説明

電気かみそり用トリマー刃およびそれを用いた電気かみそり

【課題】トリマーの固定刃をしなやかな芯材を高硬度のメッキ材で被覆し、その摺動面を平面研磨で形成した電気かみそり用トリマー刃と電気かみそりを提供する。
【解決手段】トリマー刃4は銅合金やステンレスなどをプレス等の塑性加工(ヘッダー加工)によって外刃42を含む芯材41を形成する。複数の外刃42は芯材41を一部の櫛状体をピン状に折り曲げ加工されて形成される。この外刃42に芯材41より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキする。このメッキを施した外刃(固定刃)42の内刃(可動刃)との摺動面のメッキ材質を平面研磨で加工して隙間のない平面を得ると共に、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気かみそり用トリマー刃およびそれを用いた電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
電気かみそりを用いて髭を剃る際に、できるだけ早くまたは剃り残しを少なくするように様々な構造の電気かみそりが提案されている。人の髭は様々であり、硬い髭ややわらかい髭、長い髭や短い髭、そして真っ直ぐな髭や曲がったくせ髭等が混在している。また、頬や鼻の下、顎のライン等剃りやすいところと剃りにくいところとがある。
【0003】
このため、髭や肌の状態に応じて、例えば回転式のものや往復式のものを使ったりする。これらの電気かみそりはさらに、もみあげ等のところをカットするためのトリマー刃を設けたり、くせ髭をうまく誘い込んでカットするために外刃のパターンをスリット孔にしたものがある。さらにまた、往復式電気かみそりのヘッドを複数設けて、アーチ状の仕上げ剃り刃と、スリット孔を形成した矩形状の粗剃り刃とを組み合わせたものも知られている。
【0004】
その一例として、アーチ状に湾曲された網刃を有すると共に、それ自体は髭剃りする肌に向かって弾性的に出入りできるように装着される複数列のアーチ外刃と、それぞれのアーチ外刃の内面に沿う刃縁を有すると共に、この刃縁をアーチ外刃の内面に摺動させる複数のアーチ内刃とを備え、複数列のアーチ外刃は、網刃に多数の粗剃孔を開口している粗剃アーチ外刃と、網刃に多数の仕上剃孔を開口している仕上剃アーチ外刃とを備える電気かみそりにおいて、粗剃アーチ外刃と仕上剃アーチ外刃は、肌に押圧されない状態で、粗剃アーチ外刃が仕上剃アーチ外刃よりも弾性的に突出していて、くせ髭を速やかにカットして能率よく綺麗に髭剃りする電気かみそりは公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、本体とヘッド部とからなる往復式電気かみそりにおいて、ヘッド部に仕上げ剃り用刃と粗剃り用刃とを並列に備え、粗剃り用刃は、上面壁と片側壁とからなる断面逆L字状に折曲した上固定刃と、上固定刃の内面を摺接する下可動刃とを備え、前記上固定刃の上面壁に二列の刃部を形成して、一方の列の刃部に、上面壁の中央部から片側壁へまたがるくせひげスリット孔を形成し、他方の列の刃部に、上面壁の中央部から先端へ向かう、長い髭やモミアゲ部を切り揃えるトリマー刃を形成した電気かみそりも公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
そして、従来用いられている電気かみそりのトリマー刃としては、図6に示すようなものがある。図6(A)はトリマー刃の斜視図、図6(B)側断面図である。トリマー刃4は外刃芯材41に外刃(固定刃)42と内刃(可動刃)43とからなり、外刃42には複数のくせ髭スリットが平行に設けられている。トリマー刃の固定刃と可動刃は主にプレス加工で形成しているため、材料としては塑性加工が可能なステンレス系の材料を主に使用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−328435号公報
【0008】
【特許文献2】特開平11−114245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来の技術では、トリマーの固定刃と可動刃は、塑性加工が可能なステンレス系の材料を主に使用していたため、髭を切断する刃先角を鋭角化することができないため、切れ味を画期的に改善することができなかつた。また、プレス加工に砥石による刃切り加工を追加したり、エッチング加工を行うことで刃先の鋭角化は可能になるが、加工上、使用できる材質の硬度には限界があった。そこで本発明は、トリマーの固定刃をしなやかな芯材を高硬度のメッキ材で被覆し、その摺動面を平面研磨で形成し、髭を捕らえる刃先角を鋭角化することが可能で切れ味も画期的に改善する電気かみそり用トリマー刃およびそれを用いた電気かみそりを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る電気かみそり用トリマー刃は、銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によって外刃(固定刃)を含む芯材を形成し、この外刃に芯材より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキする。このメッキを施した外刃の内刃(可動刃)との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得ると共に、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げた構成とした。
【0011】
本発明の請求項2に係る電気かみそり用トリマー刃は、銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によって半円形の断面形状の外刃を含む芯材を形成し、この半円形の断面形状の外刃(固定刃)に芯材より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキする。このメッキを施した外刃の内刃(可動刃)との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得ると共に、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げた構成とした。
【0012】
本発明の請求項3に係る電気かみそり用トリマー刃は、銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によってクサビ形の断面形状の外刃を含む芯材を形成し、このクサビ形の断面形状の外刃(固定刃)に芯材より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキする。このメッキを施した外刃の内刃(可動刃)との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得ると共に、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げた構成とした。
【0013】
こうして、トリマー刃は往復式電気かみそりにおいて、通常、外刃(固定刃)と内刃(可動刃)の摺り合わせで髭を切断するため、その摺動部は隙間のない平面で形成する必要があるが、しなやかな芯材を高硬度のメッキ材で被覆し、トリマー刃の外刃の内刃(可動刃)との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得るとともに、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げることが可能となった。
【0014】
本発明の請求項4に係る電気かみそりは、本体とヘッド部とからなる往復式電気かみそりにおいて、前記ヘッド部には4連の髭そりヘッド刃を設けており、中央に2列のアーチ状の刃ヘッドと、その両側に矩形状の刃ヘッドとトリーマー刃とを有し、前記アーチ状の刃ヘッドは外刃に小孔を有し、前記矩形状の刃ヘッドは外刃にスリット孔を有しており、前記トリーマー刃は、銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によってトリマー刃の外刃(固定刃)を含む芯材を形成し、該外刃に芯材より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキし、メッキを施した外刃の内刃(可動刃)との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得るとともに、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げた構成とした。
【0015】
本発明の請求項5に係る電気かみそりは、本体とヘッド部とからなる往復式電気かみそりにおいて、前記ヘッド部には4連の髭そりヘッド刃を設けており、中央に2列のアーチ状の刃ヘッドと、その両側に矩形状の刃ヘッドとトリーマー刃とを有し、前記アーチ状の刃ヘッドは外刃に小孔を有し、前記矩形状の刃ヘッドは外刃にスリット孔を有しており、前記トリーマー刃は、銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によってトリマー刃の半円形またはクサビ形の断面形状に形成した外刃(固定刃)を含む芯材を形成し、該外刃に芯材より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキし、メッキを施した外刃の内刃(可動刃)との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得るとともに、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げた構成とした。
【0016】
こうして、トリマー刃は往復式電気かみそりにおいて、トリマー刃は、硬度は低いがしなやかさを有する芯材と硬度が高く耐磨耗性を有する外皮材という異なる2種の金属材で構成されるため、両方の性質を得ることができ、切れ味の更なる改善と耐磨耗性の向上が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明の電気かみそり用トリマー刃およびそれを用いた電気かみそりは、髭を捕らえる部分がメッキ加工で形成するため、塑性加工が不可能な高硬度の材質を外皮材として使用することも可能なため、切れ味の更なる改善と耐磨耗性の向上が可能となる。加えて、肌との滑り性を良好にするためのPTFE材なども同様にメッキ加工で形成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】往復式電気かみそりの外観図。
【図2】電気かみそりのヘッド部の側断面図。
【図3】本発明の電気かみそり用トリマー刃の拡大図。
【図4】トリマー刃の1つの外刃の形成図。
【図5】トリマー刃の1つの外刃の他の形成図。
【図6】従来のトリマー刃の斜視図と側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の電気かみそり用トリマー刃を用いた往復式電気かみそりの外観図を図1に示し、図2に電気かみそりのヘッド部の側断面を示す。電気かみそりは、本体1と、本体1の上部に設けたヘッド部2とで構成されている。本体1には、内部に駆動用電池及びモータそしてモータの回転を往復運動に変換する振動子等の駆動部品が設けられている。また、本体1の表面にスライド可能なトリマー刃4の上下動操作部3が、反対面に電源スイッチ(図示せず)が設けられている。
【0020】
一方、ヘッド部2には、4連のひげそりヘッド刃を設けており、中央に2列のアーチ状の刃ヘッド5と、その両側に矩形状の刃ヘッド6と刃ヘッド6と兼用のトリマー刃4を有している。アーチ状の刃ヘッド5は外刃に小孔を有している。図2によりヘッド部2を説明する。アーチ状の刃ヘッド5は刃ヘッド51と刃ヘッド52とからなり、刃ヘッド51は主として粗剃り用であり、刃ヘッド52は仕上げ剃り用として用いられる。矩形状の刃ヘッド6は外刃にスリット孔を有しており、くせ髭をカットする粗剃り用として用いられ、くせ髭を短くカットすることができる。
【0021】
くせ髭を短くカットした後は、隣接して並行に設けられる前記アーチ状の刃ヘッド5により深剃りを行う。このように、粗剃りと仕上げ剃りを連続して行うことができるので、便利に効率よく髭剃りを行うことができる。また、矩形状の刃ヘッド6は細長くしてアーチ状の刃ヘッド5に沿うようにして形成されているから、ヘッド部2をコンパクトにまとめることができる。
【0022】
しかしながら、前記矩形状の刃ヘッド6は長いくせ髭やもみあげ等を十分にカットすることができない。このような長いくせ髭やもみあげ等のカットについては、矩形状の刃ヘッド6と兼用されているトリマー刃4を用いてカットすることができる。このトリマー刃4は前記本体1に設けられているスライド可能な上下動操作部3により出し入れ操作がなされる。
【0023】
次に、本発明の電気かみそり用トリマー刃について図3〜図5により説明する。図3はトリマー刃の拡大図であり、トリマー刃4は銅合金やステンレスなどをプレス等の塑性加工(ヘッダー加工)によって外刃42を含む芯材41を形成する。複数の外刃42は芯材41の一部である櫛状体をピン状に折り曲げ加工されて形成される。この外刃42に芯材41より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキする。このメッキを施した外刃42の内刃との摺動面のメッキ材質を平面研磨で加工して隙間のない平面を得ると共に、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げる。
【0024】
次に、本発明の電気かみそり用トリマー刃4の外刃44の実施形態は、図4に示すように、銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によって半円形の断面形状の外刃44の芯材42を形成し、この半円形の断面形状のの外刃44に芯材42より硬度の高いニッケルなどの材質7をメッキする。このメッキを施した外刃44の内刃との摺動面のメッキ材質45を平面研磨で加工して(図4の状態から平面研磨により薄くする)、隙間のない平面を得ると共に、髭を捕らえる刃先8を鋭角に仕上げる。
【0025】
また、本発明の電気かみそり用トリマー刃4の外刃44の他の実施形態は、図5に示すように、銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によってクサビ形の断面形状の外刃44の芯材42を形成し、このクサビ形の断面形状の外刃44に芯材42より硬度の高いニッケルなどの材質7をメッキする。このメッキを施した外刃44の内刃との摺動面のメッキ材質45を平面研磨で加工して(図5の状態から平面研磨により薄くする)、隙間のない平面を得ると共に、髭を捕らえる刃先8を鋭角に仕上げる。
【0026】
こうして、トリマー刃は往復式電気かみそりにおいて、通常、固定刃と可動刃の摺り合わせで髭を切断するため、その摺動部は隙間のない平面で形成する必要があるが、しなやかな芯材を高硬度のメッキ材で被覆し、トリマー刃の外刃の内刃との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得るとともに、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げることが可能となった。
【0027】
このようにして得られたトリマー刃4を往復式電気かみそりに用いることにより、トリマー刃4は、硬度は低いがしなやかさを有する芯材41と硬度が高く耐磨耗性を有する外皮材7という異なる2種の金属材で構成されるため、両方の性質を得ることができ、切れ味の更なる改善と耐磨耗性の向上が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 本体
2 ヘッド部
3 上下動操作部
4 トリマー刃
41 トリマー刃の芯材
42 トリマー刃の外刃
43 トリマー刃の内刃
44 トリマー刃の処理後の外刃
45 摺動面のメッキ材質
5 アーチ状の刃ヘッド
51 粗剃り用刃ヘッド
52 仕上げ剃り用刃ヘッド
6 矩形状の刃ヘッド
7 高硬度の材質
8 刃先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によってトリマー刃の外刃(固定刃)を含む芯材を形成し、該外刃に芯材より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキし、メッキを施した外刃の内刃(可動刃)との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得るとともに、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げることを特徴とした電気かみそり用トリマー刃。
【請求項2】
前記トリマー刃の外刃(固定刃)を銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によって半円形の断面形状に形成したことを特徴とした請求項1記載の電気かみそり用トリマー刃。
【請求項3】
前記トリマー刃の外刃(固定刃)を銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によってクサビ形の断面形状に形成したことを特徴とした請求項1記載の電気かみそり用トリマー刃。
【請求項4】
本体とヘッド部とからなる往復式電気かみそりにおいて、前記ヘッド部には4連の髭そりヘッド刃を設けており、中央に2列のアーチ状の刃ヘッドと、その両側に矩形状の刃ヘッドとトリーマー刃とを有し、前記アーチ状の刃ヘッドは外刃に小孔を有し、前記矩形状の刃ヘッドは外刃にスリット孔を有しており、前記トリーマー刃は、銅合金やステンレスなどを塑性加工(ヘッダー加工)によってトリマー刃の外刃(固定刃)を含む芯材を形成し、該外刃に芯材より硬度の高いニッケルなどの材質をメッキし、メッキを施した外刃の内刃(可動刃)との摺動面を平面研磨で加工して、隙間のない平面を得るとともに、髭を捕らえる刃先を鋭角に仕上げたことを特徴とする電気かみそり。
【請求項5】
前記電気かみそり用トリマー刃として、請求項2または請求項3に記載のトリマー刃を用いたことを特徴とした請求項4記載の電気かみそり。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate