がスパッタリングを受け、これにより飛散した合金が蛍光体層に付着すると輝度低下や色むらを招くが、張り出し部分が電極用部材の端壁における固着側と反対側の面にまで達していないので、前記スパッタリングを受け難くできる。
【0011】
なお、ここでいう「他部材」とは、電極用部材とリード棒用部材とが直接固着している場合はリード棒用部材が該当し、電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して間接的に固着している場合は溶着用部材とリード棒用部材とが該当する。
一方、本発明に係るランプ、バックライトユニット及び液晶表示装置は、上記電極予備体を電極として備えるので、電極とリード棒との固着強度の高い電極を有することとなる。
【0012】
さらに、本発明に係る製造方法では、電極用部材とリード棒用部材とを当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、前記レーザ溶接は、前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分を、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われることを特徴とし、又は、電極用部材とリード棒用部材とを溶着用部材を介して当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、前記レーザ溶接は、前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分を、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われることを特徴とし、あるいは、電極用部材とリード棒用部材とを溶着用部材を介して当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、前記レーザ溶接は、前記溶着用部材を前記電極用部材とリード棒用部材との少なくとも一方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われることを特徴としている。
【0013】
この方法によると、固着部分が不規則に張り出す構造になり、その固着力が高まることが試験により確認されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る液晶表示装置、バックライトユニット、ランプ及び電極予備体について説明する。
1.液晶表示装置の構成について
図1は、発明に係る液晶表示装置を示す図であり、内部の様子がわかるように、一部を切り欠いている。
【0015】
液晶表示装置1は、例えば、液晶カラーテレビであり、液晶画面ユニット3とバックライトユニット5とが筐体4に組み込まれてなる。液晶画面ユニット3は、例えば、カラーフィルタ基板、液晶、TFT基板、駆動モジュール等(図示せず)を備え、液晶画面ユニット3の外部からの画像信号に基づいてカラー画像を液晶画面ユニット3の画面6に表示する。
2.バックライトユニットの構成について
図2は、バックライトユニットの概略斜視図であり、内部の様子が分かるように前面パネルの一部を切り欠いている。このバックライトユニット5は、図1に示す液晶画面ユニット3をその裏側から直接照射する、いわゆる、直下型のユニットである。
【0016】
バックライトユニット5は、所定方向(ここでは、ユニットの短手方向)に間隔をおいて複数列(例えば、14列)に配された直管状の蛍光ランプ(以下、この蛍光ランプを「ランプ」という。)7a,7b,7c,・・・,7n(以下、それぞれのランプを区別する必要がない時は、単に「7」の符号を用いる。)と、これらランプ7を収納する筐体9と、この筐体9の前面(開口部)を覆う前面パネル11とを備える。なお、図2では、ランプ7の固定手段、配線等の記載を省略している。
【0017】
筐体9は、白色のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製で、その内面がランプ7から発せられた光を表側に反射させる反射面となっている。なお、筐体9は、樹脂以外の材料、例えば、アルミニウム等の金属製であっても良く、また、反射面は、アルミニウム等の金属を蒸着して構成しても良い。
前面パネル11は、各ランプ7からの光を拡散させて平行光(前面パネル11の法線方向)として取り出すためのもので、例えば、拡散板17,拡散シート19,レンズシート21等から構成されている。なお、拡散板17には、アクリル材料が用いられている。
3.ランプの構成について
図3は、ランプを示す図であり、内部の電極構造体の構成等が分かるように切り欠いている。
【0018】
ランプ7は、1本のガラス管31の端部31a,31bに、冷陰極型の電極構造体33,35が封着されてなる、いわゆる冷陰極型の蛍光ランプである。この電極構造体33,35は、封止体48,50を介してガラス管31に封着されている。なお、封止体48,50には、その線膨張係数がガラス管31と近い材料が用いられる。
両端が封止されたガラス管31の内部に形成された放電空間40には、例えば、水銀や希ガス(例えば、アルゴン、ネオン)等が所定量封入されている。なお、希ガスは、減圧状態で封入されている。
【0019】
ガラス管31は、その横断面形状が、例えば円形状であり、内面には蛍光体層43が形成されている。ガラス管31の材料として、例えば、鉛フリーガラス(SiO2−BaO−Al2O3−Na2O+K2O−CeO2)が用いられる。なお、この場合、上記の封止体48,50には、当該ガラス管31と略同じ膨張係数のガラスを選択することが好ましい。
【0020】
なお、ガラス管31の材料に上記鉛フリーガラス以外の材料、例えば、ホウ珪酸ガラス(SiO2−B2O3−Al2O3−K2O−TiO2)を用いても良い。この場合も封止体の材料として、ガラス管と膨張係数が等しいガラス(例えばビードガラス)を用いることができる。ガラス管31は、内径が1.4[mm]以上7.0[mm]以下の範囲、肉厚が0.2[mm]以上0.6[mm]以下の範囲のものが多用されているが、本発明はこの寸法に限定するものではない。
【0021】
蛍光体層43は、例えば、3波長型の各蛍光体を含んでいる。3波長型の蛍光体としては、例えば、希土類蛍光体が利用され、ここでは、赤色発光のユーロピウム付活酸化イットリウム[Y2O3:Eu3+](略号:YOX)、緑色発光のセリウム・テルビウム共付活リン酸ランタン[LaPO4:Ce3+,Tb3+](略号:LAP)及び青色発光のユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+](略号:BAM−Bであり、「−B」については後述する。)の3種類が利用されている。
【0022】
この蛍光体層43は、図3から分かるように、一対の電極45,47間に対応するガラス管31の内面だけでなく、有効発光長を最長にするために、電極45,47の筒部45b,47bにおける外周面と対向している(ガラス管31における)内面(筒部45b,47bの内方側(放電空間の中央側)端から、外方側(底部45a,47aの外面側)端までの間の一部又は全部)にも形成されている。つまり、蛍光体層43の管軸方向の各端は、筒部45b,47bの内方端と外方端との間に存在する。
4.電極構造体(電極予備体)について
電極構造体33,35(本発明の電極に相当する。)は、例えば有底筒状の電極45,47と、当該電極45,47の底部45a,47aに間接的に固着されたリード棒49,51と、リード棒49,51に固着された外部導入線53,55を備える。なお、本実施の形態における電極構造体は、外部導入線53,55を備えているが、当該外部導入線を備えていなくても良い。
【0023】
電極45,47は、いわゆる冷陰極型であり、筒部45b、47bと、筒部45b,47bの一端に設けられた底部(発明の「端壁」に相当する。)45a,47aとからなる。なお、電極構造体33,35は、ガラス管31の端部31a,31bに封着されたものをいい、電極予備体は、ガラス管31に封着される前のもの、つまり、ガラス管31に組み込む前のものを指す。
【0024】
本実施の形態では、電極45,47としてはニッケル材料が用いられ、リード棒49,51として鉄とニッケルとの合金(FeNi)材料が、外部導入線53,55としてマンガンとニッケルの合金(MnNi)がそれぞれ用いられている。
なお、リード棒49,51は、ガラス管31に鉛フリーガラスを用いた場合、鉄とニッケルの合金を用いたが、ガラス管31に例えば、ホウ珪酸ガラスを用いると、例えばコバール(Ni−Co−Fe)、モリブデン、タングステンを用いることができる。
【0025】
電極45,47とリード棒49,51との間接的な固着は、レーザ溶接(レーザ加工)により行なわれている。つまり、電極45,47は、後述する溶着材57,59を介して、リード棒49,51に固着されている。
この固着された状態では、電極45,47とリード棒49,51との固着部分(溶着材を含む。)が、電極45,47を構成する成分のうち少なくとも1つの成分を含む領域と、リード棒49,51を構成する成分のうち少なくとも1つの成分を含む領域との少なくとも1つの領域が他部材側に不規則に張り出す構造(以下、単に「張り出す構造」ともいう。)となっている。
【0026】
ここで、電極45,47を構成する成分のうち少なくとも1つの成分を含む領域と、リード棒49,51を構成する成分のうち少なくとも1つの成分を含む領域との2つの領域が不規則に張り出す場合を、「相互に張り出す構造」ともいい、後で詳細に説明する。)となっている。
なお、リード棒49,51と外部導入線53,55との固着には、例えば抵抗溶接が利用され、また、電極45,47とリード棒49,51とが溶着材57,59を介して固着される場合でも、「電極45,47とリード棒49,51との固着部分」には、溶着材57,59を含んでいる。
5.電極予備体の製造方法について
図4は、電極予備体の製造方法を説明する図である。
【0027】
電極予備体61は、電極構造体33,35の電極45,47となるべき電極用部材63と、溶着材57,59となるべき溶着用部材69と、リード棒49,51となるべきリード棒用部材65と、電極構造体33,35の外部導入線53,55となるべき導入線用部材67とがこの順で固着されてなる。
具体的には、電極用部材63の底部63aとリード棒用部材65の一端面65aとを溶着用部材69を介して仮止めし、この状態で、図4の(a)、(b)に示すように、溶着用部材69の長手方向の略中心を通り且つリード棒用部材65の軸心と直交する線分Aに対してリード棒用部材65側に所定角度B傾斜した方向から、溶着用部材69の外周面であって長手方向の略中央に向けて、レーザを照射する。レーザの照射する目標位置は、溶着用部材69の周方向に等間隔(角度)を置いた複数個所(コストや位置調整の煩雑さ等の関係により、ここでは3箇所である。)である。
【0028】
上記の仮止めは、公知の技術により実施することができ、電極用部材63とリード棒用部材65とを溶着用部材69を介して当接させた状態で溶接することで行われる。
ここで、仮止めの溶接を、例えば、電極用部材63やリード棒用部材65の融点よりも低い温度で溶接(例えば抵抗溶接)する場合、溶着用部材69の材料に、電極用部材63やリード棒用部材65の融点よりも低いものを使用する必要があるが、さらに、電極用部材63やリード棒用部材65の体積に比べて小さいものが好ましい。これは、溶接時の操作性(溶け易さ)を向上させると共に熱容量を小さく(高効率)できるからである。
【0029】
図5は、電極予備体製造時のレーザのエネルギー強度と照射時間との関係を示す図である。
照射するレーザのエネルギー強度は、電極用部材63とリード棒用部材65との固着部分が一気に溶融して均一な合金層とならない(合金層が形成されない)強度、つまり、電極用部材63とリード棒用部材65との固着部分を、電極用部材63とリード棒用部材65との部材のうち少なくとも一方が他方の部材側に不規則に張り出した構造とし、その構造を維持できる強度である。
【0030】
同図に示すように、固着部分に均一な合金層(領域)が形成されないようにレーザのエネルギー強度を低めている分、照射時間は長くなっている。具体的には、照射するレーザのエネルギー強度は、2[kW]以上5[kW]以下の範囲、例えば4.6[kW]であり、照射時間は4[ms]以上20[ms]以下の範囲、例えば15[ms]である。
ここでいう「均一な合金層」とは、合金層内のどの場所においても、当該合金を構成している部材に由来の元素の割合が一定である領域をいい、例えば、SEMにより元素分析をおこなった場合に、均一さが確認できる範囲である。具体的には、SEMにより、倍率90[倍]で行って得られた分析分布図において、0.1[mm2]で区画したときに、区画された領域における元素の割合が同じである領域が均一な合金層である。
【0031】
なお、図5には、図10に示す電極予備体の製造時のレーザの照射エネルギーと時間との関係を破線で示している。
つまり、本実施の形態に係る電極予備体61の製造時のレーザのエネルギー強度は、従来の電極予備体901でのレーザのエネルギー強度より低くなっている。これは、従来のエネルギー強度で電極用部材とリード棒用部材とを溶接すると、その固着部分に電極用部材とリード棒用部材との合金が形成され、張り出した構造を有するように溶接できないためである。換言すれば、固着部分における不規則に張り出した構造は、電極用部材とリード棒用部材(と溶着用部材)との均一な合金(層)が形成される前の段階であり、合金が形成されるエネルギー強度よりも低いレーザを照射することで得られる。
【0032】
なお、電極用部材、リード棒用部材及び溶着用部材の各材料が上記材料と異なると、各部材の融点も異なり、当然にレーザのエネルギー強度や照射時間も上記範囲から外れることもあり得る。
上記の製造方法により、溶接後のリード棒用部材65の一端部分(65a)、溶接後の電極用部材63の底部63a、さらには溶着用部材69から形成される固着部分が(相互に)不規則に張り出した構造となる。
【0033】
なお、この不規則に張り出した部分は、当該部分の温度がそのまま降温し、後述する、溶接後の電極用部材の境界が規則な凹凸状(電極用部材がリード棒用部材側に張り出すと共に溶着用部材とリード棒用部材との合金領域が電極用部材側に張り出している。)をしている。
同様に、溶接後のリード棒用部材の境界が不規則な凹凸状(リード棒用部材が電極用部材側に張り出すと共に溶着用部材とリード棒用部材との合金領域がリード棒用部材側に張り出している。)をしている。つまり、溶接後の電極用部材の境界の形状が、溶接前の溶着用部材のリード棒用部材との当接面と異なる形状になり、また、溶接後のリード棒用部材の境界の形状が、溶接前のリード棒用部材の溶着用部材との当接面と異なる形状になる。
6.固着部分について
(1)サンプル1
図6は、電極予備体の縦断面における溶接部分の元素分布図であり、(a)は、電極用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(b)は、溶着用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(c)は、リード棒用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(d)は、(a)〜(c)を重ねたものを示す。また、図7は、図6の(d)のトレース図である。
【0034】
ここで、上述したが、電極用部材63はニッケルにより構成され、リード棒用部材65はニッケルと鉄との合金により構成され、さらに溶着用部材69はコバール箔(ニッケル、コバルト及び鉄の合金である。)により構成されている。このため、電極用部材63と溶着用部材69との合金領域(図7の「Q1」である。)は電極用部材63由来のニッケルが主成分となり、リード棒用部材65と溶着用部材69との合金領域(図7の「R1」である。)はリード棒用部材65由来の鉄が主成分となる。
【0035】
ここで、上記の合金領域Q1,R1は、この領域内においては、合金層内のどの場所においても、当該合金を構成している部材に由来の元素の割合が一定であり、均一な合金層である。
以下、図7を用いて、電極予備体の縦断面における固着部分の状態について説明する。
図7において、リード棒用部材65と溶着用部材69の合金領域R1を右上がりのハッチングで示し、当該合金領域R1と電極用部材63との境界を「I1」の線分で、また合金領域R1とリード棒用部材65との境界を「J1」の線分でそれぞれ表す。
【0036】
なお、線分C1−C1は、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面であり、線分D1−D1は、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面である。
溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面が直線状(線分C1−C1に相当する。)であるのに対し、溶接後の電極用部材63と合金領域R1との境界I1の線分は、同図に示すように、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面を示す線分C1−C1を跨がる様(乗り越える様)に不規則なジグザグ状をしている。
【0037】
つまり、電極用部材63を構成する成分の少なくとも1つ(ここでは、ニッケルである。)を含む領域が線分C1−C1を超えてリード棒用部材65側にくさび状に不規則な形状で張り出し(図中の符号「L1」である。)、また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1、すなわち、溶着用部材69を構成する成分の少なくとも1つ(ここでは、コバルトである)を含む領域が線分C1−C1を超えて電極用部材63側に不規則に張り出している(図中の符号「K1」である。)。
【0038】
ここで、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面(線分C1−C1の一部に相当する。)が溶接により変化し、電極用部材63を構成しているすべての成分を含んだ領域が当該当接面である線分C1−C1を超えて張り出しており、この境界線であるL1が、直線状でなく、また、一定周期で同じ形状とない不規則な形状をしている。
さらに、溶着用部材69のC1−C1を超えて電極用部材63側への張り出している領域(図中の符号「K1」である。)はここでは3つあるが、これらすべての領域における張り出し先端とC1−C1との距離で表す張り出し量、張り出している領域の境界I1とC1−C1との交差位置の間隔(C1−C1上の距離である。)で表す張り出し幅が異なり、また、その形状も異なっている。このようにC1−C1を超えて張り出す領域において、張り出す量、張り出し幅、形状等が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
【0039】
同様に、電極用部材63のC1−C1を超えて溶着用部材69側への張り出している領域(図中の符号「L1」である。)はここでは2つあるが、これらすべての領域において、張り出している領域の境界I1とC1−C1との交差位置の間隔(C1−C1上の距離である。)で表す張り出し幅が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
一方、電極用部材63と溶着用部材69との互いの張り出しは、電極用部材63からの張り出し領域(図中の符号「L1」である。)と、溶着用部材69からの張り出し領域(図中の符号「K1」である。)との両領域において、張り出し量、張り出し幅、形状が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
【0040】
なお、電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出し量は図中の符号「F1」であり(本例では線分D1−D1と偶然に一致しているだけである。)、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1の電極用部材63側への張り出し量は図中の符号「E1」である(両張り出し量とも、線分C1−C1を基準としている。)。
また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1内であって電極用部材63との境界I1に近接する部分では、電極用部材63と溶着用部材69との合金領域Q1が形成されている。つまり、この領域では、電極用部材63、溶着用部材69、リード棒用部材との合金となる。
【0041】
同様に、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面が直線状(線分D1−D1に相当する。)であるのに対し、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1とリード棒用部材65の境界J1の線分は、同図に示すように、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面を示す線分D1−D1を跨がる様(乗り越える様)な不規則な形状をしている。つまり、リード棒用部材65を構成するすべて成分を含んだ領域が線分D1−D1を超えて電極用部材63側に不規則に張り出し(図中の符号「M1」である。)、また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1、つまり、溶着用部材69を構成する成分とリード棒用部材65を構成する成分とを含んだ領域が線分D1−D1を超えてリード棒用部材65側に不規則に張り出している(図中の符号「N1」である。)。
【0042】
なお、リード棒用部材65の電極用部材63側への張り出し量は図中の符号「G1」であり、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R1のリード棒用部材65側への張り出し量は図中の符号「H1」である。
ここでも、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面(線分D1−D1の一部に相当する。)が溶接により変化し、リード棒用部材65を構成している成分を含んだ領域が当該当接面である線分D1−D1を超えて張り出しており、この境界線であるJ1が、直線状でなく、また、一定周期で同じ形状となるような形状でない。
【0043】
また、溶着用部材69のリード棒用部材65への張り出す領域(図中の符号「N1」である。)は、その張り出し量、張り出し幅、形状が異なっており、不規則に張り出す構造をしている。
一方、溶着用部材69とリード棒用部材65との互いの張り出しは、溶着用部材69からの張り出し領域(図中の符号「N1」である。)と、リード棒用部材65からの張り出し領域(図中の符号「M1」である。)との両領域において、張り出し量、張り出し幅、形状、張り出す領域数が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
【0044】
なお、張り出した構造は、ここでは、電極用部材63側とリード棒用部材65側との2箇所、すなわち、相互に張り出す構造をしているが、本発明は、電極用部材63側とリード棒用部材65側との少なくとも一方に張り出す構造であれば良い。
また、本発明に係る固着部分は、図7に示すように、合金領域R1の電極用部材63側への張り出し先端と、合金領域R1のリード棒用部材65側への張り出し先端との間としている。
【0045】
次に張り出し量について具体的に説明する。
溶接後の電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出し量F1は0.20[mm]程度であり、一方、合金領域R1の電極用部材63側への張り出し量E1は0.07[mm]程度である。
リード棒用部材65の電極用部材63側への張り出し量G1は0.07[mm]程度であり、また、合金領域R1のリード棒用部材65側への張り出し量H1は0.33[mm]程度である。
【0046】
なお、図6〜図7で示す電極予備体61に使用される溶接前の電極用部材63及びリード棒用部材65は、有底筒状の電極用部材63の底部の厚みが0.2[mm]で、筒部の外径が2.7[mm]で、リード棒用部材の外径が0.8[mm]である。また、溶着用部材69の厚みが0.2[mm]、外径が0.8[mm]である。
(2)サンプル2
図8は、電極予備体の縦断面における溶接部分の元素分布図であり、(a)は、電極用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(b)は、溶着用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(c)は、リード棒用部材の成分が50%以上含まれている領域を示し、(d)は、(a)〜(c)を重ねたものを示す。また、図9は、図8の(d)のトレース図である。
【0047】
ここで、電極用部材63、リード棒用部材65及び溶着用部材69は、サンプル1での電極用部材63、リード棒用部材65及び溶着用部材69と同じ仕様(材質、寸法)であり、また、レーザ溶接時の条件も同じである。このため、電極用部材63と溶着用部材69との間で形成される合金領域(図9の「Q2」である。)や電極用部材63と溶着用部材69との間で形成される合金領域(図9の「R2」である。)も、サンプル1と同じ成分を有する。
【0048】
以下、図9を用いて、電極予備体の縦断面における固着部分の状態について説明する。
図9において、リード棒用部材65と溶着用部材69の合金領域R2を右上がりのハッチングで示し、当該合金領域R2と電極用部材63との境界を「I2」の線分で、また合金領域R2とリード棒用部材65との境界を「J2」の線分でそれぞれ表す。
なお、線分C2−C2は、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面であり、線分D2−D2は、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面である。
【0049】
溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面が直線状(線分C2−C2に相当する。)であるのに対し、溶接後の合金領域R2と電極用部材63の境界I2の線分は、同図に示すように、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面を示す線分C2−C2を跨がる様(乗り越える様)に不規則な形状をし、さらに渦巻くように回り込んでいる。
【0050】
つまり、電極用部材63を構成する成分の少なくとも1つの成分を含む領域が線分C2−C2を超えてリード棒用部材65側に不規則な形状で張り出し(図中の符号「L2a」、「L2b」である。)、また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2、すなわち、溶着用部材69を構成する成分であるコバルトを含む領域が線分C2−C2を超えて電極用部材63側に不規則に張り出している(図中の符号「K2」である。)。
【0051】
電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出しは、電極用部材63の底部63aから連続した状態での張り出す領域L2aと、電極用部材63の底部63aから離間した状態での張り出す(いわゆる、海島構造(孤立した構造)である。)領域L2bとがある。
なお、電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出しを換言すると、固着部分において、固着(溶接)前に電極用部材63とリード棒用部材65とを当接させた当接面よりもリード棒用部材65側に位置する範囲(領域)であって、溶接前における電極用部材63の外周縁よりも内側に、電極用部材63の成分を含んだ領域が存在することを意味する。
【0052】
そして、この電極用部材63の成分を含む領域が、溶接前における電極用部材63の外周縁から連続して分布していても良いし、独立して分布していても良い。
ここでも、溶接前の電極用部材63と溶着用部材69との当接面(線分C2−C2の一部に相当する。)が溶接により変化し、電極用部材63を構成しているすべての成分を含んだ領域が当該当接面である線分C2−C2を超えて張り出しており、この境界である線分I2が、直線状でなく、また、一定周期で同じ形状となるような形状でなく、このような形状の張り出しを不規則な張り出しとしている。
【0053】
また、ここでも、電極用部材63と溶着用部材69における互いの相手側への張り出しを換言すると、固着部分において、固着(溶接)前に電極用部材63と溶着用部材69とを当接させた当接面よりも電極用部材63(又は溶着用部材69)側に位置する範囲(領域)に、溶着用部材69の成分を含んだ領域が存在し、逆に、当接面よりも溶着用部材69側に位置する範囲(領域)に、電極用部材63の成分を含んだ領域が存在することを意味する。
【0054】
そして、この電極用部材63を構成している一部又は全部の成分を含んだ領域が、電極用部材63、溶接前における電極用部材63の外周縁から連続して分布していても良いし、独立して分布していても良い。
なお、電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出し量は図中の符号「F2」であり、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2の電極用部材63側への張り出し量は図中の符号「E2」である(両張り出し量とも、線分C2−C2を基準としている。)。
【0055】
また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2内であって電極用部材63との境界I2に近接する部分では、電極用部材63と溶着用部材69との合金領域Q2が形成されている。
同様に、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面が直線状(線分D2−D2に相当する。)であるのに対し、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2とリード棒用部材65の境界J2の線分は、同図に示すように、溶接前のリード棒用部材65と溶着用部材69との当接面を示す線分D2−D2を跨がる様(乗り越える様)な不規則な形状をしている。
【0056】
つまり、リード棒用部材65を構成するすべての成分を含んだ領域が線分D2−D2を超えて電極用部材63側に不規則に張り出し(図中の符号「M2」である。)、また、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2、つまり、溶着用部材69を構成する成分とリード棒用部材65を構成する成分とを含んだ領域が線分D2−D2を超えてリード棒用部材65側に不規則に張り出している(図中の符号「N2」である。)。
【0057】
また、サンプル2においては、電極用部材63の境界を示す線分I2と、リード棒用部材の65の境界を示す線分J2とが重なり合う領域(この線分を符号「IJ」で示す。)がある。つまり、電極用部材63を構成するすべての成分を含んだ領域とリード棒用部材65を構成する成分の一部を含んだ領域とが隣接している(このことは、溶着用部材を介さずに、電極用部材63とリード棒用部材65とを直接当接させてレーザ溶接した場合でも、両者の固着部分が相互に張り出した構造となることを示している。)。
【0058】
なお、リード棒用部材65の電極用部材63側への張り出し量は図中の符号「G2」であり、溶着用部材69とリード棒用部材65との合金領域R2のリード棒用部材65側への張り出し量は図中の符号「H2」である。
ここでも、固着部分は、図9に示すように、合金領域R2の電極用部材63側への張り出し先端と、合金領域R2のリード棒用部材65側への張り出し先端との間としている。
【0059】
次に張り出し量について具体的に説明する。
溶接後の電極用部材63のリード棒用部材65側への張り出し量F2は0.27[mm]程度であり、一方、合金領域R2の電極用部材63側への張り出し量E2は0.17[mm]程度である。
リード棒用部材65の電極用部材63側への張り出し量G2は、0.24[mm]程度であり、また、合金領域R1のリード棒用部材65側への張り出し量H2は0.24[mm]程度である。
7.溶接強度試験について
本発明にかかる電極予備体(以下、発明品という。)について引張試験を行った。
【0060】
引張試験は、電極予備体における電極用部材とリード棒用部材とをそれぞれ固定して、両者の固着部分にリード棒用部材の軸心方向と平行な方向の引張負荷を作用させて、その破壊した荷重から引張強度を算出した。なお、本発明品との比較のために、上記で説明した従来方法で製造した電極予備体(以下、従来品という。)についても同様の引張試験を行っている。
(1)発明品
発明品は、上記の実施の形態に係る電極予備体61である。
【0061】
溶接前の電極用部材63は、図3に示すように、筒部の軸心方向の全長L1が5.0[mm]、外径D1が1.7[mm]で、筒部の肉厚は、0.1[mm]である。底部63aの肉厚は0.2[mm]である。溶接前のリード棒用部材65の外径D2は0.8[mm]であり、溶接前の溶着用部材69は円板状(但し、箔を利用したものである。)をし、その厚さは0.2[mm]で、外径が0.8[mm]である。なお、この電極予備体61が組み込まれるガラス管31は、外径が3[mm]、内径が2[mm]である。
【0062】
レーザの照射箇所は、図4の(a)に示すように、溶着用部材69(電極用部材63とリード棒用部材65との間である。)の周方向に等間隔をおいた3箇所で、図4の(b)に示すように、レーザの照射方向とリード棒用部材65の軸心との角度Bが5度以上30度以下の範囲、例えば、15度で行われる。
ここで、レーザの角度を5度より小にすると、電極用部材63にレーザ光が遮られるため好ましくない。一方、レーザの角度を30度より大にすると、リード棒用部材65と溶着用部材69とに有効に照射されないため好ましくない。
【0063】
上記電極予備体61を製造する際のレーザの加工時の条件は、上述したように、レーザのエネルギー強度が4.6[kW]で、照射時間が15[ms]である。
なお、このレーザ加工の条件や照射位置は、一例であり、当然、電極用部材61等の材料、寸法が変わると、その条件も変わる。また、サンプル1及びサンプル2において、電極用部材61、溶着用部材69、リード棒用部材65の材料、寸法は同一であり、レーザ加工の条件や照射位置は同一であるが、その張り出した構造は互いに異なることが分かる。
(2)従来品
図10は、引張強度試験に用いた従来品を説明する図である。
【0064】
従来の方法で製造した電極予備体(従来品という。)921は、発明品と同様に、電極用部材923とリード棒用部材925とから構成されている。
ここでの電極用部材923は、横断面形状が円形状の筒部923aと、当該筒部923aの一端を塞ぐ底部923bと、底部923bから筒部923aと反対側に延出してリード棒用部材925の一端部925aを外嵌する外嵌部923cとを有し、縦断面形状が「H」字状をしている。
【0065】
従来方法で電極予備体921を製造する際のレーザの照射箇所は、図10の矢印で示すように、リード棒用部材925の周方向に等間隔をおいた複数個所(例えば、120度の等間隔で3箇所)で、レーザ光の照射は、外嵌部923c内に挿入されているリード棒用部材925の一端部925aに向けて行なわれる。
なお、上記「H」字状の電極用部材921は、外嵌部を有しない電極用部材(例えば、背景技術で説明した電極用部材901である。)に比べて、固着強度が高い傾向にあり、この形状の従来品よりも固着強度が高いことが発明品に要求されている。
【0066】
ここで、従来品の仕様について説明する。
電極予備体921は、ニッケル(Ni)製の電極用部材923と、タングステン(W)製のリード棒用部材925とから構成される。
溶接前の電極用部材923は、図10に示すように、軸心方向の全長9L1が5.5[mm]、外径9D1が1.7[mm]で、筒部の肉厚9t1は、0.1[mm]である。外嵌部923cを含めた底部923bの肉厚9t2は0.75[mm]である。溶接前のリード棒用部材925の外径9D2は0.8[mm]である。
【0067】
上記電極予備体921を製造する際のレーザの加工時の条件は、上述したように、レーザエネルギが5[kW]以上8[kW]以下の範囲で、照射時間が4[ms]以上5[ms]以下の範囲である。
(3)試験結果
試験は、発明品61、従来品921とも5本行い、その平均値が、発明品61では199[N]であるのに対し、従来品921では132[N]であり、発明品61の方が従来品921に比べて、約1.5倍になっているのが分かる。つまり、本発明に係る電極予備体61は、従来の方法で製作した電極予備体921に対して、電極用部材63とリード棒用部材65との固着強度が、約1.5倍に向上したといえる。
【0068】
これは、電極用部材63とリード棒用部材65との固着部分が相互に不規則に張り出した構造を有しているため、張り出した構造の領域内の合金領域の面積が拡大したため、固着強度が向上したと考えられる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下のような形態とすることも可能である。
1.電極予備体
(1)溶着用部材の有無について
実施の形態では、電極用部材とリード棒用部材との溶接に、溶着用部材を介して間接的に固着していたが、電極用部材とリード棒用部材とを直接的に固着しても良く、この場合においても、電極用部材とリード棒用部材との固着部分に、実施の形態で説明したような、不規則に張り出した構造が見られ、電極用部材とリード棒用部材との固着強度を高めることができる。
(2)形状について
実施の形態における電極用部材の形状が有底筒状、つまりカップ状をしていたが、他の形状であっても良い。他の形状としては、上記の「溶接強度について」で説明した「H」字形状等がある。
(3)材質について
実施の形態では、電極用部材の材料はニッケルで、リード棒用部材の材料はニッケルと鉄との合金であったが、他の材料も当然用いることができる。例えば、電極用部材及びリード棒用部材にモリブデンを使用しても良く、また、コバールも使用できる。
【0069】
但し、本発明では、電極用部材とリード棒用部材とを少なくとも一方を不規則に相手部材側に張り出す構造で固着するため、両部材は、レーザ等による加熱によって張り出すような融点を有している必要がある。具体的には、両部材の融点の差が、500[℃]以下の範囲、より張り出させるためには、前記融点の差が、100[℃]以下の範囲が好ましい。
【0070】
図11は、リード棒用部材をモリブデンで構成した場合の元素分布の概略図である。
本例における電極予備体101は、ニッケルにより構成された電極用部材103と、モリブデンにより構成されたリード棒用部材105と、電極用部材103とリード棒用部材105との間に配されかつ両者を結合するための溶着用部材107とからなる。なお、溶着溶部材107は、コバールにより構成されている。
【0071】
この電極予備体101は、溶着用部材107を介しての電極用部材103とリード棒用部材105との固着部分において、溶着用部材107を構成するすべての成分を含む領域(図11の符号「L3」で示す。)がリード棒用部材105側に張り出す構造となっている。
また、固着部分において、溶着用部材107を構成する成分のすべてを含んだ領域(図11の符号「R3」で示す。)と、電極用部材103を構成する成分うちの少なくとも1つの成分と溶着溶部材107を構成する成分のうちの少なくとも1つの成分とを含んだ領域(図11の符号「K3」で示す。)が、電極用部材103側に不規則に張り出す構造となっている。
【0072】
電極用部材103と合金領域K3との境界を示す線分I3は、図11に示すように、不規則な形状をしており、また、電極用部材103と溶着用部材107との互いの張り出しは、電極用部材103からの張り出し領域(図中の符号「L3」である。)と、溶着用部材107からの張り出し領域(図中の符号「R3」である。)との両領域において、張り出し量、張り出し幅、形状、張り出し領域の数が異なり、不規則な張り出し構造をしている。
【0073】
このように、固着部分において不規則な張り出し構造を有するので固着部分の固着強度が向上する。
(4)溶接について
実施の形態では、溶接方法としてレーザを用いた場合について説明したが、電極用部材とリード棒用部材との固着部分(溶着用部材が介在する場合も含む)を、その内部で少なくとも一方の部材を他方の部材側に張り出した構造にし、当該構造を維持したまま、電極用部材とリード棒用部材とを直接的又は間接的に固着(溶接)することができれば良く、例えば、抵抗溶接や、レーザ溶接と抵抗溶接を組み合わせた溶接等を利用することもできる。
【0074】
抵抗溶接においてガラス材料との接着強度を高める酸化膜を有する材料を用いる場合、リード棒用部材と導入線用部材とを抵抗溶接した後に、酸化膜の形成処理をして電極用部材とリード棒用部材とを抵抗溶接している。そして、電極用部材とリード棒用部材とを抵抗溶接した後に、リード棒部材への封止体の溶着を行い、当該溶着が完了すると、上記の酸化膜を除去するために、還元処理が行なわれる。
【0075】
ここで、リード棒用部材と導入線用部材とを抵抗溶接した後に酸化膜の形成処理を行なうのは、先に酸化膜が形成された状態で抵抗溶接すると溶接電流が妨げられ、溶接強度が不安定になるからであり、また、電極用部材とリード棒用部材との抵抗溶接後に封止体の溶着を行うのは、先に封止体が溶着されると、その後の溶接の熱によって封止体にひずみやクラックが生じてしまうからである。
【0076】
したがって、酸化膜が形成されたまま電極用部材の溶接を行う必要があるが、レーザ溶接の場合は、酸化膜の有無に関係なく、安定した溶接強度を得ることができる。
また、電極用部材にニオブ材料を利用する場合、上記の還元処理においてニオブが水素を吸蔵して脆化してしまうため、酸化膜が形成されたリード棒用部材に封止体の溶接を行った後に、リード棒用部材と電極用部材とを溶接する必要があり、レーザ溶接が好適に利用される。
2.ランプ形状
上記実施の形態では、ランプのガラス管が、直管状をしていたが、当然他の形状をしていても良い。他の形状としては、例えば、「コ」字状、「U」字状、「L」字状、「V」字状、さらには、環状等がある。
【0077】
また、上記実施の形態では、ガラス管は直管状で屈曲部を有していないが、1箇所あるいは2箇所以上で屈曲部を有しても良い。
3.ランプのガラス管
実施の形態等のガラス管は、鉛フリーガラス、ホウ珪酸ガラスに限らず、鉛ガラス、ソーダガラス等を用いてもよい。この場合に、暗黒始動性を改善するには、ガラス内のナトリウムの含有量が5[mol%]以上20[mol%]以下であることが好ましい。すなわち、上記したようなガラスは、酸化ナトリウム(Na2O)に代表されるアルカリ金属酸化物を多く含み、例えば、酸化ナトリウムの場合はナトリウム(Na)成分が時間の経過とともにガラス管の内面に溶出する。ナトリウムは電気陰性度が低いため、(保護膜の形成されていない)ガラス管の内側端部に溶出したナトリウムが、暗黒始動性の向上に寄与するものと思われるからである。
【0078】
また、ガラス管を構成するガラスの膨張係数を調節することにより、放電ランプにおけるリード線が封着されている部分のリード線とガラス管との封着強度を高めることができる。例えば、リード線がタングステン製の場合には、ガラスの膨張係数を36×10−7[K−1]以上45×10−7[K−1]以下とすることが好ましい。この場合、ガラス中のアルカリ金属成分およびアルカリ土類金属成分の合計を4[mol%]以上10[mol%]以下とすることでガラスの膨張係数を上記の範囲とすることができる。
【0079】
一方、リード線がコバール(Kovar)製、モリブデン製の場合には、ガラスの膨張係数を45×10−7[K−1]以上56×10−7[K−1]以下とすることが好ましい。この場合、ガラス中のアルカリ金属成分およびアルカリ土類金属成分の合計を7[mol%]以上14[mol%]以下とすることでガラスの膨張係数を上記の範囲とすることができる。
【0080】
さらに、リード線がジュメット製や鉄とニッケルとクロムとの合金の場合には、ガラスの膨張係数を94×10−7[K−1]近傍とすることが好ましい。この場合、ガラス中のアルカリ金属成分およびアルカリ土類金属成分の合計を20[mol%]以上30[mol%]以下とすることでガラスの膨張係数を上記の範囲とすることができる。
また、ガラスに遷移金属の酸化物をその種類によって所定量をドープすることにより254[nm]や313[nm]の紫外線を吸収することができる。具体的には、例えば酸化チタン(TiO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収し、組成比率2[mol%]以上ドープすることにより313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化チタンを組成比率5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまうため、組成比率0.05[mol%]以上5.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0081】
また、酸化セリウム(CeO2)の場合は、組成比率0.05[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化セリウムを組成比率0.05[mol%]以上0.5[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。なお、酸化セリウムに加えて酸化スズ(SnO)をドープすることにより、酸化セリウムによるガラスの着色を抑えることができるため、酸化セリウムを組成比率5.0[mol%]以下までドープすることができる。この場合、酸化セリウムを組成比率0.5[mol%]以上ドープすれば313[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、この場合においても酸化セリウムを組成比率が5.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが失透してしまう。
【0082】
また、酸化亜鉛(ZnO)の場合は、組成比率2.0[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化亜鉛を組成比率10[mol%]より多くドープした場合、ガラスの膨張係数が大きくなり、リード線がタングステン製である場合に、リード線の膨張係数(約44×10−7[K−1])とガラスの膨張係数に差異が生じ、封着が困難となるため、酸化亜鉛を2.0[mol%]以上10[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。ただし、リード線がコバール製やモリブデン製の場合には、リード線の膨張係数(約51×10−7[K−1])がタングステン製の場合よりも大きくなるため、酸化亜鉛を組成比率14[mol%]以下までドープすることができる。さらに、酸化亜鉛を組成比率20[mol%]より多くドープした場合、ガラスが失透してしまうおそれがあるため、酸化亜鉛を2.0[mol%]以上20[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0083】
また、酸化鉄(Fe2O3)の場合は、組成比率0.01[mol%]以上ドープすることにより254[nm]の紫外線を吸収することができる。ただし、酸化鉄を組成比率2.0[mol%]より多くドープした場合には、ガラスが着色してしまうため、酸化鉄を組成比率0.01[mol%]以上2.0[mol%]以下の範囲でドープすることが好ましい。
【0084】
また、ガラス中の水分含有量を示す赤外線透過率係数は、0.3以上1.2以下の範囲、特に0.4以上0.8以下の範囲となるように調整することが好ましい。赤外線透過率係数が1.2以下であれば、外部電極蛍光ランプ(EEFL)や長尺の冷陰極蛍光ランプ等の高電圧印加ランプに適用可能な低い誘電正接を得やすくなり、0.8以下であれば誘電正接が十分に小さくなって、さらに高電圧印加ランプに適用可能となる。
なお、赤外線透過率係数(X)は下式で表すことができる。
[数式1]X=(log(a/b))/t
a:3840[cm−1]付近の極小点の透過率[%]
b:3560[cm−1]付近の極小点の透過率[%]
t:ガラスの厚み
4.放電ランプの蛍光体層
上記実施の形態では、蛍光体粒子として、YOX、LAP及びBAMを利用しているが、本発明における蛍光体粒子は、上記のものに限定するものではなく、他の蛍光体粒子を利用することもできる。この場合に、上記材料のものを含め、青色の蛍光体粒子は430[nm]以上460[nm]以下の範囲に、緑色の蛍光体粒子は510[nm]以上550[nm]以下の範囲に、赤色の蛍光体粒子は600[nm]以上780[nm]以下の範囲に、それぞれ発光ピークを有するものである。
(1)紫外線
例えば、近年、液晶カラーテレビの大型化に伴って、バックライトユニットの開口を塞ぐ拡散板に寸法安定性の良いポリカーボネートが使用されるようになっている。このポリカーボネートは、水銀が発する313[nm]の波長の紫外線により劣化しやすい。このような場合には、波長313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体粒子を利用すると良い。
【0085】
なお、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体粒子としては、以下のものがある。
(a)青色
ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1−x−ySrxEuyMg1−zMnzAl10O17]又は[Ba1−x−ySrxEuyMg2−zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0≦z<0.1なる条件を満たす数であるであることが好ましい。
【0086】
このような蛍光体粒子としては、例えば、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+] (略号:BAM−B)や、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+](略号:SBAM−B)等がある。
【0087】
この蛍光体粒子は、後述の緑色の蛍光体粒子と主成分が同じで、zの値によっては緑色用となる。このため、略号の最後に色を表す(−B)、(−G)を付加して色を区別する。
(b)緑色
・マンガン不活マグネシウムガレート[MgGa2O4:Mn2+](略号:MGM)
・マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al11O19:Mn2+](略号:CMZ)
・テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+](略号:CAT)
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1−x−ySrxEuyMg1−zMnzAl10O17]又は[Ba1−x−ySrxEuyMg2−zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0.1≦z≦0.6なる条件を満たす数であり、zは0.4≦x≦0.5であることが好ましい。
【0088】
このような蛍光体粒子としては、例えば、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:BAM−G)や、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:SBAM−G)等がある。
【0089】
(c)赤色
・ユーロピウム付活リン・バナジン酸イットリウム[Y(P,V)O4:Eu3+](略号:YPV)
・ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Eu3+](略号:YVO)
・ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド[Y2O2S:Eu3+](略号:YOS)
マンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム[3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+](略号:MFG)
・ジスプロシウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Dy3+](赤と緑の2成分発光蛍光体粒子であり、略号:YDS)
なお、一種類の発光色に対して、異なる化合物の蛍光体粒子を混合して用いても良い。例えば、青色にBAM−B(313[nm]を吸収する。)のみ、緑色にLAP(313[nm]を吸収しない。)とBAM−G(313[nm]を吸収する。)、赤色にYOX(313[nm]を吸収しない。)とYVO(313[nm]を吸収する。)の蛍光体粒子を用いても良い。このような場合は、前述のように波長313[nm]を吸収する蛍光体粒子が、総重量組成比率で50[%]より大きくなるように調整することで、紫外線がガラス管外に漏れ出ることをほとんど防止できる。
【0090】
したがって、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体粒子を蛍光体層に含む場合には、上記のバックライトユニットの開口を塞ぐポリカーボネートからなる拡散板等の紫外線による劣化が抑制され、バックライトユニットとしての特性を長時間維持することができる。
ここで、「313[nm]の紫外線を吸収する」とは、254[nm]付近の励起波長スペクトル(励起波長スペクトルとは、蛍光体粒子を波長変化させながら励起発光させ、励起波長と発光強度をプロットしたものである)の強度を100[%]としたときに、313[nm]の励起波長スペクトルの強度が80[%]以上のものと定義する。すなわち、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体粒子とは、313[nm]の紫外線を吸収して可視光に変換できる蛍光体粒子である。
(2)高色再現について
液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極蛍光ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0091】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体粒子を用いることで、実施の形態での蛍光体粒子を用いる場合よりも、色度範囲の拡大を図ることができる。具体的には、CIE1931色度図において、高色再現用の当該蛍光体粒子の色度座標値が、実施の形態で使用した3つの蛍光体粒子の色度座標値を結んでできる三角形を含んで色再現範囲を広げる座標に位置する。
【0092】
なお、以下に記載している蛍光体粒子(粉体)の色度座標値は、大塚電子(株)製の分光分析値装置(MCPD−7000)で測定した値を、小数点以下第4桁で四捨五入したものである。また、この色度座標値は、それぞれの蛍光体粒子における代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、若干異なる値を示す場合がある。
(a)青色
・ユーロピウム付活ストロンチウム・クロロアパタイト[Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.153、y=0.030
上記以外に、ユーロピウム付活ストロンチウム・カルシウム・バリウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SBCA)も使用でき、上記波長313[nm]の紫外線も吸収できるSBAM−Bも高色再現用に使用できる。
【0093】
(b)緑色
・BAM−G、色度座標:x=0.136、y=0.572
・CMZ、色度座標:x=0.164、y=0.722
・CAT、色度座標:x=0.284、y=0.635
・テルビウム・マンガン共付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+,Mn2+](略号:CAM)、色度座標:x=0.256、y=0.657
・マンガン付活ジンクリリケート[Zn2SiO4:Mn2+](略号:ZSM)、色度座標:x=0.248、y=0.700
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、MGMも高色再現用に使用することもできる。
【0094】
(c)赤色
・YOS、色度座標:x=0.658、y=0.330
・YVO、色度座標:x=0.661、y=0.328
・MFG、色度座標:x=0.708、y=0.288
なお、これらは上述したように、波長313[nm]の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、YVO、YDSも高色再現用に使用することもできる。
【0095】
また、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体粒子のみで測定した代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体粒子が示す色度座標値は、上述した値と若干異なる場合があり得る。
参考として上記実施の形態の各蛍光体粒子の色度座標値は、YOX(x=0.643、y=0.348)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM−B(x=0.148、y=0,055)で構成されている。
【0096】
さらに、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体粒子は各波長につき1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
ここで、上記の高色再現用の蛍光体粒子を用いて蛍光体層を形成した場合について説明する。ここでの評価は、CIE1931色度図内においてNTSC規格の3原色の色度座標値を結ぶNTSC三角形(NTSCtriangle)の面積を基準とした、高色再現用の蛍光体粒子を用いた場合の3つの色度座標値を結んできる三角形の面積の比(以下、NTSC比という。)で行なう。
【0097】
例えば、青色としてBAM−B、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いるとNTSC比が92[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いるとNTSC比が100[%]となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYOXを用いるとNTSC比が95[%]となり、赤色としてYVOを用いた場合や青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いた場合に比べて輝度を10[%]向上させることができる。
【0098】
なお、ここでの評価に用いた色度座標値は、ランプ等が組み込まれた液晶表示装置とした状態で測定したものである。
5.その他
実施の形態に係る電極予備体を、バックライトユニットの光源として利用されるランプとして説明したが、他の用途、例えば一般照明用のランプに適用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、電極用部材とリード棒用部材とを溶接してなる電極予備体における電極用部材の強度等を高めるのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】発明に係る液晶表示装置を示す図であり、内部の様子がわかるように、一部を切り欠いている。
【図2】バックライトユニットの概略斜視図であり、内部の様子が分かるように前面パネルの一部を切り欠いている。
【図3】ランプを示す図であり、内部の電極の構成等が分かるように切り欠いている。
【図4】電極予備体の製造方法を説明する図である。
【図5】電極予備体製造時のレーザのエネルギーと照射時間との関係を示す図である。
【図6】電極予備体の縦断面における溶接部分の元素分布図である。
【図7】図6の(d)のトレース図である。
【図8】電極予備体の縦断面における溶接部分の元素分布図である。
【図9】図8の(d)のトレース図である。
【図10】引張強度試験に用いた従来品を説明する図である。
【図11】リード棒用部材をモリブデンで構成した場合の元素分布の概略図である。
【図12】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0101】
1 液晶表示装置
5 バックライトユニット
7 ランプ
31 ガラス管
33,35 電極構造体
45,47 電極
45a,47a 底部
45b,47b 筒部
49,51 リード棒
61 電極予備体
63 電極用部材
65 リード棒用部材
69 溶着用部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極用部材とリード棒用部材とが溶接により固着されてなるランプ用の電極予備体であって、
前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造となっている
ことを特徴とする電極予備体。
【請求項2】
電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して溶接により固着されてなるランプ用電極予備体であって、
前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造となっている
ことを特徴とする電極予備体。
【請求項3】
電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して溶接により固着されてなるランプ用電極予備体であって、
前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記溶着用部材が前記電極用部材とリード棒用部材との少なくとも一方の部材側に不規則に張り出す構造となっている
ことを特徴とする電極予備体。
【請求項4】
電極用部材は、筒状の一端に端壁を備え、
当該端壁への他部材の張り出しは、前記電極用部材の端壁における固着側と反対側の面にまで達していない
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極予備体。
【請求項5】
ガラス管の端部に封着された電極予備体を電極として利用するランプにおいて、
前記電極予備体は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極予備体である
ことを特徴とするランプ。
【請求項6】
ランプを備えるバックライトユニットであって、
前記ランプは、請求項5に記載のランプである
ことを特徴とするバックライトユニット。
【請求項7】
表面に表示部を有する液晶パネルと、当該液晶パネルの裏側に配されたバックライトユニットとを備える液晶表示装置であって、
前記バックライトユニットは、請求項6に記載のバックライトユニットである
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
電極用部材とリード棒用部材とを当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、
前記レーザ溶接は、前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分を、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われる
ことを特徴とするランプ用電極予備体の製造方法。
【請求項9】
電極用部材とリード棒用部材とを溶着用部材を介して当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、
前記レーザ溶接は、前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分を、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われる
ことを特徴とするランプ用電極予備体の製造方法。
【請求項10】
電極用部材とリード棒用部材とを溶着用部材を介して当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、
前記レーザ溶接は、前記溶着用部材を前記電極用部材とリード棒用部材との少なくとも一方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われる
ことを特徴とするランプ用電極予備体の製造方法。
【請求項1】
電極用部材とリード棒用部材とが溶接により固着されてなるランプ用の電極予備体であって、
前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造となっている
ことを特徴とする電極予備体。
【請求項2】
電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して溶接により固着されてなるランプ用電極予備体であって、
前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造となっている
ことを特徴とする電極予備体。
【請求項3】
電極用部材とリード棒用部材とが溶着用部材を介して溶接により固着されてなるランプ用電極予備体であって、
前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分は、前記溶着用部材が前記電極用部材とリード棒用部材との少なくとも一方の部材側に不規則に張り出す構造となっている
ことを特徴とする電極予備体。
【請求項4】
電極用部材は、筒状の一端に端壁を備え、
当該端壁への他部材の張り出しは、前記電極用部材の端壁における固着側と反対側の面にまで達していない
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極予備体。
【請求項5】
ガラス管の端部に封着された電極予備体を電極として利用するランプにおいて、
前記電極予備体は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極予備体である
ことを特徴とするランプ。
【請求項6】
ランプを備えるバックライトユニットであって、
前記ランプは、請求項5に記載のランプである
ことを特徴とするバックライトユニット。
【請求項7】
表面に表示部を有する液晶パネルと、当該液晶パネルの裏側に配されたバックライトユニットとを備える液晶表示装置であって、
前記バックライトユニットは、請求項6に記載のバックライトユニットである
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
電極用部材とリード棒用部材とを当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、
前記レーザ溶接は、前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分を、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われる
ことを特徴とするランプ用電極予備体の製造方法。
【請求項9】
電極用部材とリード棒用部材とを溶着用部材を介して当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、
前記レーザ溶接は、前記溶着用部材を介しての前記電極用部材と前記リード棒用部材との固着部分を、前記電極用部材と前記リード棒用部材のうち、少なくとも一方の部材が他方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われる
ことを特徴とするランプ用電極予備体の製造方法。
【請求項10】
電極用部材とリード棒用部材とを溶着用部材を介して当接した状態でレーザ溶接してなるランプ用電極予備体の製造方法であって、
前記レーザ溶接は、前記溶着用部材を前記電極用部材とリード棒用部材との少なくとも一方の部材側に不規則に張り出す構造にし、当該構造を維持したまま行われる
ことを特徴とするランプ用電極予備体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−110953(P2009−110953A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265413(P2008−265413)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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