説明

電気かみそり

【課題】外刃とその緊張構造とを同時に交換して長期使用時のばね腕の弾性劣化を解消し、以て外刃と内刃とが常に密着できる切れ味のよい電気かみそりを提供する。
【解決手段】外刃ホルダー18でアーチ形状に保形される外刃17を有する。外刃17は、シート状の網刃体51と、網刃体51の対向縁の一方に固定される保持枠52と、網刃体51の対向縁の他方に固定される緊張構造とを含む。緊張構造は、付勢枠61と、付勢枠61とともに網刃体51に固定されるばね体62と、これら両者の外面を覆う保護カバー63とを含む。ばね体62の上部に設けた複数個のばね腕72を設け、これらばね腕72で網刃体51を内刃16へ向かって押し下げ付勢する。保持枠52および緊張構造は、外刃ホルダー18の前後壁の内面に設けた段部54・55で受け止める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内刃の周面に摺接する外刃を常に緊張に維持するための緊張構造を備えている電気かみそりに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の外刃の緊張構造に関して、外刃の回転下手側の周縁を緊張構造で押し下げ付勢することは、特許文献1に公知である。そこでは、外刃をシート状の網刃体と、網刃体をアーチ形状に保形する外刃保持枠とでカセット部品化して、外刃の交換作業を容易化している。そのうえで、外刃ホルダーの内面に設けた緊張構造で外刃保持枠を押し下げ付勢している。
【0003】
前記緊張構造は、帯板状の付勢枠と、付勢枠に溶着固定されるばね体とからなり、これら両者は外刃ホルダーの内面に突設のピンに係合装着されて上下動できる。ばね体は、ステンレス板材を素材とするプレス成形品であり、付勢枠を補強する帯板状の補強壁と、補強壁の上縁中央寄りから斜め上向きに折り曲げ形成される一対のばね腕とを備えている。なお、外刃交換時には、カセット部品化された外刃のみを新規の外刃と交換し、緊張構造は継続して使用する。特許文献2の電気かみそりにおいては、先のばね体としてプラスチック成形されたばねユニットを使用している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−236836号公報(段落番号0050、図12)
【特許文献2】特開2002−282561号公報(段落番号0025、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電気かみそりにおいては、カセット部品化された外刃のみを新規の外刃と交換するので、外刃の交換が簡便に行える。しかし、外刃ホルダーに組み込んだ緊張構造は継続使用するので、長期使用時にばね腕が劣化し、充分なばね弾性を発揮できなくなるおそれがある。さらに、ばね腕の先端部分は、外刃ホルダーの内面に設けた段部で直接受け止めるので、段部のばね腕との接触面が徐々に摩滅し、その分だけばね弾性の有効範囲が減少する。そのため、経時的に内刃に対する外刃の密着力が徐々に弱くなり、その分だけ切れ味が低下しやすい。とくに、プラスチック成形されたばねユニットの場合には、ばね腕がクリープ変形しやすく、ばね弾性の低下が著しい。
【0006】
本発明の目的は、外刃とその緊張構造とを同時に交換して長期使用時のばね弾性を適正化し、以て、外刃の内刃に対する密着状態を常に適正化できる切れ味の良好な電気かみそりを提供することにある。本発明の目的は、外刃ホルダーのばね受段部の損耗を解消して、ばね弾性の有効範囲が減少するのを防止し、長期使用時のばね弾性を適正化できる電気かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気かみそりは、ヘッド部3に、内刃16と、内刃16の外周面に摺接する外刃17と、外刃17をアーチ形状に保形保持する外刃ホルダー18とを備えている。外刃17は、シート状の網刃体51と、網刃体51の対向縁の一方に固定される保持枠52と、網刃体51の対向縁の他方に固定される緊張構造とを含んでいる。外刃ホルダー18の前後壁の内面には、それぞれ保持枠52および緊張構造を受け止める段部54・55を形成する。緊張構造は、付勢枠61と、付勢枠61とともに網刃体51に固定されるばね体62とを含み、ばね体62の上部に外刃17を内刃16へ向かって押し下げ付勢する複数個のばね腕72が設けてある。
【0008】
前記のばね体62は、図5に示すように、付勢枠61に隣接するベース部70と、ベース部70の上縁から付勢枠61の上面に沿って折り曲げられる掛止壁71と、掛止壁71から斜め上向きに連出されるばね腕72とを備えている。
【0009】
ばね体62のベース部70と、付勢枠61とは、網刃体51に対して記載順に接合し、付勢枠61と一体に設けた溶着ピン66で、ばね体62のベース70部と付勢枠61とを網刃体51に分離不能に溶着固定することができる。
【0010】
付勢枠61およびばね体62の外面には、プレス成形品からなる保護カバー63を装着し、付勢枠61およびばね体62は、保護カバー63に対して上下移動できるようにすればよい。
【0011】
保持枠52および付勢枠61の下面側には、それぞれ指掛部57・67を突設する。
【0012】
内刃16が横軸まわりに回転駆動されるロータリー式の電気かみそりにおいては、内刃16の回転上手側に臨む外刃ホルダー18の後壁内面に設けた段部55で保持枠52を受け止め、内刃16の回転下手側に臨む外刃ホルダー18の前壁内面に設けた段部54で緊張構造を受け止めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、シート状の網刃体51と、網刃体51の対向縁の一方に固定される保持枠52と、網刃体51の対向縁の他方に固定される緊張構造などで外刃17を構成して、外刃ホルダー18の前後壁の内面に設けた段部54・55で、緊張構造と保持枠52を受け止める。このように、緊張構造が網刃体51に一体化されていると、外刃17を交換するとき、緊張構造をも同時に交換して、そのばね体62を更新できるので、長期使用時におけるばね体62のばね弾性を適正化できる。したがって、外刃17の内刃16に対する密着状態が常に適正化し、切れ味が向上する。付勢枠61およびばね体62などで緊張構造を構成し、ばね体62の上部に設けた複数個のばね腕72で、網刃体51を内刃16へ向かって押し下げ付勢するので、ばね腕72の押し下げ力が網刃体51に対して均等に作用し、網刃体51を内刃16に常に適正に密着させることができる。
【0014】
ベース部70と、ベース部70の上縁から付勢枠61の上面に沿って折り曲げられる掛止壁71と、掛止壁71から斜め上向きに連出されるばね腕72などでばね体62が構成されていると、ばね腕72の連出基端に連続する掛止壁71を付勢枠61の上面で受け止めて、掛止壁71の位置および姿勢を常に一定に保持できる。これにより、ばね腕72の弾性力は掛止壁71を介して付勢枠61にロスなく確実に伝わるので、ばね腕72や掛止壁71の形状のばらつきや位置のばらつきに伴う、伝達できる弾性力のばらつきを排除でき、ばね腕72のばね弾性を網刃体51に常に均等に発揮させて、網刃体51を内刃16に適正に密着させることができる。
【0015】
ばね体62のベース部70と付勢枠61とは、網刃体51に対して順に接合し、付勢枠61と一体に設けた溶着ピン66で、ばね体62のベース部70と付勢枠61とを網刃体51に分離不能に溶着固定すると、ばね体62、付勢枠61および網刃体51の固定構造を簡素化し、その分だけ外刃17のコストを削減できる。例えば、付勢枠61の内外にばね体62と網刃体51とを配置する場合には、ばね体62用の固定構造と、網刃体51用の固定構造が必要になるので、その分だけ固定構造が複雑化し、組み立てに余分な手間が掛かるが、かかる不利を解消できることになる。
【0016】
付勢枠61およびばね体62の外面にプレス成形品からなる保護カバー63が装着されている緊張構造によれば、外刃17を外刃ホルダー18に組み込む際に、ばね腕72が他物にあたって変形したり、あるいはばね腕72のばね弾性が変化するのを確実に防止できるので、外刃ホルダー18に組み込んだばね体62の信頼性が向上し、網刃体51を内刃16に対して適正に密着保持できる。保護カバー63を付勢枠61に装着した時点で、ばね腕72と保護カバー63の上壁79との接触状態を確認できるので、ばね腕72の組み付け不良に基づく網刃体51の作動不良を一掃できる。ばね腕72を保護カバー63の上壁79で受け止めることにより、外刃ホルダー18のばね受け用の段部54の損耗を解消でき、これによりばね弾性の有効範囲が減少するのを防止し、長期使用時のばね弾性を適正化できる。
【0017】
保持枠52および付勢枠61の下面側のそれぞれに指掛部57・67を突設してあると、両指掛部57・67を親指と人差指とでつまんで外刃17を湾曲操作することにより、外刃ホルダー18から容易に取り外せる。外刃17を外刃ホルダー18に装着する場合に、指先が保護カバー63に不必要に触れてその組み付け姿勢が傾くのも防止できる。
【0018】
ロータリー式の電気かみそりにおいて、保持枠52が内刃16の回転上手側に位置し、内刃16の回転下手側に緊張構造が配置されていると、網刃体51が内刃16との摩擦によって回転下手側へ引っ張られることがあっても、網刃体51を緊張構造で緊張状態に維持し、網刃体51が緩んで切れ味が落ちるのを阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1ないし図7は本発明をロータリー式の電気かみそりに適用した実施例を示す。図2において電気かみそりは、グリップを兼ねる卵形の本体部1と、本体部1に連続して上向きに突設されたU字状の支持腕2と、支持腕2で浮動支持されるヘッド部3とを備えている。支持腕2は僅かに後凸状に湾曲しており、これによりヘッド部3は、本体部1の垂直中心軸線に対して僅かに前傾している。
【0020】
本体部1の内部には、回路基板6と2個の2次電池(電池)7とを収容してある。本体部1の前面には化粧パネル8が配置されており、その上下に押しボタン型のスイッチボタン9と、スイッチボタン9がオン操作されたときに点灯する第1表示灯10と、充電時に点灯する第2表示灯11などを配置してある。
【0021】
図1および図3においてヘッド部3は、ヘッドケース15と、ヘッドケース15に組み込まれる内刃16、外刃17および外刃ホルダー18と、内刃駆動用のモーター20と、モーター動力を内刃16に伝動するギヤ機構21とを含む。
【0022】
ヘッドケース15は、前後に分割される半円筒状の前ハーフ15aおよび後ハーフ15bを蓋合わせ状に結合してなる(図1参照)。ヘッドケース15の下面両側に左右一対の支持脚22を突設してあり、これらの支持脚22はフロートばね23を介して支持腕2で支持することにより、ヘッド部3を左右傾動あるいは左右同時昇降可能に浮動支持できる(図3参照)。
【0023】
内刃16はロータリー刃からなり、その両端の軸部分を内刃支持台25で回転自在に軸支してある。外刃17は網刃で形成されており、後述するように外刃ホルダー18によってアーチ状に保形して支持される。モーター20は前後周面が平坦に形成してあり、その一側に出力軸26を有し、他側から給電リード27を導出する。
【0024】
ヘッド部3を水洗い可能とするために、モーター20をハウジング30内に収容して水密状に封止する。図3においてハウジング30は、左右に分割される第1・第2の両ケース31・32と、両ケース31・32を分離不能に係合するクリップ33などで構成する。第1ケース31はモーター20の全体をできる有底筒状に形成してあり、第2ケース32は第1ケース31の開口を塞ぐ浅い皿形状に形成してある。クリップ33は、ばね板材を素材とするコ字状のプレス成形品であり、両ケース31・32の対向周面を同時に挟持して、両ケース31・32を分離不能に固定する。
【0025】
第1ケース31の側端上面には、先の内刃支持台25を支持する内刃ブラケット36を一体に形成する。第2ケース32の上面にも、同様の内刃ブラケット37を一体に形成し、これらの内刃ブラケット36・37に内刃支持台25を橋絡状に載置し、図3に示すように内刃支持台25の底枠部分をビス38で締結することにより、内刃支持台25をハウジング30と一体化できる。
【0026】
モーター20は、その出力軸26が側端壁から突出する状態で第1ケース31内に組み込まれ、出力軸26と第1ケース31の開口部分との間が第1パッキン40でシールされている(図3参照)。第1ケース31と第2ケース32の接合部分は、第2パッキン41でシールする。両パッキン40・41はそれぞれ成形パッキンからなる。
【0027】
上記のようにモーター20が収容されたハウジング30を、図1に示すように前ハーフ15aと後ハーフ15bとで前後に挟み、両ハーフ15a・15bの接合縁を互いに係合し、さらに上側接合面の左右を一対のビス43(図3参照)で締結することにより、ハウジング30をヘッドケース15と一体化できる。図3において給電リード27は第2ケース32の側端壁に開口した上下一対のリード穴からハウジング22の外へ導出され、支持脚22を介して本体部1へと配線される。
【0028】
ギヤ機構21は、平歯車群からなるギヤトレインで構成してあり、出力軸26の回転動力を、内刃16に固定した終段ギヤ44に減速した状態で伝動する。
【0029】
ヘッドケース15に装着の外刃ホルダー18をロック保持するために、ヘッドケース15の側壁の内面にはロック解除ボタン46を配置し、同ボタン46を圧縮コイル形のばね47でロック付勢している。ばね47の付勢力に抗してロック解除ボタン46を押し込み操作すると、ロック解除ボタン46に設けたロック爪46aと、外刃ホルダー18に設けたロック凹部18aとの係合状態が解除されるので、外刃ホルダー18をヘッドケース15から取り外すことができる。
【0030】
本発明は上記構造の電気かみそりにおいて、以下の緊張構造によって外刃17の緊張状態を維持し、内刃16に外刃17を密着させる。図4ないし図6において、外刃17はニッケル、あるいはニッケルコバルト合金を用いて電鋳法によって形成されたシート状の網刃体51と、網刃体51の対向縁の一方に固定される保持枠52と、網刃体51の対向縁の他方に装着される緊張構造とで構成する。外刃ホルダー18の前壁の内面には、先の緊張構造を受け止める段部54が形成されており、外刃ホルダー18の後壁の内面には、前記保持枠52を受け止める段部55が形成されている(図1参照)。
【0031】
保持枠52は左右横長のプラスチック成形品であり、その片面に網刃体51を固定するための4個の溶着ピン56が突設されており、下面中央に指掛部57を突設してある。溶着ピン56を網刃体51の後縁に沿って設けたピン穴58に外面側から係合し、溶着ピン56の突端を溶融変形することにより、保持枠52を網刃体51と一体化できる。
【0032】
緊張構造は、付勢枠61と、付勢枠61とともに網刃体51に固定されるばね体62と、付勢枠61およびばね体62の外面を覆う状態で付勢枠61に装着される保護カバー63とで構成する。
【0033】
付勢枠61は左右横長のプラスチック成形品であり、その片面にばね体62と網刃体51とを組むための凹部65を形成し、凹部65内に4個の溶着ピン66を突設してある。さらに、付勢枠61の下面中央に前記指掛部57と同様の指掛部67を突設してある。ばね体62は、左右横長のベース部70と、ベース部70の上縁2箇所から片面側へ向かって折り曲げられる掛止壁71と、各掛止壁71の左右両端から斜め上向きに連出されるばね腕72とを一体に備えており、ステンレス板材をプレス成形して得る。ベース部70と網刃体51の前縁には、それぞれ前記溶着ピン66用のピン穴73・74を形成してある。
【0034】
付勢枠61の凹部65には、ばね体62のベース部70と網刃体51の前縁を嵌め込み、これら両者のピン穴73・74に溶着ピン66を外面側から係合し、溶着ピン66の突端を網刃体51の内面側で溶融変形させることにより、付勢枠61およびばね体62を網刃体51に分離不能に溶着固定する。この組み付け状態において、ばね体62の掛止壁71は、付勢枠61の上面で受け止め支持されている(図1参照)。
【0035】
保護カバー63は、ステンレス板材を素材にしたプレス成形品であり、付勢枠61より上下幅が大きな帯板状のガイド壁77を有し、その左右両端にガイド壁77と協同して付勢枠61の側端を前後に挟持する一対の抱持腕78を折り曲げ形成してある。ガイド壁77の上下には、ばね腕72を受け止める上壁79と、付勢枠61の下方移動限界を規定する一対のストッパー壁80とを一体に備えている。
【0036】
上記構成の外刃17は、保持枠52および付勢枠61に設けた指掛部57・67を親指と人差指とでつまんで、図6に示すように網刃体51をアーチ状に湾曲した状態で外刃ホルダー18に下面側から組み付けて、保持枠52の上面を後壁側の段部55と接触させ、同様に保護カバー63の上壁79を前壁側の段部54に接触させる。この後に、外刃ホルダー18を図1に示すようにヘッドケース15に装着することにより、網刃体51が緊張構造で押し下げ付勢されて内刃16の周面に密着する。
【0037】
この装着状態においては、ばね腕72が弾性変形されて網刃体51を押し下げ付勢するので、網刃体51が内刃16との摩擦によって回転下手側へ引っ張られることがあっても、網刃体51が緩むのを阻止して緊張状態を維持できる。保持枠52および付勢枠61に設けた指掛部57・67は、図1に示すように、外刃ホルダー18の前後壁に隙間を介して対向しているので、外刃17を交換する場合には、指掛部57・67をつまんで網刃体51を湾曲させることにより、外刃17を外刃ホルダー18から容易に分離できる。なお、内刃16は図1および図7において矢印で示す方向へ回転駆動される。
【0038】
付勢枠61に装着した保護カバー63は、付勢枠61およびばね体62の外面を覆い隠して、ばね腕72が外部に露出するのを防止する。したがって、外刃17を外刃ホルダー18に組み込む際に、ばね腕72が他物に当って変形し、あるいはばね腕72のばね弾性が変化したりするのを確実に防止する。同様に、外刃ホルダー18に組み込む前の外刃17の取り扱い時に、ばね腕72が変形したり、そのばね弾性が変化したりすることもない。
【0039】
使用時のひげ切断をより効果的に行うために、内刃16および外刃17は図7に示すように構成し、さらに内刃16の周速度を従来のロータリー刃に比べてより高速化している。内刃16は螺旋状に配置した多数個のブレード16aを、丸棒状の刃本体16bにインサート固定して形成するが、ブレード16aのすくい角度θを10度に設定した。
【0040】
内刃16の周速度に関しては、従来のロータリー刃におけるブレード先端の周側度が1.0〜1.27m/秒であったが、この実施例においては、ブレード先端の回転軌跡の直径寸法が8mmであるとき、その駆動回転数を3500rpmとして、周速度を1.47m/秒とした。ブレード先端の周速度は1.3〜1.5m/秒の範囲内で選択でき、より好ましくは1.4〜1.5m/秒とする。なお、ブレード先端の周速度が1.3m/秒未満であると、ひげの切断に時間を要し、ブレード先端の周速度が1.5m/秒を越えると、外刃17の表面温度が20℃を越えるため法の規定を満足できない。
【0041】
外刃17を構成する一群の切刃82は、電鋳法によって内刃16と接する側が凹むシェル状に形成するが、刃穴に臨む切刃82の刃先エッジ82aのエッジ角度αが鋭角であって、刃尻エッジ82bのエッジ角度βより小さくなるように寸法設定してある。具体的には、回転上手側の刃先エッジ82aのエッジ角度αを45度とし、回転下手側の刃尻エッジ82bのエッジ角度βを60度として、両角度α・βの差を10度以上に設定した。
【0042】
このように、刃先エッジ82aと刃尻エッジ82bのエッジ角度α、βを大きく異ならせるには、電鋳槽に浸漬したシリンダー型の電鋳母型を同一方向へ高速回転しながら電鋳処理する。因みに、従来のロータリー刃におけるブレードのすくい角度θは5度であった。また、従来の外刃における切刃の刃先、および刃尻のエッジ角度はそれぞれ65度であった。
【0043】
内刃16および外刃17を上記の構造とし、ブレード16aの周速度を1.47m/秒まで高速化すると、ひげの切断機会が増える分だけ、ひげ切断を迅速に行える。さらに、従来のロータリーシェーバーにおいては、かみそりヘッドを内刃16の回転方向と逆向き、例えばあご側から唇へ向かって上向きに動かして、ひげそりを行う必要があったが、ブレード16aの周速度を高速化し、網刃体51を緊張構造で常に緊張させ内刃16と密着させることにより、ヘッド部3を内刃16の回転方向と逆向きに動かす場合はもちろんのこと、ヘッド部3を内刃16の回転方向と同じ向きに動かす場合にも、ひげ切断を適確に行える。このように、往復方向のひげ切断を可能とすることにより、従来のロータリーシェーバーに比べて、ひげ切断をさらに効果的に行って電気かみそりの使い勝手を向上できる。
【0044】
図8および図9は外刃17の別の着脱構造を示す。そこでは、保持枠52の下端に設けられる指掛部57を省略し、外刃ホルダー18の後側の段部55に臨む側壁内面に、保持枠52の側端を移行案内するための案内凹部86を形成する。前側の段部54に臨む側壁内面にも、同様の案内凹部87を形成する。
【0045】
外刃17を外刃ホルダー18に装着する場合には、図8に示すように、シート状の外刃17の緊張構造の側を指先でつまんで、保持枠52の端部を後側の段部55にあてがう。その状態のままで、図9に示すように、緊張構造の側を外刃ホルダー18の内部上方へ押し込み、保持枠52を時計回転方向へ反転させ、同時に網刃体51を逆U字状に湾曲変形させる。さらに、緊張構造の側を前側の案内凹部87に沿って押し上げ操作して、保護カバー63の上面を段部54に接当させることにより、外刃17を外刃ホルダー18に装着できる。外刃17を取り外す場合には、逆の手順で付勢枠61および保護カバー63を下向きに抜き出す。こうした取り付け形態によれば、外刃17を簡便に着脱できるうえ、着脱時に保持枠52や保護カバー63が外刃ホルダー18の内面構造に引っ掛かることもない。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。もちろん、内刃構造や、本体構造など、外刃構造以外の構造は、先の実施例で説明した構造と同じ構造としてある。
【0046】
上記の実施例では、横軸まわりに回転する内刃16を備えたロータリー式の電気かみそりについて説明したが、本発明は内刃16が左右方向へ往復駆動される往復動式の電気かみそりや、内刃が縦軸まわりに回転駆動される電気かみそりにも等しく適用できる。内刃16は上下昇降できる構造であってもよい。必要に応じて網刃体51とばね体62との間に付勢枠61を配置することができる。保護カバー63およびばね体62はプラスチック成形品にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】ヘッド部の縦断側面図である。
【図2】電気かみそりの正面図である。
【図3】ヘッド部の縦断正面図である。
【図4】ヘッド部の一部破断分解正面図である。
【図5】外刃の分解斜視図である。
【図6】外刃と外刃ホルダーを分離した状態の縦断側面図である。
【図7】内刃と外刃の切刃構造を示す縦断側面図である。
【図8】外刃の装着構造の別実施例を示す縦断側面図である。
【図9】外刃の装着手順を示す図8と同等の縦断側面図である。
【符号の説明】
【0048】
3 ヘッド部
16 内刃
17 外刃
18 外刃ホルダー
51 網刃体
52 保持枠
54・55 段部
57 指掛部
61 付勢枠
62 ばね体
63 保護カバー
66 溶着ピン
67 指掛部
70 ばね体のベース部
71 掛止壁
72 ばね腕

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部(3)に、内刃(16)と、内刃(16)の外周面に摺接する外刃(17)と、外刃(17)をアーチ形状に保形して保持する外刃ホルダー(18)とを備えており、
外刃(17)は、シート状の網刃体(51)と、網刃体(51)の対向縁の一方に固定される保持枠(52)と、網刃体(51)の対向縁の他方に固定される緊張構造とを含み、
外刃ホルダー(18)の前後壁の内面のそれぞれに、保持枠(52)および緊張構造を受け止める段部(54・55)が形成されており、
緊張構造が、付勢枠(61)と、付勢枠(61)とともに網刃体(51)に固定されるばね体(62)とを含み、
ばね体(62)の上部に、外刃(17)を内刃(16)へ向かって押し下げ付勢する複数個のばね腕(72)が設けてある電気かみそり。
【請求項2】
ばね体(62)が、付勢枠(61)に隣接するベース部(70)と、ベース部(70)の上縁から付勢枠(61)の上面に沿って折り曲げられる掛止壁(71)と、掛止壁(71)から斜め上向きに連出されるばね腕(72)とを備えている請求項1記載の電気かみそり。
【請求項3】
ばね体(62)のベース部(70)と付勢枠(61)とが、網刃体(51)に対して順に接合されており、
付勢枠(61)と一体に設けた溶着ピン(66)で、ばね体(62)のベース部(70)と付勢枠(61)とが、網刃体(51)に分離不能に溶着固定されている請求項2記載の電気かみそり。
【請求項4】
付勢枠(61)およびばね体(62)の外面に、プレス成形品からなる保護カバー(63)が装着されており、
付勢枠(61)およびばね体(62)が、保護カバー(63)に対して上下移動できる請求項3記載の電気かみそり。
【請求項5】
保持枠(52)および付勢枠(61)の下面側のそれぞれに、指掛部(57・67)が突設されている請求項3または4記載の電気かみそり。
【請求項6】
内刃(16)が横軸まわりに回転駆動されるロータリー式の電気かみそりであって、
内刃(16)の回転上手側に臨む外刃ホルダー(18)の後壁内面に設けた段部(55)で、保持枠(52)が受け止められており、
内刃(16)の回転下手側に臨む外刃ホルダー(18)の前壁内面に設けた段部(54)で、緊張構造が受け止められている請求項3から5のいずれかに記載の電気かみそり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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