説明

電気かみそり

【課題】くせ毛や長毛が確実に粗切断でき、粗切断されたひげを主切断領域で仕上げ切断して、効果的にひげ切断が行える外刃を備えた電気かみそりを提供する。
【解決手段】ヘッド部3に、内刃16と、アーチ状に保形される外刃17とを備えている。外刃17における内刃16との摺接領域Vには、アーチ頂面を含む主切断領域Wと、主切断領域Wに隣接する粗切断領域Sとを設ける。粗切断領域Sには、第1スリット穴49の一群で構成される第1スリット列49Aと、主切断領域Wに隣接する第2スリット穴50の一群で構成される第2スリット列50Aとを隣接して配置する。第1スリット穴49と第2スリット穴50との隣接ピッチは、同一に寸法設定する。両スリット穴49はスリット列線に沿って交互に配置する。第2スリット穴50のスリット幅bは、第1スリット穴49の隣接間隔Eより大きく寸法設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網刃構造の外刃を備えている電気かみそり、なかでもアーチ状に保形される外刃が、アーチ頂面の近傍に設けられる主切断領域と、主切断領域に隣接配置されて主にくせ毛や長毛を大まかに切断する粗切断領域とを備えている電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリー式の電気かみそりの外刃において、主切断領域に隣接して粗切断領域を設けることは、例えば特許文献1に公知である。そこでは、粗切断領域にアーチ中心軸と直行するスリット状の刃穴を平行に配置している。さらに、主切断領域には形状が異なる複数種の刃穴が混在している。
【0003】
本発明では、刃穴に臨む切刃の刃先エッジと刃尻エッジとのエッジ角度を異ならせるが、この種の電気かみそりは特許文献2に公知である。そこでは、刃先エッジのエッジ角度を刃尻エッジのエッジ角度より小さくして、シャープな切れ味を確保しながら、切刃の機械的強度を確保している。同様の電気かみそりは特許文献3にもみられ、往復動型の電気かみそりや、内刃が縦軸まわりに回転する回転内刃型の電気かみそりに外刃を適用している。
【0004】
【特許文献1】特開2002−282561公報(段落番号0028、図1)
【特許文献2】実開昭55−167369号公報(3頁1〜5行、図4)
【特許文献3】特開昭56−40176号公報(2頁第3欄下段、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電気かみそりにおいては、粗切断領域にスリット長さが大小に異なる第1スリット穴と第2スリット穴とを平行姿勢で配置してあるが、両スリット穴が主切断領域の境界線に沿って交互に形成されているので、第1・第2の両スリット穴の間を占める壁部分においてくせ毛や長毛を捕捉することができず、ひげの粗切断に余分な時間が掛かってしまう。
【0006】
本発明の目的は、くせ毛や長毛を確実に粗切断できるうえ、粗切断されたひげを主切断領域で仕上げ切断して、ひげ切断を効果的に行える外刃を備えた電気かみそりを提供することにある。本発明の目的は、主切断領域におけるひげ切断がさらに効果的に行える電気かみそりを備えた電気かみそり提供することにある。本発明の目的は、内刃と協同して好適にひげ切断が行える外刃を備えたロータリー式の電気かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気かみそりは、外刃17における内刃16との摺接領域Vに、アーチ頂面を含む主切断領域Wと、主切断領域Wに隣接する粗切断領域Sとが設けてある。粗切断領域Sには、第1スリット穴49の一群で構成される第1スリット列49Aと、主切断領域Wに隣接する第2スリット穴50の一群で構成される第2スリット列50Aとが隣接配置されている。第1スリット穴49と第2スリット穴50との隣接ピッチは同一寸法に設定し、両スリット穴49・50はスリット列線に沿って交互に配置する。以て、ヘッド部3に、内刃16と、アーチ状に保形されて内刃16の外周面に外接する上記構成の外刃17とを備えた電気かみそりであることを特徴とする。
【0008】
具体的には、図6に示すごとく第2スリット穴50のスリット幅bが、第1スリット穴49の隣接間隔Eより大きく寸法設定されている。
【0009】
第1スリット穴49は主切断領域Wへ向かって先すぼまり状に形成する。
【0010】
第1スリット穴49および第2スリット穴50は、それぞれ隣接相手側のスリット列49A・50Aへ向かって先すぼまり状に形成し、図6に示すように、各スリット穴49・50の先すぼまり部分が、隣接するスリット列49A・50Aの形成領域に入り込むように各スリット穴49・50を配置する。
【0011】
第1スリット列49Aと主切断領域Wとの間の領域には、第2スリット穴50と第3スリット穴51とをスリット列線に沿って交互に形成し、第3スリット穴51を第1スリット穴49のスリット中心線上に配置することができる。
【0012】
一対の粗切断領域Sは、主切断領域Wを間に挟んで対向状に配置することができる。
【0013】
粗切断領域Sには、第1スリット穴49と第2スリット穴50とをスリット列に沿って交互に設け、第1スリット穴49の主切断領域W側の対向内縁に、波形のひげ捕捉部56が形成されている。
【0014】
主切断領域Wには、平行四辺形状の第1刃穴45の一群からなる第1刃穴列45Aと、三角形状の第2刃穴46の一群からなる第2刃穴列46Aとを形成し、第1刃穴列45Aは、第1刃穴45を規則的に隣接配置して鋸刃状に形成することができる。第1刃穴列45Aの間には第2刃穴列46Aを配置する。
【0015】
第2刃穴列46Aを間にして一対の第1刃穴列45Aを対向状に配置し、両刃穴列45Aを第2刃穴列46Aの中心軸線を対称軸にして線対称に配置することができる。
【0016】
本発明の電気かみそりは、横軸まわりに回転駆動される内刃16と、内刃16の外周面に外接する外刃17とを備えており、外刃17は電鋳法で形成して、その切刃55の前後に刃先エッジ55aおよび刃尻エッジ55bを備えている。このうち、刃先エッジ55aのエッジ角度αは、鋭角であって、刃尻エッジ55bのエッジ角度βより小さく設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、アーチ状に保形される外刃17の摺接領域Vに、アーチ頂面を含む主切断領域Wと、主切断領域Wに隣接する粗切断領域Sとを設けた。そのうえで、粗切断領域Sには、第1スリット穴49の一群からなる第1スリット列49Aと、第2スリット穴50の一群からなる第2スリット列50Aとを前後に隣接配置してあるので、長毛やくせ毛を捕捉するための第1スリット穴49と第2スリット穴50とを、粗切断領域Sの左右幅方向へ途切れることなく配置できる。したがって、本発明によれば、くせ毛や長毛を確実に粗切断できるうえ、粗切断されたひげを主切断領域Wで仕上げ切断して、効果的にひげ切断を行える。
【0018】
第2スリット穴50のスリット幅bが、第1スリット穴49の隣接間隔Eより大きく寸法設定されていると、左右に隣接する第1スリット穴49間を通り抜けたくせ毛や長毛は、第2スリット穴50で確実に捕捉して切断できるので、粗切断領域Sにおけるひげ切断をさらに効果的に行うことができる。
【0019】
第1スリット穴49を主切断領域Wへ向かって先すぼまり状に形成すると、ひげ導入始端49a側の開口幅が大きな第1スリット穴49による、長毛やくせ毛の導入捕捉の機会を増やして、粗切断領域Sにおけるひげ切断を効果的に行える。
【0020】
第1スリット穴49および第2スリット穴50をそれぞれ先すぼまり状に形成して、先すぼまり部分が、隣接するスリット列49A・50Aの形成領域に入り込むようにスリット穴49・50を配置してあると、両スリット穴49・50の先すぼまり状の開口縁を、左右および前後方向へ重合する状態で斜めに隣接させることができるので、粗切断領域Sを通過するくせ毛や長毛が両スリット穴49・50で捕捉される機会を増やして、ひげの粗切断処理がさらに効果的に行える。さらに、両スリット穴49・50を互い違い状に隣接配置するので、粗切断領域Sにおけるスリット全体の開口率を大きくでき、その分だけ長毛やくせ毛の導入機会を増やして、ひげ切断をさらに効果的に行える。
【0021】
第1スリット列49Aと主切断領域Wとの間の領域に、第2スリット穴50と第3スリット穴51とがスリット列線に沿って交互に形成されていると、粗切断領域Sに第3スリット穴51を設ける分だけくせ毛や長毛の捕捉機会が増える。第3スリット穴51を第1スリット穴49のスリット中心線上に配置することにより、第1スリット穴49で捕捉しそこなったくせ毛や長毛を第3スリット穴51で再捕捉し、あるいは第1スリット穴49で粗切断したひげを第3スリット穴51で再び捕捉して再切断できるので、全体としてくせ毛や長毛の切断処理がより少ない手間で迅速に行える。
【0022】
主切断領域Wを間に挟んで一対の粗切断領域Sを対向配置してあると、アーチ頂面の前後に粗切断領域Sを位置させることができるので、電気かみそりの使用時における本体部1の姿勢や、握り方の如何にかかわらず、粗切断領域Sで確実にひげの粗切断を行え、アーチ頂面の前後いずれか一方にのみ粗切断領域Sが設けてある場合に比べて、電気かみそりの使い勝手が向上する。
【0023】
粗切断領域Sに、第1スリット穴49と第2スリット穴50とをスリット列に沿って交互に設けたうえで、第1スリット穴49の主切断領域W側の対向内縁に波形のひげ捕捉部56を形成してあると、第1スリット穴49内に入り込んだ長毛やくせ毛をひげ捕捉部56で受け止めて切断できるので、ひげ捕捉部56を設けた分だけ第1スリット穴49におけるひげの切断機会が増え、長毛やくせ毛をさらに効果的に切断できる。
【0024】
主切断領域Wには、平行四辺形状の第1刃穴45の一群からなる第1刃穴列45Aと、三角形状の第2刃穴46の一群からなる第2刃穴列46Aとを形成し、第1刃穴45を規則的に隣接配置することにより、第1刃穴列45Aを鋸刃状に形成してあると、ジグザグに配置された第1刃穴45を囲むリブ群や切刃55によって、主切断領域Wを通過するひげを効果的に起毛して、主切断領域Wにおけるひげ切断をさらに効果的に行え、くせ毛が多い場合にもひげ切断をより少ない手間で迅速に行える。
【0025】
第1刃穴列45Aの間に、三角形状の第2刃穴46の一群からなる第2刃穴列46Aが配置されていると、第2刃穴46を囲むリブ壁で肌面を押さえつけて起毛し、一度切断されたひげを再度切断して深剃りできる。
【0026】
第2刃穴列46Aを間にして一対の第1刃穴列45Aを対向状に配置し、両刃穴列45Aが第2刃穴列46Aの中心軸線を対称軸にして線対称に配置されていると、第2刃穴列46Aに隣接する各第1刃穴列45Aのジグザグの向きが逆向きになるので、外刃17が肌面に対して左右幅方向へ相対移動する場合でも、斜めの第1刃穴45によってひげを起毛し、確実に切断できる。
【0027】
ロータリー式の電気かみそりにおいて、外刃17の切刃55の構造が、刃先エッジ55aのエッジ角度αを鋭角とし、しかも刃尻エッジ55bのエッジ角度βより小さく設定してあると、シャープな切れ味を発揮してひげを軽快に切断でき、全体として主切断領域Wにおけるひげ切断をより少ない手間で迅速に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(実施例) 図1ないし図8は本発明に係るロータリー式の電気かみそりの実施例を示す。図2において電気かみそりは、グリップを兼ねる卵形の本体部1と、本体部1に連続して上向きに突設されたU字状の支持腕2と、支持腕2で浮動支持されるヘッド部3とを備えている。支持腕2は僅かに後凸状に湾曲しており、これによりヘッド部3は、本体部1の垂直中心軸線に対して僅かに前傾している。
【0029】
本体部1の内部には、回路基板6と2個の2次電池(電池)7とを収容してある。本体部1の前面には化粧パネル8が配置され、その上下に押しボタン型のスイッチボタン9と、スイッチボタン9がオン操作されたとき点灯する第1表示灯10と、充電時に点灯する第2表示灯11などを配置してある。
【0030】
図3および図4においてヘッド部3は、ヘッドケース15と、ヘッドケース15に組み込まれる内刃16、外刃17および外刃ホルダー18と、内刃駆動用のモーター20と、モーター動力を内刃16に伝動するギヤ機構27とを含む。
【0031】
ヘッドケース15は、前後に分割される半円筒状の前ハーフ15aおよび後ハーフ15bを蓋合わせ状に結合してなる(図4参照)。ヘッドケース15の下面両側には左右一対の支持脚21を突設してあり、これらの支持脚21をフロートばね22を介して支持腕21で支持することにより、ヘッド部3を左右傾動あるいは左右同時昇降可能に浮動支持できる。
【0032】
内刃16はロータリー刃からなり、その両端の軸部分が内刃支持台31で回転自在に軸支されている。外刃17は網刃で形成されており、後述するように外刃ホルダー18によってアーチ状に保形支持される。モーター20は前後周面が平坦に形成してあり、その一側に出力軸33を有し、他側から給電リード34を導出してある。
【0033】
ヘッド部3を水洗い可能とするために、モーター20はハウジング23内に収容して水密状に封止する。図3においてハウジング23は、左右に分割される第1・第2の両ケース24・25と、両ケース24・25を分離不能に係合するクリップ26などで構成する。第1ケース24はモーター20の全体を収容できる有底筒状に形成してあり、第2ケース25は第1ケース24の開口を塞ぐ浅皿形状に形成してある。クリップ26は、板ばね材を素材とするコ字状のプレス成形品からなり、両ケース24・25の対向周面を挟持して、両ケース24・25を分離不能に固定する。
【0034】
第1ケース24の側端上面には、内刃支持台31を支持する内刃ブラケット29が一体に形成されている。第2ケース25の上面にも、先の内刃ブラケット29と同様の内刃ブラケット30を一体に形成してある。これらの内刃ブラケット29・30に内刃支持台31を橋絡状に載置し、図3に示すように内刃支持台31の底枠部分をビス32で締結することにより、内刃支持台31はハウジング23と一体化できる。
【0035】
モーター20は、その出力軸33が側端壁から突出する状態で第1ケース24内に組み込まれており、出力軸33と第1ケース24の開口部分との間が、第1パッキン35でシールされている(図3参照)。第1ケース24と第2ケース25の接合部分は、第2パッキン36でシールする。両パッキン35・36はそれぞれ成形パッキンからなる。
【0036】
上記のようにモーター20が収容されたハウジング23は、図4に示すように前ハーフ15aと後ハーフ15bとで前後に挟み、両ハーフ15a・15bの接合縁を互いに係合し、さらに上側接合面の左右を一対のビス37(図3参照)で締結することにより、ハウジング23をヘッドケース15と一体化できる。図3において給電リード34は、第2ケース25の側端壁に開口した上下一対のリード穴からハウジング22の外へ導出され、さらに支持脚21を介して本体部1へと配線される。
【0037】
図3においてギヤ機構27は、平歯車群からなるギヤトレインで構成してあり、出力軸33の回転動力を、内刃16に固定した終段ギヤ40に減速した状態で伝動する。
【0038】
ヘッドケース15に装着した外刃ホルダー18をロック保持するために、ヘッドケース15の側壁の内面にはロック解除ボタン42を配置し、圧縮コイル形のばね43でロック付勢している。ばね43の付勢力に抗してロック解除ボタン42を押し込み操作すると、ロック解除ボタン42に設けたロック爪と、外刃ホルダー18に設けたロック凹部との係合状態が解除されて、外刃ホルダー18をヘッドケース15から取り外せる。
【0039】
本発明は、上記構成の電気かみそりにおいて、外刃17を図1、図5および図6に示すように構成する点に特長を有する。外刃17は、ニッケル、あるいはニッケルコバルト合金を用いて電鋳法によって形成された金属シートからなり、内刃16との摺接領域Vに、アーチ頂面を含む主切断領域Wを形成し、主切断領域Wの前後に隣接して一対の粗切断領域Sを対向状に配置してある。主切断領域Wと粗切断領域Sのまわりには、放熱用のダミー凹部を形成してある。
【0040】
図5に示すように主切断領域Wには、短毛を切断するために、隅部分が丸められた平行四辺形状の第1刃穴45の一群からなる第1刃穴列45Aと、隅部分が丸められた正三角形状の第2刃穴46の一群からなる第2刃穴列46Aとを形成してある。両刃列45A・46Aは、2列を一対とする第1刃穴列45Aと、1列の第2刃穴列46Aとを交互に配置して主切断領域Wを構成する。なお、内刃16のブレード16aのリード角γは15度とした。
【0041】
第1刃穴列45Aは、前後に隣接する第1刃穴45を連続山形に配置して鋸刃状に形成してある。第2刃穴列46Aは、前後に隣接する2個の第2刃穴46を菱形状に配置して形成してある。第2刃穴列46Aを間にして対向する一対ずつの第1刃穴列45Aは、第2刃穴列46Aの前後方向の中心軸線を対称軸にして線対称に配置してある。つまり、一対ずつの第1刃穴列45Aの第1刃穴45群は、菱形に配置した一対の第2刃穴46を囲む配置パターンになっている。
【0042】
粗切断領域Sには、長毛やくせ毛を確実に捕捉して切断するために、3種のスリット列を形成する。詳しくは、図6に示すように、前後方向の長穴からなる第1スリット穴49の一群で構成される第1スリット列49Aと、前後方向の長穴からなる第2スリット穴50の一群で構成される第2スリット列50Aと、これらのスリット穴49・50に比べて前後長さが短くて、第3スリット穴51の一群で構成される第3スリット列51Aとを形成する。
【0043】
先の主切断領域Wにおける各刃穴列45A・46Aが、前後方向の刃穴列で構成されるのに対し、第1〜第3の各スリット列49A・50A・51Aは、左右方向のスリット列で構成される。
【0044】
第1スリット穴49は、図6に示すごとく半円状に丸められたひげ導入始端49aから他端の切断端側49bへ向かって先すぼまり状となる、液滴を引き伸ばしたような形状に形成する。第2スリット穴50はくさび形状に形成し、主切断領域Wに隣接する側が同じ幅のスリットからなり、スリット列49Aの側へ向かって先すぼまり状に形成してある。第3スリット穴51は前後方向のスリット幅が一定のスリットからなる。第1スリット穴49は摺接領域Vの外に位置する導入部分と、摺接領域V内に位置する切断部分とに大別されるが、このように、摺接領域Vの内外に第1スリット穴49を配置すると、導入部分において、内刃16に邪魔されること無く長毛やくせ毛を効果的に導入し、切断部分において確実に切断できる。
【0045】
第1スリット穴49と、第2スリット穴50と、第3スリット穴51の隣接ピッチは同一に寸法設定されていて、第1スリット穴49と第2スリット穴50とは、それぞれの先すぼまり部分が、互いに隣接するスリット列49A・50Aの領域に入り込むように交互に配置されている。両スリット穴49・50の前後方向の重なり部分を、図6に符号Gで示す。これにより、第2スリット穴50と第3スリット穴51とは、第1スリット列49Aと主切断領域Wとで挟まれる領域内において、スリット列線に沿って交互に形成され、第3スリット穴51が第1スリット穴49のスリット中心線上に位置することになる。
【0046】
隣接する第1スリット穴49の間を通過した長毛やくせ毛を、第2スリット穴50で確実に捕捉して切断できるようにするために、上記のように、第1スリット穴49と第2スリット穴50とは、左右方向へ交互に配置し、さらに第1スリット穴49のひげ導入始端側49aの半円部分の半径値を大きく設定することにより、第2スリット穴50のスリット幅bを、第1スリット穴49の隣接間隔Eに比べて充分に大きくなるようにしてある。このように、第1スリット穴49隣接個所の左右に、第2スリット穴50と重なる領域eを確保すると、ひげを捕捉する機会が増えるので、剃り残しのない効果的なひげ切断を行うことができる。
【0047】
使用時のひげ切断をより効果的に行うために、内刃16および外刃17は図7に示すように構成し、内刃16の周速度を従来のロータリー刃に比べてより高速化している。内刃16は螺旋状に配置した多数個のブレード16aを、丸棒状の刃本体16bにインサート固定して形成するが、ブレード16aのすくい角度θは10度に設定した。なお、内刃16は、図1において矢印で示す方向へ回転駆動され、この駆動方向は、図7においては矢印で示すように反時計回転方向となる。
【0048】
内刃16の周速度に関しては、従来のロータリー刃におけるブレード先端の周側度が1.0〜1.27m/秒であったが、本実施例では、ブレード先端の回転軌跡の直径寸法が8mmであるとき、その駆動回転数を3500rpmとして、周速度を1.47m/秒とした。ブレード先端の周速度は1.3〜1.5m/秒の範囲内で選択でき、より好ましくは1.4〜1.5m/秒とする。なお、ブレード先端の周速度が1.3m/秒未満であると、ひげの切断に時間を要し、ブレード先端の周速度が1.5m/秒を越えると、外刃17の表面温度が20℃を越えるため法の規定を満足できない。
【0049】
図7に示すように、外刃17を構成する一群の切刃55は、電鋳法によって内刃16と接する側が凹むシェル状に形成するが、各刃穴45・46に臨む切刃55の刃先エッジ55aのエッジ角度αが、鋭角であって、刃尻エッジ55bのエッジ角度βより小さくなるように設定した。具体的には、回転上手側の刃先エッジ55aのエッジ角度αを45度とし、回転下手側の刃尻エッジ55bのエッジ角度βを60度として、両角度α・βの差を10度以上とした。粗切断領域Sにおける第1〜第3の各スリット穴49・50・51に臨む切刃も、同様に刃先エッジのエッジ角度αが45度とされ、回転下手側の刃尻エッジのエッジ角度βが60度としてあって、シャープな切れ味を発揮することができる。
【0050】
このように、刃先エッジ55aと刃尻エッジ55bのエッジ角度α、βを大きく異ならせるには、電鋳槽に浸漬したシリンダー型の電鋳母型を同一方向へ高速回転しながら電鋳処理する。因みに、従来のロータリー刃におけるブレードのすくい角度θは5度であった。また、従来の外刃における切刃の刃先および刃尻のエッジ角度はそれぞれ65度であった。
【0051】
内刃16および外刃17を上記の構造とし、ブレード16aの周速度を1.47m/秒まで高速化すると、ひげの切断機会が増える分だけ、ひげ切断を迅速に行える。さらに、従来のロータリーシェーバーにおいては、かみそりヘッドを内刃の回転方向と逆向き、例えばあご側から唇へ向かって上向きに動かして、ひげそりを行う必要があったが、ブレード16aの周速度を高速化することにより、ヘッド部3を内刃16の回転方向と逆向きに動かす場合はもちろんのこと、ヘッド部3を内刃16の回転方向と同じ向きに動かす場合にも、ひげ切断を適確に行える。
【0052】
このように、往復方向のひげ切断を可能とし、さらに一対の粗切断領域Sを主切断領域Wの前後に対向配置することにより、粗切断領域Sおよび主切断領域Wにおけるひげ切断をさらに効果的に行って、電気かみそりの使い勝手を向上できる。また、ヘッド部3を内刃16の回転方向と同じ向きに動かす場合には、回転方向下手側に位置する粗切断領域Sに設けられた各スリット穴49・50・51によって、ひげの向きを揃えることができるので、主切断領域Wにおけるひげ切断を適確に行うことができる。本実施例ではヘッド部3を本体部1の中心軸線に対して僅かに前傾させてあるので、本体部1を前後に反転した状態で握って、首や顎の下などの奥まった部分を下から上へと剃ることができ、従来のロータリーシェーバーに比べて、ひげ切断をさらに効果的に行うことができる。
【0053】
上記構成の外刃17は外刃ホルダー18に装着されて、内刃16と密着する向きに移動付勢される。詳しくは図8に示すように、外刃17の一側縁に左右横長の保持枠60を溶着固定し、外刃17の他側縁をばねユニットで押し下げ付勢する。ばねユニットは、外刃17の他側縁に溶着固定される板ばね製のばね体61およびばね枠62と、これら両者61・62を保持するばね受枠63とを含む。
【0054】
図4に示すように、外刃17を下面側から外刃ホルダー18に装着し、保持枠60を外刃ホルダー18の後壁内面に設けた段部で受け止め、さらにばね受枠63を外刃ホルダー18の前壁内面に設けた段部で受け止めることにより、外刃17を逆U字状に湾曲した状態で保形できる。この状態の外刃17は、ばね体61の上面左右に設けた一対ずつのばね腕64によって押し下げ付勢されているので、その内面が内刃16に密着する。なお、内刃16は図4において矢印で示す方向へ回転駆動される。
【0055】
図9は外刃17に関する本発明の別実施例を示す。そこでは、粗切断領域Sに第1スリット穴49と第2スリット穴50とをスリット列に沿って交互に設けて、第3スリット列51Aを省略した。さらに、第1スリット穴49を前後方向に引き伸ばした菱形状に形成して、第1スリット穴49の主切断領域W側の対向内縁に波形のひげ捕捉部56を形成した。第2スリット穴50は、万年筆のペン先と同様の外形形状に形成した。この実施例における内刃の回転駆動方向は矢印で示す方向となる。
【0056】
上記のように、第1スリット穴49と第2スリット穴50とを主切断領域W側の境界線に沿って交互に形成することにより、第1スリット穴49のひげ捕捉部56を含む過半部以上を摺接領域V内に臨ませることができる。さらに、第1スリット穴49内に入り込んだ長毛やくせ毛をひげ捕捉部56で受け止めて、内刃16とひげ捕捉部56とのせん断作用によって確実に切断できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
上記の実施例は、横軸まわりに回転する内刃16を備えたロータリー式の電気かみそりについて説明したが、本発明は内刃が左右方向へ往復駆動される往復動式の電気かみそりや、内刃が縦軸まわりに回転駆動される電気かみそりにも等しく適用できる。なお、往復動式の電気かみそりの場合には、一対の粗切断領域Sの全ての部分を、外刃17の内刃16との摺接領域V内に配置することができる。粗切断領域Sは、主切断領域Wの少なくとも片側に配置してあればよい。第1・第2の両刃穴45・46の刃穴形状、および第1〜第3のスリット穴49・50・51のスリット形状は、図示例の形状に限定されない。たとえば、第2スリット穴50を第1のスリット穴49と同様の穴形状に形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】外刃の展開平面図である。
【図2】電気かみそりの正面図である。
【図3】ヘッド部の縦断正面図である。
【図4】ヘッド部の縦断側面図である。
【図5】主切断領域における刃穴パターンを示す平面図である。
【図6】粗切断領域におけるスリットパターンを示す平面図である。
【図7】内刃と外刃の詳細構造を示す縦断側面図である。
【図8】外刃の装着構造を示す分解斜視図である。
【図9】粗切断領域における別のスリットパターンを示す平面図である。
【符号の説明】
【0059】
3 ヘッド部
16 内刃
17 外刃
45 第1刃穴
45A 第1刃穴列
46 第2刃穴
46A 第2刃穴列
49 第1スリット穴
49A 第1スリット列
50 第2スリット穴
50A 第2スリット列
51 第3スリット穴
55 切刃
55a 切刃の刃先エッジ
55b 切刃の刃尻エッジ
56 ひげ捕捉部
α 切刃の刃先エッジのエッジ角度
β 切刃の刃尻エッジのエンジ角度
b 第2スリット穴のスリット幅
E 第1スリット穴の隣接間隔
S 粗切断領域
W 主切断領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外刃(17)における内刃(16)との摺接領域(V)に、アーチ頂面を含む主切断領域(W)と、主切断領域(W)に隣接する粗切断領域(S)とが設けられており、
粗切断領域(S)には、第1スリット穴(49)の一群で構成される第1スリット列(49A)と、主切断領域(W)に隣接する第2スリット穴(50)の一群で構成される第2スリット列(50A)とが隣接配置されており、
第1スリット穴(49)と第2スリット穴(50)との隣接ピッチは同一寸法に設定されて、両スリット穴(49・50)がスリット列線に沿って交互に配置されており、
ヘッド部(3)に、内刃(16)と、アーチ状に保形されて内刃(16)の外周面に外接する上記構成の外刃(17)とを備えている電気かみそり。
【請求項2】
第2スリット穴(50)のスリット幅(b)が、第1スリット穴(49)の隣接間隔(E)より大きく寸法設定されている請求項1記載の電気かみそり。
【請求項3】
第1スリット穴(49)が主切断領域(W)へ向かって先すぼまり状に形成してある、請求項1または2記載の電気かみそり。
【請求項4】
第1スリット穴(49)および第2スリット穴(50)のそれぞれが、隣接相手側のスリット列(49A・50A)へ向かって先すぼまり状に形成されて、各スリット穴(49・50)の先すぼまり部分が、隣接するスリット列(49A・50A)の形成領域に入り込んでいる請求項1、2または3記載の電気かみそり。
【請求項5】
第1スリット列(49A)と主切断領域(W)との間の領域に、第2スリット穴(50)と第3スリット穴(51)とがスリット列線に沿って交互に形成されており、
第3スリット穴(51)が、第1スリット穴(49)のスリット中心線上に配置してある請求項4記載の電気かみそり。
【請求項6】
一対の粗切断領域(S)が、主切断領域(W)を間に挟んで対向状に配置されている請求項1から5のいずれかに記載の電気かみそり。
【請求項7】
粗切断領域(S)に、第1スリット穴(49)と第2スリット穴(50)とがスリット列に沿って交互に設けられており、
第1スリット穴(49)の主切断領域(W)側の対向内縁に、波形のひげ捕捉部(56)が形成されている請求項2、3または4記載の電気かみそり。
【請求項8】
主切断領域(W)に、平行四辺形状の第1刃穴(45)の一群からなる第1刃穴列(45A)と、三角形状の第2刃穴(46)の一群からなる第2刃穴列(46A)とが形成されており、
第1刃穴列(45A)が、第1刃穴(45)を規則的に隣接配置して鋸刃状に形成されている請求項1記載の電気かみそり。
【請求項9】
第1刃穴列(45A)の間に第2刃穴列(46A)が配置されている請求項8記載の電気かみそり。
【請求項10】
第2刃穴列(46A)を間にして対向する一対の第1刃穴列(45A)が、第2刃穴列(46A)の中心軸線を対称軸にして線対称に配置してある請求項9記載の電気かみそり。
【請求項11】
横軸まわりに回転駆動される内刃(16)と、内刃(16)の外周面に外接する外刃(17)とを備えており、
外刃(17)は電鋳法で形成されていて、その切刃(55)の前後に刃先エッジ(55a)および刃尻エッジ(55b)を備えており、
刃先エッジ(55a)のエッジ角度(α)が、鋭角であって、刃尻エッジ(55b)のエッジ角度(β)より小さく設定されている請求項1から10のいずれかに記載の電気かみそり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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