説明

電気エネルギー、光エネルギー、および音響エネルギーのうち少なくともいずれか1つを用いる視覚障害の治療

視覚障害のための非侵襲的な眼の治療法が提供される。直流源の第1電極および第2電極が、対象者の一方または両方の眼の近傍領域およびその周囲のうち少なくともいずれか一方に電流を送達するように電気的に接続される。抵抗を約500オームとして、約1〜800マイクロアンペアの直流電流を電極の間に所定の期間発生させる。好ましくは、直流電流を、時間の関数として選択周波数プロファイルで、約10,000〜12,000Hzの搬送波信号を用いて発生させる。有利な点として、対象者の治療は、眼に光エネルギーを施用すること、ならびに超低周波の音波を直接眼内に施用することによって増補される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害(例えば眼疾患)の治療、より具体的には電気エネルギー、光エネルギー、および音響エネルギーのうち少なくともいずれか1つの形態のエネルギーを選択的かつ治療的に眼に施用することに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、米国特許法第119条(e)(1)に基づいて次の米国仮特許出願、すなわち出願番号第60/542,768号(2004年2月6日出願)、同第60/542,442号(2004年2月6日出願)、同第60/542,443号(2004年2月6日出願)、および同第60/542,724号(2004年2月6日出願)の優先権を主張し、米国特許法第363条に基づいて出願された国際特許出願である。
【0003】
(発明の背景)
視覚障害についての情報および知識が増大している。視覚に障害を有する2000年に生まれた全ての人の生涯コストは総額25億ドルになろうと試算されている(2003年ドル、概して米国疾病管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)、「Economic Costs Associated with Mental Retardation, Cerebral Palsy, Hearing Loss, and Vision Impairment, United States, 2003 」、疫学週報(MMWR)、2004年、第53巻、p.57−9を参照のこと)。これらのコストには、直接的および間接的いずれのコストも含まれる。直接的医療コスト、例えば受診、処方薬、および入院などはこれらのコストの6%を占める。医療費以外の直接的費用、例えば自宅の改修および特殊教育などは、コストの16%を構成する。間接的コストは、人が早期に死亡したり、働くことができなかったり、あるいはその人に可能な仕事の量や種類が限られていたりする場合の損失賃金を含めて、コストの77%を構成する。これらの試算には、外来患者の通院、救急科の受診、および家族の自腹の費用などその他の費用は含まれていない。従って、視覚障害についての実際の経済コストは一般に報告されているよりもはるかに高い。
【0004】
米国における成人の視覚障害の最も一般的な原因は、加齢黄斑変性症(AMD)、老眼、糖尿病性網膜症、白内障、および緑内障である。AMDは、明確な中心視を担う網膜の部分を冒し、65歳を超える人の米国における法的盲の主因である。1997年3月のレビュー・オブ・オプトメトリー・ジャーナル(March 1997 Review of Optometry Journal)によれば、52歳超の米国民の10%がAMDであり、75歳超の人の33%がAMDである。1300万人を超える米国人が現在AMDを有し、ベビーブーマーが65歳に達するまでに、65歳超の米国民のほぼ25%の、3000万を超えるAMD症例が存在することになるであろう。
【0005】
老眼は、40歳を過ぎた多くの人の、「細かい文字」を読む視力に影響を与え始める苛立たしい状態(すなわち、かすみ眼)である。人々は、細かい文字に焦点を合わせられないことに気付き、また頭痛、眼精疲労を起こしたり、疲れを感じたりすることもある。処置としては一般に、あまり費用のかからない「既成の」「老眼鏡」を購入すること、手術、または二重焦点コンタクトレンズが含まれる。老眼は、40歳超の人の天然の眼球レンズにおいて弾力性または可撓性が失われることから起きると考えられている。加齢によるプロセスの際に、レンズ内のタンパク質によりレンズの硬化、弾力性の喪失が始まり、レンズ周囲の筋繊維も影響を受ける。近くに焦点を合わせるためにレンズは弾力性を必要とするので、機能性が低下したり低下しつつあったりすると、視力に影響が出る。
【0006】
糖尿病性網膜症は糖尿病の一般的な合併症であり、網膜の血管が破損し、漏出を起こし、または閉塞に至ることにより視覚障害を引き起こす。白内障は、通常は透明な眼球レンズの混濁である。緑内障は、眼球内に液体が増加し、圧力が上昇して眼球の拡大を引き起こす。この状態の多くが失明するリスクは、早期に発見して治療すれば低減可能であることが多い。
【0007】
正常な網膜細胞の機能は、光エネルギーを、脳へ移動して視覚を生じる電気刺激へと変換する光化学反応である。AMDおよびその他の視覚系の疾患を伴うと、病変し、炎症を起こした網膜細胞は最終的には細胞機能を喪失する。アデノシン三リン酸(ATP)のレベルが低下し、タンパク質合成が低下し、電気抵抗が上昇し、細胞の電位が低下する。基本的に、細胞はある期間休止状態になってから死滅するようである。細胞が死滅する前に電気刺激を与えれば、血管の透過性が上昇し、細胞の電気的ポテンシャルがより正常に近くなり、ATPレベルが上昇し、タンパク質合成が再開され、正常な細胞の代謝が回復すると考えられている。
【0008】
さらに、電気刺激は、網膜内の微細な血管に治癒効果を有し、栄養分を網膜細胞へ送達する効率、および網膜に蓄積可能なタンパク質を取り込む効率を促進するようである。従って、微小電流刺激(すなわち、一般に約1500マイクロアンペア未満の通電)は、AMDなどによる眼の変性を遅延または停止させるために網膜内の細胞を回復させる助けとなると考えられている。適切な微小電流刺激の波形および治療手技を用いて、進行性の視覚障害に苦しんでいる多くの人々について該障害を遅延または停止させることができる。
【0009】
例えば、フェドロフ(Fedorov)らの特許文献1には、視神経および網膜の疾患を、3.5のパルス磁束、0.1T〜0.25Tの磁場誘導を与えることによって治療することが提示されている。しかしながら、この技法は侵襲的であり、眼球後部および視神経を露出させて眼窩にインデューサを導入する必要がある。
【0010】
リス(Liss)らの特許文献2には、経皮的に電気刺激を与えて、より具体的には、4ミリアンペア未満のレベルのパルス電流であって、パルス列が12−20kHzで生じ、振幅変調が8−20hzであり、かつ負荷サイクル3:1を有する電流を与えて緑内障を治療することが提示されている。この波形を、こめかみおよび同側の手に配置された電極を介して与えることで、リス(Liss)らは治療した眼球内の眼圧を約28%低下させた。本発明者らの認識では、眼に電流を通過させること(本明細書では以降「経眼的電気伝導」とする)は、当技術分野において失明疾患の治療に用いられてきたが、例えば波形、電力、持続時間、および周波数を選択または組合せて視覚障害の治療法として拡大することは為されていない。
【0011】
グリーンバーグ(Greenberg)らの特許文献3は、概して、長期間の刺激信号を与えることによって、ガレオンの細胞を直接電気的に刺激することなく深部の中間の網膜細胞を電気的に刺激して、集中的に眼内閃光を発生させる方法に関する。好ましくは、長期間の刺激信号は、逆相および正相のパルスを有する二相信号である。さらに、不均等な振幅位相を用いることによって、そのような二相のパルスで陰極の単相パルスをシミュレートすると好都合であると考えられる。
【0012】
ウォレス(Wallace)らの特許文献4から、200マイクロアンペアの一定した直流電流が、黄斑変性症などの眼疾患の治療に有効であることが示唆されている。さらに、ジャーディング(Jarding)らの特許文献5および6は、約50〜180マイクロアンペアの振幅を有し、スイープ波信号発生器により生じたスイープ波の微小電流を含んでなる、眼に適した微小電流の施用に関して、微小電流刺激は、網膜色素変性症などさらに別の「失明」の原因となる疾患に罹患している人の視覚を改善する可能性があること
を示唆している。これらの例では、改善に関する理論は、休止状態の光受容細胞にエネルギーをもたらすことに関係している。本発明者らの考えでは、ウォレス(Wallace)らの取り組みは、出力レベルおよび周波数の選択/施用時間のいずれの変更においても発展性がなく、さらには、ジャーディング(Jarding)らの取り組みは、広範すぎて特に有効な治療用の周波数を特定できない。このことは、ジャーディングらの場合、ジャーディングらが、視覚障害の克服に関係する技術的検討とは異なる検討を要すると思われる、がんなどの広範囲の疾患を治療することを企図していることによると思われる。
【特許文献1】米国特許第5,147,284号明細書
【特許文献2】米国特許第4,614,193号明細書
【特許文献3】米国特許第5,944,747号明細書
【特許文献4】米国特許第5,522,864号明細書
【特許文献5】米国特許第6,035,236号明細書
【特許文献6】米国特許第6,275,735号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、治療効果を最大にする、エネルギーを用いた視覚障害の治療が依然として必要とされている。さらに、視覚障害を煩う人を治療するために、電気、光、および音響の形態のエネルギーを単独または選択した組み合わせとして含む、エネルギーを用いた治療を提供することが有利であると考えられる。またさらに、経眼的電気伝導の改良は、対象者の視覚への効果を最大限とするための、特定の周波数、波形、持続期間、および出力アルゴリズムを用いて達成されると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の主な目的は、視覚障害を治療するための改良された装置および方法を提供することである。
本発明の別の目的は、電流を経眼的に伝導させて眼を治療することにより視力を回復させるための安全で改良された非侵襲的な方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、他のエネルギー形態、すなわち光エネルギーまたは音響エネルギーのうち少なくともいずれか一方により供給される電流を経眼的に伝導させて眼を治療することにより視力を回復させるための、安全で改良された非侵襲的な方法を提供することである。
【0016】
本発明の上記およびその他の目的は、一方が閉じた眼瞼の上または近傍に配置され、他方が身体上の離れた位置、例えば対象者の同じ側の手の先に配置された電極の間に、振幅変調した、低レベルの、パルス状の直流を発生させる直流発生器により実現される。
【0017】
視覚障害の一種としての失明疾患は、いずれも本発明により安全かつ有効に治療されうる出血性かつ滲出性の変種を有する、消耗性眼疾患である。通常、治療により、検眼鏡で見られる該障害の徴候が軽減され、続いて中心視力が回復する。本開示に関しては、「失明疾患」とは、黄斑変性症、老眼、網膜色素変性症、およびスタルガルト病を意味し、糖尿病性網膜症、緑内障、CMV性網膜炎、ベスト病、黄斑ジストロフィー、視神経炎、前部虚血性視神経症、アッシャー症候群、レーバー先天性黒内障、錐体杆体ジストロフィー、錐体ジストロフィー、先天性脈絡膜欠如および脳回転状萎縮、網膜中心動脈閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、網膜動脈分岐閉塞症、網膜静脈分岐閉塞症、中心性漿液性網脈絡膜症、類嚢胞黄斑浮腫、眼性ヒストムプラスモーシス(ocular histomplasmosis)、眼性トキソプラスモーシス(ocular toxoplasmosis)、未熟児網膜症、弱視、斜視、ならびに眼振のうち1つまたはそれ以上が含まれ得る。
【0018】
本発明について、より具体的な特徴およびそれらの特徴に照らして得られる利点は、図面および発明を実施するための最良の形態を参照すれば明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
ここで図面を参照するが、図面は全体を通じて類似の符号は本発明の類似の部品を示すものとして用いられる。
本発明の治療法は非侵襲的であり、眼および/または眼の近傍の特定領域の皮膚に取り付けられた電極を通して厳密に制御された電流を正確な量だけ最小限に流すことを含む。多周波数パルス発生器、たとえば米国ミネソタ州所在のシフィックス・リミテッド・ライアビリティー・カンパニーから入手可能なシフィックス(ScyFIX)600型微小電流刺激発生器は、治療施術を進めるために電極の間に直流電流を発生させるのに有利である。
【0020】
図1を参照すると、眼21の少なくとも一方の閉じた瞼が電極22と接触した状態にあるヒト対象者20が示されている。電極22は、適切な電源に接続されているか電源を内蔵している定電流発生器25の陽極側出力に接続されている。該定電流発生器25の陰極側出力には第2電極24が接続されており、電極24は好ましくは近い側の手の皮膚に取り付けられる。定電流発生器25を始動させると電流波腹点が発生し、電流波腹点は順々に広がって定電流発生器25から電極22および眼21を通って第2電極24に終着する。電流波腹点は定電流発生器25で完結する。
【0021】
本発明の一態様によれば、視覚障害、より具体的には対象者の失明疾患は、次のステップ、すなわち、直流源の第1電極を、対象者の眼のうち近い方または両方に電気的に接触させる、例えば閉じた眼瞼と接触させるように配置するステップと;該直流源の第2電極を、第1電極の位置から離れた部位と電気的に接触させて配置するステップと;抵抗を約500オームとして、1〜800マイクロアンペアの直流パルスを、電極間および対象者を通して所定の期間、例えば20分間流すステップとにより治療される。好ましい実施形態では、所定の期間の中で最大4種の別個の周波数が用いられる。より具体的には、周波数は、例えば、約290Hz(すなわち250〜300Hz)で約1分間、約31Hz(すなわち25〜35Hz)で約2分間、約8.9Hz(すなわち7〜10Hz)で約7分間または約10分間のいずれか(すなわち少なくとも約7分間)、約0.28Hz(すなわち0.15〜0.3Hz)で約7分間または約10分間すなわち少なくとも約7分間)の一続きの周波数プロファイルで施用される。好ましい周波数プロファイルそれぞれについての関連する周波数出力チャートを図2〜5に示す。用いられる周波数は、約10,000〜12,000Hzのパルス周波数を有するパルス搬送波信号を振幅変調するために利用される。有利なことに、搬送波信号のスイッチは時間を合わせてオン・オフになり、電極における信号の極性を逆転することによって約0.5秒ごとに搬送波信号が逆転する。
【0022】
図6〜10を概略的に参照すると、図6は、本発明の電気刺激を受けている複数の患者についての12週間の検討に関するスネルチャートの結果の集計である。対をなしているカラムは、治療前後のスネルチャートの結果を右眼(すなわちOD)および左眼(すなわちOS)について示している。図7〜10は、本発明の電気刺激を受けている対象者の治療前後について、スネル視力、左右方向の動的視野(度)、上下方向の動的視野(度)、ハンフリー30−2(全誤差)のデータを示している。
【0023】
本発明の治療法の別の態様において、電源は携帯型で電池式の、対象者に取り付け式または取り付け可能な定電流発生器である。よって対象者は直流が流れている間に移動することが可能である。状況によっては、治療中に眼瞼が閉じていないことが望ましいこともある。そのような場合は、眼の電極を眼の周囲に配置すればよい。眼の周囲または近傍に
その電極を配置し維持するために、眼鏡フレームまたはその他の容易に支持可能な頭部構造などのフレーム構造(図示せず)に、電極が備え付けられてもよい。
【0024】
視覚障害などについての非侵襲的な眼の治療の代替実施形態では、対象者の一方または両方の眼に光エネルギーを施用する。光エネルギーは1平方センチメートルあたり最大約4.5ジュールの出力密度で施用することが好ましいが、必ずしもそうである必要はない。さらに、光エネルギーは1平方センチメートルあたり約5ミリワットの光強度を有し、かつ好ましくは約145Hzの周波数で最大約15分間施用されると、特に有利と思われる。
【0025】
脳内のある種の生化学的状態が実効的な皮質可塑性を促進して新たな機能が生じうるようにすることは一般に知られている。神経伝達物質はこの生化学反応を誘発し、新たな方向への移動および成長を開始するための新たなシナプス結合を可能にする。着色光による治療法は、網膜と視床下部との脳内接続により視覚系を介した脳の生化学反応を刺激するための有用なツールとしての役割を果たすと考えられる。
【0026】
前述の治療法を達成するための装置については、電極を担持する構造(例えばフレーム、頭部バンドまたはその他の頭部ギア)が、1または2種以上の選択周波数を送達または施用可能な周知の光発生デバイスに取り付けられてもよい。例えば、特定の失明疾患に応じて所望の周波数の光エネルギーを提供するために、LEDまたはIREDを用いてもよい。青〜緑色は黄斑変性症およびその他の失明疾患について有用であると考えられる一方、赤〜黄色は網膜色素変性症および関連または類似の失明疾患について有用であると考えられる。有用と考えられる特定の波長範囲は、約450〜500nm(すなわち一般的には「青」)、約520〜570nm(すなわち一般的には「緑」)、約565〜590nm(すなわち一般的には「黄」)、ならびに625〜740nm(すなわち一般的には「赤」)である。これらの波長範囲の、またはこれらの波長範囲を含んだ光治療法は、失明疾患に対して有利に使用できる。
【0027】
本発明の治療法の特定の実施形態では、対象者のそれぞれの眼に、第1および第2の波長範囲を特徴とする光エネルギーの間で順次光エネルギーが施用される。例えば、黄斑変性症については、先述の「フレーム」または類似物を取り付けて、青色光を一方の眼に、緑色光を他方の眼に向けると同時に、「色」がある治療サイクルから次の治療サイクルへと切り替わるか、または個別の治療サイクルになるようにすることができる。そのような、赤/黄色の波長範囲を利用する手法は、網膜色素変性症の治療に有利であると考えられる。
【0028】
上述のような、電気および/または光エネルギーの眼内施用に加えて、超低周波の音波(すなわち概して20Hz未満の周波数を有するもの)を対象者の一方または両方の眼に直接導入することがさらに有用な可能性がある。そのような音波の発生器は上述のフレーム類、またはその改変物を備えていてもよい。視覚障害を治療するために、好ましくは(ただし必須ではない)約8〜14Hzの範囲のランダム周波数で超低周波の音波を眼内に導入するのが有利であると考えられる。
【0029】
本発明がその有利な効果を示す原理は完全には解明されておらず、特定の作用理論に限定するものでもないが、本発明に従って実施される経眼的電気伝導は、細胞膜の電位を変化させることにより細胞の電気的バランスを回復させる可能性がある。このことは、ある種のイオンおよび分子のレベルを望ましい平衡状態に向けて変化させる可能性がある。その他の生理学的作用、すなわち、電流の通路に隣接したアルカリ度の低下と少量の塩酸の発生;該領域への酸素の誘引;局所的血管収縮;局所的出血の低減;鎮静作用;局所組織における張度上昇;消毒;望ましい線維増殖の発生;ならびに神経筋系統の易興奮性の低
減が生じると考えられる。経眼的刺激により、20分間の治療処置において身体の血液総容量の33%超にアクセスすることも可能になる。血液は、電磁エネルギーを捕捉して生体力学的反応を制御かつ誘導するために存在する多くの細胞から構成されている。このことは、pHを調整して血液を活動させミネラルを与えることも含んでいる。同様に、失明疾患については、病変し、炎症を起こした網膜細胞は最終的に細胞機能を喪失する。アデノシン三リン酸(ATP)のレベルは低下し、タンパク質合成が低下し、電気抵抗が上昇し、細胞膜の電位が低下する。基本的に、細胞はある期間休止状態になってから死滅するようである。従って、細胞が死滅する前に電気刺激を与えれば、血管の透過性が上昇し、細胞の電位がより正常に近くなり、ATPレベルが上昇し、タンパク質合成が再開されると考えられる。
【0030】
当然のことであるが、上述の電気、光および音響エネルギーによる治療態様は互いに独立に(すなわち個別に)施用してもよいし、あるいは1または複数の選択した組み合わせ/順列として施用してもよい。さらに、本発明にはその他の変形実施形態もあり、その一部は当業者には明らかであろう。当然のことであるが、本開示は多くの点において単なる例示にすぎず、限定を意図するものではない。従って、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の文言において定義されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】微小電流の施用を用いる視覚障害の治療を受けているヒト対象者を示す図。
【図2】本発明の電気刺激に関する好適な一続きの周波数プロファイルの各々について出力周波数を示す図。
【図3】本発明の電気刺激に関する好適な一続きの周波数プロファイルの各々について出力周波数を示す図。
【図4】本発明の電気刺激に関する好適な一続きの周波数プロファイルの各々について出力周波数を示す図。
【図5】本発明の電気刺激に関する好適な一続きの周波数プロファイルの各々について出力周波数を示す図。
【図6】本発明の電気刺激を受けている複数の患者についての12週間の検討に関するスネルチャートの結果の集計表。
【図7】本発明の電気刺激を受けている対象者の治療前後について、スネル視力のデータを示す図。
【図8】本発明の電気刺激を受けている対象者の治療前後について、左右方向の動的視野(度)のデータを示す図。
【図9】本発明の電気刺激を受けている対象者の治療前後について、上下方向の動的視野(度)のデータを示す図。
【図10】本発明の電気刺激を受けている対象者の治療前後について、ハンフリー30−2(全誤差)のデータを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚障害のための非侵襲的な眼の治療法であって、
(a)直流源の第1電極を対象者の眼の近傍に電気的に接触させることと、
(b)直流源の第2電極を対象者に電気的に接触させることと、
(c)前記電極の間に、抵抗を約500オームとして約1〜800マイクロアンペアで所定の期間、直流電流を発生させることと
からなる治療法。
【請求項2】
前記直流電流を2種以上の周波数で発生させることを特徴とする請求項1に記載の治療法。
【請求項3】
前記直流電流を2種以上の周波数で、約10,000〜12,000Hzの搬送波信号を用いて発生させることを特徴とする請求項1に記載の治療法。
【請求項4】
前記直流電流を約292Hzで約1分間発生させることを特徴とする請求項3に記載の治療法。
【請求項5】
前記直流電流を約31Hzで約2分間発生させることを特徴とする請求項3に記載の治療法。
【請求項6】
前記直流電流を約8〜9Hzで少なくとも7分間発生させることを特徴とする請求項3に記載の治療法。
【請求項7】
前記直流電流を約0.15〜0.3Hzで少なくとも7分間発生させることを特徴とする請求項3に記載の治療法。
【請求項8】
前記直流電流を選択周波数プロファイルで時間の関数として、約10,000〜12,000Hzの搬送波信号を用いて発生させることを特徴とする請求項1に記載の治療法。
【請求項9】
前記選択周波数プロファイルが、約292Hzで約1分間、約31Hzで約2分間、約8〜9Hzで少なくとも7分間、および約0.15〜0.3Hzで少なくとも7分間からなることを特徴とする請求項8に記載の治療法。
【請求項10】
前記搬送波信号を前記所定の期間の間にオン・オフに変調することを特徴とする請求項3に記載の治療法。
【請求項11】
前記電極における前記搬送波信号の極性を逆転することによって前記搬送波信号を逆転することを特徴とする請求項10に記載の治療法。
【請求項12】
前記搬送波信号を約0.5秒ごとに逆転することを特徴とする請求項11に記載の治療法。
【請求項13】
対象者の眼に1平方センチメートルあたり最大約4.5ジュールの出力密度で光エネルギーを施用することからさらになる、請求項1に記載の治療法。
【請求項14】
前記光エネルギーは1平方センチメートルあたり約5ミリワットの光強度を有することを特徴とする、請求項13に記載の治療法。
【請求項15】
前記光エネルギーは約145Hzの周波数で最大約15分間施用されることを特徴とす
る、請求項14に記載の治療法。
【請求項16】
前記光エネルギーは、波長範囲が約450〜500nm(青)、約520〜570nm(緑)、約565〜590nm(黄)、または625〜740nm(赤)であることを特徴とする、請求項13に記載の治療法。
【請求項17】
前記光エネルギーの施用は、対象者のそれぞれの眼に、第1および第2の波長範囲を特徴とする光エネルギーの間で順次行われることを特徴とする、請求項16に記載の治療法。
【請求項18】
前記第1の波長範囲が約450〜500nmからなる、請求項17に記載の治療法。
【請求項19】
前記第2の波長範囲が約520〜570nmからなる、請求項18に記載の治療法。
【請求項20】
前記第1の波長範囲が約520〜570nmからなる、請求項17に記載の治療法。
【請求項21】
前記第2の波長範囲が約450〜500nmからなる、請求項20に記載の治療法。
【請求項22】
前記第1の波長範囲が約565〜590nmからなる、請求項17に記載の治療法。
【請求項23】
前記第2の波長範囲が約625〜740nmからなる、請求項22に記載の治療法。
【請求項24】
前記第1の波長範囲が約625〜740nmからなる、請求項17に記載の治療法。
【請求項25】
前記第2の波長範囲が約565〜590nmからなる、請求項24に記載の治療法。
【請求項26】
超低周波の音波を対象者の眼に直接施用することからさらになる、請求項1に記載の治療法。
【請求項27】
前記超低周波の音波は約8〜14Hzの周波数であることを特徴とする請求項26に記載の治療法。
【請求項28】
超低周波の音波を対象者の眼に直接施用することからさらになる、請求項13に記載の治療法。
【請求項29】
前記超低周波の音波は約8〜14Hzの周波数であることを特徴とする請求項28に記載の治療法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−521124(P2007−521124A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552296(P2006−552296)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/003695
【国際公開番号】WO2005/077452
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(506268946)シフィックス リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】SCYFIX LLC
【Fターム(参考)】