説明

電極部および電極システム

【課題】生体の線状組織に確実かつ容易に取り付け可能な電極システムを提供する。
【解決手段】電極システム1は、所定の線状組織Nに巻きつくように湾曲した湾曲形状および平坦な平坦形状のいずれか一方から他方に少なくとも一部が形状を切り替え可能な電極部2と、電極部の少なくとも一部の形状を湾曲形状および平坦形状のいずれか一方から他方に切り替える処置具3とを備え、電極部は、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材9と、絶縁部材が湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面9aに設けられ所定の電圧を印加可能な電極10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状組織に電気的刺激を与える電極部および電極システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、神経刺激装置、疼痛緩和装置、てんかん治療装置、および筋肉刺激装置等の、電気的刺激を直接または間接的に神経組織および筋肉等の生体組織(線状組織)に与え、治療を行う刺激発生装置が知られている。これらの刺激発生装置は内部に電源を有していて、電気的刺激を伝達する電極リードとともに生体に埋め込まれて使用される。
一般に、電極リードは、生体組織に電気的刺激を与え、もしくは生体組織に生じる電気的興奮を検出するための少なくとも1つの電極部と、刺激発生装置と電気的に接続するための電気コネクタと、電極部と刺激発生装置との間に設けられ電気的刺激を伝達するためのリードボディとを有している。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の神経刺激用の電極アセンブリ(電極部)は、互いに反対方向に延びるように螺旋状に形成された一対の電極を有しており、この一対の電極が神経に巻きつくように装着される。特許文献2に記載の電極システム(電極部)では、所定の方向に延びる背骨状部材と、この背骨状部材から肋骨状に互い違いに延びる指部材とが生体適合性を有する高分子材料で一体に形成されている。指部材の内側の面には電極が設けられていて、電極システムの指部材が神経組織に巻きつくように装着されたときに電極が神経に当接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4920979号明細書
【特許文献2】米国特許第5095905号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの電極部を線状組織に装着するのは技術的に容易ではない。具体的には、神経組織に隣接して血管が存在することが多く、神経組織に電極部を取り付けるときには、神経組織と血管とを結合する組織(結合織)を部分的に剥離して神経組織の周囲を分離し、この分離した部分に電極部を挿入し、把持鉗子等の処置具で電極部を神経組織に取り付ける必要がある。しかし、神経組織の周囲は混み入っており、電極部を神経組織に取り付けるのには、術者に一定以上の熟練が必要とされ、困難なものとなっている。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、生体の線状組織に確実かつ容易に取り付け可能な電極部および電極システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の電極システムは、所定の線状組織に巻きつくように湾曲した湾曲形状および平坦な平坦形状のいずれか一方から他方に少なくとも一部が形状を切り替え可能な電極部と、前記電極部の前記少なくとも一部の形状を前記湾曲形状および前記平坦形状のいずれか一方から他方に切り替える処置具と、を備え、前記電極部は、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ所定の電圧を印加可能な電極と、を有することを特徴としている。
【0008】
また、上記の電極システムにおいて、前記電極部は、外力が作用していない自然状態で前記湾曲形状となるように形成され、前記処置具は、前記湾曲形状の前記電極部を前記平坦形状に切り替えて保持するとともに、前記保持を解除可能な伸展機構を有することがより好ましい。
【0009】
また、上記の電極システムにおいて、前記絶縁部材は、自身が湾曲する湾曲方向に平行に延びる電極側係合部が形成され、前記伸展機構は、前記絶縁部材より剛性が高い材質で所定の方向に延びるように形成され、前記絶縁部材の前記電極側係合部に着脱可能に係合する伸展部材と、前記絶縁部材から前記伸展部材が取り外される際に前記絶縁部材に当接される当接部材と、を有することがより好ましい。
【0010】
また、上記の電極システムにおいて、前記電極側係合部は、前記絶縁部材が前記湾曲形状となったときの湾曲の軸線方向の両端部側にそれぞれ形成され、前記伸展機構は、2つの前記伸展部材と、前記2つの伸展部材が、それぞれが延びる前記所定の方向に交差する方向に並ぶように支持するとともに、前記2つの伸展部材の前記交差する方向の間隔を調整可能な部材間隔調整部と、をさらに有することがより好ましい。
【0011】
また、上記の電極システムにおいて、前記伸展機構は、前記絶縁部材における前記一方の面側、および前記一方の面とは反対側の他方の面側から前記電極部を挟持して前記電極部を前記平坦形状に保持するとともに、前記挟持を解除可能なことがより好ましい。
【0012】
また、上記の電極システムにおいて、前記伸展機構は、前記湾曲形状に形成された前記電極部の湾曲を伸ばして所定の電極部伸展方向に伸展させたものを、前記電極部伸展方向と自身の軸線方向とが平行になるように内部に収容する管状部材と、前記管状部材内の前記電極部を前記管状部材の前記軸線方向の先端側に押し出す押し出し部材と、を有することがより好ましい。
【0013】
また、上記の電極システムにおいて、前記伸展機構は、前記湾曲形状に形成された前記電極部の湾曲を伸ばして所定の電極部伸展方向に伸展させたものにおいて、前記絶縁部材の前記一方の面側に配置されるとともに前記電極部伸展方向の一方側に移動可能な第一の挟持部材と、前記絶縁部材の前記他方の面側に配置される第二の挟持部材と、前記絶縁部材の前記電極部伸展方向の一方側に当接する支持部材と、を有することがより好ましい。
【0014】
また、上記の電極システムにおいて、前記伸展機構は、前記絶縁部材の前記少なくとも一部における前記絶縁部材が湾曲する湾曲方向の一端側を保持する一端側保持部と、前記絶縁部材の前記少なくとも一部における前記絶縁部材の前記湾曲方向の他端側に係止される他端側係止部と、前記一端側保持部と前記他端側係止部との間隔を調整可能な間隔調整機構と、を有することがより好ましい。
【0015】
また、上記の電極システムにおいて、前記電極部は、外力が作用していない自然状態で前記平坦形状となるように形成され、前記処置具は、前記平坦形状の前記電極部を前記湾曲形状に切り替え可能な湾曲機構を有することがより好ましい。
【0016】
また、上記の電極システムにおいて、前記絶縁部材は、前記一方の面に平行に延びる電極側係合部が形成され、前記電極部は、前記絶縁部材より剛性が高い弾性材料で所定の線状組織に巻きつくように湾曲した形状に形成され、前記電極側係合部に係合可能とされた湾曲部材を有し、前記湾曲機構は、前記絶縁部材を把持する把持部と、一定の剛性を有して所定の方向に延びるように形成され、前記絶縁部材の前記電極側係合部に着脱可能に係合する補強部材と、前記湾曲部材を前記湾曲部材の湾曲を伸ばす湾曲部伸展方向に伸展した状態で保持するとともに、前記湾曲部伸展方向に伸展した湾曲部材を前記湾曲部伸展方向に押し出す押出し部と、を有することがより好ましい。
【0017】
また、本発明の電極部は、外力が作用していない自然状態で少なくとも一部が所定の線状組織に巻きつくように湾曲した湾曲形状に形成され、前記少なくとも一部が平坦な平坦形状に形状を切り替え可能な電極部であって、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状となったときに湾曲の内側の面に設けられ所定の電圧を印加可能な電極と、を備え、前記絶縁部材には、自身が湾曲する湾曲方向に平行に延びる電極側係合部が形成されていることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の電極部は、外力が作用していない自然状態で少なくとも一部が平坦な平坦形状に形成され、前記少なくとも一部が所定の線状組織に巻きつくように湾曲した湾曲形状に形状を切り替え可能な電極部であって、弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材が前記湾曲形状となったときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ所定の電圧を印加可能な電極と、前記絶縁部材より剛性が高い弾性材料で湾曲した形状に形成された湾曲部材と、を有し、前記絶縁部材には、前記絶縁部材の前記一方の面に平行に延び前記湾曲部材が係合する電極側係合部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電極部および電極システムによれば、生体の線状組織に確実かつ容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の電極システムの平面図である。
【図2】同電極システムの電極部の外力が作用していない自然状態における斜視図である。
【図3】同電極部の湾曲を伸ばして平坦形状にしたときの斜視図である。
【図4】同電極部を平坦形状にしたときの要部断面図である。
【図5】同電極システムの処置具の側面断面図である。
【図6】図5中の切断線A1−A1の断面図である。
【図7】患者の神経組織の状態を示す説明図である。
【図8】同電極部に処置具の伸展部材を挿通させる手順を示す説明図である。
【図9】同電極部と処置具をトロッカーに挿通する手順を示す説明図である。
【図10】同電極部を平坦形状にして神経組織と膜との間に挿入した状態を示す説明図である。
【図11】同電極部から伸展部材を取り外す手順を示す説明図である。
【図12】同電極部を神経組織に取り付けた状態を示す図である。
【図13】本発明の第1実施形態の変形例における電極システムの電極部の斜視図である。
【図14】本発明の第1実施形態の変形例における電極システムの電極部の斜視図である。
【図15】本発明の第1実施形態の変形例における電極システムの電極部の斜視図である。
【図16】同電極システムの電極部に処置具の伸展部材を挿通させたときの側面図である。
【図17】同電極部に処置具の伸展部材を挿通させたときの底面図である。
【図18】本発明の第1実施形態の変形例における電極システムの電極部を平坦形状にしたときの平面図である。
【図19】本発明の第1実施形態の変形例における電極システムの電極部に処置具の伸展部材を挿通したときの平面図である。
【図20】本発明の第1実施形態の変形例における電極システムの電極部の斜視図である。
【図21】本発明の第2実施形態の電極システムの電極部の平面図である。
【図22】同電極システムの電極部に処置具の伸展部材を挿通させたときの平面図である。
【図23】本発明の第2実施形態の変形例における電極システムの電極部の平面図である。
【図24】同電極システムの電極部に処置具の伸展部材を挿通させたときの平面図である。
【図25】本発明の第3実施形態の電極システムの一部を破断した平面図である。
【図26】同電極システムの電極部の自然状態での斜視図である。
【図27】同電極部を平坦形状にしたときの斜視図である。
【図28】同電極部に処置具の伸展部材を挿通させたときの斜視図である。
【図29】同電極部を処置具の伸展部材により広げたときの斜視図である。
【図30】同電極部から伸展部材を取り外す状態を示す斜視図である。
【図31】本発明の第4実施形態の電極システムの斜視図である。
【図32】同電極システムの電極部を平坦形状に伸展させたときの平面図である。
【図33】同電極システムの処置具に同電極部を取り付けたときの状態を示す平面図である。
【図34】同処置具に同電極部を取り付けたときの状態を示す側面図である。
【図35】同電極部を神経組織に取り付けた状態を示す断面図である。
【図36】本発明の第5実施形態の電極システムの平面断面図である。
【図37】同電極システムの側面断面図である。
【図38】同電極システムの電極部を神経組織に取り付けた状態を示す断面図である。
【図39】本発明の第6実施形態の電極システムの斜視図である。
【図40】同電極システムの処置具の側面断面図である。
【図41】同電極システムの電極部を神経組織に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図42】本発明の第7実施形態の電極システムの斜視図である。
【図43】同電極システムの処置具が電極部に取り付けられる状態を示す側面図である。
【図44】同処置具が同電極部に取り付けられた状態を示す側面の断面図である。
【図45】同電極部が神経組織と膜との間に挿入された状態を示す図である。
【図46】同電極部を神経組織に取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電極システムの第1実施形態を、図1から図20を参照しながら説明する。以下の実施形態では、この電極システムが神経刺激装置とともに用いられる場合を例にとって説明する。
図1に示すように、本実施形態の電極システム1は、神経組織(線状組織)に所定の電圧を印加する電極部2と、神経組織に電極部2を取り付けるための処置具3とを備えて構成されている。なお、本実施形態では、電極システム1は神経組織に付与する電気的刺激を発生させる神経刺激装置5と、電極部2と神経刺激装置5とを電気的に接続するリードボディ6とともに用いられる。
【0022】
図2および図3に示すように、電極部2は、神経組織に巻きつくように湾曲した湾曲形状および平坦な平坦形状のいずれか一方から他方に全体の形状が切り替え(変形)可能なものであり、本実施形態では、電極部2は外力が作用していない自然状態で図2に示す湾曲形状に形成され、図3に示す平坦形状に切り替え可能となっている。
電極部2は、弾性材料でシート状に形成された電極支持体(絶縁部材)9と、電極支持体9が湾曲形状になったときに湾曲の内側の面となる一方の面9aに設けられた一対の電極10とを有している。
【0023】
電極支持体9は、神経組織を損傷させないように、シリコン等の柔らかい絶縁材料で形成されている。
電極10は、電極支持体9が湾曲形状となったときの湾曲の軸線C1方向の両端部側に、電極支持体9が湾曲する湾曲方向D1に平行に延びるように電極支持体9の一方の面9aから露出した状態で設けられている。電極10は弾性を有し生体適合性の高い金属等で形成され、自然状態で湾曲形状に形成されている。つまり、本実施形態では、電極10の弾性力により、電極部2の形状は自然状態で湾曲形状になるとともに平坦形状に変形できる。
【0024】
図2および図4に示すように、電極支持体9には、一方の面9aとは反対側の他方の面9bの軸線C1方向の両端部に、断面が円形の貫通孔であるガイド孔(電極側係合部)11がそれぞれ形成されている。本実施形態では、ガイド孔11は、他方の面9bから外側に突出した部分内に湾曲方向D1に平行に延びるように形成されている。
なお、後述するようにガイド孔11には電極部2を平坦形状に伸ばすための伸展部材13が係合するが、軸線C1方向の位置は、ガイド孔11と電極10とで一致するように配置されることが好ましい。伸展部材13により、電極10の弾性力に抗して電極部2を平坦形状に効果的に伸ばすことができるからである。
【0025】
図1に示すように、処置具3は、電極部2の形状を前記湾曲形状および前記平坦形状のいずれか一方から他方に切り替えるものであり、本実施形態では、処置具3は湾曲形状の電極部2を平坦形状に切り替えて保持するとともに、保持を解除可能な伸展機構12を有する。
図5および図6に示すように、伸展機構12は、電極支持体9より剛性が高い材質で所定の方向に延びるように形成された一対の伸展部材13と、電極支持体9のガイド孔11から伸展部材13が取り外される際に当接される押え棒(当接部材)14とを有して構成されている。
【0026】
伸展部材13は金属等で形成され、その先端側は、電極支持体9のガイド孔11に着脱可能に係合することができる。一対の伸展部材13は、基端側で互いに固定されて全体として略Y字状に構成されている。そして、伸展部材13の基端側は、押え棒14の基端側で押え棒14の長さ方向に延びる支持孔14aに挿通されている。このように、伸展部材13は押え棒14に対してスライド可能となっている。
また、押え棒14の先端には、押え棒14が当接するリードボディ6の先端側の形状に対応する凹部14bが形成されている。
【0027】
神経刺激装置5は不図示の電源を有し、神経組織が発生する電気的信号を検出し、所定の波形の電気的刺激を発生する。これにより、神経刺激装置5は、電極部2で取得した神経組織の信号を検出し、必要に応じてこの神経組織に電気的刺激を印加することができる。
リードボディ6は公知の構成のものが用いられ、電極10と神経刺激装置5とを電気的に接続する不図示のコイルと、コイルの外周を覆う絶縁性で可撓性を有するチューブ15(図1参照)を有している。
【0028】
次に、以上のように構成された電極システム1を用いて、図7に示すような神経組織Nに電極部2を取り付ける手技について説明する。
まず、術者は、患者の胸部に不図示のトロッカーT(図9参照)を取り付け、胸腔の内部を不図示の胸腔鏡で観察する。そして、胸腔内に不図示のナイフ等の切開用処置具を挿入し、所望の神経組織Nの周辺に位置する膜等の周辺組織Mを切断して神経組織Nを露出させる。
続いて、図8に示すように、押え棒14の凹部14bをリードボディ6の先端側に係合させることで、リードボディ6を挟んで押え棒14を電極部2に当接させる。そして、湾曲形状の電極部2のガイド孔11に伸展部材13の先端側を挿通し係合させることで、図9に示すように電極部2を平坦形状に切り替える(平坦化工程)。そして、電極部2と処置具3とが一体になった状態でトロッカーT内を挿通させる。
【0029】
次に、図10に示すように、電極部2の一方の面9a側が神経組織Nに対向するように、平坦形状に変形させた電極部2の先端側を神経組織Nと周辺組織Mとの間に挿入する(位置決め工程)。
そして、図11に示すように、押え棒14の位置を固定した状態でガイド孔11から伸展部材13を引き抜くことで、図12に示すように電極部2が湾曲形状に戻り電極部2が神経組織Nに巻きついて電極10が神経組織Nに接触する。
なお、神経組織Nの全周にわたり電極10が神経組織Nに接触していなくても、神経組織Nの全周のうちの一部に電極10が接触していればよい。電極10が神経組織Nに接触している範囲が広ければ神経刺激装置5が発生する電気的刺激を神経組織Nに効果的に伝達することができ、接触している範囲が狭ければ電極10が神経組織Nに巻きつくことにより神経組織Nに与える損傷を抑えることができるため、接触の度合いは術者や医師等が適宜設定してよい。
【0030】
続いて、術者は、リードボディ6と神経刺激装置5を患者の皮下に埋め込み、手技を終了する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の電極システム1によれば、術者は、処置具3により電極部2を平坦形状に切り替えて電極部2の一方の面9側が神経組織Nに対向するように配置する。そして、処置具3により電極部2の形状を湾曲形状に切り替えることで、電極10を神経組織Nに当接させつつ電極部2を神経組織Nに巻きつける。
このため、たとえば、神経組織Nが混み入った組織の間にある場合であっても、電極部2を平坦形状に切り替えてから神経組織Nに近づけることで、電極部2を患者の神経組織Nに確実かつ容易に取り付け、所定の電圧を印加することができる。
【0032】
また、湾曲形状の電極部2のガイド孔11に伸展部材13を挿通し係合させることで、電極部2を平坦形状に切り替える。そして、電極部2の一方の面9aを神経組織Nに近づけた状態で、押え棒14を電極部2に当接させつつガイド孔11から伸展部材13を引き抜くことで電極部2が湾曲形状に戻るので、電極部2を神経組織Nに容易に巻きつけることができる。
さらに、電極10は電極支持体9の一方の面9a側のみに設けられているので、電極10が神経組織N以外の組織に接触するのを防止することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、電極支持体9の軸線C1方向の両端部にガイド孔11をそれぞれ形成した。しかし、電極支持体9に形成するガイド孔11の数に制限はなく、3つ以上でもよいし、図13に示す変形例のように1つでもよい。
また、本実施形態では、電極支持体9に形成されたガイド孔11の断面形状は円形であった。しかし、ガイド孔11の断面形状は、円形に限ることなく、楕円形状や、図14に示すガイド孔(電極側係合部)18のように矩形形状等の多角形形状でもよい。ガイド孔の断面形状を多角形形状とし、伸展部材の形状をこのガイド孔に対応する形状とすることで、伸展部材がガイド孔内で自身の軸線回りに回転するのを防止し、安定した形状切り替えを行うことができる。
【0034】
また、本実施形態では、ガイド孔11は湾曲方向D1に平行に延びるように形成されているが、図15に示すガイド孔21のように、湾曲方向D1に間隔をおいて複数形成されてもよい。
この場合、電極部2を平坦形状に伸ばしてガイド孔21に伸展部材13を係合させたときは、図16および図17に示すように、それぞれの伸展部材13に対して複数のガイド孔21が係合されることになる。
【0035】
また、本実施形態では、図18に示すように、電極支持体9の先端側に、先端側に向かうほど幅が狭くなる先細り部24を設けてもよい。このように構成することで、電極部2の先端側を神経組織Nと周辺組織Mとの間に挿入するときの挿入性を向上させることができる。
そして、本実施形態では、図19に示すように、処置具3の伸展部材13に代えて、所定の方向に延びる長さが伸展部材13より長い伸展部材27を有する処置具28を備えることで、一対の伸展部材27に一度に複数の電極部2を取り付けてもよい。このように構成することで、処置具28をトロッカーTから患者の体外に取り出すことなく、処置具28で一度に複数の電極部2を線状組織等に取り付けることができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、図20に示すように、外力が作用していない自然状態で略半分に折れるように曲がり、内側に神経組織Nを挟む湾曲形状となるように構成された電極部31であってもよい。
本変形例では、電極部31は、弾性材料でシート状に形成された電極支持体(絶縁部材)32と、電極支持体32の内側の面32aに設けられた一対の電極33とを有している。電極33は、弾性を有する金属材料等で板状に形成されるとともに、中央部に自然状態で所定の湾曲した形状になる曲がり癖部33aが設けられている。
また、本変形例では、ガイド孔(電極側係合部)34は、電極支持体32における内側の面32aと、内側の面32aとは反対側の外側の面32bとの間に形成されている。ガイド孔34をこのように形成することにより、電極支持体32の最大厚さを抑えることができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図21から図24を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図21に示すように、本実施形態の電極システム41は、第1実施形態の電極システム1の電極部2に代えて電極部42を備えている。
電極部42は、外力が作用していない自然状態で神経組織Nに所定の方向回りに螺旋状に巻きつくように構成されている。
本実施形態では、電極部42は、弾性材料でシート状に形成された電極支持体(絶縁部材)43と、電極支持体43の内側の面43aに設けられた一対の電極44とを有している。
また、電極支持体43には、自身が螺旋状に湾曲する湾曲方向D2に平行に延びるガイド孔(電極側係合部)45が形成されていて、図22に示すように、伸展部材13が着脱可能に係合する。
【0038】
このように構成された本実施形態の電極システム41によれば、電極部42を神経組織Nに確実かつ容易に取り付けることができる。
さらに、電極部42を神経組織Nの周りに複数回巻き付けることができるので、電極部42の神経組織Nへの取り付けがより確実になる。また、電極部42の平坦形状における幅寸法L(図22を参照)を抑え、電極部42を挿通するのに必要なトロッカーの内径を小さくすることができる。
【0039】
また、本実施形態では、電極部42に代えて、図23に示す変形例のように、外力が作用していない自然状態で神経組織Nの軸線C6に所定の方向回りに螺旋状に巻きつくように構成された部分と、所定の方向と反対方向回りに螺旋状に巻きつくように構成された部分との先端同士を接続した形状の電極部47を備えてもよい。本変形例では、電極部47に電極44が一対備えられ、それぞれの電極44は、略螺旋状に形成された電極支持体(絶縁部材)48の内側の面48aに、湾曲方向D3、D4に平行に延びるように配置されている。これら、湾曲方向D3と湾曲方向D4は、軸線C6回りの巻き方向が互いに異なるものである。
この電極部47のガイド孔45に伸展部材13を挿通させると、図24に示すように、電極支持体48は略V字状の平坦形状に切り替えられる。
なお、本変形例では、リードボディ49の先端側に設けられた接続部50に押え棒14を当接させた状態で、電極部47から伸展部材13を取り外すことになる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図25から図30を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図25に示すように、本実施形態の電極システム61は、電極部2に代えて電極部62を備え、処置具3に代えて、伸展機構64を有する処置具63を備えている。なお、電極部62は、外力が作用していない自然状態において、図26に示すように湾曲形状となるように形成されている。
【0041】
図26および図27に示すように、電極部62には、電極部2のガイド孔11に代えて、電極支持体9における一方の面9aと他方の面9bとの間に形成された一対のガイド孔(電極側係合部)65が形成されている。また、リードボディ6は、電極支持体9の基端側の中央部において上記実施形態より比較的狭い範囲で接続されている。
【0042】
図25に示すように、伸展機構64は、一対の伸展部材60と、電極支持体9において伸展部材60が取り外される際に当接される押え棒(当接部材)66と、一対の伸展部材60の間隔を調整可能な部材間隔調整部67とを有して構成されている。
伸展部材60は、金属のワイヤー等で略棒状に形成された部材である。
部材間隔調整部67は、伸展部材60の基端部に固定され一対の伸展部材60が略平行に並ぶように支持するとともに、自身が弾性変形して伸展部材60間の間隔を所望の値に調整可能なバネ部材68と、内部にバネ部材68を挿通しバネ部材68の形状を規制するパイプ69とを備えている。
バネ部材68は金属のワイヤー等で伸展部材60と一体に形成されていて、バネ部材68には、ワイヤーがX字状に交差する交差部68aが設けられている。そして、パイプ69の先端の内周面が交差部68aに当接する部分が変化することで、一対の伸展部材60間の間隔が変化する。
【0043】
次に、以上のように構成された電極システム61を用いて神経組織Nに電極部62を取り付ける手技について説明する。
術者は、湾曲形状の電極部62を伸ばし、図27に示すように所定の伸展方向D5に伸展した平坦形状にする。そして、平坦形状にした電極部62を図25に示すように両端部から伸展方向D5に平行な所定の軸線回りに巻いておく(導入時形状形成工程)。
続いて、図28に示すように、この巻かれた状態の電極部62のガイド孔65に互いの間隔を調整した伸展部材60をそれぞれ挿入して係合させ、巻かれた電極部62の形状が変形しないように保持する。そして、電極部62を処置具63とともにトロッカーT内を挿通させる。
【0044】
次に、患者の胸腔内において、図29に示すように、パイプ69に対してバネ部材68を先端側に押し出すことで、電極部62の伸展方向D5に平行な所定の軸線回りの巻回を解き電極部62を伸展方向D5に直交する方向に広げる。このとき、電極部62のガイド孔65には伸展部材60が係合しているので、電極部62は一定の剛性を有して平坦形状になっている。
そして、図30に示すように、電極部62の先端側を神経組織Nと周辺組織Mとの間に挿入させ、押え棒66の先端をリードボディ6の先端側に係合させながら押え棒66に対して伸展部材60を後退させることで、電極部62が先端側から神経組織Nに巻きついていく。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の電極システム61によれば、電極部62を神経組織Nに確実かつ容易に取り付けることができる。
さらに、電極部62を伸展方向D5に平行な所定の軸線回りに巻いた状態でトロッカーT内を挿通させることで、電極部62の伸展方向D5に直交する平面における断面での幅を小さくし、電極部62を挿通させるのに必要なトロッカーTの内径を抑えて、患者の侵襲を低減することができる。
【0046】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図31から図35を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図31に示すように、本実施形態の電極システム81は、神経組織Nに所定の電圧を印加する電極部82と、湾曲形状の電極部82を平坦形状に切り替えて保持するとともに保持を解除可能な伸展機構83を有する処置具84とを備えて構成されている。
【0047】
図31および図32に示すように、電極部82は、外力が作用していない自然状態で湾曲した湾曲形状に形成され、平坦な平坦形状に切り替え(変形)可能な第一の腕部85、第二の腕部86を有していて、第一の腕部85に2つの第二の腕部86を接続することで構成されている。
第一の腕部85、第二の腕部86は、絶縁性を有する弾性材料でシート状に形成された電極支持体(絶縁部材)87、88をそれぞれ備えている。
電極支持体87は、一方の端部87aから他方の端部87bまで所定の軸線C2回りの一方側に湾曲し、電極支持体88は、一方の端部88aから他方の端部88bまで軸線C2回りの他方側に湾曲している。そして、電極支持体88は電極支持体87の軸線C2方向の両側に配置され、電極支持体87の他方の端部87bと電極支持体88の他方の端部88bとが、一体に形成されることにより互いに接続されている。
電極支持体87は軸線C2回りにほぼ一周分湾曲した形状となっているが、電極支持体88は軸線C2回り半周程度湾曲した形状となっている。
【0048】
電極支持体87の一方の端部87aには、可撓性を有する糸状体89の一端が接続されていて、糸状体89の他端はリング状の導入部90に接続されている。
第二の腕部86は、リードボディ6を介してそれぞれ神経刺激装置5と電気的に接続された電極91を備えていて、電極91は、それぞれの電極支持体88が湾曲形状であるときの内側の面88cに配置されている。
【0049】
図31に示すように、伸展機構83は、略J字状に形成され、導入部90に係合して第一の腕部85の一方の端部(一端)87a側を保持する牽引フック(一端側保持部)94と、第一の腕部85の他方の端部(他端)87b側に係止される一対の爪部(他端側係止部)95と、牽引フック94と一対の爪部95との間隔を調整可能な間隔調整機構96とを有する。
そして、間隔調整機構96は、略筒状に形成された本体部97と、棒状に形成され本体部97内にスライド可能に挿通されたスライド部材98とを有している。
牽引フック94はスライド部材98の先端部に、一対の爪部95は本体部97の先端部にそれぞれ固定されている。
【0050】
次に、以上のように構成された電極システム81を用いて神経組織Nに電極部82を取り付ける手技について説明する。
図33および図34に示すように、術者は電極部82の導入部90に牽引フック94を係合させて保持するとともに、第二の腕部86の他方の端部88bに爪部95を係止させる。そして、本体部97に対してスライド部材98を先端側に移動させ牽引フック94と一対の爪部95との間隔を広げることで、湾曲形状の第一の腕部85を伸ばして平坦形状にして保持する。
そして、電極部82を処置具84とともに不図示のトロッカー内を挿通させる。
【0051】
次に、患者の胸腔内において、図34に示すように、処置具84を操作して、電極支持体87の内側の面87c側が神経組織Nに対向するように配置する。ここで、本体部97の位置を固定しながらスライド部材98を基端側に移動させると、第一の腕部85が湾曲形状に戻りながら神経組織Nを第二の腕部86に囲まれる位置Pに移動させる。そして、図35に示すように、第一の腕部85は神経組織Nの周囲を範囲R1にわたり巻き付き、第二の腕部86は範囲R2にわたり巻き付く。なお、必要に応じて、導入部90を不図示の把持鉗子等で牽引し、第一の腕部85が神経組織Nに巻きつくのを補助してもよい。
続いて、術者はトロッカーから導入した不図示の切断具等により糸状体89を切断し、神経組織Nに巻きついた電極部82を処置具84から取り外す。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の電極システム81によれば、電極部82を神経組織Nに確実かつ容易に取り付けることができる。
なお、本実施形態では、電極部82に糸状体89および導入部90を備えず、絶縁部材87の一方の端部87aに貫通孔を形成し、この貫通孔が牽引フック94に係合するように構成してもよい。
また、電極部は、第二の腕部86の軸線の両側に第一の腕部85をそれぞれ配置し、電極支持体88の他方の端部88bと電極支持体87の他方の端部87bとを一体に形成することで、第二の腕部86と第一の腕部85とを接続した構成にしてもよい。
【0053】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図36から図38を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図36および図37に示すように、本実施形態の電極システム101は、神経組織Nに所定の電圧を印加する電極部102と、神経組織Nに電極部102を取り付けるための処置具103とを備えている。
電極部102は、前記実施形態の電極部2に対してガイド孔11が形成されていないことのみ異なるものである。
そして、本実施形態の処置具103は、前記実施形態の処置具3の伸展機構12に代えて、電極支持体9の一方の面9a側および他方の面9b側から電極部102を挟持して電極部102を平坦形状に保持するとともに、この挟持を解除可能な伸展機構104を有している。
【0054】
伸展機構104は、湾曲形状に形成された電極部102の湾曲を伸ばして電極部伸展方向D6に伸展させたものを、電極部伸展方向D6と自身の軸線C3方向とが平行になるように内部に収容するパイプ(管状部材)107と、パイプ107内の電極部102を軸線C3方向の先端側に押し出す押し出し棒(押し出し部材)108とを有している。
パイプ107の軸線に直交する平面における断面は、平坦に潰れた形状に形成され、パイプ107の先端部における電極部102が湾曲する側には、先端側に向かうほど軸線C3側に湾曲する案内部107aが設けられている。
【0055】
このように構成された電極システム101を用いた手技は以下のような手順で行われる。術者は処置具103を操作して、電極支持体9の一方の面9a側が神経組織Nに対向するように配置させた状態で、図38に示すように、パイプ107の位置を固定しながら押し出し棒108を先端側に押し出す。すると、電極部102は電極部伸展方向D6とパイプ107の軸線C3方向とが平行になるようにパイプ107の内部に収容されていたので、電極部102のうちパイプ107の先端側から突出した部分は軸線C3に直交する所定の方向回りに湾曲して神経組織Nに巻きつく。
以上説明したように、本実施形態の電極システム101によれば、電極部102を神経組織Nに確実かつ容易に取り付けることができる。
また、電極部伸展方向D6に伸展させた電極部102をパイプ107の内部に収容することで電極部102の形状を切り替え、手技をより容易に行うことができる。
【0056】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図39から図41を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図39に示すように、本実施形態の電極システム111の処置具113は、第5実施形態の電極システム101の処置具103が備えている伸展機構104に代えて伸展機構114を備えている。
図39および図40に示すように、伸展機構114は、電極支持体9の一方の面9a側に配置されるとともに処置具113の基端側に移動可能な第一のヘラ部材(第一の挟持部材)115と、電極支持体9の他方の面9b側に配置される第二のヘラ部材(第二の挟持部材)116と、電極支持体9の基端側に当接するパイプ(支持部材)117とを有している。
【0057】
第二のヘラ部材116はパイプ117に対して略平行に配置されるとともに、パイプ117と一体に形成されることで自身の基端部がパイプ117の先端部に接続されている。
第一のヘラ部材115は、第二のヘラ部材116に対して所定の間隔をおいて対向する位置に配置可能であるとともに、パイプ117の軸線C4方向に移動可能に配置されている。第一のヘラ部材115の先端部には、先端側に向かうほど第二のヘラ部材116から離間するように形成された案内部115aが設けられている。第一のヘラ部材115の基端部は、パイプ117にスライド可能に挿通された操作棒118の先端部に接続されている。
【0058】
このように構成された電極システム111を用いた手技は以下のような手順で行われる。
図39に示すように、まず、術者は、第一のヘラ部材115と第二のヘラ部材116との間に電極部102を介装し、第一のヘラ部材115と第二のヘラ部材116とで電極部102を挟持して平坦形状にする。このとき、第一のヘラ部材115が移動する軸線C4方向と電極部102の湾曲を伸ばして伸展させる電極部伸展方向D6とが平行になるように電極部102を挟持させることが好ましい。そして、電極部102を処置具113とともに不図示のトロッカー内を挿通させる。
続いて、不図示のナイフにより周辺組織Mを切断して神経組織Nを露出させる。このとき、第一のヘラ部材115の先端部に設けられた案内部115aを神経組織Nに掛けて神経組織Nを引き出すことにより、神経組織Nを周囲の周辺組織Mから容易に露出させることができる。
【0059】
次に、処置具113を操作して、電極支持体9の一方の面9a側が神経組織Nに対向するように配置させた状態で、パイプ117の位置を固定しながら操作棒118を基端側に移動させて、第一のヘラ部材115を後退させる。
すると、電極部102は電極部伸展方向D6とパイプ117の軸線C4方向とが平行になるように第一のヘラ部材115と第二のヘラ部材116との間に挟持されていたので、図41に示すように、電極部102のうち第一のヘラ部材115の先端側から突出した部分は軸線C4に直交する所定の方向回りに湾曲して神経組織Nに巻きつく。
以上説明したように、本実施形態の電極システム111によれば、電極部102を神経組織Nに確実かつ容易に取り付けることができる。
また、第一のヘラ部材115と第二のヘラ部材116との間で電極部102を挟持するので、処置具113に電極部102を装着して電極部102の形状をさらに容易に切り替えることができる。
【0060】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図42から図46を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図42に示すように、本実施形態の電極システム121は、神経組織Nに所定の電圧を印加する電極部122と、神経組織Nに電極部122を取り付けるための処置具123とを備えている。
【0061】
電極部122は、外力が作用していない自然状態で平坦形状となるように形成され、その形状を神経組織Nに巻きつくように湾曲した湾曲形状に切り替え(変形)可能となっている。
電極部122は、前記実施形態の電極支持体9と、電極支持体9が湾曲形状になったときに湾曲の内側の面となる一方の面9aに設けられた一対の電極126と、電極支持体9より剛性が高い弾性材料で神経組織Nに巻きつくように湾曲した形状に形成された湾曲部材127とを有している。
電極126が電極10と異なる点は、電極126は外力が作用していない自然状態で平坦形状に形成され、自身の弾性により変形可能となっている点である。
そして、本実施形態の電極支持体9は、前記実施形態の一対のガイド孔11に代えて、一方の面9aに平行に延びて電極支持体9を貫通するガイド孔(電極側係合部)128が形成されている。ガイド孔128には、湾曲部材127を挿通させて係合させることができる。
【0062】
処置具123は、自然状態で平坦形状の電極部122を湾曲形状に切り替え可能な湾曲機構130を有している。
図43および図44に示すように、湾曲機構130は、電極支持体9を把持する把持部131と、一定の剛性を有して所定の方向に延びるように形成され、電極支持体9のガイド孔128に着脱可能に係合する補強部材132と、湾曲部材127を伸展した状態で保持するとともに伸展した湾曲部材127を押し出す押出し部133とを備えている。
なお、本実施形態では、補強部材132は押出し部133の一部を構成している。
【0063】
押出し部133は、湾曲部材127を湾曲部材127の湾曲を伸ばす湾曲部伸展方向D7に伸展した状態で保持するパイプ134と、湾曲部伸展方向D7に伸展した湾曲部材127を湾曲部伸展方向D7に押し出す上記補強部材132とで構成されている。
補強部材132は、パイプ134に形成された貫通孔134aに挿通され、パイプ134に対してスライド可能となっている。
【0064】
把持部131は、パイプ134の先端部の開口近傍に固定された固定部材135と、所定の位置に移動可能な移動部材136と、移動部材136に一端が接続された公知のリンク機構137と、リンク機構137の他端が接続された操作棒138とを備えている。
リンク機構137により、移動部材136は、間に電極支持体9を挟むように固定部材135に対向する位置と、固定部材135から離間する位置との間を移動することができる。
操作棒138は、パイプ134において貫通孔134aに平行に形成された補助孔134bにスライド可能に挿通されていて、パイプ134に対して操作棒138を牽引したときに電極支持体9の基端側を固定部材135と移動部材136とで把持し、パイプ134に対して操作棒138を押し込んだときに電極支持体9の把持を解消することができる。
【0065】
次に、以上のように構成された電極システム121を用いて神経組織Nに電極部122を取り付ける手技について説明する。
術者は、電極部122のガイド孔128に補強部材132を挿通して係合させるとともに、電極部122と処置具123を不図示のトロッカー内を挿通させる。
ガイド孔128に補強部材132が挿通されているので、平坦形状の電極部122は一定の剛性を有している。このため、図45に示すように、電極部122を神経組織Nと周辺組織Mとの間に容易に挿入することができる。なお、このときには、神経組織Nが電極部122の一方の面9a側に配置されるように挿入する。
【0066】
続いて、把持部131で電極支持体9を把持した状態で、パイプ134の基端側から補強部材132を牽引し、電極部122およびパイプ134から補強部材132を取り外す。そして、図44に示すように、湾曲を伸ばして湾曲部伸展方向D7に伸展した湾曲部材127を、湾曲部伸展方向D7とパイプ134の軸線C5とが平行になるように貫通孔134aに挿入し、さらに湾曲部材127の基端側から補強部材132を貫通孔134aに再び挿入する。このとき、湾曲部材127が湾曲形状のであるときの内側の面127a側に神経組織Nがくるように、湾曲部材127を貫通孔134aに挿入する。
ここで、パイプ134に対して補強部材132を押し込むと、図46に示すように、電極部122のガイド孔128に湾曲部材127が挿入されていく。湾曲部材127は電極支持体9より剛性が高い弾性材料で形成されているので、パイプ134の先端側から突出した部分の湾曲部材127は湾曲形状に戻り、電極支持体9を湾曲形状に変化させる。
【0067】
電極部122のガイド孔128に湾曲部材127を挿入し終えると、術者は、パイプ134に対して操作棒138を押し込んで把持部131による電極支持体9の把持を解除し、電極部122から処置具123を取り外す。
以上説明したように、本実施形態の電極システム121によれば、電極部122を神経組織Nに確実かつ容易に取り付けることができる。
【0068】
以上、本発明の第1実施形態から第7実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更等も含まれる。
たとえば、上記第1実施形態から第7実施形態では、湾曲形状と平坦形状との間で形状を切り替え可能な部分が電極部の全体であったが、電極部の一部であってもよい。
また、上記第1実施形態から第7実施形態では、電極部の形状が湾曲形状と平坦形状に変形できるのは電極の弾性力によるものとしたが、電極支持体の弾性力によるものとしてもよい。さらに、電極部に新たに形状記憶合金等のような超弾性体を備え、電極部が変形する弾性力がこの超弾性体により生じるように構成してもよい。しかし、一般的に、電極支持体は自然状態で平坦形状である方が製造しやすいので、電極部の形状を変形させる弾性力は、電極または超弾性体により生じさせることが好ましい。
【0069】
また、上記第1実施形態から第7実施形態では、電極側係合部であるガイド孔は貫通孔であるとした。しかし、電極側係合部の形状はこれに限ることなく、伸展部材に係合する形状であればよい。たとえば、電極側係合部は、自身が延びる方向に切り欠きが形成された溝部等のような形状であってもよい。
そして、上記第1実施形態から第7実施形態では、線状組織として神経組織を例にとって説明したが、線状組織はこれに限ることなく、血管、消化管、または筋肉等でもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、41、61、81、101、111、121 電極システム
2、31、42、47、62、82、102、122 電極部
3、28、63、84、103、113、123 処置具
9、32、43、48 電極支持体(絶縁部材)
9a 一方の面
9b 他方の面
10、33、44、91、126 電極
11、18、21、34、45、65、128 ガイド孔(電極側係合部)
12、64、83、104、114 伸展機構
13、27、60 伸展部材
14、66 押え棒(当接部材)
67 部材間隔調整部
94 牽引フック(一端側保持部)
95 爪部(他端側係止部)
96 間隔調整機構
107 パイプ(管状部材)
108 押し出し棒(押し出し部材)
115 第一のヘラ部材(第一の挟持部材)
116 第二のヘラ部材(第二の挟持部材)
117 パイプ(支持部材)
127 湾曲部材
128 ガイド孔(電極側係合部)
130 湾曲機構
131 把持部
132 補強部材
133 押出し部
D1、D2、D3、D4 湾曲方向
D6 電極部伸展方向
D7 湾曲部伸展方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の線状組織に巻きつくように湾曲した湾曲形状および平坦な平坦形状のいずれか一方から他方に少なくとも一部が形状を切り替え可能な電極部と、
前記電極部の前記少なくとも一部の形状を前記湾曲形状および前記平坦形状のいずれか一方から他方に切り替える処置具と、
を備え、
前記電極部は、
弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、
前記絶縁部材が前記湾曲形状であるときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ所定の電圧を印加可能な電極と、
を有することを特徴とする電極システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電極システムにおいて、
前記電極部は、外力が作用していない自然状態で前記湾曲形状となるように形成され、
前記処置具は、前記湾曲形状の前記電極部を前記平坦形状に切り替えて保持するとともに、前記保持を解除可能な伸展機構を有することを特徴とする電極システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電極システムにおいて、
前記絶縁部材は、自身が湾曲する湾曲方向に平行に延びる電極側係合部が形成され、
前記伸展機構は、
前記絶縁部材より剛性が高い材質で所定の方向に延びるように形成され、前記絶縁部材の前記電極側係合部に着脱可能に係合する伸展部材と、
前記絶縁部材から前記伸展部材が取り外される際に前記絶縁部材に当接される当接部材と、
を有することを特徴とする電極システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電極システムにおいて、
前記電極側係合部は、前記絶縁部材が前記湾曲形状となったときの湾曲の軸線方向の両端部側にそれぞれ形成され、
前記伸展機構は、
2つの前記伸展部材と、
前記2つの伸展部材が、それぞれが延びる前記所定の方向に交差する方向に並ぶように支持するとともに、前記2つの伸展部材の前記交差する方向の間隔を調整可能な部材間隔調整部と、
をさらに有することを特徴とする電極システム。
【請求項5】
請求項2に記載の電極システムにおいて、
前記伸展機構は、
前記絶縁部材における前記一方の面側、および前記一方の面とは反対側の他方の面側から前記電極部を挟持して前記電極部を前記平坦形状に保持するとともに、前記挟持を解除可能なことを特徴とする電極システム。
【請求項6】
請求項5に記載の電極システムにおいて、
前記伸展機構は、
前記湾曲形状に形成された前記電極部の湾曲を伸ばして所定の電極部伸展方向に伸展させたものを、前記電極部伸展方向と自身の軸線方向とが平行になるように内部に収容する管状部材と、
前記管状部材内の前記電極部を前記管状部材の前記軸線方向の先端側に押し出す押し出し部材と、
を有することを特徴とする電極システム。
【請求項7】
請求項5に記載の電極システムにおいて、
前記伸展機構は、
前記湾曲形状に形成された前記電極部の湾曲を伸ばして所定の電極部伸展方向に伸展させたものにおいて、
前記絶縁部材の前記一方の面側に配置されるとともに前記電極部伸展方向の一方側に移動可能な第一の挟持部材と、
前記絶縁部材の前記他方の面側に配置される第二の挟持部材と、
前記絶縁部材の前記電極部伸展方向の一方側に当接する支持部材と、
を有することを特徴とする電極システム。
【請求項8】
請求項2に記載の電極システムにおいて、
前記伸展機構は、
前記絶縁部材の前記少なくとも一部における前記絶縁部材が湾曲する湾曲方向の一端側を保持する一端側保持部と、
前記絶縁部材の前記少なくとも一部における前記絶縁部材の前記湾曲方向の他端側に係止される他端側係止部と、
前記一端側保持部と前記他端側係止部との間隔を調整可能な間隔調整機構と、
を有することを特徴とする電極システム。
【請求項9】
請求項1に記載の電極システムにおいて、
前記電極部は、外力が作用していない自然状態で前記平坦形状となるように形成され、
前記処置具は、前記平坦形状の前記電極部を前記湾曲形状に切り替え可能な湾曲機構を有することを特徴とする電極システム。
【請求項10】
請求項9に記載の電極システムにおいて、
前記絶縁部材は、前記一方の面に平行に延びる電極側係合部が形成され、
前記電極部は、前記絶縁部材より剛性が高い弾性材料で所定の線状組織に巻きつくように湾曲した形状に形成され、前記電極側係合部に係合可能とされた湾曲部材を有し、
前記湾曲機構は、
前記絶縁部材を把持する把持部と、
一定の剛性を有して所定の方向に延びるように形成され、前記絶縁部材の前記電極側係合部に着脱可能に係合する補強部材と、
前記湾曲部材を前記湾曲部材の湾曲を伸ばす湾曲部伸展方向に伸展した状態で保持するとともに、前記湾曲部伸展方向に伸展した湾曲部材を前記湾曲部伸展方向に押し出す押出し部と、
を有することを特徴とする電極システム。
【請求項11】
外力が作用していない自然状態で少なくとも一部が所定の線状組織に巻きつくように湾曲した湾曲形状に形成され、前記少なくとも一部が平坦な平坦形状に形状を切り替え可能な電極部であって、
弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、
前記絶縁部材が前記湾曲形状となったときに湾曲の内側の面に設けられ所定の電圧を印加可能な電極と、
を備え、
前記絶縁部材には、自身が湾曲する湾曲方向に平行に延びる電極側係合部が形成されていることを特徴とする電極部。
【請求項12】
外力が作用していない自然状態で少なくとも一部が平坦な平坦形状に形成され、前記少なくとも一部が所定の線状組織に巻きつくように湾曲した湾曲形状に形状を切り替え可能な電極部であって、
弾性材料でシート状に形成された絶縁部材と、
前記絶縁部材が前記湾曲形状となったときに湾曲の内側の面となる一方の面に設けられ所定の電圧を印加可能な電極と、
前記絶縁部材より剛性が高い弾性材料で湾曲した形状に形成された湾曲部材と、
を有し、
前記絶縁部材には、前記絶縁部材の前記一方の面に平行に延び前記湾曲部材が係合する電極側係合部が形成されていることを特徴とする電極部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2011−152204(P2011−152204A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14215(P2010−14215)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】