説明

電気かみそり

【課題】従来の電気かみそりと同等の切れ味を確保しながら、内外両刃間の摺動摩擦を解消して、内外両刃の摩耗を最小限化する。
【解決手段】モーター動力で駆動される内刃9と、内刃9の外面を覆う状態で配置される内刃9とを備えている。内刃9と外刃10とは、接触圧力が零になる状態で内外に隣接配置して、両者9・10間に摺動摩擦が生じるのを防止する。そのために、外刃10を外刃支持体11で保形支持し、さらに、内刃9を前記外刃支持体11で駆動可能に支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター動力で駆動される内刃と外刃とを備えている電気かみそりに関し、外刃と内刃の接触摩擦に関して改良を加えたものである。
【背景技術】
【0002】
電気かみそりの切断刃構造には、大きく分けて三つの形態がある。内刃を往復駆動するレシプロ式と、内刃を垂直軸ないし傾斜する中心軸回りに回転駆動する回転式と、内刃を水平の中心軸回りに回転駆動するロータリー式の三者である。いずれの切断刃構造においても、外刃および内刃の少なくともいずれか一方を他方に対してばねで押し付けて、内外両刃を常時密着させることにより、切れ味を向上できるようにしている。
【0003】
本発明の電気かみそりでは、内外両刃の摩耗を軽減してモーター動力の無駄な消費を解消し、さらにモーター寿命の向上を図るが、内外両刃の接触摩擦を軽減することに関して、例えば本出願人の提案に係る特許文献1が公知である。そこでは、ロータリー式の内刃を構成する小刃の先端の表裏のそれぞれに刃凹部と逃げ面を形成し、これら両者の突端間に外刃と摺動する摺動面を設けている。刃凹部と逃げ面は、いずれも小刃ブランクにエッチング処理を施して凹面状に形成してあり、これら凹面部分の先端間に形成される摺動面の面積を小さくすることにより、外刃との摺動摩擦を小さくできるようにしている。この場合にも、外刃を板ばね製の緊張ばねで押し下げ付勢して、内刃と常時密着できるようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2008−188098号公報(段落番号0031、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電気かみそりにおいては、切断刃構造の形態の違いとは無関係に、内外両刃を例外なく常時密着させることで、切れ味を向上できるようにしている。そのため、モーターが稼動している状態では、内外両刃の間に常に摺動摩擦が発生し、その分だけモーター動力の一部が無駄に消費されてしまう。さらに、ひげを切断していない状態であっても、先の摺動摩擦に打ち勝って内刃を駆動する必要があるので、モーターには常に駆動負荷が作用しており、その分だけモーターの寿命が短くなる。
【0006】
本発明の目的は、従来の電気かみそりと同等の切れ味を確保しながら、内外両刃が常に密着するのを防いで内外両刃間の摺動摩擦を解消し、以て、内外両刃の摩耗を最小限化し、モーターが稼動している状態におけるモーター動力の無駄な消費を解消し、さらにモーターの寿命を向上できる電気かみそりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気かみそりは、モーター動力で駆動される内刃9と、内刃9の外面を覆う状態で配置される外刃10とを備えている。以て、内刃9と外刃10とが、接触圧力が零になる状態で内外に隣接配置してあることを特徴とする。
【0008】
外刃10を外刃支持体11で保形支持する。さらに、図1に示すように内刃9を前記外刃支持体11で駆動可能に支持して、内刃9と外刃10とを切断刃ユニット28としてユニット部品化する。
【0009】
内刃9は、刃本体16と、刃本体16を支持する内刃支持体14と、モーター動力を受け継いで内刃支持体14に伝える受動体15とで構成する。内刃支持体14および受動体15のいずれか一方を、外刃支持体11に設けた内刃支持構造26で外刃10に対してせん断移動可能に支持する。内刃支持構造26は、外刃10の外郭線内に位置する状態で配置する。
【0010】
外刃支持体11に組み付けられる前の外刃10を、塑性変形加工を施して所定形状に賦形しておく。
【0011】
プラスチック成形品からなる外刃支持体11の成形過程において、外刃10を外刃支持体11にインサート固定して所定の形状に保形する。
【0012】
所定形状に賦形された外刃10の内面に研削加工を施して、外刃10の内面を内刃9の外面形状に合致する形状に仕上げる。
【0013】
内刃9の左右両側に設けた内刃軸15が、外刃支持体11に装着した左右一対の軸受体26で回転自在に軸支してあるロータリー式の電気かみそりにおいて、外刃支持体11に対向配置した側壁20のそれぞれに、軸受体26が装着される軸受装着穴24と、内刃軸15を軸受装着穴24に組み付け案内するスリット25とを形成する。以て、スリット25を介して軸受装着穴24の内部に位置させた内刃軸15と、軸受装着穴24とに軸受体26を同時に装着して、内刃9を軸受体26を介して回転自在に軸支する。
【0014】
切断刃ユニット28をかみそりヘッド2の取付部35に着脱可能に装着する。かみそりヘッド2と切断刃ユニット28との間に、切断刃ユニット28を分離不能にロック保持するロック構造を設ける。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電気かみそりにおいては、内刃9と外刃10を接触圧力が零になる状態で内外に隣接配置して、内外両刃9・10の間に摺動摩擦が生じるのを防止するので、内外両刃9・10が摩耗するのを最小限化して刃寿命を延ばすことができる。また、モーター7が稼動している状態におけるモーター動力の無駄な消費を解消でき、さらにモーター7に作用する負荷を軽減してモーター寿命を向上できる。内外両刃9・10は、ばねで密着付勢されることなく、接触圧力が零になる状態でひげ切断を行なうが、内刃を外刃に密着させる従来の電気かみそりと同等程度の切れ味を確保しながらひげ切断を円滑に行なうことができる。
【0016】
外刃10を外刃支持体11で保形支持し、さらに内刃9を外刃支持体11で駆動可能に支持すると、内刃9と外刃10の位置精度を高度化して、内外両刃9・10の間に摺動摩擦が生じるのを確実に防止して、内外両刃9・10の摩耗や、モーター動力の無駄な消費などをさらに確実に解消できる。また、内外両刃9・10を外刃支持体11に組み付けることにより、せん断刃の構成部品を1個の切断刃ユニット28としてユニット部品化できるので、かみそりヘッド2に対する着脱や、内外両刃9・10が摩耗した時の刃交換を簡便に行なえる。
【0017】
刃本体16と、内刃支持体14と、受動体15などで内刃9を構成し、外刃10の外郭線内に設けた内刃支持構造26で内刃支持体14および受動体15のいずれかをせん断移動可能に支持すると、外刃10に近い位置で内刃支持体14あるいは受動体15をせん断移動可能に支持できるので、内外両刃9・10の位置精度をさらに高度化して微小隙間Eを正確に規定し、ひげの切断を円滑に行なえる。
【0018】
予め外刃10に塑性変形加工を施して所定形状に賦形しておき、賦形された外刃10を外刃支持体11に組み付けるようにすると、外刃支持体11に組み付けた状態における外刃10の形状のばらつきを解消して、内外両刃9・10をより適正に隣接配置でき、ひげの切断をさらに円滑に行なうことができる。
【0019】
外刃支持体11をプラスチック成形する過程で、外刃10を外刃支持体11にインサート固定して所定の形状に保形すると、例えば外刃10を外刃支持体11にかしめ固定し、あるいは溶接して固定するような場合に比べて、外刃10の湾曲形状や、外刃支持体11に対する取付位置のばらつきを大幅に軽減して高い精度で保形できる。また、外刃10を外刃支持体11に組み付ける手間を省いて、組立工数を削減しコストを節約できる。
【0020】
所定形状に賦形された外刃10の内面に研削加工を施して、外刃10の内面を内刃9の外面形状に合致する形状に仕上げるようにすると、外刃10の内面の形状精度、および内面の面精度を格段に向上して、内外両刃9・10の間に摺動摩擦が生じるのを防止できる。
【0021】
ロータリー式の内刃9を備えた電気かみそりにおいて、外刃支持体11の側壁20のそれぞれに軸受装着穴24とスリット25とを形成しておき、スリット25を介して軸受装着穴24の内部に位置させた内刃軸15と、軸受装着穴24とに軸受体26を同時に装着すると、内刃9の外刃支持体11に対する組立をより少ない手間で簡便に行なえる。また、軸受体26で内刃軸15を軸支するので、内刃9の外刃支持体11への組み付け位置のばらつきを解消でき、しかも内刃9が回転駆動されるときの回転振れ量を小さくできる。
【0022】
切断刃ユニット28をかみそりヘッド2の取付部35に装着し、さらに取付部35に装着した切断刃ユニット28をロック構造で分離不能にロック保持すると、ロック構造をロック解除操作するだけで、内刃9および外刃10を含む切断刃ユニット28を取付部35から分離して、内刃9および外刃10や取付部35の清掃を行なえる。また、内刃9および外刃10が損耗した場合には、切断刃ユニット28ごと交換することによって内外両刃9・10を同時に更新して切れ味を回復できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施例) 図1ないし図9は本発明に係るロータリー式の内刃を備えた電気かみそりの実施例を示す。図2において電気かみそりは、グリップを兼ねる本体部1と、本体部1で上下、前後、左右方向へ浮動自在に支持されるかみそりヘッド2とを備えている。本体部1の内部には、2個の2次電池3と、図示していない回路基板およびスイッチなどが配置してある。本体部1の前面には、先のスイッチを切り換える押しボタン型のスイッチボタン4と、表示灯(図示していない)などが配置してある。
【0024】
図3に示すようにかみそりヘッド2には、回転動力を出力するモーター7と、モーター7の回転動力を伝動するギヤ機構8と、ギヤ機構8の終段に連結されて回転駆動されるロータリー式の内刃9と、内刃9の外面を覆う外刃10と、外刃10を逆U字状に保形支持する外刃支持体11と、外刃支持体11を分離不能にロック保持するロック構造などが設けてある。
【0025】
図4において内刃9は、円柱状の内刃支持体14と、内刃支持体14の軸心に沿って固定される内刃軸(受動体)15と、内刃支持体14の周面に沿ってスパイラル状に植設される10個の小刃(刃本体)16とで構成する。内刃軸15および小刃16は、内刃支持体14を射出成形する際にインサート固定されて、内刃支持体14と一体に設けてある。得られた内刃ユニットは、研削加工を施して小刃16の先端に切刃16a(図1参照)を形成する。なお、内刃軸15は、内刃支持体14の成形時に一体に成形して、プラスチック製の軸として形成することができる。
【0026】
外刃10は、ニッケル合金を電鋳して得られるシート状の網刃からなり、そのシート面に断面が台形状の刃枠10aとひげ導入穴10bとの一群が規則的に形成してある(図1参照)。電鋳によって得られたシート状の外刃ブランクに塑性変形加工を施して、図5に示すように逆U字状に賦形したのち、得られた逆U字状の外刃10を外刃支持体11にインサート固定する。外刃10の前後縁には、それぞれ4個の装着穴18が形成してある。
【0027】
図6および図8に示すように外刃支持体11は、左右一対の側壁20と、これら側壁20を繋ぐ前後壁21・22と、前後壁20・21の下面左右に突設されるL字形のロック脚23を一体に備えた射出成形品からなる。左右の側壁20のそれぞれには、後述するブッシュ状の軸受体26を装着するための軸受装着穴24と、内刃軸15を組み付け案内するためのスリット25とが鍵穴状に形成してある。このようにスリット25を軸受装着穴24に連続して切欠状に形成すると、スリット25によって側壁20の強度が低下するのを防いで、外刃支持体11の構造強度を向上できる。例えば、スリット25が側壁20の下端から軸受装着穴24へわたって溝状に形成してあるような場合には、側壁20の下部がスリット25によって前後に分断されるのを避けられず、その分だけ外刃支持体11の構造強度が低下してしまう。
【0028】
外刃10は、その前後縁および装着穴18が前後壁21・22に埋設され、さらに左右両側が両側壁20に埋設された状態で、外刃支持体11にインサート固定する。このように、逆U字状の外刃10の周縁全体を外刃支持体11にインサート固定すると、外刃10を変形不能に固定保持でき、さらに、装着穴18に入り込む樹脂によって外刃支持体11に対して分離不能に固定できる。得られた外刃ユニットは、図7に示すように、外刃10の内面を研削砥石Gで研削して、外刃10の内面形状を、内刃9の外面形状に合致する形状に仕上げる。詳しくは、外刃10の内面の上半部を部分円弧状に研削し、一群の刃枠10aに形成される切刃10cを通る部分円弧部の半径値が、先に説明した切刃16aの回転軌跡の半径値と同じになるように仕上げる。
【0029】
本発明では、図1に示すように内刃9と外刃10とを、両者の接触圧力が零になる状態で内外に隣接配置し、これにより内刃9と外刃10との間に摺動摩擦が生じるのを防止した。具体的には、内刃9を外刃支持体11で回転自在に支持し、さらに外刃10を外刃支持体11で固定支持して、内刃9と外刃10とが付勢ばねなどの押圧力を受けて密着するのを避けるようにした。殆どの場合には、内刃9と外刃10との間に微小隙間Eを確保して、両者の接触圧力が零になるようにした。なお、ひげの平均的な直径は100μmであるので、微小隙間Eの値は50μm以下であることが好ましく、より好ましくは0〜10μmの範囲内に設定する。内刃9と外刃10の接触圧力が零であれば、微小隙間Eは0であってもよい。
【0030】
内刃9を外刃支持体11に組み付ける場合には、内刃9の内刃軸15をスリット25を介して軸受装着穴24の内部に位置させ、この状態の内刃軸15に軸受体(内刃支持構造)26を外嵌装着し、同時に軸受装着穴24に軸受体26を装着して、内刃9を軸受体26で回転自在に軸支する。さらに、一方の内刃軸15に内刃ギヤ27を圧入し固定する。このように、内刃9を外刃支持体11で軸受体26を介して回転自在に軸支することにより、内刃9と外刃10とが組み付けられた切断刃ユニット28を得ることができる。切断刃ユニット28における内刃軸(受動体)15は、外刃10の前後寸法の範囲内で、しかも上下寸法の範囲内、つまり外刃10の外郭線の内部に配置する。なお、内刃9が駆動されるときの回転方向を図1および図4に矢印で示している。
【0031】
図3および図9に示すように、ギヤ機構8は、モーター7の出力軸に固定される出力ギヤ31と、出力ギヤ31に噛み合うフェースギヤ32とで、垂直軸回りのモーター7の回転動力を水平軸周りの回転動力に変換し、さらにかみそりヘッド2の一側に配置したギヤトレイン33を介して減速したのち、内刃ギヤ27へと伝動する。ギヤトレイン33を構成する平歯車のうち、終段ギヤ34の上部のみが、かみそりヘッド2に設けた切断刃ユニット28用の取付部35に露出させてある。
【0032】
取付部35は、かみそりヘッド2を構成するヘッドフレーム38に形成する。詳しくは、ヘッドフレーム38の上端に突設される左右一対の側枠39と、両側枠39の基端部どうしを繋ぐ底壁40とで逆門形に形成する。底壁40の上面には、四角形状の位置決め壁41が膨出してある。切断刃ユニット28を取付部35に装着した状態では、図9に示すように外刃支持体11の左右方向の動きが一対の側枠39で規制され、図4に示すように前後方向の動きが位置決め壁41で規制される。また、かみそりヘッド2と外刃支持体11との間に設けたロック構造で、切断刃ユニット28が分離不能にロック保持される。
【0033】
図3および図9においてロック構造は、ヘッドフレーム38の内部に配置されるロック枠44と、ロック枠44をロック姿勢に移動付勢するロックばね45と、ロック枠44の一端に固定されるロック解除ボタン46と、外刃支持体11に設けた4個のロック脚23などで構成する。ロック枠44の上面には、ロック脚23と係合する4個のロック爪47が突設してある。これらのロック爪47が底壁40に開口したロック開口48に臨む状態で、ロック枠44をヘッドフレーム38の内部に配置し、ロック枠44の全体を図示していないガイド構造で左右スライド可能に案内支持している。
【0034】
図9に示すように、切断刃ユニット28を取付部35に装着した状態においては、ロック脚23がロック爪47で係合捕捉されるので、切断刃ユニット28を分離不能にロック保持できる。切断刃ユニット28を取付部35から取り外す場合には、側枠39の外側面に露出するロック解除ボタン46をロックばね45の付勢力に抗して押し込み操作して、ロック脚23とロック爪47の係合状態を解除する。なお、内刃9および外刃10の交換は、外刃支持体11を取付部35から取り外して切断刃ユニット28ごと行なう。
【0035】
以上のように本発明の電気かみそりでは、内刃9と外刃10とを両者の接触圧力が零になる状態で内外に隣接配置し、内刃9が回転駆動されてせん断移動するとき、内刃9と外刃10とが相対摺動するのを防止するので、両刃9・10の間に摺動摩擦抵抗が生じるのを解消して、内外両刃9・10の摩耗を最小限化できる。また、両刃9・10間に摺動摩擦が生じるのを防止するので、モーター7が稼動している状態におけるモーター動力の無駄な消費を解消でき、さらにモーター7に作用する付加を軽減してモーター寿命を向上できる。
【0036】
ひげ剃り時のひげは、ひげ導入穴10bに入り込んだのち、小刃16の切刃16aに捕捉されて、外刃10の刃枠10aに押し付けられ、その側端に設けた切刃10cと先の切刃16aとのせん断作用によって切断される。因みに、ひげの直径寸法は概ね100μm前後であり、両切刃10c・16aの間の微小隙間Eは、多くても10μmにすぎない。したがって、ひげを切断するとき微小隙間Eが問題になることはなく、内刃と外刃が密着する従来の電気かみそりと同等の切れ味を確保しながらひげ切断を行なうことができる。外刃10が肌面に強く押し付けられるような場合には、外刃10の中央部分が撓み変形して小刃16に接触するおそれがある。その場合でも、外刃10に作用する押し付け力が開放されるのと同時に、外刃10が元の状態に復帰して小刃16から微小隙間Eの分だけ離れるので、内刃9と外刃10との摺動による摩擦抵抗の発生を極力避けることができる。
【0037】
図10ないし図12は、本発明をレシプロ式の内刃を備えた電気かみそり適用した実施例を示す。内刃9は、スリット刃からなる刃本体16と、刃本体16を固定支持する内刃支持体14と、振動子51の往復動作を受け継ぐ受動体15とで構成する。受動体15は内刃支持体14と一体に成形してある。刃本体16は、ステンレス板材にエッチング処理を施したのち、得られた内刃ブランクを断面逆U字状に折り曲げて形成する。刃本体16の前後面の下部には取付穴53が4個ずつ形成してあり、これらの取付穴53を内刃支持体14に設けた溶着ピン54に係合し、溶着ピン54の先端部分を溶融変形させることにより内刃支持体14と一体化する。
【0038】
内刃支持体14は、上下面が開口する左右横長の基枠部56と、基枠部56の両側に起立形成される側枠57とを一体に備えており、基枠部56の内部の左右中央に、受動体15が前後の枠壁を橋絡する状態で形成してある。基枠部56の前面および後面のそれぞれにはスライドリブ58が一体に形成してあり、これらのスライドリブ58を外刃支持体11で案内支持している。具体的には、外刃支持体11の前後壁の内面にガイド溝(内刃支持構造)59を設け、これらのガイド溝59でスライドリブ58をスライド自在に案内している。図12に示すように外刃支持体11は、一方の側壁20が別部品として形成してあり、スライド突起58をガイド溝59に差し込んで内刃9を外刃支持体11に組み付けたのち、先の側壁20を外刃支持体11に組み付ける。
【0039】
図11に示すように、外刃支持体11に組み付けた内刃9は、先の実施例と同様に外刃10に対して接触圧力が零になる状態で隣接配置してあり、したがって、内刃9が往復駆動されてせん断移動するとき、両刃9・10の間に摺動摩擦抵抗が生じるのを解消して、内外両刃9・10の摩耗を最小限化できる。また、内刃9を外刃10に向かって密着付勢するばねや、外刃10を内刃に密着させるための付勢ばねを省略するので、内刃9がせん断駆動される使用時、あるいは不使用時のいずれの場合にも、内刃9と外刃10との接触圧力を零にすることができる。なお、内外両刃9・10の間に微小隙間Eを設ける場合には、その値を一定の状態に保持できる。モーター7の回転動力は、偏心カム61と振動子51を介して往復動力に変換され、振動子51の上部に設けた駆動軸62を介して受動体15へと伝動される。他の構造は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
【0040】
図13ないし図15は切断刃ユニット28の別の実施例を示す。そこでは、外刃10を外刃支持体11に対して溶着固定した。また、補強体65を付加して外刃支持体11の構造強度を向上し、同時に内刃9を補強体65で軸支して位置精度を向上できるようにした。外刃10は、電鋳法で形成した外刃ブランクに塑性変形加工を施して逆U字状に形成してある。外刃10の前後縁には、それぞれ6個の装着穴18が形成してあり、これらの装着穴18を外刃支持体11の前後壁21・22の内面に設けた溶着ピン66に係合し、溶着ピン66の先端を溶融変形させることにより、外刃支持体11の内面側に固定する。こののち、外刃10の内面を研削して仕上げる。
【0041】
補強体65は平板状のベース67と、左右一対の軸受枠68と、ロック脚23とを一体に備えたプラスチック成形品からなり、軸受枠68の上端寄りに軸受体26がインサート固定してある。ベース67の面壁には、毛屑排出用の開口71が形成してある。切断刃ユニット28は次の手順で組み立てる。まず、外刃10を外刃支持体11に溶着固定する。次に、内刃軸15をスリット25を介して軸受装着穴24の内部に位置させ、補強体65を外刃支持体11の下部に仮組みする。この状態で、軸受枠68を左右に拡げて弾性変形させながら、軸受体26を軸受装着穴24に嵌め込み、同時に内刃軸15を軸受体26の軸受穴に嵌合して、内刃9を軸受体26で回転自在に軸支する。さらに、一方の内刃軸15に内刃ギヤ27を圧入し固定する。最後に、ベース67を外刃支持体11の下部に設けた溶着ピン70(図15参照)で固定して、補強体65を外刃支持体11と一体化して切断刃ユニット28とする。なお、外刃支持体11および補強体65で前後一対の内刃9を軸支するような場合には、軸受枠68の外側面に内刃ギヤ27と噛み合う終段ギヤを軸支して、切断刃ユニット28とすることができる。この実施例における軸受枠68は内刃支持構造として機能する。
【0042】
上記の軸受体26は補強体65と一体に形成することができ、その形成素材がプラスチックである場合には、フッ素樹脂などの低摩擦樹脂で補強体65を形成するとよい。また、軸受体26と補強体65を金属成形品として一体に形成する場合には、その形成素材を含油メタルで形成するとよい。さらに、軸受体26と補強体65を金属プレス成形品や、鋳造品として形成する場合には、軸受体26の部分に注油構造を設けるとよい。金属プレス成形品や鋳造品からなる補強体65に、軸受体26を圧嵌固定して一体化してもよい。
【0043】
図16ないし図18は切断刃ユニット28のさらに別の実施例を示す。そこでは、ステンレス板材にエッチング処理を施して外刃10を形成した。また、外刃支持体11を亜鉛ダイキャスト成形品で形成して、その外面に被せ付けた外刃10の前後縁部をスポット溶接した。外刃支持体11の側壁20には、軸受装着穴24と切欠状のスリット25を鍵穴状に形成して、スリット25によって側壁20の周縁部が前後に分断されるのを避け、外刃支持体11の構造強度を向上できるようにした。この実施例においても、先の実施例と同様に補強体65を付加するが、その軸受枠68に軸受穴69の直径寸法と同じ幅のスリット73を形成する点が先に説明した補強体65と異なる。この実施例では、内刃9を軸受装着穴24に仮組みした状態で、軸受体26を内刃軸15および軸受装着穴24の嵌合した後、補強体65を外刃支持体11に組み付けるだけでよく、一連の組立作業を簡便化できる。図17および図18に示すように、内刃9および補強体65などを外刃支持体11に組み付けた状態においては、軸受体26が外刃支持体11の軸受装着穴24と補強体65の軸受穴69とに抱持された状態で位置決めされる。補強体65は外刃支持体11に接着固定する。
【0044】
図19ないし図21は切断刃ユニット28のさらに別の実施例を示す。そこでは、外刃10をニッケルの電鋳品として形成したのち、プレス加工を施して逆U字状に折り曲げ形成した。外刃10を保形するためにステンレス板材製の保形枠75を付加する。保形枠75は、逆U字状に形成される左右一対の刃受枠76と、両刃受枠76の下端どうしを繋ぐ前壁77および後壁78とを一体に備えたプレス成形品からなる。保形枠75の外面に外刃10を被せ付けたうえで、外刃10の前後縁の外面に接合した固定板79を、先の前壁77および後壁78にスポット溶接して外刃10を保形枠75に固定する。固定板79はステンレス板材からなり、その板面に沿って装着穴18に内嵌する突起80が形成してあり、図21に示すように、これらの突起80の突端が保形枠75の前壁77および後壁78に密着する状態でスポット溶接する。
【0045】
一体化された外刃10および保形枠75は、図21に示すように、外刃支持体11に下面側から嵌め込んで接着固定する。この組み付け状態では、外刃10の周縁全てが保形枠75と外刃支持体11とで内外に確りと挟持固定されている。なお、この実施例における軸受体26は鍵穴形に形成して、軸受体26が軸受装着穴24に嵌め込まれるのと同時にスリット25を塞ぐようにした。必要があれば軸受体26の外郭形状は四角形や楕円形にすることができる。
【0046】
図22および図23は切断刃ユニット28のさらに別の実施例を示す。そこでは、外刃支持体11の外面に外刃10を被せ付け、その後縁側を外刃支持体11に設けた溶着ピン66で固定した。そのうえで、外刃10の前縁を左右一対のばね82で引っ張り付勢して、外刃10を外刃支持体11の外面に密着できるようにした。このように、外刃10を外刃支持体11に対して常時密着させるようにすると、外刃10の湾曲形状を左右一対の側壁20の円弧周面で適正に保持でき、したがって内刃9と外刃10との間に設けられる微小隙間Eを適値に保持できる。
【0047】
図24および図25は切断刃ユニット28のさらに別の実施例を示す。そこでは、内刃9を回転駆動しながら同時に左右方向へ往復駆動して、内刃9の切れ味を向上できるようにした。詳しくは、内刃軸15を軸受体26でスライド自在に支持し、内刃軸15の一方の軸端に起振円板84を固定する。軸受体26と対向する起振円板84の板面には、9個の半球状の突起85が一定間隔おきに形成してある。また、起振円板84の突起群と対向する側壁20の内面壁には、突起85に接当する操作体86が膨出形成してある。符号87は圧縮コイル形のばねであり、このばね87で起振円板84を介して内刃9の全体を図24に向かって右方へ移動付勢している。
【0048】
起振円板84は内刃9に同行して回転駆動され、1回転する間に9個の突起85がばね87の付勢力に打ち勝って操作体86を次々と乗越える。そのため、内刃9は回転しながら左右スライドする。その結果、小刃16の切刃16aはせん断作用と引き切り作用とを同時に発揮できることとなり、単にせん断作用のみでひげ切断を行なう場合に比べて切れ味を向上できる。
【0049】
上記の実施例以外に、本発明は回転式の内刃を備えた電気かみそりにも適用でき、その場合には、外刃を支持する外刃支持体で内刃を回転自在に軸支するとよい。また、本発明は、かみそりヘッドに複数対の内刃9および外刃10が設けてある電気かみそりにも適用できる。スリット25は、側壁20の周囲の任意の位置から軸受装着穴24へ向かって形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】内刃と外刃の配置構造を示す縦断側面図である。
【図2】電気かみそりの正面図である。
【図3】内刃の駆動構造を示す縦断正面図である。
【図4】図9におけるA−A線断面図である。
【図5】外刃の斜視図である。
【図6】外刃および外刃支持体の縦断正面図である。
【図7】外刃を内面研削するときの加工状態を示す縦断側面図である。
【図8】内刃および外刃支持体の分解斜視図である。
【図9】かみそりヘッドの縦断正面図である。
【図10】切断刃ユニットの別の実施例を示す縦断正面図である。
【図11】図10におけるB−B線断面図である。
【図12】図10に係る切断刃ユニットの一部を破断した分解正面図である。
【図13】切断刃ユニットのさらに別の実施例を示す分解斜視図である。
【図14】図13に係る切断刃ユニットの縦断正面図である。
【図15】図13に係る切断刃ユニットの縦断側面図である。
【図16】切断刃ユニットのさらに別の実施例を示す分解斜視図である。
【図17】図16に係る切断刃ユニットの縦断正面図である。
【図18】図16に係る切断刃ユニットの縦断側面図である。
【図19】切断刃ユニットのさらに別の実施例を示す分解斜視図である。
【図20】図19に係る切断刃ユニットの縦断正面図である。
【図21】図19に係る切断刃ユニットの縦断側面図である。
【図22】切断刃ユニットのさらに別の実施例を示す一部破断正面図である。
【図23】図22に係る切断刃ユニットの縦断側面図である。
【図24】切断刃ユニットのさらに別の実施例を示す縦断正面図である。
【図25】図24におけるC−C線断面図である。
【符号の説明】
【0051】
9 内刃
10 外刃
11 外刃支持体
14 内刃支持体
15 受動体(内刃軸)
16 刃本体(小刃)
26 内刃支持構造(軸受体)
59 内刃支持構造(ガイド溝)
E 微小隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーター動力で駆動される内刃(9)と、内刃(9)の外面を覆う状態で配置される外刃(10)とを備えており、
内刃(9)と外刃(10)とが、接触圧力が零になる状態で内外に隣接配置してあることを特徴とする電気かみそり。
【請求項2】
外刃(10)が外刃支持体(11)で保形支持されており、
内刃(9)を前記外刃支持体(11)で駆動可能に支持して、内刃(9)と外刃(10)とが切断刃ユニット(28)としてユニット部品化してある請求項1記載の電気かみそり。
【請求項3】
内刃(9)が、刃本体(16)と、刃本体(16)を支持する内刃支持体(14)と、モーター動力を受け継いで内刃支持体(14)に伝える受動体(15)とで構成されており、
内刃支持体(14)および受動体(15)のいずれか一方が、外刃支持体(11)に設けた内刃支持構造(26)で外刃(10)に対してせん断移動可能に支持されており、
内刃支持構造(26)が、外刃(10)の外郭線内に位置する状態で配置してある請求項2に記載の電気かみそり。
【請求項4】
外刃支持体(11)に組み付けられる前の外刃(10)が、塑性変形加工を施して所定形状に賦形してある請求項2または3に記載の電気かみそり。
【請求項5】
プラスチック成形品からなる外刃支持体(11)の成形過程において、外刃(10)が外刃支持体(11)にインサート固定されて所定の形状に保形してある請求項2、3または4に記載の電気かみそり。
【請求項6】
所定形状に賦形された外刃(10)の内面に研削加工を施して、外刃(10)の内面が内刃(9)の外面形状に合致する形状に仕上げてある請求項4または5に記載の電気かみそり。
【請求項7】
内刃(9)の左右両側に設けた内刃軸(15)が、外刃支持体(11)に装着した左右一対の軸受体(26)で回転自在に軸支してあるロータリー式の電気かみそりであって、
外刃支持体(11)に対向配置した側壁(20)のそれぞれに、前記軸受体(26)が装着される軸受装着穴(24)と、内刃軸(15)を軸受装着穴(24)に組み付け案内するスリット(25)とが形成されており、
前記スリット(25)を介して軸受装着穴(24)の内部に位置させた内刃軸(15)と、軸受装着穴(24)とに軸受体(26)を同時に装着して、内刃(9)が軸受体(26)を介して回転自在に軸支してある請求項2から6のいずれかに記載の電気かみそり。
【請求項8】
切断刃ユニット(28)がかみそりヘッド(2)の取付部(35)に着脱可能に装着されており、
かみそりヘッド(2)と切断刃ユニット(28)との間に、切断刃ユニット(28)を分離不能にロック保持するロック構造が設けてある請求項2から7のいずれかに記載の電気かみそり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−82014(P2010−82014A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251861(P2008−251861)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】