説明

電気スポット溶接のための方法および装置

本発明は、電極(11,12)を備えた電極ホルダ(10)によるワーク(2)の電気スポット溶接のための方法および装置に関する。経路(16)に沿って複数の溶接スポット(15)が設定されて、ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは、1または複数の関節アームロボット(3)により、上記溶接スポット(15)間の変位運動(19)時に互いに相対運動させられる。溶接スポット(15)の本来の設定時にワーク(2)と電極ホルダ(10)とは同じく経路(16)に沿って互いに相対運動させられ、特に電極ホルダ(10)の「閉」時に、溶接スポット(11)を中心にして互いに相対回転させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法および装置に関する主請求項の上位概念にそれぞれ記載の特徴を有する、電極ホルダによるワークの電気スポット溶接のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気スポット溶接電極ホルダたとえばCホルダまたはXホルダを用いたこの種のスポット溶接技術は実地から知られている。この溶接技術において、複数の溶接スポットがワーク特に自動車ボディー部材の経路に沿って順次に設定される。この場合、ワークと電極ホルダとは、特に6軸関節アームロボットの形の1または複数の多軸ロボットによって互いに相対運動させられる。1変法において、ロボットは静止しているワークに対して電極ホルダを案内する。第2の変法において、ロボットは定置電極ホルダに対してワークを運動させる。第3の変法において、電極ホルダもワークもそれぞれ1台のロボットによって互いに相対運動させられる。この相対運動に際して、ワークと電極ホルダとの間の変位運動は、個々の溶接ポジションに接近するために、経路に沿って実施される。従来の技術において、ワークと電極ホルダとは溶接箇所で互いに相対ポジショニングされ、こうして、両者はそれ以上の変位運動なしに静止ポジションを占める。電極ホルダの「閉」時および溶接プロセスに際し、電極ホルダとワークとの相対ポジションは引き続き維持される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来よりも優れた電気スポット溶接技法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記課題を、方法および装置に関する主請求項にそれぞれ記載の特徴によって解決する。
【0005】
溶接スポット設定時のワークと電極ホルダとの間の相対運動、特にワークと電極との間の相対運動により、さまざまな効果と利点が得られる。一方で時間が節約される。機械負荷の減少と同時に従来よりも著しく短いタクトタイムが結果する。変位運動時に、加速・制動相の著しく減少した高速かつほぼ一定の運動速度が達成可能である。これにより、摩耗の低下も生ずる。加えてさらに、溶接プロセスにおける電極とワークとの間の相対運動によりスポット溶接品質の向上を達成することができる。
【0006】
タクトタイムの短縮は溶接ロボットの稼働率の向上を可能にする。加えてさらに、溶接ステーションあるいは複数のステーションからなる製造ラインにおいて必要とされるロボットならびに電極ホルダの数を減少させることができる。ロボットにとって、一様化された変位運動は運動上の利点を供する。従来の方法において通例の不可避の震動持続または溶接開始時のロボットの震動は減少させることができる。溶接技術面では、電極キャップの寿命の向上ならびに上述したスポット溶接品質の改善が結果する。これらの利点は特に亜鉛コート薄板の溶接時に現象する。というのも、亜鉛による電極キャップ・ピックアップ挙動は、従来の技術の場合に当てはまる、キャップ表面からの異物層の不可避の散在的剥離よりも良好だからである。アルミニウムの抵抗スポット溶接では、このピックアップは従来の技術においてさらに大きな問題であり、1電極対で可能な溶接スポットの数を減少させる。
【0007】
本発明による溶接技法により、溶接スポットの数ならびに電極キャップの安定性を高めることができる。これは、特にアルミニウム溶接に際して、溶接プロセスの顕著な改善な
らびに使用可能性の拡大を招来する。これに関連して、ワークの手直しの必要性が減少することも好適である。
【0008】
さらにまた、圧接された電極のワークに対する相対回転も技術的利点を供する。電気溶接パラメータの再現精度はこの回転によって改善される。これは溶接結果の一様化ならびに品質向上を結果する。従来通例のステップ、つまり、稼動に起因する電極作用面の拡大に伴う溶接パラメータの変動を補償するための、溶接電圧ないし溶接電流の段階的な適合化ステップを減少させもしくは不要とすることができる。
【0009】
溶接スポットでの電極の回転は電極への従来通例のワーク材料ピックアップならびにそれに伴うプロセス条件の変化を減少もしくは防止する。またさらに、従来の抵抗スポット溶接においてこれらのピックアップはいつか勝手に剥がれ落ちることがあり、これがプロセス条件のさらなる、急激な変化をもたらすことがある。接触・溶接箇所での電極の回転によって、こうした不適な効果は減少または解消される。
【0010】
従来の抵抗スポット溶接では電極キャップの摩耗が生じ、その際、電極の接触・作用面は扁平化し、比較的鋭いエッジが形成される。これは面積拡大によって電流密度の低下を招来し、これに対して上述した溶接電流ないし溶接電圧の適合化ステップが対応措置として実施される。接触・溶接箇所での電極の回転によってこれらの問題は除去される。エッジ形成は回避され、その際、電極はむしろプロセスにとって有利なように丸み付けられる。さらに、本発明による溶接技法において、電流密度は相対的に長期にわたり不変であって、耐用期間全体にわたって勝手に変化することはない。それどころか、電流密度は溶接箇所における電極の回転角と相関していることが明らかである。回転角次第で電流密度は高まることさえもある。これは、翻って、電極の回転と回転角とを介して電流密度に影響を与え、こうして電流密度を所望の値に調整する可能性を供する。この場合、回転運動は場合により不連続的、あるいは可逆的であってよい。こうした場合には、タクトタイム節減を犠牲にして、テクノロジー上の利点が重視されることになろう。
【0011】
従請求項には本発明のさらにその他の有利な実施態様が記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は図面に模式化されて例示されている。
本発明は、ワーク(2)の電気スポット溶接方法ならびに、該方法のために使用され相応して制御される、当該の適切な制御装置(4)と制御プログラムを含んだ溶接装置(1)に関する。
【0013】
図1はその種の溶接装置(1)の1実施形態の概略的な側面図である。溶接装置(1)は、電気スポット溶接用の電極ホルダ(10)と、電極ホルダ(10)を図示実施例において破断表示されたワーク(2)に対して相対ガイドする、制御装置(4)を装備したロボット(3)とを含んでいる。この場合、電極ホルダ(10)により、ワーク(2)の経路(16)に沿って複数の溶接スポット(15)が設定される。この場合、電極ホルダ(10)はロボット(3)により、溶接スポット(15)から溶接スポット(15)へ変位運動させられる。
【0014】
ワーク(2)は任意の種類、大きさおよび形状であってよい。これは好ましくは自動車ボディシェル部材である。この場合、たとえば2枚の部材が張出しフランジ部で溶接スポット(15)によって互いに結合される。ワーク(2)に設定される、溶接スポット(15)の経路(16)または順序は部材形状寸法によって規定される。経路(16)は、図2および3に示したような最も単純な形の場合、真っ直ぐかつ平らに延びていてよい。他方、経路はその他の任意の形状を有していてもよく、たとえば図4に示したように湾曲し
て延びていてもよい。図4はたとえば内側の開口部材、たとえばその周縁に上記の溶接スポット(15)が配置される自動車ボディシェルのドア縁を示している。
【0015】
いわゆる溶接スポットの設定とは、電極ホルダ(10)のホルダアーム(14)の「閉」の開始から、それに続く圧接・溶接相を経て、電極ホルダ(10)の「開」が完了するまでのプロセスないし機能経過として理解される。
【0016】
ロボット(3)は任意の適切な型式のものであってよい。それは好ましくは産業用多軸ロボット、特に、少なくとも6本の回転軸を備えた関節アームロボットである。ロボット(3)は場合により、補助軸、特に1または複数本の補助的な走行軸を有していてよい。ロボット(3)は、好ましい実施形態において、スタンド(5)を有し、該スタンド上に回転台(6)が第1の直立した主軸またはロボット軸Iを中心に回転し得るようにして軸支されている。回転台(6)には、第2の主軸またはロボット軸IIを中心に旋回し得るようにしてロッキングアーム(7)が軸支されている。軸IIは好ましくは水平に、かつ軸Iに対して横向きに延びている。他方のロッキングアーム端には、ジブ(8)が同じく水平な第3のロボット軸または主軸IIIを中心に旋回し得るようにして軸支されている。ジブ(8)の前端には、それ自体が複数の運動軸またはハンド軸を有するロボットハンド(9)が位置している。好ましい実施形態において、これは、手根点(18)で交差する、直交する3本のハンド軸IV、VおよびVIを有した3軸ロボットハンド(9)である。したがって、図示ロボット(3)は全体として、IからVIまでの6本の回転軸を有している。
【0017】
ロボットハンド(9)のハンド軸VIを中心にして回転可能な従動フランジには電極ホルダ(10)が取付けられている。電極ホルダ(10)はたとえば、2またはそれ以上の電極(11,12)と2またはそれ以上のホルダアーム(14)とを有する電気スポット溶接電極ホルダである。図1は、固定電極(11)と当該固定ホルダアーム(14)ならびに直線送り可能な可動電極(12)とそのホルダアームとを有したいわゆるCタイプの電極ホルダ(10)を示している。溶接スポット(15)の溶接のため、電極(11,12)はワーク(2)に近づけられて両側でワーク表面に押付けられ、その際、ワークを通して溶接電流が流されて、被加工部品の接触箇所において、接触しているワーク表面の局部加熱と可塑化ならびにいわゆるナゲットを生じた溶接スポット(15)の形成が行われる。
【0018】
ロボット(3)には、データ・プログラム記憶装置と、ロボット(3)ならびに電極ホルダ(10)を制御するための制御プログラムとを有したコンピュータ支援演算ユニットを含んだロボット制御装置(4)が備えられている。ロボット(3)の軸I〜VIの制御は記憶された運動プログラムに依拠して行われる。ロボット制御装置(4)には、電極ホルダ(10)と不図示の溶接電源とを制御する、溶接プロセスのためのプロセス制御装置も組み込まれていてよい。このプロセス制御装置は別法として、外部に配置されて、ロボット制御装置(4)と接続されていてもよい。ロボット制御装置(4)には、追跡さるべき経路(16)と個々の溶接スポット(15)の位置とが記憶されている。溶接制御装置には、各々の溶接スポット(15)に必要な溶接パラメータならびに電極ホルダ制御パラメータが格納されている。必要なプロセスパラメータは、場合により、適切な方法で測定されたワークの局所特性に応じ、テクノロジーデータバンクに依拠してその場で算定、設定することも可能である。制御プログラムは、以下に述べるようにして、ロボット運動と溶接プロセスとを結びつける。
【0019】
図5は従来の技術による従来の電極ホルダ(10)の運動・機能経過を線図の形で具体化したものであり、この場合、機能ならびに、ホルダないし電極の力は時間に相関させて表されている。
従来の技術において、電極ホルダ(10)は先ずロボット(3)により、所定の溶接箇所ないし接合さるべき点に向かって変位運動させられて、同所にポジショニングされる。接合点に達すると、直ちにロボット(3)は停止して、ワーク(2)に対してもはや電極ホルダ(10)を可動させることはない。接合点に到達した後、線図から看取されるように、電極ホルダ「閉」の命令が与えられる。その際、たとえば可動電極(12)が固定電極(11)とホルダアーム(14)に向かって運動させられる。可動電極(12)がワーク(2)に接触すると、場合により、電極ホルダ調整が自由に行える場合には、固定電極(11)が電極ホルダ駆動装置の作用下でワーク(2)に向かって運動させられる。双方の電極(11,12)がワーク(2)に接触した後、両側において電極ホルダ駆動装置によって圧接された電極の間に力が造成される。ピーク荷重は空気圧式電極ホルダ駆動装置において調節式スロットル弁によって回避されるが、ただし、これはタクトタイムにとって最速の力の造成を妨げる。この「閉」運動に続いて、いわゆる被加工部品のプレプレスと力造成予備による微分時間が経過する。前もってセレクトされた力が異なっている場合には、異なった力造成時間が存在していてよく、これは、電極力が不安定かつ低すぎる領域で溶接が行われないように、上記予備時間によって相殺される。
【0020】
続いて本来の溶接プロセスが行われ、これにアフタプレスが続き、その間に溶接スポット(15)は軟状態から固相にもたらされる。次の段階で、同じく一定の時間を要し、こうして、実際の力の解消とワーク(2)からの電極(11,12)の引き離しとを生ずる、電極ホルダ「開」が開始される。続いての時点に、電極ホルダ(10)から、実際に電極ホルダ「開」が行われた旨の信号が発される。続いて、次のロボット変位運動と、次の溶接スポットへの接近が開始される。ロボット(3)は変位運動にかかわる軸I〜VIを加速し、その際、装置状態に応じ、異なった軸が主導軸となることがある。この場合、かなりの加速度が生ずる。したがって、溶接スポット(15)間の距離に応じ、次の接合スポットでの相対的に早いもしくは遅い制動が行われる。
【0021】
ロボット(3)はスポット間距離次第で、最大変位速度に至らないことがよくある。次の接合点で、所定のプロセスが新たに行われる。この既知の溶接技法において、ロボット(3)は大きな質量の電極ホルダ(10)を、変位運動中の最大加速度と溶接プロセス停止との間で不断に運動させる。溶接時間がたとえば0.2秒と比較的短い場合に、計算による、変位運動にとって実際に要される時間は一般に純然たる溶接時間よりも遥かに長く、たとえば約2秒という場合がある。こうした長い変位時間あるいはスポット−スポット間時間は従来の技術におけるタクトタイムを高めると共に、他方で、ロボット(3)の加速度ならびに力の予備を使い果たすことを強制する。こうした相対的に高いロボット負荷は停止時および電極ホルダ(10)の「閉」時におけるロボット(3)の“震え”を結果する。その際、場合によっては溶接スポット(15)への接近は不正確になる。
【0022】
本発明による方法において、ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは溶接スポット(15)の設定に際し経路(16)に沿って互いに相対運動させられる。これは、電極ホルダ(10)の「閉」と新たな「開」との間の領域でワーク(2)と電極ホルダ(10)との間の相対運動と案内運動が生ずることを意味している。
【0023】
溶接スポット(15)設定時のこの相対運動にはさまざまな方法が可能である。特に、その際、ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは互いに相対回転させられる。このいわゆる相対運動に際し、オプショナルに、電極ホルダ(10)は、図示実施形態におけるように、静止しているワーク(2)に対して相対運動させることができる。別法として、ワーク(2)をロボット(3)により適切なグリッパを用いて案内し、定置電極ホルダ(10)に対して相対運動させることが可能である。第3の変法において、1台のロボット(3)が電極ホルダ(10)を、もう1台のロボットがワーク(2)をそれぞれ保持、案内し、場合により、溶接スポット設定時にそれぞれを運動させることも可能である。以下、ロ
ボット(3)によって可動される電極ホルダ(10)を有した図示実施形態を説明する。記載されたプロセスならびに対策は他の2つの実施形態にもそれぞれ当てはまる。
【0024】
図2〜4に示したように、一方で、電極ホルダ(10)は「閉」ポジションにおいて、圧接された電極(11,12)と共に、溶接スポット(15)を中心にしてワーク(2)に対して相対回転させることができる。この回転運動はたとえば、力の造成、プレプレス、溶接およびアフタプレスの各相中に行われる。電極ホルダ運動と溶接プロセスとの重なり合いが生ずる。
【0025】
好ましい実施形態において、上記相対運動は電極(11,12)とワーク(2)との間の接触相全体にわたって行われる。別法として、上記相対運動はこれらの相の各々においてのみ行われるようにすることができる。その際、溶接スポット(15)を中心とした相対回転運動は経路(16)の追跡方向(17)に、したがって接近さるべき次の溶接スポット(15)の方向に向けられている。この相対回転時にホルダアーム(14)も溶接スポット(15)を中心にし、かつ電極(11,12)の接触箇所を通って延びる電極軸(13)を中心にして回転させられる。この回転軸は加圧されたワーク表面に対して垂直に延びていてよい。該回転軸は別法として、別の角度を有していてもよく、たとえば斜めに延びていてもよい。図3および4は、上記を、扇状に広げて図示したホルダアーム(14)によって明らかにしている。
【0026】
更に、電極ホルダ(10)はホルダアーム(14)の「開」時にワーク(2)に対して相対回転させることができる。この回転運動はロボットハンド(9)の手根点(18)を中心にして行われ、同じく次に接近さるべき溶接スポット(15)の方向に向けられている。この回転運動の軸は経路(16)ないしロボット(3)の案内運動(20)に対して好ましくは基本的に垂直をなしている。
【0027】
上記の回転運動は溶接スポット(15)への接近時および電極ホルダ(10)とそのホルダアーム(14)の「閉」時にも行われる。電極ホルダ(10)とそのホルダアーム(14)とは経路(16)の追跡方向(17)におけるこの接近時に斜め前方に向けられている。これによって電極は追跡方向(17)においてロボットハンド(9)の前方に位置する。したがって、電極ホルダ(10)の「開・閉」運動中に、すでに重なり合った変位運動と、電極ホルダ(10)とワーク(2)との間の相対走行運動が生じる。
【0028】
1変形実施形態において、電極接触時に、冒頭に述べた、溶接スポット(15)を中心にしたワーク(2)に対する電極ホルダ(10)の相対回転運動のみが可能であり、その際、電極ホルダ(10)の「開」および/または「閉」は従来の技術と同様に電極ホルダ(10)とワーク(2)との間の相対静止ポジションで実施される。さらに別の1変形実施形態において、電極ホルダ(10)の「閉」および/または「開」時にのみ、ワーク(2)と電極ホルダ(10)との間の上記相対運動が可能であり、その際、ワーク(2)との電極接触相において電極ホルダ(10)とワーク(2)とは相対静止ポジションを占める。
【0029】
上記相対運動を達成するため、ロボットハンド(9)特に手根点(18)を有したロボット(3)はその第1の主軸I〜IIIを経て基本的に一定の案内運動(20)により経路(16)に沿って運動させられ、その際、ロボットハンド(9)はその主軸IV〜VIの1または複数によって、重なり合った調整運動(21,22)を実施する。運動の重なり合いは、ロボット(3)の停止が生じないかもしくはほとんど生じないために、不断の制動および加速による高いロボット負荷が回避されるという利点を有する。
【0030】
案内運動(20)に際して、溶接スポット(15)を中心とした電極ホルダ(10)の
回転の過程で、手根点(18)は溶接スポット(15)を中心とした対応する円弧を描いて案内される。案内運動(20)はその限りで真っ直ぐではない。さもない場合には、案内運動(20)の方向は経路(16)と平行であってよい。これは強制的なものではなく、特に支障となるエッジまたはその他のワーク所与条件に応じて平行性から逸脱することが可能である。
【0031】
上述した実施可能性に応じ、電極ホルダ(10)の「閉」時のロボットハンド(9)の調整運動は溶接スポット(15)を中心として方向付けられた旋回追従運動(21)である。先ず走行方向(17)においてワーク(2)および溶接スポット(15)に斜めにポジショニングされて定位された電極ホルダ(10)は「閉」ポジションにおいて、ロボットの更なる運動と、基本的に経路(16)に沿って方向付けられた案内運動(20)とによって、溶接スポット(15)ないし電極軸(13)を中心にして回転させられる。ロボットハンド(9)の追従運動(21)と、場合により、他のロボット軸(1,2,3)の一定の回避運動とによって、回転の過程で生ずる方向変化が調整される。
【0032】
電極ホルダ(10)の「開・閉」プロセス時のロボットハンド(9)の調整運動は、動きが逆転され、電極ホルダ(10)がワーク(2)に対して相対回転させられて、次の溶接スポット(15)に向かって方向付けられる指向運動(22)である。この指向運動(22)は相対的に迅速に、特にロボット(3)の案内運動(20)よりも迅速に進行する。ワーク(2)との電極接触相ならびに溶接スポット(15)を中心とした回転運動の最後に、ロボットハンド(9)はすでに溶接スポット(15)を通り過ぎており、その際、ホルダアーム(14)は下方に向かって、かつ追跡方向(17)に向けられている。回転中の指向運動(22)において、電極ホルダ(10)はホルダアーム(14)の「開」後に速やかに方向転換されて、先行ポジションにもたらされ、該ポジションにおいて電極ホルダは次の溶接スポット(15)への接近時に該スポットに向かって斜めに配向されて、電極(11,12)はロボットハンドの前方に位置している。
【0033】
図6は、従来の技術に関する図5の線図と比較して、本発明による方法の経過を線図によって具体的に示している。溶接スポット(15)への接近時に斜め前方に向けられている電極ホルダ(10)により、すでに溶接スポット(15)への接近時に、電極(11,12)とそのホルダアーム(14)との「閉」運動が行われるため、ワークへの電極接触と力の造成とは相応してより速やかに行われる。これに応じて、溶接相は従来の技術の場合よりも早く開始すると共に、電極(11,12)とワーク(2)との間の相対運動によってより速やかに進行することができる。電極ホルダ(10)の「開」時にはすでに再び変位運動ならびに指向運動(22)が開始している。ロボットハンド(9)の小さな指向角度変化は電極(11,12)ならびに電極ホルダ(10)の工具中心点(TCP)の大きな変位運動を結果するため、変位時間は非常に短いものとなる。総じて、図5および6の線図の比較から、本発明による方法に基づく時間の節約は顕著であることが明らかである。
【0034】
溶接スポット(15)におけるかつワーク(2)との接触時における電極(11,12)の回転角の大きさは異なった基準に従って決定することができる。タクトタイム節減が狙いとされる場合には、たとえば1°〜45°、一般に15°〜20°の範囲内にある相対的に大きな回転角が望ましい。回転角はさまざまな基準たとえばスポット間距離および電極ホルダサイズを目安とすることができる。
【0035】
他方、電極の回転によって、電気溶接パラメータの再現精度にかかわる利点が得られる。特に、角度に応じて異なった電流密度が生ずる。溶接スポット(15)での回転角はこうしたプロセス基準または品質基準を目安とすることもでき、タクトタイム節減にとって最適と考えられる回転角より小さくてもよい。この場合には、溶接時のプロセス最適化と
タクトタイムとの間の妥協が求められる。別法として、回転角はもっぱらプロセス最適化を目安として決定することが可能である。
【0036】
電極(11,12)ないし電極キャップは任意の適切な材料たとえば従来通例の材料たとえば銅、銅クロム合金等から製造されていてよい。これらは、別法として、溶接箇所での回転に合わせて特別な処理たとえば硬化処理またはコーティング処理が施されていてよく、あるいは特に耐摩耗・耐熱性材料たとえば特殊鋼、タングステンまたはモリブデン含有合金等からなるかもしくはその種のコーティングを有していてよい。
【0037】
電極(11,12)は回転に好適な形状を有していてよく、たとえば接触面は球状に丸み付けられていてよい。好適な丸み付け半径はたとえば、接触面が平らな場合に稼動中に自らピックアップ等によって生ずるような半径であってよい。この半径は耐久寿命試験から求めることができる。
【0038】
図示実施形態の変形はさまざまな方法で可能である。これは一方で、軸がより多いかまたは少なくてよいロボット(3)の態様に関する。ロボット(3)は更に、使用分野に応じて別の動きが可能であってよく、特に、1または複数の直線運動軸あるいは直線運動軸と回転運動軸とのコンビネーションも有していてよい。更に、電極ホルダ(10)の態様も可変的であり、たとえば、互いに相対回転可能なホルダアーム(14)を有したXタイプ電極ホルダとして形成されていてよい。加えてさらに、その他の任意の態様も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ロボット溶接装置、スポット溶接電極ホルダおよびワークの概略的な側面図である。
【図2】真っ直ぐな経路に沿った複数の溶接スポット設定時の電極およびホルダアームの運動経過の側面図である。
【図3】真っ直ぐな経路に沿った複数の溶接スポット設定時の電極およびホルダアームの運動経過の平面図である。
【図4】湾曲した経路に沿った電極とホルダアームの運動経過の平面図である。
【図5】従来の方法による溶接スポット設定時の電極ホルダの力の推移ならびに運動に関する線図である。
【図6】本発明による溶接方法に関する同様な線図である。
【符号の説明】
【0040】
1 溶接装置
2 ワーク
3 ロボット
4 制御装置
5 スタンド
6 回転台
7 ロッキングアーム
8 ジブ
9 ロボットハンド
10 電極ホルダ
11 電極 定置
12 電極 可動
13 電極軸
14 ホルダアーム
15 溶接スポット、接触点
16 経路
17 追跡方向
18 手根点
19 変位運動 電極ホルダ
20 案内運動 ロボット
21 調整運動、追従運動 ロボットハンド
22 調整運動、指向運動 ロボットハンド
I、II、III ロボット軸
IV、V、VI ハンド軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の溶接スポット(15)が経路(16)に沿って設定されて、ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは、1または複数の多軸ロボット(3)とくに関節アームロボットにより、上記溶接スポット(15)間の変位運動(19)時に互いに相対運動させられる、電極(11,12)を備えた電極ホルダ(10)によるワーク(2)の電気スポット溶接のための方法であって、
ワーク(2)と、電極ホルダ(10)の少なくとも一部とくに電極(11,12)とは、経路(16)に沿った溶接スポット(15)の設定時に、互いに相対運動させられることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、
ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは、経路(16)に沿った溶接スポット(15)の設定時に、互いに相対回転させられることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは、電極ホルダ(10)の「閉」時に、溶接スポット(15)を中心にして互いに相対回転させられることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3において、
ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは、電極ホルダ(10)の「閉」時に、圧接された電極(11,12)を通って延びる電極軸(13)を中心にして相対回転させられることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3または4において、
溶接スポット(15)を中心にした上記回転運動は経路(16)の追跡方向(17)に向けられていることを特徴とする方法。
【請求項6】
上記請求項のいずれか1項において、
ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは、電極ホルダ(10)の「開」時に、互いに相対回転させられることを特徴とする方法。
【請求項7】
上記請求項のいずれか1項において、
ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは、電極ホルダ(10)の「閉」時に、互いに相対回転させられることを特徴とする方法。
【請求項8】
上記請求項のいずれか1項において、
ロボット(3)はその第1の主軸I、II、IIIで経路(16)に沿った基本的に一定の案内運動(20)を実施すると共に、その多軸ロボットハンド(9)で重なり合った調整運動を実施することを特徴とする方法。
【請求項9】
上記請求項のいずれか1項において、
電極ホルダ(10)の「閉」時のロボットハンド(9)の上記調整運動は溶接スポット(15)を中心にした追従運動(21)であることを特徴とする方法。
【請求項10】
上記請求項のいずれか1項において、
電極ホルダ(10)の「開」時のロボットハンド(9)の上記調整運動は、次の溶接スポット(15)の方向に向けられた、手根点(18)を中心にした指向運動(22)であることを特徴とする方法。
【請求項11】
1つまたは複数の多軸ロボット(3)とくに関節アームロボットと、制御装置(4)と、電極(11,12)を備えた少なくとも1つの電極ホルダ(10)とを有し、複数の溶接スポット(15)が経路(16)に沿って設定されて、ワーク(2)と電極ホルダ(10)とは上記溶接スポット(15)間の変位運動(19)時に互いに相対運動し得るように構成したワーク(2)の電気スポット溶接を実施するための装置であって、
溶接装置(1)はワーク(2)と電極ホルダ(10)の少なくとも一部とくに電極(11,12)とが経路(16)に沿った溶接スポット(15)の設定時に互いに相対運動させられるように制御されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11において、
上記溶接装置(1)は請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実施するための制御プログラムを有することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−526517(P2008−526517A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549819(P2007−549819)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013946
【国際公開番号】WO2006/074801
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(598057361)クーカ・ロボター・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (16)
【氏名又は名称原語表記】KUKA ROBOTER GMBH
【Fターム(参考)】